特許第6966113号(P6966113)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6966113フックとの締結力に優れた長繊維不織布ループ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966113
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】フックとの締結力に優れた長繊維不織布ループ
(51)【国際特許分類】
   B32B 5/26 20060101AFI20211028BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20211028BHJP
   D04H 3/16 20060101ALI20211028BHJP
   D04H 3/007 20120101ALI20211028BHJP
   D04H 3/016 20120101ALI20211028BHJP
   A61F 13/62 20060101ALI20211028BHJP
【FI】
   B32B5/26
   D04H3/14
   D04H3/16
   D04H3/007
   D04H3/016
   A61F13/62 120
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-81292(P2020-81292)
(22)【出願日】2020年5月1日
(65)【公開番号】特開2021-109434(P2021-109434A)
(43)【公開日】2021年8月2日
【審査請求日】2020年5月1日
(31)【優先権主張番号】10-2019-0177939
(32)【優先日】2019年12月30日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517022153
【氏名又は名称】ラーク インダストリーズ カンパニーリミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 渉
(72)【発明者】
【氏名】金 鍾▲ヨプ▼
(72)【発明者】
【氏名】呂 光壽
(72)【発明者】
【氏名】林 萬培
(72)【発明者】
【氏名】朴 正仁
(72)【発明者】
【氏名】李 相▲フン▼
【審査官】 南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−085684(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/144296(WO,A1)
【文献】 特開2017−214694(JP,A)
【文献】 特表2017−535333(JP,A)
【文献】 特開平08−196568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
D04H 3/00−3/16
A61F 13/00−13/84
D06C 23/00−23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複層のスパンボンド長繊維不織布シートからなる不織布ループ(10)において、
下層ウェブ(S1)は、繊度1〜2デニールの熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートからなり、上層ウェブ(S2)は、繊度4〜6デニールの熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートからなり、
長繊維不織布シートを構成する前記下層ウェブ(S1)と上層ウェブ(S2)は、熱エンボスロールにより貼り合わせられて融着部(11)と非融着部(12)とが形成され、
前記融着部(11)は、フックと締結される直交方向に対して連続する円形パターン(11−1)と、前記円形状パターン(11−1)を一列につなぐ直線状パターン(11−2)とを繰り返し形成してなるが、
隣り合う列同士は、直線状パターン(11−2)の間に円形パターン(11−1)が配列されるように形成されていることを特徴とする長繊維不織布ループ。
【請求項2】
前記下層ウェブ(S1)及び上層ウェブ(S2)は、ポリプロピレン(PP)原糸単独からなるか、あるいは、ポリエチレン(PE)原糸を混合した熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートからなることを特徴とする請求項1に記載の長繊維不織布ループ。
【請求項3】
