(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数の自走体は、同一直線上を移動するように配置すると共に、それぞれが同一直線上の各テリトリー範囲内で移動するように構成したことを特徴とする請求項1に記載のロボットハンド装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は箱詰め装置及び箱詰め方法に関し、一度に複数の物を把持することができるチャック機構を備えたロボットハンド(10)が開示されている。
しかしながら特許文献1の技術では、ロボットハンド(10)はチャック機構を専用治具として構成したものであって、適用されるワークの種類が乏しく、汎用性には欠ける。またチャック機構のチャック位置の調整は可能であるものの、計画性をもって能動的に所望位置へ次々と移動するようなものではない。
上記特許文献2はロボット、ハンドリングシステムおよび容器入り物品作製方法に関し、ロボットアーム(20)に取り付けられるロボットハンド(10)に把持部(12a、12b)が備えられたものが開示されている。また把持部(12a)と把持部(12b)との間隔をシリンダー等のアクチュエータにより調整できるようにしていることが開示されている。
しかしながら特許文献2の技術の場合においても、やはりロボットハンド(10)は把持部(12a、12b)を備えた専用治具であり汎用性に乏しい。また把持部(12a、12b)については、その間隔を移動調整できるとしてあるが、移動手段についてはシリンダ(アクチュエータ)によりできると開示されているものの、具体的な移動のさせ方についての開示はなく、勿論、移動位置を次々と変えるような能動的或いは計画的な移動を行わせるような技術を開示するものではない。
【0005】
そこで本発明は上記従来技術における問題点を解決し、作業の種類に応じて対応する作業端末を着脱自在取り付けることができると共に、一度に処理するワークの数に対応して複数個の作業端末を着脱自在に取り付けることができ、よって各移動位置において複数の作業端末による複数のワークへの同時的作業を行うことができ、更に各移動位置毎に作業されるべき複数のワークの位置関係が変化する場合においても、速やかに追従して作業端子を移動させて対応することができるロボットハンド装置の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明のロボットハンド装置は、ロボットの一部に対して着脱自在に取り付けることができるハンド本体を有し、該ハンド本体には、複数の自走体と該自走体を走行自在に取り付けるフレーム体とを備え
たロボットハンド装置であって、前記
複数の自走体には、その各自走体毎に、自走用の駆動モータと、該駆動モータの回転動作を自走体の走行動作に変換する回転−走行変換手段の回転子と、前記フレーム体の後記ガイドレールに係合して自走体の走行を保持するスライドブロックと、作業端末を取り換え自在に取り付けることができるようにした作業端末取付ポートとを取
り付け、前記フレーム体には、
平行な下フレーム、上フレーム、及び両横フレームを含む一体の長方形状フレーム部を構成すると共に、該一体の長方形状フレーム部の前記下フレームの下面に前記各スライドブロックと係合するガイドレールを設け、下フレームの上面に前記回転−走行変換手段の回転子と対となって噛み合う回転−走行変換手段の固定受子を設け、且つ前記上フレームには各自走体の移動原点を検出するための各原点センサを設けており、ハンド本体が全体として移動して採る複数のハンド本体移動位置の位置情報と、その各ハンド本体移動位置において作業されるべき複数のワークの各ワーク位置の位置情報とから、各ハンド本体移動位置における前記自走体のそれぞれが採るべき各自走体移動位置を演算し、ハンド本体の移動に同期して各自走体を対応する各自走体移動位置に移動させるように構成したことを第1の特徴としている。
また本発明のロボットハンド装置は、上記第1の特徴に加えて、複数の自走体は、同一直線上を移動するように配置すると共に、それぞれが同一直線上の各テリトリー範囲内で移動するように構成したことを第2の特徴としている
。
また本発明のロボットハンド装置は、上記
第1又は第2の特徴に加えて、ハンド本体は、直線上、平面上、三次元上の何れかを移動されることを
第3の特徴としている。
また本発明のロボットハンド装置は、上記第1〜
第3の何れかの特徴に加えて、ハンド本体の各移動に伴う各自走体の移動に必要な各駆動モータの制御量を、各ハンド本体移動位置における各自走体移動位置に基づいて演算し、ハンド本体の移動に同期して各自走体の駆動モータに制御量を加えるように構成したことを
第4の特徴としている。
また本発明のロボットハンド装置は、上記
第4の特徴に加えて、実際に配置されたワークの位置ズレをセンサで検出して、自走体の移動の際に駆動モータに対する制御量に補正を加えるように構成したことを
第5の特徴としている。
また本発明のロボットハンド装置は、上記第1〜
第5の何れかの特徴に加えて、駆動モータの回転動作を自走体の走行動作に変換する回転−走行変換手段は、ラック−ピニオン機構とし、回転子はピニオン歯車、固定受子はラック歯車とすることを
第6の特徴としている。
また本発明のロボットハンド装置は、上記第1〜
第5の何れかの特徴に加えて、駆動モータの回転動作を自走体の走行動作に変換する回転−走行変換手段は、タイミングプーリ−タイミングベルト機構とし、回転子はタイミングプーリ、固定受子はタイミングベルトとすることを
