(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966056
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】床面フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20211028BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20211028BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20211028BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/00 M
B32B27/30 101
B32B27/40
E04F15/16 A
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-91087(P2019-91087)
(22)【出願日】2019年5月14日
(65)【公開番号】特開2020-185703(P2020-185703A)
(43)【公開日】2020年11月19日
【審査請求日】2021年1月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】390014487
【氏名又は名称】住江織物株式会社
(72)【発明者】
【氏名】柴山 誉宏
(72)【発明者】
【氏名】橋本 一馬
【審査官】
大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】
実開平02−115596(JP,U)
【文献】
特開2017−149904(JP,A)
【文献】
特開2012−213913(JP,A)
【文献】
特開昭57−056255(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
C09J 7/00− 7/50
E04F 15/00−15/22
B60R 13/01−13/04,13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面フィルム層と、
該表面フィルム層の下面側に印刷層と、
該印刷層の下面側に接着層と、を備え、
前記表面フィルム層は上側表面フィルム層と、下側表面フィルム層とからなり、
前記上側表面フィルム層を形成する樹脂はウレタン樹脂であり、
前記下側表面フィルム層を形成する樹脂はポリ塩化ビニル樹脂であり、
前記上側表面フィルム層の引張弾性率が100MPa〜500MPaであり、
前記下側表面フィルム層の引張弾性率が1000MPa〜3000MPaであることを特徴とする床面フィルム。
【請求項2】
前記上側表面フィルム層の厚みは50μm〜200μmである請求項1に記載の床面フィルム。
【請求項3】
前記下側表面フィルム層の厚みは200μm〜500μmである請求項1又は2に記載の床面フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、車両等に用いられる床面フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ユーザーの要望の多様化により鉄道、バス等の車両の窓や壁などに表示フィルムが貼られており、様々な表示フィルムが開発されている。
【0003】
出願人は特許文献1を出願しており、表面フィルム層と、該表面フィルム層の下面側に印刷層と、該印刷層の下面側に中間粘着樹脂層と、該中間粘着樹脂層の下面側にアルミフィルム層と、該アルミフィルム層の下面側に裏面粘着樹脂層を積層し、前記表面フィルム層は、ポリオレフィン系樹脂と、前記水素化石油樹脂と、スチレン系エラストマー又はオレフィン系エラストマーと、を含み、前記表面フィルム層における前記水素化石油樹脂の含有率が3%〜20%であり、前記表面フィルム層の破断応力が20MPa以上であり、前記表面フィルム層の引張弾性率が100MPa〜700MPaであることを特徴とする車両用床表示フィルムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018−91975号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では表面フィルム層の透明性に優れ、鉄道車両等の過酷な使用環境で使用しても耐えうる強度を保持し、表面フィルム層と印刷層との密着性に優れた効果を発揮する。しかしながら、車両用床表示フィルムを床に施工して2〜3年経過し、車両用床表示フィルムを貼り替える作業を行う際、アルミフィルム層の一部が床面に残ってしまい、貼り替える前に床面に残ったアルミフィルム層を取り除かなければならず、施工時間を短縮できる車両用床面表示フィルムが求められている。
【0006】
車両用床表示フィルムからアルミフィルム層を取り除くことで、床面にアルミフィルム層の一部が残る問題は解決することができる。しかしながら、車両用床表示フィルムからアルミフィルム層を取り除くため、難焼性を維持することができなくなる恐れがある。
【0007】
近年、バスなどの車両用にも床面フィルムが求められており、バスなどの車両用床面フィルムには鉄道車両用とは異なる難燃性能が求められる。
