(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がされているが、発明の範囲を以下に限定するものではない。なお、以下の実施形態の説明に用いる全図においては、特に理由がない限り、同様箇所には同一符号を付す。また、以下の実施形態において、同様の構成・動作に関しては繰り返しの説明を省略する場合がある。また、図面中の矢印の向きは、一例を示すものであり、ブロック間の信号の向きを限定するものではない。
【0018】
(第1の実施形態)
まず、本発明の第1の実施形態に係る傾斜等化装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態の傾斜等化装置(等化装置とも呼ぶ)は、海底ケーブルシステムを構成する複数の中継器の間の少なくともいずれかに挿入される。本実施形態の傾斜等化装置は、前段の中継器からの光信号を入力とし、入力された光信号の傾斜レベルを補償し、傾斜レベルが補償された光信号を後段の中継器に出力する。
【0019】
図1は、本実施形態の傾斜等化装置1の構成の一例を示す模式図である。
図1のように、傾斜等化装置1は、マトリクススイッチ11、イコライザ群13、制御部15、および可変減衰器17を備える。イコライザ群13は、複数のイコライザ130(等化器とも呼ぶ)によって構成される。
図1には、イコライザ130−1、イコライザ130−2、イコライザ130−3、・・・、イコライザ130−mによってイコライザ群13が構成される例を示す(mは、自然数)。
【0020】
マトリクススイッチ11は、多入力多出力の光マトリクススイッチである。マトリクススイッチ11は、複数の入力端子IN(第1端子とも呼ぶ)を含む入力端子群(第1端子群とも呼ぶ)と、複数の出力端子OUT(第2端子とも呼ぶ)を含む出力端子群(第2端子群とも呼ぶ)とを有する。
図1には、n個の入力端子IN−1〜nと、n個の出力端子OUT−1〜nとを含むマトリクススイッチ11を示す(nは、mよりも大きい自然数)。なお、マトリクススイッチ11の形態については、特に限定しない。
【0021】
複数の入力端子INのうち一つには、外部から光入力信号が入力される。
図1には、入力端子IN−1に光入力信号が入力される例を示す。例えば、入力端子IN−1には、前段の中継器からの光入力信号が入力される。これ以降、外部から光入力信号が入力される入力端子INのことを外部入力端子とも呼ぶ。
【0022】
複数の入力端子INのそれぞれは、制御部15からの制御信号に応じて、複数の出力端子OUTのいずれかに接続される。
図1には、入力端子IN−1が出力端子OUT−1に、入力端子IN−2が出力端子OUT−3に、入力端子IN−mが出力端子OUT−nにそれぞれ接続される例を示す。
【0023】
複数の出力端子OUTのうち一つからは、可変減衰器17に向けて光出力信号が出力される。
図1には、出力端子OUT−nから光出力信号が出力される例を示す。例えば、出力端子OUT−nから出力される光出力信号は、可変減衰器17において減衰されてから後段の中継器に向けて出力される。これ以降、光信号が出力される出力端子OUTのことを外部出力端子とも呼ぶ。
【0024】
外部出力端子以外の出力端子OUTは、イコライザ群13を構成する複数のイコライザ130のいずれかに接続される。
図1には、出力端子OUT−1がイコライザ130−1に、出力端子OUT−2がイコライザ130−2に、出力端子OUT−3がイコライザ130−3に、・・・、出力端子OUT−mがイコライザ130−mにそれぞれ接続される例を示す。
【0025】
イコライザ群13(等化器群とも呼ぶ)は、複数のイコライザ130によって構成される。
図1には、イコライザ群13は、イコライザ130−1、イコライザ130−2、イコライザ130−3、・・・、イコライザ130−mによって構成される例を示す。例えば、イコライザ群13を構成する複数のイコライザ130は、入力された光信号を互いに異なる傾斜レベルに調整する。また、例えば、イコライザ群13を構成する複数のイコライザ130のうち少なくとも一組は、入力された光信号を互いに同じ傾斜レベルに調整する。イコライザ群13によって調整される傾斜レベルは、光入力信号の傾斜レベルに応じて任意に設定される。
【0026】
イコライザ群13を構成する複数のイコライザ130のそれぞれの入力端は、マトリクススイッチ11のいずれかの出力端子OUTに接続される。
図1には、イコライザ130−1が出力端子OUT−1に、イコライザ130−2が出力端子OUT−2に、イコライザ130−3が出力端子OUT−3に、・・・、イコライザ130−mが出力端子OUT−mにそれぞれ接続される例を示す。
