(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
光海底中継システムは、陸上の基地局が備える伝送装置から送信された信号光を、光中継器を用いて中継し、対向する陸上の基地局が備える伝送装置において受信することによってデジタルデータを伝送する。光海底中継システムは、データを搬送する信号光を伝播させる光ファイバと、この信号光を中継する光中継器を備える。光中継器は光ファイバの経路中に設置され、減衰した信号光を光アンプにより増幅して再送出する。
【0003】
このような光海底中継システムの一例が特許文献1に記載されている。
図9Aに、特許文献1に記載された関連する光海底中継システムの構成を模式的に示す。関連する光海底中継システム5000は、伝送装置がそれぞれ設置された対向する陸上局5001、5002、光ファイバ5100、および光中継器5200により構成されている。同図では、陸上局5001と陸上局5002を、光中継器1、光中継器2、・・・、光中継器n−1、および光中継器nからなるn台の光中継器5200を介して、二本の光ファイバ経路5101、5102で接続した場合を示す。ここで、光ファイバ経路5101は、陸上局5001から陸上局5002へ向かう経路(UP側経路)である。また、光ファイバ経路5102は、陸上局5002から陸上局5001へ向かう経路(DOWN側経路)である。
【0004】
図10に、光中継器5200に含まれる個々の関連する光中継器500の構成を示す。光中継器500は、エルビウムドープファイバ511、512、複数のポンプレーザ520、ポンプレーザを駆動するため駆動回路530、および複数の光部品(図示せず)を備える。
【0005】
ここで、エルビウムドープファイバ511、512は、光海底中継システム内を伝送される信号光を直接増幅する。複数のポンプレーザ520は、エルビウムドープファイバ511、512をポンプ光によって励起し光増幅作用を発生させる。すなわち、エルビウムドープファイバ511、512とポンプレーザ520がエルビウム添加ファイバ増幅器(Erbium−Doped Fiber Amplifier:EDFA)を構成している。なお、光部品には、信号光とポンプ光やポンプ光同士を合波、分波する3dBカップラーなどが含まれる。
【0006】
図10に示したように、二個のポンプレーザ520が出力するポンプ光を3dBカップラー等により合波および分波する。そして、それぞれのポンプ光(励起光)によってUP側経路(光ファイバ経路5101)のエルビウムドープファイバ511とDOWN側経路(光ファイバ経路5102)のエルビウムドープファイバ512を励起する構成としている。
【0007】
ここで、ポンプレーザ520を複数の冗長構成としているのは、ポンプレーザ520を構成するレーザ素子(Laser Diode:LD)の信頼性が比較的低いからである。冗長構成とすることにより、レーザ素子の一部が故障しても信号光伝送品質への影響がシステムの設計上許容できる範囲内とすることができる。すなわち、このような構成としたことにより、2個のレーザ素子の一方が故障し場合であっても、エルビウムドープファイバ511、512の励起パワーは完全にはゼロにならず、光通信が遮断されるのを防ぐことができる。このように、関連する光海底中継システム5000では、各光中継器500が備える励起光源を2個のレーザ素子で冗長化した構成としている。
図9Bに、関連する光海底中継システム5000の冗長構成を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図9Aに示した関連する光海底中継システム5000において、光中継器2が備える一方の励起用のレーザ素子(LD)が故障し励起光出力がゼロとなった場合を考える。この場合、光通信が完全に遮断されることはないが、光中継器2の光出力は低下する。
【0010】
このとき、UP側経路(光ファイバ経路5101)では、光中継器2のUP側経路の出力が低下することにより光中継器3のUP側経路の入力が低下する。しかし、光中継器が備えるエルビウム添加ファイバ増幅器(EDFA)は通常、光入力パワーが変動しても光出力パワーがあまり変動しない飽和領域を動作点としているので、セルフヒーリング効果により光中継器3のUP側経路の出力はあまり変動しない。そのため、光中継器3から後段に位置する光中継器には、光中継器2の故障による影響はおよばない。ここで、セルフヒーリング効果とは、光中継器が備える光増幅器を飽和領域で動作させることにより、初段の光増幅器の入力パワーが多少低下しても、いくつかの光中継器を通過した後には光中継器の出力パワーを定格値に復帰させることができる効果をいう。
【0011】
また、DOWN側経路(光ファイバ経路5102)についても同様に、光中継器1のDOWN側経路の出力はあまり変動せず、光中継器2の故障による影響は陸上局5001にはおよばない。
【0012】
