(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1では基材の全体が発泡層を有しないソリッドであるため、特許文献2のような発泡層を有する基材に比べて重量が嵩むという問題がある。そこで、特許文献2のように、樹脂材に発泡剤を混合した基材成形用樹脂によって基材を発泡成形することで、軽量で、しかも所望の剛性を持った樹脂製品とすることができる。
【0006】
しかしながら、特許文献1のように、基材の表面の一部のみ表皮材で覆い、基材の表面の他の部分は表皮材で覆うこと無く、露出部とする場合がある。このように基材の一部にのみ表皮材を設ける場合には、基材の発泡層の形成が問題となることが考えられる。すなわち、基材の成形時には、上述したように発泡剤を含んでいる基材成形用樹脂を、上金型と下金型を開いた状態でキャビティに射出し、上金型と下金型を型締めして基材を成形すると同時に基材と表皮材とを一体化した後、上金型と下金型を開いて基材を発泡させる工程が必要になる。基材の発泡量をどの程度にするかは、発泡剤の量に依存する他、上金型と下金型を開き始めるタイミングや、上金型と下金型を開く速度、開く量、そのときの基材成形用樹脂の温度、金型温度等にも依存している。表皮材が存在している部位では表皮材による断熱作用があるので、表皮材が存在していない部位に比べて基材成形用樹脂の冷却温度が異なることは避けられない。よって、所望の板厚の実現が困難であり、また、表皮側と裏面の両方へのスキン層の形成が困難になるおそれがある。
【0007】
表皮材に接する基材面が発泡していると、表皮と基材の密着性が弱まってしまうため、表皮材側にスキン層を形成しようとすると、表皮材の熱伝導率が金型に比べて低いため、スキン層の形成が遅れてしまう結果、裏面側に過度のスキン層が形成され、十分な発泡層の形成が阻害されてしまうこともある。
【0008】
また、特許文献2のように表皮材が発泡層を含む場合、上金型と下金型を開き始めるときに表皮材の発泡層が復元し始めることになり、この表皮材の発泡層の復元力によって基材の発泡量が、表皮材が存在していない部位に比べて制限される場合が考えられる。この場合も表皮材が存在している部位と表皮材が存在していない部位とでは基材の発泡量が異なることになる。
【0009】
また、表皮材の影響以外にも基材の形状や基材の部位による厚みの相違等によっても、基材の発泡量を部位ごとに所望の発泡量にすることが困難になるおそれがある。このような部位ごとの発泡量のコントロールは、発泡剤の混合量の調整によっては実現が困難である。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、発泡層を有する基材を成形する場合に部分毎の発泡量を容易にコントロールできるようにして発泡量を部位ごとに最適化できるようにし、樹脂製品の剛性・耐衝撃性・表皮材と基材の密着性を確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明では、金型の一部を他の部分とは別体に構成して発泡層形成時の型開き時に独立して型開き方向に移動可能にした。
【0012】
第1の発明は、発泡層
と該発泡層の全面を覆うように設けられた非発泡のスキン層とを有する樹脂製の基材と
、表皮材とを備えた樹脂製品を成形する樹脂成形装置において、第1金型と、上記基材における上記第1金型とは反対側の面を成形する基材成形面を有する第2金型と、上記第1金型及び上記第2金型の一方を他方に接離する方向に駆動して上記第1金型と上記第2金型とを型開き状態と型閉じ状態とに切り替える型駆動装置と、上記基材を形成する発泡剤を含んだ基材成形用樹脂を
上記基材成形面に供給する樹脂供給装置とを備え、上記第1金
型は、本体金型部と、該本体金型部とは別体に構成された別体金型部と、上記別体金型部を上記本体金型部に対して上記型駆動装置の駆動方向に相対移動させる相対移動機構とを有し
、上記本体金型部は、上記表皮材をセットするための表皮材セット面を有し、上記別体金型部は、上記基材における上記表皮材から露出した露出部を成形する露出部成形面を有していることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、第1金型及び第2金型を型開き状態にしてから、第1金型と第2金型の基材成形面との間に樹脂供給装置によって発泡剤を含んだ基材成形用樹脂を供給するとともに、型駆動装置によって第1金型及び第2金型を型閉じ状態にすることで、基材成形用樹脂が第1金型及び第2金型によって成形される。そして、型閉じ状態にある第1金型及び第2金型を型駆動装置によって型開き方向に相対移動させることで基材成形用樹脂に含まれている発泡剤の作用によって基材が発泡する。