【0027】
また、イコライザ群13を構成する複数のイコライザ130のそれぞれの出力端は、マトリクススイッチ11のいずれかの入力端子INに接続される。
図1には、イコライザ130−1が入力端子IN−2に、イコライザ130−2が入力端子IN−3に、・・・、イコライザ130−mが入力端子IN−nにそれぞれ接続される例を示す。すなわち、
図1の例では、イコライザ130−1とイコライザ130−3が直列に接続される。
【0028】
イコライザ130に入力された光入力信号は、それぞれのイコライザ130によって調整される傾斜レベルを合計した分の傾斜レベルを補償される。傾斜レベルが補償された光信号は、マトリクススイッチ11を介して別のイコライザ130によって再び傾斜レベルを調整されるか、光出力信号として出力される。すなわち、イコライザ130に入力された光入力信号は、マトリクススイッチ11の入力端子INに接続されている出力端子OUTに接続されたイコライザ130によって調整される傾斜レベルを合計した分の傾斜レベルを補償される。
図1の例では、光入力信号は、マトリクススイッチ11の接続状態に応じて、イコライザ130−1およびイコライザ130−3のそれぞれによって調整される傾斜レベルを合計した分の傾斜レベルが補償される。
【0029】
制御部15(制御手段とも呼ぶ)は、光入力信号の傾斜レベルに合わせて、マトリクススイッチ11の接続状態を切り替えるための制御信号をマトリクススイッチ11に送信する。マトリクススイッチ11の接続状態は、予め設定されていてもよいし、光入力信号の傾斜レベルに応じて自動的に設定されてもよいし、外部のシステムから設定されるように構成してもよい。また、制御部15は、光入力信号の損失量に応じて、可変減衰器17の減衰量を設定する。例えば、制御部15は、コンピュータやマイクロコンピュータなどの情報処理装置によって実現される。例えば、制御部15は、陸上局から送信される光入力信号に含まれる指令(コマンドとも呼ぶ)を図示しない受信部で受信し、受信した指令に基づいてマトリクススイッチ11の接続状態を設定する。
【0030】
すなわち、傾斜等化装置1に入力された光入力信号は、制御部15の制御信号に応じて設定されるマトリクススイッチ11の接続状態に基づいて、複数のイコライザ130によって多段階で傾斜レベルを調整される。また、傾斜等化装置1から出力される光出力信号は、制御部15の制御信号に応じて設定される可変減衰器17の減衰量に基づいて減衰されてから出力される。なお、光入力信号の傾斜レベルを補償したり、光出力信号を減衰させたりする必要がない場合、傾斜等化装置1は、外部入力端子を外部出力端子に接続させ、可変減衰器17で光入力信号を減衰させずにそのまま光出力信号として出力すればよい。
【0031】
可変減衰器17(可変減衰手段とも呼ぶ)は、出力端子OUT−n(外部出力端子とも呼ぶ)に接続される。可変減衰器17は、光入力信号の損失量に応じて設定される減衰設定に基づいて減衰量が設定される。可変減衰器17による減衰量は、制御部15によって設定するようにしてもよいし、外部の上位システムによって設定するようにしてもよい。可変減衰器17は、出力端子OUT−nから出力された光出力信号を減衰設定に基づいた減衰量で減衰させ、減衰させた光出力信号を外部に出力する。
【0032】
可変減衰器17の減衰設定は、光入力信号を傾斜等化する際に通過するイコライザ130の平均的な損失量に合わせて設定される。例えば、可変減衰器17の減衰設定値は、光入力信号が通過するイコライザ130の数に基づいて設定される。また、可変減衰器17は、波長ごとの減衰率の違いや、伝送路損失の波長特性などの光路の特性に合わせて光出力信号を減衰させるように設定されてもよい。
【0033】
また、可変減衰器17は、マトリクススイッチ11を通過する際の損失ばらつきや、マトリクススイッチ11とイコライザ130との接続損失ばらつき、イコライザ130の損失ばらつきを用いて減衰設定を補正してもよい。光マトリクススイッチの接続設定を変えても光入力信号と光出力信号とのレベル差が一定になるように減衰量を設定すれば、傾斜等化装置1の後段の中継器に入力される光信号の信号強度が一定となり、海底ケーブルシステムの伝送特性の悪化を防止できる。
【0034】
例えば、可変減衰器17は、平面光波回路(PLC:Planar Lightwave Circuit)によって実現される。また、可変減衰器17は、機械的な方式のものや、磁気制御式のものによって実現してもよい。可変減衰器17を実現する形態には、特に限定を加えない。
【0035】
ここで、
