(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6966138
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】靴下
(51)【国際特許分類】
A41B 11/00 20060101AFI20211028BHJP
【FI】
A41B11/00 Z
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2021-125209(P2021-125209)
(22)【出願日】2021年7月30日
【審査請求日】2021年8月2日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520237269
【氏名又は名称】石井 豊
(74)【代理人】
【識別番号】100145838
【弁理士】
【氏名又は名称】畑添 隆人
(74)【代理人】
【識別番号】100103137
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 滋
(74)【代理人】
【識別番号】100216367
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 梨絵
(72)【発明者】
【氏名】石井 豊
【審査官】
▲桑▼原 恭雄
(56)【参考文献】
【文献】
中国実用新案第208987858(CN,U)
【文献】
特開2007−239129(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3135097(JP,U)
【文献】
実開昭58−172407(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者に装着された状態において筒状であり、該装着者のかかとから上の部位を覆うボディ部と、
前記装着者に装着された状態において前記かかとから下の部位を覆うフット部と、
前記ボディ部の上端から、該上端の下方にあり前記装着者に装着された状態において該装着者の足首に相当する所定の位置までの範囲を開閉可能とする開閉手段であって、前記ボディ部の上端から前記所定の位置までの範囲が開けられた状態において前記装着者の足先を前記上端よりも下方の位置から前記フット部へ挿入可能とし、前記ボディ部の上端から前記所定の位置までの範囲が閉じられた状態において前記ボディ部を筒状とする開閉手段と、
前記装着者に装着された状態で該装着者のくるぶしを露出させる開口を有する開口部であって、前記開閉手段の下端と繋げて設けられることで、前記開閉手段により前記ボディ部の上端から前記所定の位置までの範囲が開けられた場合に、前記ボディ部の上端から前記開口の下端までが分離した状態となり、前記装着者の足先を前記開口の下端から前記フット部へ挿入可能とする開口部と、を備える、
靴下。
【請求項2】
前記開口部は、前記開口の周縁を補強する補強部を備える、
請求項1に記載の靴下。
【請求項3】
前記補強部は、該補強部の周囲の厚みより厚くなるよう形成された、
請求項2に記載の靴下。
【請求項4】
前記ボディ部の上端に位置する、前記装着者が該靴下に足先を挿入する際に該靴下を持つための持ち手を更に備える、
請求項1から3の何れか一項に記載の靴下。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、靴下に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、身生地に適合するファスナーを前部、もしくは側面部につけた、すべり止め付靴下が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
また、つま先から足首まで開閉式にし、開閉部分に面ファスナーを設け、足首の部分に面ファスナーを設けた靴下が提案されている(特許文献2を参照)。
【0004】
また、膝上と膝下にゴム編みを儲けてずり落ちをガードして、足の外側脇部分には合わせ目を作り開閉可能にする靴下が提案されている(特許文献3を参照)。
【0005】
更に、足挿入部となる口部、脚部、足首部、踵部、足部、爪先部が連続するように丸編により編成された靴下であって、口部から足首部に至る範囲で一側部または他側部にファスナーが設けられて開閉可能に構成され、ファスナーは閉じられた状態において靴下の上端にスライダーが位置するように構成された靴下が提案されている(特許文献4を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−124703号公報
【特許文献2】特開2000−220003号公報
【特許文献3】特開2007−113168号公報
【特許文献4】実用新案登録第3135097号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来、靴下を履く際、靴下の上端部を手で持ちながら、上端部にある履き口(開口)に足先を挿入することで、靴下を履くことが一般的である。しかし、靴下の上端部を持ちながら上端部の履き口に足先を挿入するには、靴下の上端部を持った指先が足先の位置にくるように腰をかがめて脚(膝)を屈曲させた体勢をとる必要があるため、腰痛や、膝痛、脚の外傷、障害等を有する人や高齢者等が靴下を履きにくいという問題があった。
【0008】