前記円形パターン(11−1)の直径と直線状パターン(11−2)の長さは、それぞれ3〜10mmの範囲に形成され、前記融着部(11)は、幅が0.5〜1.5mmに、且つ、間隔が1〜5mmに設定されて、不織布ループに形成される貼り合わせ領域は、全体の表面積を基準として10〜35%であることを特徴とする請求項1に記載の長繊維不織布ループ。
【請求項4】
前記下層ウェブ(S1)と上層ウェブ(S2)とが貼り合わせられてなる不織布シートは、厚さが0.08〜0.5mmであり、目付が10〜60g/mであり、且つ、せん断強さが36〜63N/inchであることを特徴とする請求項1に記載の長繊維不織布ループ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フックとの締結力に優れた長繊維不織布ループに関し、さらに詳しくは、上層ウェブが下層ウェブよりも高い繊度に形成される複層のスパンボンド(spunbond)長繊維不織布シートを、熱エンボスロールを用いて融着して貼り合わせることにより、これを使用するおむつや寝具類をはじめとする各種の使い捨てタイプの製品は製造コストが安価であり、着脱力、通気度などの性能に優れており、且つ、上層ウェブと下層ウェブの融着部は、フック部材との直交方向に対して連続する円形状パターン及び直線状パターンを繰り返し形成してなることにより、せん断強さ(shear strength、水平着脱力)が増大されてフックとの締結力に優れた長繊維不織布ループに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、幼児用のおむつや成人用のおむつをはじめとしてベッドカバーまたは手術用ガウンなどの使い捨てタイプの製品の結合材として、フック(Hook)部材と機械的な結合を形成することができ、着脱しやすい他、製造しやすく、しかも、費用の低廉なループ(Loop)不織布が幅広く用いられてきている。
【0003】
この種の使い捨てタイプの製品において、これを着用するためのフックアンドループ(Hook & LoopFastener)は、鉤部及び環状係止具がペアになって、しっかりとくっつけたり、軽く引き剥がしたりすることが自由にできるので、主に衣類用や履物用に、再び脱着可能な状態で結合したい場合に広く用いられる。よく知られる商標として「マジックテープ(Magic Tape:登録商標)」、「ベルクロ(Velcro:登録商標)」がある。中でも、ループファスナは、ほとんどの場合、不織布繊維または不織布にフィルムを貼着して製作し、このような不織布繊維及びフィルムの貼合体は、おむつなどの使い捨てタイプの製品を製作する用途にも用いられる。
【0004】
前記フック部材は、アーチ状、キノコ状、鉤状などを呈しているため、ループ部材と向かい合うように、且つ、ループ部材と係合し易いように製作され、このような機械的な結合は、それぞれの構成要素が分離され易いことを防ぐ。すなわち、フック部材とループ部材とが締結された個所には、表面と垂直な引き剥がし強さ(peel strength、垂直着脱力)や表面と平行なせん断強さ(shear strength、水平着脱力)が働くため、使用中に正常的な結合が保持できるほどの付着力が求められる。
【0005】
一方、従来には、ループ部材に用いられる不織布の製作工程において、織物を織る工程または不織布に穿孔を行う工程などを通して接着剤や熱接着方式などにより不織布同士を貼り合わせたり不織布にフィルムを貼着したりするが、このような従来の製造方法は、工程が別々になっているが故に生産性に劣るだけではなく、コストが高いという不都合があり、且つ、生産された製品をロール(roll)状に保存すればかさばり性が低下し、熱による打ち抜き(パンチング)に起因して柔らかな肌触りが低下するという欠点があった。
【0006】
このような欠点を補うために、凹凸付き一対のローラーに不織布繊維を通過させて波打ち状の模様(うねりまたは盛り上がり)を形成した後、一方の側から樹脂が押出される通常のTダイにより熱可塑性樹脂フィルムを貼着する方法が提案されている。ところが、同方法は、不織布の片面に単一の樹脂フィルムが貼着されて単にループファスナ用にしか使えないという極めて制限的な用途を有し、この理由から、優れたかさ張り性や繊維の肌触りを有するように処理され、上下にうねる波打ち状模様が形成されたラミネートループシートが主として用いられている。
【0007】
上記のようなループ部材の不織布は、主として、衣類及びその他の着用物、カバンなどを含む身近用品、スポーツ用品、保護衣服、成人用使い捨てタイプのおむつ、乳児用使い捨てタイプのおむつなどの使い捨てタイプの製品の留め具に用いられ、これは、比較的に短い期間で使われて捨てられるため、製品を見栄えよくデザインするための全体の材料費を下げ、且つ、製造コストを削減することが重要である。これとともに、着脱しやすく、繰り返し使用できるだけではなく、安定的な結合性能が得られる他、当然のことながら、引き剥がし(剥離)性にも優れている必要がある。