【0014】
このとき、第1金型及び上記第2金型の一方が、本体金型部と別体金型部を有しており、相対移動機構によって別体金型部を本体金型部に対して型駆動装置の駆動方向に相対移動させることができる。これにより、本体金型部と別体金型部との型開き方向への移動開始のタイミングを変えること、及び、本体金型部と別体金型部との型開き方向への移動速度を容易に変えることが可能になる。例えば、別体金型部を本体金型部よりも速い移動速度となるように型開き方向に移動させることで、基材における別体金型部に対応する部位は発泡量が多くなる。また、別体金型部を本体金型部よりも遅い移動速度となるように型開き方向に移動させることで、基材における別体金型部に対応する部位は発泡量が少なくなる。このように、基材の部分毎の発泡量を容易にコントロールすることが可能になる。
【0015】
また、本体金型部に表皮材をセットしておくことができ、また、別体金型部の露出部成形面によって基材の露出部を成形することができる。本体金型部と別体金型部とを相対移動させることで、例えば表皮材による断熱効果を考慮して基材の各部位の発泡量をコントロールすることが可能になる。
【0016】
第2の発明は、第1の発明において、上記相対移動機構は、型閉じ状態にある上記第1金型及び上記第2金型を型開きするときに上記別体金型部を上記本体金型部よりも遅い移動速度で型開き方向に移動させるように構成されていることを特徴とする。
【0017】
この構成によれば、基材における別体金型部に対応する部位の発泡量が多くなりがちな構造を有する樹脂製品の場合に、基材における別体金型部に対応する部位の発泡量を少なくすることが可能になる。
【0018】
第3の発明は、第1の発明において、上記相対移動機構は、型閉じ状態にある上記第1金型及び上記第2金型を型開きするときに上記別体金型部を上記本体金型部よりも速い移動速度で型開き方向に移動させるように構成されていることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、基材における別体金型部に対応する部位の発泡量が少なくなりがちな構造を有する樹脂製品の場合に、基材における別体金型部に対応する部位の発泡量を多くすることが可能になる
。
【0020】
第
4の発明
は、上記表皮材セット面には、弾性材からなる発泡層を有する表皮材がセットされることを特徴とする。
【0021】
すなわち、型開き時に表皮材の発泡層の復元力によって基材の発泡量が制限される場合が考えられるが、この発明では、弾性材からなる発泡層を有する表皮材がセットされる本体金型部と、基材の露出部を成形する別体金型部とを相対移動させることが可能になるので、表皮材の弾性力を考慮して基材の各部位の発泡量をコントロールすることが可能になる。
【0022】
第
5の発明
は、上記型駆動装置は、上記第1金型を駆動することを特徴とする。
【0023】
この構成によれば、本体金型部及び別体金型部を第2金型に対して移動させながら、本体金型部及び別体金型部を相対移動させることも可能になる。
【0024】
第
6の発明は、発泡層
と該発泡層の全面を覆うように設けられた非発泡のスキン層とを有する樹脂製の基材
と、表皮材とを備えた樹脂製品を成形する樹脂成形方法において、
上記表皮材をセットするための表皮材セット面を有する本体金型部と、該本体金型部とは別体に構成され、上記基材における上記表皮材から露出した露出部を成形する露出部成形面を有する別体金型部と、上記別体金型部を上記本体金型部に対して上記型駆動装置の駆動方向に相対移動させる相対移動機構とを備えた第1金型
と、第2金型
と、を用意し、上記第2金型が有する基材成形面に、上記基材を形成する発泡剤を含んだ基材成形用樹脂を供給する樹脂供給工程と、上記樹脂供給工程の後、上記第1金型及び上記第2金型を型締めして上記基材を成形する基材成形工程と、上記基材成形工程の後、上記第1金型及び上記第2金型を型開きして上記基材を発泡させる際に、
上記本体金型部と
上記別体金型部とを
上記型駆動装置の駆動方向に相対移動させる基材発泡工程とを備えていることを特徴とする。
【0025】
第
7の発明では、第1金型の表皮材セット面に上記表皮材をセットする表皮材セット工程を備えていてもよい。この場合、樹脂供給工程の前に表皮材セット工程を行うのが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