第7の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
請求項1に記載のロボットハンド装置によれば、複数の自走体とそれらを取り付けるフレーム体を備えたハンド本体は、ロボットの一部に取り付けられる。そしてハンド本体全体が、ロボットの移動に伴って、複数のハンド本体移動位置に移動される。ハンド本体に備えられた複数の自走体は、そのスライドブロックがフレーム体のガイドレールに係合され、駆動モータの回転動作を自走体の走行動作に変換する回転−走行変換手段の回転子がフレーム体の回転−走行変換手段の固定受子に噛み合わされることで、ハンド本体上で移動することができる。そして各ハンド本体移動位置の位置情報と、その各ハンド本体移動位置において作業されるべき複数のワークの各ワーク位置の位置情報とから、各ハンド本体移動位置において複数の自走体が採るべき各自走体移動位置を演算することができ、よってハンド本体が所定のハンド本体移動位置に移動されるのに同期して、ハンド本体の複数の自走体をそれぞれ対応する各自走体移動位置に移動させることができる。即ち、各自走体に取り付けられた各作業端末を、各ハンド本体移動位置において、それぞれ作業すべき各ワークの位置に応じた位置に移動させることができる。
従って請求項1に記載のロボットハンド装置によれば、1つのハンド本体が移動する各移動位置において、複数のワークに対する複数の作業端末による作業を一度に行うことができる。加えて、ハンド本体の各移動位置でのワークの位置関係が変化する場合においても、作業端末自体の取付位置等を何ら変更することなく、複数のワークに対する作業を継続して次々と行うことができる。
勿論、ハンド本体に取り付ける作業端末は取り換え自在であるので、作業すべき作業内容や、一度に作業すべきワークの数に応じて、異なる種類の作業端末や異なる数の作業端末を用いることができ、効率よく且つ汎用的に作業を行うことができる。
【0008】
請求項1に記載のロボットハンド装置によれば、フレーム体に平行な下フレーム、上フレーム、及び両横フレームを含む一体の長方形状フレーム部を構成することにより、該長方形状フレーム部の下フレームの下面に取り付けられたガイドレールに対して自走体のスライドブロックを係合することで、自走体を下フレームに沿って確実に移動させることができる。
また長方形状フレーム部の前記下フレームの上面に取り付けられた回転−走行変換手段の固定受子に対して自走体の回転−走行変換手段の回転子を噛み合わせることで、自走体を所定の移動量でもってガイドレールに沿って確実に移動させることができる。
そして平行な下フレーム、上フレーム、及び両横フレームを含む一体の長方形状フレーム部の前記上フレームに自走体の移動原点を検出する原点センサを取り付けることで、下フレームのガイドレールに沿って移動する自走体の移動原点を、それに平行な上フレームに取り付けた原点センサによって確実に且つ精度よく検出することが可能となる。
よってフレーム体に平行な下フレーム及び上フレーム、及び両横フレームを含む一体の長方形状フレーム部を構成することにより、シンプルで合理的なフレーム部を用いて複数の自走体を確実に同一線上に取り付けることができると共に、相互に移動自在とし、また各自走体の移動原点の位置を良好に検出することが可能となる。
以上を総括すると、前記複数の自走体には、各自走体に自走用の駆動モータや回転−走行変換手段の回転子を取り付ける構成とされているので、各自走体は自らが駆動し能動的に移動することができる。従って同じガイドレール上で使用できる自走体の数は、少数に限定されることなく、ガイドレールの長さに応じたより多くの自走体を取り付けて使用することができる。
また平行な下フレーム、上フレーム、及び両横フレームを含む一体の長方形状フレーム部を構成することで、簡素で且つ形が変化しない固定の長方形状フレーム部を用いた非常にシンプルで堅固な自走体の取り付け構造を得ることができる。
更に長方形状フレーム部の下フレームの下面に設けたガイドレールに対して各自走体のスライドブロックを係合させ、且つ同じ下フレームの上面に設けた回転−走行変換手段の固定受子に対して各自走体の回転−走行変換手段の回転子を噛み合わせるようにしているので、各自走体の移動は何ら他の移動補助部材を必要とすることなく、自ら移動することができる。
加えて、下フレームに取り付けられて移動する各自走体の移動原点を検出するための各原点センサは、該下フレームに平行で且つ相互に位置変動のない上フレームにそれぞれ設ける構成としているので、同じ長方形状フレーム部を利用して各自走体の移動原点の検出をも確実に精度よく行うことができる。
【0009】
請求項2に記載のロボットハンド装置によれば、上記請求項1に記載の構成による作用効果に加えて、複数の自走体は、同一直線上を移動するように配置すると共に、それぞれが同一直線上の各テリトリー範囲内で移動するように構成したので、
複数の自走体が移動する直線と同方向の直線上に配置される複数のワークに対しては、各自走体の直線上での位置のみを移動調整することで、容易に各自走体の作業端末を各ワーク位置に一致させることができる。よって複数の自走体の直線上の移動位置を制御するだけで、複数のワークに対する同期的作業を次々と効率よく行うことができる。
勿論、各自走体は各テリトリー内で移動するように構成したので、同一直線上であっても各自走体が衝突する不都合は回避できると共に、各ワークの位置の変動範囲に合わせて自走体の移動のテリトリー範囲を定めることで、全てのワークのそれぞれの位置に対応して各自走体の位置調整を確保することができる。