次に、光中継器1が備える一方の励起用のレーザ素子(LD)が故障した場合について考える。この場合、UP側経路については上述した場合と同様に、光中継器2から後段に位置する光中継器には、光中継器1の故障による影響はおよばない。一方、DOWN側経路においては、光中継器1がDOWN側経路における最終段の光中継器であるので、上述したセルフヒーリング効果は得られない。そのため、陸上局5001への光入力パワーが低下し、通信品質に影響をおよぼすことになる。
【0013】
このように、関連する光中継システムにおいては、光通信経路の最終段に位置する光中継器が備える励起用光源の出力が低下すると、通信品質が劣化する、という問題があった。
【0014】
本発明の目的は、上述した課題である、関連する光中継システムにおいては、光通信経路の最終段に位置する光中継器が備える励起用光源の出力が低下すると、通信品質が劣化する、という課題を解決する光中継器、光通信システム、および光通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の光中継器は、送信局から第1の光ファイバを介して送信された光信号を受信する入力インターフェースと、受信した光信号を増幅する光増幅手段と、光増幅手段に励起光を出力する励起手段と、増幅された光信号を第2の光ファイバを介して外部の光中継器に出力する出力インターフェースと、を備え、光増幅手段の増幅率は、外部の光中継器が有する光増幅手段の増幅率よりも大きいことを特徴とする。
【0016】
本発明の光通信システムは、光信号を第1の光ファイバに出力する送信局と、第1の光ファイバからの光信号を増幅する第1の光中継器と、を備え、第1の中継器は、第1の光ファイバからの光信号を受信する入力インターフェースと、受信した光信号を増幅する光増幅手段と、光増幅手段に励起光を出力する励起手段と、増幅された光信号を第2の光ファイバを介して第2の光中継器に出力する出力インターフェースと、を有し、光増幅手段の増幅率は、第2の光中継器が有する光増幅手段の増幅率よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
本発明の光通信方法は、送信局から第1の光ファイバを介して送信された光信号を受信するステップと、受信した光信号を光増幅するステップと、光信号の光増幅に使用される励起光を出力するステップと、光増幅された光信号を第2の光ファイバを介して外部の光中継器に出力するステップと、を含み、受信した光信号を光増幅する割合である増幅率は、外部の光中継器において受信した光信号の増幅率よりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の光中継器、光通信システム、および光通信方法によれば、光通信経路の最終段に位置する光中継器が備える励起用光源の出力が低下した場合であっても、通信品質の劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
〔第1の実施形態〕
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光中継システム100の構成を示すブロック図である。本実施形態に係る光中継システム100は、送信局1001から受信局1002に信号光を導波するように構成された光通信経路110と、光通信経路110の複数個所に位置している複数の光中継器120を有する。光通信経路110は、典型的には光ファイバによって構成される。
【0022】
複数の光中継器120に含まれる個々の光中継器は、信号光を増幅するように構成された光アンプと、光アンプを励起するように構成された励起レーザを備える。光アンプは、典型的にはエルビウム添加光ファイバを備えている。
【0023】
ここで、複数の光中継器120には、受信局1002に接続される第1の光中継器121、送信局1001に接続される第2の光中継器122、および第1の光中継器121と第2の光中継器122との間に位置する第3の光中継器123が含まれる。そして、第1の光中継器121が備える励起レーザの個数が、第3の光中継器123が備える励起レーザの個数よりも大きい。
【0024】
送信局1001から受信局1002に向かって光通信経路110を導波する信号光は、受信局1002に接続される第1の光中継器121を通過した後に他の光中継器を経由することなく受信局1002に到達する。そのため、上述したセルフヒーリング効果を得ることができない。
【0025】
ここで、本実施形態に係る光中継システム100においては、第1の光中継器121が備える励起レーザの個数が、第3の光中継器123が備える励起レーザの個数よりも大きい構成としている。すなわち、複数の光中継器120のうち、受信局1002に直結する第1の光中継器121の光アンプ用の励起レーザの冗長度を、第3の光中継器123における冗長度よりも高くする構成としている。