第1、
6の発明によれば、第1金型と、基材成形面を有する第2金型との一方を、本体金型部と別体金型部とに分割し、別体金型部を本体金型部に対して型駆動装置の駆動方向に相対移動させることができる。これにより、発泡層を有する基材を成形する場合に部分毎の発泡量を容易にコントロールすることができ、発泡量を基材の部位ごとに最適化できる。
【0027】
第2の発明によれば、基材における別体金型部に対応する部位の発泡量を少なくすることによって基材の部位ごとの発泡量を最適化できる。
【0028】
第3の発明によれば、基材における別体金型部に対応する部位の発泡量を多くすることによって基材の部位ごとの発泡量を最適化できる。
【0029】
第
7の発明によれば、第1金型の本体金型部に表皮材をセットし、別体金型部で基材の露出部を成形することができる。この場合に、本体金型部と別体金型部とを相対移動させることができるので、表皮材による断熱効果を考慮して基材の各部位の発泡量を容易にコントロールできる。
【0030】
第
4の発明によれば、弾性材からなる発泡層を有する表皮材を用いた場合に表皮材の弾性力を考慮して基材の各部位の発泡量を容易にコントロールできる。
【0031】
第
5の発明によれば、型駆動装置によって本体金型部及び別体金型部を移動させることができ、この移動時に、本体金型部及び別体金型部の相対速度を変更することができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0034】
(樹脂製品の説明)
図1は、本発明の実施形態に係る樹脂成形装置30(
図2に示す)を使用した樹脂成形方法によって成形された樹脂製品1の断面図である。樹脂製品1は、例えば自動車の内装材、各種建築材等として使用することができる部材であり、樹脂製の基材10と、樹脂製の表皮材20とを備えている。基材10は、後述する発泡剤を含んだ基材成形用樹脂によって形成されたものであり、表皮材20によって覆われる被覆部11と、表皮材20によって覆われていない部位、即ち表皮材20から露出した露出部12とを有している。被覆部11及び露出部12は共に板状をなしている。尚、表皮材20は必須の部材ではなく、表皮材20を省略してもよい。
【0035】
基材10は、発泡層13と、発泡層13の全面を覆うように設けられた非発泡の外面層(スキン層)14とを有している。発泡層13の厚みは例えば1mm〜5mm程度に設定することができるが、この範囲に限られるものではなく、樹脂製品1の要求される剛性等を考慮して任意の値に設定することができる。また、外面層14は、ソリッド層であり、外面層14の厚みは例えば0.3mm〜0.5mm程度に設定することができるが、この範囲に限られるものではなく、樹脂製品1の要求される剛性等を考慮して任意の値に設定することができる。
【0036】
基材10における表皮材20が設けられる側に位置する面には、表皮材20の端部が差し込まれる溝15が形成されている。この溝15を境界にして、
図1における左側が被覆部11であり、右側が露出部12である。
【0037】
表皮材20は、基材10の被覆部11に沿うように、かつ、車室内に臨むように配置される本体部21と、本体部21の縁部から基材10の被覆部11の縦面に沿うように延びる第1側部22と、基材10の溝15の底面に向けて延びる第2側部23とを有している。表皮材20は、例えば弾性材からなる発泡層24と、発泡層24の少なくとも片面を覆うように設けられた非発泡の外面層25とを有している。発泡層24は、ポリプロピレン等の発泡体で構成することができる。外面層25は、軟質PVC(ポリ塩化ビニル)等で構成することができる。
【0038】
表皮材20は、表面(外面層25の表面)にシボ等が形成されるとともに、本体部21、第1側部22及び第2側部23を有するように、立体形状に予め成形されている。これを予備成形という。予備成形では、例えば厚みが2.4mm程度の表皮材20を用意しておき、例えば160℃程度に加熱した後、表皮材転写用シボを設定した上型と下型(図示せず)の間で1.8mm程度になるまで圧縮しながら真空成形することで、表皮材20にシボを形成すると同時に樹脂成形装置30の本体金型部40に略一致させる。尚、表皮材20は基材10に対して融着されている。
【0039】
(樹脂成形装置30の構成)
次に、
図2に示す樹脂成形装置30の構成について説明する。樹脂成形装置30は、上述した
