特許第6966040号(P6966040)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6966040微細藻類中でのオメガ−3多価不飽和脂肪酸産生を増加させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966040
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】微細藻類中でのオメガ−3多価不飽和脂肪酸産生を増加させる方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/13 20060101AFI20211028BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20211028BHJP
   A01H 6/00 20180101ALI20211028BHJP
   C12N 15/53 20060101ALN20211028BHJP
【FI】
   C12N1/13ZNA
   A01H5/00 A
   A01H6/00
   !C12N15/53
【請求項の数】13
【全頁数】70
(21)【出願番号】特願2018-556839(P2018-556839)
(86)(22)【出願日】2017年5月11日
(65)【公表番号】特表2019-514382(P2019-514382A)
(43)【公表日】2019年6月6日
(86)【国際出願番号】EP2017061347
(87)【国際公開番号】WO2017194683
(87)【国際公開日】20171116
【審査請求日】2020年1月15日
(31)【優先権主張番号】62/335,498
(32)【優先日】2016年5月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ベイン, アン−セシル, ブイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジアクル, ロス, イー.
【審査官】 太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−521195(JP,A)
【文献】 特表2007−524377(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/081270(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00
A01H 5/00
A01H 6/00
C12N 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換え微細藻類であって、多価不飽和脂肪酸シンターゼをコードする遺伝子の発現レベルを変更するように改変されており、前記改変は、多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット1(PFA1)をコードするPFA1および/もしくは多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット2(PFA2)をコードするPFA2および/もしくは多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット3(PFA3)をコードするPFA3の発現を変更する改変を含み、前記組換え微細藻類は、宿主微細藻類と比較した場合にPFA1および/もしくはPFA3の発現レベルが高くなるように改変されており、宿主微細藻類と比較した場合にエイコサペンタエン酸(EPA)のレベルが高い脂質を産生する組換え微細藻類。
【請求項2】
PFA1および/またはPFA3の発現は前記宿主微細藻類と比較して少なくとも1.5倍多い、請求項1に記載の組換え微細藻類。
【請求項3】
前記微細藻類はスキゾキトリウム(Schizochytrium)またはトラウストキトリウム(Thraustochytrium)である、請求項2に記載の組換え微細藻類。
【請求項4】
前記微細藻類は、PFA1をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子の多重コピーを含むように改変されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え微細藻類。
【請求項5】
前記微細藻類はPFA1をコードする遺伝子の2〜10コピーを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組換え微細藻類。
【請求項6】
微細藻類中で、オメガ−3 PUFAに富む脂質を産生させる方法であって、
a)前記微細藻類を、多価不飽和脂肪酸シンターゼをコードする遺伝子の発現レベルを変更するように改変することであって、前記改変は、多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット1(PFA1)をコードするPFA1および/もしくは多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット2(PFA2)をコードするPFA2および/もしくは多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット3(PFA3)をコードするPFA3の発現を変更する改変を含み、組換え微細藻類を、宿主微細藻類と比較した場合にPFA1および/もしくはPFA3の発現レベルが高くなるように改変すること、ならびに
)改変微細藻類を培養すること
を含み、
宿主微細藻類と比較した場合にオメガ−3 PUFAに富む脂質が産生される、
方法。
【請求項7】
組換え微細藻類であって、多価不飽和脂肪酸シンターゼをコードする遺伝子の発現レベルを変更するように改変されており、前記改変は、多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット1(PFA1)をコードするPFA1および/もしくは多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット2(PFA2)をコードするPFA2および/もしくは多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット3(PFA3)をコードするPFA3の発現を変更する改変を含み、前記組換え微細藻類は、宿主微細藻類と比較した場合にPFA1および/もしくはPFA3の発現レベルが高くなるように改変されており、宿主微細藻類と比較した場合にオメガ−3 PUFAに富む脂質を産生する組換え微細藻類。
【請求項8】
前記脂質は前記宿主微細藻類と比較した場合にオメガ−3 PUFA:オメガ−6 PUFA比が高い、請求項7に記載の組換え微細藻類。
【請求項9】
微細藻類中で、オメガ−6 PUFAのレベルが低い脂質を産生させる方法であって、
a)前記微細藻類を、多価不飽和脂肪酸シンターゼをコードする遺伝子の発現レベルを変更するように改変することであって、前記改変は、多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット1(PFA1)をコードするPFA1および/もしくは多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット2(PFA2)をコードするPFA2および/もしくは多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット3(PFA3)をコードするPFA3の発現を変更する改変を含み、ならびに
)改変微細藻類を培養すること
を含み、
宿主微細藻類と比較してオメガ−6 PUFAのレベルが低い脂質が産生される、
方法。
【請求項10】
組換え微細藻類であって、a)ポリペプチドをコードする遺伝子であって、前記ポリペプチドは異種多価不飽和脂肪酸(PUFA)シンターゼサブユニット1(PFA1)である、遺伝子と、b)ポリペプチドをコードする遺伝子であって、前記ポリペプチドは異種PUFAシンターゼサブユニット2(PFA2)である、遺伝子と、c)ポリペプチドをコードする遺伝子であって、前記ポリペプチドは異種PUFAシンターゼサブユニット3(PFA3)である、遺伝子とを含み、
前記a)、b)およびc)の遺伝子は、有意なレベルのエイコサペンタエン酸(C20:5、n−3)(EPA)を有する脂質を産生するラビリンチュラ類に由来し、前記組換え微細藻類は、PFA1および/またはPFA3の発現を増加させるように改変されている、組換え微細藻類。
【請求項11】
前記異種PFA1、前記異種PFA2および前記異種PFA3が由来するラビリンチュラ類は宿主微細藻類と比べて多くのEPAを産生する、請求項10に記載の組換え微細藻類。
【請求項12】
組換え植物であって、前記組換え植物は、異種多価不飽和脂肪酸シンターゼをコードする遺伝子の発現を変更するように改変されており、前記改変は、多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット1(PFA1)をコードするPFA1および/もしくは多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット2(PFA2)をコードするPFA2および/もしくは多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット3(PFA3)をコードするPFA3の発現の変更を含み、前記組換え植物は、少なくとも1種のホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(PPTアーゼ)をコードするポリヌクレオチドをさらに含み、前記組換え植物は、PFA1および/もしくはPFA3の発現レベルが高いように改変されており、前記改変された組換え植物は、宿主植物と比較してエイコサペンタエン酸(EPA)のレベルが高い脂質を産生する、組換え植物。
【請求項13】
前記組換え植物は、前記宿主植物と比較した場合にPFA1および/もしくはPFA3の発現レベルが高いように改変されている、請求項12に記載の組換え植物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
[0001]本出願は、2016年5月12日に出願された米国仮特許出願第62/335,498号明細書の出願日の利益を主張し、この明細書の開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
[0002]本開示は、多価不飽和脂肪酸シンターゼのサブユニットをコードする遺伝子の発現レベルを変更することにより、微細藻類中でのオメガ−3多価不飽和脂肪酸(例えばエイコサペンタエン酸(EPA))の産生を増加させる方法に関する。例えば、多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット1(PFA1)をコードするPFA1および/または多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット3(PFA3)をコードするPFA3の発現レベルを上昇させることによりEPAの産生を増加させる方法が開示される。本開示はさらに、多価不飽和脂肪酸シンターゼをコードする遺伝子(例えばPFA1および/またはPFA3)の発現レベルを変更するように改変されている組換え微細藻類に関する。本開示はさらに、オメガ−3多価不飽和脂肪酸のオメガ−6多価不飽和脂肪酸に対する比を操作する(例えば、微細藻類中で産生されるEPAのドコサヘキサエン酸(DHA)に対する比の操作)方法に関する。
【0003】
[背景]
[0003]トラウストキトリドは、トラウストキトリウム(Thraustochytrium)属およびスキゾキトリウム(Schizochytrium)属のメンバーを含むトラウストキトリアレス目の微生物であり、PUFAの重要な供給源と認識されている。例えば米国特許第5,130,242号明細書を参照されたい。海洋細菌およびトラウストキトリドでのポリケチドシンターゼ(PKS)様系はアセチル−CoAおよびマロニル−CoAからの多価不飽和脂肪酸(PUFA)の合成が可能であることが分かっている。これらのPKS様系を本明細書ではPUFAシンターゼ系とも称する。海洋細菌シュワネラ(Shewanella)およびビブリオ・マリヌス(Vibrio marinus)でのPUFAシンターゼ系は米国特許第6,140,486号明細書で説明されている。スキゾキトリウム(Schizochytrium)属のトラウストキトリドでのPUFAシンターゼ系は米国特許第6,566,583号明細書で説明されている。スキゾキトリウム(Schizochytrium)属のトラウストキトリド(ATCC 20888)およびトラウストキトリウム(Thraustochytrium)属のトラウストキトリド(ATCC 20892)でのPUFAシンターゼ系は、米国特許第7,247,461号明細書および同第7,256,022号明細書でも説明されている。米国特許第7,211,418号明細書では、トラウストキトリウム(Thraustochytrium)属のトラウストキトリドでのPUFAシンターゼ系と、この系を使用するエイコサペンタエン酸(C20:5、オメガ−3)(EPA)および他のPUFAの産生とが説明されている。米国特許第7,217,856号明細書では、シュワネラ・オレヤナ(Shewanella olleyana)およびシュワネラ・ジャポニカ(Shewanella japonica)でのPUFAシンターゼ系が説明されている。国際公開第2005/097982号パンフレットでは、株SAM2179でのPUFAシンターゼ系が説明されている。米国特許第7,208,590号明細書および同第7,368,552号明細書では、トラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)由来のPUFAシンターゼの遺伝子およびタンパク質が説明されている。
【0004】
[0004]近年では、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来のPUFAシンターゼ系が米国特許第8,940,884号明細書で説明された。発現した場合、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来のPUFAシンターゼ(PFA1、PFA2およびPFA3)は特有の脂肪酸プロファイルを生じ、高レベルのオメガ−3脂肪酸を特徴の一部とする。スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来のPUFAシンターゼ(PFA1、PFA2およびPFA3)の遺伝子構造の概要を図1に示す。上記で言及したトラウストキトリドのうちのいくつかでのPUFAシンターゼのドメイン構造の概要を図2に示す。
【0005】
[0005]PKS系は伝統的に、I型(モジュラー型または反復型)、II型およびIII型と概して称される3つの基本的な型のうちの1つに分類されると文献で説明されている。II型系は分離可能な複数種のタンパク質を特徴とし、これらのそれぞれは異なる酵素反応を実行する。これらの酵素は協力して最終生成物を生成し、この系の個々の酵素は概して、この最終生成物の生成で数回関与する。この型の系は、植物および細菌で見出されるII型脂肪酸シンターゼ(FAS)系に類似の様式で作動する。I型反復PKS系は、最終生成物を生成するために反復様式で酵素が使用されるという点でII型系に類似している。I型反復系は、酵素活性が分離可能なタンパク質と関連する代わりにより大きなタンパク質のドメインとして生じるという点でII型系と異なる。この系は、動物および真菌で見出されるI型FAS系に類似している。
【0006】
[0006]II型系とは対照的に、I型モジュラーPKS系中の各酵素ドメインは最終生成物の生成で一回だけ使用される。これらのドメインは非常に大きなタンパク質中に見出され、各反応の生成物はPKSタンパク質中の別のドメインに移される。
【0007】
[0007]III型系はより近年に発見されており、縮合酵素の植物カルコンシンターゼファミリに属する。III型PKS系はI型PKS系およびII型PKS系とは異なり、反復縮合反応において遊離CoA基質を利用して通常は複素環最終生成物を生成する。
【0008】
[0008]PUFA合成の従来のまたは標準的な経路では、中鎖長飽和脂肪酸(脂肪酸シンターゼ(FAS)系の生成物)は一連の伸長反応および不飽和化反応により改変される。この伸長反応の基質は、脂肪アシル−CoA(伸長される脂肪酸鎖)およびマロニル−CoA(各伸長反応の最中に付加される2個の炭素の供給源)である。エロンガーゼ反応の生成物は、直鎖中に2個の追加の炭素を有する脂肪アシル−CoAである。デサチュラーゼは、酸素依存性反応での2個の水素の抽出により、既存の脂肪酸鎖中にシス二重結合を作る。デサチュラーゼの基質は、(数種の動物における)アシル−CoAまたはリン脂質(例えばホスファチジルコリン)のグリセロール骨格とエステル結合される脂肪酸のいずれかでる。
【0009】
[0009]脂肪酸は炭素鎖の長さおよび飽和特性に基づいて分類される。脂肪酸は、この鎖中に存在する炭素の数に基づいて短鎖脂肪酸、中鎖脂肪酸または長鎖脂肪酸と称され、炭素原子の間に二重結合が存在しない場合には飽和脂肪酸と称され、二重結合が存在する場合には不飽和脂肪酸と称される。不飽和長鎖脂肪酸は、ただ1つの二重結合が存在する場合には一不飽和であり、複数の二重結合が存在する場合には多価不飽和である。
【0010】
[0010]PUFAは脂肪酸のメチル末端からの最初の二重結合の位置に基づいて分類され、オメガ−3(n−3)脂肪酸は3番目の炭素で最初の二重結合を含み、オメガ−6(n−6)脂肪酸は6番目の炭素で最初の二重結合を含む。例えば、ドコサヘキサエン酸(「DHA」)は、22個の炭素および6個の二重結合の鎖長を有するオメガ−3 PUFAであり、「22:6 n−3」と表されることが多い。他のオメガ−3 PUFAとして、「20:5 n−3」と表されるエイコサペンタエン酸(「EPA」)と、「22:5 n−3」と表されるオメガ−3ドコサペンタエン酸(「DPA n−3」)とが挙げられる。DHAおよびEPAは「必須」脂肪酸と称されている。オメガ−6 PUFAとして、「20:4 n−6」と表されるアラキドン酸(「ARA」)と、「22:5 n−6」と表されるオメガ−6ドコサペンタエン酸(「DPA n−6」)とが挙げられる。
【0011】
[0011]オメガ−3脂肪酸は、細胞膜中での存在に起因して細胞生理に影響を及ぼし、生物学的に活性な化合物の産生および遺伝子発現を調節し且つ生合成基質として機能する生物学的に重要な分子である。Roche,H.M.,Proc.Nutr.Soc.58:397−401(1999)。例えばDHAは、ヒト大脳皮質中の脂質の約15%〜20%を占めており、網膜中の脂質の30%〜60%を占めており、睾丸および精液で濃縮されており、且つ母乳の重要な構成成分である。Berge,J.P.,and Barnathan,G.Adv.Biochem.Eng.Biotechnol.96:49−125(2005)。DHAは脳中のオメガ−3脂肪酸の最大97%を占めており、且つ網膜中のオメガ−3脂肪酸の最大93%を占めている。さらに、DHAは、胎児および幼児の両方の発育ならびに成人の認知機能の維持に必須である。上記と同文献。オメガ−3脂肪酸は人体内で新たに合成されないことから、この脂肪酸を栄養源から得なければならない。
【0012】
[0012]マアニ油および魚油はオメガ−3脂肪酸の良好な食事供給源と見なされる。マアニ油はEPA、DHA、DPAまたはARAを含まず、むしろ人体がEPAを製造することを可能にする構成要素であるリノレン酸(C18:3 n−3)を含む。しかしながら、代謝的変換の速度は、特に健康が損なわれている人々の間では緩慢であり得、且つ可変であり得るという証拠がある。魚油は、特定の種およびその食餌に応じて脂肪酸組成の型およびレベルが大幅に変動する。例えば、水産養殖により飼育された魚は、野生の魚と比べてオメガ−3脂肪酸のレベルが低い傾向がある。さらに、魚油は環境汚染物質を含むリスクを有し、且つ安定性の問題ならびに魚のような匂いおよび味と関連し得る。
【0013】
[0013]内因的に産生される脂肪酸の改変により油料種子作物植物(oilseed crop plant)中でPUFAを産生する努力が払われている。脂肪酸エロンガーゼおよびデサチュラーゼの様々な個々の遺伝子によるこの植物の遺伝子改変により、PUFA(例えばEPAおよびDHA)を含む葉および種子が作られている(Ruiz−Lopez et al,Appl.Microbiol.Biotechnol.99:143−154(2015);Qi et al.,Nature Biotech.22:739(2004);国際公開第04/071467号パンフレット;Abbadi et al.,Plant Cell 16:1(2004));Napier and Sayanova,Proc.Nutrition Society 64:387−393(2005);Robert et al.,Functional Plant Biology 32:473−479(2005);および米国特許出願公開第2004/0172682号明細書)。
【0014】
[0014]トラウストキトリドから産生された油は、対応する魚油または微細藻類油と比べて単純な多価不飽和脂肪酸プロファイルを有することが多い(Lewis,T.E.,Mar.Biotechnol.1:580−587(1999))。トラウストキトリド種の株は、この生物により産生される全脂肪酸の高い割合でオメガ−3脂肪酸を産生することが報告されている(米国特許第5,130,242号明細書;Huang,J.et al.,J.Am.Oil.Chem.Soc.78:605−610(2001);Huang,J.et al.,Mar.Biotechnol.5:450−457(2003)を参照されたい)。しかしながら、単離されたトラウストキトリドは産生されるPUFAの同一性および量が変動し、その結果、いくつかの既に説明されている株は望ましくないPUFAプロファイルを有する可能性がある。
【0015】
[0015]そのため、単細胞生物の組換え改変により所望のPUFAプロファイルを得る方法が引き続き必要とされている。この技術的問題の解決策は、特許請求の範囲で特徴付けられた実施形態により提供される。
【0016】
[発明の概要]
[0016]本開示は、EPA等のオメガ−3多価不飽和脂肪酸(PUFA)に富む脂質を産生させる方法であって、微細藻類を、多価不飽和脂肪酸シンターゼ(PUFAシンターゼ)をコードする遺伝子の発現レベルを変更するように改変すること、およびオメガ−3 PUFAに富む脂質が産生される条件下でこの改変微細藻類を培養することを含む方法を提供する。例えば、本発明の方法は、多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット1(PFA1)をコードするPFA1の発現レベルを変更すること、および/または多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット2(PFA2)をコードするPFA2の発現レベルを変更すること、および/または多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット3(PFA3)をコードするPFA3の発現レベルを変更することを含む。一実施形態では、この微細藻類を、PFA1および/またはPFA3の発現レベルを上昇させるように改変する。一部の実施形態では、この微細藻類を、PFA1の発現レベルを上昇させるように改変する。他の実施形態では、この微細藻類を、PFA1およびPFA3の発現を増加させるように改変する。
【0017】
[0017]一部の実施形態では、改変される微細藻類はラビリンチュラ類である。一部の実施形態では、改変される微細藻類はトラウストキトリドであり、好ましくはスキゾキトリウム(Schizochytrium)またはトラウストキトリウム(Thraustochytrium)である。好ましい実施形態では、改変される微細藻類はスキゾキトリウム(Schizochytrium)である。特定の実施形態では、改変される微細藻類はスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888またはこの派生体である。
【0018】
[0018]一実施形態では、この微細藻類を、PFA1をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子の多重コピーを含むように改変する。好ましい実施形態では、この微細藻類を、PFA1をコードする遺伝子の多重コピーを含むように改変する。一実施形態では、この微細藻類はPFA1をコードする遺伝子の2〜10コピーを含む。別の実施形態では、この微細藻類はPFA1をコードする遺伝子の3〜7コピーを含む。追加の実施形態では、この微細藻類はPFA1をコードする遺伝子の4〜6コピーを含む。
【0019】
[0019]別の実施形態では、この微細藻類を、PFA1をコードする遺伝子とPFA3をコードする遺伝子との両方の多重コピーを含むように改変する。
【0020】
[0020]別の実施形態では、この微細藻類を、プロモーターの操作により、PFA1をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子を過剰発現するように改変する。例えば、PFA1をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子の発現を駆動させる1種または複数種のプロモーターを挿入しておよび/または置き換えて組換え微細藻類中でのこれらの遺伝子の発現レベルを上昇させるように、本発明の構築物を改変し得る。
【0021】
[0021]一部の実施形態では、PFA1をコードする遺伝子、PFA2をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子は、EPAリッチの脂質を内因的に産生するラビリンチュラ類に由来する。一実施形態では、PFA1をコードする遺伝子、PFA2をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子は、EPAリッチの脂質を内因的に産生するスキゾキトリウム(Schizochytrium)に由来する。好ましい実施形態では、PFA1をコードする遺伝子、PFA2をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子は、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695に由来する、またはこれらの機能的等価物である。EPAリッチの脂質は、有意なレベルのEPAを有する脂質(例えば、少なくとも5%のEPAを含む脂質)と定義される。他の実施形態では、有意なレベルのEPAを有する脂質は、少なくとも10%のEPA、少なくとも15%のEPA、少なくとも20%のEPAまたはより多くを含む脂質と定義される。
【0022】
[0022]好ましい実施形態では、改変する微細藻類(即ち宿主微細藻類)の内在性PUFAシンターゼ遺伝子のうちの1種または複数種を変異させる、または欠失させる。より好ましい実施形態では、改変する微細藻類の内在性PUFAシンターゼ遺伝子の全てを変異させる、または欠失させる。
【0023】
[0023]驚くべきことに、組換え微細藻類中でPFA1をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子を過剰発現させることにより、宿主微細藻類によるEPA産生と比較してEPA産生を少なくとも2倍増加させ得ることを発見している。一部の実施形態では、本発明の組換え微細藻類によるEPA産生は、宿主微細藻類によるEPA産生と比較して少なくとも5倍増加している。一部の実施形態では、本発明の組換え微細藻類によるEPA産生は、宿主微細藻類によるEPA産生と比較して少なくとも10倍増加している。さらなる実施形態では、本発明の組換え微細藻類によるEPA産生は、宿主微細藻類によるEPA産生と比較して少なくとも20倍増加している。
【0024】
[0024]加えて、組換え微細藻類中でPFA1をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子を過剰発現させることにより、EPA:ドコサヘキサエン酸(DHA)比は宿主微細藻類によるEPA産生と比較して少なくとも2倍高いことを発見している。一部の実施形態では、この組換え微細藻類におけるEPA:ドコサヘキサエン酸(DHA)比は、宿主微細藻類によるEPA産生と比較して少なくとも10倍高い。一部の実施形態では、本発明の組換え微細藻類におけるEPA:ドコサヘキサエン酸(DHA)比は、宿主微細藻類によるEPA産生と比較して少なくとも20倍高い。さらなる実施形態では、本発明の組換え微細藻類におけるEPA:ドコサヘキサエン酸(DHA)比は、宿主微細藻類によるEPA産生と比較して少なくとも50倍高い。
【0025】
[0025]一部の実施形態では、本発明に従って産生されたEPAに富む脂質はさらにDHAにも富む。
【0026】
[0026]本開示はまた、DPA n−6のレベルが低い脂質を産生させる方法であって、微細藻類を、遺伝子PFA1、PFA2および/またはPFA3の発現レベルを変更するように改変すること、ならびにこの改変微細藻類を培養することを含み、DPA n−6のレベルが低い脂質が産生される、方法も提供する。
【0027】
[0027]本出願はまた、組換え生物であって、多価不飽和脂肪酸シンターゼ(PUFAシンターゼ)をコードする遺伝子の発現レベルを変更するように改変されている組換え生物にも関する。一部の実施形態では、本発明の生物は天然PUFAシンターゼ遺伝子を含み得る。天然PUFAシンターゼ遺伝子を含む生物として微細藻類が挙げられるがこれに限定されない。例えば、本発明の組換え微細藻類は、多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット1(PFA1)をコードするPFA1の発現レベルを変更するように、および/または多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット2(PFA2)をコードするPFA2の発現レベルを変更するように、および/または多価不飽和脂肪酸シンターゼサブユニット3(PFA3)をコードするPFA3の発現レベルを変更するように改変されている。一実施形態では、この微細藻類はPFA1および/またはPFA3の発現レベルを上昇させるように改変されている。一部の実施形態では、この微細藻類は遺伝子PFA1の発現レベルを上昇させるように改変されている。他の実施形態では、この微細藻類はPFA1およびPFA3の発現を増加させるように改変されている。他の実施形態では、本発明の生物はPUFAシンターゼ遺伝子を含まず、この生物として植物が挙げられるがこれに限定されない。最初に、この生物を、多価不飽和脂肪酸の産生を可能にするためにPUFAシンターゼ系を発現するように改変しなければならない。次いで、得られた組換え生物(例えば植物)を、PUFAシンターゼをコードする遺伝子の発現レベルを変更するようにさらに改変する。
【0028】
[0028]本出願はまた、多価不飽和脂肪酸シンターゼをコードする遺伝子の発現レベルを改変する変異プロセス(例えば選択圧)を受けている変異微細藻類であって、野生型の非変異微細藻類と比較して高レベルのEPAを産生する変異微細藻類にも関する。
【0029】
[0029]本出願はまた、上述した組換え微細藻類株を作製する方法にも関する。本出願はさらに、上述した組換え微細藻類株により産生されたPUFA油に関する。
【0030】
[0030]本開示の性質、目的および利点のさらなる理解のために、下記の詳細な説明を参照すべきであり、下記の図面と併せて読むべきであり、同様の参照番号は同様の要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695 PUFAシンターゼサブユニットPFA1、PFA2およびPFA3の遺伝子構造を示す。
図2図2は、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695、トラウストキトリウム(Thraustochytrium)種ATCC PTA−10212およびスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888のPUFAシンターゼのドメイン構造を示す。
図3図3は、実施例1でさらに説明しているように、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来のPUFAシンターゼサブユニット遺伝子によるスキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230D中の天然PUFAシンターゼサブユニット遺伝子の標的を定めた置き換えにより作製されたスキゾキトリウム(Schizochytrium)株B156の株系統を示す。
図4図4は、内在性のPFA1遺伝子、PFA2遺伝子およびPFA3遺伝子が各遺伝子座でスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来のPFA1遺伝子、PFA2遺伝子およびPFA3遺伝子に置き換えられている組換えスキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230D(株B156−2)と比較した、内在性のPFA1、PFA2およびPFA3のPUFAシンターゼサブユニット遺伝子を含む天然スキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230Dにおける25℃(図4A)または30℃(図4B)での培養後の脂肪酸メチルエステルプロファイル(FAME)の分析を示す。特に興味深いのは、C20:5n−3はEPAであり、C22:5 n−6はDPA n−6であり、C22:6 n−3はDHAである。
図5図5は、内在性のPFA1遺伝子、PFA2遺伝子およびPFA3遺伝子が除去されており且つスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来のPFA1遺伝子、PFA2遺伝子およびPFA3遺伝子がランダムに組み込まれた組換えスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC20888(株B149)と比較した、内在性のPFA1、PFA2およびPFA3のPUFAシンターゼ遺伝子を含む天然スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC20888における30℃での培養後のFAMEプロファイルを示す。