【0008】
しかしながら、従来の方法により製造されているループ部材の不織布は、フック部材と係合されて繰り返し使用される場合、上下にうねる波打ち状模様により多量の糸くずが発生し、安定的な結着力を有さないという欠点があった。また、不織布に過度な波打ち状模様が形成されるが故に、他の不織布またはフィルム層との貼り合わせ工程を行い難く、これを人体に触れる材料として用いる場合には不織布の表面のソフトな質感が得られない結果、皮膚に損傷を与えてしまう虞があるだけではなく、通気性が大幅に低下し、酷い場合は人体に障害を引き起こしてしまうという欠点がある。
【0009】
このように、使い捨てタイプの衛生吸収性製品や保護用品などの分野では、ループ部材の不織布に、コストが安価であり、機械的な結合力が強いだけではなく、ソフト性及び通気性などの諸性能に優れていることが依然として求められているのが現状である。
【0010】
上述したような問題を改善するための代表的な従来の技術について述べる。韓国公開特許第10−2006−0008831号公報(株式会社韓進P&C)には、不織布を加熱加圧したり不織布を加熱加圧しながら穿孔して形成された突起外表面の繊維密度を減少させて不織繊維ループ層を形成する接着用ループシートを提供するために、不織布の表面に突出して接着用フックに対応するループ突起と、不織布の底面よりも密度を低く形成したループ突起の繊維密度と、接着用フックテープのレーキに対応するように突起に形成した結合面と、から構成された接着用不織布ループシートであって、接着用フックテープとの良好な接着力を発揮し、接着安定性が良好で、繰り返し接着しても接着力の損失がほとんどない不織布ループシートが開示されているが、これは、突起の外表面の繊維密度を減少させようとする工程上の難点がある。
【0011】
また、韓国公開特許第10−2010−0119107号公報(株式会社シヌP&C)は、引き剥がし強さなど貼り合わせ強さが良好であり、且つ、通気性に優れたフックアンドループ締結システムのループテープの製造方法及びこれにより形成されたループテープを提供するために、(a)所定の融点を有する第1の熱可塑性高分子を含む第1の繊維からなる地組織及び前記第1の熱可塑性高分子の融点よりも高い融点または高い分解温度を有する第2の高分子を含む第2の繊維からなり、前記地組織に固定されて形成された多数のループを有するループ組織と、(b)前記ループ組織の下面に積層されており、前記第2の高分子の融点または分解温度よりも低い融点を有する第3の熱可塑性高分子を含む第3の繊維からなる不織布を備え、前記地組織及び不織布は、前記第1の繊維及び第3の繊維の溶融により互いに熱溶着されている。
【0012】
さらに、韓国登録特許第10−1212426号公報(東レ尖端素材株式会社)には、スパンボンド不織布を最表層とし、内層は少なくとも1層のメルトブロー不織布層を有し、且つ、少なくとも1層以上のスパンボンド不織布層及びメルトブロー不織布層がさらに積層されてなるスパンボンド多層不織布の製造方法において、前記最表層をなすスパンボンド不織布層は低融点重合体が高融点重合体を繊維の長手方向に取り囲む芯鞘型長繊維から構成し、前記芯鞘型長繊維から構成されたスパンボンド不織布層の間にメルトブロー不織布層を形成し、連続するベルト上に積層してウェブを形成し、熱圧着可能なカレンダーにより熱溶着(ボンディング)してシート状に製造した後に吸引ドラムにより熱処理温度80〜110℃で熱処理して製造することを特徴とする複合スパンボンド長繊維多層不織布の製造方法が開示されている。
【0013】
さらにまた、韓国登録特許第10−1319183号公報(東レ尖端素材株式会社)にも、スパンボンド不織布を最外層とし、内層は1層のメルトブローン不織布層を有し、必要に応じて少なくとも1層以上のスパンボンド不織布層及びメルトブローン不織布層が付加的に積層されるか、あるいは、メルトブローン層が積層されなくてもよいスパンボンド多層不織布の製造方法において、前記製造方法は、芯部に鞘部を長手方向に取り囲ませるためにスピンビームと紡糸ノズルとの間に分配板を介装して、芯部に高融点重合体またはプロピレン重合体を、鞘部に低融点重合体またはエチレン系重合体をそれぞれのノズル孔側に誘導して紡糸することにより、芯鞘型複合長繊維を製造し、紡糸された複合長繊維を繊維ウェブとベルトとが分離され易い多孔質の連続ベルトの上に積層して複合長繊維のウェブを形成して、前記繊維ウェブとベルトとを分離し易くするエアー噴射装置とこの複合長繊維ウェブを部分的に熱圧着してエンボシング結合により固定したシート状物を吸引式ドラムにより熱処理ワインディングをして製造するステップを含むことを特徴とする改善された特性を有する複合スパンボンド長繊維多層不織布の製造方法が開示されている。