図1に示す発泡層13を有する樹脂製の基材10と、該基材10に積層されて一体化された樹脂製の表皮材20とを備えた樹脂製品1を成形するための装置であり、固定金型(第2金型)31と、可動金型(第1金型)32と、型駆動装置33と、樹脂供給装置34とを備えている。
【0040】
固定金型31は、可動金型32の下方に配置されており、固定盤Aに固定されていて相対的に動かないようになっている。固定盤Aは樹脂成形装置30が設置される工場等の床面に対して動かないように固定され、略水平に延びている。尚、成形プレス機の設備内に固定盤Aが含まれていてもよく、この成形プレス機が設置される場合であってもよい。
【0041】
固定金型31の上面は、基材10における表皮材20が積層された側とは反対側の面(
図1における下側の面)を成形するための基材成形面31aである。固定金型31には図示しない加温手段が設けられており、加温手段によって基材成形面31aが加温されるように構成されている。基材成形面31aの温度は、例えば30℃〜50℃くらいに設定することができる。
【0042】
基材成形面31aには、基材10における溝15に対応する部分を成形するための溝31bが形成されるとともに、ゲート31cが開口している。
図2では、ゲート31cを1つだけ示しているが、ゲート31cは複数設けることができる。また、ゲート31cは、基材成形面31aにおける被覆部11を成形する部分に開口している。これにより、ゲート31cが表皮材20の裏面と対向するように配置されることになる。尚、ゲート31cは、基材成形面31aにおける露出部12を成形する部分に開口させてもよい。
【0043】
固定金型31の内部には、ホットランナ31dが設けられている。ホットランナ31dは、樹脂供給装置34から供給された樹脂が流通する樹脂通路を構成する部材である。ホットランナ31dの樹脂流れ方向下流端部にゲート31cが接続されている。
【0044】
樹脂供給装置34は、従来から周知の構造のものを用いることができる。樹脂供給装置34は、発泡剤を含んだ基材成形用樹脂を定量供給するための射出機(図示せず)を有しており、この射出機のシリンダの内部では、樹脂を加圧した状態で溶融温度以上に加熱するように構成されている。基材成形用樹脂には、発泡剤が含まれているが、シリンダの内部で発泡が進まないように内部の圧力状態が設定されている。基材成形用樹脂の温度は例えば200℃程度に設定することができる。樹脂供給装置34のシリンダの吐出部は、ホットランナ31dの樹脂流れ方向上流端部に接続されている。発泡剤は、特に限られるものではないが、従来から周知の化学発泡剤等を使用することができる。
【0045】
可動金型32は、固定金型31の上側に配置されている。可動金型32にも固定金型31と同様な加温手段が設けられている。型駆動装置33は、可動金型32に連結される油圧シリンダ装置等で構成されており、可動金型32を固定金型31に接離する方向に駆動して可動金型32と固定金型31とを型開き状態(
図2、
図7に示す)と、型閉じ状態(
図4に示す)とに切り替えることができるように構成されている。この実施形態では、可動金型32が固定金型31の上側に配置されているので、型駆動装置33は可動金型32を上下方向に移動させることができるようになっており、型駆動装置33が可動金型32を下方向に移動させることで可動金型32と固定金型31とを型閉じ状態にすることができる一方、型閉じ状態にある可動金型32を型駆動装置33が上方向に移動させることで可動金型32と固定金型31とを型開き状態にすることができる。
【0046】
型駆動装置33は、図示しない制御装置によって制御される。型駆動装置33による可動金型32の移動方向、移動開始のタイミング、移動速度、移動量等は全て制御装置によって制御できる。
【0047】
可動金型32は、型駆動装置33に固定された可動盤Bに取り付けられている。可動金型32は、本体金型部40と、該本体金型部40とは別体に構成された別体金型部41と、別体金型部41を本体金型部40に対して型駆動装置33の駆動方向に相対移動させる相対移動機構42とを有している。本体金型部40は、可動盤Bの下面に固定されていて、固定金型31の基材成形面31aにおける被覆部11を成形する部分に対向するように配置される。本体金型部40の下面には、表皮材20がセットされる表皮材セット面40aが形成されている。この表皮材セット面40aは、予備成形された表皮材20の形状に対応するように形成されており、この実施形態では、上方に窪む凹面状をなしている。
【0048】