図2を用いて、傾斜等化装置1が設置される海底ケーブルシステムの一例について説明する。
図2の例では、傾斜等化装置1−Bを中心とし、一つ前の傾斜等化装置1−Aとの間の区間1と、一つ後の傾斜等化装置1−Cとの間の区間2とに複数の中継器19が配置される。
【0036】
海底ケーブルシステムは光信号の光ケーブルでの減衰と中継器での増幅がバランスするように設計され、長距離の光信号の伝送を実現している。つまり、中継器間の損失が一定になるように構築する。これは傾斜等化装置が挿入される区間も同様であり、光ケーブルと傾斜等化装置で生じる損失を中継器の増幅が補う。通常は、傾斜等化装置1−A、傾斜等化装置1−B、および傾斜等化装置1−Cは同じ損失量で、それらが挿入される区間の光ケーブルも同じ長さを標準とし、傾斜等化装置が挿入される区間の損失量は同じになるように設計する。しかし、地形やルートなどの制約により、光ケーブルの長さを標準値にできない場合は、傾斜等化装置の損失量を標準値から異なる値で設計し、光ケーブルと傾斜等化装置の損失量の合計が同じになるように設計する。その場合、傾斜等化装置1−A、傾斜等化装置1−B、および傾斜等化装置1−Cのそれぞれを異なるスペックにする必要がある。すなわち、傾斜等化装置が挿入される区間の光ケーブルの損失が異なる場合、同じ傾斜等化装置1でありながら、異なるスペックの装置が必要になってしまう。傾斜等化装置1のスペックが異なれば、予備品(スペア品とも呼ぶ)として準備しておく装置のスペックもそれぞれ異なることになる。
【0037】
本実施形態の傾斜等化装置1は、前区間の中継器群からの光信号の信号強度と、後区間の中継器群への光信号の信号強度が等しくなるように、可変減衰器17によって光出力信号の減衰量を制御する。そのため、本実施形態によれば、損失の異なる区間に接続される傾斜等化装置1を共通化できる。また、複数の区間の傾斜等化装置1を共通化できれば、それらの傾斜等化装置1のスペア品についても共通化できる。すなわち、本実施形態の傾斜等化装置1を用いれば、損失の異なる区間ごとに異なるスペックの装置のスペア品を準備する必要がないため、海底ケーブルシステムの投資額や維持費を低減できる。
【0038】
以上のように、本実施形態の傾斜等化装置は、光マトリックススイッチ、等化器群、制御手段、および可変減衰器を備える。光マトリックススイッチは、少なくとも二つの第1端子を含む第1端子群と、少なくとも二つの第2端子を含む第2端子群とを有する。等化器群は、第2端子群に含まれるいずれかの第2端子に入力端が接続されるとともに、第1端子群に含まれるいずれかの第1端子に出力端が接続される等化器を少なくとも二つ含む。制御手段は、第1端子と第2端子との接続状態を切り替える。可変減衰器は、第2端子群に含まれるいずれかの第2端子に接続され、入力される光信号を減衰させる。
【0039】
例えば、等化器群に含まれる等化器のそれぞれは、入力端から入力される光信号の傾斜レベルを調整して出力端から出力できる。
【0040】
例えば、制御手段は、外部から光マトリックススイッチに入力された光信号の損失量に応じて可変減衰器における減衰量を設定する。
【0041】
例えば、制御手段は、外部から入力される光信号の信号強度と、外部に出力する光信号の信号強度との差を等しくする減衰量を可変減衰器に設定する。例えば、制御手段は、光信号を通過させる等化器の数に基づいて、可変減衰器の減衰量を設定する。例えば、制御手段は、光信号を通過させる前記等化器の数が少ないほど可変減衰器の減衰量を大きく設定する。
【0042】
すなわち、本実施形態の傾斜等化装置によれば、光マトリクススイッチを用いることによって、一般的な光スイッチを使用した可変傾斜装置よりも光デバイス(部品)の数量を減らすことができる。その結果、本実施形態の傾斜等化装置によれば、1台の装置で等化できるシステム数(芯数)を増やせるため、海底ケーブルシステムを多芯化できる。海底ケーブルシステムを多芯化できると、システムの拡張が容易になる。
【0043】
また、本実施形態の傾斜等化装置によれば、光入力信号の損失量に応じて、光出力信号の減衰量を調整するため、後段の中継器への光出力信号の信号強度が一定となる。そのため、本実施形態の傾斜等化装置によれば、海底ケーブルシステムにおいて伝送される光信号の信号強度が一定となるため、海底ケーブルシステムの伝送特性の悪化を防止できる。
【0044】
また、本実施形態によれば、傾斜等化装置が挿入される区間の光ケーブル長が異なることによる傾斜等化装置の損失の違いを可変減衰器により制御することにより、複数の区間で傾斜等化装置を共通化できる。そのため、本実施形態によれば、海底ケーブルシステムの投資額や維持費を削減できる。