【0014】
一方、本出願人は、韓国登録特許第10−1839298号公報(ラーク インダストリーズ カンパニーリミテッド)を通して、下層S1は、繊度1〜2デニール(denier)の熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートであり、上層S2は、繊度4〜6デニール(denier)の熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートであり、前記上層S2には、長手方向または横方向に連続する多数の波打ち状または直線状の融着部11及び非融着部12を形成したフックアンドループ式締結装置用長繊維不織布ループを開発したが、本発明においては、これに基づいて、融着部11は、フックとの直交方向に対して連続する円形パターン11−1と、前記円形状パターン11−1を一列につなぐ直線状パターン11−2とを繰り返し形成してなり、隣り合う列同士は、直線状パターン11−2の間に円形状パターン11−1が配列されるように設計することにより、フック部材とのせん断強さが極度に増加されてフックとの締結力に優れた長繊維不織布ループを開発するために鋭意努力した結果、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】韓国公開特許第10−2006−0008831号公報(公開日:2006年01月27日)
【特許文献2】韓国公開特許第10−2010−0119107号公報(公開日:2010年11月09日)
【特許文献3】韓国登録特許第10−1212426号公報(公告日:2012年12月13日)
【特許文献4】韓国登録特許第10−1319183号公報(公告日:2013年10月18日)
【特許文献5】韓国登録特許第10−1839298号公報(公告日:2018年3月19日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、複層のスパンボンド長繊維不織布シートを熱エンボスロールにより貼り合わせることにより、工程システムが単純化されて製造コストが節減され、且つ、支持層の役割を果たす下層ウェブには、低い繊度の繊維により製造された長繊維不織布シートを用いることにより、密度が高くなり、通気度が低くなって不織布ループを真空吸着して搬送して最終製品を製造する際に位置調節(ポジショニング)を行い易く、なお、上層ウェブは、より高い繊度の繊維により製造された長繊維不織布シートを用いることにより、着脱力が向上してフックとの締結力に優れた長繊維不織布ループを提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、下層ウェブと上層ウェブとが貼り合わせられて形成される融着部は、フック部材との直交方向に対して連続する円形状パターン及び前記円形状パターンを一列につなぐ直線状パターンを繰り返し形成してなり、隣り合う列の間には円形状パターンと直線状パターンとを互い違いに配列することにより、せん断強さ(shear strength、水平着脱力)を最大限に向上させてフックとの締結力に優れた長繊維不織布ループを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明のフックとの締結力に優れた長繊維不織布ループは、複層のスパンボンド(spunbond)長繊維不織布シートからなる不織布ループにおいて、下層ウェブS1は、繊度1〜2デニール(denier)の熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートからなり、上層ウェブS2は、繊度4〜6デニール(denier)の熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートからなり、長繊維不織布シートを構成する前記下層ウェブS1と上層ウェブS2は、熱エンボスロールにより貼り合わせられて融着部11と非融着部12とが形成され、前記融着部は、フックと締結される直交方向に対して連続する円形状パターンと、前記円形状パターンを一列につなぐ直線状パターンとを繰り返し形成してなるが、隣り合う列同士は、直線状パターンの間に円形状パターンが配列されるように形成されていることを特徴とする。
【0019】