【0008】
本発明は、かかる技術的背景を鑑みてなされたものであって、床面フィルムとしての物性を有すると共に、バスなどの車両用難焼性を維持しつつ、床面へアルミフィルム層が残らない床面フィルムを提供することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
【0010】
[1] 表面フィルム層と、
該表面フィルム層の下面側に印刷層と、
該印刷層の下面側に接着層と、を備え、
前記表面フィルム層は上側表面フィルム層と、下側表面フィルム層とからなり、
前記上側表面フィルム層を形成する樹脂はウレタン樹脂であり、
前記下側表面フィルム層を形成する樹脂はポリ塩化ビニル樹脂であり、
前記上側表面フィルム層の引張弾性率が100MPa〜500MPaであり、
前記下側表面フィルム層の引張弾性率が1000MPa〜3000MPaであることを特徴とする床面フィルム。
【0011】
[2] 前記上側表面フィルム層の厚みは50μm〜200μmである前項1に記載の床面フィルム。
【0012】
[3] 前記下側表面フィルム層の厚みは200μm〜500μmである前項1又は2に記載の床面フィルム。
【発明の効果】
【0013】
[1]の発明では、表面フィルム層と、表面フィルム層の下面側に印刷層と、印刷層の下面側に接着層と、を備え、表面フィルム層は上側表面フィルム層と、下側表面フィルム層とからなり、上側表面フィルム層を形成する樹脂はウレタン樹脂であり、上側表面フィルム層の引張弾性率が100MPa〜500MPaであるから、床材としての物性(耐摩耗性、耐傷つき性)を有することができる。下側表面フィルム層を形成する樹脂はポリ塩化ビニル樹脂であり、下側表面フィルム層の引張弾性率が1000MPa〜3000MPaであるから、難焼性を向上させることができる。さらに、本発明の床面フィルムは、アルミフィルム層を積層しないため、施工後に床面から床面フィルムを剥がしたとしても、床面へアルミフィルム層が残らない床面フィルムを提供することができる。
【0014】
[2]の発明では、上側表面フィルム層の厚みは50μm〜200μmであるから、耐摩耗性及び耐傷つき性を向上させることができる。
【0015】
[3]の発明では、下側表面フィルム層の厚みは200μm〜500μmであるから、難焼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る床面フィルムの一実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明に係る床面フィルムの一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の床面フィルム1は、表面フィルム層2と、該表面フィルム層2の下面側に印刷層3と、該印刷層3の下面側に接着層4と、を備え、前記表面フィルム層2は上側表面フィルム層5と、下側表面フィルム層6とからなり、前記上側表面フィルム層5を形成する樹脂はウレタン樹脂であり、前記下側表面フィルム層6を形成する樹脂はポリ塩化ビニル樹脂であり、前記上側表面フィルム層5の引張弾性率が100MPa〜500MPaであり、前記下側表面フィルム層6の引張弾性率が1000MPa〜3000MPaであることを特徴とする。
【0018】
床面フィルム1は、上から表面フィルム層2と、該表面フィルム層2の下面側に印刷層3と、該印刷層3の下面側に接着層4と、を備えていることが必要である。なお、本発明の床面フィルム1は、アルミフィルム層を積層しないため、施工後に床面から床面フィルム1を剥がしたとしても、床面へアルミフィルム層が残らない床面フィルム1を提供することができる。
【0019】
前記表面フィルム層2を構成する層としては、上側表面フィルム層5の下面側に下面表面フィルム層6があり、上側表面フィルム層5と、下側表面フィルム層6の2層からなる必要がある。表面フィルム層2は印刷層3を保護することができる。
【0020】
前記上側表面フィルム層5を形成する樹脂はウレタン樹脂である必要がある。ウレタン樹脂を用いているから、耐摩耗性及び耐傷付き性を向上させることができる。
【0021】
前記上側表面フィルム層5の引張弾性率が100MPa〜500MPaである必要がある。100MPa未満では凹み性が悪くなり、500MPaを超えても滑りやすくなるため好ましくない。中でも200MPa〜300MPaであることがより好ましい。
【0022】
前記上側表面フィルム層5の厚みとしては、50μm〜200μmであることが好ましい。この範囲内であることで、床面フィルム1として必要とされる耐摩耗性及び耐傷つき性を確保することができる。中でも、90μm〜110μmであることがより好ましい。
【0023】
前記下側表面フィルム層6を形成する樹脂は、ポリ塩化ビニル樹脂である必要がある。ポリ塩化ビニル樹脂を用いることで難燃性を向上させることができる。
【0024】
前記下側表面フィルム層6の引張弾性率が1000MPa〜3000MPaである必要がある。1000MPa未満では凹み性が悪くなり、3000MPaを超えても曲げ性が悪くなるため好ましくない。中でも1500MPa〜2000MPaであることがより好ましい。
【0025】