【0010】
請求項3に記載のロボットハンド装置によれば、上記
請求項1又は2に記載の構成による作用効果に加えて、ハンド本体は、直線上、平面上、三次元上の何れかを移動されるので、
ハンド本体がロボット等に取り付けられて直線上を移動する場合には、該ハンド本体は、その直線上の各移動位置で、複数の各自走体をそれぞれ所定位置に移動させて、各作業端末によるワークへの作業を加えることが可能となる。
同様に、ハンド本体がロボット等に取り付けられて平面上を移動する場合には、該ハンド本体は、その平面上の各移動位置で、複数の各自走体をそれぞれ所定位置に移動させて、各作業端末によるワークへの作業を加えることが可能となる。
更にハンド本体がロボット等に取り付けられて三次元上を移動する場合には、該ハンド本体はその三次元上の各移動位置で、複数の各自走体をそれぞれ所定位置に移動させて、各作業端末によるワークへの作業を加えることが可能となる。
従って
請求項3に記載のロボットハンド装置によれば、直線移動ロボット、二次元移動ロボット、三次元移動ロボットの何れにも対応してハンド本体を取り付けることができ、ロボットと共に移動して作業をさせることができる。この場合、ハンド本体の移動には回転移動も当然ながら含まれる。
【0011】
請求項4に記載のロボットハンド装置によれば、上記
請求項1〜3の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、ハンド本体の各移動に伴う各自走体の移動に必要な各駆動モータの制御量を、各ハンド本体移動位置における各自走体移動位置に基づいて演算し、ハンド本体の移動に同期して各自走体の駆動モータに制御量を加えるように構成したので、
ハンド本体が次のハンド本体移動位置に移動される際には、それに同期して各自走体の駆動モータに対して演算された駆動モータ制御量を加えることで、自走体を必要な自走体移動位置に速やかに移動させることができる。よって各ハンド本体移動位置での作業端末による作業開始をスムーズに行うことができる。
【0012】
請求項5に記載のロボットハンド装置によれば、上記
請求項4に記載の構成による作用効果に加えて、実際に配置されたワークの位置ズレをセンサで検出して、自走体の移動の際に駆動モータに対する制御量に補正を加えるように構成したので、
予定位置からの位置ズレが生じたワークに対しても、対応する自走体の移動位置を補正することが可能となり、作業端末による作業をより安定したものにすることが可能となる。
【0013】
請求項6に記載のロボットハンド装置によれば、上記
請求項1〜5の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、駆動モータの回転動作を自走体の走行動作に変換する回転−走行変換手段は、ラック−ピニオン機構とし、回転子はピニオン歯車、固定受子はラック歯車としたので、
自走車側のピニオン歯車とフレーム体側のラック歯車とを噛み合わせることにより、駆動モータの回転動作を自走体の走行動作に容易に、確実に変換することができる。
【0014】
請求項7に記載のロボットハンド装置によれば、上記
請求項1〜5の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、駆動モータの回転動作を自走体の走行動作に変換する回転−走行変換手段は、タイミングプーリ−タイミングベルト機構とし、回転子はタイミングプーリ、固定受子はタイミングベルトとしたので、
自走体側のタイミングプーリとフレーム体側のタイミングベルトとを噛み合わせることにより、駆動モータの回転動作を自走体の走行動作に容易に、確実に変換することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態に係るロボットハンド装置を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。
【0017】
先ず
図1〜
図4を参照して、本発明の実施形態に係るロボットハンド装置は、ハンド本体1を有し、このハンド本体1が、ロボットアーム等のロボットRの一部に対して着脱自在に取り付けられる構成となっている。
【0018】
前記ハンド本体1には、自走体10と、該自走体10を走行自在に取り付けることができるフレーム体20とを備え、またハンド体1をロボットRの一部に着脱自在に取り付けるための取付体30や、制御部40(
図1には図示しない)を備える。
【0019】
前記自走体10は複数設けられている。本実施形態では4個設けているが、自走体10の個数は限定されない。
自走体10には、該自走体10の自走用の駆動モータ11と、該駆動モータ11の回転を受けて回転するピニオン歯車12と、スライドブロック13と、作業端末取付ポート14とを設けている。
前記フレーム体20には、平行な下フレーム21aと上フレーム21b、及び両横フレーム21c、21dを含む一体の長方形状フレーム部21を備えている。
またフレーム体20には、ガイドレール22と、ラック歯車23と、自走体10の移動原点を検出する原点センサ24とが設けられている。
【0020】
前記フレーム体20の長方形状フレーム部21には、その下フレーム21aの下面に沿ってガイドレール22が取り付けられており、このガイドレール22に対して自走体10のスライドブロック13が係合するように構成されている。