図6図6は、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695 PFA1遺伝子の標識部分で調べた、スキゾキトリウム(Schizochytrium)株B145(B145−16およびB145−33)ならびにB149(E9、B149−3およびB149−4)のサザンブロットを示す。スキゾキトリウム(Schizochytrium)株B145を、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来のPFA1によるスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC20888中の天然PFA1 PUFAシンターゼ遺伝子の標的を定めた置き換えにより作製した。そのため、組換え株B145はスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695 PFA1遺伝子の1コピーを含み、この組換え株B145を組換え株B149中のPFA1のコピー数を決定するための比較に使用した。デンシトメトリー分析は、平均基準バンド(B145)が7,165単位に等しいことを示した。これに対して、株B149(「E9」)由来のバンドを42,747単位(PFA1の約6コピー)であると算出し、株B149−3由来のバンドを37,897単位(PFA1の約5〜6コピー)であると算出し、株B149−4由来のバンドを33,928単位(PFA1の約4〜5コピー)であると算出した。
図7図7は、B149のスキゾキトリウム(Schizochytrium)変異株でのスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来のPFA1遺伝子の多重コピー挿入の概要を示す。
図8図8は、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC20888(スキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230D)の親株(組換え株B156−2)および娘株の両方と比較した、スキゾキトリウム(Schizochytrium)ATCC PTA−9695由来のPFA1遺伝子、PFA3遺伝子、ならびにPFA1遺伝子およびPFA3遺伝子の両方を過剰発現する組換えスキゾキトリウム(Schizochytrium)株でのEPAおよびDHAの産生を示す。
図9図9は、定量PCR(qPCR)で測定した場合のスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695およびATCC PTA−10208でのPFA1、PFA2およびPFA3の発現を示す。
【0032】
[詳細な説明]
[0040]本主題の開示をさらに説明する前に、本開示は下記で説明する本開示の特定の実施形態に限定されず、なぜならば、この特定の実施形態の変形が行なわれ得、且つ添付した特許請求の範囲に依然として含まれるからであることを理解されたい。用いられる用語は特定の実施形態を説明することを目的としており、限定することは意図されていないことも理解されたい。代わりに、本開示の範囲は、添付した特許請求の範囲により確立されるであろう。
【0033】
[0041]本明細書および添付した特許請求の範囲では、単数形「a」、「an」および「the」は、別途文脈が明確に指示しない限り複数の言及を含む。別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者に一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0034】
[0042]本明細書で使用される場合、「単離された」生物学的成分(例えば核酸またはタンパク質)は、この成分が天然に存在する生物の細胞中の他の生物学的成分(即ち、他の染色体のおよび染色体外のDNAおよびRNAならびにタンパク質)から実質的に分離されているが、この他の成分とは別に産生されているが、またはこの他の成分から精製されているが、この成分の化学的変化または機能的変化に影響を及ぼす(例えば、核酸は、この核酸を染色体中の残存するDNAに結合させる化学結合を破壊することにより染色体から単離され得る)。「単離」されている核酸分子およびタンパク質として、標準的な精製方法により精製された核酸分子およびタンパク質が挙げられる。この用語はまた、宿主細胞中での組換え発現により調製された核酸およびタンパク質ならびに化学的に合成された核酸分子、タンパク質およびペプチドも包含する。
【0035】
[0043]本明細書で使用される場合、用語「核酸分子」はヌクレオチドのポリマー形態を意味し得、このポリマー形態は、RNA、cDNA、ゲノムDNAならびに上記の合成形態および混合ポリマーのセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方を含み得る。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチドまたはいずれかのタイプのヌクレオチドの改変形態を意味し得る。「核酸分子」は、本明細書で使用される場合、「核酸」および「ポリヌクレオチド」と同義である。別途明示しない限り、核酸分子は通常、少なくとも10個の塩基の長さである。この用語は、一本鎖形態のDNAおよび二本鎖形態のDNAを含む。核酸分子は、天然に存在するおよび/または天然には存在しないヌクレオチド連結により一緒に連結された、天然に存在するヌクレオチドおよび改変ヌクレオチドのいずれかまたは両方を含み得る。
【0036】
[0044]当業者に容易に認識されるように、核酸分子は化学的に改変されてもよいし生化学的に改変されてもよく、または非天然のもしくは誘導体化されたヌクレオチド塩基を含んでもよい。そのような改変として、例えば標識、メチル化、類似体による天然に存在するヌクレオチドの1つまたは複数の置換、ヌクレオチド内改変(例えば、非荷電連結:例えばメチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメート等;荷電連結:例えばホスホロチオエート、ホスホロジチオエート等;ペンダント部分:例えばペプチド;インターカレーター:例えばアクリジン、ソラレン等;キレート剤;アルキル化剤;および改変連結:例えばアルファアノマー核酸等)が挙げられる。用語「核酸分子」はまた、あらゆるトポロジカル高次構造(topological conformation)(例えば一本鎖高次構造、二本鎖高次構造、部分二本鎖高次構造、三重構造高次構造、ヘアピン高次構造、環状高次構造およびパドロック高次構造(padlocked conformation))も含む。
【0037】
[0045]本明細書で使用される場合、第1の核酸配列が第2の核酸配列と機能的に関係する場合、第1のヌクレオチド配列は第2のヌクレオチド配列に「作動可能に連結」されている。組換えにより産生された場合、作動可能に連結された核酸配列は概して、(例えばポリシストロン性ORF中の)同一のリーディングフレーム中で近接しており、必要に応じて、2つのタンパク質コード領域を連結するように近接している。しかしながら、核酸は、作動可能に連結されるために近接する必要はない。
【0038】
[0046]用語「作動可能に連結された」は、調節配列およびコード配列に関して使用される場合、この調節配列が、連結されたコード配列の発現に影響を及ぼすことを意味する。「調節配列」または「制御エレメント」は、関連するコード配列の転写、RNAプロセシングもしくはRNA安定性または翻訳のタイミングおよびレベル/量に影響するヌクレオチド配列を意味する。調節配列として、プロモーター、翻訳リーダー配列、イントロン、エンハンサー、ステム−ループ構造、リプレッサー結合配列、終結配列およびポリアデニル化認識配列が挙げられ得る。特定の調節配列が、この調節配列に作動可能に連結されたコード配列の上流および/または下流に位置する場合がある。同様に、コード配列に作動可能に連結された特定の調節配列が、二本鎖核酸分子の関連する相補鎖上に位置する場合もある。
【0039】
[0047]本明細書で使用される場合、用語「プロモーター」は、DNAの領域であって、転写の開始から上流であり得且つRNAポリメラーゼおよび転写を開始させるための他のタンパク質の認識および結合に関与し得る領域を指す。プロモーターは、細胞中での発現のためのコード配列に作動可能に連結され得る、またはプロモーターは、細胞中での発現のためのコード配列に作動可能に連結され得るシグナル配列をコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結され得る。「誘導性」プロモーターは、環境制御下であり得るプロモーターであり得る。
【0040】
[0048]任意の誘導性プロモーターを本発明の一部の実施形態で使用し得る。Ward et al.(1993)Plant Mol.Biol.22:361−366を参照されたい。誘導性プロモーターにより、転写速度は誘導剤に応じて増加する。例示的な誘導性プロモーターとして下記が挙げられるがこれらに限定されない:銅に応答する、ACEI系由来のプロモーター;ベンゼンスルホンアミド系除草剤毒性緩和剤に応答する、トウモロコシ由来のIn2遺伝子;Tn10由来のTetリプレッサー;および転写活性が糖質コルチコステロイドホルモンにより誘導され得る、ステロイドホルモン遺伝子由来の誘導性プロモーター(Schena et al.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:0421)。
【0041】
[0049]PFA1遺伝子、PFA2遺伝子およびPFA3遺伝子の発現を駆動させるために使用され得るプロモーターの例は、先行特許(米国特許第8,945,875号明細書および同第8,637,651号明細書)で説明されている。加えて、全トランスクリプトーム解析により生成されたデータを使用して、様々な強度の他のプロモーターを選択し得る。例えば、カルシウム輸送ATPアーゼ(EC3.6.3.8)遺伝子、NADP特異的グルタメートデヒドロゲナーゼ(EC1.4.1.4)遺伝子またはアセチル−CoAアセチルトランスフェラーゼ(EC2.3.1.9)遺伝子のプロモーターを、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230D株の発酵全体を通して高発現に使用し得る。ナトリウム依存性リン酸トランスポーター遺伝子のプロモーターを使用して、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230D株の発酵の脂質蓄積期の間に高発現を誘導し得る。ヒストンH2B遺伝子またはアスパラギン酸−セミアルデヒドデヒドロゲナーゼ(EC.1.2.1.11)のプロモーターを使用して、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230D株の増殖期中にPFA1およびPFA3の高発現を促進し得る。
【0042】
[0050]本明細書で使用される場合、用語「異種の」は異なる起源を意味する。例えば、宿主細胞が、自然界の非形質転換宿主細胞中に存在しない核酸で形質転換されている場合、この核酸はこの宿主細胞に対して異種(および外来性)である。さらに、形質転換する核酸の異なるエレメント(例えばプロモーター、エンハンサー、コード配列、ターミネーター等)は、互いにおよび/または形質転換宿主に対して異種であり得る。用語異種は、本明細書で使用される場合、宿主細胞中に既に存在する核酸と配列が同一であるが今は異なる追加の配列に連結されているおよび/または異なるコピー数で存在する等である1種または複数種の核酸にも適用され得る。
【0043】
[0051]本明細書で使用される場合、用語「天然の」は、ポリヌクレオチドまたは遺伝子の形態であって、存在する場合にはこれら自体の調節配列と共に、自然界で見出される生物中のまたは生物のゲノム中の天然の位置での形態を意味する。
【0044】
[0052]本明細書で使用される場合、用語「内在性の」は、ポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドであって、自然界でこの分子を通常含む生物中にまたはゲノム中に位置するポリヌクレオチド、遺伝子またはポリペプチドである。
【0045】
[0053]本明細書で使用される場合、用語「形質転換」または「形質導入」は、細胞への1種または複数種の核酸分子の導入を意味する。細胞は、この細胞に形質導入される核酸分子の細胞ゲノムへの組込みまたはエピソーム複製のいずれかにより、この核酸分子がこの細胞により安定して複製されるようになる場合に、この核酸分子で「形質転換」される。本明細書で使用される場合、用語「形質転換」は、そのような細胞に核酸分子を導入し得る全ての技術を包含する。例として下記が挙げられるこれらに限定されない:ウイルスベクターによる形質移入、プラスミドベクターによる形質転換、エレクトロポレーション(Fromm et al.(1986)Nature 319:791−3)、リポフェクション(Feigner et al.(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84:7413−7)、マイクロインジェクション(Mueller et al.(1978)Cell 15:579−85)、アグロバクテリウム媒介移入(Fraley et al.(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 80:4803−7)、直接DNA取り込み、および微粒子銃(Klein et al.(1987)Nature 327:70)。
【0046】
[0054]本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」とは、宿主のゲノムに組み込まれる外来性核酸配列のことである。一部の例では、導入遺伝子は、この導入遺伝子のコード配列に作動可能に連結された調節配列(例えばプロモーター)を含み得る。
【0047】
[0055]本明細書で使用される場合、「ベクター」とは、例えば形質転換細胞を作製するために細胞に導入される核酸分子のことである。ベクターは、このベクターが宿主細胞中で複製されることを可能にする核酸配列(例えば複製起点)を含み得る。ベクターの例として、プラスミド、コスミド、バクテリオファージ、または外来性DNAを細胞に運ぶウイルスが挙げられるがこれらに限定されない。ベクターはまた、1種もしくは複数種の遺伝子、アンチセンス分子および/または選択マーカー遺伝子ならびに当技術分野で既知の他の遺伝要素も含み得る。ベクターは細胞を形質導入し得、形質転換し得、または感染させ得、それにより、この細胞に、このベクターによりコードされる核酸分子および/またはタンパク質を発現させる。ベクターは、核酸分子の細胞への移行の達成に役立つ物質(例えばリポソームおよびタンパク質コーティング)を任意選択で含む。
【0048】
[0056]本明細書で使用される場合、用語「発現」は、ポリヌクレオチドによりコードされるmRNAの転写および安定した蓄積を意味し得る、またはそのようなmRNAのポリペプチドへの翻訳を意味し得る。用語「過剰発現」は、本明細書で使用される場合、同一のまたは近縁の遺伝子の内因的発現と比べて高い発現を意味する。異種遺伝子は、その発現が近縁の内在性遺伝子(例えば相同体)のものと比べて高い場合に過剰発現される。
【0049】
[0057]本明細書で使用される場合、用語「外来性」は、1種または複数種の核酸であって、この核酸の特有の環境下または状況下では通常存在しない核酸を意味する。例えば、宿主細胞が、自然界の非形質転換宿主細胞中に存在しない核酸で形質転換されている場合、この核酸はこの宿主細胞に対して外来性である。用語外来性は、本明細書で使用される場合、宿主細胞中に既に存在する核酸と配列が同一であるがこの宿主細胞中に既に存在する同一配列の核酸とは異なる細胞状況またはゲノム状況にある1種または複数種の核酸も意味する。例えば、同一配列の核酸と異なる位置にて宿主細胞のゲノムに組み込まれる核酸は通常、この宿主のゲノムに組み込まれる。さらに、宿主細胞中のプラスミド中にまたはベクター中に存在する核酸(例えばDNA分子)は、同一配列の核酸が通常はこの宿主細胞のゲノム中にのみ存在する場合には、この宿主に対して外来性である。
【0050】
[0058]用語「配列同一性」または「同一性」は、本明細書において2つの核酸またはポリペプチド鎖の文脈で使用される場合、指定の比較ウィンドウ全体にわたり一致が最大となるように整列された場合に同一である、2つの配列中の残基を意味し得る。
【0051】
[0059]本明細書で使用される場合、用語「配列同一性の百分率」は、比較ウィンドウ全体にわたり最適に整列された2つの配列(例えば核酸配列およびアミノ酸配列)を比較することにより決定される値を意味し得、この比較ウィンドウ中の配列の一部は、2つの配列の最適なアラインメントのための参照配列(付加または欠失を含まない)と比較した場合に付加または欠失(即ちギャップ)を含み得る。この百分率を、同一のヌクレオチド残基またはアミノ酸残基が両方の配列中に存在する位置の数を決定して一致する位置の数を得、この一致する位置の数を比較ウィンドウ中の位置の総数で除算し、この結果に100を乗算して配列同一性の百分率を得ることにより算出する。
【0052】
[0060]比較のために配列を整列させる方法は当技術分野で公知である。様々なプログラムおよびアラインメントアルゴリズムが例えば下記で説明されている:Smith and Waterman(1981)Adv.Appl.Math.2:482;Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443;Pearson and Lipman(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:2444;Higgins and Sharp(1988)Gene 73:237−44;Higgins and Sharp(1989)CABIOS 5:151−3;Corpet et al.(1988)Nucleic Acids Res.16:10881−90;Huang et al.(1992)Comp.Appl.Biosci.8:155−65;Pearson et al.(1994)Methods Mol.Biol.24:307−31;Tatiana et al.(1999)FEMS Microbiol.Lett.174:247−50。配列アラインメント方法および相同性算出の詳細な検討を例えばAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403−10中に見出し得る。
【0053】
[0061]いくつかの配列分析プログラムと共に使用するために、The National Center for Biotechnology Information(NCBI)Basic Local Alignment Search Tool(BLAST(商標);Altschul et al.(1990))が、いくつかの供給源(例えばNational Center for Biotechnology Information(Bethesda,MD))からおよびインターネット上で入手可能である。このプログラムを使用して配列同一性を決定する方法の説明は、インターネット上でBLAST(商標)の「ヘルプ」セクションから入手可能である。核酸配列の比較のために、デフォルトパラメータを使用してBLAST(商標)(Blastn)プログラムの「Blast 2 sequences」機能を用い得る。参照配列との類似性がさらに大きい核酸配列は、この方法で評価された場合に同一性の百分率の増加を示すであろう。
【0054】
[0062]本明細書で使用される場合、用語「実質的に同一の」は、80%を超えて同一であるヌクレオチド配列を意味し得る。例えば、実質的に同一のヌクレオチド配列は、参照配列と少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または少なくとも99.5%同一であり得る。
【0055】
[0063]本明細書においてタンパク質をコードする核酸の文脈で使用される場合、用語「最適化された」は、異種ヌクレオチド配列が標的宿主生物のコドンバイアスを反映するように変更されている核酸を意味する。一部の実施形態では、ヌクレオチド配列は、遺伝子発現を妨げる場合がある遺伝要素を除去するようにさらに変更され得る。
【0056】
[0064]遺伝暗号の重複性に起因して、複数のDNA配列が単一のアミノ酸配列をコードするように設計され得ることが理解されるであろう。そのため、コード領域のヌクレオチド配列を最適化しつつ、例えば過剰な制限部位および望ましくないRNA二次構造を除去するように最適化DNA配列を設計し得、その結果、コドン組成は、DNAが発現される宿主の全コドン組成に類似する。合成DNA配列の設計および作製に関するガイダンスを、例えば国際公開第2013016546号パンフレット、同第2011146524号パンフレットおよび同第1997013402号パンフレットならびに米国特許第6,166,302号明細書および同第5,380,831号明細書に見出し得る。
【0057】
[0065]本明細書で使用される場合、用語「保存的置換」は、あるアミノ酸残基が同一クラスの別のアミノ酸で置換される置換を意味する。非保存的アミノ酸置換は残基が同一クラスに分類されない置換であり、例えば、塩基性アミノ酸の中性アミノ酸または非極性アミノ酸による置換である。保存的置換を実施する目的で定義され得るアミノ酸のクラスは当技術分野で既知である。
【0058】
[0066]一部の実施形態では、保存的置換として、第1の脂肪族アミノ酸の第2の異なる脂肪族アミノ酸による置換が挙げられる。例えば、第1のアミノ酸がGly、Ala、Pro、Ile、Leu、ValおよびMetのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、Gly、Ala、Pro、Ile、Leu、ValおよびMetから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。特定の例では、第1のアミノ酸がGly、Ala、Pro、Ile、LeuおよびValのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、Gly、Ala、Pro、Ile、LeuおよびValから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。疎水性脂肪族アミノ酸の置換を含む特定の例では、第1のアミノ酸がAla、Pro、Ile、LeuおよびValのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、Ala、Pro、Ile、LeuおよびValから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。
【0059】
[0067]一部の実施形態では、保存的置換として、第1の芳香族アミノ酸の第2の異なる芳香族アミノ酸による置換が挙げられる。例えば、第1のアミノ酸がHis、Phe、TrpおよびTyrのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、His、Phe、TrpおよびTyrから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。非荷電芳香族アミノ酸の置換を含む特定の例では、第1のアミノ酸がPhe、TrpおよびTyrのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、Phe、TrpおよびTyrから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。
【0060】
[0068]一部の実施形態では、保存的置換として、第1の疎水性アミノ酸の第2の異なる疎水性アミノ酸による置換が挙げられる。例えば、第1のアミノ酸がAla、Val、Ile、Leu、Met、Phe、TyrおよびTrpのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、Ala、Val、Ile、Leu、Met、Phe、TyrおよびTrpから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。非芳香族の疎水性アミノ酸の置換を含む特定の例では、第1のアミノ酸がAla、Val、Ile、LeuおよびMetのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、Ala、Val、Ile、LeuおよびMetから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。
【0061】
[0069]一部の実施形態では、保存的置換として、第1の極性アミノ酸の第2の異なる極性アミノ酸による置換が挙げられる。例えば、第1のアミノ酸がSer、Thr、Asn、Gln、Cys、Gly、Pro、Arg、His、Lys、AspおよびGluのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Gly、Pro、Arg、His、Lys、AspおよびGluから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。非荷電極性アミノ酸の置換を含む特定の例では、第1のアミノ酸がSer、Thr、Asn、Gln、Cys、GlyおよびProのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、GlyおよびProから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。荷電極性アミノ酸の置換を含む特定の例では、第1のアミノ酸がHis、Arg、Lys、AspおよびGluのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、His、Arg、Lys、AspおよびGluから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。荷電極性アミノ酸の置換を含むさらなる例では、第1のアミノ酸がArg、Lys、AspおよびGluのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、Arg、Lys、AspおよびGluから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。正電荷を有する(塩基性の)極性アミノ酸の置換を含む特定の例では、第1のアミノ酸がHis、ArgおよびLysのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、His、ArgおよびLysから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。正電荷を有する極性アミノ酸の置換を含むさらなる例では、第1のアミノ酸がArgまたはLysである場合、この第1のアミノ酸を、ArgおよびLysの他のアミノ酸に置き換え得る。負電荷を有する(酸性の)極性アミノ酸の置換を含む特定の例では、第1のアミノ酸がAspまたはGluである場合、この第1のアミノ酸を、AspおよびGluの他のアミノ酸に置き換え得る。
【0062】
[0070]一部の実施形態では、保存的置換として、第1の電気的に中性のアミノ酸の第2の異なる電気的に中性のアミノ酸による置換が挙げられる。例えば、第1のアミノ酸がGly、Ser、Thr、Cys、Asn、GlnおよびTyrのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、Gly、Ser、Thr、Cys、Asn、GlnおよびTyrから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。
【0063】
[0071]一部の実施形態では、保存的置換として、第1の非極性アミノ酸の第2の異なる非極性アミノ酸による置換が挙げられる。例えば、第1のアミノ酸がAla、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、ProおよびMetのうちの1つである場合、この第1のアミノ酸を、Ala、Val、Leu、Ile、Phe、Trp、ProおよびMetから選択される第2の異なるアミノ酸に置き換え得る。
【0064】
[0072]多くの例では、第1のアミノ酸を置き換えるための保存的置換で使用される特定の第2のアミノ酸の選択を、第1のアミノ酸および第2のアミノ酸の両方が属する上述のクラスの数を最大にするように行ない得る。そのため、第1のアミノ酸がSer(極性の、非芳香族のおよび電気的に中性のアミノ酸)である場合、第2のアミノ酸は、別の極性アミノ酸(即ち、Thr、Asn、Gln、Cys、Gly、Pro、Arg、His、Lys、AspまたはGlu)であってもよいし、別の非芳香族アミノ酸(即ち、Thr、Asn、Gln、Cys、Gly、Pro、Arg、His、Lys、Asp、Glu、Ala、Ile、Leu、ValまたはMet)であってもよいし、別の電気的に中性のアミノ酸(即ち、Gly、Thr、Cys、Asn、GlnまたはTyr)であってもよい。しかしながら、この場合の第2のアミノ酸は、Thr、Asn、Gln、CysおよびGlyのうちの1つであることが好ましい場合があり、なぜならば、これらのアミノ酸は、極性、非芳香族性および電気的中性による全ての分類を共有するからである。保存的置換で使用される特定の第2のアミノ酸を選択するために任意選択に使用され得るさらなる基準は当技術分野で既知である。例えば、Thr、Asn、Gln、CysおよびGlyが、Serの保存的置換で使用するために利用可能である場合、Cysは、望ましくない架橋および/またはジスルフィド結合の形成を回避するために選択から除外される場合がある。同様に、Glyは、アルキル側鎖を欠いていることから選択から除外される場合がある。この場合、例えば側鎖ヒドロキシル基の官能性を保持するためにThrが選択される場合がある。しかしながら、保存的置換で使用される特定の第2のアミノ酸の選択は、最終的には当業者の自由裁量内である。
【0065】
[0073]本明細書で使用される場合、用語「多価不飽和脂肪酸」または「PUFA」は、少なくとも3個以上の炭素−炭素二重結合(これ以降、PUFAに関して論じる「二重結合」は炭素−炭素結合を意味する)(例えば、4個以上の二重結合、5個以上の二重結合および6個以上の二重結合)を有する少なくとも16個の炭素(例えば、少なくとも18個の炭素、少なくとも20個の炭素および22個以上の炭素)の炭素鎖長の脂肪酸を意味し、全ての二重結合はcis配置である。
【0066】
[0074]本明細書で使用される場合、用語「長鎖多価不飽和脂肪酸」または「LC−PUFA」は、3個以上の二重結合を含む20個以上の炭素または3個以上の二重結合(例えば、4個以上の二重結合、5個以上の二重結合および6個以上の二重結合)を含む22個以上の炭素の炭素鎖長の脂肪酸を意味する。ω−6シリーズのLC−PUFAとして例えば、ジ−ホモ−ガンマ−リノレン酸(C20:3 n−6)、アラキドン酸(ARA、C20:4 n−6)、アドレン酸(ドコサテトラエン酸またはDTAとも呼ばれる、C22:4 n−6)およびドコサペンタエン酸(DPA n−6、C22:5 n−6)が挙げられるがこれらに限定されない。ω−3シリーズのLC−PUFAとして例えば、エイコサトリエン酸(C20:3 n−3)、エイコサテトラエン酸(C20:4 n−3)、エイコサペンタエン酸(EPA、C20:5 n−3)、ドコサペンタエン酸(DPA n−3、C22:5 n−3)およびドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6 n−3)が挙げられるがこれらに限定されない。LC−PUFAとして、22個超の炭素および4個以上の二重結合を有する脂肪酸(例えば限定されないがC28:8(n−3))も挙げられる。
【0067】
[0075]用語「PUFAシンターゼ」は、本明細書で使用される場合、PUFA(例えばLC−PUFA)のデノボ合成を触媒する酵素を意味する。ほとんどのトラウストキトリドPUFAシンターゼは、本明細書でPFA1、PFA2およびPFA3(またはPfa1、Pfa2およびPfa3)と命名される3種のサブユニットで構成されている。これらのサブユニットは、以前はOrfA、OrfBおよびOrfC(またはORFA、ORFBおよびORFC)と称されていた。細菌由来のPUFAシンターゼは通常、PfaA、PfaB、PfaCおよびPfaDと命名される4種のサブユニットで構成されている。用語PUFAシンターゼには例えば、PUFAの産生のためのPUFAシンターゼ系またはPUFAシンターゼ様系が含まれるがこれらに限定されない。いくつかの特定のPUFAシンターゼは、本明細書ではさらなる表示法により命名される(例えば、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCCアクセッション番号PTA−9695由来のPUFAシンターゼ)。用語「PUFAシンターゼ系」は、1種または複数種のPUFAシンターゼと、PUFAシンターゼの機能に影響を及ぼし得る任意の異種アクセサリー酵素(例えば4’−ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(PPTアーゼ)またはアシル−CoAシンテターゼ(ACS))とを意味する。
【0068】
[0076]用語「機能的等価物」は、本明細書で使用される場合、PUFAの産生を触媒するあらゆるPUFAシンターゼ、またはPUFAの産生を触媒するあらゆるPUFAシンターゼをコードするあらゆる遺伝子および/もしくはヌクレオチド配列を含む。PFA1の機能的等価物として、PFA1と同一のまたは類似の酵素活性を有するあらゆるポリペプチド(またはポリペプチドをコードするあらゆる遺伝子および/もしくはヌクレオチド配列)が挙げられる。同様に、PFA2の機能的等価物として、PFA2と同一のまたは類似の酵素活性を有するあらゆるポリペプチド(またはポリペプチドをコードするあらゆる遺伝子および/もしくはヌクレオチド配列)が挙げられ、PFA3の機能的等価物として、PFA3の同一のまたは類似の酵素活性を有するあらゆるポリペプチド(またはポリペプチドをコードするあらゆる遺伝子および/もしくはヌクレオチド配列)が挙げられる。一部の実施形態では、PUFAシンターゼサブユニットの機能的等価物は、このPUFAシンターゼサブユニット内に存在する1個または複数個のドメインを含む。例えば、PFA1の機能的等価物は、KSドメイン、MATドメイン、ACPドメイン、2個以上のACPドメインの組み合わせ(例えば、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のACPドメイン、例えばタンデムドメイン)、KRドメイン、DHドメイン、およびこれらの組み合わせを含み得る。PFA2の機能的等価物は、KSドメイン、CLFドメイン、ATドメイン、ERドメインおよびこれらの組み合わせを含み得る。PFA3の機能的等価物は、DHドメイン、ERドメインおよびこれらの組み合わせを含み得る。他の実施形態では、機能的等価物として、参照アミノ酸配列(即ち、配列番号2、配列番号4、配列番号6)内のアミノ酸残基の付加または置換であって、サイレントな変化を引き起こし、そのため機能的に等価な遺伝子産物が産生されるアミノ酸残基の付加または置換が挙げられるがこれらに限定されない。例えば、保存的アミノ酸置換を、関連する残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性および/または両親媒性の類似に基づいて行ない得る。