【0026】
このような構成としたことにより、本実施形態の光中継システム100によれば、光通信経路の最終段に位置する光中継器(第1の光中継器121)が備える励起レーザ(励起用光源)の出力が低下した場合であっても、通信品質の劣化を抑制することができる。
【0027】
なお、送信局1001に接続される第2の光中継器122が備える励起レーザの個数は、第1の光中継器121が備える励起レーザの個数および第3の光中継器123が備える励起レーザの個数のいずれかと等しい構成とすることができる。
【0028】
次に、本実施形態による光中継方法について説明する。
【0029】
本実施形態の光中継方法においては、送信局から受信局に信号光を導波する光通信経路の複数個所において信号光を増幅する。この複数個所には、受信局に隣接する第1の地点と、送信局に隣接する第2の地点と、第1の地点と第2の地点との間に位置する第3の地点とが含まれる。そして、第1の地点において信号光を増幅するための光パワーの大きさを、第3の地点において信号光を増幅するための光パワーの大きさよりも大きくする。
【0030】
以上説明したように、本実施形態の光中継システム100および光中継方法によれば、光通信経路の最終段に位置する光中継器が備える励起用光源の出力が低下した場合であっても、通信品質の劣化を抑制することができる。
【0031】
〔第2の実施形態〕
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図2Aは、本実施形態による光中継システム2000の構成を示すブロック図である。
【0032】
本実施形態に係る光中継システム2000は、送信局から受信局に信号光を導波するように構成された光通信経路2100と、光通信経路2100の複数個所に位置している複数の光中継局2200を有する。
【0033】
送信局は、第1の基地局2001に備えられた第1の送信局と、第2の基地局2002に備えられた第2の送信局を含む。また、受信局は、第1の基地局2001に備えられた第1の受信局と、第2の基地局2002に備えられた第2の受信局を含む。
【0034】
光通信経路2100は、第1の送信局から第2の受信局に信号光を導波するように構成された第1の光通信経路2101と、第2の送信局から第1の受信局に信号光を導波するように構成された第2の光通信経路2102を含む。すなわち、第1の光通信経路2101は、第1の基地局2001から第2の基地局2002へ向かう経路(UP側経路)である。また、第2の光通信経路2102は、第2の基地局2002から第1の基地局2001へ向かう経路(DOWN側経路)である。なお、光通信経路2100は、典型的には光ファイバによって構成される。
【0035】
複数の光中継局2200には、第1の中継局と第2の中継局が含まれる。第1の中継局は、第1の受信局(第1の基地局2001)に接続される第1の光中継器と、第1の送信局(第1の基地局2001)に接続される第2の光中継器を備える。第2の中継局は、第2の受信局(第2の基地局2002)に接続される第1の光中継器と、第2の送信局(第2の基地局2002)に接続される第2の光中継器を備える。
図2Aでは、第1の基地局2001と第2の基地局2002を、光中継局1、光中継局2、・・・、光中継局n−1、および光中継局nからなるn台の光中継局2200を介して、第1の光通信経路2101と第2の光通信経路2102で接続した場合を示す。この場合、光中継局1が第1の中継局であり、光中継局nが第2の中継局である。
【0036】
第1の中継局(光中継局1)および第2の中継局(光中継局n)はそれぞれ、第1の光アンプと第2の光アンプ、および各光アンプを励起するように構成された励起レーザを備える。各光アンプは、典型的にはエルビウム添加光ファイバを備えている。第1の光アンプは、第1の光通信経路2101(UP側経路)を伝播する信号光を増幅するように構成されている。また、第2の光アンプは、第2の光通信経路2102(DOWN側経路)を伝播する信号光を増幅するように構成されている。
【0037】
ここで、本実施形態に係る光中継システム2000においては、第1の光中継器が備える励起レーザの個数が、第1の光中継器と第2の光中継器との間に位置する第3の光中継器が備える励起レーザの個数よりも大きい構成としている。すなわち、複数の光中継局2200のうち、第1の基地局2001および第2の基地局2002に直結する光中継局1および光中継局nにおける光アンプ用の励起レーザの冗長度を、第3の光中継器を備える他の光中継局における冗長度よりも高くする構成としている。
【0038】
図2Bに、本実施形態による光中継システム2000の冗長構成を示す。同図には、第1の基地局2001および第2の基地局2002に接続される光中継局1および光中継局nにおいてだけ冗長数を「4」とし、他の光中継局2、3、・・・、n−1においては冗長数を「2」とした例を示す。このように、本実施形態による光中継システム2000においては、複数の光中継局2200における励起レーザの冗長数が異なるものを含む構成とした。これに対して、