スライドブロック13のガイドレール22への係合は、モノレールからなるガイドレール22に対して断面が凹状のスライドブロック13を下から係合するようにしたモノレール方式としている。これによって自走体10はガイドレール22に沿ってスライド移動することができる。
また前記フレーム体20の長方形状フレーム部21には、その下フレーム21aの上面に沿ってラック歯車23が取り付けられており、このラック歯車23に対して自走体10のピニオン歯車12が噛み合わされるように構成されている。これによって自走体10の駆動モータ11が回転すると、その回転量に応じてピニオン歯車12が回転し、ラック歯車23に噛み合った状態で自走体10全体がガイドレール22に沿って移動することができる。
また前記フレーム体20の長方形状フレーム部21には、その上フレーム21bの下面に自走体10の移動原点を検出するための原点センサ24を設けている。原点センサ24は、各自走体10が、それぞれ予め定められた各移動原点にあることを検出するセンサで、自走体10毎に設けられている。
【0021】
前記ピニオン歯車12とラック歯車23とは、ラック−ピニオン機構を構成する。
本発明においては、駆動モータ11の回転動作を自走体10の走行動作に変換する回転−走行変換手段を設備するが、この広い概念の回転−走行変換手段に対する下位概念として前記ラック−ピニオン機構がある。
前記回転−走行変換手段においては、自走体10側に駆動モータ11の回転を伝える回転子を設け、フレーム体20側に前記回転子と対になって噛み合う固定受子を設ける構成としており、これによって回転子とそれに噛み合う固定受子を介して駆動モータ11の回転動作を自走体10の走行動作に変換する構成としている。
前記広い概念の回転−走行変換手段の回転子は、ラック−ピニオン機構におけるピニオン歯車12と同様の機能を果たす上位概念に相当し、回転−走行変換手段の固定受子はラック−ピニオン機構のラック歯車と同様の機能を果たす上位概念に相当する。
前記回転−走行変換手段の固定受子は、具体的には下フレーム21aの上面に沿って固定されることになる。
前記駆動モータ11の回転動作を自走体10の走行動作に変換する回転−走行変換手段の下位概念として、タイミングプーリ−タイミングベルト機構を用いることができる。
このタイミングプーリ−タイミングベルト機構では、自走体10側に駆動モータ11の回転を伝える歯付きプーリを設けると共に、フレーム体20側に歯付きベルトを固定する構成としており、これによって歯付きプーリとそれに噛み合う歯付きベルトを介して駆動モータ11の回転動作を自走体10の走行動作に変換する構成とする。
前記歯付きプーリは前記回転−走行変換手段の回転子の下位概念をなすと共に、前記ラック−ピニオン機構のピニオン歯車12に相当する。また前記歯付きベルトは前記回転−走行変換手段の固定受子の下位概念をなすと共に、前記ラック−ピニオン機構のラック歯車23に相当する。
前記タイミングプーリ−タイミングベルト機構の歯付きベルトは、具体的には下フレーム21aの上面に沿って固定されることになる。
【0022】
以上のようにフレーム体20に長方形状フレーム部21を構成し、その平行な下フレーム21aを利用して自走体10を移動自在に取り付けるようにすると共に、平行な上フレーム21bに自走体10移動の原点センサ24を取り付けることで、シンプルな長方形状フレーム部21に自走体10を堅固に取り付けて移動自在とすることができると共に、各自走体10の移動原点の位置を正確に検出することが可能となる。
【0023】
前記自走体10の駆動モータ11は、自走体10の一部に設けられ、自走体10を自走させるためのモータである。この駆動モータ11は、例えばステッピングモータ等のパルスモータとして、パルス数に応じた回転数(回転角度)だけ正確に回転させるように構成し、これによって自走体10を、ピニオン歯車12とラック歯車23を介して、必要な所定移動量だけ移動させる構成としている。
即ち、ハンド本体1が現移動位置から次の移動位置に移動される際には、自走体10の位置も現位置から次の位置へと移動させる必要が生じる場合がある。しかし、その際には、自走体10の現位置から次の位置への必要移動量が演算され、更にラック歯車とピニオン歯車との歯車比を介して、駆動モータ11が回転すべき必要回転数(必要回転角度)が演算される。
前記自走体10のピニオン歯車12がフレーム体20のラック歯車23と噛み合わされる構成については既述した。
前記自走体10の駆動モータ11、スライドブロック13は、自走体10の固定板15に取り付けられる。
固定板15は垂直固定板15aとその下端部から直角方向に曲げられて延出する水平固定板15bとを有し、垂直固定板15aに駆動モータ11が取り付けられ、水平固定板15bにスライドブロック13が取り付けられる構成としている。スライドブロック13は垂直固定板15aと水平固定板15bとが接続する隅部を利用して強固に固定されるように考慮されている。
前記作業端末取付ポート14は、ワーク(被作業物)Wに対して実際に作業を行う作業端末Sを取り付ける部分である。
作業端末取付ポート14は、水平固定板15bを利用して、前記スライドブロック13が取り付けられる位置よりも前方領域をもって作業端末取付ポート14としている。
前記水平固定板15bは、自走体10をフレーム体20に取り付けた状態において、ガイドレールレール22の下方を迂回してフレーム体20の前方に延出される構成とすることで、前記スライドブロック13及び作業端末Sを十分な取付空間をもって、堅固に確実に取り付けることができるようにしている。なお作業端末Sは本実施形態では、ワークWを把持する把持作業端末としているが、別の種類の作業をする作業端末Sであってもよい。