【0069】
[0077]本主題の開示は、一態様では、EPAに富む脂質を産生させる方法であって、微細藻類を、PFA1をコードするPFA1および/またはPFA3をコードするPFA3の発現レベルを上昇させるように改変すること、ならびにこの改変微細藻類を培養することを含み、EPAに富む脂質が産生される方法を特徴とする。同様に特徴とされるのは、PFA1をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子が過剰発現される組換え微細藻類である。そのような組換え微細藻類は、非常に好ましい脂肪酸脂質プロファイル(例えば、EPAのレベルの上昇、EPA:DHAの比の増加、DPA n−6のレベルの低下等)を生じることが本明細書で実証されている。本発明のある特定の非限定的な実施形態を下記でさらに詳細に説明する。
【0070】
[0078]海洋トラウストキトリドであるスキゾキトリウム(Schizochytrium)藻類(ATCCアクセッション番号PTA−9695で表される)は、作物の形質転換のためのPUFAシンターゼ遺伝子の供給源としても使用され得る高ω−3/ω−6比の油を産生する。PCT国際公開第2015/081270号パンフレットを参照されたい。加えて、このスキゾキトリウム(Schizochytrium)は、DHAに加えて有意なレベルのEPAを含む油を産生し得る。有意な量のEPAを産生する能力は、いくつかの他のトラウストキトリウム株(例えば、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCCアクセッション番号20888)と対照的である。米国特許出願公開第2013/0150599A1号明細書、PCT国際公開第2013/016546号パンフレットを参照されたい。一部の実施形態では、スキゾキトリウム((Schizochytrium)種ATCC PTA−9695に由来する1種または複数種のPUFAシンターゼサブユニットまたはその機能的等価物は、微細藻類中で組換えにより発現される。好ましい実施形態では、スキゾキトリウム((Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来の1種または複数種のPUFAシンターゼサブユニットをコードする遺伝子は、微細藻類中で組換えにより過剰発現される。特に、過剰発現される、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来の1種または複数種のPUFAシンターゼサブユニットをコードする遺伝子は、PFA1をコードする遺伝子およびPFA3をコードする遺伝子から選択され、好ましくは、PFA1をコードする遺伝子と、任意選択のPFA3をコードする遺伝子とである。
【0071】
[0079][組換え宿主細胞を使用して脂質を生成する方法]
[0080]本発明は、少なくとも1種のPUFAを生成する方法であって、PUFAを産生するのに有効な条件下にて宿主細胞中でPUFAシンターゼ系を発現させることであり、このPUFAシンターゼ系は、本明細書で説明されている単離核酸分子および組換え核酸分子ならびにこれらの組み合わせのいずれかを含む、発現させることを含み、少なくとも1種のPUFAが産生される、方法を対象とする。一部の実施形態では、この少なくとも1種のPUFAとして、EPA、DHAまたはこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、この宿主細胞は植物細胞、単離動物細胞または微生物細胞である。一部の実施形態では、この宿主細胞はトラウストキトリドである。
【0072】
[0081]本発明は、EPA、DHAまたはこれらの組み合わせに富む脂質を生成する方法であって、脂質を産生するのに有効な条件下にて宿主細胞中で少なくとも1種のPUFAシンターゼ遺伝子を発現させることであり、この少なくとも1種のPUFAシンターゼ遺伝子は、この宿主細胞中において本明細書で説明されている単離核酸分子および組換え核酸分子ならびにこれらの組み合わせのいずれかを含む、発現させることを含み、EPA、DHAまたはこれらの組み合わせに富む脂質が産生される、方法を対象とする。
【0073】
[0082]本発明はまた、宿主細胞から脂質を単離する方法であって、脂質を産生するのに有効な条件下にてこの宿主細胞中で少なくとも1種のPUFAシンターゼ遺伝子を発現させること、およびこの宿主細胞から脂質を単離することを含み、この宿主細胞中のこのPUFAシンターゼ系は、本明細書で説明されている単離核酸分子および組換え核酸分子ならびにこれらの組み合わせのいずれかを含む、方法も対象とする。
【0074】
[0083]一部の実施形態では、PUFAを含む1種または複数種の脂質画分を宿主細胞から単離する。一部の実施形態では、宿主細胞から単離される1種または複数種の画分として、全脂肪酸画分、ステロールエステル画分、トリグリセリド画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジアシルグリセロール画分、リン脂質画分またはこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、PUFAを宿主細胞から単離し、このPUFAは、宿主細胞に導入されたPUFAシンターゼ系の組成に基づいて、オメガ−3脂肪酸もしくはオメガ−6脂肪酸またはこれらの組み合わせに富む。一部の実施形態では、このPUFAは、宿主細胞に導入されたPUFAシンターゼ系の組成に基づいて、DHA、EPAまたはこれらの組み合わせに富む。一部の実施形態では、このPUFAは、DHA、EPAまたはこれらの組み合わせに富む。一部の実施形態では、宿主細胞から単離されたPUFAのPUFAプロファイルは、高濃度のEPAと、より低濃度のDHA、ARA、DPA n−6またはこれらの組み合わせとを含む。一部の実施形態では、宿主細胞から単離されたPUFAのPUFAプロファイルは、高濃度のDHAおよびEPAと、より低濃度のARA、DPA n−6またはこれらの組み合わせとを含む。一部の実施形態では、宿主細胞から単離されたPUFAのPUFAプロファイルは、高濃度のEPAと、より低濃度のDHA、ARA、DPA n−6またはこれらの組み合わせとを含む。
【0075】
[0084]本発明は、PUFAシンターゼ活性を有する生物中で、不活性なまたは欠失したPUFAシンターゼ活性を置き換える方法、新規のPUFAシンターゼ活性を導入する方法または既存のPUFAシンターゼ活性を増強する方法であって、このPUFAシンターゼ活性を発現するのに有効な条件下にて、この生物中で、本明細書で説明されている単離核酸分子および組換え核酸分子ならびにこれらの組み合わせのいずれかを発現させることを含む方法を対象とする。一部の実施形態では、この核酸分子は、PUFAシンターゼサブユニットPFA1、PFA2またはPFA3のうちの1つまたは複数をコードする、本明細書で説明されている1種または複数種のポリヌクレオチド配列を含む。好ましい実施形態では、この核酸分子は、PFA1および/またはPFA3をコードする、本明細書で説明されている1種または複数種のポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、この生物のPUFAプロファイルは、本発明の1種または複数種の核酸分子の導入より変更されている。
【0076】
[0085]一部の実施形態では、PFA1をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子の発現レベルは、本明細書で説明されている組換え宿主中で上昇している、または増強されている。好ましい実施形態では、この組換え宿主細胞は微細藻類(例えばトラウストキトリド)である。下記の実施例でさらに詳細に論じるように、高レベルの脂質を産生するスキゾキトリウム(Schizochytrium)種中での、EPAリッチの脂質を産生するスキゾキトリウム(Schizochytrium)由来のPFA1をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子の過剰発現により、野生型スキゾキトリウム(Schizochytrium)中での存在と比べて好ましいPUFAプロファイルが得られる。
【0077】
[0086]一部の実施形態では、変更されたPUFAプロファイルは、オメガ−3脂肪酸の増加およびオメガ−6脂肪酸の減少を含む。一部の実施形態では、DHAの量は増加しているが、EPA、ARA、DPA n−6またはこれらの組み合わせのうちの1つまたは複数の量は維持されている、または減少している。一部の実施形態では、EPAおよびDHAの量は増加しているが、ARA、DPA n−6またはこれらの組み合わせの量は維持されている、または減少している。一部の実施形態では、EPAの量は増加しているが、DHA、ARA、DPA n−6またはこれらの組み合わせのうちの1つまたは複数の量は維持されている、または減少している。一部の実施形態では、核酸分子は、PFA1コード配列由来のまたはこの配列中の1種もしくは複数種のドメイン由来のポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、この核酸分子は、PFA1またはこのPFA1中の1種もしくは複数種のドメインをコードするポリヌクレオチド配列を含み、生物中のオメガ−3脂肪酸の量は増加しているがオメガ−6脂肪酸の量は減少している。一部の実施形態では、この核酸分子は、PFA3コード配列由来のまたはこの配列中の1種もしくは複数種のドメイン由来のポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、この核酸分子は、PFA3またはこのPFA3中の1種もしくは複数種のドメインをコードするポリヌクレオチド配列を含み、この生物中のオメガ−3脂肪酸の量は増加しているがオメガ−6脂肪酸の量は減少している。
【0078】
[0087]本発明は、PUFAシンターゼ活性を有する生物中でのEPA、DHAまたはこれらの組み合わせの産生を増加させる方法であって、EPA、DHAまたはこれらの組み合わせを産生するのに有効な条件下にて、この生物中で、本明細書で説明されている単離核酸分子および組換え核酸分子ならびにこれらの組み合わせのいずれかを発現させることを含み、PUFAシンターゼ活性は、この生物中において不活性なまたは欠失した活性を置き換え、新規の活性を導入し、または既存の活性を増強し、この生物中でのDHA、EPAまたはこれらの組み合わせの産生が増加する、方法を対象とする。
【0079】
[0088]好ましい実施形態では、本発明は、PUFAシンターゼ活性を有する生物中でのEPA、DHAまたはこれらの組み合わせの産生を増加させる方法であって、この生物中で、PFA1をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子の発現レベルを導入することおよび/または上昇させることを含む方法を対象とする。一部の実施形態では、この生物中でのPFA1をコードする遺伝子および/またはPFA3をコードする遺伝子の発現レベルは、この生物への、PFA1をコードするヌクレオチド配列および/またはPFA3をコードするヌクレオチド配列の多重コピーの導入により上昇する。ある生物への、PFA1をコードするヌクレオチド配列および任意選択のPFA3をコードするヌクレオチド配列の多重コピーの導入は、標的化またはランダムのいずれかであり得る。別の実施形態では、この生物中でのPFA1をコードするヌクレオチド配列および/またはPFA3をコードするヌクレオチド配列の発現レベルを、PFA1をコードするヌクレオチド配列および/またはPFA3をコードするヌクレオチド配列と、強力なプロモーター(例えば伸長因子−1(EF−1)プロモーター)との連結により上昇させる。
【0080】
[0089][PUFAシンターゼ]
[0090]本明細書の実施形態は、PUFAシンターゼを発現するように遺伝子改変されている宿主生物(例えば微細藻類)を含む。一部の実施形態では、異種PUFAシンターゼ系(例えば、PUFAシンターゼおよびその少なくとも1種のアクセサリータンパク質を含む機能的異種タンパク質系)を発現するように遺伝子改変されている生物。本明細書中の遺伝子改変を使用して、一部の実施形態では、PUFAシンターゼを内因的に発現する宿主生物中でのPUFA産生を改善することもできる。
【0081】
[0091]PUFAシンターゼ系は、脂肪酸鎖の反復プロセシングおよび非反復プロセシング(例えば、選択されたサイクルでのtrans−cis異性化およびエノイル還元反応)の両方を行うように共に作用し得るいくつかの多機能性タンパク質を含み得る(および単一機能性タンパク質を含み得る)。これらのタンパク質は、本明細書ではコアPUFAシンターゼ酵素系またはコアPUFAシンターゼと称される。これらのタンパク質内に含まれるドメインおよびモチーフについての一般的な情報および詳細を、例えば米国特許第6,140,486号明細書および同第6,566,583号明細書;米国特許出願公開第2002/0194641号明細書、同第2004/0235127号明細書および同第2005/0100995号明細書;国際公開第2006/135866号パンフレット;ならびにMetz et al.(2001)Science 293:290−3に見出し得る。機能性PUFAシンターゼドメインは単一タンパク質として見出され得る(例えば、このドメインおよびタンパク質は同義である)、または単一タンパク質中の2種以上のドメインとして見出され得る。
【0082】
[0100]PUFAシンターゼ活性を有する酵素、この酵素のサブユニットおよび/またはドメイン(ならびにこれらをコードするポリヌクレオチドおよび遺伝子)の多くの例は当技術分野で既知であり、本明細書で開示されている異種PUFAシンターゼを含む遺伝子改変宿主中で組み合わされ得る。そのようなPUFAシンターゼ酵素(またはそのサブユニットもしくはドメイン)として、細菌PUFAシンターゼおよび非細菌PUFAシンターゼの両方が挙げられる。非細菌PUFAシンターゼは真核PUFAシンターゼであり得る。ある特定の細菌PUFAシンターゼが例えば米国特許出願公開第2008/0050505号明細書で説明されている。
【0083】
[0101]一部の実施形態では、異種PUFAシンターゼは、下記からなる群から選択される生物学的に活性なドメインを含む:少なくとも1個のエノイル−ACPレダクターゼ(ER)ドメイン(および一部の実施形態では2個のERドメイン);複数個のアシルキャリアタンパク質(ACP)ドメイン(例えば、少なくとも1〜4個または少なくとも5個のACPドメイン、および一部の実施形態では最大6個、7個、8個、9個、10個または10個超のACPドメイン);少なくとも2個のβ−ケトアシル−ACPシンターゼ(KS)ドメイン;(下記に列挙するマロニル−CoA:ACPアシルトランスフェラーゼドメインに加えて)少なくとも1個のアシルトランスフェラーゼ(AT)ドメイン;少なくとも1個のβ−ケトアシル−ACPレダクターゼ(KR)ドメイン;少なくとも2個のFabA様β−ヒドロキシアシル−ACPデヒドラーゼ(DH)ドメイン;少なくとも1個の鎖長因子(chain length factor)(CLF)ドメイン;少なくとも1個のマロニル−CoA:ACPアシルトランスフェラーゼ(MAT)ドメイン;ならびにDHのFabA様DHファミリではない少なくとも1個のDHドメイン。特定の実施形態では、異種PUFAシンターゼはまた、デヒドラターゼ保存活性部位モチーフを含み且つPfamタンパク質ファミリデータベースとの比較によりDHドメインと同定される少なくとも1個の領域も含む(Finn et al.,Nucleic Acids Res.Database Issue 44:D279−D285(2016))。
【0084】
[0102]一部の実施形態では、異種PUFAシンターゼは、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来のサブユニットPFA1(配列番号2)、PFA2(配列番号4)およびPFA3(配列番号6)またはこれらの機能的等価物を含む。米国特許第8,940,884号明細書を参照されたい。他のトラウストキトリド中のPUFAシンターゼはまた、それぞれORF1、ORF2およびORF3またはそれぞれOrfA、OrfBおよびOrfCとも命名されている。例えば、orfA遺伝子、orfB遺伝子およびorfC遺伝子ならびに対応するOrfAタンパク質、OrfBタンパク質およびOrfCタンパク質に関しては米国特許第7,247,461号明細書中のおよび同第7,256,022号明細書中のスキゾキトリウム(Schizochytrium)種(ATCC−20888)およびトラウストキトリウム(Thraustochytrium)種(ATCC−20892)を、ならびにORFA、ORFBおよびORFCの遺伝子およびタンパク質に関しては米国特許第7,368,552号明細書中のトラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)(ATCC−34304)を参照されたい。また、ORF1、ORF2およびORF3の遺伝子およびタンパク質に関して国際公開第2005/097982号パンフレット中の株SAM2179も参照されたい。
【0085】
[0103]例えば、本明細書の実施形態に係る異種PUFAシンターゼ系は、配列番号2、配列番号4および/または配列番号6に対して少なくとも80%(例えば少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%および少なくとも99%)の同一性を有するアミノ酸配列を含む少なくとも1種のタンパク質を例えば含み得るがこれに限定されない。特定の例では、異種PUFAシンターゼ系は、配列番号2、配列番号4および/または配列番号6を含む少なくとも1種のタンパク質を含む。特定の例では、異種PUFAシンターゼ系は、配列番号2、配列番号4および/または配列番号6からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する少なくとも1種のタンパク質を含む。
【0086】
[0104]一部の実施形態は、配列番号2、配列番号4および/または配列番号6の少なくとも1種の機能的等価物と少なくとも1種のアクセサリー酵素とを含む異種PUFAシンターゼ系を含む。例えば、この系は、配列番号2、配列番号4および/または配列番号6のバリアント、一部、断片または誘導体を含み得、そのような系はPUFAシンターゼ活性を有する。例えば、他のPUFAシンターゼまたはそのサブユニットもしくは個々のドメインのポリペプチド配列(およびこれらをコードする遺伝子またはポリヌクレオチド)を、文献および当技術分野で利用可能なバイオインフォマティクスデータベースで同定し得る。そのような配列を、例えば既知のPUFAシンターゼの遺伝子配列またはポリペプチド配列との公的に利用可能なデータベースのBLAST検索により同定し得る。そのような方法では、同一性は、GAP PENALTY=10、GAP LENGTH PENALTY=0.1およびGonnet 250シリーズのタンパク質重量マトリックスというデフォルメパラメータを使用して、アラインメントのClustalW法に基づくことができる。
【0087】
[0105]加えて、本明細書で開示されているPUFAシンターゼの遺伝子配列またはポリペプチド配列を使用して、自然界での他のPUFAシンターゼ相同体を同定し得る。例えば、本明細書で開示されているPUFAシンターゼ核酸断片の各々を使用して、相同タンパク質をコードする遺伝子を単離し得る。配列依存性プロトコルを使用する相同遺伝子の単離は当技術分野で公知である。配列依存性プロトコルの例として例えば下記が挙げられるがこれらに限定されない:核酸ハイブリダイゼーションの方法;核酸増幅技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、リガーゼ連鎖反応(LCR)および鎖置換増幅(SDA))の様々な使用により例示されるような、DNAおよびRNAの増幅方法;ならびにライブラリ構築および相補性によるスクリーニングの方法。
【0088】
[0106]一部の実施形態では、異種PUFAシンターゼは、スキゾキトリウム(Schizochytrium)PUFAシンターゼドメイン(例えばERドメイン、ACPドメイン、KSドメイン、ATドメイン、KRドメイン、FabA様DHドメイン、CLFドメイン、MATドメインおよび非Fab様DHドメイン)を含み、このドメインは異なるPUFAシンターゼ由来の1個または複数個のドメインと組み合わされて、PUFAシンターゼ活性を有する完全なPUFAシンターゼを形成する。
【0089】
[0107]一部の実施形態では、異種PUFAシンターゼを含む遺伝子改変生物を、別のPUFAシンターゼの少なくとも1個のドメインまたはその生物学的に活性な断片でさらに改変し得る。特定の実施形態では、PUFAシンターゼのドメインのいずれかをその天然構造から改変して、PUFAシンターゼ系中のこのドメインの機能を改変し得る、または増強し得る(例えば、この系により産生されるPUFAのタイプまたはその比を改変し得る、米国特許第8,003,772号明細書を参照されたい)。
【0090】
[0108][核酸分子]
[0109]本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」は、従来のホスホジエステル結合または非従来の結合(例えば、例えばペプチド核酸(PNA)で見出されるアミド結合)を含み得る。ポリヌクレオチドは、完全長cDNA配列のヌクレオチド配列(例えば、翻訳されていない5’配列および3’配列、コード配列、ならびに核酸配列の断片、エピトープ、ドメインおよびバリアント)を含み得る。このポリヌクレオチドは、改変されていないRANもしくはDNAまたは改変されているRNAもしくはDNAであり得る任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドで構成され得る。例えば、ポリヌクレオチドは、一本鎖DNAおよび二本鎖DNA、一本鎖領域よび二本鎖領域の混合物であるDNA、一本鎖RNAおよび二本鎖RNA、一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であるRNA、一本鎖またはより典型的には二本鎖または一本鎖領域および二本鎖領域の混合物であり得る、DNAおよびRNAを含むハイブリッド分子で構成され得る。加えて、このポリヌクレオチドは、RNAもしくはDNAまたはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域で構成され得る。ポリヌクレオチドは、リボヌクレオシド(アデノシン、グアノシン、ウリジンもしくはシステイン;「RNA分子」)またはデオキシリボヌクレオシド(デオキシアデノシン、デオキシグアノシン、デオキシチミジンもしくはデオキシシチジン;「DNA分子」)またはこれらのあらゆるリン酸エステル類似体(例えばホスホロチオエートおよびチオエステル)を含み得る。ポリヌクレオチドはまた、1種もしくは複数種の改変塩基、または安定性もしくは他の理由のために改変されたDNA骨格もしくはRNA骨格も含み得る。「改変」塩基として、例えばトリチル化塩基および珍しい塩基(例えばイノシン)が挙げられる。様々な改変をDNAおよびRNAに行い得、そのため「ポリヌクレオチド」は、化学的に、酵素的にまたは代謝的に改変された形態を包含する。用語核酸分子はこの分子の一次構造および二次構造のみを意味しており、この分子を任意の特定の三次形態に限定しない。そのため、この用語は、特に直線状または環状のDNA分子(例えば制限断片)、プラスミドおよび染色体で見出される二本鎖DNAを含む。本明細書において、特定の二本鎖DNA分子の構造の議論では、DNAの非転写鎖(即ち、mRNAに相同な配列を有する鎖)に沿って5’から3’への方向での配列のみを示すという通常の慣例に従って配列を説明し得る。
【0091】
[0110]用語「単離」核酸分子は、この分子の天然環境から取り出されている核酸分子、DNAまたはRNAを意味する。単離核酸分子のさらなる例として、異種宿主細胞中で維持された、組換えポリヌクレオチドを含む核酸分子、または(部分敵にもしくは実質的に)精製されたポリヌクレオチドの溶液が挙げられる。単離RNA分子として、本発明のポリヌクレオチドのインビボまたはインビトロでのRNA転写産物が挙げられる。本発明に係る単離核酸分子として、合成により作製されたそのような分子がさらに挙げられる。加えて、核酸分子またはポリヌクレオチドは調節エレメント(例えばプロモーター、リボソーム結合部位または転写ターミネーター)を含み得る。
【0092】
[0111]「遺伝子」はポリペプチドをコードするヌクレオチドの集合体を意味し、遺伝子としてcDNA核酸およびゲノムDNA核酸が挙げられる。「遺伝子」はまた、特定のタンパク質を発現する核酸断片(例えば、個々のコードセグメント(エクソン)の間の介在配列(イントロン)、ならびにコード配列に先行する調節配列(5’非コード配列)およびこのコード配列に続く調節配列(3’非コード配列))も意味する。「天然遺伝子」は、遺伝子であって、この遺伝子自体の調節配列と共に自然界で見出される遺伝子を意味する。
【0093】
[0112]一部の実施形態では、本発明は、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695 PFA1(配列番号l)、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695 PFA2(配列番号3)、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695 PFA3(配列番号5)およびこれらの組み合わせのポリヌクレオチド配列と少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、このポリヌクレオチドは、PUFAシンターゼによるPUFA合成と関連する1種または複数種の活性を含むポリペプチドをコードする、単離核酸分子を対象とする。
【0094】
[0113]PUFAシンターゼドメインを、生化学的活性が確立された酵素またはドメインに対する、このPUFAシンターゼドメインの配列相同性および構造相同性により同定し得る。保存された活性部位モチーフの存在は、このドメインが酵素活性を有し得るというさらなる証拠を提供し得る。例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8.940,884号明細書を参照されたい。PUFAシンターゼドメインの例として下記が挙げられる:PFA1中のベータ−ケトアシル−ACPシンターゼ(KS)ドメイン、マロニル−CoA:ACPアシルトランスフェラーゼ(MAT)ドメイン、アシルキャリアタンパク質(ACP)ドメイン、ケトレダクターゼ(KR)ドメイン、およびベータ−ヒドロキシアシル−ACPデヒドラーゼ(DH)ドメイン;PFA2中のKSドメイン、鎖長因子(CLF)ドメイン、アシルトランスフェラーゼ(AT)ドメイン、およびエノイル−ACPレダクターゼ(ER)ドメイン;ならびにPFA3中のDHドメインおよびERドメイン。
【0095】
[0114]ベータ−ケトアシル−ACPシンターゼ(KS)生物学的活性(機能)を有するポリペプチドまたはこのポリペプチドのドメインは、脂肪酸伸長反応サイクルの初期段階を実行し得ることが既に分かっている。用語「ベータ−ケトアシル−ACPシンターゼ」は、用語「3−ケトアシル−ACPシンターゼ」、「ベータ−ケトアシル−ACPシンターゼ」および「ケトアシルACPシンターゼ」と互換的に使用されている。他の系では、伸長のためのアシル基はチオエステル結合によりKSの活性部位でシステイン残基に連結されており且つアシル−KSはマロニル−ACPと縮合して−ケトアシル−ACP、COおよび非結合(「遊離」)KSを形成することが分かっている。そのような系では、KSは、この反応サイクルの他のポリペプチドと比べて高い基質特異性を有することが分かっている。ポリペプチド(またはポリペプチドのドメイン)は、既知のKS配列との相同性によりKSファミリに属すると容易に同定され得る。
【0096】
[0115]マロニル−CoA:ACPアシルトランスフェラーゼ(MAT)活性を有するポリペプチドまたはこのポリペプチドのドメインは、マロニル部分をマロニル−CoAからACPへと転移し得ることが既に分かっている。用語「マロニル−CoA:ACPアシルトランスフェラーゼ」は、「マロニルアシルトランスフェラーゼ」と互換的に使用されている。活性部位モチーフ(GxSxG)に加えて、MATは拡張モチーフ(extended motif)(主要な位置にRアミノ酸およびQアミノ酸)を有することが分かっている。ポリペプチド(またはポリペプチドのドメイン)は、既知のMAT配列との相同性によりおよびこのポリペプチドの拡張モチーフ構造によりMATファミリに属すると容易に同定され得る。
【0097】
[0116]アシルキャリアタンパク質(ACP)活性を有するポリペプチドまたはこのポリペプチドのドメインは、共有結合した補因子へのチオエステル結合により脂肪アシル鎖を成長させるためのキャリアとして機能し得ることが既に分かっている。ACPは概して約80〜約100個のアミノ酸長であり、CoAのホスホパンテテイニル部分のACPの高度に保存されたセリン残基への転移により、不活性のアポ型から機能するホロ型に変換されることが分かっている。アシル基はホスホパンテテイニル部分の遊離末端でチオエステル結合によりACPに付着していることも分かっている。活性部位モチーフ(LGIDS)のバリーションの存在もACPの特徴として認識されている。活性部位セリン(S)の機能性は細菌PUFAシンターゼで実証されている(Jiang et al.,J.Am.Chem.Soc.130:6336−7(2008))。ポリペプチド(またはポリペプチドのドメイン)は、放射性パテテインによる標識化によりおよび既知のACPとの配列相同性によりACPファミリに属すると容易に同定され得る。
【0098】
[0117]デヒドラーゼ活性またはデヒドラターゼ(DH)活性を有するポリペプチドまたはこのポリペプチドのドメインは脱水反応を触媒し得ることが既に分かっている。PUFAシンターゼ系の少なくとも2個のドメインは、(他のPKS系のDHドメインとの相同性ではなく)いくつかの細菌のII型FAS系と関連するFabA DH/イソメラーゼ酵素との相同性を示すことが既に実証されている。例えば、全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,217,856号明細書を参照されたい。FabA様酵素は、炭素鎖中でtrans二重結合を最初に生じるベータ−ヒドロキシアシル−ACPデヒドラーゼ生物学的活性を有する。このDH活性に加えて、FabA様酵素はcis−transイソメラーゼ活性も有する(Heath et al.,J.Biol.Chem.271:27795(1996))。用語「FabA様ベータ−ヒドロキシアシル−ACPデヒドラーゼ」は、用語「FabA様ベータ−ヒドロキシ アシル−ACPデヒドラーゼ」、「ベータ−ヒドロキシアシル−ACPデヒドラーゼ」および「デヒドラーゼ」と互換的に使用されている。FabA様DH/イソメラーゼタンパク質の実証された活性に基づいて、このタンパク質との相同性を有するPUFAシンターゼ系のドメインは、PUFAシンターゼ生成物中でのcis二重結合の生成に関与する可能性がある。ポリペプチドまたはドメインは、非FabA様DH活性または非FabA様ベータヒドロキシアシル−ACPデヒドラーゼ(DH)活性も有し得る。より具体的には、約13個のアミノ酸長の保存された活性部位モチーフは、PUFAシンターゼDHドメイン:LxxHxxxGxxxxP(L位置はまた、このモチーフではIでもあり得る)で既に同定されている。例えば米国特許第7,217,856号明細書およびDonadio S,Katz L.,Gene 111(1):51−60(1992)(これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。この保存されたモチーフは、全ての既知のPUFAシンターゼ配列の類似の領域で見出され、非FabA様の脱水反応と関連する可能性がある。加えて、この保存されたモチーフは、Pfamタンパク質ファミリデータベースとの比較によりDHドメインと同定されている領域で見出される(Finn et al.,Nucleic Acids Res.Database Issue 44:D279−D285(2016)。
【0099】
[0118]ベータ−ケトアシル−ACPレダクターゼ(KR)活性を有するポリペプチドまたはこのポリペプチドのドメインは、3−ケトアシル形態のACPのピリジン−ヌクレオチド依存性還元を触媒し得ることが既に分かっている。用語「ベータ−ケトアシル−ACPレダクターゼ」は、用語「ケトレダクターゼ」、「3−ケトアシル−ACPレダクターゼ」および「ケト−アシルACPレダクターゼ」と互換的に使用されている。他の系では、KR機能はデノボ脂肪酸生合成伸長サイクルでの最初の還元段階に関与することが確認されている。ポリペプチド(またはポリペプチドのドメイン)は、既知のPUFAシンターゼKRとの配列相同性によりKRファミリに属すると容易に同定され得る。
【0100】
[0119]鎖長因子(CLF)特性を有するポリペプチドまたはこのポリペプチドのドメインは、下記の活性または特徴のうちの1つまたは複数を有すると既に定義されている:(1)伸長サイクルの数の決定、従ってII型PUFAシンターゼ系での最終産物の鎖長の決定に関与している、(2)KSと相同ではあるがKS活性部位システインを欠く、および(3)KSとヘテロ二量体化し得る。CLFの配列特徴を有するドメインは、現在同定されている全てのPUFAシンターゼ系で見出され、いずれの場合もマルチドメインタンパク質の一部として見出される。
【0101】