図9Bに示した関連する光海底中継システム5000においては、各光中継器における励起レーザの冗長数は全て等しい構成としている点が、本実施形態による光中継システム2000と異なる。
【0039】
図3に、光中継局1および光中継局nとしての光中継局200の構成を示す。
【0040】
光中継局200は、第1の光通信経路2101(UP側経路)に光アンプとしてのEDFA(Erbium−Doped Fiber Amplifier)211と、第2の光通信経路2102(DOWN側経路)に光アンプとしてのEDFA212を備える。そして、EDFA211およびEDFA212の励起レーザとして、4個のレーザ素子(Laser Diode:LD)221、222、223、224を用いる構成としている。
【0041】
ここで、レーザ素子221の出力光とレーザ素子222の出力光を偏波合成カップラー231で合波し、レーザ素子223の出力光とレーザ素子224の出力光を偏波合成カップラー232で合波したのちに、さらに3dBカップラー240で合波する構成とした。このような構成としたことにより、1個のレーザ素子が故障した場合における、光アンプ励起用の出力光の低下量を小さくすることができる。この理由は以下の通りである。すなわち、偏波合成カップラー231、232で合波したのちに、3dBカップラー240を介さずにそれぞれ第1の光通信経路2101および第2の光通信経路2102の光アンプを励起する構成とした場合、1個のレーザ素子が故障すると出力光は半分になる。それに対して、本実施形態の光中継局200におけるように、3dBカップラー240によって出力光をさらに合波し分波する構成とした場合、出力光は3/4となり低下量を小さくすることができる。
【0042】
3dBカップラー240で分波された一方の出力光は、WDM(Wavelength Division Multiplexing)カップラー251によってEDFA211に挿入される。同様に、3dBカップラー240で分波された他方の出力光は、WDMカップラー252によってEDFA212に挿入される。このように、本実施形態の光中継局200は、EDFA211(第1の光アンプ)を励起するように構成されたレーザ素子(励起レーザ)の個数と、EDFA212(第2の光アンプ)を励起するように構成されたレーザ素子(励起レーザ)の個数が等しい構成とした。
【0043】
なお、本実施形態による光中継局200は、
図3に示すように、アイソレーター261、262、263、264、および光フィルター271、272をさらに備えた構成とすることができる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態の光中継システム2000は、セルフヒーリング効果が得られない光中継局1および光中継局n(光中継局200)において、励起レーザの冗長数を増加させた構成としている。このような構成としたことにより、光中継局1および光中継局nにおいて励起レーザが故障した場合であっても、故障による影響を低減することができる。すなわち、本実施形態の光中継システム2000によれば、光通信経路の最終段に位置する光中継器が備える励起用光源の出力が低下した場合であっても、通信品質の劣化を抑制することができる。
【0045】
〔第3の実施形態〕
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0046】
本実施形態に係る光中継システムのブロック構成は、
図2Aに示した第2の実施形態による光中継システム2000のブロック構成と同様である。本実施形態に係る光中継システムと第2の実施形態による光中継システム2000は、光中継局の冗長構成が異なる。
図4に、本実施形態による光中継システムの冗長構成を示す。
【0047】
第2の実施形態による光中継システム2000においては、
図2Bに示したように、光中継局1および光中継局nにおける励起レーザの冗長数が、第1の光通信経路2101(UP側経路)および第2の光通信経路2102(DOWN側経路)で等しい構成とした。
【0048】
それに対して、本実施形態による光中継システムにおいては、
図4に示すように、中継局1および光中継局nにおける励起レーザの冗長数が、UP側経路とDOWN側経路で異なる構成とした。具体的には、光中継局1では、DOWN側経路(第2の光通信経路)においてのみ励起レーザの冗長数を増大し、光中継局nでは、UP側経路(第1の光通信経路)においてのみ励起レーザの冗長数を増大した構成とした。