【0024】
本実施形態においては、前記複数の自走体10は、同一直線上を移動するように配置すると共に、それぞれが同一直線上の各テリトリー範囲内で移動するように構成してある。
即ち、ガイドレール22を直線レールとし、真直ぐな下フレーム21aの下面に設けている。この直線のガイドレール22に係合するスライドブロック13を介して係合する各自走体10は、ガイドレール22に沿って同一直線上に配置されて移動する。
これに伴って、ラック歯車23も直線とし、真直ぐな下フレーム21aの上面に構成される。また原点センサ24は、自走体10の数と同数が下フレーム21aに平行な上フレーム21bに設けられる。
前記同一線上に配置される複数の自走体10は、相互に衝突しないように、それぞれが予め定めたテリトリー範囲内で移動するように構成されている。例えば各自走体10の各移動原点を各駆動モータ11の回転ゼロ点(回転角度ゼロ点)として設定し、駆動モータ11に許容される一定方向への許容回転数(許容回転角度)を定めることで、自走体10の移動範囲を一定のテリトリー範囲内に制御することができる。
【0025】
図5、
図6を参照して、前記ハンド本体1には制御部40が設けられる。該制御部40は、入力部41、演算部42、記憶部43、出力部44等を備える。なお、制御部40は必ずしもハンド本体1上に設ける必要はなく、ハンド本体1とは別に設けてもよい。
この制御部40は、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)と称されるコントローラで構成することができる。勿論、より高性能のコンピュータチップを設けることもできる。
PLCによる制御の場合は、制御プログラムを予め作製して用いることで、一連の制御動作を容易に、素早く行わせることができると共に、プログラムを変更するだけで容易に異なる一連の制御動作を行わせることができる。
制御部40には、前記各原点センサ24からの検出信号a、ハンド本体1を取り付けたロボットRからの信号b、各作業端末Sからの信号c、その他の信号dが入力される。また制御部40からは、各自走体10の駆動モータ11に対する制御信号e、ロボットRへの信号f、各作業端末Sに対する信号g、その他の信号hが出力される。
【0026】
本実施形態に係るロボットハンド装置において、ハンド本体1は、ロボットRに取り付けられた状態で、ロボット等に与えられた移動順序に従って、複数の予め定められた位置を順次移動される。そして、このようにしてハンド本体1が移動される際に、ハンド本体1に設けられた複数の自走体10が制御部40によって制御され、その位置が移動調整される。
【0027】
前記ハンド本体1が移動される各位置(各ハンド本体移動位置)は予め、例えば座標として記憶部43に記憶させておくことができる。
また各ハンド本体移動位置において作業される各ワークWの位置(各ワーク位置)も予め、例えばハンド本体移動位置を原点とした座標として、記憶部43に記憶させておくことができる。
そして前記各ハンド本体移動位置の位置情報と、そのハンド本体移動位置での各ワーク位置の位置情報とから、各ハンド本体移動位置において各自走体10が採るべき位置(自走体移動位置)を、例えばハンド本体移動位置を原点とした座標として、予め演算して記憶部43に記憶させておくことができる。
更にハンド本体1が所定の移動順序で各ハンド本体移動位置を移動していく場合に、それに伴って移動されるべき各自走体10の移動量と、それに伴う駆動モータ11の制御量を予め演算し、記憶させておくことができる。
前記各自走体10に必要な移動量は、自走体10の移動後の位置から移動前の位置を引き算することで演算することができる。そして各自走体10に必要な各移動量が演算されると、その各自走体10の演算移動量から対応する各駆動モータ11の制御量を、回転数や回転角度として、演算して記憶させておくことができる。
【0028】
上記のようにハンド本体1の各移動位置と移動順序を予め定め、そのハンド本体1の移動順序に従って、各駆動モータ11を予め記憶させた制御量で移動させるようにすることで、ハンド本体1の各移動位置において、各自走体10に取り付けた作動端末Sを予定された各ワークWの位置に次々と一致させることができる。これによりハンド本体1を予定された順序で各移動位置を移動させながら、各ハンド本体1の移動位置での作業端末Sによる各ワークWへの作業を次々と行ってゆくことができる。
【0029】
ただし、ハンド本体1の各移動位置と移動順序、及びハンド本体1の移動に伴う各自走体10の駆動モータ11への制御量を定めたプログラムによって制御するだけでは、実際に配置されたワークWの位置が予定されたワークWの位置からズレた場合には、作業端末SによるワークWに対する作業がうまくできなくなる場合も生じる。このような位置ズレを防止する手段としては、例えば実際に配置されたワークWの位置ズレを検出し、この位置ズレに応じて、対応する駆動モータ11の制御量に補正を加えるように構成することができる。
前記位置ズレの検出は、例えば各ワークWを画像認識して、予め記憶されている予定のワーク位置と実際のワーク位置との差を検出するようにして行うことができる。
【0030】
図7のフローチャート、
図8の作業例を参照して、本実施形態に係るロボットハンド装置の動作を説明する。制御するのはロボットRのコントローラとロボットハンド装置の制御部40である。