【0045】
すなわち、本実施形態の傾斜等化装置によれば、傾斜レベルの設定数を維持しつつ、光デバイスの数を削減するとともに、信号強度が一定の光信号を出力できる。
【0046】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る傾斜等化装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、4個のイコライザによってイコライザ群を構成する例を示す。
【0047】
図3は、本実施形態の傾斜等化装置2(等化装置とも呼ぶ)の構成の一例を示す模式図である。
図3のように、傾斜等化装置2は、マトリクススイッチ21、イコライザ群23、制御部25、および可変減衰器27を備える。イコライザ群23は、複数のイコライザ230によって構成される。
図3には、4個のイコライザ230−1〜4によってイコライザ群23が構成される例を示す。
【0048】
マトリクススイッチ21は、5個の入力端子IN−1〜5と、5個の出力端子OUT−1〜5とを有する。
【0049】
複数の入力端子INのうち一つには、外部から光入力信号が入力される。
図3には、入力端子IN−1に光入力信号が入力される例を示す。例えば、入力端子IN−1(外部入力端子とも呼ぶ)には、前段の中継器からの光入力信号が入力される。
【0050】
複数の入力端子INのそれぞれは、制御部25からの制御信号に応じて、複数の出力端子OUTのいずれかに接続される。
図3には、入力端子IN−1が出力端子OUT−1に、入力端子IN−2が出力端子OUT−3に、入力端子IN−4が出力端子OUT−5にそれぞれ接続される例を示す。
【0051】
複数の出力端子OUTのうち一つからは、光出力信号が出力される。
図3には、出力端子OUT−5から光出力信号が出力される例を示す。例えば、出力端子OUT−5から出力される光出力信号は、可変減衰器27において減衰されてから後段の中継器に向けて出力される。
【0052】
外部出力端子以外の出力端子OUTは、イコライザ群23を構成する複数のイコライザ230のいずれかに接続される。
図3には、出力端子OUT−1〜4のそれぞれが、イコライザ230−1〜4のそれぞれに接続される例を示す。
【0053】
イコライザ群23は、傾斜レベルの異なる複数のイコライザ230によって構成される。
図3には、イコライザ群23が、4個のイコライザ230−1〜4によって構成される例を示す。
図3では、イコライザ230−1〜4のそれぞれが調整する傾斜レベルは、一例として、−1dB、+1dB、−3dB、+3dBであるが、これらの数値に限定されるものではない。これらの傾斜レベルのイコライザ230は、周知の光フィルタ等を用いて実現できる。傾斜レベルは、光入力信号の波長範囲における透過率の傾きに相当する。
【0054】
イコライザ群23を構成する複数のイコライザ230のそれぞれの入力端は、マトリクススイッチ21のいずれかの出力端子OUTに接続される。
図3の例では、イコライザ230−1〜4のそれぞれが、出力端子OUT−1〜4のそれぞれに接続される。
【0055】
また、イコライザ群23を構成する複数のイコライザ230のそれぞれの出力端は、マトリクススイッチ21のいずれかの入力端子INに接続される。
図3の例では、イコライザ230−1〜4のそれぞれが、入力端子IN−2〜5のそれぞれに接続される。
【0056】
イコライザ230に入力された光入力信号は、それぞれのイコライザ230によって傾斜レベルを調整される。傾斜レベルが調整された光信号は、マトリクススイッチ21を介して別のイコライザ230によって再び傾斜レベルを調整されるか、光出力信号として出力される。すなわち、イコライザ230に入力された光入力信号は、マトリクススイッチ21の入力端子INに接続されている出力端子OUTに接続されたイコライザ230によって調整される傾斜レベルを合計した分の傾斜レベルを補償される。
図3の接続状態の例では、光入力信号は、イコライザ230−1によって−1dB、イコライザ230−3によって−3dB、合計−4dB分の傾斜レベルを調整される。
【0057】
制御部25は、光入力信号の傾斜レベルに合わせて、マトリクススイッチ21の接続状態を切り替えるための制御信号をマトリクススイッチ21に送信する。マトリクススイッチ21の接続状態は、予め設定されていてもよいし、光入力信号の傾斜レベルに応じて自動的に設定されてもよいし、外部のシステムから設定されるように構成してもよい。また、制御部25は、光入力信号の損失量に応じて、可変減衰器27の減衰量を設定する。