本発明の好適な実施形態によれば、前記下層ウェブS1及び上層ウェブS2は、ポリプロピレン(PP)原糸単独からなるか、あるいは、ポリエチレン(PE)原糸を混合した熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートからなり、前記円形パターンの直径と直線状パターンの長さは、それぞれ3〜10mmの範囲に形成され、前記融着部は、幅が0.5〜1.5mmに、且つ、間隔が1〜5mmに設定されて、不織布ループに形成される貼り合わせ領域は、全体の表面積を基準として10〜35%であることを特徴としており、前記下層ウェブS1と上層ウェブS2とが貼り合わせられてなる不織布シートは、厚さが0.08〜0.5mmであり、目付が10〜60g/m2であり、且つ、せん断強さが36〜63N/inchである。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るフックとの締結力に優れた長繊維不織布ループは、支持層の役割を果たす下層ウェブに、低い繊度の繊維により製造された長繊維不織布シートを用いることにより、密度が高くなり、通気度が低くなって不織布ループを真空吸着して搬送して最終製品を製造する際に位置調節(ポジショニング)が行い易く、フックとの結合層の役割を果たす上層ウェブには、より高い繊度の繊維により製造された長繊維不織布シートを用いることにより、着脱力が抜群であるため、フックとの強い締結力はもとより、繰り返し着脱しても耐久性が良好になるという効果がある。
【0021】
また、本発明に係るフックとの締結力に優れた長繊維不織布ループは、下層ウェブと上層ウェブとが貼り合わせられて形成される融着部は、フック部材との直交方向に対して連続する円形状パターン及び前記円形状パターンを一列につなぐ直線状パターンを繰り返し形成してなり、隣り合う列の間には円形状パターンと直線状パターンとを互い違いに配列することにより、せん断強さ(shear strength、水平着脱力)が極度に増加されてフック締結力が良好になるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る長繊維不織布ループがおむつに貼り付けられている状態を示す斜視図である。
図2】本発明に係る長繊維不織布ループを示す構成図である。
図3図2におけるA−A’線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に基づいて、本発明に係るフックアンドループ式締結装置用長繊維不織布ループについて説明するが、これは、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が発明を容易に実施できる程度に例示するためのものに過ぎず、これにより本発明の技術的思想及び範囲が限定されることを意味しない。
【0024】
図1から図3に示すように、本発明に係るフックとの締結力に優れた長繊維不織布ループは、複層のスパンボンド長繊維不織布シートからなる不織布ループ10であって、下層ウェブS1は、繊度1〜2デニール(denier)の熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートからなり、上層ウェブS2は、繊度4〜6デニール(denier)の熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートからなり、長繊維不織布シートを構成する前記下層ウェブS1と上層ウェブS2は、熱エンボスロールにより貼り合わせられて融着部11と非融着部12とが形成され、前記融着部11は、フックとの直交方向に対して連続する円形状パターン11−1及び前記円形パターン11−1を一列につなぐ直線状パターン11−2を繰り返し形成してなるが、隣り合う列同士は、直線状パターン11−2の間に円形状パターン11−1が配列されるように形成されている。
【0025】
一般に、不織布ウェブ(web)は、メルトブロー積層(meltblowing)、スパンボンド(spunbonding)、空気通過接着(air−through bonding)、水流交絡(hydroentangling)、スパンレース(spunlacing)、エアレイまたは空気積層(airlaying)、カーディング(carding)及びその他の様々な成形工程により生産可能である。不織布ウェブの目付は、ウェブの用途に応じて異なるが、ほとんどの場合、約300g/m以下であり、目付は、不織布ウェブの単位面積当たりの全層の重量として算出される。
【0026】
