特許第6966087号(P6966087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966087
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】ゼオライトとその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/48 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
   C01B39/48
【請求項の数】8
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2018-542398(P2018-542398)
(86)(22)【出願日】2017年9月15日
(86)【国際出願番号】JP2017033474
(87)【国際公開番号】WO2018061827
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2020年9月3日
(31)【優先権主張番号】特願2016-191110(P2016-191110)
(32)【優先日】2016年9月29日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業「デュアルファンクション構造体の構築と高性能触媒材料への展開」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504182255
【氏名又は名称】国立大学法人横浜国立大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】窪田 好浩
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 怜史
(72)【発明者】
【氏名】中澤 直人
【審査官】 浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−534896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 39/48
JSTPlus/JSTChina/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線回折法による測定で、少なくとも下記表1に示す格子面間隔d(Å)および相対強度を含むX線回折パターンを有し、
前記相対強度は、前記X線回折パターンに含まれるピークのうち、最大のピークの強度に対する他のピークの強度の比率を示していることを特徴とするゼオライト。
【表1】
【請求項2】
窒素吸着測定で見積もった細孔容積が0.12ml/g以上0.25ml/g以下であることを特徴とする請求項1に記載のゼオライト。
【請求項3】
互いに独立した複数の酸素8員環および酸素12員環を有し、
複数の前記酸素8員環は、複数のグループに分かれて存在し、各グループにおいて、前記酸素8員環が一方向に共通の貫通孔を有するように重なっており、
複数の前記酸素12員環は、複数のグループに分かれて存在し、各グループにおいて、前記酸素12員環が一つの平面に平行な方向に共通の貫通孔を有するように重なっており、
前記酸素8員環の重なり方向と前記酸素12員環の重なり方向とが、互いに交差していることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載のゼオライト。
【請求項4】
前記酸素8員環は、その重なり方向と交差する一方向において、対をなすものと孤立したものとが、交互に並んで列をなすように連結されており、前記列同士は、対をなす前記酸素8員環と孤立した前記酸素8員環とが隣り合うように、連結されていることを特徴とする請求項3に記載のゼオライト。
【請求項5】
前記酸素12員環は、その重なり方向と交差する平面内の二方向において、等間隔で並んで連結されていることを特徴とする請求項3または4のいずれかに記載のゼオライト。
【請求項6】
前記酸素8員環の細孔径が、酸素のイオン半径(0.135nm)二つ分の長さを差し引く場合0.295nm以上0.454nm以下、差し引かない場合0.565nm以上0.724nm以下、前記酸素12員環の細孔径が酸素のイオン半径(0.135nm)二つ分の長さを差し引く場合0.595nm以上0.710nm以下、差し引かない場合0.865nm以上0.980nm以下であることを特徴とする請求項3〜5のいずれか一項に記載のゼオライト。
【請求項7】
含有するT原子の数密度が15個/nm以上18個/nm以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のゼオライト。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載のゼオライトの製造方法であって、
第1のシリカ源、アルカリ源、水、および構造規定剤の混合物を攪拌しながら調製する第1の調製工程と、
調製した前記混合物を、攪拌しながら加熱する第1の加熱工程と、
加熱した前記混合物を冷却する冷却工程と、
冷却した前記混合物に、第2のシリカ源およびアルミナ源を加えて攪拌しながら再調製する第2の調製工程と、
再調製した混合物を加熱する第2の加熱工程と、
加熱した前記混合物を、洗浄およびろ過した上で乾燥させる乾燥工程と、
前記乾燥工程を経て得た有機複合体を加熱し、包接されている有機物を取り除く第3の加熱工程と、を順に有し、
前記第1のシリカ源としてコロイダルシリカを用い、前記第2のシリカ源およびアルミナ源としてY型ゼオライトを用い、前記構造規定剤としてジメチルジプロピルアンモニウム化合物を用いることを特徴とするゼオライトの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規骨格を有するゼオライトとその製造方法に関する。
本願は、2016年9月29日に、日本に出願された特願2016−191110号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
触媒機能を有する材料として、様々な構造のゼオライトが発見され、注目されている。ゼオライト骨格構造のバリエーションは、ここ20年で100程度から230程度に増加している。多様なゼオライト構造を作り分ける上で、有機の鋳型分子、すなわち構造規定剤(SDA)の使用が有効とされている。
【0003】