【0058】
すなわち、傾斜等化装置2に入力された光入力信号は、制御部25からの制御信号に応じて設定されるマトリクススイッチ21の接続状態に基づいて、複数のイコライザ230によって多段階で傾斜レベルを調整される。また、傾斜等化装置2から出力される光出力信号は、制御部25の制御信号に応じて設定される可変減衰器27の減衰量に基づいて減衰されてから出力される。なお、光入力信号の傾斜レベルを補償したり、光出力信号を減衰させたりする必要がない場合、傾斜等化装置2は、入力端子IN−1を出力端子OUT−5に接続させ、可変減衰器27で光入力信号を減衰させずにそのまま光出力信号として出力すればよい。
【0059】
可変減衰器27は、外部出力端子である出力端子OUT−5に接続される。可変減衰器27は、光入力信号の損失量に応じて設定される減衰設定に基づいて減衰量が設定される。可変減衰器27による減衰量は、制御部25によって設定するようにしてもよいし、外部の上位システムによって設定するようにしてもよい。可変減衰器27は、出力端子OUT−5から出力された光出力信号を減衰設定に基づいた減衰量で減衰させ、減衰させた光出力信号を外部に出力する。
【0060】
図4は、光プロファイルの傾斜レベルを−4dB〜+4dBの範囲で補償するためのスイッチの接続設定をまとめたスイッチ設定表250(設定テーブルとも呼ぶ)である。例えば、スイッチ設定表250は、制御部25の記憶装置(図示しない)に格納される。
【0061】
スイッチ設定表250の接続設定の欄の括弧内は、補償する傾斜レベルごとの、入力端子1〜5と、出力端子1〜5との組合せを示す。スイッチ設定表250の例では、入力端子1〜5と、出力端子1〜5との組合せを設定することによって、所望の傾斜レベルを設定できる。また、スイッチ設定表250の減衰設定の欄は、入力端子INと出力端子OUTの接続設定ごとに設定する減衰量を示す。スイッチ設定表250において、可変減衰器27に設定される減衰量は、イコライザ230の平均的な損失量の0〜2倍に設定される。スイッチ設定表250に示すように、傾斜等化装置2は、−4dB〜+4dBの範囲において1dB単位で光プロファイルの傾斜レベルを補償できる。
【0062】
例えば、光プロファイルの傾斜レベルを−4dB補償する場合、制御部25は、(IN−1、OUT−1)、(IN−2、OUT−3)、(IN−4、OUT−5)を閉じるための制御信号をマトリクススイッチ21に出力する。その結果、入力端子IN−1と出力端子OUT−1との間と、入力端子IN−2と出力端子OUT−3との間と、入力端子IN−4と出力端子OUT−5との間とが接続される。マトリクススイッチ21の入力端子IN−1から入力された光入力信号は、イコライザ230−1およびイコライザ230−3によって傾斜レベルが調整される。その結果、傾斜等化装置2に入力された光入力信号は、傾斜レベルが−4dB補償され、出力端子OUT−5から光出力信号として可変減衰器27に出力される。光プロファイルの傾斜レベルを−4dB補償する場合は、減衰設定が0倍であるため、可変減衰器27に入力された光出力信号は減衰されずにそのまま外部に出力される。例えば、傾斜レベルの調整レベルが0dBの場合、減衰設定は2倍であるので、傾斜等化装置2は、光入力信号の傾斜レベルは補償せず、減衰設定に基づいて光信号強度を減衰させてから光出力信号として出力する。
【0063】
例えば、本実施形態の傾斜等化装置の制御部は、補償する傾斜レベルに対応させて、第1端子と第2端子群とに設定される接続状態と、外部から入力される光入力信号の損失量に応じて可変減衰器に設定される減衰設定とをまとめた設定テーブルを含む。制御部は、光入力信号に設定する傾斜レベルに応じて、第1端子群に含まれる第1端子と、第2端子群に含まれる第2端子との接続状態を切り替える。また、制御部は、光入力信号に設定する傾斜レベルに対応させて設定された減衰設定に基づいて可変減衰器の減衰量を設定する。
【0064】
以上のように、本実施形態の傾斜等化装置によれば、多入力多出力の光マトリクススイッチを用いることによって、一般的な光スイッチを使用した可変傾斜装置よりも光デバイス(部品)の数量を減らすことができる。その結果、本実施形態の傾斜等化装置によれば、1台の装置で等化できるシステム数(芯数)を増やせるため、海底ケーブルシステムを多芯化できる。海底ケーブルシステムを多芯化できると、システムの拡張が容易になる。
【0065】
また、本実施形態の傾斜等化装置によれば、光入力信号の損失量に応じて、光出力信号の減衰量を調整するため、後段の中継器への光出力信号の信号強度が一定となる。そのため、本実施形態の傾斜等化装置によれば、海底ケーブルシステムにおいて伝送される光信号の信号強度が一定となるため、海底ケーブルシステムの伝送特性の悪化を防止できる。