本体金型部40には、別体金型部41を上下方向に移動させるための貫通孔40bが形成されている。別体金型部41は、本体金型部40の貫通孔40bに差し込まれた状態で、本体金型部40に対して型駆動装置33の駆動方向(上下方向)に相対移動させることが可能になっている。
【0049】
別体金型部41は、固定金型31の基材成形面31aにおける露出部12を成形する部分に対向するように配置される。別体金型部41の下面には、基材10の露出部12を成形する露出部成形面41aが設けられている。別体金型部41の露出部成形面41aと、本体金型部40の表皮材セット面40aとは隣接するように配置されている。別体金型部41の露出部成形面41aと、本体金型部40の表皮材セット面40aとの境界は、ちょうど基材10の溝15に対応する部分に位置している。
【0050】
相対移動機構42は、別体金型部41を本体金型部40とは別に移動させるための機構であり、カム部材43と、カム部材43を駆動するカム部材駆動装置44と、カム部材43を案内する上側案内部材45及び下側案内部材46とを備えている。カム部材43は、上側案内部材45及び下側案内部材46の間で略水平方向に進退移動する部材である。この実施形態では、
図2における左側がカム部材43の進出方向であり、
図2における右側がカム部材43の後退方向である。
【0051】
カム部材43の上面は略水平に延びる水平面43aで構成される一方、カム部材43の下面は、該カム部材43の進出方向の先端に近づくほど上に位置するように傾斜した傾斜面43bで構成されている。つまり、カム部材43は、進出方向に向かって上下方向の寸法が次第に短くなるクサビ状に形成されている。
【0052】
上側案内部材45及び下側案内部材46は、直線状に延びるガイドレール部材等で構成されている。上側案内部材45は、可動盤Bの下面に固定されていて該下面に沿って略水平方向(
図2の左右方向)に延びている。カム部材43の水平面43aは上側案内部材45の下面に係合した状態で
図2の左右方向に移動可能となっている。下側案内部材46は、別体金型部41の上面に固定されていて、カム部材43の傾斜面43bと同じ角度で傾斜して
図2の左右方向に延びている。カム部材43の傾斜面43bは、下側案内部材46の上面に係合した状態で
図2の左右方向に移動可能となっている。カム部材43の傾斜面43bが下側案内部材46の上面に係合していることで、カム部材43と、別体金型部41とは下側案内部材46を介して左右方向への相対移動が可能な状態で連結されることになり、別体金型部41の脱落が抑制されるようになっている。上側案内部材45についても同様であり、カム部材43の脱落が抑制されるようになっている。すなわち、この実施形態では、可動金型32に、本体金型部40と、別体金型部41と、相対移動機構42とが設けられてユニット化されている。
【0053】
カム部材43は、上側案内部材45と下側案内部材46との間に配置されていて、上側案内部材45及び下側案内部材46に対して左右方向に相対移動可能になっている。
【0054】
カム部材43の基端部(
図2の右端部)には、カム部材駆動装置44が連結されている。カム部材駆動装置44は、型駆動装置33と同様に油圧シリンダ装置で構成することができる。カム部材駆動装置44による駆動方向は
図2の左右方向、即ちカム部材43の進退方向となっており、これにより、カム部材43を進出した状態と後退した状態とに切り替えることができる。カム部材駆動装置44は、図示しない制御装置によって制御される。カム部材駆動装置44によるカム部材43の移動方向、移動開始のタイミング、移動速度、移動量等は全て制御装置によって制御できる。
【0055】
カム部材駆動装置44がカム部材43を進出させると、カム部材43が上側案内部材45及び下側案内部材46の間を左側へ移動することになる。このとき、カム部材43の下面に傾斜面43bが形成されているので、この傾斜面43bによって別体金型部41が下方へ移動する。このカム部材43の後退動作によって本体金型部40は移動しないので、別体金型部41が本体金型部40に対して相対移動することになる。
【0056】
また、カム部材駆動装置44がカム部材43を進出した状態から後退させると、カム部材43が上側案内部材45及び下側案内部材46の間を右側へ移動することになる。このとき、カム部材43の下面に傾斜面43bが形成されているので、この傾斜面43bによって別体金型部41が上方へ移動する。このカム部材43の後退動作によって本体金型部40は移動しないので、別体金型部41が本体金型部40に対して相対移動することになる。
【0057】