特に、酸素とテトラヘドラル原子(=T原子;ケイ素など)の環構造からなり、酸素で数えて12員環以上の細孔を有する大孔径ゼオライトの合成には、複雑で嵩高い有機分子を、構造規定剤として用いる考え方が主流となっている(非特許文献1)。ただし、嵩高い有機高分子を用いる場合、アルミニウム含有量が少ない高シリカ組成のゼオライトが合成される傾向にあり、そのままではイオン交換サイトが少ないため、イオン交換を鍵とするNOx還元触媒などの開発には適さないとされている。また、従来の考え方で大孔径のゼオライトを製造する場合、精密な設計・合成が必要とされ、その上、成功率が低いのが実状である。
【0004】
アルミニウム含有量が多い新規骨格のゼオライトを合成するためには、より単純な構造を有する構造規定剤を用いる必要があると考えられている。例えば、テトラアルキルアンモニウムなどの第四級アンモニウム化合物は、適切に設計すれば、ゼオライトの水熱合成において鋳型として働き、様々な骨格構造の結晶化を誘起する。また、ジメチルジプロピルアンモニウム化合物は、単純な構造を有しており、有用な骨格であるMSEの鋳型となることが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「ナノ空間材料ハンドブック」第3章2節、株式会社エヌ・ティー・エス、2016年2月8日、P.226〜235
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、原料として、シリカ源、アルミナ源、アルカリ源、上記構造規定剤を用い、さらに、シリカ源の約40倍以上の量の水を用いて水熱合成を行う従来の方法では、アルミニウムを多く含む(例えばSi/Al=7〜10)、新規骨格のゼオライトを得ることができない。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、アルミニウム含有量が多い新規骨格を有するゼオライトを提供することを目的とする。また、本発明は、このゼオライトを、単純な構造を有する構造規定剤を用い、より確実に製造することを可能とする、ゼオライトの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、鋭意検討を重ね、原料として用いる水の比率を従来よりも低くし、同じく原料に用いるシリカ源の例えば約6〜8倍程度とすることによって、新規骨格のゼオライトが得られることを見出した。本発明は、以下の特徴ないし手段を提供する。
[1]本発明の一態様に係るゼオライトは、粉末X線回折法による測定で、少なくとも下記表1に示す格子面間隔d(Å)および相対強度を含むX線回折パターンを有し、前記相対強度は、前記X線回折パターンに含まれるピークのうち、最大のピークの強度に対する他のピークの強度の比率を示している。
[2][1]に記載のゼオライトにおいて、窒素吸着測定で見積もった細孔容積が0.12ml/g以上0.25ml/g以下であることが好ましい。
[3][1]または[2]のいずれかに記載のゼオライトにおいて、互いに独立した複数の酸素8員環および酸素12員環を有し、複数の前記酸素8員環は、複数のグループに分かれて存在し、各グループにおいて、前記酸素8員環が一方向に共通の貫通孔を有するように重なっており、複数の前記酸素12員環は、複数のグループに分かれて存在し、各グループにおいて、前記酸素12員環が一つの平面に平行な方向に共通の貫通孔を有するように重なっており、前記酸素8員環の重なり方向と前記酸素12員環の重なり方向とが、互いに交差していることが好ましい。
[4][3]に記載のゼオライトにおいて、前記酸素8員環は、その重なり方向と交差する一方向において、対をなすものと孤立したものとが、交互に並んで列をなすように連結されており、前記列同士は、対をなす前記酸素8員環と孤立した前記酸素8員環とが隣り合うように、連結されていることが好ましい。
[5][3]または[4]のいずれかに記載のゼオライトにおいて、前記酸素12員環は、その重なり方向と交差する平面内の二方向において、等間隔で並んで連結されていることが好ましい。
[6][3]〜[5]のいずれか一つに記載のゼオライトにおいて、前記酸素8員環の細孔径が、酸素のイオン半径(0.135nm)二つ分の長さを差し引く場合0.295nm以上0.454nm以下、差し引かない場合0.565nm以上0.724nm以下、前記酸素12員環の細孔径が酸素のイオン半径(0.135nm)二つ分の長さを差し引く場合0.595nm以上0.710nm以下、差し引かない場合0.865nm以上0.980nm以下であることが好ましい。
[7][1]〜[6]のいずれか一つに記載のゼオライトにおいて、含有するT原子の数密度がT原子15個/nm以上18個/nm以下であることが好ましい。
[8]本発明の一態様に係るゼオライトの製造方法は、[1]〜[7]のいずれか一つに記載のゼオライトの製造方法であって、第1のシリカ源、アルカリ源、水、および構造規定剤の混合物を攪拌しながら調製する第1の調製工程と、調製した前記混合物を、攪拌しながら加熱する第1の加熱工程と、加熱した前記混合物を冷却する冷却工程と、冷却した前記混合物に、第2のシリカ源およびアルミナ源を加えて攪拌しながら再調製する第2の調製工程と、再調製した混合物を加熱する第2の加熱工程と、加熱した前記混合物を、洗浄およびろ過した上で乾燥させる乾燥工程と、前記乾燥工程を経て得た有機複合体を加熱し、包接されている有機物を取り除く第3の加熱工程と、を順に有し、前記第1の調製工程において用いる水の物質量を、前記第1のシリカ源の物質量と前記第2のシリカ源の物質量との合計の6〜8倍とし、前記第1のシリカ源としてコロイダルシリカを用い、前記第2のシリカ源およびアルミナ源としてY型ゼオライトを用い、前記構造規定剤としてジメチルジプロピルアンモニウム化合物を用いる。
【0009】
【表1】
【発明の効果】
【0010】
本発明のゼオライトは、新規骨格を有する結晶性アルミノシリケート多孔体であり、アルミニウム含有量が多く、イオン交換サイトを多く含むため、イオン交換を鍵とする触媒(例えばNOx還元触媒)の開発に適している。また、本発明のゼオライトは、脱アルミニウムを経てヘテロ元素を導入することができるため、各種の基礎化学品製造用触媒として活用できる可能性がある。
【0011】
さらに、本発明のゼオライトは、パラフィンの接触分解を促す固体触媒として応用することができる。また、本発明のゼオライトは、ゼオライトを構成するアルミニウムの一部を、遷移金属(チタン、スズなど)で同型置換することができる。例えば、チタンで同型置換したゼオライトは、酸素、過酸化水素、アルキルヒドロペルオキシド等を酸化剤とするオレフィン、パラフィンおよび芳香環の選択酸化に優れた触媒となる。
【0012】