【0066】
また、本実施形態によれば、傾斜等化装置が挿入される区間の光ケーブル長が異なることによる傾斜等化装置の損失の違いを可変減衰器により制御することにより、複数の区間で傾斜等化装置を共通化できる。そのため、本実施形態によれば、海底ケーブルシステムの投資額や維持費を削減できる。
【0067】
図8に示す関連技術の傾斜等化装置100では、傾斜レベルを−4〜+4dBの調整範囲で1dB単位で調整するために、11個の光デバイス(2つの光スイッチ、9個のイコライザ)を必要とした。それに対し、本実施形態の傾斜等化装置2では、同じ調整範囲(−4〜+4dB)の傾斜レベルを補償するために、光デバイス(1個の光マトリクススイッチ、4個のイコライザ、1個の可変減衰器)を6個で構成できる。
【0068】
すなわち、本実施形態の傾斜等化装置は、光マトリクススイッチの入出力端子間に複数のイコライザを接続し、光マトリクススイッチの接続設定を変化させることにより、光デバイスの数を減らしても、傾斜レベルの調整範囲を確保できる。
【0069】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態に係る傾斜等化装置について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、6個のイコライザによってイコライザ群を構成する例を示す。
【0070】
図5は、本実施形態の傾斜等化装置3(等化装置とも呼ぶ)の構成の一例を示す模式図である。
図5のように、傾斜等化装置3は、マトリクススイッチ31、イコライザ群33、制御部35、および可変減衰器37を備える。イコライザ群33は、複数のイコライザ330によって構成される。
図5には、6個のイコライザ330−1〜6によってイコライザ群33が構成される例を示す。
【0071】
マトリクススイッチ31は、7個の入力端子IN−1〜7と、7個の出力端子OUT−1〜7とを有する。
【0072】
複数の入力端子INのうち一つには、外部から光入力信号が入力される。
図5には、入力端子IN−1に光入力信号が入力される例を示す。例えば、入力端子IN−1(外部入力端子とも呼ぶ)には、前段の中継器からの光入力信号が入力される。
【0073】
複数の入力端子INのそれぞれは、制御部35からの制御信号に応じて、複数の出力端子OUTのいずれかに接続される。
図5には、入力端子IN−1が出力端子OUT−1に、入力端子IN−2が出力端子OUT−3に、入力端子IN−4が出力端子OUT−5に、入力端子IN−6が出力端子OUT−7にそれぞれ接続される例を示す。
【0074】
複数の出力端子OUTのうち一つからは、光出力信号が出力される。
図5には、出力端子OUT−7から光出力信号が出力される例を示す。例えば、出力端子OUT−7から出力される光出力信号は、可変減衰器37において減衰されてから後段の中継器に向けて出力される。
【0075】
外部出力端子以外の出力端子OUTは、イコライザ群33を構成する複数のイコライザ330のいずれかに接続される。
図5には、出力端子OUT−1〜6のそれぞれが、イコライザ330−1〜6のそれぞれに接続される例を示す。
【0076】
イコライザ群33は、複数のイコライザ330によって構成される。
図5には、イコライザ群33が、6個のイコライザ330−1〜6によって構成される例を示す。
図5の例では、イコライザ330−1〜6のそれぞれが調整する傾斜レベルは、−1dB、+1dB、−3dB、+3dB、−3dB、+3dBである。
【0077】
イコライザ群33を構成する複数のイコライザ330のそれぞれの入力端は、マトリクススイッチ31のいずれかの出力端子OUTに接続される。
図5の例では、イコライザ330−1〜6のそれぞれが、出力端子OUT−1〜6のそれぞれに接続される。
【0078】
また、イコライザ群33を構成する複数のイコライザ330のそれぞれの出力端は、マトリクススイッチ31のいずれかの入力端子INに接続される。
図5の例では、イコライザ330−1〜6のそれぞれが、入力端子IN−2〜7のそれぞれに接続される。
【0079】
イコライザ330に入力された光入力信号は、それぞれのイコライザ330によって傾斜レベルを調整される。傾斜レベルが調整された光信号は、マトリクススイッチ31を介して別のイコライザ330によって再び傾斜レベルを調整されるか、光出力信号として出力される。すなわち、イコライザ330に入力された光入力信号は、マトリクススイッチ31の入力端子INに接続されている出力端子OUTに接続されたイコライザ330によって調整される傾斜レベルを合計した分の傾斜レベルを補償される。
図5の接続状態の例では、光入力信号は、イコライザ330−1によって−1dB、イコライザ330−3によって−3dB、イコライザ330−5によって−3dB、合計−7dB分の傾斜レベルを調整される。
【0080】
制御部35は、光入力信号の傾斜レベルに合わせて、マトリクススイッチ31の接続状態を切り替えるための制御信号をマトリクススイッチ31に送信する。マトリクススイッチ31の接続状態は、予め設定されていてもよいし、光入力信号の傾斜レベルに応じて自動的に設定されてもよいし、外部のシステムから設定されるように構成してもよい。また、制御部35は、光入力信号の損失量に応じて、可変減衰器37の減衰量を設定する。
【0081】
すなわち、傾斜等化装置3に入力された光入力信号は、制御部35からの制御信号に応じて設定されるマトリクススイッチ31の接続状態に基づいて、複数のイコライザ330によって多段階で傾斜レベルを調整される。また、傾斜等化装置3から出力される光出力信号は、制御部35の制御信号に応じて設定される可変減衰器37の減衰量に基づいて減衰されてから出力される。なお、光入力信号の傾斜レベルを調整する必要がない場合、傾斜等化装置3は、入力端子IN−1を出力端子OUT−7に接続させ、可変減衰器37で光入力信号を減衰させずにそのまま光出力信号として出力すればよい。
【0082】
図6は、光プロファイルの傾斜レベルを−7dB〜+7dBの範囲で補償するためのスイッチの接続設定をまとめたスイッチ設定表350である(設定テーブルとも呼ぶ)。例えば、スイッチ設定表350は、制御部35の記憶装置(図示しない)に格納される。
【0083】
スイッチ設定表350の接続設定の欄の括弧内は、補償する傾斜レベルごとの、入力端子1〜7と、出力端子1〜7との組合せを示す。スイッチ設定表350の例では、入力端子1〜7と、出力端子1〜7との組合せを設定することによって、所望の傾斜レベルを設定できる。また、スイッチ設定表350の減衰設定の欄は、入力端子INと出力端子OUTの接続設定ごとに設定する減衰量を示す。スイッチ設定表350において、可変減衰器37に設定される減衰量は、イコライザ330の平均的な損失量の0〜3倍に設定される。スイッチ設定表350に示すように、傾斜等化装置3は、−7dB〜+7dBの範囲において1dB単位で光プロファイルの傾斜レベルを補償できる。
【0084】
例えば、光プロファイルの傾斜レベルを−7dB補償する場合、制御部35は、(IN−1、OUT−1)、(IN−2、OUT−3)、(IN−4、OUT−5)、(IN−6、OUT−7)を閉じるための制御信号をマトリクススイッチ31に出力する。その結果、入力端子IN−1と出力端子OUT−1との間と、入力端子IN−2と出力端子OUT−3との間と、入力端子IN−4と出力端子OUT−5との間と、入力端子IN−6と出力端子OUT−7との間とが接続される。マトリクススイッチ31の入力端子IN−1から入力された光入力信号は、イコライザ330−1、イコライザ330−3、およびイコライザ330−5によって傾斜レベルが調整される。その結果、傾斜等化装置3に入力された光入力信号は、傾斜レベルが−7dB調整され、出力端子OUT−10から光出力信号として可変減衰器37に出力される。光プロファイルの傾斜レベルを−7dB補償する場合は、減衰設定が0倍であるため、可変減衰器27に入力された光出力信号は減衰されずにそのまま外部に出力される。例えば、傾斜レベルが0dBの場合、減衰設定は3倍であるので、傾斜等化装置2は、光入力信号の傾斜レベルは補償せず、減衰設定に基づいて光信号強度を減衰させてから光出力信号として出力する。
【0085】
以上のように、本実施形態の傾斜等化装置によれば、多入力多出力の光マトリクススイッチを用いることによって、第2の実施形態の傾斜等化装置よりも傾斜レベルの調整範囲を拡張できる。その結果、本実施形態の傾斜等化装置によれば、1台の装置で等化できるシステム数(芯数)を増やせるため、海底ケーブルシステムをさらに多芯化できる。
【0086】
例えば、本実施形態の傾斜等化装置の制御部は、補償する傾斜レベルに対応させて、第1端子と第2端子群とに設定される接続状態と、可変減衰器の減衰設定とをまとめた設定テーブルを含む。制御部は、光入力信号に設定する傾斜レベルに応じて、第1端子群に含まれる第1端子と、第2端子群に含まれる第2端子との接続状態を切り替えるとともに、光出力信号の減衰量を設定する。
【0087】