すなわち、光中継局1(第1の中継局)は、DOWN側経路の光アンプ(第2の光アンプ)を励起するように構成された励起レーザの個数が、UP側経路の光アンプ(第1の光アンプ)を励起するように構成された励起レーザの個数よりも大きい構成とした。また、光中継局n(第2の中継局)は、UP側経路の光アンプ(第1の光アンプ)を励起するように構成された励起レーザの個数が、DOWN側経路の光アンプ(第2の光アンプ)を励起するように構成された励起レーザの個数よりも大きい構成とした。
【0049】
図5に、光中継局nとしての光中継局300の構成を示す。
【0050】
光中継局300は、第1の光通信経路2101(UP側経路)のEDFA211および第2の光通信経路2102(DOWN側経路)のEDFA212を励起するように構成されたレーザ素子321およびレーザ素子322を備える。これに加えて、光中継局300は、第1の光通信経路2101(UP側経路)のEDFA211だけをWDMカップラー351を介して後方から励起するレーザ素子323を備えた構成とした。このような構成により、UP側経路においてだけ励起レーザの冗長数を「3」としている。
【0051】
なお、光中継局1の構成は、上述した光中継局nとしての光中継局300の構成において、第1の光通信経路2101(UP側経路)と第2の光通信経路2102(DOWN側経路)を入れ替えた同様の構成とすることができる。
【0052】
以上説明したように、本実施形態による光中継システムにおいては、セルフヒーリング効果が得られない光中継局1のDOWN側経路、および光中継局nのUP側経路においてのみ、励起レーザの冗長数を増大させた構成としている。そのため、励起レーザの個数を必要最小限とすることができる。すなわち、本実施形態の光中継システムによれば、光中継局の装置構成を簡略化し、コストの低減を図ることができる。また、上述した第2の実施形態による光中継システム2000と同様に、光通信経路の最終段に位置する光中継器が備える励起用光源の出力が低下した場合であっても、通信品質の劣化を抑制することができる。
【0053】
次に、光中継局300の動作について説明する。
図5において、レーザ素子321〜323、3dBカップラー240、およびWDMカップラー252の近傍に記載した数字は、同箇所における励起光の相対的な光パワーを示す。
【0054】
図6に、光中継局300においてEDFA211およびEDFA212に注入される励起光パワーを示す。同図には、光中継局300が通常の動作状態、すなわちレーザ素子321〜323(LD1〜LD3)がいずれも非故障状態である場合と、LD1〜LD3のいずれかが故障状態にあり光出力がゼロである場合における励起光パワーの相対値をそれぞれ示す。
【0055】
通常の動作状態においては、LD1、LD2、LD3は、それぞれ「1」、「1」、「0.5」の光パワーで発光しているものとする。この場合、EDFA211およびEDFA212には、LD1〜LD3の出力を合計した光パワー「1.5」、「1」の励起光がそれぞれ注入される。すなわち、光中継局n(第2の中継局)としての光中継局300は、励起レーザ(LD1〜LD3)の動作時において、EDFA211(第1の光アンプ)を励起する光パワーの大きさが、EDFA212(第2の光アンプ)を励起する光パワーの大きさよりも大きくなるように構成されている。なお、光中継局1(第1の中継局)においては、これとは逆に、励起レーザの動作時において、EDFA212(第2の光アンプ)を励起する光パワーの大きさが、EDFA211(第1の光アンプ)を励起する光パワーの大きさよりも大きくなるように構成される。
【0056】
一方、LD1、LD2、LD3のいずれか一個が故障した場合、EDFA211への励起光パワーは「1」まで低下する。また、EDFA212への励起光パワーは、LD1およびLD2のいずれか一個が故障した場合、「0.5」まで低下する。なお、レーザ素子323(LD3)はEDFA212には接続していないため、レーザ素子323(LD3)の故障の有無がEDFA212の励起光パワーに影響することはない。
【0057】
図6からわかるように、レーザ素子321〜323(LD1〜LD3)のうち、いずれのレーザ素子(LD)が故障しても、EDFA211およびEDFA212に対する励起光パワーの低下量は等しい。具体的には、
図6に示した例では、通常の動作状態におけるEDFA211およびEDFA212に注入される励起光パワーがそれぞれ「1.5」、「1」である。それに対して、LD1〜LD3のうち、いずれのレーザ素子が故障しても、EDFA211およびEDFA212に対する励起光パワーはそれぞれ、「1」、「0.5」となり、励起光パワーの低下量はいずれも「0.5」で等しい。
【0058】
また、上述したように、光中継局300は、EDFA211に対する励起レーザの冗長数が、EDFA212に対する励起レーザの冗長数よりも大きい構成としている。そのため、レーザ素子(LD1〜LD3)の故障時において、セルフヒーリング効果が得られないUP側経路のEDFA211に対する励起光パワーが低下する割合(1/3)は、EDFA212に対する励起光パワーが低下する割合(1/2)に比べて小さくなる。その結果、レーザ素子の故障時に未故障のレーザ素子の光出力を増大させることなく、レーザ素子の故障が光中継システムに及ぼす影響を低減することができる。