本発明のゼオライトの製造方法によれば、アルミニウム含有量が多く、新規骨格を有するゼオライトを得ることができる。本発明のゼオライトの製造方法においては、一例として、単純な構造を有する構造規定剤としてジメチルジプロピルアンモニウム化合物を用い、さらに、原料として用いる水の物質量を、同じく原料に用いるシリカ源の物質量の約6〜8倍程度としている。これにより、当該ゼオライトを、水の物質量をシリカ源の物質量の約40倍程度とする従来の製造方法を用いる場合に比べて、容易かつ確実に、高純度で製造することができ、大量生産を実現しやすくなる。また、構造規定剤の合成が簡略化される分、合成プロセスに要するエネルギーを低減することができ、製造コストを大幅に下げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1A】本発明の一実施形態に係るゼオライトの構造を、一方向から平面視した図である。
図1B】本発明の一実施形態に係るゼオライトの構造を、他の一方向から平面視した図である。
図2】本発明の一実施形態に係るゼオライトについて、X線回折による分析を行った結果を示すグラフである。
図3】本発明の一実施例に係るゼオライトについて、窒素吸着測定を行った結果を示すグラフである。
図4】本発明の一実施例に係るゼオライトについて、27Al MAS NMR測定を行った結果を示すグラフである。
図5】本発明の一実施例に係るゼオライトについて、29Si MAS NMR測定を行った結果を示すグラフである。
図6A】本発明の一実施例に係るゼオライトのSEM写真である。
図6B】本発明の他の実施例に係るゼオライトのSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した実施形態であるゼオライトとその製造方法について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0015】
[ゼオライトの構成]
本発明の一実施形態に係るゼオライト100の構成について、図1A、1Bを用いて説明する。なお、ここでは3次元空間を、互いに直交するx軸、y軸、z軸で表し、x軸、y軸、z軸と略平行な方向を、それぞれx軸方向、y軸方向、z軸方向と呼ぶものとする。図1Aは、ゼオライト100の構造を、一方向(z軸方向)から平面視した図である。図1Bは、ゼオライト100の構造を、他の一方向(x軸方向)から平面視した図である。
【0016】
ゼオライト(結晶性アルミノシリケート多孔体)100は、互いに独立した、複数の酸素8員環101(101a、101b)および複数の酸素12員環102を有している。後でも述べるように、酸素8員環101aは、y軸方向において孤立、すなわち、y軸方向において他の酸素8員環101aから離間している。また、酸素8員環101bは、y軸方向において他の酸素8員環101bと接して対をなしている。
【0017】
酸素8員環101の細孔径は、酸素のイオン半径(0.135nm)を考慮する場合、すなわち酸素のイオン半径二つ分の長さを差し引く場合には、0.295nm以上0.454nm以下であることが好ましい。また、酸素8員環101の細孔径は、酸素のイオン半径(0.135nm)を考慮しない場合、すなわち酸素のイオン半径二つ分の長さを差し引かない場合には、0.565nm以上0.724nm以下であることが好ましい。
【0018】
酸素12員環102の細孔径は、酸素のイオン半径(0.135nm)を考慮する場合、すなわち酸素のイオン半径二つ分の長さを差し引く場合には、0.595nm以上0.710nm以下であることが好ましい。また、酸素12員環102の細孔径は、酸素のイオン半径(0.135nm)を考慮しない場合、すなわち、酸素のイオン半径二つ分の長さを差し引かない場合には、0.865nm以上0.980nm以下であることが好ましい。
【0019】
窒素吸着測定で見積もったゼオライト100全体における細孔容積は、通常、0.12ml/g以上0.25ml/g以下であり、0.15ml/g以上0.20ml/g以下であることが好ましく、0.16ml/g以上0.19ml/g以下であることがより好ましい。
【0020】
ゼオライト100の骨格密度、すなわち含有するT原子の数密度(1nmあたりのT原子(ケイ素など)の個数)は、通常、T原子15個/nm以上18個/nm以下であり、16個/nm以上17個/nm以下であることが好ましく、16.6個/nm程度であればより好ましい。
【0021】
複数の酸素8員環101aは、複数のグループ101Aに分かれて存在し、各グループ101Aにおいて、酸素8員環101aが一方向(z軸方向)に共通の貫通孔を有するように重なっている。また、複数の酸素8員環101bは、複数のグループ101Bに分かれて存在し、各グループ101Bにおいて、酸素8員環101bが一方向(z軸方向)に共通の貫通孔を有するように重なっている。複数のグループ101A、101Bは、y軸方向において、グループ101Aとグループ101Bの対が交互になるように並んでいる。
【0022】
各グループ101Aを構成する複数の酸素8員環101aの各々は、隣接するグループ101Bを構成する複数の酸素8員環101bの各々と、酸素6員環を介して連結されている。また、各グループ101Bを構成する複数の酸素8員環101bの各々は、隣接する一方のグループ101Aを構成する、複数の酸素8員環101aの各々と、酸素6員環を介して連結されている。また、各グループ101Bを構成する複数の酸素8員環101bの各々は、隣接する他方のグループ101Bを構成する、複数の酸素8員環101bの各々と、直接連結されている。
【0023】
酸素8員環101a、101bの重なり方向は、z軸方向と略平行であることが好ましい。酸素8員環の重なり方向(z軸方向)と交差する一方向(y軸方向)において、対をなす酸素8員環のグループ101Bと孤立した酸素8員環のグループ101Aとが、交互に並んで列101Cをなすように連結されている。対をなす2つのグループ101Bは、いずれもy軸方向に沿って並んでいる。対をなすグループ101Bの一方と、孤立したグループ101Aとの離間距離d1は、約0.519〜0.530nmである。
【0024】
列101C同士は、酸素8員環101aと酸素8員環101bの対とが隣り合うように、複数の酸素5員環を介して連結されている。列101C同士の離間距離d2は、約0.27nmである。
【0025】