また、本実施形態の傾斜等化装置によれば、光入力信号の損失量に応じて、光出力信号の減衰量を調整するため、後段の中継器への光出力信号の信号強度が一定となる。そのため、本実施形態の傾斜等化装置によれば、海底ケーブルシステムにおいて伝送される光信号の信号強度が一定となるため、海底ケーブルシステムの伝送特性の悪化を防止できる。
【0088】
また、本実施形態によれば、傾斜等化装置が挿入される区間の光ケーブル長が異なることによる傾斜等化装置の損失の違いを可変減衰器により制御することにより、複数の区間で傾斜等化装置を共通化できる。そのため、本実施形態によれば、海底ケーブルシステムの投資額や維持費を削減できる。
【0089】
図8に示す関連技術の傾斜等化装置100では、傾斜レベルを−4〜+4dBの調整範囲で1dB単位で調整するために、11個の光デバイス(2つの光スイッチ、9個のイコライザ)を必要とした。本実施形態の傾斜等化装置では、より広い調整範囲(−7〜+7dB)の傾斜レベルを補償するために、光デバイス(1個の光マトリクススイッチ、6個のイコライザ、1個の可変減衰器)を8個で構成できる。
【0090】
すなわち、本実施形態の傾斜等化装置は、光マトリクススイッチの入出力端子間のイコライザ数を増やしても、関連技術の傾斜等化装置と比べて、より少ない光デバイス数で、傾斜レベルの調整範囲をより広くできる。
【0091】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る通信システムについて図面を参照しながら説明する。本実施形態の通信システムは、第1〜第3の実施形態の傾斜等化装置(等化装置とも呼ぶ)のいずれかを少なくとも一つ備える。
【0092】
図7は、本実施形態の通信システム4の構成の一例を示すブロック図である。
図7のように、通信システム4は、複数の中継装置41と、少なくとも一つの傾斜等化装置40とを備える。
図7には、中継装置41−sと中継装置41−tとの間に傾斜等化装置40を配置する例を示す(sは自然数、tはsよりも大きい自然数)。複数の中継装置41(中継器とも呼ぶ)と、傾斜等化装置40とは、複数の光ファイバの束を含む海底ケーブル(光ケーブルとも呼ぶ)によって接続される。通信システム4の海底ケーブルの両末端は、図示しない陸揚局に設置される給電設備や監視設備、通信装置などの設備に接続される。なお、傾斜等化装置40および中継装置41の数については、特に限定を加えない。
【0093】
例えば、傾斜等化装置40は、前段の中継装置41−sからの光入力信号が入力されると、入力された光入力信号の傾斜レベルを設定された条件で補償する。傾斜等化装置40は、光入力信号の損失量に応じて設定される減衰設定に基づいた減衰量で、傾斜レベルが補償された光信号の信号強度を減衰させる。傾斜等化装置40は、信号強度が補正された光出力信号を後段の中継装置41−tに出力する。
【0094】
以上のように、本実施形態の通信装置は、等化装置、中継装置、および光ケーブルを備える。本実施形態の通信装置が備える等化装置は、光マトリックススイッチ、等化器群、制御手段、および可変減衰器を備える。光マトリックススイッチは、少なくとも二つの第1端子を含む第1端子群と、少なくとも二つの第2端子を含む第2端子群とを有する。等化器群は、第2端子群に含まれるいずれかの第2端子に入力端が接続されるとともに、第1端子群に含まれるいずれかの第1端子に出力端が接続される等化器を少なくとも二つ含む。可変減衰器は、第2端子群に含まれるいずれかの第2端子に接続され、入力される光信号を減衰させる。制御手段は、第1端子群に含まれる第1端子と、第2端子群に含まれる第2端子との接続状態を切り替えるとともに、可変減衰器における減衰量を設定する。光ケーブルは、中継器と等化装置との間を接続する。等化装置は、前段の中継器から出力される光信号を光入力信号として入力する。等化装置は、入力された光入力信号の傾斜レベルを補償し、傾斜レベルが補償された光信号の信号強度を光入力信号の信号強度に近づけるように減衰させる。等化装置は、信号強度が減衰された光信号を光出力信号として後段の中継器に出力する。
【0095】
すなわち、本実施形態の通信システムによれば、傾斜レベルの設定数を維持しつつ、光デバイスの数を削減するとともに、信号強度が一定の光信号を出力できる等化装置を備える通信システムを提供できる。
【0096】
以上、実施形態を参照して本発明を説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0097】
この出願は、2018年2月27日に出願された日本出願特願2018−33232を基礎とする優先権を主張し、その開示の全てをここに取り込む。