[0120]アシルトランスフェラーゼ(AT)活性を有するポリペプチドまたはこのポリペプチドのドメインは、下記の活性または特徴のうちの1つまたは複数を有すると既に定義されている:(1)脂肪アシル基をACPドメインから水へと転移させ得(即ち、チオエステラーゼ)、この脂肪アシル基を遊離脂肪酸として放出する、(2)脂肪アシル基をCoA等のアクセプターに転移させ得る、(3)様々なACPドメインの間でアシル基を転移させ得る、または(4)脂肪アシル基を親油性アクセプター分子(例えばリゾホスファチジン酸(lysophosphadic acid))に転移させ得る。ポリペプチド(またはポリペプチドのドメイン)は、既知のATとの配列相同性によりATファミリに属すると容易に同定され得る。
【0102】
[0121]エノイル−ACPレダクターゼ(ER)生物学的活性を有するポリペプチドまたはこのポリペプチドのドメインは脂肪アシル−ACP中のtrans二重結合(DH活性により導入されている)を還元し得ることが既に分かっており、関連する炭素が飽和される。PUFAシンターゼ系のERドメインはER酵素のファミリに対する相同性を有することが既に分かっており(Heath et al.,Nature 406:145−146(2000)、全体が参照により本明細書に組み込まれる)、ER相同体はインビトロでエノイルACPレダクターゼとして機能することが分かっている(Bumpus et al.J.Am.Chem.Soc,130:11614−11616(2008)、全体が参照により本明細書に組み込まれる)。用語「エノイル−ACPレダクターゼ」は、「エノイルレダクターゼ」、「エノイルACP−レダクターゼ」および「エノイルアシル−ACPレダクターゼ」と互換的に使用されている。ポリペプチド(またはポリペプチドのドメイン)は、既知のERとの配列相同性によりERファミリに属すると容易に同定され得る。
【0103】
[0122]一部の実施形態では、本発明は、1種または複数種のPUFAシンターゼドメインをコードするPFA1(配列番号1)内のポリヌクレオチド配列と少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列を含む核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、この核酸分子は、1種または複数種のPUFAシンターゼドメイン(例えば、KSドメイン(配列番号7)、MATドメイン(配列番号9)、ACPドメイン(例えば、配列番号13、15、17、19、21または23のいずれか1つ)、2個以上のACPドメインの組み合わせ、例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のACPドメイン、例えばタンデムドメイン(配列番号11およびその一部)、KRドメイン(配列番号25)、DHドメイン(配列番号27)ならびにこれらの組み合わせ)をコードするPFA1(配列番号1)内のポリヌクレオチド配列と少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、この核酸分子は、1種または複数種のPUFAシンターゼドメイン(例えば、任意の他の個々のドメインの1つまたは複数のコピーと組み合わされた任意の個々のドメインの1つまたは複数のコピー)をコードするPFA1(配列番号1)内の1種または複数種のポリヌクレオチド配列を含む。
【0104】
[0123]一部の実施形態では、本発明は、1種または複数種のPUFAシンターゼドメインをコードするPFA2(配列番号3)内のポリヌクレオチド配列と少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列を含む核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、この核酸分子は、1種または複数種のPUFAシンターゼドメイン(例えばKSドメイン(配列番号29)、CLFドメイン(配列番号31)、ATドメイン(配列番号33)、ERドメイン(配列番号35)およびこれらの組み合わせ)をコードするPFA2(配列番号3)内のポリヌクレオチド配列と少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、この核酸分子は、1種または複数種のPUFAシンターゼドメイン(例えば、任意の他の個々のドメインの1つまたは複数のコピーと組み合わされた任意の個々のドメインの1つまたは複数のコピー)をコードするPFA2(配列番号3)内の1種または複数種のポリヌクレオチド配列を含む。
【0105】
[0124]一部の実施形態では、本発明は、1種または複数種のPUFAシンターゼドメインをコードするPFA3(配列番号5)内のポリヌクレオチド配列と少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列を含む核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、この核酸分子は、1種または複数種のPUFAシンターゼドメイン(例えばDHドメイン(例えば配列番号37および配列番号39)、ERドメイン(配列番号41)ならびにこれらの組み合わせ)をコードするPFA3(配列番号5)内のポリヌクレオチド配列と少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、この核酸分子は、1種または複数種のPUFAシンターゼドメイン(例えば、任意の他の個々のドメインの1つまたは複数のコピーと組み合わされた任意の個々のドメインの1つまたは複数のコピー)をコードするPFA3(配列番号5)内の1種または複数種のポリヌクレオチド配列を含む。
【0106】
[0125]一部の実施形態では、本発明は、配列番号1と少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、このポリヌクレオチド配列は、KS活性、MAT活性、ACP活性、KR活性、DH活性およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるPUFAシンターゼ活性を含むポリペプチドをコードする、核酸分子を対象とする。
【0107】
[0126]一部の実施形態では、本発明は、配列番号3と少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、このポリヌクレオチド配列は、KS活性、CLF活性、AT活性、ER活性およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるPUFAシンターゼ活性を含むポリペプチドをコードする、核酸分子を対象とする。
【0108】
[0127]一部の実施形態では、本発明は、配列番号5と少なくとも80%同一のポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、このポリヌクレオチド配列は、DH活性、ER活性およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるPUFAシンターゼ活性を含むポリペプチドをコードする、核酸分子を対象とする。
【0109】
[0128]一部の実施形態では、本発明は、配列番号2に係るPFA1の機能的等価物をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子を対象とする。
【0110】
[0129]一部の実施形態では、本発明は、配列番号4に係るPFA2の機能的等価物をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子を対象とする。
【0111】
[0130]一部の実施形態では、本発明は、配列番号6に係るPFA3の機能的等価物をコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子を対象とする。
【0112】
[0131]本発明は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、このポリペプチドは、PFA1(配列番号2)、PFA2(配列番号4)またはPFA3(配列番号6)のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を含み、このポリヌクレオチドは、1種または複数種のPUFAシンターゼ活性を含むポリペプチドをコードする、単離核酸分子を対象とする。
【0113】
[0132]本発明は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、このポリペプチドは、本発明のPUFAシンターゼの1種または複数種のPUFAシンターゼドメインのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、核酸分子を対象とする。
【0114】
[0133]一部の実施形態では、本発明は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、このポリペプチドは、1種または複数種のPUFAシンターゼドメインを含むPFA1(配列番号2)内のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、このポリペプチドは、1種または複数種のPUFAシンターゼドメイン(例えばKSドメイン(配列番号8)、MATドメイン(配列番号10)、ACPドメイン(例えば、配列番号14、16、18、20、22または24のいずれか1つ)、2個以上のACPドメインの組み合わせ、例えば2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個のACPドメイン、例えばタンデムドメイン(配列番号12およびその一部)、KRドメイン(配列番号26)、DHドメイン(配列番号28)ならびにこれらの組み合わせ)を含むPFA1(配列番号2)内のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ鎖配列を含む。一部の実施形態では、このポリペプチドは、1種または複数種のPUFAシンターゼドメイン(例えば、任意の他の個々のドメインの1つまたは複数のコピーと組み合わされた任意の個々のドメインの1つまたは複数のコピー)を含むPFA1(配列番号2)内の1種または複数種のアミノ酸配列を含む。
【0115】
[0134]一部の実施形態では、本発明は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、このポリペプチドは、1種または複数種のPUFAシンターゼドメインを含むPFA2(配列番号4)内のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、このポリペプチドは、1種または複数種のPUFAシンターゼドメイン(例えばKSドメイン(配列番号30)、CLFドメイン(配列番号32)、ATドメイン(配列番号34)、ERドメイン(配列番号36)およびこれらの組み合わせ)を含むPFA2(配列番号4)内のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、このポリペプチドは、1種または複数種のPUFAシンターゼドメイン(例えば、任意の他の個々のドメインの1つまたは複数のコピーと組み合わされた任意の個々のドメインの1つまたは複数のコピー)を含むPFA2(配列番号4)内の1種または複数種のアミノ酸配列を含む。
【0116】
[0135]一部の実施形態では、本発明は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、このポリペプチドは、1種または複数種のPUFAシンターゼドメインを含むPFA3(配列番号6)内のアミノ鎖配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む、核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、このポリペプチドは、1種または複数種のPUFAシンターゼドメイン(例えばDHドメイン(例えば配列番号38または配列番号40)、ERドメイン(配列番号42)およびこれらの組み合わせ)を含むPFA3(配列番号6)内のアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、このポリペプチドは、1種または複数種のPUFAシンターゼドメイン(例えば、任意の他の個々のドメインの1つまたは複数のコピーと組み合わされた任意の個々のドメインの1つまたは複数のコピー)を含むPFA3(配列番号6)内の1種または複数種のアミノ酸配列を含む。
【0117】
[0136]一部の実施形態では、本発明は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、このポリペプチドは、配列番号2と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含み、このポリペプチドは、KS活性、MAT活性、ACP活性、KR活性、DH活性およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるPUFAシンターゼ活性を含む、核酸分子を対象とする。
【0118】
[0137]一部の実施形態では、本発明は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、このポリペプチドは、配列番号4と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含み、このポリペプチドは、KS活性、CLF活性、AT活性、ER活性およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるPUFAシンターゼ活性を含む。
【0119】
[0138]一部の実施形態では、本発明は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子であって、このポリペプチドは、配列番号6と少なくとも80%同一のアミノ酸配列を含み、このポリペプチドは、DH活性、ER活性およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるPUFAシンターゼ活性を含む、核酸分子を対象とする。
【0120】
[0139]一部の実施形態では、この核酸分子は、本明細書で報告されているポリヌクレオチド配列と少なくとも約80%、85%もしくは90%同一のまたは本明細書で報告されているポリヌクレオチド配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%もしくは100%同一のポリヌクレオチド配列を含む。用語「パーセント同一性」とは、当技術分野で既知であるように、配列を比較することにより決定される、2種以上のアミノ酸配列の間のまたは2種以上のポリヌクレオチド配列の間の関係のことである。当技術分野では、「同一性」はまた、アミノ酸配列の間のまたはポリペプチド配列の間の配列関連性の程度であって、場合によってはそのような配列のストリング(string)の間の一致により決定される程度も意味する。
【0121】
[0140]本発明の参照ポリヌクレオチド配列と少なくとも例えば95%「同一」のポリヌクレオチド配列を有する核酸分子により、この核酸分子のポリヌクレオチド配列は参照配列と同一であることが意図されており、但し、このポリヌクレオチド配列は、この参照ポリヌクレオチド配列の各100個のヌクレオチド当たり最大5個のヌクレオチドの差異を含み得る。換言すると、参照ポリヌクレオチド配列と少なくとも95%同一のポリヌクレオチド配列を有する核酸分子を得るために、参照配列中のヌクレオチドのうちの最大5%を欠失させ得る、もしくは別のヌクレオチドに置換し得る、または参照配列中の全ヌクレオチドの最大5%のヌクレオチドの数を参照配列に挿入し得る。
【0122】
[0141]実際には、任意の特定のポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列が本発明のポリヌクレオチド配列またはアミノ酸配列と少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一であるかどうかを、既知のコンピュータプログラムを使用して従来通りに決定し得る。クエリー配列(本発明の配列)と対象の配列との間の最良の全体的な一致を決定する方法を、配列のアラインメントと同一性スコアの算出とを使用して決定し得る。このアラインメントを、コンピュータプログラムAlignXを使用して行っており、このプログラムはInvitrogen(www.invitrogen.com)のVector NTI Suite 10.0パッケージの構成要素である。このアラインメントを、アミノ酸配列アラインメントおよびポリヌクレオチド配列アラインメントの両方に関してClustalWアラインメント(Thompson,J.D.,et al.Nucl.Acids Res.22:4673−4680(1994))を使用して実施した。アミノ酸配列アラインメントおよびポリヌクレオチド配列アラインメントそれぞれに関して、デフォルトのスコアリングマトリックスBlosum62mt2およびswgapdnamtを使用した。アミノ酸配列の場合、デフォルトのギャップ開始ペナルティ(gap opening penalty)は10であり、ギャップ伸長ペナルティは0.1である。ポリヌクレオチド配列の場合、デフォルトのギャップ開始ペナルティは15であり、ギャップ伸長ペナルティは6.66である。
【0123】
[0142]本発明は、KS活性、MAT活性、ACP活性、KR活性、CLF活性、AT活性、ER活性、DH活性およびこれらの組み合わせからなる群から選択されるPUFAシンターゼ活性を含むポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む単離核酸分子であって、このポリヌクレオチドは、ストリンジェントな条件下で、上記で説明されているポリヌクレオチド配列のいずれかの相補鎖にハイブリダイズする、単離核酸分子を対象とする。
【0124】
[0143]核酸分子は、この核酸分子の一本鎖形態が、温度および溶液のイオン強度の適切な条件下で他の核酸分子にアニールし得る場合には、別の核酸分子(例えばcDNA、ゲノムDNAまたはRNA)に「ハイブリダイズ可能」である。ハイブリダイゼーション条件および洗浄条件は公知であり且つ例示されている。例えばSambrook J.and Russell D.2001.Molecular cloning:A laboratory manual,3rd edition.Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,New Yorkを参照されたい。温度およびイオン強度の条件により、ハイブリダイゼーションの「ストリンジェンシー」が決定される。ストリンジェンシー条件を調整して、中程度に類似の断片(例えば、遠縁の生物由来の相同配列)から高度に類似の断片(例えば、近縁の生物由来の機能性酵素を複製する遺伝子)をスクリーニングし得る。ハイブリダイゼーション後の洗浄によりストリンジェンシー条件が決定される。あるセットの条件は、一連の洗浄であって、15分にわたり室温にて6×SSC、0.5%SDSで開始し、次いで30分にわたり45℃にて2×SSC、0.5%SDSで繰り返し、次いで30分にわたり50℃にて0.2×SSC、0.5%SDSで2回繰り返す一連の洗浄を使用する。よりストリンジェントな条件の場合、洗浄液が上記と同一である洗浄をより高温で実施し、但し、0.2×SSC、0.5%SDSでの最後の2回の30分間の洗浄の温度を60℃まで上昇させる。より高ストリンジェントな条件の別のセットは、65℃における0.1×SSC、0.1%SDSでの2回の最終洗浄を使用する。より高ストリンジェントな条件のさらなるセットは、0.1×SSC、0.1%SDS、65℃でのハイブリダイゼーションで定義され、2×SSC、0.1%SDSで、続いて0.1×SSC、0.1%SDSで洗浄される。
【0125】
[0144]本発明は、上記で説明されているポリヌクオレチド配列のいずれかに完全に相補的であるポリヌクレオチド配列を含む単離核酸分子を対象とする。用語「相補的」は、互いにハイブリダイズし得るヌクレオチド塩基間の関係を説明するために使用される。例えば、DNAに関してアデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。
【0126】
[0145]ある特定の実施形態では、このポリヌクレオチドまたは核酸はDNAである。DNAの場合、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含む核酸分子は通常、1種または複数種のコード領域と作動可能に会合したプロモーターおよび/または他の転写調節エレメントもしくは翻訳調節エレメントを含み得る。作動可能な会合は、遺伝子産物(例えばポリペプチド)のためのコード領域が、この遺伝子産物の発現が調節配列の影響下にまたは制御下に置かれるように1種または複数種の調節配列と会合している場合である。2つのDNA断片(例えば、ポリペプチドコード領域およびこの領域と会合しているプロモーター)は、プロモーター機能の導入により所望の遺伝子産物をコードするmRNAが転写され、且つ2つのDNA断片の間の結合の性質が、発現調節配列の、遺伝子産物の発現を指示する能力を妨げない場合に、または転写されるDNAテンプレートの能力を妨げない場合に、「作動可能に会合している」。そのため、プロモーターが、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列の転写をもたらし得た場合には、このプロモーター領域は、このポリヌクレオチド配列と作動可能に会合しているであろう。このプロモーターは、所定の細胞中でのみDNAの実質的な転写を指示する細胞特異的プロモーターであり得る。一般に、コード領域はプロモーターに対して3’に位置する。プロモーターは、その全体が天然遺伝子に由来し得る、または自然界で見出される様々なプロモーターに由来する様々な要素で構成され得る、または合成DNA断片を含み得る。様々なプロモーターが、様々な組織中でもしくは細胞型中で、または成長の様々な段階で、または様々な環境条件もしくは生理学的条件に応答して遺伝子の発現を指示し得ることが当業者に理解される。遺伝子をほとんどの時間にてほとんどの細胞型で発現させるプロモーターは概して「構成的プロモーター」と称される。ほとんどの場合では、調節配列の正確な境界は完全には規定されていないことから、長さが異なるDNA断片が同一のプロモーター活性を有し得ることがさらに認識される。プロモーターは概して、転写開始部位によりこのプロモーターの3’末端で結合しており、バックグラウンドを超えて検出可能なレベルで転写を開始するのに必要な最小数の塩基または要素を含むように上流(5’方向)に伸びる。このプロモーター内では、転写開始部位(例えばヌクレアーゼS1でマッピングすることにより好都合に定義される)と、RNAポリメラーゼの結合に関与するタンパク質結合ドメイン(コンセンサス配列)とが見出されるであろう。
【0127】
[0146]適切な調節領域として、コード領域の上流(5’非コード領域)、コード領域内またはコード領域の下流(3’非コード領域)に位置し且つ会合したコード領域の転写、RNAプロセシングもしくはRNA安定性または翻訳に影響を及ぼす核酸領域が挙げられる。調節領域として、プロモーター、翻訳リーダー配列、RNAプロセシング部位、エフェクター結合部位およびステム−ループ構造が挙げられ得る。プロモーター以外の他の転写制御エレメント(例えばエンハンサー、オペレーター、リプレッサーおよび転写終結シグナル)は、ポリヌクレオチドと作動可能に会合して細胞特異的転写を指示し得る。コード領域の境界は、5’(アミノ)末端では開始コドンによりおよび3’(カルボキシル)末端では翻訳終止コドンにより決定される。コード領域として、原核生物領域、mRNA由来のcDNA、ゲノムDNA分子、合成DNA分子またはRNA分子が挙げられ得るがこれらに限定されない。このコード領域が真核細胞中の発現を意図されている場合、ポリアデニル化シグナルおよび転写終結配列は通常、このコード領域の3’に位置するであろう。
【0128】
[0147]本発明のある特定の態様では、少なくとも20個の塩基、少なくとも30個の塩基または少なくとも50個の塩基を有し且つ本発明のポリヌクレオチド配列にハイブリダイズするポリヌクレオチド配列をPCRプライマーとして利用し得る。典型的には、PCR型増幅技術では、このプライマーは様々な配列を有し且つ互いに相補的ではない。所望の試験条件に応じて、プライマーの配列を、標的核酸の効率的な且つ忠実な複製をもたらすように設計すべきである。PCRプライマーの設計方法は一般的であり、当技術分野で公知である。一般に、本配列の2つの短いセグメントをポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プロトコルで使用して、DNAまたはRNAに由来の相同遺伝子をコードする、より長い核酸断片を増幅し得る。ポリメラーゼ連鎖反応を、クローニングした核酸断片のライブラリで実施することもでき、このポリメラーゼ連鎖反応では、あるプライマーの配列は本核酸断片に由来し、他のプライマーの配列は、微生物遺伝子をコードするmRNA前駆体の3’末端に対するポリアデニル酸部分(polyadenylic acid tract)の存在を利用する。あるいは、この第2のプライマー配列は、クローニングベクターに由来する配列に基づき得る。
【0129】
[0148]加えて、特異的プライマーを設計し、このプライマーを使用して本配列の一部または全長を増幅し得る。得られた増幅産物を増幅反応の間に直接標識化し得、または増幅反応の後に標識化し得、適切なストリンジェンシーの条件下で完全長DNA断片を単離するためのプローブとして使用し得る。
【0130】
[0149]従って、本発明の核酸分子を使用して、相同タンパク質をコードする遺伝子を同一のまたは他の種または細菌種から単離し得る。配列依存性プロトコルを使用する相同遺伝子の単離は当技術分野で公知である。配列依存性プロトコルの例として下記が挙げられるがこれらに限定されない:核酸ハイブリダイゼーション方法、ならびに核酸増幅技術(例えば、ポリメラーゼ連鎖反応、Mullis et al.,米国特許第4,683,202号明細書;リガーゼ連鎖反応(LCR)(Tabor,S.et al.,Proc.Acad.Sci.USA 82:1074(1985))の様々な使用により例示されるDNAおよびRNAの増幅方法;または鎖置換増幅(SDA;Walker,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.89:392(1992))。
【0131】
[0150]一部の実施形態では、類似のまたは改善されたPUFAプロファイルを生じるPUFAシンターゼを同定するために、本発明の単離核酸分子を使用して他の生物から相同核酸分子を単離する。一部の実施形態では、本発明の単離核酸分子を使用して、多量のDHAおよび/またはEPAの産生に関与する、他の生物由来の相同核酸分子を単離する。
【0132】
[0151]本発明の核酸分子はまた、本発明のポリペプチドの検出を可能にするマーカー配列とインフレームで融合した、PUFAシンターゼ、PUFAシンターゼのドメインまたはPUFAシンターゼの断片をコードするポリヌクレオチド配列も含む。マーカー配列として、当業者に既知の栄養要求性マーカーまたは優性マーカー(例えばZEO(ゼオシン(zeocin))、NEO(G418)、ハイグロマイシン、亜ヒ酸塩、HPH、NATおよび同類のもの)が挙げられる。
【0133】
[0152]本発明はまた、PUFAシンターゼ遺伝子のバリアントも包含する。バリアントは、コード領域、非コード領域または両方の変更を含み得る。例は、サイレントな置換、付加または欠失を生じるがコードされるポリペプチドの特性または活性を変更しない変更を含むポリヌクレオチド配列バリアントである。ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチド配列バリアントは、遺伝暗号の縮重に起因するサイレント置換により作製される。さらなる実施形態では、ポリヌクレチド配列バリアントは様々な理由で作製され得、例えば、コドン発現を特定の宿主に最適化するために(例えば、トラウストキトリドmRNA中のコドンの、大腸菌(E.coli)またはサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)等の他の生物に好まれるものへの変更のために)作製され得る。
【0134】
[0153]また、本発明で提供されるのは、対立遺伝子バリアント、オルソログおよび/または種相同体である。当技術分野で既知の手順を使用して、本明細書で開示されている配列からの情報を使用し、本明細書で説明されている遺伝子の全長遺伝子、対立遺伝子バリアント、スプライスバリアント、全長コード部分、オルソログおよび/または種相同体を得ることができる。例えば、本明細書で提供される配列から適切なプローブまたはプライマーを作製し、対立遺伝子バリアントおよび/または所望の相同体に関して適切な核酸源をスクリーニングすることにより、対立遺伝子バリアントおよび/または種相同体を単離して同定し得る。
【0135】
[0154][ベクター]
[0155]本発明は、上記で説明されている核酸分子のいずれかまたはこれらの組み合わせと転写制御配列とを含む組換え核酸分子を対象とする。一部の実施形態では、この組換え核酸分子は組換えベクターである。
【0136】
[0156]本発明は、組換えベクターを作製する方法であって、本明細書で説明されている1種または複数種の単離核酸分子をベクターに挿入することを含む方法を対象とする。
【0137】
[0157]本発明のベクターは例えばクローニングベクターまたは発現ベクターであり得る。このベクターは例えばプラスミド、ウイルス粒子、ファージ等の形態であり得る。
【0138】
[0158]本発明のポリヌクレオチド配列は、ポリペプチドを発現するための様々な発現ベクターのいずれか1つに含まれ得る。そのようなベクターは、染色体の、非染色体のおよび合成のDNA配列またはRNA配列、例えばSV40の誘導体;細菌プラスミド;ならびに酵母プラスミドを含む。しかしながら、当業者に既知の任意の他の適切なベクターを使用し得る。
【0139】
[0159]適切なDNA配列を、様々な手順によりベクターに挿入し得る。例えば、このDNA配列を、伝統的なクローニング方法(制限酵素クローニング)またはより現代的な分子操作技術(例えばPCRクローニング、シームレスクローニング)等により挿入する。そのような手順および他のものは当業者の範囲内であると見なされる。
【0140】
[0160]本発明はまた、上記で説明されているポリヌクレオチド配列のうちの1つまたは複数を含む組換え構築物も含む。この構築物は、本発明の1種または複数種の配列が順方向にまたは逆方向に挿入されているベクター(例えばプラスミドまたはウイルスベクター)を含む。この実施形態の一態様では、この構築物は、この配列に作動可能に会合した調節配列(例えばプロモーター)をさらに含む。多数の適切なベクターおよびプロモーターが当業者に既知であり、市販されている。
【0141】
[0161]一部の実施形態は、PUFAシンターゼ系の構成要素をコードする1種または複数種の異種ポリヌクレオチドを含む組換えベクター(例えばプラスミド)を含む。組換えベクターは、操作された(例えば人工的に作製された)核酸分子であって、選択された核酸配列を操作するためのおよび/またはそのような核酸配列を宿主細胞に導入するためのツールとして使用される核酸分子である。従って、この組換えベクターは、このベクター中のポリヌクレオチドのクローニング、配列決定および/または他の方法での(例えば、組換え細胞を形成するために宿主細胞中にポリヌクレオチドを発現させることおよび/または送達することによる)操作での使用に適し得る。ベクターは、クローニングされるまたは送達されるポリヌクレオチドに隣接して天然では見出されないヌクレオチド配列を含み得る。ベクターはまた、このポリヌクレオチドに隣接して天然で見出されるまたはこのポリヌクレオチドの発現に有用である調節核酸配列(例えばプロモーター、非翻訳領域)も含み得る。組み込まれたポリヌクレオチドは、染色体プロモーターの制御下であり得る、天然のもしくはプラスミドのプロモーターの制御下であり得る、またはいくつかのプロモーターの制御の組み合わせ下であり得る。ベクターはRNAまたはDNAのいずれかであり得、原核生物または真核生物のいずれかであり得る。ベクターは染色体外エレメント(例えばプラスミド)として維持され得る、またはこのベクターは組換え生物(例えば微生物および植物細胞)の染色体に組み込まれ得る。ベクター全体が宿主細胞内の適当な位置で維持されてもよいし、ある特定の条件下で、PUFAシンターゼ系の構成要素をコードする1種または複数種の異種ポリヌクレオチドを残して外来性DNA(例えば不要なプラスミド配列)を欠失させてもよい。異種ポリヌクレオチドの単一のまたは複数のコピーを宿主ゲノムに組み込み得る。本発明の組換えベクターは少なくとも1種の選択マーカーを含み得る。
【0142】
[0162]一実施形態では、本発明で使用される組換えベクターは発現ベクターである。本明細書で使用される場合、語句「発現ベクター」は、コードされる産物(例えば目的のタンパク質)の産生に適したベクターを意味するために使用される。この実施形態では、産生される産物(例えば1種または複数種のPUFAシンターゼ)をコードする核酸配列を組換えベクターに挿入して組換え核酸分子を作製する。産生されるタンパク質をコードする核酸配列を、組換え宿主細胞内でのこの核酸配列の転写および翻訳を可能にするベクター中の調節配列にこの核酸配列を作動可能に連結する方法で、このベクターに挿入する。
【0143】