複数の酸素12員環102は、複数のグループ102Aに分かれて存在し、各グループ102Aにおいて、酸素12員環102が、xy平面と略平行な方向(一つの平面に略平行な方向)、好ましくはxy平面と平行な方向(一つの平面に平行な方向)に共通の貫通孔を有するように重なっている。複数のグループ102Aは、y軸方向に並んでいる。各グループ102Aを構成する複数の酸素12員環102は、隣接するグループ102Aを構成する複数の酸素12員環102と、それぞれ、酸素4員環および/または酸素5員環を介して連結されている。酸素12員環102の重なり方向は、x軸方向と略平行であることが好ましい。
【0026】
酸素12員環のグループ102Aは、酸素12員環の重なり方向(x軸方向)と交差する平面内の二方向(y軸方向、z軸方向)において、等間隔(d3、d4)で並んで連結されている。具体的には、グループ102Aは、y軸方向に約0.810〜0.830nm間隔(d3)、z軸方向に約0.240〜0.260nm間隔(d4)で並んでいる。
【0027】
酸素8員環の重なり方向と酸素12員環の重なり方向とは、互いに交差している。これらは、実際には、約89度以上91度以下の角度で交差し、略直交(ほぼ直交)する傾向にあるが、直交していることが好ましい。
【0028】
上述した構造においては、含有されるシリコンとアルミニウムのモル比(Si/Al)が、8.0以上〜9.1以下となっている。このモル比については、例えば、誘導結合プラズマ原子発光スペクトル(ICP-AES)による元素分析、原子吸光分析、蛍光X線分析などによって確認することができる。
【0029】
ゼオライトの構造は、X線回折(XRD)による分析結果から、一義的に特定することができる。後述する実施例おいて、ゼオライト100に対するX線回折の分析結果が得られており、当業者であれば、この分析結果に基づいて、実際にゼオライト100が上述した構造を有すると判断することができる。なお、ゼオライト100が上述した構造を有することについては、専門機関のX線回折の分析によっても検証されている。
【0030】
すなわち、本実施形態に係るゼオライト100は、粉末X線回折法による測定で、少なくとも、表2に示す格子面間隔d(d−spacing)(Å)が検出されるゼオライトである。より具体的には、ゼオライト100は、粉末X線回折法による測定で、少なくとも、表2に示す格子面間隔d(Å)および相対強度を含むX線回折パターンを有するゼオライトである。相対強度は、X線回折パターンに含まれるピークのうち最大のピークの強度を100とし、これに対する他のピークの強度の比率を示している。ここでは、格子面間隔d(Å)が3.43±0.10に対応するピークの強度が最大となっている。
【0031】
【表2】
【0032】
本実施形態に係るゼオライトは、モル比で表される下記の化学組成を有することが好ましい。
:(n)YO
【0033】
上記Xは三価元素である。三価元素としては特に限定されるものではないが、通常、ホウ素、アルミニウム、鉄、ガリウムが好ましく、ゼオライト結晶の生成しやすさなどの点から、特にホウ素、アルミニウム、ガリウムが好ましい。三価元素Xは、1種類の三価元素からなるものであってもよく、2種類以上の三価元素を組み合わせてなるものであってもよい。中でも、本実施形態に係るゼオライトは、三価元素Xとしてアルミニウムを含むことが好ましい。この場合のアルミニウムの含有率は、好ましくはX全体の50モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上である。
【0034】
上記Yは四価元素である。四価元素としては特に限定されるものではないが、通常、シリコン、ゲルマニウム、スズ、チタン、ジルコニウムが好ましく、ゼオライト結晶の生成しやすさなどの点から、特にシリコン、ゲルマニウム、スズ、チタンが好ましい。四価元素Yは、1種類の四価元素からなるものであってもよく、2種類以上の四価元素を組み合わせてなるものであってもよい。中でも、本実施形態に係るゼオライトは、四価元素Yとしてシリコンを含むことが好ましい。この場合のシリコンの含有率は、好ましくはY全体の50モル%以上であり、より好ましくは80モル%以上である。
【0035】
上記nの値は、三価元素Xの酸化物と四価元素Yの酸化物のモル比を表すもので、n/2の値として、通常は5以上1000以下、好ましくは6以上100以下、さらに好ましくは6.5以上30以下、より好ましくは7以上10以下である。
【0036】
本実施形態に係るゼオライトには、三価元素X、四価元素Y以外の金属元素が含まれていてもよい。このような「金属元素を含む」場合とは、該金属元素がゼオライトの骨格内に存在する場合と骨格外に存在する場合のいずれであっても良く、混合物である場合も含まれる。本実施形態に係るゼオライトが他の金属元素を含む場合、その金属元素としては、特に限定されるものではないが、吸着材用途や触媒用途での特性の点から、通常、鉄、コバルト、マグネシウム、亜鉛、銅、パラジウム、イリジウム、白金、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジム、チタン、ジルコニウム等の周期表3〜12族の遷移金属が挙げられる。
【0037】
本実施形態に係るゼオライトが他の金属元素を含む場合、ゼオライト中の金属元素の含有量は、0.1重量%以上20重量%以下であることが好ましく、0.3重量%以上10重量%以下であればより好ましい。鉄、銅等のその他の金属元素を含むことにより触媒の活性サイトを生じるといった効果が得られる。さらに、その含有量を上記の下限値以上とすることにより、優れた触媒効果が得られ、上記の上限値以下とすることにより、金属元素をゼオライト中に均一に分散させることが容易になり、優れた触媒活性が得られるため好ましい。
【0038】
本実施形態に係るゼオライト中には、ナトリウム、カリウム、セシウムなどの金属陽イオンを含有させてもよく、アンモニウムイオン(NH)、水素イオン(H)などの非金属陽イオンを含有させてもよい。また、金属陽イオンと非金属陽イオンとを同時に含有させてもよい。ゼオライト結晶中の陽イオンは、イオン交換によって他のイオンに置き換えることが可能である。
【0039】
本実施形態に係るゼオライトは、他の金属元素や金属陽イオンの含有の有無、イオン交換の有無に関わらず、表2および図2に示されるX線粉末回折パターンを有することを特徴とする。
【0040】
本実施形態に係るゼオライトは、新規骨格を有する結晶性アルミノシリケート多孔体であり、アルミニウム含有量が多く(例えばSi/Al=8.0〜9.1)、イオン交換サイトを多く含むため、イオン交換を鍵とする触媒(例えばNOx還元触媒)の開発に適している。本実施形態に係るゼオライトは、その用途に関しての制限は特にないが、特有の結晶構造を有することから、触媒、吸着材、分離材料などとして、好適に用いられる。また、本実施形態に係るゼオライトは、脱アルミニウムを経てヘテロ元素を導入することができるため、各種基礎化学品の製造用触媒として活用できる可能性がある。