前記下側表面フィルム層6の厚みとしては、200μm〜500μmであることが好ましい。この範囲内であることで、難焼性を向上させることができる。中でも、300μm〜400μmであることがより好ましい。
【0026】
前記表面フィルム層2の厚みとしては、250μm〜700μmであることが好ましい。
【0027】
前記表面フィルム層2の表面には、エンボス加工された凹凸表面であっても構わない。
【0028】
前記表面フィルム層2には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、熱安定剤、難燃剤、耐候剤、着色剤、帯電防止剤、充填剤等の各種添加剤を適宜含有せしめてもよい。
【0029】
前記印刷層3は、表面フィルム層2の下面側に積層され、特に限定されるものではないが、例えば、グラビア印刷、オフセット印刷、スクリーン印刷、転写印刷、インクジェット印刷等の印刷手法によって形成されるものである。中でもスクリーン印刷を用いることがより好ましい。
【0030】
前記印刷層3を構成する印刷インキとしては、特に限定されるものではないが、例えばアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂などの合成樹脂に、顔料、染料、着色剤、充填剤等が添加混合されたもの等を例示できる。通常、溶剤などで希釈化されているものを用いる。
【0031】
前記接着層4は、床面と床面フィルム1との接着のために用いられる。
【0032】
前記接着層4を構成する樹脂成分としては、特に限定されるものではないが、例えば、粘着剤、接着剤等が挙げられる。アクリル系樹脂、天然ゴム系樹脂、シリコン系樹脂、ウレタン系樹脂などの粘着剤が好ましく、中でも、アクリル系樹脂を用いることが、粘着力が強く、また凝集力も強い点で、より好ましい。
【0033】
前記接着層4の形成量(乾燥後)としては、35g/m
2〜150g/m
2であることが好ましい。
【0034】
本発明に係る床面フィルム1の製造方法としては、下側表面フィルム層6になるフィルムシート(PVC)の一方の面にウレタン樹脂を押出機で押出し、貼り合せる。次に、下側表面フィルム層6になるフィルムシート(PVC)のウレタン樹脂を貼り合せていない他方の面にインクジェット等で印刷層3を形成する。最後に、印刷層3の下面側に粘着剤を塗布して接着層4を形成し、床面フィルム1を得る。
【0035】
このように、床面フィルム1は、意匠性の付与、誘導情報、利用区分情報、広告、宣伝等の情報を表示することができるので、乗客に効果的に伝えることができる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明はこれら実施例のものに特に限定されるものではない。
【0037】
<実施例1>
下側表面フィルム層6になるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシート(引張弾性率1750MPa、厚み350μm)を準備した。次に、押出機で、引張弾性率が250MPaであるウレタン樹脂を厚みが100μmになるように押し出して、ポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートにウレタン樹脂を貼り合せた。次に、ポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートのウレタン樹脂を貼り合せた面とは反対側の面に、インクジェットで印刷加工を行い、印刷層を形成した。最後に、印刷層の下面側に、アクリル系樹脂からなる粘着剤を塗布し、接着層が汚れないように離型紙を貼り付けて、
図1に示す床面フィルム1を得た。なお、
図1では離型紙は省略している。接着層の形成量は150g/m
2であった。
【0038】
<実施例2>
上側表面フィルム層5として、引張弾性率が250MPaであるウレタン樹脂から引張弾性率が120MPaであるウレタン樹脂へ変更する設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルム1を得た。
【0039】
<実施例3>
上側表面フィルム層5として、引張弾性率が250MPaであるウレタン樹脂から引張弾性率が350MPaであるウレタン樹脂へ変更する設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルム1を得た。
【0040】
<実施例4>
下側表面フィルム層6として、引張弾性率が1750MPaであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートから引張弾性率が1250MPaであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートに変更する設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルム1を得た。
【0041】
<実施例5>
下側表面フィルム層6として、引張弾性率が1750MPaであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートから引張弾性率が2500MPaであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートに変更する設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルム1を得た。