本発明は、スパンボンド不織布の製造技術を用いてループ部材の着脱力を向上させたものであり、通常、スパンボンド不織布は、熱可塑性樹脂押出物の溶融押出により高速度空気により焼き入れ及び延伸された筋により形成されて表面上に収集され、しばしば熱及び圧力のパターン化された適用により結合されたフィラメントを強化させた不織布を意味する。
【0027】
すなわち、本発明は、スパンボンド長繊維不織布シートを複層(ウェブS1/ウェブS2)に積層して貼り合わせた不織布ループであって、機械的な特性に優れた複層の不織布を提供するために、連続的に駆動されるコンベヤーベルトの上に下層ウェブS1及び上層ウェブS2により構成されるスパンボンド長繊維不織布ウェブを積層し、熱エンボスロールにより貼り合わせられるが、異種のメルトブローン不織布または空気通過接着不織布を形成したり貼着したりしないので、下層ウェブS1及び上層ウェブS2により形成されるスパンボンド長繊維ウェブ間の接着力が強く、製造工程が簡単であるため品質の管理及び物性の制御を行い易く、その結果、生産コストが節減されるというメリットを有する。
【0028】
このようにして積層された不織布は、力学的特性及び形状安定性を与えるために熱的に結合される。換言すると、熱キャリンダーを介して熱及び圧力が与えられて熱粘着されてシート化される。前記キャリンダーロールの凸部により上層ウェブS2に融着部11が形成されて下層ウェブS1と貼り合わせられるが、上層ウェブS2に融着部11を形成するキャリンダーロールは、長手方向または横方向に連続する凸部を有するパターンのエンボスロールであり、下層ウェブS1と接触するロールは、表面が滑らかな平ロールである。
【0029】
このとき、キャリンダーロールの温度が所定のレベル以上になると、シートが加熱ロールに熱融着されてシートの生産が不可能であり、また、温度が低すぎると、シートの物性が低下してしまう。このため、キャリンダーロールの熱的温度、つまり、キャリンダーロールの表面温度は、樹脂の融点を考慮して、約130℃〜165℃であることが好ましい。
【0030】
上記の本発明において用いられる長手方向とは、機械方向(machine direction;MD)を指し示すものであり、機械の進行方向を意味し、横方向とは、横機械方向(cross−machine direction;CD)を指し示すものであり、機械の進行方向と直交する方向を意味する。
【0031】
これにより、本発明は、基材との支持層としての役割を果たす下層ウェブS1には、低い繊度の繊維により製造された長繊維不織布シートを用いることにより、密度が高くなり、通気度が低くなって、このループ部材を用いる最終製品の組立て工程に有利であり、フックとの結合層としての役割を果たす上層ウェブS2には、より高い繊度の繊維により製造された長繊維不織布シートを用いることにより、フックとの強い結合力はもとより、繰り返し着脱しても耐久性が良好になるという知見に基づいてなされたものである。
【0032】
上記のような特性を与えるための本発明の長繊維不織布ループ10は、下層ウェブS1が繊度1〜2デニール(denier)の熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートからなり、上層ウェブS2は、繊度4〜6デニール(denier)の熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートからなり、前記下層ウェブS1及び上層ウェブS2は、ポリプロピレン(PP)原糸単独からなるか、あるいは、ポリエチレン(PE)原糸を混合した熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートからなり、基本的に、ポリプロピレン(PP)長繊維の低伸度、高強力といった特性を利用しながら、ここにポリエチレン(PE)長繊維を混合して柔軟性を補ってもよい。
【0033】
参考までに、デニール(denier;D)は、繊維や糸の繊度を表わす単位であり、9,000メートルの繊維または糸の重さをグラム(g)数で表わしたものであり、主としてポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン系繊維は、1デニールの直径が約0.0124716301cmであることが知られている。ループとして汎用されているスパンボンド長繊維不織布の繊維の太さは2.5デニール以下であり、このような繊度であれば、不織布の柔軟性を有することができるためである。一方、メルトブローン不織布を形成する繊維は、0.1〜0.5デニールの太さを有する。これは、繊維が太くなればなるほど、強さ及び肌触りが低下するという欠点があるためである。
【0034】