【0041】
さらに、本実施形態に係るゼオライトは、パラフィンの接触分解を促す固体触媒として応用することができる。また、本発明のゼオライトは、構成するアルミニウムの一部を、遷移金属(チタン、スズなど)で同型置換することができる。例えば、チタンで同型置換したゼオライトは、酸素、過酸化水素、アルキルヒドロペルオキシド等を酸化剤とするオレフィン、パラフィンおよび芳香環の選択酸化に優れた触媒となる。
【0042】
[ゼオライトの製造方法]
本実施形態に係る、ゼオライト100の製造方法について説明する。ゼオライト100の製造方法は、主に、第1の調製工程、第1の加熱工程、冷却工程、第2の調製工程、第2の加熱工程、乾燥工程、第3の加熱工程を、順に有している。
【0043】
<第1の調製工程>
まず、第一のシリカ源、アルミニウム源、アルカリ源、水、および構造規定剤(SDA)の混合物(ゲル)を調製する。
【0044】
第一のシリカ源としては、例えば、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルなどのうち、1種又は2種以上を用いることができる。好ましくは、コロイダルシリカ((SiOLudox、LUDOX(登録商標))を用いる。
【0045】
アルミニウム源としては、例えば、硫酸アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミノシリケートゲル、金属アルミニウムなどのうち、1種又は2種以上を用いることができる。また、Y型ゼオライトなどのゼオライトをアルミニウム源として用いることも可能である。
【0046】
アルカリ源としては、特に限定は無いが、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化リチウム(LiOH)、水酸化セシウム(CsOH)などのうち、1種、または2種以上を用いるのが好ましく、この中でも水酸化ナトリウム(NaOH)および水酸化カリウム(KOH)を用いるのがより好ましい。
【0047】
構造規定剤としては、例えば、ジメチルジプロピルアンモニウム塩が好ましく、ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド(MePrNOH)がより好ましい。Me、Prは、それぞれメチル基(CH)、プロピル基(CHCHCH)を示している。MePrNOHの製造方法については、実施例として後述する。
【0048】
<第1の加熱工程>
次に、第1の調製工程で調製した混合物を、攪拌しながら加熱する。具体的には、60℃以上に加熱されたホットプレート上で混合物を攪拌しながら、混合物を所定の量まで濃縮するために水を一部蒸発させる。
【0049】
<冷却工程>
次に、第1の加熱工程で加熱した混合物を、水浴を用いて室温程度まで冷却する。なお、第1の加熱工程、冷却工程は省略することも可能である。
【0050】
<第2の調製工程>
次に、冷却工程で冷却した混合物を、必要に応じて、第2のシリカ源およびアルミナ源を加えて再調製する。第2のシリカ源およびアルミナ源としては、Y型ゼオライト(SiOFAU、(AlFAU)を用いる。Y型ゼオライト中のシリコンとアルミニウムのモル比(Si/Al)は、通常、2.5以上50以下であるが、3以上20以下が好ましく、3.5以上10以下がより好ましく、4以上6以下がさらに好ましく、約5.3が最も好ましい。
【0051】
なお、再調製した混合物中において、全シリカ源((SiOLudox、(SiOFAU)に対する(SiOLudoxの含有比率(mol%)は、通常、30から90%であり、好ましくは、50から80%であり、より好ましくは60から75%であり、74%程度とすることがより好ましい。また、同じ混合物中の全シリカ源に対するアルカリ源(NaOH等)の含有比率(mol%)は、通常、0.05〜0.6%であり、好ましくは0.1〜0.5%、より好ましくは0.2〜0.4%である。NaOHとKOHを両方用いる場合は、NaOH、KOHの含有比率は、いずれも0.15%程度とすることが好ましい。また、同じ混合物中の全シリカ源に対する構造規定剤の含有比率は、通常、0.05〜0.5%、好ましくは0.1〜0.4%、さらに好ましくは、0.15〜0.3%であり、0.17%程度とすることが最も好ましい。また、同じ混合物中の全シリカ源に対する(SiOFAUの含有比率(モル比)は、通常、10〜70%、好ましくは15〜50%、より好ましくは、20〜35%であり、25%程度とすることが最も好ましい。
【0052】
上述した組成になるように、(SiOLudox、NaOH、KOH、HOについては、上述した含有比率となるように、第1の調製工程で混合する量を調整する。また、(SiOFAU、(AlFAUについては、上述した含有比率となるように、第2の調製工程で混合する量を調整するのが好ましい。
【0053】
さらに、再調製した混合物中において、全シリカ源に対する水(HO)の含有比率(モル比)は、通常、4〜50であり、好ましくは5〜30、より好ましくは、5.5〜12、もっと好ましくは、6〜8であり、約7とすることが最も好ましい。混合物中のHOの含有比率をこのように低くすることにより、有機物濃度が高く、細孔容積が大きいゼオライトが得られることになる。
【0054】
<第2の加熱工程>
第2の調製工程で再調製した混合物(原料)を、通常、室温で攪拌した上で加熱する。
ここでの加熱は、室温の混合物を、オートクレーブに収容した状態で、通常、100〜200℃、好ましくは、120〜190℃、より好ましくは、140〜180℃、さらに好ましくは、150〜170℃であり、約160℃が最も好ましい。オーブン中に通常、12時間から10日間程度、好ましくは1日から7日間程度、静置、あるいは撹拌状態で行う。
【0055】
<乾燥工程>
次に、第2の加熱工程で加熱した混合物を、洗浄およびろ過した上で、さらに乾燥させる。ここでの乾燥の方法には、例えば、洗浄およびろ過した混合物を、約80℃のオーブン中に一晩静置して行う方法、天日で干して行う方法等がある。
【0056】
以上の工程を経て、ゼオライト100の結晶性固体を含有する有機複合体(粉末)を得る。
【0057】
<第3の加熱工程>
乾燥工程を経て得た有機複合体に対して、さらに加熱(焼成)を行うことにより、包接されている有機物(構造規定剤として用いたMePrNOH)を除去することができる。ここでの加熱は、得られた結晶性固体を、マッフル炉に収容した状態で約550℃の加熱を行う。具体的には、約1.5℃/minで室温から550℃程度まで昇温し、この温度を約6時間保持し、最後に放冷する。