【0042】
<実施例6>
上側表面フィルム層5として、厚みが100μmから厚みが70μmになるように押し出す設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルム1を得た。
【0043】
<実施例7>
上側表面フィルム層5として、厚みが100μmから厚みが150μmになるように押し出す設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルム1を得た。
【0044】
<実施例8>
下側表面フィルム層6として、厚みが350μmであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートから厚みが250μmであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートに変更する設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルム1を得た。
【0045】
<実施例9>
下側表面フィルム層6として、厚みが350μmであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートから厚みが450μmであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートに変更する設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルム1を得た。
【0046】
<比較例1>
上側表面フィルム層5として、ウレタン樹脂からポリエステルエラストマーに変更し、下側表面フィルム層6として、厚みが350μmであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートから厚みが300μmであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートに変更する設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルムを得た。
【0047】
<比較例2>
下側表面フィルム層6として、ポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシート(引張弾性率1750MPa、厚み350μm)から、引張弾性率が1100MPaであるウレタン樹脂を厚みが300μmになるように押し出す設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルムを得た。
【0048】
<比較例3>
上側表面フィルム層5を積層せずに、下側表面フィルム層6として、厚みが350μmであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートから厚みが300μmであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートに変更する設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルムを得た。
【0049】
<比較例4>
上側表面フィルム層5として、ウレタン樹脂の厚みが100μmからウレタン樹脂の厚みが200μmになるように押し出す設定に変更し、下側表面フィルム層を使用しない設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルムを得た。
【0050】
<比較例5>
上側表面フィルム層5として、引張弾性率が250MPaであるウレタン樹脂から引張弾性率が90MPaであるウレタン樹脂へ変更し、下側表面フィルム層6として、厚みが350μmであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートから厚みが380μmであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートに変更する設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルムを得た。
【0051】
<比較例6>
下側表面フィルム層6として、厚みが350μmであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートから厚みが320μmであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートに変更し、上側表面フィルム層5として引張弾性率が250MPaであるウレタン樹脂から引張弾性率が1000MPaであるウレタン樹脂へ変更する設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルムを得た。
【0052】
<比較例7>