【0031】
今、ハンド本体1を取り付けたロボットRのメインスイッチがオンすると、ステップS1に進む。
ステップS1において、ロボットRのコントローラがロボットRのアーム等の移動部と共にそこに取り付けたハンド本体1を初期待機位置に移動させる。前記ロボットRのメインスイッチのオンに同期して、ロボットハンド装置が起動し、制御部40が自走体10を移動原点の位置に移動させる。ここで移動原点の位置の検出は原点センサ24により行われる。
【0032】
次にステップ2において、作業者等が、ロボットRのコントローラで所定の作業プログラムを選定すると(ステップ2でイエス)、ステップS3に進む。
【0033】
前記選定された作業プログラムに基づいて、制御部40において、ロボットRが移動する各位置におけるハンド本体1の各移動位置の情報、ハンド本体1の各移動位置において各自走体10が採るべき位置(各自走体移動位置)の情報、ハンド本体1の移動に伴う各自走体10の駆動モータ11の制御量の情報、の各情報が取得されているかがチェックされる(ステップS3)。ハンド本体1の各移動位置情報、自走体10の各移動位置情報、駆動モータ11の各制御量情報が取得されておれば(ステップS3でイエス)、運転スタートの準備が整う。
【0034】
上記ステップS3において、選定された作業プログラムが、例えばハンド本体1を取り付けたロボットRが第1の移動位置RP1で複数のワークWを掴み、第2の移動位置RP2に移動し、第2の移動位置RP2で前記掴んだ複数のワークWを別の配置状態に置く作業を繰り返すプログラムである場合について説明する。
この場合、ロボットRのコントローラには、少なくともロボットRの各移動位置RP1、RP2の位置情報を、例えば座標として予め記憶させ、またその移動順序を予め記憶させておくことになる。これによってロボットRは、作業プログラムに従って、先ず第1の移動位置RP1に移動し、次に第2の移動位置RP2に移動し、更に第1の移動位置RP1へと順次移動を繰り返すことになる。
【0035】
一方、ロボットハンド装置の制御部40には、ロボットRの各移動位置RP1、RP2におけるハンド本体1の各移動位置(各ハンド本体移動位置)HP1、HP2を、例えば座標として予め取得し、その位置情報を記憶させておく。
またハンド本体1の各移動位置HP1、HP2において、各自走体10(10a、10b、10c、10d)のそれぞれが採るべき各移動位置(各自走体移動位置)GP1(GaP1、GbP1、GcP1、GdP1)、GP2(GaP2、GbP2、GcP2、GdP2)の位置情報を、予め演算して取得し、記憶させておく。
更にハンド本体1が各移動位置(HP1、HP2)へ移動するに伴って、各自走体10を移動させる必要が生じるが、その各自走体10の必要移動量に対応する各駆動モータ11(11a、11b、11c、11d)の制御量を演算して取得し、記憶させておく。
なお制御部40には、必要最小限として、ハンド本体1の各移動の際に各自走体10の駆動モータ11(11a、11b、11c、11d)に加えるべき制御量だけを記憶するように構成することが可能である。
【0036】
前記ハンド本体1の第1の移動位置HP1における各自走体10(10a、10b、10c、10d)が採るべき各移動位置GP1(GaP1、GbP1、GcP1、GdP1)は、ハンド本体1の第1の移動位置HP1と、その移動位置HP1において各ワークW(Wa、Wb、Wc、Wd)が配置される位置(各ワーク位置)WP1(WaP1、WbP1、WcP1、WdP1)とから演算される。この演算には、当然ながら各自走体10(10a、10b、10c、10d)の位置とそれに取り付けられる各作業端末S(Sa、Sb、Sc、Sd)の位置との位置関係が考慮される。
前記ハンド本体1の第2の移動位置HP2における各自走体10(10a、10b、10c、10d)が採るべき各移動位置GP2(GaP2、GbP2、GcP2、GdP2)も同様に演算される。
更にハンド本体1が各移動位置(HP1、HP2)へ移動するに伴って、各自走体10を移動させる各駆動モータ11(11a、11b、11c、11d)に加える制御量については、自走体10の移動前後における位置の差を演算して必要移動量を算出し、その各自走体10の必要移動量に対応する各駆動モータ11の必要回転数(必要回転角度)を演算することで得ることができる。
なお、ハンド本体1の第1の移動位置HP1における各ワークWの位置WP1(WaP1、WbP1、WcP1、WdP1)は、ハンド本体1の第1の移動位置HP1を原点として表すことができる。同様にハンド本体1の第2の移動位置HP2における各ワークWの位置WP2(WaP2、WbP2、WcP2、WdP2)は、ハンド本体1の第2の移動位置HP2を原点として表すことができる。
またハンド本体1の第1の移動位置HP1における各自走体10の移動位置GP1(GaP1、GbP1、GcP1、GdP1)は、ハンド本体1の第1の移動位置HP1を原点として表すことができる。同様に、ハンド本体1の第2の移動位置HP2における各自走体10の移動位置GP2(GaP2、GbP2、GcP2、GdP2)は、ハンド本体1の第2の移動位置HP2を原点として表すことができる。
【0037】
ハンド本体1の以後の移動に対しても、ロボットRの移動位置情報、ハンド本体1の移動位置情報、各自走体10の移動位置情報、各駆動モータ11の制御量等の作業プログラムの遂行に必要な各情報は予め取得し、これをロボットRのコントローラとロボットハンド装置の制御部40とに適当に分けて記憶させておくことになる。
【0038】
ステップS3で上記したハンド本体1の移動位置情報や自走体10の移動位置情報、各自走体10の移動に伴う各駆動モータ11の制御量の各情報が取得されており、運転開始に必要な各条件が満たされておれば、運転準備完了でステップS4に進む。
ステップS4において、運転スイッチがオンされると運転が開始され、ステップS5に進む。
【0039】
ステップS5では、作業プログラムに従って、ロボットRを待機位置から第1の移動位置RP1に移動させ、これによってハンド本体1を待機位置から第1の移動位置HP1に移動させる。また各自走体10を移動原点の待機位置から第1の各自走体移動位置GP1に移動させる。
各自走体10の移動については、前記ロボットRの移動に同期して各自走体10(10a、10b、10c、10d)の各駆動モータ11(11a、11b、11c、11d)を予め記憶した制御量で所定の回転数(回転角度)だけ回転させることで行う。これによって各自走体10は、それぞれ移動原点の位置からハンド本体1の第1の移動位置HP1における各自走体移動位置GP1(GaP1、GbP1、GcP1、GdP1)に移動される。
ハンド本体1における自走体10の移動は、ロボットRの移動開始に伴う信号がロボットR側から制御部40に入ることで、制御部40が各駆動モータ11に対して予め記憶している必要制御量(必要制御量信号)を与えることで行わせることができる。
勿論、前記制御部40が各駆動モータ11に与える必要制御量は、自走体10を移動させるのに際して、記憶している次の移動位置と現移動位置とから、その場その場で演算して、駆動モータ11に与えるようにしてもよい。
【0040】
ステップ5において、ハンド本体1、自走体10の移動が完了すると、制御部40は完了の信号を形成してロボットR側に送る。この場合、ハンド本体1の移動完了信号は、ロボットRの移動完了信号で置き換えることができる。
ハンド本体1及び自走体10の移動が完了したと判断されると(ステップS6でイエス)、ロボットR側から各作業端末Sに対して作業開始信号が出される。これにより作業端末SによるワークWへの作業が開始される(ステップS7)。なお、各作業端末Sへの作業開始信号は、ロボットR側からではなく、ハンド本体1の制御部40から作業端末Sへ送るようにしてもよい。
【0041】
ステップS7においては、各作業端末S(Sa、Sb、Sc、Sd)による対応する各ワークW(Wa、Wb、Wc、Wd)への作業が行われる。作業は、各作業端末Sが前もって各ワークWに整合した位置へと移動された状態で行われるので、良好な作業が期待される。
本実施形態の各図に示す作業端末Sは、把持作業端末としている。この各作業端末Sが各自走体10の作業端末取付ポート14に取り付けられた状態で、ハンド本体1の第1の移動位置HP1において、ワーク位置WP1にある複数のワークWを一度に把持する。
ハンド本体1の第1の移動位置HP1での作業端末SによるワークWへの作業が終了すると、各作業端末Sからの作業終了信号がロボットRに送られる。
【0042】
各作業端末Sからの作業終了信号を受けたロボットRが作業端末Sによる作業の終了を判定する(ステップS8でイエス)と、ステップS9に進む。
【0043】
ステップS9においては、ロボットRが次の第2の移動位置RP2に移動し、これによりハンド本体1も次の第2の移動位置HP2に移動する。またロボットRの第2の移動位置RP2(ハンド本体1の第2の移動位置HP2)への移動に伴い、各自走体10が第2の自走体移動位置GP2(GaP2、GbP2、GcP2、GdP2)に移動される。
ステップS9での各自走体10の移動は、ハンド本体1が第1の移動位置HP1から第2の移動位置HP2に移動するに際して、制御部40が、各自走体10の駆動モータ11に対して、各自走体10がそれぞれ第1の自走体移動位置GP1から第2の自走体移動位置GP2へ移動するのに必要な制御量を与えることで行う。この各駆動モータ11の各制御量は、既述したように、予め演算して記憶部40に記憶したものを用いる。しかしながら移動に際して、その場その場で演算して与えるようにしてもよい。
ステップS9でのハンド本体1の移動、各自走体10の移動が完了すると、制御部40はその完了信号をロボットR側へ送る。
【0044】
ステップS10において、前記制御部40からの完了信号により、ロボットR側においてハンド本体1及び各自走体10の移動が完了したと判断すると(ステップS10でイエス)、ロボットR側から各作業端末Sに対して作業開始信号が出され、ステップS11に進む。なお、各作業端末Sへの作業開始信号は、ロボットR側からではなく、ハンド本体1の制御部40から作業端末Sへ送るようにしてもよい。
【0045】
ステップS11での各作業端末S(Sa、Sb、Sc、Sd)の作業は、前記ハンド本体1の第1の移動位置HP1から運んできた各ワークW(Wa、Wb、Wc、Wd)を、第2のワーク位置WP2(WaP2、WbP2、WcP2、WdP2)に置く作業である。
ハンド本体1の第1の移動位置HP1での各ワーク位置WP1(WaP1、WbP1、WcP1、WdP1)に対して、ハンド本体1の第2の移動位置HP2での各ワーク位置WP2(WaP2、WbP2、WcP2、WdP2)が変動する場合、それに対応して各作業端末S(Sa、Sb、Sc、Sd)の位置も移動させる必要がある。この各作業端末S(Sa、Sb、Sc、Sd)の移動は各自走体10(10a、10b、10c、10d)の移動で行われる。そして各自走体10の移動量は各駆動モータ11(11a、11b、11c、11d)に加える制御量で制御される。