[0163]別の実施形態では、本発明の組換え核酸分子で使用される組換えベクターはターゲティングベクターである。本明細書で使用される場合、語句「ターゲティングベクター」は、特定の核酸分子を組換え宿主細胞中に送達するために使用されるベクターを意味するために使用され、この核酸分子は、宿主細胞内のまたは微生物内の内在性の遺伝子または遺伝子の一部を欠失させるために、不活性化するためにまたは置き換えるために使用される(即ち、標的を定めた遺伝子破壊またはノックアウト技術に使用される)。そのようなベクターはまた、当技術分野では「ノックアウト」ベクターとしても既知であり得る。この実施形態の一態様では、このベクターの一部、より典型的にはこのベクターに挿入された核酸分子(即ち挿入物)は、宿主細胞中の標的遺伝子(即ち、欠失または不活性化の標的とされる遺伝子)の核酸配列に相同である核酸配列を有する。ベクター挿入物の核酸配列は、標的遺伝子とこの挿入物とが相同組換えを受け得るように標的遺伝子と会合するように設計されており、これにより内在性標的遺伝子が欠失する、不活性化される、弱毒化される(即ち、この内在性標的遺伝子の少なくとも一部が変異することによりもしくは欠失することにより弱毒化される)、または置き換えられる。内在性スキゾキトリウム(Schizochytrium)遺伝子を例えば組換え遺伝子に置き換えるためのこのタイプの組換えベクターの使用を実施例セクションで説明し、トラウストキトリドの遺伝子形質転換のための一般的な技術は、2003年9月4日に公開された米国特許出願公開第20030166207号明細書で詳細に説明されている。微細藻類のための遺伝子形質転換技術は当技術分野で公知である。本発明のある実施形態では、本明細書で説明されているPUFAシンターゼ遺伝子を使用して植物または微生物(例えばトラウストキトリド)を形質転換し、そのような植物または微生物のPUFAシンターゼ産生能力を改善し得る、および/または変更し得る(改変し得る、変化させ得る)。
【0144】
[0164][宿主細胞]
[0165]本発明は、上記で説明されている核酸分子および組換え核酸分子ならびにこれらの組み合わせのいずれかを発現する宿主細胞を対象とする。
【0145】
[0166]用語「発現」は、本明細書で使用される場合、遺伝子が生化学物質(例えばRNAまたはポリペプチド)を産生するプロセスを意味する。このプロセスは、細胞内での遺伝子の機能的存在のあらゆる顕在化(例えば、限定されないが遺伝子ノックダウンならびに一過性発現および安定発現の両方)を含む。この発現として、この遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、低分子ヘアピンRNA(shRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)またはあらゆる他のRNA産物への転写、およびそのようなmRNAのポリペプチドへの翻訳が挙げられるがこれらに限定されない。最終的な所望の産物が生化学的である場合、発現には、この生化学的なおよび任意の前駆体の生成が含まれる。
【0146】
[0167]1種または複数種の所望の多価不飽和脂肪酸を産生するために、宿主細胞を遺伝子改変して、本明細書で開示されている1種または複数種のPUFAシンターゼまたはこのサブユニットをこの宿主細胞に導入し得る。
【0147】
[0168]本発明に係るPUFAシンターゼ系を発現するように生物を遺伝子改変する場合、一部の宿主生物は、PUFAを産生するためにPUFAシンターゼ系と共に必要とされるアクセサリータンパク質を内因的に発現し得る。しかしながら、一部の生物によるPUFAの産生を可能とするためには、またはこの産生を増強するためには、たとえこの生物が同種アクセサリータンパク質を内因的に産生するとしても、1種または複数種のアクセサリータンパク質をコードする核酸分子でこの生物を形質転換することが必要な場合がある。一部の異種アクセサリータンパク質は、宿主細胞の内在性アクセサリータンパク質と比べて形質転換PUFAシンターゼタンパク質と共に効果的にまたは効率的に機能し得る。
【0148】
[0169]アクセサリータンパク質は、コアPUFAシンターゼ系の一部ではない(即ち、PUFAシンターゼ酵素複合体自体の一部ではない)と見なされるがPUFA産生にまたは本発明のコアPUFAシンターゼ酵素複合体を使用する効率的なPUFA産生に必要であり得るタンパク質と本明細書では定義される。例えば、PUFAを産生するためには、PUFAシンターゼ系は、4’−ホスホパンテテイニル部分を補酵素Aからアシルキャリアタンパク質(ACP)ドメインへと転移させるアクセサリータンパク質と共に働かなければならない。従って、PUFAシンターゼ系は少なくとも1種の4’−ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(PPTアーゼ)ドメインを含むと見なされ得る、またはそのようなドメインはPUFAシンターゼ系に対するアクセサリードメインまたはアクセサリータンパク質であると見なされ得る。PPTアーゼの構造的特徴および機能的特徴は、例えば米国特許出願公開第2002/0194641号明細書、同第2004/0235127号明細書および同第2005/0100995号明細書で詳細に説明されている。
【0149】
[0170]4’−ホスホパンテテイニルトランスフェラーゼ(PPTアーゼ)生物学的活性(機能)を有するドメインまたはタンパク質は、4’−ホスホパンテテイニル部分を補酵素Aからアシルキャリアタンパク質(ACP)へと転移させる酵素として特徴付けられる。ACPの不変セリン残基へのこの転移により、不活性のアポ型はホロ型に活性化される。ポリケチド合成および脂肪酸合成の両方では、ホスホパンテテイン基は、成長するアシル鎖とチオエステルを形成する。PPTアーゼは、脂肪酸合成、ポリケチド合成および非リボソームペプチド合成で十分に特徴付けられている酵素のファミリである。多くのPPTアーゼの配列が既知であり、結晶構造が決定されており(例えばReuter K.,et al,EMBO J.18(23):6823−31(1999))、変異分析により活性に重要なアミノ酸残基が同定されている(Mofid M.R.,et al.,Biochemistry 43(14):4128−36(2004))。
【0150】
[0171]基質としてスキゾキトリウム(Schizochytrium)PUFAシンターゼACPドメインを認識することが既に実証されている1種の異種PPTアーゼは、ノストック(Nostoc)種PCC7120(以前はアナベナ(Anabaena)種PCC7120と呼ばれていた)のHet Iタンパク質である。Het Iは、ノストック(Nostoc)の異質細胞中に存在する糖−脂質層の構成成分である長鎖ヒドロキシ−脂肪酸の合成に関与することが知られているノストック(Nostoc)の遺伝子のクラスタ中に存在する(Black and Wolk,J.Bacteriol.176:2282−2292(1994);Campbell et al,Arch.Microbiol.167:251−258(1997))。Het Iは、このクラスタ中に存在するタンパク質Hgl EのACPドメインを活性化する可能性がある。Het Iを含む配列および構築物は、例えば米国特許出願公開第2007/0244192号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で説明されている。
【0151】
[0172]スキゾキトリウム(Schizochytrium)PUFAシンターゼACPドメインを認識することが既に実証されている別の異種PPTアーゼはSfpであり、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)に由来する。Sfpは十分に特徴付けられており、このSfpの広範囲の基質を認識する能力に起因して広く使用されている。公開されている配列情報(Nakana,et al.,Molecular and General Genetics 232:313−321(1992))に基づいて、コード領域を規定の上流および下流に隣接するDNA配列と共にpACYC−184クローニングベクターにクローニングすることにより、Sfp用に発現ベクターが既に作製された。この構築物は、適切な条件下でDHAを蓄積する大腸菌(E.coli)中でスキゾキトリウム(Schizochytrium)PUFAシンターゼと共発現される能力により実証されているように、機能的PPTアーゼをコードする(米国特許出願公開第2004/0235127号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)。
【0152】
[0173]宿主細胞として、微生物細胞、動物細胞、植物細胞および昆虫細胞が挙げられ得る。適切な宿主の代表例として、細菌細胞;好熱性のまたは中温性の細菌;海洋細菌;トラウストキトリド;真菌細胞、例えば酵母;植物細胞;昆虫細胞;および単離動物細胞が挙げられる。宿主細胞は、非形質移入細胞または少なくとも1種の他の組換え核酸分子で既に形質移入されている細胞のいずれかであり得る。宿主細胞として、PUFAシンターゼを発現するように操作されているトランスジェニック細胞も挙げられ得る。適切な宿主の選択は、本明細書の教示から当業者の範囲内であると見なされる。
【0153】
[0174]宿主細胞としてラビリンチュラ綱の任意の微生物が挙げられ、例えばトラウストキトリアレス目の微生物が挙げられる。本出願では、用語「トラウストキトリアレス」および「トラウストキトリド」は互換的に使用される。一部の実施形態では、この宿主細胞はトラウストチトリアシエ科の任意の微生物である。本発明の宿主細胞は、下記を含むがこれらに限定されない属の任意の微生物であり得る:トラウストキトリウム(Thraustochytrium)、ラビリンチュロイデス(Labyrinthuloides)、ジャポノキトリウム(Japonochytrium)およびスキゾキトリウム(Schizochytrium)。これらの属の種として下記が挙げられるがこれらに限定されない:あらゆるスキゾキトリウム(Schizochytrium)種、例えばスキゾキトリウム・アグレガタム(Schizochytrium aggregatum)、スキゾキトリウム・リマシナム(Schizochytrium limacinum)、スキゾキトリウム・ミヌツム(Schizochytrium minutum);あらゆるトラウストキトリウム(Thraustochytrium)種(例えば、元ウルケニア(Ulkenia)種、例えばU.ビスルゲンシス(U.visurgensis)、U.アメーボイド(U.amoeboida)、U.サルカーリアナ(U.sarkariana)、U.プロフンダ(U.profunda)、U.ラジアータ(U.radiata)、U.ミヌタ(U.minuta)およびウルケニア(Ulkenia)種BP−5601)ならびに例えばトラウストキトリウム・ストリアタム(Thraustochytrium striatum)、トラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)、トラウストキトリウム・ロセウム(Thraustochytrium roseum);ならびにあらゆるジャポノキトリウム(Japonochytrium)種。トラウストキトリアレスの株として下記が挙げられるがこれらに限定されない:スキゾキトリウム(Schizochytrium)種(S31)(ATCC 20888);スキゾキトリウム(Schizochytrium)種(S8)(ATCC 20889);スキゾキトリウム(Schizochytrium)種(LC−RM)(ATCC 18915);スキゾキトリウム(Schizochytrium)種(SR21);スキゾキトリウム・アグレガタム(Schizochytrium aggregatum)(Goldstein et Belsky)(ATCC 28209);スキゾキトリウム・リマシナム(Schizochytrium limacinum)(Honda et Yokochi)(IFO 32693);トラウストキトリウム(Thraustochytrium)種(23B)(ATCC 20891);トラウストキトリウム・ストリアタム(Thraustochytrium striatum)(Schneider)(ATCC 24473);トラウストキトリウム・アウレウム(Thraustochytrium aureum)(Goldstein)(ATCC 34304);トラウストキトリウム・ロセウム(Thraustochytrium roseum)(Goldstein)(ATCC 28210);およびジャポノキトリウム(Japonochytrium)種(L1)(ATCC 28207)。遺伝子改変に適切な宿主微生物の他の例として下記が挙げられるがこれらに限定されない:酵母、例えばサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロマイセス・カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)、または他の酵母、例えばカンジダ(Candida)、クリベロマイセス(Kluyveromyces)、または他の真菌、例えば糸状菌、例えばアスペルギルス(Aspergillus)、ニューロスポラ(Neurospora)、ペニシリウム(Penicillium)等。細菌細胞も宿主として使用し得る。この細菌として大腸菌(Escherichia coli)が挙げられ、この大腸菌(Escherichia coli)は発酵プロセスで有用であり得る。あるいは、ラクトバチルス(Lactobacillus)種またはバチルス(Bacillus)種等の宿主を宿主として使用し得る。
【0154】
[0175]植物宿主細胞として、あらゆる高等植物(例えば、双子葉植物および単子葉植物の両方)ならびに消費可能植物(consumable plant)(例えば、作物、および油のために使用される植物)が挙げられるがこれらに限定されない。そのような植物として、例えばキャノーラ、油料種子、ダイズ、ナタネ、マアニ、トウモロコシ、ベニバナ、ヒマワリ、ピーナッツおよびタバコが挙げられ得る。他の植物として、医薬品、着香料、栄養補助剤、機能性食品成分、美容上活性な薬剤として使用される化合物を産生することが知られている植物、またはこれらの化合物/薬剤を産生するように遺伝子操作されている植物が挙げられる。そのため、任意の植物種または植物細胞が選択され得る。植物および植物細胞ならびにこれらから成長する植物またはこれらに由来する植物として下記が挙げられるがこれらに限定されない:キャノーラ(ブラッシカ・ラパL.(Brassica rapa L.))から得られる植物および植物細胞;キャノーラ栽培品種NQC02CNX12(ATCC PTA−6011)、NQC02CNX21(ATCC PTA−6644)およびNQC02CNX25(ATCC PTA−6012)ならびにキャノーラ栽培品種NQC02CNX12、NQC02CNX21およびNQC02CNX25に由来する栽培品種、育種栽培品種(breeding cultivar)および植物部位(それぞれ米国特許第7,355,100号明細書、同第7,456,340号明細書および同第7,348,473号明細書を参照されたい);マメ科の植物;グリシン(Glycine)属の植物;インゲンマメ(ファセオルス・ブルガリス(Phaseolus vulgaris));ソラマメ(ビシア・ファバ(Vicia faba));エンドウ(ピスム・サティブム(Pisum sativum));ダイズ(グリシン・マックス(Glycine max));ナタネ(ブラシカ種(Brassica spp.));マアニ/アサ(リヌム・ウシタティスシム(Linum usitatissimum));トウモロコシ(maize)(トウモロコシ(corn))(ゼア・マイズ(Zea mays));ベニバナ(カルサムス・チンクトリウス(Carthamus tinctorius));ヒマワリ(ヘリアンサス・アナス(Helianthus annuus));タバコ(ニコチアナ・タバカム(Nicotiana tabacum));アラビドプシス・サリアナ(Arabidopsis thaliana)、ブラジルナッツ(ベソレチア・エクセルサ(Betholettia excelsa));トウゴマ(リシヌス・コムニス(Riccinus communis));ココナツ(コクス・ヌシフェラ(Cocus nucifera));コリアンダー(コリアンドルム・サチブム(Coriandrum sativum));綿(ゴシピウム種(Gossypium spp.));ラッカセイ(アラキス・ヒポガエ(Arachis hypogaea));ホホバ(シモンドシア・キネンシス(Simmondsia chinensis));カラシナ(ブラシカ種(Brassica spp.)およびシナピス・アルバ(Sinapis alba));アブラヤシ(エラエイス・ギネイス(Elaeis guineeis));オリーブ(オレア・エウロパエア(Olea eurpaea));イネ(オリザ・サティバ(Oryza sativa));カボチャ(ククルビタ・マクシマ(Cucurbita maxima));オオムギ(ホルデウム・ウルガレ(Hordeum vulgare));コムギ(トラエチカム・エスチバム(Traeticum aestivum));ならびにアオウキクサ(レムナケアエ種(Lemnaceae sp.))。これらのおよび他の植物からの植物系統を作製し得る、選択し得る、または限定されないが下記等の望ましい形質もしくは下記と関連する望ましい形質に最適化し得る:種子収量、耐倒伏性、出芽、耐病性または耐容性、成熟度、晩期の植物の無傷性、草高、脱粒抵抗性、植物形質転換の容易さ、油分含量もしくは油分プロファイル。植物系統を植物育種を通して選択し得、例えば、系統育種、循環選択育種(recurrent selection breeding)、交雑交配および戻し交雑育種、ならびにマーカー補助育種および耕起等の方法により選択し得る。例えば米国特許第7,348,473号明細書を参照されたい。
【0155】
[0176]動物細胞として、あらゆる単離動物細胞が挙げられる。
【0156】
[0177]本発明は、本発明の1種または複数種の核酸分子または組換え核酸分子(例えばベクター)を発現する宿主細胞を対象とする。
【0157】
[0178]本発明は、組換え宿主細胞を作製する方法であって、宿主細胞に組換えベクターを導入することを含む方法を対象とする。
【0158】
[0179]宿主細胞を、例えばクローニングベクターまたは発現ベクターであり得る本発明のベクターで遺伝子操作し得る(形質導入し得る、または形質転換し得る、または形質移入し得る)。このベクターは、例えばプラスミド、ウイルス粒子、ファージ等の形態であり得る。本明細書で説明されているポリヌクレオチド配列と適切なプロモーター配列または制御配列とを含むベクターを利用して、このポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドの発現を可能にするように適切な宿主を形質転換し得る。宿主細胞の遺伝子改変は、好ましいまたは最適な宿主コドンの使用のための遺伝子の最適化も含み得る。
【0159】
[0180]操作された宿主細胞を、必要に応じてプロモーターの活性化、形質転換体の選択または本発明の遺伝子の増幅のために改変された従来の栄養培地で培養し得る。培養条件(例えば温度、pHおよび同類のもの)は、発現用に選択された宿主細胞で既に使用されているものであり、当業者に明らかであるだろう。
【0160】
[0181]一部の実施形態では、この宿主細胞は、天然PUFAシンターゼ系が欠失しているトラウストキトリドである。本発明者らは、スキゾキトリウム(Schizochytrium)中のPFA1、PFA2およびPFA3のノックアウトを作製している(米国特許第7,217,856号明細書を参照されたい;この明細書ではOrfA、OrfBおよびOrfCと称される)。このノックアウト戦略は、スキゾキトリウム(Schizochytrium)中で起こることが実証されている相同組み換えに依存する(米国特許第7,001,772号明細書を参照されたい)。いくつかの戦略をノックアウト構築物の設計で利用し得る。これら3種の遺伝子を不活性化するために使用される特定の戦略は、Orfのクローン化部分への、チューブリンプロモーター(pMON50000由来、米国特許第7,001,772号明細書を参照されたい)に連結されたZeocin(商標)耐性遺伝子の挿入を利用した。次いで、中断されたコード領域を含む新規の構築物を、粒子衝突による野生型スキゾキトリウム(Schizochytrium)細胞の形質転換に使用した(米国特許第7,001,772号明細書を参照されたい)。衝突した細胞を、Zeocin(商標)とPUFAの供給物との両方を含むプレート上に広げた。次いで、このプレート上で増殖したコロニーを、PUFAを補充していないZeocin(商標)プレート上に画線した。増殖にPUFA補充を必要とするこのコロニーは、相同組換えにより不活性化されたPUFAシンターゼOrfを有していることに関する候補であった。3種全ての場合において、この推定を、それぞれのスキゾキトリウム(Schizochytrium)PFAシンターゼ遺伝子の完全長ゲノムDNAクローンで細胞を形質転換させることによるノックアウトの救出により確認した。さらに場合によっては、救出された形質転換体においてZeocin(商標)耐性遺伝子が除去されていることを発見し(米国特許第7,217,856号明細書を参照されたい)、このことは、導入された機能性遺伝子が二重相同組換え(即ち、耐性マーカーの欠失)により元々の部位に組み込まれていたことを示す。この戦略の成功への1つの鍵は、増殖培地へのPUFAの補充であった。効果的な補充手段は、増殖培地への添加前での、部分的にメチル化されたベータ−シクロデキストリンとの混合によるPUFAの隔離であることを発見した(米国特許第7,217,856号明細書を参照されたい)。まとめると、これらの実験から、当業者は、本明細書に記載されているガイダンスを前提として、PUFAシンターゼ含有微生物(例えばスキゾキトリウム(Schizochytrium))中のPUFAシンターゼ遺伝子のうちの1つまたは複数を不活性化させてPUFA栄養要求株を作製し得、次いでこの株を(例えば組換え生物の脂肪酸プロファイルを変更するために)本発明に係る(例えば他のPUFAシンターゼ遺伝子の導入による)さらなる遺伝子改変に使用し得るという原理が実証される。
【0161】
[0182]本発明の生物の遺伝子改変の1つの要素は、トラウストキトリドゲノムを直接形質転換する能力である。米国特許第7,001,772号明細書(上記を参照されたい)では、単一の交差相同組換えによるスキゾキトリウム(Schizochytrium)の形質転換および二重交差相同組換えによる標的を定めた遺伝子置き換えが実証された。上記で論じたように、本発明者らは、この相同組換え用の技術を使用してスキゾキトリウム(Schizochytrium)中のPUFAシンターゼ系のPFA1、PFA2およびPFA3を不活性化させている(米国特許第7,217,856号明細書を参照されたい)。得られた変異体は、PUFAによる培地の補充に依存する。いくつかの形質転換マーカー、導入された遺伝子の高レベル発現のためのプロモーターエレメントおよび外来性遺伝子物質の送達方法が開発されており且つ使用可能である。従って、このツールは、トラウストキトリドおよび類似のPUFAシンターゼ系を有する他の真核生物の内在性PUFAシンターゼ遺伝子をノックアウトするのに、ならびにこの遺伝子を他の生物由来の遺伝子(例えば、本明細書で示すスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来の遺伝子)で置き換えるのに適切である。
【0162】
[0183][組換え宿主細胞を作製する方法]
[0184]本発明は、組換え宿主細胞を作製する方法であって、宿主細胞に組換えベクターを導入することを含む方法を対象とする。
【0163】
[0185]宿主細胞を、例えばクローニングベクターまたは発現ベクターであり得る本発明のベクターで遺伝子操作し得る(形質導入し得る、または形質転換し得る、または形質移入し得る)。このベクターは、例えばプラスミド、ウイルス粒子、ファージ等の形態であり得る。本明細書で説明されているポリヌクレオチド配列と適切なプロモーター配列または制御配列とを含むベクターを利用して、このポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドの発現を可能にするように適切な宿主を形質転換し得る。宿主細胞の遺伝子改変は、好ましいまたは最適な宿主コドンの使用のための遺伝子の最適化も含み得る。
【0164】
[0186]本発明によれば、用語「形質移入」は、外来性核酸分子(即ち組換え核酸分子)を細胞に挿入し得る任意の方法を意味するために使用される。用語「形質転換」は、そのような用語が微生物細胞(例えば藻類、細菌および酵母)または植物細胞への核酸分子の導入を意味するために使用される場合に、用語「形質移入」と互換的に使用され得る。微生物系および植物系では、用語「形質転換」は、微生物または植物による外来性核酸の獲得に起因する遺伝的変化を説明するために使用され、用語「形質移入」と本質的に同義である。しかしながら、動物細胞では、形質転換は、例えば癌化した後での培養物中の細胞の増殖特性の変化を意味し得る別の意味を獲得している。従って、混乱を避けるために、用語「形質移入」は、動物細胞への外来性核酸の導入に関して好ましくは使用され、用語「形質移入」は本明細書では、動物細胞の形質移入と、この用語が細胞への外来性核酸の導入に関連する限りにおいて微生物細胞または植物細胞の形質転換とを一般に包含するように使用されるであろう。従って、形質移入技術として、形質転換、粒子衝突、拡散、能動輸送、浴音波処理、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着、感染およびプロトプラスト融合が挙げられるがこれらに限定されない。
【0165】
[0187]組換えDNA技術の使用により、例えば、宿主細胞内の核酸分子のコピーの数、この核酸分子が転写される効率、得られた転写産物が翻訳される効率および翻訳後改変の効率を操作することにより、形質移入された核酸分子の発現の制御が改善され得ることが当業者に認識されるであろう。加えて、プロモーター配列を、天然のプロモーターと比較して発現レベルを改善するために遺伝子操作する可能性がある。核酸分子の発現の制御に有用な組換え技術として下記が挙げられるがこれらに限定されない:この核酸分子の1種または複数種の宿主細胞染色体への組込み、ベクター安定配列のプラスミドへの付加、転写制御シグナル(例えばプロモーター、オペレーター、エンハンサー)の置換または改変、翻訳制御シグナル(例えばリボソーム結合部位、Shine−Dalgarno配列)の置換または改変、宿主細胞のコドン使用に対応するための核酸分子の改変、および転写物を不安定化させる配列の欠失。
【0166】
[0188]操作された宿主細胞を、必要に応じてプロモーターの活性化、形質転換体の選択または本発明の遺伝子の増幅のために改変された従来の栄養培地で培養し得る。培養条件(例えば温度、pHおよび同類のもの)は、発現用に選択された宿主細胞で既に使用されているものであり、当業者に明らかであるだろう。
【0167】
[0189]本発明によれば、遺伝子改変された微生物または植物として、組換え技術を使用してまたは古典的な変異誘発およびスクリーニング技術により改変されている微生物または植物が挙げられる。本明細書で使用される場合、遺伝子発現の減少、遺伝子の機能の低下または遺伝子産物(即ち、遺伝子によりコードされたタンパク質)の機能の低下をもたらす遺伝子改変は、遺伝子の(完全なまたは部分的な)不活性化、欠失、中断、阻害または下方制御と称され得る。例えば、遺伝子によりコードされたタンパク質の機能の低下をもたらすそのような遺伝子での遺伝子改変は、この遺伝子の完全な欠失(即ち、この遺伝子は存在せず、従ってこのタンパク質は存在しない)、このタンパク質の不完全な翻訳もしくは非翻訳をもたらすこの遺伝子の変異(即ち、このタンパク質は発現されない)またはこのタンパク質の天然での機能を低下させるもしくは無効にするこの遺伝子の変異(例えば、酵素活性もしくは作用が低下したもしくはこれらを有しないタンパク質が発現される)の結果であり得る。遺伝子の発現または機能の増加をもたらす遺伝子改変は、遺伝子の増幅、過剰産生、過剰発現、活性化、増強、付加または上方制御と称され得る。
【0168】
[0190]本発明に係る微生物または植物の遺伝子改変は、PUFAシンターゼ系が内在性であり且つ遺伝子改変されているか、即ち(この内在性の系を改変するまたはしないという選択による)この生物への組換え核酸分子の導入により内在性であるか、または組換え技術により完全に提供されるかにかかわらず、この微生物または植物により発現されるPUFAシンターゼ系の活性に好ましくは影響を及ぼす。PUFAシンターゼ系またはそのような系を発現する生物のPUFA産生プロファイルを変更することとして、遺伝子改変が存在しない場合と比較した(即ち、改変されていない野生型の微生物もしくは植物と比較した、または少なくともPUFA合成に関しては改変されていない微生物もしくは植物と比較した、即ちPUFA合成に関連していない他の改変を有する可能性がある生物と比較した)、宿主の微生物または植物による任意の1種または複数種のPUFA(または、このPUFAシンターゼ系により産生される他の生物活性分子)の産生でのあらゆる検出可能なまたは測定可能な変化をもたらすことが挙げられる。PUFAシンターゼ系の活性に影響を及ぼすこととして、遺伝性改変が存在しない場合と比較した、生物により発現されるPUFAシンターゼ系のあらゆる検出可能なまたは測定可能な変化または改変をもたらすあらゆる遺伝子改変が挙げられる。PUFAシンターゼ系の検出可能な変化または改変として下記が挙げられ得るがこれらに限定されない:遺伝子改変が存在しない内在性PUFAシンターゼ系と比較した、改変PUFAシンターゼ系中のドメインのうちの任意の1種もしくは複数種の発現および/もしくは生物学的活性の変化もしくは改変(導入、増加もしくは減少);生物がPUFAシンターゼ系の産物の産生等の測定可能な/検出可能なPUFAシンターゼ系活性を現在は有するようなPUFAシンターゼ系活性の生物への導入(即ち、この生物は、この遺伝子改変前はPUFAシンターゼ系を含んでいなかった);PUFAシンターゼ活性が改変されるような、生物により内因的に発現されるPUFAシンターゼ系とは異なるPUFAシンターゼ系由来の機能性ドメインの生物への導入(例えば、PUFAシンターゼのドメインもしくはタンパク質が、PUFAシンターゼ系を内因的に発現する生物(例えばトラウストキトリド)に導入される);PUFAシンターゼ系により産生される生物活性分子(例えばPUFA)の量の変化(例えば、この系は、遺伝子改変が存在しない場合と比較して所与の産物を多く(増加した量で)もしくは少なく(減少した量で)産生する);PUFAシンターゼ系により産生される生物活性分子のタイプの変化(例えばPUFAのタイプの変化)(例えば、この系は、さらなるもしくは異なるPUFA、新規のもしくは異なる産物、またはこの系により天然に産生されるPUFAもしくは他の産物のバリアントを産生する);ならびに/またはPUFAシンターゼ系により産生される複数種の生物活性分子の比の変化(例えば、この系は、あるPUFAの別のPUFAに対する異なる比を生じる、この遺伝子改変が存在しない場合と比較して完全に異なる脂質プロファイルを生じる、もしくは天然の立体配置と比較してトリアシルグリセロール中の異なる位置に様々なPUFAを配置する)。そのような遺伝子改変として任意のタイプの遺伝子改変が挙げられ、具体的には、組換え技術および/または古典的な変異誘発により行われる改変が挙げられる。
【0169】
[0191]PUFAシンターゼ系の機能性ドメインまたは機能性タンパク質の活性の増加への言及は、このドメイン系またはタンパク質系の機能性の増加をもたらす、このドメインまたはタンパク質を含む(またはこのドメインもしくはタンパク質が導入される)生物におけるあらゆる遺伝子改変を意味しており、且つこのドメインまたはタンパク質のより高い活性(例えば特異的活性またはインビボでの酵素活性)、このドメイン系またはタンパク質系の阻害または分解の減少、およびこのドメインまたはタンパク質の過剰発現を含み得ることに留意すべきである。例えば、遺伝子のコピー数は増加され得る、発現レベルは、天然プロモーターのレベルと比べて高いレベルの発現を付与するプロモーターの使用により上昇され得る、または遺伝子は、この遺伝子によりコードされるドメインまたはタンパク質の活性を増加させるように遺伝子操作または古典的な変異誘発により変更され得る。
【0170】
[0192]同様に、PUFAシンターゼ系の機能性ドメインまたは機能性タンパク質の活性の低下への言及は、このドメインまたはタンパク質の機能性の低下をもたらすそのようなドメインまたはタンパク質を含む(またはこのドメインもしくはタンパク質が導入される)生物におけるあらゆる遺伝子改変を意味しており、且つこのドメインまたはタンパク質の活性の低下、このドメインまたはタンパク質の阻害または分解の減少、およびこのドメインまたはタンパク質の発現の減少または消失を含む。例えば、本発明のドメインまたはタンパク質の作用を、このドメインもしくはタンパク質の産生をブロックすることによりもしくは減少させることにより、このドメインもしくはタンパク質をコードする遺伝子もしくはこの遺伝子の一部を「ノックアウトする」ことにより、ドメイン活性もしくはタンパク質活性を低下させることにより、またはこのドメインもしくはタンパク質の活性を阻害することにより減少させ得る。ドメインまたはタンパク質の産生のブロックすることまたは減少させることとして、このドメインまたはタンパク質をコードする遺伝子を、増殖培地中に誘導化合物の存在を必要とするプロモーターの制御下に置くことが挙げられ得る。この誘導物質が培地から枯渇するような条件を確立することにより、このドメインまたはタンパク質をコードする遺伝子の(従ってタンパク質合成の)発現がオフになる可能性がある。本発明者らは、米国特許第7,217,856号明細書においてトラウストキトリド微生物中の標的遺伝子を欠失させる(ノックアウトする)能力を実証している。ドメインまたはタンパク質の活性をブロックすることまたは減少させることはまた、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第4,743,546号明細書で説明されているものと類似の切除技術方法を使用することも含む可能性がある。このアプローチを使用するために、目的のタンパク質をコードする遺伝子を、ゲノムからのこの遺伝子の特異的な制御された切除を可能にする特定の遺伝子配列の間にクローニングする。切除は、例えば、米国特許第4,743,546号明細書のように培養物の培養温度のシフトにより、またはいくつかの他の物理的シグナルもしくは栄養的シグナルにより促進される可能性がある。
【0171】