【0059】
以上説明したように、本実施形態による光中継システムにおいては、セルフヒーリング効果が得られない光中継局1のDOWN側経路、および光中継局nのUP側経路においてのみ、励起レーザの冗長数を増大させた構成としている。そのため、励起レーザの個数を必要最小限とすることができる。すなわち、本実施形態の光中継システムによれば、光中継局の装置構成を簡略化し、コストの低減を図ることができる。また、上述した第2の実施形態による光中継システム2000と同様に、光通信経路の最終段に位置する光中継器が備える励起用光源の出力が低下した場合であっても、通信品質の劣化を抑制することができる。
【0060】
〔第4の実施形態〕
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0061】
本実施形態に係る光中継システムのブロック構成および冗長構成は、第3の実施形態による光中継システムにおけるものと同様である。本実施形態に係る光中継システムにおいては、光中継システムに含まれる光中継局の構成が、第3の実施形態による光中継局300の構成と異なる。
【0062】
図7に、光中継局nとしての光中継局400の構成を示す。
【0063】
光中継局400は、3dBカップラー240の出力光のうち第1の光通信経路2101(UP側経路)に向かう出力光を、カップラー441によって分岐する構成とした。そして、分岐した一方の出力光を、第2の光通信経路2102(DOWN側経路)のEDFA212にWDMカップラー452を介して後方から入射する構成とした。その他の構成は、第3の実施形態による光中継局300の構成と同様である。
【0064】
なお、光中継局1の構成は、上述した光中継局nとしての光中継局400の構成において、第1の光通信経路2101(UP側経路)と第2の光通信経路2102(DOWN側経路)を入れ替えた同様の構成とすることができる。
【0065】
次に、光中継局400の動作について説明する。
図7において、レーザ素子321〜323、3dBカップラー240、カップラー441、およびWDMカップラー252、452の近傍に記載した数字は、同箇所における励起光の相対的な光パワーを示す。
【0066】
図8に、光中継局400においてEDFA211およびEDFA212に注入される励起光パワーを示す。同図には、光中継局400が通常の動作状態、すなわちレーザ素子321〜323(LD1〜LD3)がいずれも非故障状態である場合と、LD1〜LD3のいずれかが故障状態にあり光出力がゼロである場合における励起光パワーの相対値をそれぞれ示す。
【0067】
第3の実施形態による光中継局300では、通常の動作状態(非故障状態)においてEDFA211およびEDFA212に入射する励起光パワーはそれぞれ異なる(
図6の最上行を参照)。
【0068】
これに対して、本実施形態による光中継局400においては、
図7に示した上述の構成とすることにより、EDFA211およびEDFA212に入射する励起光パワーを等しくすることができる(
図8の最上行を参照)。すなわち、光中継局n(第2の中継局)としての光中継局400は、励起レーザ(LD1〜LD3)の動作時において、EDFA211(第1の光アンプ)を励起する光パワーの大きさと、EDFA212(第2の光アンプ)を励起する光パワーの大きさが等しくなるように構成されている。
【0069】
なお、光中継局1(第1の中継局)も同様にして、励起レーザ(LD1〜LD3)の動作時において、EDFA211(第1の光アンプ)を励起する光パワーの大きさと、EDFA212(第2の光アンプ)を励起する光パワーの大きさが等しくなるように構成することができる。
【0070】
このような構成としたことにより、本実施形態の光中継局400によれば、EDFA211とEDFA212とにおいて、それらの仕様を大きく変更する必要がなくなるので、設計が容易になるという効果が得られる。
【0071】
また、本実施形態による光中継システムにおいては、セルフヒーリング効果が得られない光中継局1のDOWN側経路、および光中継局nのUP側経路においてのみ、励起レーザの冗長数を増大させた構成としている。そのため、励起レーザの個数を必要最小限とすることができる。すなわち、本実施形態の光中継システムによれば、光中継局の装置構成を簡略化し、コストの低減を図ることができる。また、上述した第2の実施形態による光中継システム2000と同様に、光通信経路の最終段に位置する光中継器が備える励起用光源の出力が低下した場合であっても、通信品質の劣化を抑制することができる。
【0072】
本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることはいうまでもない。