特許第6965983号(P6965983)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6965983蓄電デバイス、電気機器及び電極端子部品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6965983
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】蓄電デバイス、電気機器及び電極端子部品
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/557 20210101AFI20211028BHJP
   H01M 50/178 20210101ALI20211028BHJP
   H01M 10/04 20060101ALI20211028BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20211028BHJP
   H01G 11/74 20130101ALI20211028BHJP
   H01G 2/10 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   H01M50/557
   H01M50/178
   H01M10/04 Z
   H01G11/80
   H01G11/74
   H01G2/10 300
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-209200(P2020-209200)
(22)【出願日】2020年12月17日
【審査請求日】2021年4月5日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 淳
【審査官】 松本 陶子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−162491(JP,A)
【文献】 特開2011−086834(JP,A)
【文献】 特開2002−056839(JP,A)
【文献】 特開2013−196930(JP,A)
【文献】 特開2016−024989(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2016−0134331(KR,A)
【文献】 特開2014−179193(JP,A)
【文献】 特開2000−285904(JP,A)
【文献】 特開2004−362935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/543−50/567
H01M 50/172−50/181
H01M 10/04
H01G 11/80
H01G 11/74
H01G 2/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電セルとそれを覆う外装部材とを備えた蓄電デバイスに用いられる電極端子部品であって、
前記外装部材から突出するように前記蓄電セルに接続される板状で金属製の電極端子と、前記外装部材と前記電極端子の両方にヒートシール性を有し、かつ、前記電極端子の表裏面及び両側面の所定範囲を取り囲むように形成された樹脂製のヒートシール部材と、を有し、
前記電極端子の両側面の所定範囲及び前記電極端子の表裏面の所定範囲にそれぞれ複数の凹部及び凸部が形成されており、
前記電極端子の先端から前記蓄電セルに対する接続位置への方向を電極長さ方向とし、その電極長さ方向と電極幅方向と電極厚さ方向とを互いに直交する3方向とするとき、
前記電極端子の両側面に形成されている凹部及び凸部は、前記電極厚み方向に延びて前記電極長さ方向に連続し、前記電極幅方向のサイズが0.1mm以上であるとともに、
前記電極端子の表裏面に形成されている凹部及び凸部は、前記電極幅方向に延びて前記電極長さ方向に連続し、前記電極厚さ方向のサイズが0.1mm以上であることを特徴とする電極端子部品。
【請求項2】
前記電極端子の両側面の所定範囲に形成されている凹部又は凸部が、0.1mm以上のピッチで複数形成されていることを特徴とする請求項1記載の電極端子部品。
【請求項3】
前記電極端子の表裏面の所定範囲に形成されている凹部又は凸部が、0.1mm以上のピッチで複数形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の電極端子部品。
【請求項4】
電極厚さが0.15〜10mmであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電極端子部品。
【請求項5】
電極幅が0.5〜2000mmであることを特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の電極端子部品。
【請求項6】
蓄電セルと、その蓄電セルを覆う外装部材と、請求項1〜のいずれか1項に記載の電極端子部品と、を備えたことを特徴とする蓄電デバイス。
【請求項7】
請求項記載の蓄電デバイスを備えたことを特徴とする電気機器。
【請求項8】
動力源としてのモーターと、そのモーターに電力を供給する請求項記載の蓄電デバイスと、を搭載した電動自動車又は電気移動体であることを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電デバイス,電気機器,電極端子部品及びその製造方法に関するものであり、例えば、リチウムイオン電池,キャパシター等の蓄電デバイスと、蓄電デバイスを搭載した電動自動車,電動飛行機,電動船,蓄電設備,スマートフォン等の電気機器と、蓄電デバイス用の電極端子部品及びその製造方法と、に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境対策や省資源化等の観点から、駆動力の少なくとも一部をモーターが供給する電動自動車が注目されている。この電動自動車には、電気自動車(EV),ハイブリッド自動車(HEV),プラグインハイブリッド自動車(PHEV)等がある。電気自動車はモーターのみを動力源とし、ハイブリッド自動車及びプラグインハイブリッド自動車はモーター及びエンジンを動力源とする。したがって電動自動車には、モーターに電力を供給する蓄電デバイスが必要になる。
【0003】
電動自動車に搭載される蓄電デバイスの一例が、特許文献1で提案されている。その蓄電デバイスは、複数の平板状の蓄電セルが外装部材で覆われた構成を有する薄型の二次電池である。蓄電セル内には、セパレータを介して正極板と負極板とが対向配置されており、正極板と負極板との間には電解液が充填されている(なお、全固体電池や全樹脂電池の場合は電解液は無い。)。また、外装部材は金属箔及び熱接着性樹脂層を有する積層体2つで構成されており、2つの外装部材の外周縁でのヒートシールによって蓄電セルが封止されている。
【0004】
封止されている蓄電セルの正極板及び負極板には、電極端子がそれぞれ外装部材から突出するように溶接・接続されており、その電極端子を通して蓄電デバイスの充放電が行われる。つまり、蓄電デバイスの外装部材がヒートシールされた部分のうち、電極端子が存在する部分では、電極端子が熱接着性樹脂層に挟持された状態でヒートシールされている。電極端子と熱接着性樹脂層とは異なった種類の材料で構成されているため、電極端子と熱接着性樹脂層との間には十分な密着性が必要である。このため、電極端子と熱接着性樹脂層との間にはこれらの密着性を高めるために、電極端子と熱接着性樹脂層の両方にヒートシール性を有するタブフィルムが通常用いられる。
【0005】
図17に、タブフィルム32付きの電極端子部品30の作製例を示す。電極端子部品30を作製する場合、まず金属からなる平板状の電極端子31を2枚のタブフィルム32の間に挟み(図17(A))、上下方向から金属製のシールヘッド33で加熱・加圧(例えば、190℃,1MPa)する。タブフィルム32は溶融して電極端子31に付着した状態となる(図17(B))。次に、外装部材34でタブフィルム32を部分的に覆い(図17(C))、上下方向から金属製のシールバー35で加熱・加圧することにより、外装部材34の外周縁でのヒートシールを行う。このヒートシールにより蓄電セルが封止され(図17(D))、蓄電セルの電極端子部分Tにおける密封性が確保される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3719235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電極端子の断面積は、充放電性能,長期信頼性,長期寿命,低劣化性,冷却性,電動自動車の走行性能等の特性に大きな影響を及ぼす因子となる。そして、蓄電デバイスの多くの性能は、電極端子の断面積に比例して向上する。一般的な電極端子の厚さは0.05〜0.1mmであるが、電極端子が厚いほど断面積が大きくなるため、電極端子を更に厚くすることが求められている。
【0008】
しかし、電極端子を厚くすると、蓄電セルを外装部材で覆って外装部材の外周縁をヒートシールしても、図17(B)〜(D)に示すように、電極端子31の両側においてタブフィルム32との間に(電極厚さの段差に起因する)隙間Sが生じ易くなる。このため、ヒートシール難易度が高くなってしまう。つまり、電極端子31が厚いほど、その側面においてタブフィルム32の樹脂の溶融により隙間Sを埋めることが難しくなるため、大きな隙間Sが発生し易くなる。
【0009】
しかも、タブフィルム32に対する加熱・加圧や外装部材34に対する加熱・加圧によって、電極端子31からタブフィルム32を引き剥がす力(図17(D)中の矢印m0)が発生するため、隙間Sは発生し易くなる。ヒートシール時に隙間Sが生じていなくても、タブフィルム32の経時的な劣化によって、隙間Sが発生したり増大したりする傾向となる。したがって、電極端子31が厚いほど、電極端子部分Tにおける密封性を良くすることが難しくなり、例えば、隙間Sから蓄電セル内の電解液が漏れる可能性も高くなる。
【0010】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、高い性能を保持しながら電極端子部分での密封性が良好な蓄電デバイスと、その蓄電デバイスを搭載した電気機器と、その蓄電デバイスに用いる電極端子部品及びその製造方法と、を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、第1の発明の電極端子部品は、蓄電セルとそれを覆う外装部材とを備えた蓄電デバイスに用いられる電極端子部品であって、
前記外装部材から突出するように前記蓄電セルに接続される板状で金属製の電極端子と、前記外装部材と前記電極端子の両方にヒートシール性を有し、かつ、前記電極端子の表裏面及び両側面の所定範囲を取り囲むように形成された樹脂製のヒートシール部材と、を有し、
前記電極端子の両側面の所定範囲に凹部又は凸部が形成されており、
前記電極端子の先端から前記蓄電セルに対する接続位置への方向を電極長さ方向とし、その電極長さ方向と電極幅方向と電極厚さ方向とを互いに直交する3方向とするとき、
前記電極端子の両側面に形成されている凹部又は凸部の電極幅方向のサイズが0.1mm以上であることを特徴とする。
【0012】
第2の発明の電極端子部品は、上記第1の発明において、前記電極端子の両側面の所定範囲に形成されている凹部又は凸部が、0.1mm以上のピッチで複数形成されていることを特徴とする。
【0013】
第3の発明の電極端子部品は、上記第1又は第2の発明において、前記電極端子の表裏面の所定範囲に凹部又は凸部が形成されており、
前記電極端子の表裏面に形成されている凹部又は凸部の電極厚さ方向のサイズが0.1mm以上であることを特徴とする。
【0014】
第4の発明の電極端子部品は、上記第3の発明において、前記電極端子の表裏面の所定範囲に形成されている凹部又は凸部が、0.1mm以上のピッチで複数形成されていることを特徴とする。
【0015】
第5の発明の電極端子部品は、上記第1〜第4のいずれか1つの発明において、電極厚さが0.15〜10mmであることを特徴とする。
【0016】
第6の発明の電極端子部品は、上記第1〜第5のいずれか1つの発明において、電極幅が0.5〜2000mmであることを特徴とする。
【0017】
第7の発明の蓄電デバイスは、蓄電セルと、その蓄電セルを覆う外装部材と、上記第1〜第6のいずれか1つの発明に係る電極端子部品と、を備えたことを特徴とする。
【0018】
第8の発明の電気機器は、上記第7の発明に係る蓄電デバイスを備えたことを特徴とする。
【0019】
第9の発明の電気機器は、動力源としてのモーターと、そのモーターに電力を供給する上記第7の発明に係る蓄電デバイスと、を搭載した電動自動車又は電気移動体であることを特徴とする。
【0020】
第10の発明の製造方法は、上記第1〜第6のいずれか1つの発明に係る電極端子部品の製造方法であって、
前記電極端子を金型内にセットし、前記電極端子の表裏面及び両側面の所定範囲が樹脂で取り囲まれるように前記金型内に樹脂を注入することにより、前記ヒートシール部材をインサートインジェクション成形により形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、電極端子の両側面に適正なサイズの凹部又は凸部が形成されているため、電極端子の断面積が大きくても、電極端子の両側においてヒートシール部材との間に隙間が生じるのを抑えることができる。そのような隙間が生じたとしても、その隙間から蓄電セル内の電解液が漏れるのを防止することができる。したがって、高い性能を保持しながら電極端子部分での密封性を良好にすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】電極端子部品及び蓄電デバイスの一実施の形態を示す平面図。
図2図1(B)のL1−L1’線断面図。
図3図1(B)のM1−M1’線断面図。
図4】電極端子部品及び蓄電デバイスの他の実施の形態を示す平面図。
図5図4(B)のL2−L2’線断面図。
図6図4(B)のM2−M2’線断面図。
図7図1(B)の蓄電デバイスにおける液漏れの抑制を説明するための平面図。
図8図4(B)の蓄電デバイスにおける液漏れの抑制を説明するための平面図。
図9】両側面に凹凸構造が形成された電極端子の具体例を示す平面図。
図10】表裏面及び両側面に凹凸構造が形成された電極端子の具体例を示す平面図。
図11】電極端子部品のインサートインジェクション成形の様子を模式的に示す断面図。
図12】電極端子部品の他の実施の形態を示す要部断面図。
図13】電極端子部品の異なる2つのタイプの蓄電デバイスを示す平面図。
図14】電動自動車の第1の実施の形態を示す模式図。
図15】電動自動車の第2の実施の形態を示す模式図。
図16】電動自動車の第3の実施の形態を示す模式図。
図17】従来のタブフィルム付き電極端子部品の作製例を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る蓄電デバイス,電極端子部品,電気機器等を、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施の形態や各具体例等の相互で同一の部分や相当する部分には同一の符号を付して重複説明を適宜省略する。
【0024】
図1の平面図に、電極端子部品1C及び蓄電デバイス10Cの実施の形態を示し、図4の平面図に、電極端子部品1D及び蓄電デバイス10Dの実施の形態を示す。蓄電デバイス10Cは、電極端子部品1C,蓄電セル2,外装部材3等を備えており、蓄電デバイス10Dは、電極端子部品1D,蓄電セル2,外装部材3等を備えている。図1(A)は外装部材3で覆われる前の蓄電セル2に電極端子部品1Cが取り付けられた状態を示しており、図1(B)はその蓄電セル2が外装部材3で覆われて蓄電デバイス10Cが構成された状態を示している。また、図4(A)は外装部材3で覆われる前の蓄電セル2に電極端子部品1Dが取り付けられた状態を示しており、図4(B)はその蓄電セル2が外装部材3で覆われて蓄電デバイス10Dが構成された状態を示している。
【0025】
図2及び図3に、電極端子部分Tにおける電極端子部品1Cと外装部材3とのヒートシール状態を示す。図2図1(B)のL1−L1’線断面図であり、図3図1(B)のM1−M1’線断面図である。また、図5及び図6に、電極端子部分Tにおける電極端子部品1Dと外装部材3とのヒートシール状態を示す。図5図4(B)のL2−L2’線断面図であり、図6図4(B)のM2−M2’線断面図である。
【0026】
蓄電デバイス10C,10Dは、平板状の蓄電セル2(ここでは単数で示すが複数でもよい。)が外装部材3で覆われた構成を有する薄型の二次電池である。蓄電セル2内の構造は図示を省略するが、蓄電セル2内には、セパレータを介して正極板と負極板とが対向配置されており、正極板と負極板との間には電解液(電解液に限らず、固体電解質,ゲル電解質等の電解質を用いてもよい。)が充填されている。外装部材3は、例えば、金属箔及び熱接着性樹脂層を有する積層体2つで構成されており、2つの外装部材3の外周縁でのヒートシールによって蓄電セル2が封止されている。封止されている蓄電セル2の正極板及び負極板には、後で説明する電極端子1c,1dが接続されており、その電極端子1c,1dを通して蓄電デバイス10C,10Dの充放電が行われる。
【0027】
蓄電デバイス10C,10Dの具体例としては、リチウムイオン電池,リチウムイオンポリマー電池,リチウムイオン全固体電池,鉛蓄電池,ニッケル水素蓄電池,ニッケルカドミウム蓄電池,ニッケル鉄蓄電池,ニッケル亜鉛蓄電池,酸化銀亜鉛蓄電池,金属空気電池,多価カチオン電池等の電池類;電解コンデンサー、電気二重層キャパシター、リチウムイオンキャパシター等のキャパシター類等が挙げられる。また、蓄電デバイス10C,10Dが搭載される電気機器としては、電動自動車,電動飛行機,電動船,電動衛星,蓄電設備,スマートフォン,パソコン,カメラ,ロボット,3C製品等が挙げられる。
【0028】
電極端子部品1Cは(図1図3)、金属製の電極端子1cと、樹脂製のヒートシール部材1bと、を有する構成になっており、蓄電セル2の両端部に配置されている。電極端子部品1Dも同様であり(図4図6)、金属製の電極端子1dと、樹脂製のヒートシール部材1bと、を有する構成になっており、蓄電セル2の両端部に配置されている。電極端子1c,1dは、外装部材3から突出するように、例えば溶接等によって蓄電セル2に接続されている。
【0029】
なお、各図示の蓄電デバイス10C,10D等における方向は、電極端子1c,1dを基準としている。つまり、電極端子1c,1dの先端から蓄電セル2に対する接続位置への方向を電極長さ方向xとしており、その電極長さ方向xと電極幅方向yと電極厚さ方向zとを互いに直交する3方向としている。そして、各方向(x,y,z)のサイズ(Dx,Dy,Dz)は(電極長さ,電極幅,電極厚さ)であり、後述する他の実施の形態に関しても同様である。
【0030】
電極端子1c,1dは板状を成しており、そのy−z断面形状(図2図5)は長方形になっている。蓄電デバイス10C,10Dの多くの性能(充放電性能,長期信頼性,長期寿命,低劣化性,冷却性,電動自動車の走行性能等)は、電極端子1c,1dのy−z断面積に比例して向上する。例えば、電極端子1c,1dのy−z断面積が大きいほど、充放電の高速化が可能になり発熱も少なくなる。電極端子1c,1dのy−z断面積は電極端子1c,1dが厚いほど大きくなるため、電極厚さDzは一般的な電極端子の厚さよりも大きく設定されている。また、電極端子1c,1dのy−z断面積は電極端子1cの横幅(電極幅Dy)が長いほど大きくなるが、蓄電デバイス10C,10Dのサイズとして一般的な電池をカバーできるサイズ(例えば、スマートフォン用電池から車載用電池までのサイズ)を想定することにより、電極幅Dyは適正な範囲に設定されている。
【0031】
具体的には、図2図5において、電極幅Dyは0.5〜2000mmとなっており(例えば10〜1000mm)、電極厚さDzは0.1mmよりも大きくなっている(例えば0.11mm〜10mm)。例えば、車載用の蓄電デバイス10C,10D(例えば最大面のサイズ:100×500mmの車載用電池)を想定した場合、前述の観点から、電極幅Dyは30〜500mmが好ましく、30〜120mmが更に好ましい。電極厚さDzは0.15〜10mmが好ましく、0.2〜5mmが更に好ましく、0.4〜3mmが更に好ましい。
【0032】
ヒートシール部材1bは、外装部材3と電極端子1c,1dの両方にヒートシール性を有しており、かつ、電極端子1c,1dの表裏面7a,7b及び両側面8a,8bの所定範囲を取り囲むように形成されている(図2図3図5図6)。ヒートシール部材1bとしては、前述したタブフィルム32(図17)のような樹脂製のフィルムやシート、インサートインジェクション成形により形成された樹脂製の被覆帯等が挙げられる。
【0033】
ヒートシール部材1bとしてタブフィルム32(図17)を用いると、前述したように隙間Sが生じ易くなる。インサートインジェクション成形によって樹脂製の被覆帯を形成し、その被覆帯をヒートシール部材1bとして用いた場合でも、ヒートシール時の外装部材3に対する加熱・加圧によって、電極端子1c,1dからヒートシール部材1bを引き剥がす力(図17(D)中の矢印m0)が発生するため、隙間Sが生じる可能性はある。ヒートシール時に隙間Sが生じていなくても、ヒートシール部材1bの経時的な劣化によって、隙間Sが発生したり増大したりする傾向となる。したがって、電極端子1c,1dが厚いほど、電極端子部分Tにおける密封性を良くすることが難しくなり、例えば、隙間Sから蓄電セル2内の電解液が漏れる可能性が高くなる。
【0034】
電極端子1c,1dは、隙間Sの発生・増大や電解液の漏れ(液漏れ)を抑制するための特殊な面形状を有している。電極端子1cでは、表裏面7a,7bが平面状になっているが、両側面8a,8bには凹凸構造5が形成されている(図1図3)。電極端子1dでは、両側面8a,8bに凹凸構造5が形成されており、表裏面7a,7bに凹凸構造6が形成されている(図4図6)。
【0035】
上記液漏れ等の抑制効果を、図7図8の平面図を用いて説明する。図7(A),図8(A)は、図1(B),図4(B)の各要部拡大図であり、蓄電デバイス10C,10Dの電極端子部分Tにおける電極端子部品1C,1Dと外装部材3とのヒートシール状態をそれぞれ示している。図7(B),図8(B)は、表裏面7a,7bと両側面8a,8bが平面状の電極端子1nを有する電極端子部品1Nの要部拡大図であり、蓄電デバイス10Nの電極端子部分Tにおける電極端子部品1Nと外装部材3とのヒートシール状態を示している。
【0036】
蓄電セル2を封止する際のヒートシールは、蓄電デバイス10C,10D,10Nのいずれにおいても、外装部材3の外周縁に設定されているシール領域ARにおいて行われる。電極端子部分Tにおけるシール領域ARは、ヒートシール部材1bよりも電極長さ方向xのサイズが小さくなっているため、電極端子1c,1dと外装部材3とのヒートシールはヒートシール部材1bを介した部分のみで行われることになる(図2等)。電極長さ方向xのサイズを、例えば、ヒートシール部材1bで7mmとし、シール領域ARで5mmとすると、電極長さ方向xの両端に1mmずつ余裕を持たせてヒートシールを行うことができる。したがって、ヒートシール部材1bを介したヒートシールを確実に行うことができる。また、ヒートシール部材1bを外装部材3からわずかに突出させており、これにより、電極端子1c,1dとヒートシール部材1bとの境界部分を保護することができる。
【0037】
蓄電デバイス10C,10Dでは(図7(A),図8(A))、板状の電極端子1c,1dの両側面8a,8bに、凹部5a及び凸部5bが0.1mm以上のピッチp(図3図6)で複数形成(溝加工)されており、その複数の凹部5a及び凸部5bで凹凸構造5が構成されている。さらに蓄電デバイス10Dでは(図8(A))、電極端子1dの表裏面7a,7bに、凹部6a及び凸部6bが0.1mm以上のピッチq(図6)で複数形成(溝加工)されており、その複数の凹部6a及び凸部6bで凹凸構造6が構成されている。凹部5a及び凸部5bは電極厚さ方向zに沿って長い直線状に形成されており、凹部6a及び凸部6bは電極幅方向yに沿って長い直線状に形成されている。つまり、凹凸構造5,6は、電極長さ方向xに対して非平行な平面(つまり、傾斜した平面)からなる凹部5a,6a及び凸部5b,6bでそれぞれ構成されている。
【0038】
電極端子1c,1dの両側面8a,8bに形成されている凹部5a及び凸部5bの電極幅方向yのサイズδは0.1mm以上であり(図2図5)、電極端子1dの表裏面7a,7bに形成されている凹部6a及び凸部6bの電極厚さ方向zのサイズΔは0.1mm以上である(図5)。なお、凹部5aの電極幅方向yのサイズδと凹部6aの電極厚さ方向zのサイズΔは凹部5a,6aの深さであり、凸部5bの電極幅方向yのサイズδと凸部6bの電極厚さ方向zのサイズΔは凸部5b,6bの高さである。
【0039】
電極端子1c,1dの材料としては、アルミニウム(Al),銅(Cu),ニッケル(Ni),ステンレス(Sus),スズ(Sn),チタン(Ti)が挙げられ、単体でもよく、クラッド材でもよい。電極端子1c,1dの形状加工(凹部5a,6a及び凸部5b,6bの溝加工等)には、機械加工,圧延,エッチング,注型,サンドブラスト加工等のあらゆる方法を採用することが可能であり、加工方式を問わない。機械加工,エッチング処理,溶融注型式加工,プレス加工、それらの複合加工も採用可能であり、陽極酸化や酸アルカリエッチング、その他のあらゆるエッチング処理も採用可能である。また、電解・無電解Niによる各種メッキ,化成処理等の表面処理、その他のあらゆる処理を、電極端子1c,1dの形状加工の先に行ってもよく、後加工で行うようにしてもよい。
【0040】
蓄電デバイス10C,10D,10Nのいずれにおいても(図7図8)、電極端子部分T以外の部分での電解液の流れU0は、シール領域ARで止めることができる。しかし、蓄電デバイス10Nでは(図7(B),図8(B))、電解液の流れV1で示すように、隙間Sから蓄電セル2内の電解液が漏れる可能性がある。それに対して、蓄電デバイス10C,10Dでは(図7(A),図8(A))、電解液の流れU1を凹凸構造5によりシール領域ARで止めることができる。
【0041】
電極端子1c,1dの両側面8a,8bは、凹凸構造5によってヒートシール部材1bとの密着面積が大きくなっているため、強く安定した接着強度によってヒートシール部材1bから剥がれにくくなっている(アンカー効果)。結果として、隙間Sが発生しにくくなるため、シール領域ARで液漏れを防止することができる。もし隙間Sが発生したとしても、凹凸構造5によって電解液の流れU1が妨げられると共に、隙間Sを通って電極端子部品1C,1D外へ電解液が漏れ出るまでの経路が凹凸構造5によって(ジグザグ状に)長くなっているため、液漏れは生じにくくなる。つまり、凹部5a及び凸部5bは、電極長さ方向xに対して非平行な面形状を有しているため、電解液の流れU1を妨げるように作用する。
【0042】
したがって、電極端子部品1C,1Dを用いることにより、蓄電デバイス10C,10Dの高性能化を図りながら、高い密封性・信頼性を簡便に得ることができる。また、電解液を含まない全固体電池等においても、隙間Sは蓄電デバイスの劣化原因となるため、凹凸構造5を有することにより高い密封性・信頼性を簡便に得ることができる。なお、蓄電セル2を封止する際のヒートシール時には、電極端子1c,1dの両側面8a,8b側からも加熱することが好ましい。その加熱により、ヒートシール部材1bを構成する樹脂が凹凸構造5に流れ込みやすくなるため、隙間Sが発生しにくくなると共に高いアンカー効果が得られる。したがって、電極端子1c,1dが厚いほど、両側面8a,8b側からの加熱は有効である。
【0043】
蓄電デバイス10C(図7(A))のように電極端子1cの表裏面7a,7bが平面状であっても、表裏面7a,7bとヒートシール部材1bとの間には、液漏れが生じるほどの隙間は発生しにくい。例えば、電極幅Dyが40〜50mm程度であれば、シール領域ARで液漏れを防止することができる。しかし、電極幅Dyが100mm以上、更には500mm以上であれば、図8(B)に示すように、電解液の流れV2をシール領域ARで止めることは難しくなって、液漏れが生じる可能性がある。また、電極長さDxが大きい場合、電解液の浸透性が高い場合、シール領域ARが電極長さ方向xに狭い場合等でも、液漏れは生じ易くなる。それに対して蓄電デバイス10Dでは(図8(A))、電解液の流れU2を凹凸構造6によりシール領域ARで止めることができる。
【0044】
凹凸構造6は、前述の凹凸構造5と同様に機能する。電極端子1dの表裏面7a,7bは、凹凸構造6によってヒートシール部材1bとの密着面積が大きくなっているため、強く安定した接着強度によってヒートシール部材1bから剥がれにくくなっている(アンカー効果)。結果として、表裏面7a,7bとヒートシール部材1bとの間に隙間が発生しにくくなるため、シール領域ARで液漏れを防止することができる。もし隙間が発生したとしても、凹凸構造6によって電解液の流れU2が妨げられると共に、隙間を通って電極端子部品1D外へ電解液が漏れ出るまでの経路が凹凸構造6によって(ジグザグ状に)長くなっているため、液漏れは生じにくくなる。つまり、凹部6a及び凸部6bは、電極長さ方向xに対して非平行な面形状を有しているため、電解液の流れU2を妨げるように作用する。
【0045】
したがって、電極端子部品1Dを用いることにより、蓄電デバイス10Dの高性能化を図りながら、高い密封性・信頼性を簡便に得ることができる。また、電解液を含まない全固体電池等においても、表裏面7a,7bとヒートシール部材1bとの間に隙間が発生すると蓄電デバイスの劣化原因となるため、凹凸構造6を有することにより高い密封性・信頼性を簡便に得ることができる。なお、蓄電デバイス10D(図6図8(A))では、凹凸構造5のピッチpと凹凸構造6のピッチqが同じになっているが、異なったピッチp,q(例えば、電解液の流れU1,U2に対する作用等に応じたピッチ)に設定してもよい。
【0046】
電極端子1dの表裏面7a,7bに形成されている凹部6a及び凸部6bは、電極幅Dyや電極長さDxが大きい場合の液漏れ防止に有効である。つまり、電極幅Dyが100mm以上、更には500mm以上であっても、液漏れを効果的に防止することができる。また図8(A)に示すように、電極端子部分Tにおいて凹部6a及び凸部6bとシール領域ARとが平行(電極幅方向yに沿って長い形状)に並んだ配置になっているため、表裏面7a,7bとヒートシール部材1bとをより一層密着した状態にすることができる。したがって、液漏れを効果的に防止することができる。
【0047】
両側面8a,8bに形成されている凹部5a及び凸部5bは、電極端子1c,1dに設けられているものに限らない。また、表裏面7a,7bに形成されている凹部6a及び凸部6bも、電極端子1dに設けられているものに限らない。図9の平面図に、両側面8a,8bに凹凸構造5が形成された電極端子1c,1eを示す。図10の平面図に、両側面8a,8bに凹凸構造5が形成され、表裏面7a,7bに凹凸構造6が形成された電極端子1d,1fを示す。
【0048】
図9(A)に示す電極端子1cや図9(B)に示す電極端子1eでは、表裏面7a,7bが平面からなっており、両側面8a,8bに凹部5a及び凸部5bが形成されている。図10(A)に示す電極端子1dでは、両側面8a,8bに凹部5a及び凸部5bが形成されており、表裏面7a,7bに凹部6a及び凸部6bが形成されている。図10(B)に示す電極端子1fでは、両側面8a,8bに凹部5a及び凸部5bが形成されており、表裏面7a,7bに凹部6a及び平面部6cが形成されている。
【0049】
図9中の(A)と(B)を比較すると分かるように、電極端子1cの凹部5a及び凸部5bが(三角柱の周面に相当する)平面で形成されているのに対し、電極端子1eの凹部5a及び凸部5bは波形の曲面で形成(アール付きの溝加工)されている。また、図10中の(A)と(B)を比較すると分かるように、電極端子1dの凹部6aが平面状の溝で形成されているのに対し、電極端子1fの凹部6aはディンプルで形成されている。つまり、電極端子1e,1fのように凹部5a,6a,凸部5b,6b,平面部6cを必要に応じた形状(例えば、電解液の流れU1,U2に対する作用等に応じた形状)に設定してもよく、複数種類の形状の組み合わせ(例えば、ディンプルと溝の組み合わせ)に設定してもよい。
【0050】
ヒートシール部材1bは樹脂で構成されているため、空気中の水蒸気がヒートシール部材1bを透過して蓄電セル2内に浸入する可能性がある。そこで、水蒸気に対するヒートシール部材1bのバリア性を高めるため、図3及び図6に示すように、電極端子1c,1dの先端側のヒートシール部材端部における電極厚さ方向zのヒートシール部材厚さD1は、蓄電セル2に対する接続位置側のヒートシール部材端部における電極厚さ方向zのヒートシール部材厚さD2よりも小さくなっている。
【0051】
例えば、車載用の蓄電デバイス10C,10D(例えば最大面のサイズ:100×500mmの車載用電池)を想定した場合、上記の観点から、電極端子1c,1dの先端側のヒートシール部材端部における電極厚さ方向zのヒートシール部材厚さD1は0.095〜4.75mmが好ましく、蓄電セル2に対する接続位置側のヒートシール部材端部における電極厚さ方向zのヒートシール部材厚さD2は0.1mm〜5.0mmが好ましい。また、電極端子1c,1dの先端側のヒートシール部材端部における電極厚さ方向zのヒートシール部材断面積と、蓄電セル2に対する接続位置側のヒートシール部材端部における電極厚さ方向zのヒートシール部材断面積と、の差が95%以下であることが好ましく、90%以下がより好ましく、85%以下がさらに好ましい。
【0052】
上記のように、先端側のヒートシール部材厚さD1を接続位置側のヒートシール部材厚さD2よりも小さくすると、ヒートシール部材1bの露出面積が小さくなるため、空気中の水蒸気に対するヒートシール部材1bのバリア性が高くなる。したがって、空気中の水蒸気がヒートシール部材1bを透過して蓄電セル2内に浸入するのを効果的に防止することができる。さらに、蓄電セル2内の電解液が揮発してヒートシール部材1bを透過するのも抑制することができる。
【0053】
外装部材3に対するヒートシール部材1bの接合面は、x−z断面(図3図6)において斜めに形成されており、y−z断面(図2図5)においても電極端子1c,1dの両側面8a,8b側で斜めに形成されている。このため、外装部材3とヒートシール部材1bとの密着性は高くなり、結果として、電極端子部分Tでの密封性が効果的に向上することになる。y−z断面(図2図5)に関しては、ヒートシール部材1bの側面厚dy(つまり、ヒートシール部材1bが電極端子1c,1dの側面から電極幅方向yに離れるに従って薄くなる部分の長さ)が1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることが更に好ましい。このようにヒートシール部材1bの側面厚dyを設定すると、側面厚dyが長いほど傾斜がなだらかとなり、電極厚さDzが0.4mm以上であっても、外装部材3の外周縁でのヒートシールが容易かつ良好になり、電極端子部分Tにおいて蓄電セル2を高い密封性で封止することが可能になる。
【0054】
次に、電極端子部品1Cの製造方法を説明する。図11(A)に、上述した電極端子部品1C(図1図3等)のインサートインジェクション成形の様子を模式的に示す(電極端子部品1Dを製造する場合も同様である。)。まず、金属からなる電極端子1cをインサートインジェクション用の金型4内にセットする。金型4には、電極端子1cの左右両側面8a,8b側にゲート4a(例えば、ゲート厚さ100μm程度)が設けられている。電極端子1cの表裏面7a,7b及び両側面8a,8bの所定範囲が樹脂で取り囲まれるように、ゲート4aから金型4内に樹脂を注入する(矢印m1)。射出成形された樹脂の硬化後、金型4から電極端子1cを取り出すと、インサートインジェクション成形によりヒートシール部材1bが形成された電極端子部品1Cが得られる(図1図3)。なお、採用するインサートインジェクション成形法としては、縦型方式,横型方式等を問わない。
【0055】
前述のタブフィルム32を用いた電極端子部品30の製造方法(図17)を採用した場合、電極端子31が厚いほど、その両側においてタブフィルム32との間に隙間S(図17(B)〜(D))が発生し易くなる。隙間Sが大きいほど、電極端子部分Tにおける密封性を良くすることが難しくなり、例えば、隙間Sから蓄電セル2内の電解液が漏れる可能性が高くなる。それに対し、図11(A)に示すインサートインジェクション成形法を採用した場合、ヒートシール部材1bを構成する樹脂が電極端子1cの側面側に回り込むため(図2)、電極厚さDzの段差に起因する隙間Sの発生が抑えられ、電極端子部分Tにおける密封性が良くなる。例えば、電極厚さDzが0.4mm以上であっても良好な密封性を得ることが可能となり、電極端子1c,1d,1e,1f(図9図10)やその他の複雑な形状を有する電極端子にも対応することが可能となる。
【0056】
インサートインジェクション成形法は、肉厚のヒートシール部材1bを形成するのに有効であり、電極端子1cの材質,表面処理,厚さ,長さ,複雑な形状を問わず、様々な電極端子に対してフレキシブルに対応することができ、かつ、搭載製品の密封性を十分に確保することができる。樹脂選定に関しても、熱溶融性があるものであれば、熱可塑性,熱硬化性のいずれの樹脂も選択可能であり、樹脂種類も自由に選択・組み合わせが可能である。例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)又はポリブチレンテレフタレート(PBT)とのブレンド(酸変性ポリプロピレン(PPA)、酸変性ポリエチレン(PEA)、PP又はPEの群から選ばれる樹脂の少なくとも1種と、PPS又はPBTとのブレンド等)等でヒートシール部材1bを構成してもよく、ガラス繊維を含む樹脂でヒートシール部材1bを構成してもよい。このようなブレンド樹脂やガラス繊維を用いることにより、ヒートシール部材1bの耐熱性,絶縁性,強度等を向上させることができる。
【0057】
前述したタブフィルム32(図17)は、例えば、ポリプロピレン(PP,融点:160℃)やポリエチレン(PE,融点:150℃)のような耐熱性の材料に使用が限られることが多いため、シール条件はタブの厚さが厚いほど難しいものとなる。それに対し、インサートインジェクション用の金型4を用いると、成形条件が容易になる。その結果、耐熱性の高いPPS(融点:260℃以上),PBT(融点:220℃以上)等の材料の使用が可能になって、選択可能な材料が多くなる。また、ガラス繊維を含めることも可能になる。したがって、耐熱性,耐収縮性,絶縁性,強度等の向上により、ヒートシール部材1bの最適化が可能となる。
【0058】
タブフィルム32付きの電極端子31(図17(B))に対してインサートインジェクション成形を行うことにより、タブフィルム32を内部に有するヒートシール部材1bを構成してもよい。例えば、図11(B)に示すように、タブフィルム32を金型4内に配置し、ゲート4aから金型4内に樹脂(例えば耐熱性樹脂)を注入して(矢印m1)、タブフィルム32と共に電極端子1cの表裏面7a,7b及び両側面8a,8bの所定範囲が樹脂で取り囲まれるようにする。このとき、タブフィルム32を予め金型4内に配置しておいてもよく、タブフィルム32が予め溶着された電極端子1cを金型4内に配置してもよい。射出成形された樹脂の硬化後、金型4からの取り出しを行うと、2層構造を有するヒートシール部材1bが形成された電極端子部品1Cが得られる。このように素材の異なるフィルムと成形樹脂とでヒートシール部材1bを多層化すれば、ヒートシール部材1bを多機能化(高耐熱性,高シール性等)することが可能である。
【0059】
異なる樹脂を用いた複数回のインサートインジェクション成形を行うことによっても、ヒートシール部材1bを多層化して前記と同様の多機能化を実現することは可能である。図12の要部断面図に、2層構造を有するヒートシール部材1bが形成された電極端子部品1E及び蓄電デバイス10Eを示す。図12(A)はy−z断面図であり、図12(B)はx−z断面である。この電極端子部品1Eを構成しているヒートシール部材1bは、第1ヒートシール部材1b1と第2ヒートシール部材1b2との2層からなっている。
【0060】
2層構造のヒートシール部材1bとしては、例えば、ポリフェニレンサルファイド(PPS)やポリブチレンテレフタレート(PBT)との積層からなるものが挙げられる。このような樹脂との組み合わせは、似たような特性の材料の組み合わせ(酸変性PEとPEの組み合わせ、酸変性PPとPPの組み合わせ)よりも、耐熱性等の向上に有効である。例えば、第1ヒートシール部材1b1を酸変性PP(融点140℃)で射出成形し、第2ヒートシール部材1b2をPBT(融点:220℃以上)で射出成形することにより、ヒートシール部材1bを多層化すれば、高い耐熱性等を有するヒートシール部材1bを構成することができる。
【0061】
図13の平面図に、電極端子部品1Cの異なる2つのタイプの蓄電デバイス10F,10Gを示す。図13(A)は、電極幅Dyの短い電極端子部品1Cを有する蓄電デバイス10Fを示しており、図13(B)は、電極幅Dyの長い電極端子部品1Cを有する蓄電デバイス10Gを示している。蓄電デバイス10F,10Gの蓄電セル2は、x−y平面に対して平行な長方形平面(最大面)を有している。蓄電セル2の側面のうち、蓄電デバイス10Fでは長方形平面の短辺側の側面に電極幅Dyの短い(例えば、Dy:30〜1000mm、好ましくは30〜300mm)電極端子1cが接続されており、蓄電デバイス10Gでは長方形平面の長辺側の側面に電極幅Dyの長い(例えば、Dy:50〜1000mm、好ましくは100〜700mm)電極端子1cが接続されている。なお、ヒートシール部材1bのサイズは各電極端子1cに応じたサイズに設定されている。
【0062】
搭載される電気機器に応じたタイプの蓄電デバイス10F,10Gを選択して用いることにより、電気機器の性能を最適化することができる。例えば蓄電デバイス10Gは、蓄電デバイス10Fと比べて電極端子1cのy−z断面積が大きいため、蓄電デバイス10Gを使用することによって、急速充放電,充放電効率向上,発熱・劣化の抑制,リサイクル(2次利用・3次利用等)の容易化等が可能になる。また、蓄電デバイス10Gのように電極幅Dyが長い場合、前述のタブフィルム32を用いた電極端子部品30の製造方法(図17)ではシールヘッド33が長くなり過ぎてシールが困難になるが、インサートインジェクション成形法では容易に対応可能である。
【0063】
