(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6965907
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】石炭塔、石炭の投入方法およびコークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
C10B 31/04 20060101AFI20211028BHJP
C10B 53/08 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
C10B31/04
C10B53/08
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-62702(P2019-62702)
(22)【出願日】2019年3月28日
(65)【公開番号】特開2020-158729(P2020-158729A)
(43)【公開日】2020年10月1日
【審査請求日】2020年10月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】大塚 啓司
(72)【発明者】
【氏名】塩飽 達宏
(72)【発明者】
【氏名】南里 功美
(72)【発明者】
【氏名】今西 大輔
【審査官】
森 健一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2018−168280(JP,A)
【文献】
特開昭52−076302(JP,A)
【文献】
実開昭50−098058(JP,U)
【文献】
特開2018−168279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10B 31/00
C10B 53/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装炭車に成型炭を含む石炭を投入する石炭塔であって、
前記石炭塔は、前記石炭を収容する石炭槽と、前記石炭を前記石炭槽に投入するコンベアと、を有し、
前記石炭槽には、前記コンベアからの前記石炭の落下軌跡上に複数の梁状構造物が設けられ、または、前記コンベアからの前記石炭の落下軌跡上に、複数の梁状構造物のうちの一の梁状構造物が設けられ、かつ、前記複数の梁状構造物のうちの他の梁状構造物が前記一の梁状構造物からの前記石炭の落下軌跡上に設けられ、
前記複数の梁状構造物の上面のそれぞれは、前記石炭が堆積可能な平板状に形成されている、石炭塔。
【請求項2】
前記コンベアから前記石炭槽に投入される前記石炭の落下高さが4m以内となるように前記複数の梁状構造物が設けられる、請求項1に記載の石炭塔。
【請求項3】
前記一の梁状構造物から前記他の梁状構造物までの前記石炭の落下高さが4m以内となるように前記複数の梁状構造物が設けられる、請求項1または請求項2に記載の石炭塔。
【請求項4】
前記石炭槽の底部までの前記石炭の落下高さが4m以内となるように前記複数の梁状構造物が設けられる、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の石炭塔。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の石炭塔を用いて前記装炭車に石炭を投入する石炭の投入方法であって、前記石炭は、成型炭を5質量%以上100質量%以下で含有し、成型炭が100質量%ではない場合における前記石炭の残部は粒径10mm未満の粉炭である、石炭の投入方法。
【請求項6】
前記石炭の90質量%以上が成型炭である場合に、前記石炭槽に投入された前記成型炭の粉化率は20質量%以下である、請求項5に記載の石炭の投入方法。
【請求項7】
請求項1から請求項4の何れか一項に記載の石炭塔に投入した前記石炭を、前記装炭車を用いてコークス炉の炭化室に装炭し、前記炭化室で乾留してコークスを製造するコークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装炭車に石炭を装炭する石炭塔、当該石炭塔に石炭を投入する投入方法およびコークスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型高炉操業では、高炉内の通気性を保つために高強度コークスが必要とされている。高強度コークスを製造する手段としては、コークス炉に装入する石炭の充填密度を高めることが有効である。そこで、コークス炉に装入する原料として粉砕された粉状の石炭に、ブリケットマシンを用いて高密度に成型した成型炭を配合して炭化室に装入する方法が開発、実用化されている。
【0003】
石炭を成型すると石炭の粒子同士が近接する。このため、成型炭を乾留すると、粘結性に劣る石炭であっても石炭粒子同士が接着しやすくなり、得られるコークスの強度が向上する。しかしながら、コークス炉装入までの搬送過程で成型炭が粉化してしまうとコークス強度向上の効果が得られない。
【0004】
成型炭の粉化を抑制する技術として、特許文献1には、成型炭をスプレーコーティングすることでコンベアのジャンクションにて落下する際の粉化率を抑制する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−272692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術は、成型炭をスプレーコーティングしてコンベアのジャンクションにて落下する際の粉化率を低減する技術であるが、高さが10m以上にもなる石炭塔で落下する際の粉化を抑制できる技術ではない。本発明は、これら従来技術を解決するためになされたもので、その目的は、粉化を抑制しながら成型炭を投入できる石炭塔を提供すること、当該石炭塔を用いて装炭車に石炭を投入する石炭の投入方法、および、当該石炭塔に投入された石炭を用いてコークスを製造するコークスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題を解決する本発明の特徴は、以下の通りである。
(1)装炭車に成型炭を含む石炭を投入する石炭塔であって、前記石炭塔は、前記石炭を収容する石炭槽と、前記石炭を前記石炭槽に投入するコンベアと、を有し、前記石炭槽には複数の梁状構造物が設けられる、石炭塔。
(2)前記コンベアから前記石炭槽に投入される前記石炭の落下高さが4m以内となるように前記複数の梁状構造物が設けられる、(1)に記載の石炭塔。
(3)一の梁状構造物から他の梁状構造物までの前記石炭の落下高さが4m以内となるように前記複数の梁状構造物が設けられる、(1)または(2)に記載の石炭塔。
(4)前記石炭槽の底部までの前記石炭の落下高さが4m以内となるように前記複数の梁状構造物が設けられる(1)から(3)の何れか1つに記載の石炭塔。
(5)(1)から(4)の何れか1つに記載の石炭塔を用いて前記装炭車に石炭を投入する石炭の投入方法であって、前記石炭は、成型炭を5質量%以上100質量%以下で含有し、成型炭が100質量%ではない場合における前記石炭の残部は粒径10mm未満の粉炭である、石炭の投入方法。
(6)前記石炭の90質量%以上が成型炭である場合に、前記石炭槽に投入された前記成型炭の粉化率は20質量%以下である、(5)に記載の石炭の投入方法。
(7)(1)から(4)の何れか1つに記載の石炭塔に投入した前記石炭を、前記装炭車を用いてコークス炉の炭化室に装炭し、前記炭化室で乾留してコークスを製造するコークスの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の石炭塔を用いることで石炭に含まれる成型炭の粉化を抑制できる。粉化が抑制された成型炭を含む石炭を用いることで強度の高いコークスが製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る石炭塔10を含むコークス炉60の断面模式図である。
【
図3】落下高さと粉化率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を発明の実施形態の一例を通じて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る石炭塔10を含むコークス炉60の断面模式図である。本実施形態に係る石炭塔10は、石炭槽12と、複数の梁状構造物14、梁状構造物16とを有する。石炭槽12は、装炭車20に投入する石炭50を収容する。石炭50は、2つのコンベア30によって石炭槽12に投入される。本実施形態において、石炭50は、成型炭を0質量%より多く100質量%以下の範囲内で含有し、成型炭が100質量%ではない場合における石炭50の残部は粒径10mm未満の粉炭である。成型炭は、例えば、体積が36ccであるマセック型の成型炭である。本実施形態において、粒径10mm未満の粉炭とは、目開き10mmの篩で篩下に篩分けられる石炭を意味する。
【0011】
石炭槽12の底部には、複数の排出口18が設けられている。側壁19は、複数の排出口18を仕切るように、排出口18の間に設けられている。側壁19は、排出口18側に向かうに従って低くなるように傾斜している。側壁19の傾斜角度は、石炭50の安息角よりも大きい角度にすることが好ましい。このような角度で側壁19を設けることで、石炭槽12に投入された石炭50は、排出口18に向かって側壁19を滑り落ちるので、排出口18から排出されない石炭50の量を少なくできる。
【0012】
石炭槽12には、コークス炉の炉団方向すなわち装炭車が移動する方向に延在し、石炭槽12の側面同士をつなぐ梁状構造物14と梁状構造物16が複数設けられている。石炭槽12に投入された石炭50は、複数の梁状構造物14、梁状構造物16に衝突しながら落下して石炭槽12に収容される。石炭槽12に収容された石炭50は、排出口18から装炭車20に投入され、装炭車20の装入ホッパ22に収容される。装炭車20に収容された石炭50は、装入ホッパ22の下方に設けられた切出し装置24によって切出され、装炭孔42を通じて炭化室40に装炭される。炭化室40に装炭された石炭50は、炭化室40にて乾留されてコークスとなる。このようにして、本実施形態に係る石炭塔10を含むコークス炉60を用いてコークスが製造される。
【0013】
図2は、石炭槽12の断面模式図である。
図2を用いて、石炭槽12に設けられた梁状構造物14および梁状構造物16について説明する。石炭槽12には、4つの梁状構造物14を1組とする梁状構造物群15と、5つの梁状構造物16を1組とする梁状構造物群17とが高さ方向の位置を変えて設けられている。
【0014】
図2に示した例において、コンベア30から石炭槽12の底部までの高さは12mである。本実施形態に係る石炭塔10では、コンベア30からの落下高さが4mとなる位置に梁状構造物14が設けられている。ここで、コンベア30からの落下高さが4mとなる位置とは、コンベア30の上面から梁状構造物14の上面までの高さが4mとなる位置である。
【0015】
梁状構造物16は、梁状構造物14からの落下高さが4mとなる位置であって、石炭槽12の底部までの落下高さが4mとなる位置に設けられている。ここで、梁状構造物14からの落下高さが4mとなる位置とは、梁状構造物14の上面から、梁状構造物16の上面までの距離が4mとなる位置である。また、石炭槽12の底部までの高さが4mとなる位置とは、石炭槽12の底部から、梁状構造物16の上面までの距離が4mとなる位置である。本実施形態の石炭塔10において、梁状構造物14を一の梁状構造物とすると、梁状構造物16は、他の梁状構造物になる。梁状構造物群15および梁状構造物群17では、各群を構成する梁状構造物14および梁状構造物16のそれぞれの上面高さが等しくなるように、梁状構造物14および梁状構造物16が設けられている。
【0016】
梁状構造物14および梁状構造物16の、コークス炉炉長方向(すなわち、一つの炭化室における複数の装入孔が並んでいる方向)での位置は、それぞれの梁状構造物に上から石炭が落ちてくる落下軌跡上に設ければよい。簡易的には、上部のコンベアもしくは梁状構造物の端の位置の直下を含む位置の下部に梁状構造物を設ければよい。
【0017】
また、梁状構造物14および梁状構造物16のそれぞれの上面は、石炭や成型炭がその上に堆積するように、例えば0.2〜3m程度の幅を有する構造(例えば平面状)であることが好ましい。梁状構造物の上面に石炭や成型炭が堆積していれば、上部から梁状構造物の上面に落下したときに成型炭に加えられる衝撃がより緩和される。
【0018】
本実施形態に係る石炭塔10には、コンベア30の上面からの落下高さが4m以内になるように梁状構造物14が設けられ、さらに、梁状構造物14からの落下高さが4m以内になり、梁状構造物16から石炭塔10の底面までの高さが4m以内になるように、梁状構造物16が設けられている。このように梁状構造物14、梁状構造物16を設けることで、石炭塔10に投入された成型炭は、4mより高い距離を落下する前に梁状構造物14、梁状構造物16に衝突するので、成型炭の落下高さが4mより高くなることがない。
【0019】
次に、成型炭の落下高さについて説明する。落下高さに対する成型炭の粉化を評価するために、体積が36ccの成型炭6kgを所定高さから落下させ、落下後の成型炭の粉化率を測定した。落下後の成型炭の粉化率は、落下させた成型炭を目開き15mmの篩を用いて篩分けし、篩下となった15mm未満の成型炭の質量を測定し、当該質量と、下記(1)式を用いて算出した。
【0020】
(15mm未満の成型炭の質量/落下させた成型炭の全質量)×100・・・(1)
【0021】
同様の検討を、強度を変えた成型炭を用いて実施した。成型炭の強度は、成型時に添加するバインダーの量を変えることで調整した。成型炭の強度として圧潰強度を用いた。圧潰強度は、圧縮試験機を用いて成型炭を鉛直方向に10mm/分の速さで圧縮し、圧潰するまでに測定される強度の最大値を12個の成型炭を用いて12回測定し、測定された12個の測定値のうち、最大値と最小値を除く10個の測定値を平均することで算出した。この結果を
図3に示す。
【0022】
図3は、落下高さと粉化率との関係を示すグラフである。
図3の縦軸は粉化率(質量%)であり、横軸は落下高さ(m)である。
図3に示すように、落下高さと粉化率との関係を圧潰強度が0.6kN/個、1.2kN/個および1.7kN/個である成型炭を用いて確認した。この結果、圧潰強度に関わらず、4m以下の落下高さでは落下高さに対する粉化率の上昇割合は小さくなり、4mより高い落下高さでは落下高さに対する粉化率の上昇割合が大きくなった。したがって、例えば、成型炭を8m落下させる場合には、1回で8mの高さを落下させるよりも4mの高さの落下を2回行う方が、落下後の成型炭の粉化率が小さくなることがわかる。
【0023】
このように、成型炭を石炭槽12に投入するにあたり、落下高さを4mより高くすると落下後の成型炭の粉化率の上昇割合が大きくなるので、本実施形態に係る石炭塔10では、コンベア30からの落下高さが4mになるように梁状構造物14を設けている。このような位置に梁状構造物14を設けることで、コンベア30から石炭槽12に投入された成型炭の粉化を抑制できる。
【0024】
また、本実施形態に係る石炭塔10では、梁状構造物14からの落下高さが4mになるように、且つ、梁状構造物16から石炭槽12の底部までの落下高さが4mになるように梁状構造物16をさらに設けている。このような位置に梁状構造物16を設けることで、石炭塔10に投入した成型炭の粉化をさらに抑制できる。
【0025】
なお、本実施形態に係る石炭塔10では、石炭50の落下高さが4mとなる位置に梁状構造物14および梁状構造物16を設けた例を示したが、これに限らない。
図3の結果から、落下高さを4m以内にすれば落下高さを4mより高くした場合よりも成型炭の粉化を抑制できるので、石炭50の落下高さが4m以内となる位置に針状構造物14および梁状構造物16を設ければよい。また、
図3の結果から、落下高さを4m以内にすれば落下高さを4mより高くした場合よりも成型炭の粉化を抑制できるので、石炭塔10に、落下高さが4m以内となるような落下が少なくとも1回は発生するように梁状構造物を設ければ、梁状構造物を有さない、もしくは、4m以内の落下が1回も発生しないように梁状構造物を設けた場合よりも成型炭の粉化を抑制できる。
【0026】
装入される石炭中の成型炭の含有率が高い場合、成型炭の粉化量が増えると、得られるコークスの強度が低下するという問題だけでなく、コークスの炭化室からの押出し性が悪化するという問題が発生することがある。例えば、成型炭を90質量%以上含む石炭を石炭塔を経由して炭化室に装入する場合に成型炭の粉化量が増えると、炭化室内の成型炭の間の空隙に粉状の石炭が侵入する量が多くなって嵩密度が上がるので、乾留後のコークスの収縮が不十分となり、コークスを炭化室から押し出す際の負荷が大きくなることがある。発明者らは、石炭塔内における成型炭の粉化率が20質量%以下であれば、コークス押出し時の押出し負荷が過大になりにくいことを知見した。したがって、石炭の90質量%以上が成型炭である場合に、本実施形態に係る石炭塔10を用いて成型炭の粉化率が20質量%以下になるように石炭槽12に投入することが好ましく、これにより、押出し性の悪化を抑制し、円滑にコークスを製造することができる。
【実施例1】
【0027】
次に、成型炭を含む石炭を石炭塔に投入した実施例1を説明する。実施例1では、成型炭と粉炭とを含む石炭をコンベアから石炭槽に投入した。その後、石炭を石炭槽の底部から採取して、石炭の粉化率を測定した。実施例1で用いた成型炭の体積は36ccであり、圧潰強度は0.6kN/個であり、粉炭は粒径が10mm未満の粉炭である。また、全石炭投入量に対する成型炭の含有割合は20質量%である。成型炭の製造に用いた石炭の品位および粉炭の品位を表1に示す。なお、成型炭は、logMF≦2.0となる非微粘結炭を60質量%含む。
【0028】
【表1】
【0029】
落下後の成型炭の粉化率は、落下させた石炭を目開き15mmの篩を用いて篩分けし、篩上となった15mm以上の成型炭質量を測定し、当該質量を用いて石炭における15mm以上の成型炭含有割合を算出した。そして、投入後における15mm以上の成型炭含有割合と投入時の成型炭の含有割合との差から成型炭の粉化率を算出した。
【0030】
石炭塔に投入した石炭を装炭車に投入し、さらに、装炭車からコークス炉の炭化室に装炭し、乾留してコークスを製造し、当該コークスのドラム強度を測定した。梁状構造物の設置条件、成型炭の粉化率およびコークス強度の測定結果を表2に示す。表2における石炭塔の高さは、コンベアの上面から石炭槽の下部までの高さである。また、梁1〜梁5の列に示した値は、コンベアの上面から梁1〜5の上面までの落下高さである。
【0031】
【表2】
【0032】
表2に示すように、石炭の落下高さが4m以内になるように梁状構造物を設けた発明例1、2の成型炭粉化率は、梁状構造物を設けていない比較例2の成型炭粉化率の1/2程度になった。また、石炭の落下高さが4m以下になるように梁状構造物梁状構造物を設けた発明例1、2の成型炭粉化率は、石炭の落下高さが6mになるように梁状構造物を設けた比較例2の成型炭粉化率より顕著に小さくなった。これらの結果から、石炭の落下高さが4m以下になるように石炭槽に梁状構造物を設けることで、成型炭の粉化を抑制できることが確認された。
【0033】
また、このように粉化が抑制された発明例1、2の成型炭を用いて製造されたコークスの強度は、粉化が抑制されていない比較例1、2の成型炭を用いて製造されたコークスの強度よりも高くなった。成型炭の粉化が抑制されたことで成型炭に含まれる非微粘結炭の放出も抑制され、これにより、発明例1、2のコークス強度が比較例1、2のコークス強度より高くなったと考えられる。このような成型炭の粉化抑制により得られる効果は、炭化室に装入する石炭中に成型炭を少しでも含んでいれば発揮されるが、成型炭の含有量が少ない場合には効果が小さいので、石炭は成型炭を5質量%以上含むことが好ましい。
【実施例2】
【0034】
次に、成型炭のみを石炭塔に投入した実施例2を説明する。実施例2では、成型炭のみを含む石炭をコンベアから石炭槽に投入した。その後、石炭を石炭槽の底部から採取して、石炭の粉化率を測定した。実施例2で用いた成型炭の体積は36ccであり、圧潰強度は1.7kN/個である。成型炭の製造に用いた石炭の品位は、上記表1と同じであり、logMF≦2.0となる非微粘結炭を60質量%含む。
【0035】
落下後の成型炭の粉化率は、落下させた石炭を目開き15mmの篩を用いて篩分けし、篩上となった15mm以上の成型炭質量を測定し、当該質量を用いて成型炭の粉化率を算出した。その後、石炭塔から石炭を装炭車に投入し、装炭車からコークス炉の炭化室に石炭を装炭、乾留してコークスを製造した。その後、製造されたコークスを炭化室から押出しラムを用いて押し出し、コークスのドラム強度を測定した。梁状構造物の設置条件、成型炭の粉化率、コークス強度および押出電流の測定結果を表3に示す。表3における石炭塔の高さは、コンベアの上面から石炭槽の下部までの高さである。梁1、梁2の列に示した値は、コンベアの上面から梁1、梁2の上面までの落下高さである。また、押出電流とは、押出しラムを駆動するのに要した電流値であり、各押出しにおける最大電流値を炉団で平均した平均値を、同じ炉団を用いて成型炭を含まない粉炭のみを装入した時に同様に測定された押出しにおける最大電流値の平均値を100%としたときの比率(%)で表したものである。
【0036】
【表3】
【0037】
表3に示すように、石炭の落下高さが4m以内になるように梁状構造物を設けた発明例11の成型炭粉化率は、梁状構造物を設けていない比較例11の成型炭粉化率より顕著に小さくなった。また、粉化が抑制された発明例11の成型炭を用いて製造されたコークスの強度は、粉化が抑制されていない比較例11の成型炭を用いて製造されたコークスの強度よりも高くなった。
【0038】
さらに、発明例11の成型炭を用いて製造されたコークスは、比較例11の成型炭を用いて製造されたコークスよりも炭化室から押し出す押出しラム駆動モータの電流値が小さくなっており、押出し時の押出し抵抗が小さくなったことがわかる。発明例11では、石炭塔での粉化率が14.1質量%に抑制されたので、成型炭の間の空隙を粉炭が埋めてしまう度合いが小さく、装入嵩密度が小さく維持されるので、コークスの収縮量が大きくなり、この結果、押出し時の押出し抵抗が小さくなったと考えられる。一方、比較例11では石炭塔における成型炭の粉化率が25.1質量%となった。発明例11に比較して粉率が高くなったため、炭化室内の嵩密度が上昇しコークス収縮量が大きくならず、比較例11では押出し時の押出し抵抗が高くなったと考えられる。また、発明例11では粉化が抑制されたことにより、比較例11よりもコークス強度が高くなった。
【符号の説明】
【0039】
10 石炭塔
12 石炭槽
14 梁状構造物
15 梁状構造物群
16 梁状構造物
17 梁状構造物群
18 排出口
19 側壁
20 装炭車
22 装入ホッパ
24 切出し装置
30 コンベア
40 炭化室
42 装炭孔
50 石炭
60 コークス炉