[0193]本発明の特定の実施形態では、内在性トラウストキトリドPUFAシンターゼ遺伝子(例えば、DHAおよびDPA n−6を通常産生するPUFAシンターゼ酵素をコードするスキゾキトリウム(Schizochytrium)遺伝子)をランダム変異誘発または標的を定めた変異誘発により改変し、相同PUFAシンターゼタンパク質をコードする他の生物由来の(例えば細菌由来のもしくは他の供給源由来の)遺伝子に置き換える、および/または遺伝子改変されたスキゾキトリウム(Schizochytrium)、トラウストキトリウム(Thraustochytrium)もしくは他のトラウストキトリドのPUFAシンターゼ遺伝子に置き換える。本明細書で論じているように、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来の1種または複数種のPUFAシンターゼ遺伝子をコードする核酸分子の組み合わせにより、望ましいPUFAまたは他の生物活性分子が産生される。これらの導入されたおよび/または改変された遺伝子にコードされる酵素の産物は例えばEPAであり得る、または他のPUFA等のいくつかの他の関連分子の可能性がある。この方法の1つの特徴は、効率的な産生およびPUFAのリン脂質(PL)およびトリアシルグリセロール(TAG)への組込みに必須であるトラウストキトリドのPUFA合成および蓄積の機序の内在性構成成分の利用であり、同時にスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来のPUFAシンターゼの例えばEPAを産生する能力をさらに利用する。具体的には、本発明のこの実施形態は、親株の高い油産生性を維持しつつ、生物により産生されるPUFAの種類の変更を対象とする。
【0172】
[0194]下記の議論のうちのいくつかは生物スキゾキトリウム(Schizochytrium)を例示的宿主生物として使用するが、あらゆるトラウストキトリド(例えば、トラウストキトリウム(Thraustochytrium)属、ラビリンチュロイデス(Labyrinthuloides)属およびジャポノキトリウム(Japonochytrium)属のメンバー)を本発明に従って改変し得る。さらに、米国特許第7,247,461号明細書に記載されている生物をスクリーニングする方法を使用して本方法で有用な他の生物を同定し得、そのような生物全てが本明細書に包含される。さらに、PUFAシンターゼ系を本明細書で提供される例示的な情報を使用して構築し得、他の微生物(例えば細菌または酵母)中で産生させ得、植物細胞に形質転換させて遺伝子改変植物を作製し得る。本明細書で論じられている概念を必要に応じて様々な系に適用し得る。
【0173】
[0195]組換え核酸分子および宿主細胞の形質移入に関する上記の概略的な考察は、本明細書で論じられているあらゆる組換え核酸分子(例えば、PUFAシンターゼ系由来の少なくとも1種のドメインの生物学的活性を有する任意のアミノ酸配列をコードするもの、他のPUFAシンターゼ系由来のアミノ酸配列をコードするもの、および他のタンパク質またはドメインをコードするもの)に適用されることが意図されている。
【0174】
[0196][培養物および単離バイオマス]
[0197]本発明は、本発明の1種または複数種の単離組換え宿主細胞を含む培養物を対象とする。ミクロフローラ(例えば微細藻類およびトラウストキトリド)の播種、培養および回収のための様々な発酵パラメータは当技術分野で既知である。例えば米国特許第5,130,242号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。液体のまたは固体の培地は天然のまたは人工の海水を含み得る。従属栄養性の増殖のための炭素源として、グルコース、フルクトース、キシロース、サッカロース、マルトース、可溶性デンプン、糖蜜、フコース、グルコサミン、デキストラン、脂肪、油、グリセロール、酢酸ナトリウムおよびマンニトールが挙げられるがこれらに限定されない。窒素源として、ペプトン、酵母抽出物、ポリペプトン、麦芽抽出物、肉抽出物、カザミノ酸、コーンスティープリカー、有機窒素源、グルタミン酸ナトリウム、尿素、無機窒素源、酢酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムおよび硝酸アンモニウムが挙げられるがこれらに限定されない。
【0175】
[0198]本発明は、本発明の組換え宿主細胞の単離バイオマスを対象とする。本発明の単離バイオマスは、例えば米国特許第5,130,242号明細書および米国特許出願公開第2002/0001833号明細書(これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)で説明されている、バイオマスの単離のための任意の従来の方法により得られる収穫細胞バイオマスである。一部の実施形態では、培養物1リットルから単離されたバイオマスの乾燥細胞重量は、炭素源、窒素源および栄養素源と約950ppm〜約8500ppmの塩化物イオンとを含む約pH6.5〜約9.5の培養培地中における約15℃〜約30℃での約6日〜約8日にわたる培養後に少なくとも約10g、少なくとも約15g、少なくとも約20g、少なくとも約25g、少なくとも約30g、少なくとも約50g、少なくとも約60g、少なくとも約70g、少なくとも約80g、少なくとも約100g、少なくとも約120g、少なくとも約140g、少なくとも約160g、少なくとも約180gまたは少なくとも約200gである。一部の実施形態では、培養物1リットルから単離されたバイオマスの乾燥細胞重量は、炭素源、窒素源および栄養素源と約950ppm〜約8500ppmの塩化物イオンとを含む約pH6.5、約pH7、約pH7.5、約pH8.0、約pH8.5、約pH9または約pH9.5の培養培地中における約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃または約30℃での約6日、約7日または約8日にわたる培養後に少なくとも約10g、少なくとも約15g、少なくとも約20g、少なくとも約25g、少なくとも約30g、少なくとも約50g、少なくとも約60g、少なくとも約70g、少なくとも約80g、少なくとも約100g、少なくとも約120g、少なくとも約140g、少なくとも約160g、少なくとも約180gまたは少なくとも約200gである。一部の実施形態では、培養物1リットルから単離されたバイオマスの乾燥細胞重量は、炭素源、窒素源および栄養素源と約950ppm〜約8500ppmの塩化物イオンとを含む約pH6.5〜約pH9.5の培養培地中における約15℃〜約30℃での約6日〜約8日にわたる培養後に約10g〜約200gである。一部の実施形態では、培養物1リットルから単離されたバイオマスの乾燥細胞重量は、炭素源、窒素源および栄養素源と約950ppm〜約8500ppmの塩化物イオンとを含む約pH6.5、約pH7、約pH7.5、約pH8.0、約pH8.5、約pH9または約pH9.5の培養培地中における約15℃、約16℃、約17℃、約18℃、約19℃、約20℃、約21℃、約22℃、約23℃、約24℃、約25℃、約26℃、約27℃、約28℃、約29℃または約30℃での約6日、約7日または約8日にわたる培養後に約10g〜約200g、約10〜約100g、約10g〜約50g、約15g〜約200g、約15g〜約100g、約15g〜約50g、約20g〜約200g、約20g〜約100g、約20g〜約50g、約50g〜約200gまたは約50g〜約100gである。一部の実施形態では、この単離培養物はポリビニルピロリドンを含まない。
【0176】
[0199]一部の実施形態では、この単離培養物は、炭素源、窒素源および栄養素源と約950ppm〜約8500ppmの塩化物イオンとを含む約pH6.5〜約pH8.5または約pH6.5〜約pH9.5の培養培地中における約15℃〜約30℃での約6日、約7日または約8日にわたる培養後に少なくとも約0.2g/L/日、少なくとも約0.3g/L/日、少なくとも約0.4g/L/日、少なくとも約0.5g/L/日、少なくとも約1g/L/日、少なくとも約1.2g/L/日、少なくとも約1.5g/L/日、少なくとも約1.7g/L/日、少なくとも約2g/L/日、少なくとも約3g/L/日、少なくとも約3.5g/L/日、少なくとも約4g/L/日、少なくとも約4.5g/L/日、少なくとも約5g/L/日、少なくとも約6g/L/日または少なくとも約8g/L/日のオメガ−3脂肪酸産生能を有する。一部の実施形態では、この単離培養物は、炭素源、窒素源および栄養素源と約950ppm〜約8500ppmの塩化物イオンとを含む約pH6.5〜約pH9.5の培養培地中における約15℃〜約30℃での約6日、約7日または約8日にわたる培養後に約0.2g/L/日〜約20g/L/日、約0.4g/L/日〜約20g/L/日、約0.4g/L/日〜約2g/L/日、約1g/L/日〜約2g/L/日、約1g/L/日〜約20g/L/日、約2g/L/日〜約15g/L/日、約2g/L/日〜約10g/L/日、約3g/L/日〜約10g/L/日、約4g/L/日〜約9g/L/日、約4g/L/日〜約8g/L/日、約4g/L/日〜約7g/L/日または約4g/L/日〜約6g/L/日のオメガ−3脂肪酸産生能を有する。
【0177】
[0200]一部の実施形態では、この単離培養物は、炭素源、窒素源および栄養素源と約950ppm〜約8500ppmの塩化物イオンとを含む約pH6.5〜約pH8.5または約pH6.5〜約pH9.5の培養培地中における約15℃〜約30℃での約6日、約7日または約8日にわたる培養後に少なくとも約0.2g/L/日、少なくとも約0.3g/L/日、少なくとも約0.4g/L/日、少なくとも約0.5g/L/日、少なくとも約0.6g/L/日、少なくとも約0.7g/L/日、少なくとも約0.8g/L/日、少なくとも約0.9g/L/日、少なくとも約1g/L/日、少なくとも約1.2g/L/日、少なくとも約1.5g/L/日、少なくとも約1.7g/L/日、少なくとも約2g/L/日、少なくとも約3g/L/日、少なくとも約4g/L/日または少なくとも約5g/L/日のEPA産生能を含む。一部の実施形態では、このEPA産生能は、炭素源、窒素源および栄養素源と約950ppm〜約8500ppmの塩化物イオンとを含む約pH6.5〜約pH8.5または約pH6.5〜約pH9.5の培養培地中における約15℃〜約30℃での約6日、約7日または約8日にわたる培養後に約0.2g/L/日〜約5g/L/日、約0.2g/L/日〜約4g/L/日、約0.2g/L/日〜約3g/L/日、約0.2g/L/日〜約2g/L/日、約0.2g/L/日〜約1g/L/日、約0.2g/L/日〜約0.8g/L/日、約0.2g/L/日〜約0.7g/L/日、約1g/L/日〜約5g/L/日、約1g/L/日〜約4g/L/日、約1g/L/日〜約3g/L/日または約1g/L/日〜約2g/L/日である。一部の実施形態では、上述したEPA産生能のいずれかは、上述したオメガ−3脂肪酸産生能のいずれかと関連している。一部の実施形態では、この培養物は、約0g/L/日〜約5g/L/日、約0g/L/日〜約4g/L/日、約0g/L/日〜約3g/L/日、約0g/L/日〜約2g/L/日、約0g/L/日〜約1g/L/日、約0.2g/L/日〜約5g/L/日、約0.2g/L/日〜約4g/L/日、約0.2g/L/日〜約3g/L/日、約0.2g/L/日〜約2g/L/日、約0.2g/L/日〜約1g/L/日、約1g/L/日〜約5g/L/日、約2g/L/日〜約5g/L/日、約2g/L/日〜約4g/L/日または約2g/L/日〜約3g/L/日のDHA産生能をさらに含む。一部の実施形態では、このDHA産生能は、約5g/L/日未満、約4g/L/日未満、約3g/L/日未満、約2g/L/日未満、約1g/L/日未満、約0.5g/L/日未満、約0.2g/L/日未満または約0g/L/日である。
【0178】
[0201]一部の実施形態では、本発酵体積(培養物の体積)は、少なくとも約2リットル、少なくとも約10リットル、少なくとも約50リットル、少なくとも約100リットル、少なくとも約200リットル、少なくとも約500リットル、少なくとも約1000リットル、少なくとも約10,000リットル、少なくとも約20,000リットル、少なくとも約50,000リットル、少なくとも約100,000リットル、少なくとも約150,000リットル、少なくとも約200,000リットルまたは少なくとも約250,000リットルである。一部の実施形態では、この発酵体積は、約2リットル〜約300,000リットル、約2リットル、約10リットル、約50リットル、約100リットル、約200リットル、約500リットル、約1000リットル、約10,000リットル、約20,000リットル、約50,000リットル、約100,000リットル、約150,000リットル、約200,000リットル、約250,000リットルまたは約300,000リットルである。
【0179】
[0202]一部の実施形態では、本発明は、本発明の脂肪酸プロファイルを含む単離バイオマスを対象とする。一部の実施形態では、このバイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%または少なくとも約80%は脂肪酸である。一部の実施形態では、このバイオマスの乾燥細胞重量の約20%超、約25%超、約30%超、約35%超、約40%超、約45%超、約50%超、約55%超または約60%超は脂肪酸である。一部の実施形態では、このバイオマスの乾燥細胞重量の約20%〜約55%、約20%〜約60%、約20%〜約70%、約20%〜約80%、約30%〜約55%、約30%〜約70%、約30%〜約80%、約40%〜約60%、約40%〜約70%、約40%〜約80%、約50%〜約60%、約50%〜約70%、約50%〜約80%、約55%〜約70%、約55%〜約80%、約60%〜約70%または約60%〜約80%(重量)は脂肪酸である。一部の実施形態では、このバイオマスは、脂肪酸の約10%超、少なくとも約12%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%または少なくとも約45%(重量)をEPAとして含む。一部の実施形態では、このバイオマスは、脂肪酸の約10%〜約55%、約12%〜約55%、約15%〜約55%、約20%〜約55%、約20%〜約40%または約20%〜約30%(重量)をEPAとして含む。一部の実施形態では、このバイオマスはトリアシルグリセロール画分を含み、このトリアシルグリセロール画分の少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%または少なくとも約20%(重量)はEPAである。一部の実施形態では、このバイオマスはトリアシルグリセロール画分を含み、このトリアシルグリセロール画分のEPA含有量は、少なくとも約12%〜約55%、約12%〜約50%、約12%〜約45%、少なくとも約12%〜約40%、少なくとも約12%〜約35%または少なくとも約12%〜約30%、約15%〜約55%、約15%〜約50%、約15%〜約45%、約15%〜約40%、約15%〜約35%、約15%〜約30%、約20%〜約55%、約20%〜約50%、約20%〜約45%、少なくとも約20%〜約40%、少なくとも約20%〜約35%または約20%〜約30%(重量)である。一部の実施形態では、このバイオマスの乾燥細胞重量の少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約50%または少なくとも約60%(重量)はDHAである。一部の実施形態では、このバイオマスの乾燥細胞重量の約20%〜約60%、約25%〜約60%、約25%〜約50%、約25%〜約45%、約30%〜約50%または約35%〜約50%(重量)はDHAである。一部の実施形態では、このバイオマスは、脂肪酸の約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下(重量)をDHAとして含む。一部の実施形態では、このバイオマスは、脂肪酸の約1%〜約10%、約1%〜約5%、約2%〜約5%、約3%〜約5%または約3%〜約10%(重量)をDHAとして含む。一部の実施形態では、このバイオマスはDHAを実質的に含まない。一部の実施形態では、このバイオマスは、脂肪酸の約0.1%〜約5%未満、約0.1%〜約4%、約0.1%〜約3%、約0.1%〜約2%、約0.2%〜約5%未満、約0.2%〜約4%、約0.2%〜約3%、約0.2%〜約2%、約0.3%〜約2%、約0.1%〜約0.5%、約0.2%〜約0.5%、約0.1%〜約0.4%、約0.2%〜約0.4%、約0.5%〜約2%、約1%〜約2%、約0.5%〜約1.5%または約1%〜約1.5%(重量)をARAとして含む。一部の実施形態では、このバイオマスは、脂肪酸の約5%未満、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1.5%以下、約1%以下、約0.5%以下、約0.4%以下、約0.3%以下、約0.2%以下または約0.1%以下(重量)をARAとして含む。一部の実施形態では、このバイオマスはARAを実質的に含まない。一部の実施形態では、このバイオマスは、脂肪酸の約0.4%〜約2%、約0.4%〜約3%、約0.4%〜約4%、約0.4%〜約5%、約0.4%〜約5%未満、約0.5%〜約1%、約0.5%〜約2%、約0.5%〜約3%、約0.5%〜約4%、約0.5%〜約5%、約0.5%〜約5%未満、約1%〜約2%、約1%〜約3%、約1%〜約4%、約1%〜約5%または約1%〜約5%未満(重量)をDPA n−6として含む。一部の実施形態では、このバイオマスは、脂肪酸の約5%以下、約5%未満、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、約0.75%以下、約0.6%以下または約0.5%以下(重量)をDPA n−6として含む。一部の実施形態では、このバイオマスはDPA n−6を実質的に含まない。一部の実施形態では、このバイオマスは、オレイン酸(18:1 n−9)、リノール酸(18:2 n−6)、リノレン酸(18:3 n−3)、エイコセン酸(20:1 n−9)、エルカ酸(22:1 n−9)またはこれらの組み合わせが約5%以下、約5%未満、約4%以下、約3%以下または約2%以下(重量)である脂肪酸を含む。本発明の単離バイオマスの特徴は、外因的に導入された物質ではなく、この単離バイオマスの内因的なまたは天然の特性と関連している。一部の実施形態では、この単離バイオマスはポリビニルピロリドンを含まない、またはポリビニルピロリドンを含む培養物から単離されていない。
【0180】
[0203]本発明はバイオマスを製造する方法を対象とする。一部の実施形態では、本発明のバイオマスを製造する方法は、培養物中で本発明の単離組換え宿主細胞のいずれかまたはこれらの混合物を培養してバイオマスを製造することを含む。本発明は、この方法により製造されたバイオマスを対象とする。
【0181】
[0204][微生物油]
[0205]本発明は、本発明の脂肪酸プロファイルを含む微生物油を対象とする。本発明の微生物油は、少なくとも約35重量%のトリアシルグリセロール画分を含む「粗製油」または「精製油」である。「粗製油」とは、さらに処理することなく組換え宿主細胞のバイオマスから抽出された油のことである。「精製油」とは、精製、漂白および/または脱臭の標準的処理で粗製油を処理することにより得られた油のことである。例えば米国特許第5,130,242号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。微生物油として、本明細書で説明されている「最終油」も挙げられ、この最終油は、植物油で希釈されている精製油である。一部の実施形態では、最終油は、高オレイン酸のヒマワリ油で希釈されている精製油である。用語「微生物」は、本明細書で使用される場合、用語「微細藻類」、「トラウストキトリド」および本明細書で説明されている宿主細胞のいずれかと関連する分類学的分類を含むがこれらに限定されない。用語「トラウストキトリアレス」、「トラウストキトリド」、「スキゾキトリウム(Schizochytrium)」および「トラウストキトリウム(Thraustochytrium)」は、本明細書で説明されている宿主細胞の微生物油のいずれかに関して使用される場合、利用可能な系統発生学的情報を含む現在の分類学的分類に基づいており、この分類学的分類が本出願の出願日後に改訂される場合には限定的であることが意図されていない。
【0182】
[0206]一部の実施形態では、本明細書で説明されている脂肪酸は脂肪酸エステルであり得る。一部の実施形態では、脂肪酸エステルとして、オメガ−3脂肪酸のエステル、オメガ−6脂肪酸のエステルおよびこれらの組み合わせが挙げられる。一部の実施形態では、この脂肪酸エステルは、DHAエステル、EPAエステルまたはこれらの組み合わせである。一部の実施形態では、本明細書で説明されている油またはその画分をエステル化して、脂肪酸エステルを含む油またはその画分を製造する。用語「エステル」は、脂肪酸分子のカルボン酸基中の水素の別の置換基への置き換えを意味する。典型的なエステルは当業者に既知であり、このエステルの考察がHiguchi,T.and V.Stella in Pro−drugs as Novel Delivery Systems,Vol.14,A.C.S.Symposium Series,Bioreversible Carriers in Drug Design,Ed.Edward B.Roche,American Pharmaceutical Association,Pergamon Press,1987、およびProtective Groups in Organic Chemistry,McOmie ed.,Plenum Press,New York,1973に記載されている。エステルの例として、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、t−ブチル、ベンジル、ニトロベンジル、メトキシベンジル、ベンズヒドリルおよびトリクロロエチルが挙げられる。一部の実施形態では、このエステルは、カルボン酸保護エステル基、アラルキル(例えばベンジル、フェネチル)とのエステル、低級アルケニル(例えばアリル、2−ブテニル)とのエステル、低級アルコキシ−低級アルキル(例えばメトキシメチル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル)とのエステル、低級アルカノイルオキシ−低級アルキル(例えばアセトキシメチル、ピバロイルオキシメチル、1−ピバオイルオキシエチル)とのエステル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル(例えばメトキシカルボニルメチル、イソプロポキシカルボニルメチル)とのエステル、カルボキシ−低級アルキル(例えばカルボキシメチル)とのエステル、低級アルコキシカルボニルオキシ−低級アルキル(例えば1−(エトキシカルボニルオキシ)エチル、1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル)とのエステル、カルバモイルオキシ−低級アルキル(例えばカルバモイルオキシメチル)とのエステル、および同類のものである。一部の実施形態では、追加された置換基は、直鎖または環状の炭化水素基(例えばC1〜C6アルキルエステル、C1〜C6シクロアルキルエステル、C1〜C6アルケニルエステルまたはC1〜C6アリールエステル)である。一部の実施形態では、このエステルは、アルキルエステル(例えばメチルエステル、エチルエステルまたはプロピルエステル)である。一部の実施形態では、このエステル置換基は、脂肪酸が精製状態または半精製状態である場合に遊離脂肪酸分子に付加される。あるいは、この脂肪酸エステルは、トリアシルグリセロールのエステルへの変換時に形成される。
【0183】
[0207]本発明は、微生物油を製造する方法を対象とする。一部の実施形態では、この方法は、培養物中で本発明の単離組換え宿主細胞またはこれらの混合物のいずれかを培養して、オメガ−3脂肪酸を含む微生物油を製造することを含む。一部の実施形態では、この方法は、この微生物油を抽出することをさらに含む。一部の実施形態では、この方法は、本発明のバイオマスのいずれかまたはこれらの混合物から、オメガ−3脂肪酸を含む微生物油を抽出することを含む。一部の実施形態では、この方法は、この単離組換え宿主細胞を従属栄養的に培養することであって、この培養物は本明細書で説明されている炭素源を含む、培養することを含む。この微生物油を、新たに収穫したバイオマスから抽出し得る、または腐敗を防止する条件下で貯蔵されている既に収穫したバイオマスから抽出し得る。既知の方法を使用して、本発明の組換え宿主細胞を培養し得る、この培養物からバイオマスを単離し得る、このバイオマスから微生物油を抽出し得る、およびこのバイオマスから抽出した油の脂肪酸プロファイルを分析し得る。例えば米国特許第5,130,242号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。本発明は、本発明の方法のいずれかにより製造された微生物油を対象とする。
【0184】
[0208]一部の実施形態では、この微生物油は、約0%、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、少なくとも約2%または少なくとも約5%(重量)のステロールエステル画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、約0%〜約1.5%、約0%〜約2%、約0%〜約5%、約1%〜約1.5%、約0.2%〜約1.5%、約0.2%〜約2%または約0.2%〜約5%(重量)のステロールエステル画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、約0.5%以下、約0.3%以下、約0.2%以下、約0.5%以下、約0.4%以下、約0.3%以下または約0.2%以下(重量)のステロールエステル画分を含む。
【0185】
[0209]一部の実施形態では、この微生物油は、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%または少なくとも約90%(重量)のトリアシルグリセロール画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、約35%〜約98%、約35%〜約90%、約35%〜約80%、約35%〜約70%、約35%〜約70%、約35%〜約65%、約40%〜約70%、約40%〜約65%、約40%〜約55%、約40%〜約50%、約65%〜約95%、約75%〜約95%、約75%〜約98%、約80%〜約95%、約80%〜約98%、約90%〜約96%、約90%〜約97%、約90%〜約98%、約90%、約95%、約97%または約98%(重量)のトリアシルグリセロール画分を含む。
【0186】
[0210]一部の実施形態では、この微生物油は、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%または少なくとも約20%(重量)のジアシルグリセロール画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、約10%〜約45%、約10%〜約40%、約10%〜約35%、約10%〜約30%、約15%〜約40%、約15%〜約35%または約15%〜約30%(重量)のジアシルグリセロール画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.3%、少なくとも約0.4%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約11%、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%または少なくとも約20%(重量)の1,2−ジアシルグリセロール画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、約0.2%〜約45%、約0.2%〜約30%、約0.2%〜約20%、約0.2%〜約10%、約0.2%〜約5%、約0.2%〜約1%、約0.2%〜約0.8%、約0.4%〜約45%、約0.4%〜約30%、約0.4%〜約20%、約0.4%〜約10%、約0.4%〜約5%、約0.4%〜約1%、約0.4%〜約0.8%、約0.5%〜約1%、約0.5%〜約0.8%、約10%〜約45%、約10%〜約40%、約10%〜約35%、約10%〜約30%、約15%〜約40%、約15%〜約35%、約15%〜約30%または約15%〜約25%(重量)のジアシルグリセロール画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.2%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約2%、少なくとも約2.5%または少なくとも約3%(重量)の1,3−ジアシルグリセロール画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、少なくとも約0.3%、少なくとも約0.4%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%、少なくとも約2%または少なくとも約5%(重量)のステロール画分を含む。
【0187】
[0211]一部の実施形態では、この微生物油は、約0.3%〜約5%、約0.3%〜約2%、約0.3%〜約1.5%、約0.5%〜約1.5%、約1%〜約1.5%、約0.5%〜約2%、約0.5%〜約5%、約1%〜約2%または約1%〜約5%(重量)のステロール画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1.5%以下または約1%以下(重量)のステロール画分を含む。
【0188】
[0212]一部の実施形態では、この微生物油は、少なくとも約2%、少なくとも約5%または少なくとも約8%(重量)のリン脂質画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、約2%〜約25%、約2%〜約20%、約2%〜約15%、約2%〜約10%、約5%〜約25%、約5%〜約20%、約5%〜約20%、約5%〜約10%または約7%〜約9%(重量)のリン脂質画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満または約8%未満(重量)のリン脂質画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油はリン脂質を実質的に含まない。一部の実施形態では、この微生物油は、この油の約2%未満、約1.5%未満、約1%未満または約0.5%未満(重量)の不けん化物を含む。この微生物油中に存在する脂質クラス(例えばトリアシルグリセロール画分)をフラッシュクロマトグラフィーで分離して薄層クロマトグラフィー(TLC)で分析し得る、または当技術分野で既知の他の方法により分離して分析し得る。
【0189】
[0213]一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジアシルグリセロール画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、約10%超、少なくとも約12%、少なくとも約13%、少なくとも約14%、少なくとも約15%、少なくとも約16%、少なくとも約17%、少なくとも約18%、少なくとも約19%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%または少なくとも約45%(重量)のEPAを含む。一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、遊離脂肪酸画分、ステロール画分、ジアシルグリセロール画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、約5%〜約55%、約5%〜約50%、約5%〜約45%、約5%〜約40%、約5%〜約35%、約5%〜約30%、約10%〜約55%、約10%〜約50%、約10%〜約45%、約10%〜約40%、約10%〜約35%、約10%〜約30%、少なくとも約12%〜約55%、少なくとも約12%〜約50%、少なくとも約12%〜約45%、少なくとも約12%〜約40%、少なくとも約12%〜約35%または少なくとも約12%〜約30%、約15%〜約55%、約15%〜約50%、約15%〜約45%、約15%〜約40%、約15%〜約35%、約15%〜約30%、約15%〜約25%、約15%〜約20%、約20%〜約55%、約20%〜約50%、約20%〜約45%、約20%〜約40%または約20%〜約30%(重量)のEPAを含む。一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、ジアシルグリセロール画分、ステロール画分、ステロールエステル画分、遊離脂肪酸画分、リン脂質画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約50%または少なくとも約60%(重量)のDHAを含む。一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、ジアシルグリセロール画分、ステロール画分、ステロールエステル画分、遊離脂肪酸画分、リン脂質画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、約5%〜約60%、約5%〜約55%、約5%〜約50%、約5%〜約40%、約10%〜約60%、約10%〜約50%、約10%〜約40%、約20%〜約60%、約25%〜約60%、約25%〜約50%、約25%〜約45%、約30%〜約50%、約35%〜約50%または約30%〜約40%(重量)のDHAを含む。一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、ジアシルグリセロール画分、ステロール画分、ステロールエステル画分、遊離脂肪酸画分、リン脂質画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、約10%以下、約9%以下、約8%以下、約7%以下、約6%以下、約5%以下、約4%以下、約3%以下、約2%以下または約1%以下(重量)のDHAを含む。一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、ジアシルグリセロール画分、ステロール画分、ステロールエステル画分、遊離脂肪酸画分、リン脂質画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、脂肪酸の約1%〜約10%、約1%〜約5%、約2%〜約5%、約3%〜約5%または約3%〜約10%(重量)をDHAとして含む。一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、ジアシルグリセロール画分、ステロール画分、ステロールエステル画分、遊離脂肪酸画分、リン脂質画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、DHAを実質的に含まない。一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、ジアシルグリセロール画分、ステロール画分、ステロールエステル画分、遊離脂肪酸画分、リン脂質画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、約0.1%〜約5%、約0.1%〜約5%未満、約0.1%〜約4%、約0.1%〜約3%、約0.1%〜約2%、約0.2%〜約5%、約0.2%〜約5%未満、約0.2%〜約4%、約0.2%〜約3%、約0.2%〜約2%、約0.3%〜約2%、約0.1%〜約0.5%、約0.2%〜約0.5%、約0.1%〜約0.4%、約0.2%〜約0.4%、約0.5%〜約2%、約1%〜約2%、約0.5%〜約1.5%または約1%〜約1.5%(重量)のARAを含む。一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、ジアシルグリセロール画分、ステロール画分、ステロールエステル画分、遊離脂肪酸画分、リン脂質画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、約5%以下、約5%未満、約4%以下、約3%未満、約2%以下、約1.5%以下、約1%以下、約0.5%以下、約0.4%以下、約0.3%以下、約0.2%以下または約0.1%以下(重量)のARAを含む。一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、ジアシルグリセロール画分、ステロール画分、ステロールエステル画分、遊離脂肪酸画分、リン脂質画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、ARAを実質的に含まない。一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、ジアシルグリセロール画分、ステロール画分、ステロールエステル画分、遊離脂肪酸画分、リン脂質画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、約0.4%〜約2%、約0.4%〜約3%、約0.4%〜約4%、約0.4%〜約5%、約0.4%〜約5%未満、約0.5%〜約1%、約0.5%〜約2%、約0.5%〜約3%、約0.5%〜約4%、約0.5%〜約5%、約0.5%〜約5%未満、約1%〜約2%、約1%〜約3%、約1%〜約4%、約1%〜約5%または約1%〜約5%未満(重量)のDPA n−6を含む。一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、ジアシルグリセロール画分、ステロール画分、ステロールエステル画分、遊離脂肪酸画分、リン脂質画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、約5%、約5%未満、約4%以下、約3%以下、約2%以下、約1%以下、約0.75%以下、約0.6%以下または約0.5%以下(重量)のDPA n−6を含む。一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、ジアシルグリセロール画分、ステロール画分、ステロールエステル画分、遊離脂肪酸画分、リン脂質画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、DPA n−6を実質的には含まない。一部の実施形態では、この微生物油、ならびに/またはトリアシルグリセロール画分、ジアシルグリセロール画分、ステロール画分、ステロールエステル画分、遊離脂肪酸画分、リン脂質画分およびこれらの組み合わせから選択される1種もしくは複数種の、この微生物油の画分は、オレイン酸(18:1 n−9)、リノール酸(18:2 n−6)、リノレン酸(18:3 n−3)、エイコセン酸(20:1 n−9)、エルカ酸(22:1 n−9)、ステアリドン酸(18:4 n−3)またはこれらの組み合わせが約5%以下、約5%未満、約4%以下、約3%以下または約2%以下(重量)である脂肪酸を含む。