【0058】
本実施形態に係るゼオライト100の製造方法によれば、アルミニウム含有量が多く(Si/Al=7〜10)、新規骨格を有するゼオライトを得ることができる。本実施形態のゼオライト100の製造方法においては、単純な構造を有する構造規定剤としてジメチルジプロピルアンモニウム化合物を用い、さらに、原料として用いる水の比率を、同じく原料に用いるシリカ源の約6〜8倍程度としている。これにより、当該ゼオライトを、水の比率をシリカ源の約40倍程度とする従来の製造方法を用いる場合に比べて、容易かつ確実に、高純度で製造することができ、大量生産を実現しやすくなる。また、構造規定剤の合成が簡略化される分、合成プロセスに要するエネルギーを低減することができ、製造コストを大幅に下げることができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかなものとする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【0060】
(製造例1)
本発明のゼオライトの構造規定剤として用いる、ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシドの製造例1を示す。
【0061】
[ステップ1]
まず、次式で示すように、ジプロピルジメチルアンモニウムを合成した。
【0062】
【化1】
【0063】
この合成を、次の手順で行った。まず、ジプロピルアミン(東京化成工業(株)製)60mLと、メタノール(和光純薬工業(株)製)350mLを、1Lナスフラスコ中で混合し、炭酸カリウム(和光純薬工業(株)製)90gを加えて、室温で10分間撹拌した。
ここに、ヨードメタン(和光純薬工業(株)製)68mLを、30分間にわたってゆっくり加え、最後に50mLのメタノールを追加した。
【0064】
次に、室温で72時間攪拌し、クロロホルム(和光純薬工業(株)製)200mLを加えて、室温でさらに20分間撹拌した。
【0065】
次に、グラスフィルター(G4)を用いて吸引濾過し、得られた固形物を150mLのクロロホルムで洗浄した。ろ液と洗浄液を合わせて1Lナスフラスコにとり、エバポレーターを用いて40℃で減圧し、乾固させた。
【0066】
次に、200mLのクロロホルム(和光純薬工業(株)製)を加えて生成物を抽出し、不溶性の無機塩を吸引ろ過により取り除いた。ろ液は、1Lナスフラスコにとり、再度減圧して乾固させた。200mLのクロロホルムで生成物を抽出し、無機塩を吸引ろ過により取り除いて、透明なろ液を1Lナスフラスコに受けた。ろ液を減圧乾固させ、次いで100mLのベンゼン(和光純薬工業(株)製)を加えて再度乾固させた。
【0067】
次に、150mLの2−プロパノール(和光純薬工業(株)製)を加え、100℃のオイルバス上で加熱し、粗結晶を溶解させた。放冷後、150mLのジエチルエーテル (和光純薬工業(株)製)をゆっくり加え、結晶を再沈殿させた。これをグラスフィルター(G3)を用いて吸引ろ過し、固体を、ジエチルエーテル:2−プロパノール=3:2(体積比)の混合液150mLを用いて洗浄した。得られた結晶を真空乾燥した。生成物MePrNI(ジメチルジプロピルアンモニウムヨージド)の収量は、105.5g(収率90%)であった。
【0068】
生成物のNMR分析値として、H NMR(500MHz、CDCl)で測定した場合と、13C NMR(126MHz、CDCl)で測定した場合に、得られた化学シフトδを、以下に示す。
【0069】
(i)H NMR(500MHz、CDCl)で測定した場合のδ:
1.07(6H、t、J=7.4Hz、CH−CH−CH
1.82(4H、m、CH−CH−CDCl
3.38(6H、s、N−CH
3.54(4H、m、N−CH−CH
(ii)13C NMR(126MHz、CDCl)で測定した場合のδ:
10.58、16.40、51.52、65.80
【0070】
[ステップ2]
次に、次式で示すように、ステップ1で得たMePrNIを、MePrNOH(ジメチルジプロピルアンモニウムヒドロキシド)に変換した。
【0071】
【化2】
【0072】
この変換を、次の手順で行った。まず、ステップ1で合成したジメチルジプロピルアンモニウムヨージド75.22gを、1LのPPボトルに入れ、続いて強塩基性陰イオン交換樹脂(三菱化学(株)製 SA10A(OH))325.73gを加えた。次に、HO(Milli−Q)500mLを加え、容器を軽く振り混ぜたのち、120時間冷暗所に静置した。
【0073】
次に、グラスフィルター(G4)により吸引濾過し、フィルター上の樹脂をHO(Milli−Q)300mLでよく洗浄し、ろ液と洗浄液を合わせて減圧濃縮した。得られた溶液の重量は133.37gであり、0.05Mの塩酸滴定により求めたMePrNOHの濃度は、2.097mmol/g(イオン交換率96%)であった。MePrNIからMePrNOHへの変換は、単なるイオン交換であり、MePrNOHのNMRスペクトルは、MePrNIに対するものと同様である。
【0074】
(実施例1)
製造例1で得たMePrNOHを構造規定剤として用い、ゼオライトの合成を行った。この合成を、次の手順で行った。まず、内容積150mLのフッ素樹脂(PFA)製容器に、製造例1で得たMePrNOH水溶液(2.097mmol/g)を16.21gとり、9.37gのNaOH水溶液(3.200mmol/g)、9.53gのKOH水溶液(3.153mmol/g)、21.39gのLudox AS−40(アルドリッチ社製、41.3wt%SiOを含む)を順次加えた(第1の調製工程)。
【0075】
次に、液温が約60℃となるように設定したホットプレート上で約3時間撹拌することにより、20.26gの水(第1の調製工程で洗い込みのために用いた4.41gの水を含む)を蒸発させた(第1の加熱工程)。得られた混合物を、水浴を用いて室温まで冷却したのち(冷却工程)、4.99gのY型ゼオライト(乾燥時の組成H30.5Al30.5Si161.5384、東ソー(株)製、HSZ−350HUA、本実施例において実際には、63.9wt%のSiO2、10.2wt%のAl、25.9wt%のHOを含んでいるもの)を加え(第2の調製工程)、室温で10分間撹拌した。得られた混合物の組成は、1.0SiO−0.025Al−0.17MePrNOH−0.15NaOH−0.15KOH−7HO、混合物の全重量は45.64gとなった。
【0076】
この混合物を、内容積125mLのフッ素樹脂(PTFE)製内筒つきオートクレーブに移し、これを160℃のオーブン中に165時間静置した(第2の加熱工程)。得られた固体生成物は、ろ過で回収し、80℃のオーブン中で一晩乾燥させた(乾燥工程)。得られた白色粉末の重量は6.84gであった。