相対移動機構42のカム部材駆動装置44によってカム部材43を任意に制御することができる。カム部材駆動装置44と型駆動装置33とは独立して制御することができるので、例えば、型閉じ状態にある可動金型32及び固定金型31を型駆動装置33によって型開きするときに、カム部材駆動装置44を作動させて別体金型部41を本体金型部40よりも遅い移動速度で型開き方向に移動させるように構成することができる。
【0058】
また、反対に、型閉じ状態にある可動金型32及び固定金型31を型駆動装置33によって型開きするときに、カム部材駆動装置44を作動させて別体金型部41を本体金型部40よりも速い移動速度で型開き方向に移動させるように構成することができる。カム部材43の初期位置は、上昇端位置にしておくこともできるし、下降端位置にしておくこともできる。また、カム部材43の初期位置は、上昇端位置と下降端位置との中間位置にしておくこともできる。
【0059】
また、型閉じ状態にある可動金型32及び固定金型31を型駆動装置33によって型開きするときに、別体金型部41が固定金型31に対して一定の時間動かないように、カム部材駆動装置44を作動させることもできる。この場合、可動金型32及び固定金型31を型開きするときに、一定の時間、本体金型部40だけが固定金型31から離れていくことになる。
【0060】
また、型閉じ状態にある可動金型32及び固定金型31を型駆動装置33によって型開きするときに本体金型部40が固定金型31に対して一定の時間動かないようにし、別体金型部41だけが固定金型31から離れていくように、カム部材駆動装置44及び型駆動装置33を制御することもできる。すなわち、型駆動装置33を型閉じ状態にしたまま、カム部材駆動装置44によってカム部材43を右側に移動させることで、別体金型部41だけが固定金型31から離れる方向に移動することになる。
【0061】
以上のように、相対移動機構42を設けていることで、本体金型部40及び別体金型部41の移動タイミング、移動速度、移動量の設定自由度が向上する。上述した移動例以外にもカム部材駆動装置44及び型駆動装置33を制御することによって様々な移動パターンを構成することができる。
【0062】
尚、上記実施形態では、可動金型32及び固定金型31を上下に配置したが、これに限らず、水平方向に並ぶように配置してもよい。水平方向に並ぶように配置する場合には、どちらの金型を型駆動装置33で駆動してもよい。また、相対移動機構42は、どちらの金型に設けてもよい。
【0063】
(樹脂成形方法)
次に、上記のように構成された樹脂成形装置30を用いて樹脂製品1を成形する樹脂成形方法について説明する。樹脂成形方法は、発泡層24を有する樹脂製の基材10と、該基材10に積層されて一体化された樹脂製の表皮材20とを備えた樹脂製品1を成形する方法であり、大きく分けて、表皮材セット工程、樹脂供給工程、基材成形工程、基材発泡工程及び脱型工程を備えている。
【0064】
表皮材セット工程の前に、予備成形した表皮材20を用意しておく。表皮材セット工程では、
図2に示すように、型駆動装置33によって可動金型32を上方へ移動させて可動金型32及び固定金型31を型開き状態にする。また、カム部材駆動装置44によってカム部材43を右側に移動させることにより、別体金型部41を上昇端位置に位置付けておく。そして、表皮材20を本体金型部40の表皮材セット面40aに嵌めるようにしてセットする。このとき、表皮材20を表皮材セット面40aに保持するための保持具等(図示せず)によってセットすることもできる。また、可動金型32及び固定金型31は所定温度に加温しておく。
【0065】
表皮材セット工程の後、
図3に示す樹脂供給工程を行う。表皮材セット工程が終わったら、型駆動装置33によって可動金型32を下方へ移動させていき、可動金型32及び固定金型31が型締め状態となる前のタイミングで、基材10を形成する発泡剤を含んだ基材成形用樹脂Cを基材成形面31aに供給する。すなわち、発泡剤を含んだ基材成形用樹脂Cを樹脂供給装置34から定量供給すると、固定金型31の内部のホットランナ31dを通ってゲート31cに達し、ゲート31cから基材成形面31a上に基材成形用樹脂Cが流出する。基材成形用樹脂Cは、基材成形面31aと表皮材20の裏面との間を流動して別体金型部41の露出部成形面41aと、基材成形面31aとの間にも達する。
【0066】
樹脂供給工程の後、