【0190】
[0214]トリアシルグリセロール分子は3個の中心炭素原子(C(sn−1)HR1−(sn−2)HR2−C(sn−3)HR3)を含み、様々な位置異性体の形成を可能にする。一部の実施形態では、この微生物油は、トリアシルグリセロール画分であって、このトリアシルグリセロール画分中のトリアシルグリセロールの少なくとも約2%、少なくとも約3%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約35%または少なくとも約40%は、HPLCクロマトグラフ上のピークの相対面積パーセントに基づいて、sn−1位、sn−2位およびsn−3位のうちの任意の2箇所から選択されるトリアシルグリセロール中の2箇所でDHAを含む(二置換DHA)、トリアシルグリセロール画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、トリアシルグリセロール画分であって、このトリアシルグリセロール画分中のトリアシルグリセロールの約2%〜約55%、約2%〜約50%、約2%〜約45%、約2%〜約40%、約2%〜約35%、約2%〜約30%、約2%〜約25%、約5%〜約55%、約5%〜約50%、約5%〜約45%、約5%〜約40%、約5%〜約35%、約5%〜約30%、約5%〜約25%、約10%〜約55%、約10%〜約50%、約10%〜約45%、約10%〜約40%、約10%〜約35%、約10%〜約30%、約10%〜約25%、約10%〜約20%、約20%〜約40%、約20%〜約35%または約20%〜約25%は、HPLCクロマトグラフ上のピークの相対面積パーセントに基づいて、sn−1位、sn−2位またはsn−3位のうちの任意の2箇所から選択されるトリアシルグリセロール中の2箇所でEPAを含む、トリアシルグリセロール画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、トリアシルグリセロール画分であって、このトリアシルグリセロール画分中のトリアシルグリセロールの少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約1.5%または少なくとも約2%は、HPLCクロマトグラフ上のピークの相対面積パーセントに基づいて、sn−1位、sn−2位およびsn−3位の全てでDHAを含む(三置換DHA)、トリアシルグリセロール画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、トリアシルグリセロール画分であって、このトリアシルグリセロール画分中のトリアシルグリセロールの約0.5%〜約5%、約0.5%〜約3%、約0.5%〜約2.5%、約0.5%〜約2%、約1%〜約5%、約1%〜約3%または約1%〜約2%は、HPLCクロマトグラフ上のピークの相対面積パーセントに基づいて、sn−1位、sn−2位およびsn−3位の全てでDHAを含む、トリアシルグリセロール画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、トリアシルグリセロール画分であって、このトリアシルグリセロール画分中のトリアシルグリセロールの少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%または少なくとも約60%は、HPLCクロマトグラフ上のピークの相対面積パーセントに基づいて、sn−1位、sn−2位またはsn−3位のうちの任意の1箇所から選択されるトリアシルグリセロール中の1箇所でDHAを含む、トリアシルグリセロール画分を含む。一部の実施形態では、この微生物油は、トリアシルグリセロール画分であって、このトリアシルグリセロール画分中のトリアシルグリセロールの約10%〜約80%、約10%〜約70%、約10%〜約60%、約15%〜約80%、約15%〜約75%、約15%〜約70%、約15%〜約65%、約15%〜約60%、約35%〜約80%、約35%〜約75%、約35%〜約65%、約35%〜約60%、約40%〜約80%、約40%〜約75%、約40%〜約70%、約40%〜約65%、約40%〜約60%または約40%〜約55%は、HPLCクロマトグラフ上のピークの相対面積パーセントに基づいて、sn−1位、sn−2位およびsn−3位のうちの任意の1箇所から選択されるトリアシルグリセロール中の1箇所でDHAを含む、トリアシルグリセロール画分を含む。
【0191】
[0215][組成物]
[0216]本発明は、本発明の組換え宿主細胞、本発明の単離バイオマス、本発明の微生物油またはこれらの組み合わせを含む組成物を対象とする。
【0192】
[0217]本発明の組換え宿主細胞、バイオマスまたは微生物油を、任意の既知の技術により、この組成物の要求に基づいて化学的にまたは物理的にさらに改変し得る、またはさらに処理し得る。
【0193】
[0218]組換え宿主細胞またはバイオマスを、限定されないが凍結乾燥(freeze drying)、空気乾燥、噴霧乾燥、トンネル乾燥、真空乾燥(凍結乾燥(lyophilization))および類似のプロセス等の方法により、組成物中で使用する前に乾燥させ得る。あるいは、収穫して洗浄したバイオマスを、乾燥させることなく組成物中で直接使用し得る。例えば米国特許第5,130,242号明細書および同第6,812,009号明細書(これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0194】
[0219]本発明の微生物油を、EPA等の脂肪酸に富む生成物をより効率的に生成するための出発物質として使用し得る。例えば、本発明の微生物油を当技術分野で既知の様々な精製技術(例えば蒸留または尿素内転(urea adduction))にかけて、EPAまたは別の脂肪酸がより高濃度である、より高い効力の生成物を生成し得る。本発明の微生物油を、この油中の脂肪酸に由来する化合物(例えば、EPAまたは別の脂肪酸のエステルおよび塩)を生成するための化学反応でも使用し得る。
【0195】
[0220]本発明の組成物は1種または複数種の添加剤を含み得る。本明細書で使用される場合、「添加剤」は、本発明の組成物(例えば、食品ならびに医薬組成物、化粧用組成物および工業用組成物)に所望の特性を付与するためにこの組成物で使用される構成成分または構成成分の混合物を意味する。本発明の添加剤は、医薬組成物に添加された場合には、この添加剤が、健全な医学的判断の範囲内で妥当な利益/リスク比と見合う所望の接触持続時間にわたり過度の毒性、刺激、アレルギー反応または他の問題となる合併症なしにヒトおよび非ヒト動物の組織との接触に適した化合物、物質、組成物、塩および/または剤形であることを意味する「薬学的に許容される」添加剤と説明され得る。一部の実施形態では、用語「薬学的に許容される」は、動物(より具体的にはヒト)での使用に関する連邦政府もしくは州政府の規制機関による承認または米国薬局方もしくは他の一般に認められている国際薬局方での列挙を意味する。様々な添加剤が使用され得る。一部の実施形態では、この添加剤は、アルカリ化剤、安定剤、酸化防止剤、接着剤、分離剤、コーティング剤、外相成分、制御放出成分、溶媒、界面活性剤、湿潤剤、緩衝剤、充填剤、皮膚軟化薬またはこれらの組み合わせであり得るがこれらに限定されない。本明細書で論じられているものに加えて、添加剤として、Remington:The Science and Practice of Pharmacy,21st ed.(2005)で列挙されている添加剤を挙げ得るがこれらに限定されない。本明細書中での特定の分類(例えば「溶媒」)における添加剤の包含は、この添加剤の役割を限定するのではなく例示することが意図されている。特定の添加剤は複数の分類に含まれ得る。
【0196】
[0221]本発明の組成物として、食品、医薬組成物、化粧品および工業用組成物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0197】
[0222]一部の実施形態では、この組成物は食品である。食品は非ヒト動物またはヒトに消費されるあらゆる食品であり、この食品として、固体組成物および液体組成物の両方が挙げられる。食品は、動物またはヒトの食物への添加剤であり得る。食物として、一般的な食物;液体製品、例えばミルク、飲料、治療用飲料および栄養ドリンク;機能性食品;サプリメント;栄養補助食品;乳児用調合乳、例えば成熟前の乳児用の調合乳;妊娠中のまたは授乳中の女性用の食物;成人用の食物;老人用の食べ物;ならびに動物用の食物が挙げられるがこれらに限定されない。
【0198】
[0223]一部の実施形態では、本発明の組換え宿主細胞、バイオマスまたは微生物油は、油、ショートニング、スプレッド、他の脂肪成分、飲料、ソース、乳製品または大豆系食品(例えばミルク、ヨーグルト、チーズおよびアイスクリーム)、焼いた食品、栄養製品のうちの1種内のまたは複数種内の添加剤として、例えば栄養サプリメント(カプセルまたは錠剤の形態)、ビタミンサプリメント、ダイエットサプリメント、粉末飲料、および完成または半完成の粉末食品として、直接使用され得る、または含まれ得る。一部の実施形態では、栄養サプリメントは、動物性供給源由来のいかなる構成成分からも形成されていないまたはこの構成成分を含まないベジタリアンカプセルの形態である。
【0199】
[0224]本発明の微生物油を含み得る食品組成物の部分的なリストとして下記が挙げられるがこれらに限定されない:大豆系製品(ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト、ドリンク、クリーム、スプレッド、ホワイトナー);スープおよびスープミックス;パン生地、バターおよび焼いた食品、例えばファインベーカリー製品、朝食用シリアル、ケーキ、チーズケーキ、パイ、カップケーキ、クッキー、棒状菓子、パン、ロール、ビスケット、マフィン、ペストリー、スコーン、クルトン、クラッカー、菓子(sweet good)、スナックケーキ、パイ、グラノーラ/スナックバーおよびトースターペストリー;キャンディ;硬い菓子類;チョコレートおよび他の菓子類;チューインガム;液体食品、例えばミルク、エネルギードリンク、乳児用調合乳、炭酸飲料、茶、流動食、フルーツジュース、果実飲料、野菜飲料;マルチビタミンシロップ、ミールリプレイサー(meal replacer)、薬用食品およびシロップ;粉末飲料ミックス;パスタ;魚の加工食品;肉の加工食品;家禽の加工食品;グレイビーおよびソース;調味料(ケチャップ、マヨネーズ等);野菜油系スプレッド;乳製品;ヨーグルト;バター;冷凍乳製品;アイスクリーム;冷菓;フローズンヨーグルト;半固形食品、例えばベビーフード;プディングおよびゼラチンデザート;プロセスチーズおよび非プロセスチーズ(unprocessed cheese);パンケーキミックス;フードバー、例えばエネルギーバー;ワッフルミックス;サラダドレッシング;代替卵ミックス(replacement egg mix);ナッツおよびナッツ系スプレッド;塩味スナック、例えばポテトチップスおよび他のチップスまたはクリスプ、コーンチップス、トルティーヤチップス、押出しスナック、ポップコーン、プレッツェル、ポテトクリスプおよびナッツ;ならびに特製スナック、例えばディップ、ドライフルーツスナック、ミートスナック、ポークリンド、健康食品バーおよびライス/コーンケーキ。
【0200】
[0225]一部の実施形態では、本発明の微生物油を使用して乳児用調合乳を補充し得る。乳児用調合乳を本発明の微生物油のみで補充し得る、またはアラキドン酸(ARA)産生微生物に由来する、物理的に精製された油と組み合わせて補充し得る。ARA産生微生物は、例えばモルティエレラ・アルピナ(Mortierella alpina)またはモルティエレラ(Mortierella)節シュムッケリ(schmuckeri)である。あるいは、乳児用調合乳を、ARAに富む油(例えばARASCO(登録商標)(Martek Biosciences、Columbia、MD))と組み合わせて本発明の微生物油で補充し得る。
【0201】
[0226]一部の実施形態では、この組成物は動物用飼料である。「動物」として、動物界に属する非ヒト生物が挙げられ、水生動物および陸生動物が挙げられるがこれらに限定されない。用語「動物用飼料」または「動物用食物」は、魚;商用魚;観賞魚;仔稚魚;二枚貝;軟体動物;甲殻類;貝;エビ;稚エビ;アルテミア;ワムシ;ブラインシュリンプ;フィルターフィーダー;両生類;爬虫類;哺乳類;家畜(domestic animal);家畜(farm animal);動物園の動物;競技用動物;種畜;レース用動物;興行用動物;エアルーム動物(heirloom animal);希少なまたは絶滅寸前の動物;コンパニオンアニマル;愛玩動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウスまたはウマ;霊長類、例えばサル(例えばオマキザル、アカゲザル、アフリカミドリザル(African green)、パタス、カニクイザルおよびオナガザル)、類人猿、オラウータン、ヒヒ、テナガザルおよびチンパンジー;イヌ科の動物、例えばイヌおよびオオカミ;ネコ科の動物、例えばネコ、ライオンおよびトラ;ウマ科の動物、例えばウマ、ロバおよびシマウマ;食用動物、例えば、雌ウシ、ウシ、ブタおよびヒツジ;有蹄類、例えばシカおよびキリン;または齧歯類、例えばマウス、ラット、ハムスターおよびモルモット;および同類のもののためであるかにかかわらず、非ヒト動物用のあらゆる食物を意味する。動物用飼料として、水産養殖用飼料、家畜用飼料、例えばペットフード、動物園の動物用飼料、作業用動物用飼料、家畜用飼料およびこられの組み合わせが挙げられるがこれらに限定されない。
【0202】
[0227]一部の実施形態では、この組成物は、任意の動物であって、その肉または製品をヒトが消費する動物(例えば、ヒトが消費する肉、卵または乳が由来する任意の動物)のための飼料または飼料サプリメントである。そのような動物に給餌する場合、LC−PUFA等の栄養素をそのような動物の肉、乳、卵または他の製品に組み込んで、この栄養素の含有量を増加させ得る。
【0203】
[0228]一部の実施形態では、この組成物は、動物プランクトン、アルテミア、ワムシおよびフィルターフィーダーによる消費に適切なサイズの粒子を形成するために粉砕され得る噴霧乾燥物質である。一部の実施形態では、この組成物を給餌した動物プランクトン、アルテミアまたはワムシを、今度は仔稚魚、魚、貝、二枚貝または甲殻類に給餌する。
【0204】
[0229]一部の実施形態では、この組成物は医薬組成物である。適切な医薬組成物として下記が挙げられるがこれらに限定されない:抗炎症組成物、冠動脈心疾患の処置のための薬剤、動脈硬化症の処置のための薬剤、化学療法剤、活性添加剤、骨粗鬆症剤、抗うつ薬、抗痙攣薬、抗ヘリコバクター・ピロリ剤、神経変性疾患の処置のための薬剤、変性肝疾患の処置のための薬剤、抗生物質、コレステロール降下組成物、およびトリアシルグリセロール降下組成物。一部の実施形態では、この組成物は医療食品である。医療食品として、医師の監督下で消費されるまたは外部から投与される組成物であり、且つある状態であって、特有の栄養要求が、認められた科学的原理に基づいて医学的評価により確立されている状態の具体的な食事管理が意図されている食品が挙げられる。
【0205】
[0230]一部の実施形態では、本微生物油をある剤形に製剤化し得る。剤形として、錠剤、カプセル剤、カシェ剤、ペレット剤、丸剤、散剤および顆粒剤、ならびに非経口剤形が挙げられ得るがこれらに限定されず、非経口剤形として、有効量の本微生物油を含む溶液剤、懸濁剤、乳剤および乾燥粉末剤が挙げられるがこれらに限定されない。そのような製剤はまた、薬学的に許容される希釈剤、充填剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、界面活性剤、疎水性ビヒクル、水溶性ビヒクル、乳化剤、緩衝剤、湿潤剤、保湿剤、可溶化剤、防腐剤および同類のものも含み得ることも当技術分野では既知である。投与形態として、本微生物油と、1種または複数種の適切な薬学的に許容される担体とを含む錠剤、糖衣錠剤、カプセル剤、カプレット剤および丸剤が挙げられ得るがこれらに限定されない。
【0206】
[0231]経口投与の場合、本微生物油を当技術分野で公知の薬学的に許容される担体と組み合わせ得る。そのような担体により、本発明の微生物油は、処置される対象による経口摂取のために錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤および同類のものとして製剤化され得る。一部の実施形態では、剤形は錠剤、丸剤またはカプセル剤である。固体添加剤を添加し、得られた混合物を任意選択で粉砕し、必要に応じた適切な助剤の添加後に顆粒の混合物を加工して錠剤または糖衣錠コアを得ることにより、経口使用のための医薬調製物を得ることができる。適切な添加剤として下記が挙げられるがこれらに限定されない:充填剤、例えば糖類、例えば限定されないがラクトース、スクロース、マンニトールおよびソルビトール;セルロース調製物、例えば限定されないがトウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびポリビニルピロリドン(PVP)。必要に応じて、崩壊剤(例えば、限定されないが架橋ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム))を添加し得る。経口的に使用され得る医薬調製物として、ゼラチンで作られたプッシュフィットカプセル剤、ならびにゼラチンおよび可塑剤(例えばグリセロールまたはソルビトール)で作られた軟質の密封カプセル剤が挙げられるがこれらに限定されない。一部の実施形態では、この剤形はベジタリアン剤形であって、動物性供給源由来のあらゆる構成成分から形成されていない且つこれらの構成成分を含まないベジタリアン剤形である。一部の剤形では、このベジタリアン剤形はベジタリアンカプセル剤である。
【0207】
[0232]一部の実施形態では、この組成物は化粧品である。化粧品として、乳液、クリーム、ローション、美顔用パック、石鹸、シャンプー、化粧水、フェイシャルクリーム、コンディショナ、メイクアップ料(make−up)、入浴剤および分散液が挙げられるがこれらに限定されない。化粧剤は薬用であり得る、または非薬用であり得る。
【0208】
[0233]一部の実施形態では、この組成物は工業用組成物である。一部の実施形態では、この組成物は1種または複数種の製造物の出発材料である。製造物として下記が挙げられるがこれらに限定されない:ポリマー;写真感光材料;洗浄剤;工業用油;工業用洗浄剤。例えば、米国特許第7,259,006号明細書では、ベヘン酸の製造およびベヘン酸を使用した写真感光材料の製造のための、DHAを含む脂肪および油の使用が説明されている。
【0209】
[0234][本組成物を使用する方法]
[0235]一部の実施形態では、本組成物を、ヒトまたは非ヒト動物の状態の処置で使用し得る。一部の実施形態では、この組成物を、ヒトまたは非ヒト動物の栄養摂取のために使用し得る。
【0210】
[0236]用語「処置する」および「処置」は、治療的処置および予防的(prophylactic)または予防的(preventative)手段の両方であって、対象が、望ましくない生理学的状態、疾患もしくは障害を予防することができる、もしくは抑制する(緩和する)ことができる、または有利なもしくは望ましい臨床結果を得ることができる、処置および手段を意味する。本発明の目的のために、有利なまたは望ましい臨床結果として下記が挙げられるがこれらに限定されない:ある状態、疾患もしくは障害と関連する症状もしくは徴候の緩和もしくは除去;ある状態、疾患もしくは障害の程度の低下;ある状態、疾患もしくは障害の安定化(即ち、この状態、疾患もしくは障害は悪化していない);この状態、疾患もしくは障害の発症もしくは進行の遅延;この状態、疾患もしくは障害の回復;この状態、疾患もしくは障害の(部分的なもしくは全体的なおよび検出可能なもしくは検出不能な)寛解;またはある状態、疾患もしくは障害の強化もしくは改善。処置には、過剰な副作用なしに臨床的に有意な応答を誘発することが含まれる。処置には、処置を受けていない場合に予想される生存と比較して長い生存も含まれる。
【0211】
[0237]一部の実施形態では、本組成物を、状態、疾患または障害を処置するために使用し、この状態、疾患または障害として、座瘡、急性炎症、加齢黄斑症、アレルギー、アルツハイマー病、関節炎、喘息、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、血液脂質障害、乳房嚢胞、悪液質、癌、心臓の再狭窄、循環器疾患、慢性炎症、冠動脈心疾患、嚢胞性線維症、肝臓の変性障害、糖尿病、湿疹、胃腸障害、心臓病、高トリアシルグリセロールレベル、高血圧、活動亢進、免疫学的疾患、腫瘍増殖の阻害、炎症性状態、腸障害、腎機能障害、白血病、大うつ病、多発性硬化症、神経変性障害、変形性関節症、骨粗鬆症、ペルオキシソーム病、子癇前症、早産、乾癬、肺障害慢性関節リウマチ、心臓病のリスク、または血栓症。
【0212】
[0238]一部の実施形態では、本組成物を使用して、妊娠後期の胎児の妊娠期間の長さを延ばす。
【0213】
[0239]一部の実施形態では、本組成物を使用して血圧を制御する。
【0214】
[0240]一部の実施形態では、本組成物を使用して認知機能を改善する、または維持する。
【0215】
[0241]一部の実施形態では、本組成物を使用して記憶を改善する、または維持する。
【0216】
[0242]本組成物または本剤形を、この組成物または剤形に適合する任意の経路により対象の身体に投与し得る。物質は、この物質が対象によりこの対象の身体に導入される場合には、または別人、機械もしくは装置が対象の身体に物質を導入する場合には、「投与された」と見なされる。従って、「投与する」として、例えば自己投与、他人による投与、および間接投与が挙げられる。用語「連続的」または「継続的」は、「投与」に関連して本明細書で使用される場合、投与頻度が少なくとも1日に1回であることを意味する。しかしながら、投与頻度は1日1回よりも多くなり得、本明細書で特定された投与量レベルを超えない限り、例えば1日に2回、さらには3回であっても「連続的」または「継続的」であることに留意されたい。投与のための手段および方法は当技術分野で既知であり、当業者はガイダンスのために様々な薬理学の参考文献を参照し得る。例えば、“Modern Pharmaceutics,”Banker & Rhodes,Informa Healthcare,USA,4th ed.(2002);および“Goodman & Gilman’s The Pharmaceutical Basis of Therapeutics,”McGraw−Hill Companies,Inc.,New York,10th ed.(2001)を調べ得る。
【0217】
[0243]「対象」、「個体」または「患者」は、診断、予後、治療、または本組成物もしくは本剤形の投与が望まれるヒトまたは非ヒトである任意の対象を意味する。哺乳類対象として下記が挙げられるがこれらに限定されない:ヒト;家畜(domestic animal);家畜(farm animal);動物園の動物;競技用動物;愛玩動物、例えばイヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウスまたはウマ;霊長類、例えばサル(例えばオマキザル、アカゲザル、アフリカミドリザル、パタス、カニクイザルおよびオナガザル)、類人猿、オラウータン、ヒヒ、テナガザルおよびチンパンジー;イヌ科の動物、例えばイヌおよびオオカミ;ネコ科の動物、例えばネコ、ライオンおよびトラ;ウマ科の動物、例えばウマ、ロバおよびシマウマ;食用動物、例えば雌ウシ、ウシ、ブタおよびヒツジ;有蹄類、例えばシカおよびキリン;齧歯類、例えばマウス、ラット、ハムスターおよびモルモット;および同類のもの。用語対象はまた、モデル動物(例えば疾患モデル動物)も包含する。一部の実施形態では、用語「対象」は、(経済的にもしくは他の点で)高価な動物を含み、例えば経済的に重要な種畜、レース用動物、興行用動物、エアルーム動物、希少なもしくは絶滅寸前の動物、またはコンパニオンアニマルを含む。ある特定の実施形態では、この対象はヒト対象である。ある特定の実施形態では、この対象は非ヒト対象である。
【0218】
[0244]本組成物を、「栄養量」、「治療上有効な量」、「予防上有効な量」、「治療用量」または「予防用量」として投与し得る。「栄養量」は、必要な投与量でおよび期間にわたり、望ましい栄養結果を達成するのに有効な量を意味する。栄養結果は、例えば対象における望ましい脂肪酸成分のレベルの上昇であり得る。「治療上有効な量」または「治療用量」は、必要な投与量でおよび期間にわたり、望ましい治療結果を達成するのに有効な量を意味する。治療結果は、例えば症状の緩和、生存期間の延長、移動性の改善および同類のものであり得る。治療結果は「治癒」である必要はない。「予防上有効な量」または「予防用量」は、必要な投与量でおよび期間にわたり、望まし予防結果を達成するのに有効な量を意味する。典型的には、予防用量は疾患の前または初期段階にて対象で使用されることから、予防的に有効な量は、進行段階の疾患を処置するための治療上有効な量と比べて少ないであろう。
【0219】
[0245]対象に投与され微生物、バイオマスまたは微生物油のEPAまたは他の脂肪酸成分の量に基づいて、この対象に様々な投与量の本組成物、本剤形または本医薬組成物を投与し得る。用語「1日投与量(daily dosage)」、「1日投与量レベル」および「1日投与量(daily dosage amount)」は、本明細書では、1日(24時間の期間)当たりに投与されるEPAまたは他の脂肪酸成分の総量を意味する。そのため、例えば、2mgの1日投与量での対象へのEPAの投与は、EPAを、2mgのEPAを含む1個の剤形として投与するかあるいはそれぞれ0.5mgのEPAを含む4個の剤形(合計2mgのEPA)として投与するかにかかわらず、毎日合計2mgのEPAを対象に投与することを意味する。一部の実施形態では、1日量のEPAを1つの剤形または2つの剤形で投与する。本発明の剤形を1回の適用または複数回の適用で服用させ得る。例えば、4個の錠剤(各錠剤は0.5mgのEPAを含む)を毎日服用させる場合、4個全ての錠剤を1日に1回服用させ得る、または2個の錠剤を1日に2回服用させ得る、または1個の錠剤を6時間毎に服用させ得る。一部の実施形態では、1日投与量は約100mg〜約15gのEPAである。一部の実施形態では、1日投与量は、約0.5mg〜約250mg、約100mg〜約250mg、約100mg〜約500mg、約100mg〜約1g、約1g〜約2.5g、約1g〜約5g、約1g〜約10g、約1g〜約15g、約5g〜約10g、約5g〜約15g、約10g〜約15g、約100mg〜約10g、約100mg〜約5gまたは約100mg〜約2.5gのEPA、DHAまたはこれらの組み合わせである。一部の実施形態では、本組成物は、剤形毎に約0.5mg〜約250mg、100mg〜約250mg、約0.5mg〜約500mg、約100mg〜約500mg、約0.5mg〜約1gまたは約100mg〜約1gのEPA、DHAまたはこれらの組み合わせを含む剤形である。
【0220】
[0246]本発明の組成物または剤形の投与を、様々なレジメンを使用して達成し得る。例えば、一部の実施形態では、投与を連日にわたり毎日行う、あるいは隔日(1日おき(bi−daily))で行う。投与を1日または複数日で行い得る。
【0221】
[0247]本組成物および本剤形の投与を、状態の処置に使用される他のレジメンと組み合わせ得る。例えば、本発明の方法を、食事レジメン(例えば低炭水化物食、高タンパク質食、高繊維食等)、運動レジメン、減量レジメン、禁煙レジメンまたはこれらの組み合わせと組み合わせ得る。本発明の方法を、状態の処置において他の医薬品とも組み合わせても使用し得る。本発明の組成物または剤形を他のレジメンまたは医薬品の前にまたは後に投与し得る。
【0222】
[0248][本組成物を含むキット]
[0249]本発明は、本発明の組成物の1単位または複数単位を含むキットまたはパッケージを対象とする。キットまたはパッケージは、本発明の組換え宿主細胞、バイオマスもしくは微生物油またはこれらの組み合わせを含む食品、医薬組成物、化粧品または工業用組成物の単位を含み得る。キットまたはパッケージはまた、食物、化粧品、医薬組成物または工業用組成物の調製のために、本発明の組換え宿主細胞、バイオマスもしくは微生物油またはこれらの組み合わせを含む添加剤も含み得る。
【0223】
[0250]一部の実施形態では、このキットまたはパッケージは、本発明の方法に従って投与される医薬組成物の1単位または複数単位を含む。このキットまたはパッケージは1つの投与量単位を含み得る、または複数の投与量単位(即ち複数の投与量単位)を含み得る。このキットまたはパッケージに複数の投与量単位が存在する場合、この複数の投与量単位は任意選択で、連続投与のために配列され得る。
【0224】
[0251]本発明のキットは、このキットの単位または剤形と関連した説明書を任意選択で含み得る。そのような説明書は、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関により規定された形態であり得、この通知書は、状態または障害を処置するためのヒトへの投与のための製造、使用または販売の政府機関による認可を示す。この説明書は、本発明の方法に従ったキット中の単位または剤形の使用時に情報を伝える任意の形態であり得る。例えば、この説明書は印刷物の形態であり得る、または予め記録された媒体デバイスの形態であり得る。
【0225】
[0252]患者の検査の最中に、医療従事者は、この患者に本発明の方法のうちの1つの投与が適していることを確認し得る、またはこの医師は、この患者の状態を本発明の方法のうちの1つの投与により改善し得ることを確認し得る。いずれかのレジメンを処方する前に、この医師は、例えばこのレジメンと関連した様々なリスクおよび利益について患者に助言し得る。この患者に、このレジメンと関連した全ての既知のリスクおよび疑わしいリスクの完全な開示を行い得る。そのような助言を口頭で行い得る、および書面で行い得る。一部の実施形態では、この医師は、レジメンに関する文献資料(例えば製品情報、教材および同類のもの)をこの患者に提供し得る。
【0226】
[0253]本発明は、本処置方法について消費者を教育する方法であって、販売の時点で消費者情報と共に本剤形を配布することを含む方法を対象とする。一部の実施形態では、この配布を、薬剤師または医療提供者を有する販売の時点で行う。
【0227】
[0254]用語「消費者情報」として、英語の文章、非英語の文章、視覚画像、チャート、電話録音、ウェブサイト、および録音でないカスタマーサービス担当者へのアクセスが挙げられ得るがこれらに限定されない。一部の実施形態では、消費者情報により、本発明の方法に従う剤形の使用に関する指導、適切な年齢での使用、適応症、禁忌、適切な投薬、警告、電話番号またはウェブサイトアドレスが提供される。一部の実施形態では、この方法は、本発明の方法に従う、開示されたレジメンの使用に関する消費者の質問に回答する地位の関係者に専門情報を提供することをさらに含む。用語「専門情報」として、医療従事者が消費者の質問に回答し得るように設計されている、本発明の方法に従って投与された場合でのレジメンに関する情報が挙げられるがこれらに限定されない。
【0228】
[0255]「医療従事者」は、例えば医師、医師助手、看護師、上級看護師、薬剤師および顧客サービス担当者を含む。
【0229】
[0256]本発明を概して説明しているが、本明細書に記載されている実施例を参照することによりさらに理解され得る。この実施例は例示のみを目的としており、限定することは意図されていない。
【0230】
[実施例]
[0257][全体的なプロトコル]
[0258]別途示さない限り、後の実施例で説明されている分子生物学的操作および生化学的操作を、例えばAusubel et al.(1995)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons;Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press;および同類のもので開示されている標準的な方法論で実施した。
【0231】
[0259][酵素前処理によるエレクトロポレーション]
[0260]細胞を、30℃で2日にわたり200rpmにて振盪機上においてM50−20培地(米国特許第8,859,855号明細書、Weaver et al.2014を参照されたい)50mL中で増殖させた。この細胞をM2B培地米国特許第8,859,855号明細書、Weaver et al.2014を参照されたい)で1:100に希釈し、一晩(16〜24時間)増殖させて、中期対数期増殖(mid−log phase growth)(1.5〜2.5OD600)に達するように試みた。この細胞を、約3000×gにて5分にわたり50mLのコニカルチューブ中で遠心分離した。上清を除去し、細胞を、適切な体積の1Mのマンニトール、pH5.5に再懸濁させ、2 OD600単位の最終濃度に到達させた。細胞5mLを25mLのシェーカーフラスコに等分し、10mMのCaCl(1.0Mのストック、ろ過滅菌済)および0.25mg/mLのProtease XIV(10mg/mLのストック、ろ過滅菌済;Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)で修正した。フラスコを、4時間にわたり30℃および約100rpmにて振盪機上でインキュベートした。細胞を顕微鏡下でモニタリングし、所望の単一細胞によるプロトプラスト形成の程度を決定した。この細胞を丸底チューブ(即ち、14mLのFalcon(商標)チューブ、BD Biosciences,San Jose,CA)中で約2500×gにて5分にわたり遠心分離した。上清を除去し、細胞を10%の氷冷グリセロール5mLに緩やかに再懸濁させた。この細胞を、丸底チューブ中で約2500×gにて5分にわたり再遠心分離した。上清を除去し、広口径ピペットチップ(wide−bore pipette tip)を使用して、細胞を10%の氷冷グリセロール500μLに緩やかに再懸濁させた。細胞90μLを、予め冷却した電子キュベット(Gene Pulser(登録商標)キュベット−0.1cmギャップまたは0.2cmギャップ、Bio−Rad,Hercules,CA)に等分した。このキュベットにDNA 1μg〜5μg(10μL体積以下)を添加し、ピペットチップで緩やかに混合し、5分にわたり氷上に置いた。細胞を、200オーム(抵抗)と、25μF(静電容量)と、250V(0.1cmギャップの場合)または500V(0.2cmギャップ)のいずれかとでエレクトロポレートした。このキュベットにM50−20培地0.5mLをすぐに添加した。次いで、細胞を25mLのシェーカーフラスコ中のM50−20培地4.5mLに移植し、振盪機上で30℃および約100rpmにて2〜3時間にわたりインキュベートした。この細胞を丸底チューブ中で約2500×gにて5分にわたり遠心分離した。上清を除去し、細胞ペレットをM50−20培地0.5mLに再懸濁させた。細胞を適切な数(2〜5枚)のM2Bプレート上に適切な選択で蒔き、30℃でインキュベートした。
【0232】
[0261][全脂肪酸メチルエステル(FAME)産生]
[0262]簡潔に言うと、細胞を、3日にわたり200rpmで振盪させつつ30℃にてM2B液体培地(米国特許第8,637,651号明細書を参照されたい)中で増殖させた。あるいは、細胞をM50−20液体培地中で1〜2日にわたっても増殖させ、続いて2 OD単位を新鮮なSSFM液体培地(米国特許第8637651号明細書を参照されたい)50mLに移植し、200rpmで振盪させつつ250mLのバッフル付き振盪フラスコ中で27℃にて約4日にわたり増殖させた。細胞を回収し、標準的な技術を使用して脂肪酸をメチルエステルに変換した。脂肪酸プロファイルを、炎イオン化検出付きガスクロマトグラフィー(GC−FID)を使用して脂肪酸メチルエステル(FAME)として測定した。
【0233】
[実施例1]
[0263][スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来のPUFAシンターゼ遺伝子によるスキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230Dの天然PUFAシンターゼ遺伝子の標的を定めた置き換え]
[0264]スキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230Dはスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888の娘であり、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888の細胞を化学的変異誘発にかけ、この手順からのクローンを所望の増殖特性に関して分析してスキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230Dを同定した。スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888と同様に、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230Dは一倍体であり、PUFA生合成のための完全な古典的経路を有していない。スキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230DはΔ12デサチュラーゼを欠いており、この経路の他の酵素に対して非常に限られた活性を示す。(Metz et al.,Plant Physiol.Biochem.47(6):472−478(2009));Lippmeier et al.Lipids.44:621−630(2009)を参照されたい)。この生物の天然PUFAシンターゼにより、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888で観察されるものと類似の比でDHAおよびドコサペンタエン酸(DPA n−6)が産生される。
【0234】
[0265]スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888のPFA1、PFA2およびPFA3のコード領域のヌクレオチド配列と、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230DのPFA1、PFA2およびPFA3のコード領域のヌクレオチド配列とは同一である。PFA1、PFA2およびPFA3を組換え発現するためのベクターの作製は既に実証されており且つ説明されている。例えば米国特許第8,940,884号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【0235】
[0266]スキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230Dの天然PFA3遺伝子を、PFA3隣接領域由来の配列に囲まれたパロモマイシン耐性マーカーを含む線状ベクター(プラスミドpDS97)による形質転換の後に相同組換えにより置き換えた。機能性PFA3遺伝子を欠く変異株が作製された(B142)。この変異株は栄養要求性であり、増殖にはPUFA補充を必要とした。
【0236】
[0267]スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695 PFA3(配列番号5)を発現ベクターpREZ22にクローニングしてpREZ324を作製した。この発現ベクターは、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888由来の天然PFA3遺伝子座の隣接領域由来の約2kbのDNAを含んだ。
【0237】
[0268]機能性PFA3を欠くスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)N230D変異体を、スキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA3を含む線状pREZ324で形質転換した。この変異体のパロモマイシン耐性マーカーに隣接するおよびpREZ324中のスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA3遺伝子に隣接する相同領域に基づいて、スキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA3が天然PFA3遺伝子座に挿入されるように組換えが起きた。この変異株をB154と命名した。
【0238】
[0269]スキゾキトリウム(Schizochytrium)変異株B154の天然のPFA1遺伝子およびPFA2遺伝子を、PFA3遺伝子置き換えに関して説明されているのと同様の戦略を使用してスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695由来のPFA1遺伝子およびPFA2遺伝子に置き換えた。これらの2種の遺伝子の置き換えは、これらの遺伝子の頭部−頭部配置により促進された(図1を参照されたい)。PFA1下流隣接領域由来の配列およびPFA2下流隣接領域由来の配列で囲まれたパロモマイシン耐性マーカーを含むベクター(プラスミドpCX023)による株B154の形質転換により、この耐性マーカーによりPFA1遺伝子座およびPFA2遺伝子座が置き換えられた。この栄養要求性変異株をB155と命名した。株B155を、スキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA1(配列番号1)およびスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA2(配列番号3)を含むpLP112であって、スキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA1(配列番号1)およびスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA2(配列番号3)は、これらの遺伝子の間の天然スキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC 20888遺伝子間領域によりおよび約2kbのスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC 20888のPFA1下流隣接領域およびPFA2下流隣接領域により頭部−頭部で配列されている、pLP112で形質転換した。スキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA1が天然PFA1遺伝子座に挿入され、スキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA2がこの株の天然PFA2遺伝子座に挿入されるような組換えが起きた。得られた組換え株(B156)は、天然PFA1コード配列、天然PFA2コード配列および天然PFA3コード配列を欠いており、各PFA1遺伝子座、PFA2遺伝子座およびPFA3遺伝子座に挿入されたスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695のPFA1、PFA2およびPFA3を含んだ。これらの遺伝子をそれぞれ天然PFA1/2プロモーターおよびPFA3プロモーターで駆動させた。B156はPUFA原栄養性を回復し、いかなる抵抗マーカーも含まなかった。目的の全てのトランスジェニック株のゲノム構造を、PCRおよびサザンブロッティングで確認した。このプロセスの概略を図3に示す。
【0239】
[0270]図4Aに示すように、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230D株であって、この天然のPFA1遺伝子、PFA2遺伝子およびPFA3遺伝子を含むN230D株は、25℃での増殖後に0.39%のEPA(産生された総FAMEの%)、8.20%のDPA n−6および28.39%のDHAを産生した。欠失した天然のPFA1コード領域、PFA2コード領域およびPFA3コード領域の代わりにスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695のPFA1(配列番号l)、PFA2(配列番号3)およびPFA3(配列番号5)を含む組換え株B156−2は、25℃での培養後に1.12%のEPA、1.78%のDPA n−6および28.56%のDHAを産生した。
【0240】
[0271]図4Bに示すように、30℃での増殖後でのこれらの株のFAME組成も決定した。スキゾキトリウム(Schizochytrium)種N230D株であって、この天然のPFA1遺伝子、PFA2遺伝子およびPFA3遺伝子を含むN230D株は、30℃での培養後に0.60%のEPA(産生された総FAMEの%)、13.16%のDPA n−6および32.34%のDHAを産生した。不活性化されたPFA1遺伝子、PFA2遺伝子およびPFA3遺伝子の代わりにスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695のPFA1(配列番号l)、PFA2(配列番号3)およびPFA3(配列番号5)を含む組換え株B156は、30℃での増殖後に1.17%のEPA、3.03%のDPA n−6および28.46%のDHAを産生した。
【0241】
[実施例2]
[0272][ランダムにゲノムに組み込まれたスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来のPUFAシンターゼサブユニット遺伝子によるスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888の天然PUFAシンターゼサブユニット遺伝子の置き換え]
[0273]PUFA栄養要求体を作製するためのスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888の天然PUFAシンターゼ遺伝子の不活性化およびPUFA合成を回復するための外因的に導入される相同遺伝子によるそのような不活性化遺伝子の置き換えは既に実証されており且つ説明されている。例えば米国特許第7,217,856号明細書(この全体が参照により本明細書に組み込まれる)および上記実施例1を参照されたい。
【0242】
[0274]スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888の天然のPFA1コード領域およびPFA2コード領域を、約2kbのPFA1下流隣接DNAおよびPFA2下流隣接DNAの間に配置されたZeocin(商標)耐性カセットを含むプラスミドによる形質転換後に相同組換えによりノックアウトした。同様に、PFA3コード領域を、天然PFA3の上流DNAおよび下流DNAが隣接するパロモマイシン耐性カセットを含むプラスミドによる形質転換により欠失させた。得られた株をB122−17と命名した(スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888のΔPFA1、2、3もΔorfA、B、Cと称した)。B122−17は栄養要求性であり、PUFA補充を必要とする。
【0243】
[0275]スキゾキトリウム(Schizochytrium)株B122−17を、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695由来のPFA1、PFA2およびPFA3の遺伝子Orfを含む環状ベクターpREZ345、pREZ331およびpREZ324で同時に形質転換した(これらのベクターに関する詳細に関して米国特許第8,940,884号明細書、実施例7および9を参照されたい)。簡潔に言うと、pREZ345は、天然PFA1の隣接領域由来の約2kbのDNAに囲まれたスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA1の配列を含む。pREZ331は、天然PFA2の隣接領域由来の約2kbのDNAに囲まれたスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA2の配列を含む。pREZ324は、天然PFA3の隣接領域由来の約2kbのDNAに囲まれたスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA3の配列を含む。PUFAを補充していない培地での増殖に基づいて形質転換体を選択し、この形質転換体は、3種全てのPUFAシンターゼサブユニット遺伝子の機能的組込みが起きていることを示した。この形質転換から生じた原栄養株をB149と命名し、個々の単離株をダッシュ#で示した(例えばB149−E1またはB149−3)。形質転換に使用される株(B122−17)はPFA1/PFA2遺伝子間DNAを欠いていることから、PFA1遺伝子およびPFA2遺伝子の相同な二重クロスオーバー事象以外の機序がこの組込み事象を構成する可能性がある。新たに導入されたPFA3遺伝子は、(相同な二重クロスオーバー組換えにより)PFA3遺伝子座または他の場所で組み込まれ得た。加えて、環状ベクターの使用により、単一クロスオーバー事象または異所性組込みを支持し得た。
【0244】
[0276]得られた原栄養性形質転換体の脂肪酸プロファイルを30℃でのM2B培地中における増殖後に測定し、EPAの産生が増強されている、得られた株のうちのいくつかを同定した。図5に示すように、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888株であって、この天然のPFA1遺伝子、PFA2遺伝子およびPFA3遺伝子を含むATCC 20888株は、30℃での培養後に0.98%のEPA(産生された総FAMEの%)、13.75%のDPA n−6および34.95%のDHAを産生した。3種の組換えB149株[B149−E1(「B9」とも称される)、B149−3およびB149−4]は、30℃での培養後に10.06〜21.06%のEPA、0.70〜1.98%のDPA n−6および15.01〜20.17%のDHAを産生した。
【0245】
[0277]PFA1プローブを使用したサザンブロットによる増強EPA株のさらなる分析により、この増強EPA株はPFA1遺伝子の複数のコピーを含むことが示された(図6を参照されたい)。スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC 20888の天然PFA1遺伝子が標的を定めた方法でスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695由来のPFA1遺伝子に置き換えられている株由来のDNA試料を参照として含めた(即ち、株B145−16およびB145−33)。これらの株はPFA1遺伝子の単一のコピーを有する(上記実施例1を参照されたい)。これらの結果のデンシトメトリー算出は、B149−E1(B9)株がPFA1遺伝子の約6コピーを含み、B149−3株が約5〜6コピーを含み、B149−4株がPFA1の約4〜5コピーを含むことを示唆する。図6のデータは、PFA1遺伝子の複数のコピーがゲノム中の1つの部位で組み込まれていることを示唆する。このことを図7で概略的に示す。
【0246】
[実施例3]
[0278][トランスジェニックスキゾキトリウム(Schizochytrium)株B156−2におけるPFA1遺伝子および/またはPFA3遺伝子の余分なコピーの付加]
[0279]スキゾキトリウム(Schizochytrium)株B156−2(上記実施例1で説明されている)は機能する天然のPFA1遺伝子、PFA2遺伝子およびPFA3遺伝子を欠いており、各PFA1遺伝子座、PFA2遺伝子座およびPFA3遺伝子座に挿入されたスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695のPFA1遺伝子、PFA2遺伝子およびPFA3遺伝子を含む。
【0247】
[0280]この株を、PFA1遺伝子またはPFA3遺伝子にリーディングフレーム5’で連結された伸長因子1(EF1)の天然の強力なプロモーターと天然orfC遺伝子のターミネーターとを含む発現カセットを有する環状プラスミドで形質転換した(米国特許第8,637,651号明細書を参照されたい)。具体的には、プラスミドpTH049はスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA3遺伝子を含み、プラスミドpTH050はスキゾキトリウム種(Schizochytrium sp.)ATCC PTA−9695 PFA1遺伝子を含む。pTH049およびpTH050はまた、パロモマイシンおよびゼオシンによる選択のための耐性マーカーもそれぞれ含む。これらの遺伝子はおそらく、ゲノムにランダムに組み込まれている。得られたトランスジェニック株は、PFA2の1コピーとPFA1遺伝子および/またはPFA3遺伝子の少なくとも2コピーとを含んだ。
【0248】
[0281]得られた形質転換体のスクリーニング(図8を参照されたい)から、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種株N230Dまたはスキゾキトリウム(Schizochytrium)種株B156−2のいずれかと比較して、PFA1のさらなるコピー(T195)によりEPAの産生が増強される(総FAMEの約2〜3%)ことが明らかになった。対照的に、DHA産生はPFA1のみの過剰発現により影響を受けなかった。
【0249】
[0282]PFA3のさらなるコピー(T194)により、EPAはわずかに増強された(総FAMEの約1.6〜2.6%)が、DHAは大幅に増強された(総FAMEの約35〜41%)。
【0250】
[0283]PFA1およびPFA3の両方のさらなるコピー(T196)により、EPAおよびDHAの両方の産生が大幅に増強された。EPA産生は総FAMEの約2.6〜5.6%まで増加し(対して株N230DおよびB156−2では約1.3〜1.5%)、DHA産生は総FAMEの約33.5〜44.5%まで増加した(対して株230DおよびB156.2では約33.0〜35.5%)。さらに、ゲノム内の挿入部位およびおそらく挿入されたコピーの数に応じて、EPAおよびDHAの含有量は、トランスジェニックスキゾキトリウム(Schizochytrium)株の間でわずかに変動した。
【0251】
[実施例4]
[0284][DHAおよびEPAを蓄積する量が異なる、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695株中でのおよび近縁種ATCC PTA−10208株中でのPUFAシンターゼサブユニット遺伝子PFA1、PFA2およびPFA3の発現]
[0285]スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695株および関連するスキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−10208株は両方とも、同一遺伝子PFA1、PFA2およびPFA3の同一コピーを含む。しかしながら、この事実にもかかわらず、これらの株は異なる量のEPAおよびDHAを産生する。具体的には、スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−10208は、「標準」条件下で10Lスケールにて発酵の約96時間後に総FAMEの約24%のEPAと総FAMEの約31%のDHAとを含む。スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695は同じPUFAシンターゼサブユニットセットを有するが、10Lスケールにて発酵の96時間後に総FAMEの約9%のEPAと総FAMEの約55%のDHAとを含む。PFA1、PFA2およびPFA3のqPCR分析を、「標準」振盪フラスコ条件下で増殖させた両方の株に実施した。この結果は、PFA1およびPFA3が、株PTA−9695と比べて株PAT−10208にて高いレベルで発現されることを示した。図9を参照されたい。
【0252】
[実施例5]
[0286]スキゾキトリウム(Schizochytrium)種ATCC PTA−9695のPUFAシンターゼ遺伝子とPFA1遺伝子およびPFA3遺伝子のさらなるコピーとを、当技術分野での標準的技法を使用した形質転換のためのアグロバクテリウム系プラスミドベクターを使用してキャノーラ植物に導入する。加えて、ノストック種(Nostoc sp.)のHetI遺伝子または別の適切なPPTアーゼも、長鎖多価不飽和遊離脂肪酸(FFA)のアシル−CoAへの変換を触媒するアシル−CoAシンテターゼと一緒にこの植物に導入する。
【0253】
[0287]簡潔に言うと、プロモーターおよび3’−UTRに作動可能に連結された天然のまたはコドンが最適化されたPUFAシンターゼ遺伝子(PFA1、PFA2およびPFA3)または他の目的遺伝子(PPTアーゼ遺伝子およびACS遺伝子)を含む植物転写ユニット(PTU)を含んだ二成分ベクターを構築する。この二成分ベクターに様々なプロモーターおよび3’−UTR配列の組み合わせを組み込んで、PUFAシンターゼ遺伝子および他の遺伝子の発現を駆動させる。これらの様々な調節遺伝子エレメントの使用をPTUの設計に組み込み、これらの導入遺伝子の発現レベルを変更し且つ変化させる。このPTUを様々な向きでこの二成分ベクター内に配置し、このPTUの向きにより導入遺伝子の発現レベルが変更されるかどうかを試験する。得られた構築物を標準プロトコルに従ってアグロバクテリウム・ツメファシエンスに形質転換させ、制限酵素消化および配列決定により確認する。
【0254】
[0288]キャノーラの形質転換のために、最初に、当技術分野での標準プロトコルに従って種子を発芽させる。簡潔に言うと、目的のキャノーラ種子を10分にわたり10%のCloroxで表面滅菌し、滅菌蒸留水で3回すすぐ。種子を、発芽のために例えばphytatrayに含まれる1/2MSキャノーラ培地(1/2×MS、2%のスクロース、0.8%の寒天)に植え(1個のphytatray当たり25個の種子)、25℃、16時間の明期、8時間の暗期の光周期で設定された成長レジメセットにてPercival Growth Chamber(商標)に入れ、5日にわたり発芽させる。
【0255】
[0289]次いで、発芽した種子を、当技術分野での標準プロトコルに従って前処理する。簡潔に言うと、5日目に約3mmの長さの胚軸セグメントを無菌的に切除し、根切片および苗条切片を捨てる(切除プロセスの最中に滅菌ILLIQ(登録商標)水10mLに胚軸セグメントを入れることにより胚軸の乾燥を防止する)。胚軸セグメントを、22〜23℃、16時間の明期、8時間の暗期の光周期で設定された成長レジメにてPercival Growth Chamber(商標)中で3日の前処理にわたりカルス誘導培地MSK1D1(1×MS、1mg/Lのキネチン、1mg/Lの2,4−D、3%のスクロース、0.7%のPHYTAGAR(登録商標))上の滅菌ろ紙上に水平に置く。
【0256】
[0290]次いで、目的のアグロバクテリウム含有構築物との共培養を開始する。アグロバクテリウム処理の前日に、適切な抗生物質を含むYEP培地のフラスコを播種する。胚軸セグメントを、ろ紙から液体M培地10mLを含む空の100×25mmのペトリ皿に移植して、この胚軸セグメントの乾燥を防止する。この段階でスパチュラを使用して、このセグメントをすくい取って移植する。液体M培地をピペットで除去し、このペトリ皿にアグロバクテリウム懸濁液40mLを添加する(アグロバクテリウム溶液40mLで500個のセグメント)。このセグメントを、胚軸をアグロバクテリウム溶液に浸したままにし得るようにこのペトリ皿を周期的に旋回させつつ30分にわたり処理する。
【0257】
[0291]処理期間の最後に、アグロバクテリウム溶液を廃棄ビーカーにピペットで入れ、オートクレーブして廃棄する(アグロバクテリウム溶液を完全に除去してアグロバクテリウムの過剰増殖を防止する)。処理された胚軸を、ろ紙を有する、MSK1D1を含む元々のプレートに鉗子で戻す(このセグメントが乾燥しないように注意する)。この胚軸セグメントを制御セグメントと一緒に(プレートをアルミニウム箔で覆うことにより)低下した光強度下でPercival Growth Chamber(商標)に戻し、処理された胚軸を3日にわたりアグロバクテリウムと共に共培養する。
【0258】
[0292]共培養の3日後、選択培地を使用してカルス形成を誘導する。この胚軸セグメントを、カルス誘導培地MSK1D1H1(1×MS、1mg/Lのキネチン、1mg/Lの2,4−D、0.5mg/LのMES、5mg/LのAgNo3、300mg/LのTIMENTIN(登録商標)、200mg/LのCarbenicillin(商標)、1mg/LのHerbiace(商標)、3%のスクロース、0.7%のPHYTAGAR(登録商標))上に鉗子で個々に移植する。この胚軸セグメントは、この培地上で固定されているがこの培地には包埋していない。
【0259】
[0293]カルス誘導培地上での7日後、カルスを形成する胚軸セグメントを、選択MSB3Z1H1(1×MS、3mg/LのBAP、1mg/Lのゼアチン、0.5gm/LのMES、5mg/LのAgN<3/4、300mg/LのTIMENTIN(登録商標)、200mg/LのCarbenicillin(商標)、1mg/LのHerbiace(商標)、3%のスクロース、0.7%のPHYTAGAR(登録商標))を含むShoot Regeneration Medium 1に移植する。14日後、苗条を有する胚軸を、選択MSB3Z1H3(IX MS、3mg/LのBAP、1mg/Lのゼアチン、0.5gm/LのMES、5mg/LのAgN03、300mg/LのTIMENTIN(登録商標)、200mg/LのCarbenicillin(商標)、3mg/LのHerbiace(商標)、3%のスクロース、0.7%のPHYTAGAR(登録商標))が増加したRegeneration Medium2に移植する。
【0260】
[0294]14日後、この苗条を有するセグメントを、苗条伸長培地MSMESH5(1×MS、300mg/LのTIMENHN(登録商標)、5mg LのHerbiace(商標)、2%のスクロース、0.7%のTC Agar(商標))に移植する。既に伸長している苗条を単離してMSMESH5に移植する。14日後、第1ラウンドで伸長した残余の苗条をMSMESH5に置き、同一組成の新鮮な選択培地に移植する。この段階で、残余の胚軸セグメント全てを廃棄する。2週間後にMSB3Z1H3上で伸長する苗条を単離し、MSMESH5培地に移植する。MSMESH5上で第1ラウンドにて伸長した残余の苗条を単離し、同一組成の新鮮な選択培地に移植する。この段階で、残余の胚軸セグメント全てを廃棄する。
【0261】
[0295]別の14日後、この苗条を、根の誘導のためにMSMEST培地(IX MS、0.5g/LのMES、300mg/LのTIMENTIN(登録商標)、2%のスクロース、0.7%のTC Agar(商標))に移植する。MSMEST培地上での第1の移植中に根付かない苗条を、根付いた植物が得られるまでMSMET培地上で第2または第3のサイクルにわたり移植する。
【0262】
[0296]この苗条を少なくとも14日にわたりMSMESH5培地上で培養した後、PCR用の試料を単離する。緑色の苗条由来の葉組織を、選択マーカー遺伝子の存在に関してPCRで試験する。萎黄病の苗条全てを廃棄してPCRアッセイにはかけない。このPCR反応に対して陽性である試料を保存し、苗条をMSMEST培地上で放置して根を伸長させて成長させる。このPCRアッセイに従って陰性である苗条を廃棄する。MSMESH5またはMSMESTに根付き且つPCR陽性である植物を土壌に移植した。ハードニング後、トランスジェニックキャノーラ植物を、導入遺伝子PTUカセットの全てを含む事象に関してさらに分析し、この植物を温室に移して成熟まで成長させ、脂肪酸組成分析のためにTi種子を収穫する。導入遺伝子の存在およびコピー数も定量PCRで分析し、タンパク質量を免疫ブロット分析で分析する。
【0263】
[0297]このキャノーラ種子中でLC−PUFA(特にEPAおよびDHA)の産生を検出する。PFA1およびPFA3の追加のコピーならびに/またはPFA2と比較して高いPFA1およびPFA3の発現を促進する調節配列の存在より、EPAの蓄積がより高くなる。
【0264】
[0298]本明細書で引用された全ての参考文献は、各参考文献が参照により組み込まれることが具体的に且つ個々に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。いかなる参考文献の引用も本出願日前の開示を目的としており、本開示が先行発明によりそのような参考文献に先行する権利がないことを認めると解釈すべきではない。
【0265】
[0299]上記で説明されている要素の各々または2つ以上の要素は、上記で説明されている種類とは異なる他の種類の方法でも有用な用途を見出し得ることが理解されるであろう。さらに分析することなく、上述の内容は、他者が、現在の知識を適用することにより、先行技術の観点から添付の特許請求の範囲に記載されている本開示の包括的なまたは特定の態様の必須特性を公正に構築する特徴を省略することなく、様々な用途に容易に適合し得るように本開示の要点を完全に明らかにするだろう。上述の実施形態は例示としてのみ示され、本開示の範囲は下記の特許請求の範囲によってのみ限定される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]