図14に第1の実施の形態に係る電動自動車11Aを模式的に示し、図15に第2の実施の形態に係る電動自動車11Bを模式的に示し、図16に第3の実施の形態に係る電動自動車11Cを模式的に示す。図14図16において、(A)は電動自動車11A〜11Cのドア側外観を示す正面図であり、(B)は電動自動車11A〜11Cのルーフ側外観を示す上面図である。電動自動車11A,11B,11Cは、車輪12、その車輪12を駆動する動力源としてのモーター13、そのモーター13に電力を供給する蓄電デバイス10C〜10G等を搭載しており、ここでは、車載用の蓄電デバイス10C〜10Gとして、最大面(図1図4図12図13等におけるx−y平面に対して平行な長方形平面)のサイズが100×500mmの車載用電池を想定している。蓄電デバイス10C〜10Gは、電動自動車11A,11B,11Cの車体のフロア下に設置されているが、ルーフに設置してもよく、座席内に設置してもよい。
【0064】
電動自動車11A,11Bでは、その底面に対して蓄電デバイス10C〜10Gの最大面が垂直になるように、蓄電デバイス10C〜10Gが複数配置されている(縦型配置)。つまり、電動自動車11A,11Bでは、蓄電デバイス10C〜10Gを積み重ねずに電動自動車11A,11Bに設置して、所望の電力を供給することができる。したがって、積み重ねた際の加重による外装部材3の破損を防止することができる。結果として、蓄電デバイス10C〜10G及び電動自動車11A,11Bの信頼性が向上するという効果が得られる。
【0065】
電動自動車11Cでは、その底面に対して蓄電デバイス10C〜10Gの最大面が平行になるように、蓄電デバイス10C〜10Gが複数配置されている(横型配置)。したがって、蓄電デバイス10C〜10Gは電動自動車11Cの動きや振動に対する安定性が高いため、外装部材3の破損を防止することができる。結果として、蓄電デバイス10C〜10G及び電動自動車11Cの信頼性が向上するという効果が得られる。
【0066】
前述したように電極端子部品1C〜1Eによれば、電極端子1c,1d,1e,1fの両側面に適正なサイズの凹部5a又は凸部5bが形成されているため、電極端子1c,1d,1e,1fの断面積が大きくても、電極端子1c,1d,1e,1fの両側においてヒートシール部材1bとの間に隙間Sが生じるのを抑えることができる。そのような隙間Sが生じたとしても、その隙間Sから蓄電セル2内の電解液が漏れるのを防止することができる。したがって、高い性能を保持しながら電極端子部分Tでの密封性を良好にすることが可能である。そして、蓄電デバイス10C〜10Gを使用することによって、急速充放電,充放電効率向上,発熱・劣化の抑制,リサイクル(2次利用・3次利用等)の容易化等が可能になる。
【0067】
凹部5a,6aや凸部5b,6bの数や配置に制限はなく、単数でも複数でもよく、連続でも不連続でもよい。凹部5a,6aや凸部5b,6bの数が多いほど効果は大きくなり、凹部5a,6aや凸部5b,6bを連続的に形成すれば安定した効果を得ることができる。また、凹部5a,6aの深さ、凸部5b,6bの高さ、ピッチ等も制限はなく、0.001mm以上であれば、それらに応じた効果を得ることは可能である。ただし、一般的な蓄電デバイスのサイズを考慮した場合、凹部5a,6aの深さや凸部5b,6bの高さは0.1mm以上であることが好ましく、それらのピッチも0.1mm以上であることが好ましい。
【0068】
スマートフォン等に用いられる蓄電デバイスの電極厚さDzは0.05〜0.1mmであることが多く、自動車等に用いられる蓄電デバイスの電極厚さDzは0.2〜0.4mmであることが多い(例えば、Alの電極端子(正極)が0.4mm、CuのNiメッキ端子(負極)が0.2mmである。)。上記のように凹部5a,6aや凸部5b,6bを設定すれば、それらの電極厚さDzに対応可能であり、電極厚さDzが更に大きい場合(電極厚さDzが0.5〜3mm、更には10mm以上の場合)でも対応可能である。また、電極幅Dyが20〜70〜100mmの標準的な場合に対応可能であり、電極幅Dyが更に大きい場合(電極幅Dyが500〜1000mmの場合)でも対応可能である。
【符号の説明】
【0069】
1C,1D,1E,1N 電極端子部品
1c,1d,1e,1f,1n 電極端子
1b ヒートシール部材(タブフィルム,被覆帯)
1b1 第1ヒートシール部材
1b2 第2ヒートシール部材
2 蓄電セル
3 外装部材
4 金型
4a ゲート
5,6 凹凸構造
5a,6a 凹部
5b,6b 凸部
6c 平面部
7a 表面
7b 裏面
8a,8b 側面
p,q ピッチ
δ,Δ 凹部又は凸部のサイズ(凹部の深さ又は凸部の高さ)
6c 平面部
10C,10D,10E,10F,10G,10N 蓄電デバイス
11A,11B,11C 電動自動車(電気機器)
12 車輪
13 モーター
AR シール領域
S 隙間
T 電極端子部分
U0,U1,U2,V1,V2 電解液の流れ
x 電極長さ方向
y 電極幅方向
z 電極厚さ方向
Dx 電極長さ
Dy 電極幅
Dz 電極厚さ
D1 先端側のヒートシール部材厚さ
D2 接続位置側のヒートシール部材厚さ
dy ヒートシール部材の側面厚
30 電極端子部品
31 電極端子
32 タブフィルム
33 シールヘッド
34 外装部材
35 シールバー
【要約】
【課題】高い性能を保持しながら電極端子部分での密封性が良好な蓄電デバイスと、電気機器と、電極端子部品及びその製造方法とを提供する。
【解決手段】蓄電セル2とそれを覆う外装部材3を備える蓄電デバイス10Cに用いられる電極端子部品1Cは、板状で金属製の電極端子1cと樹脂製のヒートシール部材1bを有する。電極端子1cは外装部材3から突出するように蓄電セル2に接続され、ヒートシール部材1bは電極端子1cの表裏面及び両側面の所定範囲を取り囲むように形成される。電極端子1cの両側面の所定範囲には、複数の凹部5aと凸部5bで凹凸構造5が構成されている。凹部5aと凸部5bの電極幅方向yのサイズは0.1mm以上であり、凹部5aと凸部5bのピッチは0.1mm以上である。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17