図4に示す基材成形工程を行う。基材成形工程では、型駆動装置33によって可動金型32を更に下方へ移動させて可動金型32及び固定金型31を型締めして基材10を成形する。この基材10の成形時には、基材成形用樹脂Cを可動金型32及び固定金型31の間で加圧する。加圧力によって表皮材20の発泡層24が弾性変形して薄くなる。また、この工程で基材10の外面層14が形成され始める。
【0067】
基材成形工程の後、
図5に示す基材発泡工程を行う。基材発泡工程では、基材10の外面層14が形成されたタイミングで、かつ、基材成形用樹脂Cが完全に固化する前に、型駆動装置33によって可動金型32を上方へ移動させる。これにより基材成形用樹脂Cが発泡して発泡層13が形成される。型駆動装置33の作動開始タイミングは、実験等によって得ることができる。
【0068】
型の移動順序としては、まず別体金型部41を単独で上昇させ、その後、全体を上昇させ、同時に、別体金型部41を相対的に逆方向に動かすこともできる。これにより、表皮被覆部分への十分な冷却時間を確保でき、上記課題を解決することができる。
【0069】
また、相対移動機構42によって別体金型部41を本体金型部40とは別に移動させる。具体的には、型駆動装置33によって可動金型32(本体金型部40及び別体金型部41)を上方へ移動させながら、相対移動機構42のカム部材駆動装置44によってカム部材43を左側へ移動させる。カム部材43が左側に移動することで別体金型部41が本体金型部40に対して下方へ移動することになるので、本体金型部40の上昇速度よりも別体金型部41の上昇速度の方が遅くなる。これにより、基材10における別体金型部41に対応する部位の発泡量と、基材10における本体金型部40に対応する部位の発泡量とを別々に調整することができる。
【0070】
また、
図6に示すように、相対移動機構42のカム部材駆動装置44によって予めカム部材43を左側へ移動させておき、基材発泡工程では、カム部材駆動装置44によってカム部材43を右側へ移動させるようにしてもよい。カム部材43が右側に移動することで別体金型部41が本体金型部40に対して上方へ移動することになるので、本体金型部40の上昇速度よりも別体金型部41の上昇速度の方が速くなる、または別体金型部41を一定時間停止させておくことができる。これによっても、基材10における別体金型部41に対応する部位の発泡量と、基材10における本体金型部40に対応する部位の発泡量とを別々に調整することができる。
【0071】
基材発泡工程の後、
図7に示す脱型工程を行う。脱型工程では、型駆動装置33によって可動金型32を上昇端位置まで移動させて可動金型32及び固定金型31を型開き状態にする。その後、樹脂製品1を脱型する。
【0072】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、この実施形態によれば、可動金型32及び固定金型31を型開き状態にしてから、可動金型32の表皮材セット面40aに表皮材20をセットした後、この表皮材20と固定金型31の基材成形面31aとの間に樹脂供給装置34によって発泡剤を含んだ基材成形用樹脂Cを供給し、その後、型駆動装置33によって可動金型32及び固定金型31を型閉じ状態にすることで、基材成形用樹脂を可動金型32及び固定金型31によって成形することができる。そして、型閉じ状態にある可動金型32及び固定金型31を型駆動装置33によって型開き方向に相対移動させることで基材成形用樹脂C
に含まれている発泡剤の作用によって基材10を発泡させて発泡層13を形成することができる。
【0073】
このとき、可動金型32が、本体金型部40と別体金型部41とを有しており、相対移動機構42によって別体金型部41を本体金型部40に対して型駆動装置33の駆動方向に相対移動させることができる。これにより、本体金型部40と別体金型部41との型開き方向への移動開始のタイミングを変えること、及び、本体金型部40と別体金型部41との型開き方向への移動速度、移動量を容易に変えることができる。これにより、基材10の部分毎の発泡量を容易にコントロールすることができるので、発泡量及び板厚を基材10の部位ごとに最適化できる。
【0074】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【0075】
例えば、表皮材を設定し、表皮材側及び裏面側の両方への基材内スキン層の形成を同時に行う場合、樹脂製品1の下部面は過度の冷却となるおそれがあり、この場合、樹脂製品1の表皮材が設定された部位の下部面に接する金型面を金型材料よりも熱伝導率の小さい材料でコーティングし、樹脂製品1の下部面を過度に冷却しないようにすることもできる。