本発明においては、紡糸及びウェブ(web)の製造技術の開発を通して、下層ウェブS1が繊度1〜2デニールの熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートにより形成され、上層ウェブS2は繊度4〜6デニールの熱可塑性ポリオレフィン系長繊維不織布シートにより形成され、前記下層ウェブS1及び上層ウェブS2がエンボスロールにより熱溶着されることにより、スパンボンド長繊維ウェブ間の接着力が異種材料間の接着力よりも強く、製造工程が簡単であるので、品質の管理及び物性の制御を行い易く、その結果、生産コストが節減される。
【0035】
上述したように、前記熱エンボロールにより下層ウェブS1と貼り合わせられる上層ウェブS2には、長手方向または横方向に連続する融着部11と非融着部12とを形成し、前記融着部11は、フックと締結される直交方向に対して連続する円形状パターン11−1及び前記円形パターン11−1を一列につなぐ直線状パターン11−2を繰り返し形成してなるが、隣り合う列同士は、直線状パターン11−2の間に円形状パターン11−1が配列されるように形成されていることが好ましい。
【0036】
本発明は、前記連続する円形状パターン11−1及び前記円形状パターン11−1を一列につなぐ直線状パターン11−2が繰り返し形成されてフックとの締結力に対してせん断強さ(shear strength、水平着脱力)が直交方向に働きながら、隣り合う列に形成された融着部11がせん断強さを支持することにより、フックとの締結力のロス(loss)が生じないという知見に基づいてなされたものであり、且つ、前記円形状パターン11−1と直線状パターン11−2とが繰り返し形成され、隣り合う列同士は、直線状パターン11−2の間に円形状パターン11−1が配列されるように形成されていることにより、ループ部材の融着部11と非融着部12は全体的に均一に分布され、その結果、フックに及ぼされるループの応力が前後左右に分散されてせん断強さ(shear strength、水平着脱力)が増大される。
【0037】
また、前記円形状パターン11−1の直径と直線状パターン11−2の長さは、それぞれ3〜10mmの範囲に形成されることが好ましく、前記融着部11は、0.5〜1.5mmの幅に、且つ、1〜5mmの間隔に設定されて、不織布ループに形成される貼り合わせ領域は、全体の表面積を基準として10〜35%の範囲に保持されることにより、前記下層ウェブS1と上層ウェブS2が互いに十分な接着力を確保することができるとともに、不織布ループ10に形成される融着部11により狭くなる非融着部12の表面積を最適な状態に保持することができるということを確認した。
【0038】
これにより、本発明の不織布ループ10は、フック部材との機械的な結合力が低下することなく、下層ウェブS1と上層ウェブS2との分離現象も起こらないながらも、長時間にわたって繰り返し使用しても糸くずがほとんど発生せず、通常のフックと結着する場合であっても、2.2〜4.6N/inchの引き剥がし強さ(peel strength、垂直着脱力)及び36N〜63N/inchのせん断強さ(shear strength、水平着脱力)を示して、既存の製品よりもはるかに優れた性能を発揮する。
【0039】
また、本発明において、下層ウェブS1と上層ウェブS2とが貼り合わせられてなる不織布シートは、厚さが0.8〜0.5mmであり、目付が10〜60g/mである場合に、フック部材との着脱性が良好であり、優れた不織布シートの表面のソフトな質感が得られるということを見出した。なお、上述したような不織布ループ10は、各種の使い捨てタイプの製品を製造するときに製造コストが安価であるだけではなく、長時間に亘って繰り返し使用しても糸くずがほとんど発生しないことが確認された。前記下層ウェブS1及び上層ウェブS2には、ポリプロピレン(PP)原糸単独により、またはポリエチレン(PE)原糸を混合した熱可塑性ポリオレフィン系樹脂により製造される長繊維不織布シートを用いることにより、製品の特性に合うループ部材を生産することができるということはいうまでもない。
【0040】
以上述べたように、本発明は、多数回に亘っての実験を経て完成したが、以下では、当業者が容易に理解して実施できる程度の好適な実施例を挙げて本発明について説明する。
【0041】
[実施例1〜6]
ポリプロピレン樹脂を溶融紡糸して、繊度がそれぞれ1〜2D、4〜6Dに形成された下層ウェブS1及び上層ウェブS2の長繊維不織布シートをそれぞれ製造し(幅:1000mm)、前記下層ウェブS1及び上層ウェブS2シートは、上部ロールに円形状パターンと直線状パターンとが組み合わせられて形成された熱エンボスロールに供給して、厚さが0.08〜0.48mmであり、目付が10〜60g/mである長繊維不織布ループを製造した。前記エンボスロールにより上層ウェブS2に長手方向に連続して形成される融着部の幅を1.0mmに、且つ、融着部同士の間隔を約4mmに設定することにより、不織布ループに形成される貼り合わせ領域は、全体の表面積を基準として約20%であり、非融着部は約80%である。前記下層ウェブS1及び上層ウェブS2により構成される長繊維不織布シートの繊度が異なる不織布ループの配合を下記表1に示す。