下側表面フィルム層6として、引張弾性率が1750MPaであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートから引張弾性率が800MPaであるポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシートに変更する設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルムを得た。
【0053】
<比較例8>
下側表面フィルム層6として、ポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシート(引張弾性率1750MPa、厚み350μm)からポリ塩化ビニル樹脂からなるフィルムシート(引張弾性率3500MPa、厚み700μm)に変更する設定にした以外は、実施例1と同様に、床面フィルムを得た。
【0054】
なお、上側表面フィルム層5の引張弾性率及び下側表面フィルム層6の引張弾性率は、下記引張弾性率測定法により測定された引張弾性率(MPa)である。
【0055】
<引張弾性率測定法>
上側表面フィルム層5の引張弾性率は、一度、押出機で樹脂だけを押し出したフィルムシートを、JIS K 6251−2010に準拠して、上側表面フィルム層5からなるフィルムシートの引張弾性率(MPa)を意味する。下側表面フィルム層6の引張弾性率は、JIS K 6251−2010に準拠して、下側表面フィルム層6からなるフィルムシートの引張弾性率(MPa)を意味する。この引張弾性率の測定の際には、ダンベル状5号形、チャック間距離70mm、引張速度1mm/minの条件下で測定し、応力−ひずみ曲線の初期の傾きを測定する。
【0056】
【表1】
【0057】
上記のようにして得られた各床面フィルムに対して、下記評価方法に基づいて評価を行った。これらの評価結果を表1に示す。
【0058】
<難燃性評価法>
FMVSS302(Federal Motor Vehicle Safety Standard No.302)(自動車用内装材料の燃焼試験)に準拠して燃焼性試験(難燃性試験)を行い、燃焼速度(mm/min)が100以下であれば「〇」、それ以外を「×」とし、「〇」以上を合格とした。
【0059】
<耐傷付き性評価法>
5cm角サイズに切り出した試料端部の側面側に対して角度40°で、棒ヤスリ(鉄製、目の粗さ30cuts/cm、ヤスリの長さ70mm、ヤスリ部外径3mm、全長140mm)に1kgの荷重を掛けて、30cm/secの速度で3回こすった。3回後の試料表面の状態を目視にて確認して、傷が全く見えないものを「◎」、傷がほんの僅かしか認められず実質的に傷がないと判断できるものを「○」、傷が少し見えるものを「△」、傷がはっきり見えるものを「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0060】
<耐摩耗性評価法>
JIS K 7204−1999に準拠して、表面フィルム層側を表面にして摩耗紙S42、荷重500gの条件下で回転させて、2000回回転させた後、摩耗減量を測定した。下記判断基準に基づき評価し、「〇」以上を合格とした。
(判定基準)
「◎」・・・250mm
3以下
「〇」・・・250mm
3を超えて、400mm
3未満
「×」・・・400mm
3以上
【0061】
<滑り性評価法>
JIS A 1454−2016の滑り性試験に準拠して、水+ダスト条件ですべり抵抗値を測定した。すべり抵抗値が0.52以上であれば「〇」、それ以外であれば「×」とし、「〇」以上を合格とした。
【0062】
<曲げ性評価法>
実施例1〜9、比較例1〜8で作製した床面フィルムを直径が3インチの紙管に巻き付けて、床面フィルムを紙管に1周巻き付けた時に、割れが発生しなかったものを「〇」とし、それ以外のものを「×」とし、「〇」以上を合格とした。
【0063】
<凹み性評価法>
JIS A 1454−9.3:2016に準拠して、各床面フィルムの凹み量を測定した。試験条件としては、試験治具6.35φを用い、60秒間133Nの荷重をかけた後、デプスゲージを用いて凹み量を測定した。0.3mm未満を「◎」、0.3mm以上〜0.5mm未満を「〇」、0.5mm以上を「×」とし、「○」以上を合格とした。
【0064】
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜9の床面フィルムは、難燃性、耐傷つき性、耐摩耗性、滑り性、曲げ性、凹み性が優れていた。
【0065】
これに対して比較例1の床面フィルムは、耐傷つき性、耐摩耗性が劣っていた。比較例2の床面フィルムは、難燃性が劣っていた。比較例3の床面フィルムは、耐傷つき性、耐摩耗性、滑り性が劣っていた。比較例4の床面フィルムは、難燃性が劣っていた。比較例5の床面フィルムは、耐傷つき性、凹み性が劣っていた。比較例6の床面フィルムは、滑り性が劣っていた。比較例7の床面フィルムは、凹み性が劣っていた。比較例8の床面フィルムは、曲げ性が劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明に係る床面フィルムは、例えば、車両等の床面フィルム等として好適である。
【符号の説明】
【0067】
1・・・床面フィルム
2・・・表面フィルム層
3・・・印刷層
4・・・接着層
5・・・上側表面フィルム層
6・・・下側表面フィルム層