【0046】
ステップS11での各作業端末Sによる作業が終了すると、その終了信号が作業端末SからロボットR側に送られる。
ステップS12において、作業端末Sからの作業終了信号により、ロボットRが作業端末Sによる作業の終了を判定する(ステップS12でイエス)と、ステップ13に進む。
ステップS13では、更にこの作業プログラムによる運転が終了したか否かがロボットR側で判定される。
【0047】
ステップS13において、作業プログラムによる運転が終了していない場合(ステップS13でノー)は、ステップS9に戻り、ロボットRのコントローラがロボットRを次の移動位置RP3へと移動させ、よってハンド本体1を次の移動位置HP3に移動させ、また制御部40が各自走体10を次の移動位置GP3に移動させる、という作業を続ける。この場合、
図8に示すように、ロボットRが2つの位置での往復移動を繰り返す場合には、前記ハンド本体1の次の移動位置もHP2からHP1に戻り、これを繰り返すことになる。
一方、作業プログラムによる運転が終了すると(ステップS13でイエス)、ロボットRのコントローラはロボットRを初期待機位置に戻し、制御部40は各自走体10を移動原点の位置に戻す(ステップ14)。
【0048】
図8の説明図に示す作業例は、ロボットRのアームを第1の移動位置RP1から第2の移動位置RP2へ移動させ、両移動位置(RP1とRP2)で順次作業をする例である。
(第1の場合)
ロボットRの第1の移動位置RP1における各ワーク位置WP1(WaP1、WbP1、WcP1、WdP1)とロボットRの第2の移動位置RP2における各ワーク位置WP2(WaP2、WbP2、WcP2、WdP2)とが何れも直線上にあって、相互に90度だけ回動することで、両者が完全に一致する位置関係にある最も単純な場合を説明する。
この第1の場合には、ロボットアームをそのまま90度回動させるだけで、第1のワーク位置WP1を第2のワーク位置WP2に一致させることができる。各作業端末S(Sa、Sb、Sc、Sd)の位置を何ら移動させることなく、両移動位置(RP1、RP2)での作業を行うことができる。
【0049】
(第2の場合)
ロボットRの第1の移動位置RP1における各ワーク位置WP1(WaP1、WbP1、WcP1、WdP1)とロボットRの第2の移動位置RP2における各ワーク位置WP2(WaP2、WbP2、WcP2、WdP2)とが何れも直線上にあるが、直線上での各ワークWのピッチが変わる等、各ワークW(Wa、Wb、Wc、Wd)の位置取りが変化する場合を説明する。
この第2の場合においては、回動されるロボットアームの長さの調整、ロボットアーム自体の回転角度の調整、更にはロボットアームに取り付けられた状態でハンド本体1を適当な角度だけ自転させて調整させることにより、ロボットRの第1の移動位置RP1において各ワーク位置WP1がなす直線をロボットRの第2の移動位置RP2における各ワーク位置WP2がなす直線と同一直線上に合わせることができる。
ただし移動先であるロボットRの第2の移動位置RP2における線上での各ワーク位置WP2(WaP2、WbP2、WcP2、WdP2)が移動元であるロボットRの第1の移動位置RP1における線上での各ワーク位置WP1(WaP1、WbP1、WcP1、WdP1)と異なる場合は、それに応じて自走体10の全部若しく一部の自走体10を移動させる必要がある。例えば
図8においては、第4のワークWdの線上での位置が第1のワーク位置WdP1と第2のワーク位置WdP2とで異なる。従ってハンド体1が第1の移動位置HP1から第2の移動位置HP2に移動する際に、第4の駆動モータ11dに予め演算した所定の制御量を加えて第4の自走体10dをガイドレール22に沿って線上を所定の第2の位置GdP2まで移動させることになる。
【0050】
なお、本発明の実施形態においては、各図面に示すガイドレール22は1本の直線である。そして各自走体10はその1本のガイドレール22に沿って1本の直線上を移動されるように構成されている。
しかしながらガイドレール22は1本の曲線とすることも可能である。この場合は、各自走体10が1本の曲線上を移動して、その位置を変更することになる。
またガイドレール22は、各自走体10にそれぞれ1本ずつ別々に設ける構成とすることも可能である。この場合でも、各自走体10はそれぞれのガイドレール22上を移動し、位置調整を行うことが可能である。
また上記の実施形態では、自走体10は直線上を1次元的に移動させる構成を主として説明したが、自走体10は2次元の平面上で移動させるように構成することも可能である。
【解決手段】着脱自在なハンド本体1に複数の自走体10とフレーム体20とを備え、自走体に駆動モータ11、該駆動モータの回転動作を自走体の走行動作に変換する回転−走行変換手段の回転子、スライドブロック13、作業端末取付ポート14を設け、フレーム体にガイドレール22、前記回転子に対となって噛み合う固定受子を設け、ハンド本体が移動して採る複数のハンド本体移動位置の位置情報と、各ハンド本体移動位置で作業されるべき複数のワークの各ワーク位置の位置情報とから、各ハンド本体移動位置で自走体のそれぞれが採るべき各自走体移動位置を演算し、ハンド本体の移動に同期して各自走体10を対応する各自走体移動位置に移動させるように構成したロボットハンド装置である。