【0042】
【表1】
【0043】
[比較例1〜6]
比較例1から比較例6においては、実施例における下層ウェブS1及び上層ウェブS2の長繊維不織布シートを上部ロールに波打ち状のパターンが形成された熱エンボロールに供給することを除いては、実施例1から実施例6の方法と同様にして、下層ウェブS1及び上層ウェブS2の長繊維不織布シートの繊度がそれぞれ1〜2D、4〜6Dである長繊維不織布ループを製造した。
【0044】
[実験例]
前記実施例及び比較例に係る製品に対して、目付、厚さ、引きはがし強さ、せん断強さ、通気度などを下記に示す方法で測定し、その性能指標に対する実験結果の平均値を下記表2に示す。
【0045】
−目付:KS K 0514[生地の質量の測定方法:小さな試験片法−試験片の質量(g)/試験片の面積(cm2)×10000]
【0046】
−厚さ:KS K ISO 9073[テキスタイル−不織布の試験方法−第2部.厚さの測定]
【0047】
−引きはがし強さ:LK−QC−T001引き剥がし強さ[ループ及びフックの間に180°の方向に力を加えて両者間を拡開しながら着脱力を測定する]
【0048】
−せん断強さ:LK−QC−T002引っ張りせん断強さ[ループ及びフックに一直線上の力を加えて着脱力を測定する]
【0049】
−通気度:KS K ISO 9237[テキスタイル−生地の空気透過度の測定方法−所定の面積、圧力、時間の条件下で試験片に垂直に通過して流れる空気の流れの速度]
【0050】
【表2】
【0051】
上記の[表2]から明らかなように、実施例1から実施例6に係る不織布ループは、円形状パターンと直線状パターンとが組み合わせられて形成されることにより、ループに及ぼされる応力が表面の全体にわたって満遍なく行き渡るので、波打ち状のパターンが形成された比較例よりも引き剥がし強さ及びせん断強さが約10〜20%ほど優れており、通気度が全体的に400cfm未満に保持されて最終的な開発目標を達成した。
【0052】
また、実施例に係る不織布ループは、目付が高くなるにつれて密度が高くなるので、通気度がやや低くなるものの、同一の製造方法を用いて製造した比較例よりも融着部と非融着部とがループ部材の表面に全体的に均一に分布されて、通気度もまたさらに良好になるということを確認した。
【0053】
このような複層のスパンボンド(spunbond)長繊維不織布シートを子供製品に共通する安全基準第2017−0118号に準拠して安全性を測定したところ、クロロフェノール(Chlorophenols)0.5mg/kg以下[KS K 0733]、フタレート(Phthalates)0.1%以下[ガスクロマトグラフィ質量分析(GC−MS)方法]、ホルムアルデヒド(Formaldehydes)20mg/kg以下[KS K ISO 14184−1]、重金属(Heavy metals)0.1mg/kg以下、揮発性有機化合物(VOCs)未検出など全ての測定項目において基準値以内であることが確認された。
【0054】
したがって、本発明に係る長繊維不織布ループは、フック部材に繰り返し着脱しても、既存のエンボシング不織布に比べてせん断強さ(shear strength、水平着脱力)はもとより、引き剥がし強さ(peel strength、垂直着脱力)が向上して機械的な結合力が強く、糸くずの発生が大幅に低減されるだけではなく、非常に低コストで製造可能なループ部材であって、既存の不織布ループよりも品質が格段に向上し、しかも、安全な特性を有することから、使い捨てタイプのおむつはもとより、個人向けの衛生吸収性製品や衣類及びその他の着用物、ガバンなどを含む身近用品、スポーツ用品、保護衣服、成人用使い捨てタイプのおむつ、乳児用使い捨てタイプのおむつ、ベッドカバーまたは手術用ガウンなどの使い捨てタイプの製品など本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内において幅広い用途に使用可能である。
【符号の説明】
【0055】
10 長繊維不織布ループ(Filament Non−woven Loop)
20 フック(Hook)
S1 下層ウェブ
S2 上層ウェブ
11 融着部
11−1 円形状パターン
11−2 直線状パターン
12 非融着部
図1
図2
図3