【0077】
このうち5.02gをアルミナ製のシャーレにとり、マッフル炉中の空気雰囲気下で室温から毎分1.5℃の速度で昇温し、550℃で6時間保持し、その後放冷した(第3の加熱工程(焼成工程))。こうして白色粉末(焼成後)4.90gを得た。
【0078】
(実施例2)
製造例1で得たMePrNOHを構造規定剤として用い、ゼオライトの合成を行った。この合成を、次の手順で行った。まず、内容積150mLのフッ素樹脂(PFA)製容器に、製造例1で得たMePrNOH水溶液(1.454mmol/g)を46.77g(68.0mmol)入れ、19.81gのNaOH水溶液(3.029mmol/g、60.0mmol)、20.81gのKOH水溶液(2.883mmol/g、60.0mmol)、42.78gのLudox AS−40(アルドリッチ社製、41.3wt% SiOを含むため、17.67g−SiO、 293.8mmol−SiO)を順次加えた(第1の調製工程)。
【0079】
次に、液温が約60℃となるように設定したホットプレート上で約6時間撹拌することにより、53.40gの水(第1の調製工程で洗い込みのために用いた4.52gの水を含む)を蒸発させた(第1の加熱工程)。得られた混合物を、水浴を用いて室温まで冷却したのち(冷却工程)、9.99gのY型ゼオライト(乾燥時の組成H30.5Al30.5Si161.5384、東ソー(株)製、HSZ−350HUA、#35UA3502、Si/Al=5.3、本実施例において実際には、63.9wt%のSiO、10.2wt%のAl、25.9wt%のHOを含んでいるもの)を加え(第2の調製工程)、室温で10分間撹拌した。得られた混合物の組成は、1.0SiO−0.025Al−0.17MePrOH−0.15NaOH−0.15KOH−7.0HO、混合物の全重量は91.28gとなった。
【0080】
この混合物を、内容積125mLのフッ素樹脂(PTFE)製内筒つきオートクレーブに移し、これを160℃のオーブン中に166時間静置した(第2の加熱工程)。得られた固体生成物は、ろ過で回収し、80℃のオーブン中で一晩乾燥させた(乾燥工程)。得られた白色粉末の重量は13.07gであった。
【0081】
このうち2.60gをアルミナ製のシャーレにとり、マッフル炉中の空気雰囲気下で室温から毎分1.5℃の速度で昇温し、550℃で6時間保持し、その後放冷した(第3の加熱工程(焼成工程))。こうして白色粉末(焼成後)2.51gを得た。
【0082】
(実施例3)
製造例1で得たMePrNOHを構造規定剤として用い、ゼオライトの合成を行った。この合成を、次の手順で行った。まず、内容積150mLのフッ素樹脂(PFA)製容器に、製造例1で得たMePrNOH水溶液(1.153mmol/g)を58.97g(68.0mmol)とり、19.81gのNaOH水溶液(3.029mmol/g、60.0mmol)、20.82gのKOH水溶液(2.883mmol/g、60.0mmol)、42.78gのLudox AS−40(アルドリッチ社製、41.3wt% SiOを含むため、17.67g−SiO、293.8mmol−SiO)を順次加えた(第1の調製工程)。
【0083】
次に、液温が約60℃となるように設定したホットプレート上で約7時間撹拌することにより、65.17gの水(第1の調製工程で洗い込みのために用いた4.10gの水を含む)を蒸発させた(第1の加熱工程)。得られた混合物を、水浴を用いて室温まで冷却したのち(冷却工程)、9.99gのY型ゼオライト(乾燥時の組成H30.5Al30.5Si161.5384、東ソー(株)製、HSZ−350HUA、#35UA3502、Si/Al=5.3、本実施例において実際には、63.9wt%のSiO、10.2wt%のAl、25.9wt%のHOを含んでいるもの)を加え(第2の調製工程)、室温で10分間撹拌した。得られた混合物の組成は、1.0SiO−0.025Al−0.17MePrOH−0.15NaOH−0.15KOH−7.0HO、混合物の全重量は91.28gとなった。
【0084】
この混合物を、内容積125mLのフッ素樹脂(PTFE)製内筒つきオートクレーブに移し、これを160℃のオーブン中に20rpmの回転条件で95時間静置した(第2の加熱工程)。得られた固体生成物は、ろ過で回収し、80℃のオーブン中で一晩乾燥させた(乾燥工程)。得られた白色粉末の重量は14.10gであった。
【0085】
このうち3.02gをアルミナ製のシャーレにとり、マッフル炉中の空気雰囲気下で室温から毎分1.5℃の速度で昇温し、550℃で6時間保持し、その後放冷した(第3の加熱工程(焼成工程))。こうして白色粉末(焼成後)2.85gを得た。
【0086】
(実施例4)
Sachem社製のMePrNOHを構造規定剤として用い、ゼオライトの合成を行った。この合成を、次の手順で行った。まず、内容積150mLのフッ素樹脂(PFA)製容器に、Sachem社製のMePrNOH水溶液(2.663mmol/g)を25.54g(68.0mmol)とり、21.04gのNaOH水溶液(2.852mmol/g、60.0mmol)、18.80gのKOH水溶液(3.191mmol/g、60.0mmol)、42.78gのLudox AS−40(アルドリッチ社製、41.3wt% SiOを含むため、17.67g−SiO、293.8mmol−SiO)を順次加えた(第1の調製工程)。
【0087】
次に、液温が約60℃となるように設定したホットプレート上で約3時間撹拌することにより、29.52gの水(第1の調製工程で洗い込みのために用いた3.01gの水を含む)を蒸発させた(第1の加熱工程)。得られた混合物を、水浴を用いて室温まで冷却したのち(冷却工程)、9.71gのY型ゼオライト(乾燥時の組成H30.5Al30.5Si161.5384、東ソー(株)製、HSZ−350HUA、#35UA35Y2、Si/Al=5.5、本実施例において実際には、68.1wt%のSiO、10.5wt%のAl、21.4wt%のHOを含んでいるもの)を加え(第2の調製工程)、室温で10分間撹拌した。得られた混合物の組成は、1.0SiO−0.025Al−0.17MePrOH−0.15NaOH−0.15KOH−7.0HO、混合物の全重量は91.36gとなった。
【0088】
この混合物を、内容積125mLのフッ素樹脂(PTFE)製内筒つきオートクレーブに移し、これを160℃のオーブン中に20rpmの回転条件で67時間静置した(第2の加熱工程)。得られた固体生成物は、ろ過で回収し、80℃のオーブン中で一晩乾燥させた(乾燥工程)。得られた白色粉末の重量は13.73gであった。
【0089】
このうち3.13gをアルミナ製のシャーレにとり、マッフル炉中の空気雰囲気下で室温から毎分1.5℃の速度で昇温し、550℃で6時間保持し、その後放冷した(第3の加熱工程(焼成工程))。こうして白色粉末(焼成後)3.09gを得た。
【0090】
図2は、本発明者が得た実施例1のゼオライトについて、X線回折(XRD)による分析結果を示すグラフである。横軸は回折角2θ[°]を示し、縦軸は回折強度[cps]を示している。焼成して有機物を除いたサンプルによる回折スペクトル(XRDパターン)を上段に示し、未焼成のサンプルによる回折スペクトルを下段に示している。図2からは、表2に示す格子面間隔d(Å)が検出された。
【0091】
なお、X線回折は以下の条件で測定した。
使用装置:リガク社製Ultima−IV 粉末X線解析装置
X線源:CuKα1=1.54057Å、印加電圧:40kV、管電流:20mA
測定範囲:2θ=2.040〜52.000度
スキャン速度:2.000deg./min、サンプリング間隔:0.040度
発散スリット:1.00deg、散乱スリット:1.00deg、受光スリット:0.30mm
縦型ゴニオメータ、モノクロメータ使用
測定方法:連続法、通常法
格子面間隔dはオングストローム単位である。
【0092】
図2に示すように、焼成前、焼成後のサンプルで得られた回折スペクトルは、いずれも、既知のゼオライトでは見られない特徴的なピークを有している。この結果から、いずれのサンプルも、新規の骨格構造を有する結晶相が形成されたゼオライトであることが分かる。
【0093】
焼成後のSi/Al比は、誘導結合プラズマ原子発光分析計(島津製作所製ICP−9000E)を用いて検量線法(水溶液モード)により決定した。その結果、Si/Al=9.5であった。
【0094】
ゼオライトの窒素吸着について、以下の条件で測定した。
使用装置:マイクロトラックベル社製Belsorp max 全自動吸着測定装置
測定温度:−196℃
空気恒温槽温度:40℃
平衡吸着時間:300秒
サンプル前処理条件:400℃、2時間
【0095】
窒素吸着測定結果を図3のグラフに示す。図3のグラフは、吸着等温線を示している。
グラフの横軸は相対圧(吸着平衡圧と飽和蒸気圧との比)を示し、縦軸は窒素吸着量(cm(S.T.P.)/g)を示している。S.T.P.とはstandard temperature and pressureのことであり、ここでは吸着量が0℃、1気圧の体積(cm)に換算された
値であることを意味している。グラフの下段にHイオン交換前の吸着等温線を示し、グラフの上段にHイオン交換後の吸着等温線を示している。黒丸のプロットは吸着過程におけるものであり、白丸のプロットは脱着過程におけるものである。
【0096】
下段のグラフから算出されるBET比表面積は434m/gであり、外表面積は5.1m/gであり、細孔容積は0.173ml/gであった。なお、このサンプルのICP-AESによる元素分析によれば、Si/Alは9.09であった。Na/Al、K/Alは、それぞれ0.12、0.52であった。
【0097】
上段のグラフから算出されるBET比表面積は487m/gであり、外表面積は6.7m/gであり、細孔容積は0.194ml/gであった。なお、このサンプルのICP-AESによる元素分析によれば、Si/Alは9.33であった。Na/Al、K/Alは、それぞれ0.03未満であった。
【0098】
ゼオライトの27Al MAS NMRについて、以下の条件で測定した。
使用装置:Bruker社製 AVANCE III 600
1H共鳴周波数:600MHz
ローター回転速度:13kHz
繰り返し時間:0.5sec、積算回数:1024回
【0099】
ゼオライトの29Si MAS NMRについて、以下の条件で測定した。
使用装置:Bruker社製 AVANCE III 600
1H共鳴周波数:600MHz
ローター回転速度:10kHz
繰り返し時間:30.0sec、積算回数:1024回
【0100】
27Al MAS NMR、29Si MAS NMRによって得られたスペクトルを、それぞれ、図4、5のグラフに示す。それぞれのグラフの横軸は、化学シフト(chemical shift)を示している。焼成前のスペクトルを下段に示し、焼成後のスペクトルを上段に示している。
【0101】
図4の焼成後の27Al−MASNMRスペクトルにおいて、(1)化学シフト56.5±2ppmのメジャーピーク及び(2)0±2ppmに存在するマイナーピークが観測された。(1)のピークは骨格内Alに帰属されるピークであり、一方(2)のピークは、骨格外に脱離したAlに帰属されるピークである。焼成前は、(2)のピークは観測されず、(1)のピークのみが観測された。
【0102】
図529Si−MAS NMRスペクトルに含まれる3つのピークは、左側から順に、Si(2Al)、Si(1Al)、Si(0Al)の配位形態に対応するSiのシグナルである。これらのピークの面積比から骨格内のSi/Alを見積もったところ、約10であった。なお、Si(nAl)とは、(AlO)nSi(OSi)4-n のうち、左から
1番目に記載されるSiのシグナルを意味する(ここではn=0、1、2)。
【0103】
実施例1のゼオライトの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を、以下の条件で得た。
使用装置:JEOL社製 JSM−7001F
加速電圧:1.00kVまたは3.00kV
【0104】
得られたSEM写真を図6A、6Bに示す。図6A(a)〜(i)は、それぞれ、165時間かけて結晶化させたサンプルについて、様々な方向から倍率(比較する寸法を図中に表示)を変えて撮ったSEM写真である。このサンプルが実施例1に対応するものである。図6Bは、実施例1よりも短い45時間で結晶化させたサンプルのSEM写真(倍率は図6A(a)と同じ)である。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のゼオライトは、水分等の吸着剤として空調機器、ヒートポンプに利用することができ、また、化成品合成に用いられる触媒、自動車の排気ガス等の浄化触媒としても利用することができる。
【符号の説明】
【0106】
100 ゼオライト
101(101a、101b) 酸素8員環
101A、101B、102A グループ
101C 列
102 酸素12員環
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B