上記した問題に鑑み、本開示にかかる技術は、履きやすさが向上した靴下を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一つの側面は、装着者に装着された状態において筒状であり、該装着者のかかとから上の部位を覆うボディ部と、前記装着者に装着された状態において前記かかとから下の部位を覆うフット部と、前記ボディ部の上端から、該上端の下方にある所定の位置までの範囲を開閉可能とする開閉手段であって、前記ボディ部の上端から前記所定の位置までの範囲が開けられた状態において前記装着者の足先を前記上端よりも下方の位置から前記フット部へ挿入可能とし、前記ボディ部の上端から前記所定の位置までの範囲が閉じられた状態において前記ボディ部を筒状とする開閉手段と、を備える靴下である。
【0010】
また、本開示に係る靴下は、該靴下が前記装着者に装着された状態で該装着者の脚の一部を露出させる開口を有する開口部であって、前記開閉手段の下端と繋げて設けられることで、前記開閉手段により前記ボディ部の上端から前記所定の位置までの範囲が開けられた場合に、前記ボディ部の上端から前記開口の下端までが分離した状態となり、前記装着者の足先を前記開口の下端から前記フット部へ挿入可能とする開口部を更に備えてもよい。
【0011】
また、前記所定の位置は、前記装着者の足首に相当する位置であり、前記開口部は、該靴下が前記装着者に装着された状態で該装着者のくるぶしを露出させてもよい。
【0012】
また、前記開口部は、前記開口の周縁を補強する補強部を備えてもよい。
【0013】
また、前記補強部は、該補強部の周囲の厚みより厚くなるよう形成されてもよい。
【0014】
また、前記ボディ部の上端に位置する、前記装着者が該靴下に足先を挿入する際に該靴下を持つための持ち手を更に備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本開示に係る技術によれば、履きやすさが向上した靴下を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る靴下の一例を示す平面図である。
【
図2】実施形態に係る靴下(開閉部が完全に開けられた状態)の一例を示す平面図である。
【
図3】実施形態に係る靴下の一例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本開示に係る靴下の実施の形態を、図面に基づいて説明する。但し、以下に説明する実施の形態は、実施形態を例示するものであって、本開示に係る靴下を以下に説明する具体的構成に限定するものではない。実施にあたっては、実施の態様に応じた具体的構成が適宜採用され、また、種々の改良や変形が行われてよい。
【0018】
図1は、本実施形態に係る、靴下の一例を示す平面図である。
図1に示すように、本実施形態に係る靴下1は、かかとから上の部位を覆うボディ部2、かかとから下の部位を覆うフット部3、ボディ部2の上端から、当該上端の下方にある所定の位置までの範囲を開閉可能とする開閉部4、及び開閉部4の下端の下方に位置し開閉部4の下端と繋げて設けられた開口を有する開口部5を備える。なお、ボディ部2とフット部3とは一体形成(連続的に編成)されている。
【0019】
ボディ部2は、靴下1が装着者に装着された状態において、その全体(ボディ部2(靴下1)の上端からかかとまで)が筒状の編地である。ボディ部2の長さ(軸方向の長さ)は、
図1で例示した長さに限定されず、例えば、ふくらはぎまでを覆う長さや、膝下までを覆う長さ、膝上までを覆う長さ等の任意の長さであってよい。
【0020】
フット部3は、かかとから、足の甲、足底、及び爪先を覆う、端部(爪先部分)が袋状の編地である。なお、フット部3は、爪先を覆う袋状の形状に限定されるものではなく、例えば、装着者の爪先を覆わない形状(爪先部分が開口している形状(オープントゥ))や、爪先部分が、全ての指を一つの袋で覆わない形状(爪先部分が五本指に分かれた形状(五本指ソックス)や、爪先部分が足袋のように親指を覆う袋とその他の指を覆う袋の二つの袋を備える形状等)であってよい。
【0021】
開閉部4は、ボディ部2の上端から、当該上端の下方にある所定の位置までの範囲を開閉可能とする開閉機構であり、本実施形態では、
図1に示すように、ボディ部2の上端から装着者の足首に相当する位置までの範囲を開閉可能とする場合について例示する。なお、開閉部4は、
図1に示すように、靴下1の側部(内側(親指側)又は外側(小指側))に設けられるが、側部に限定されるものではなく、靴下1の前部や後部に設けられてもよい。
【0022】
本実施形態では、
図1に示すように、開閉部4として、スライダー41、エレメント42、上止43、開具(蝶棒と箱棒)44及び箱45を備える線ファスナー(スライドファスナー、オープンファスナー)を例示する。上止43は、開閉部4(ボディ部2)の上端に位置し、開具44及び箱45は、開閉部4の下端(ボディ部2の上端の下方にある所定の位置(足首に相当する位置))に位置し、上止43から開具44までの範囲にエレメント42が位置する。
【0023】
図2は、本実施形態に係る靴下(開閉部4が完全に開けられた状態)の一例を示す平面図である。
図2に示すように、スライダー41が開閉部4の下端に位置する箱45(箱棒44)により止められた状態において、開閉部4が完全に開けられた状態(開閉部4の上端及び下端も分離することで、開閉可能な範囲である、ボディ部2の上端から所定の位置までの範囲が完全に分離した状態)となる。
【0024】
開口部5は、開閉部4の下端の下方に、開閉部4の下端と隣接して位置する開口(中空)51を有する部位(開口周辺の部位)である。開口部5の有する開口51は、靴下1が装着者に装着された状態で、装着者の脚の一部を露出させる開口であり、本実施形態では、
図1及び
図2に示すように、装着者のくるぶしを露出させる開口である場合について例示する。
図2に示すように、開閉部4が完全に開けられた状態において、ボディ部2(開閉部4)の上端から開口51の下端までが分離した状態となり、装着者の足先を開口51の下端からフット部3へ挿入可能となる。つまり、履き口が靴下の上端にのみ設けられている従来の靴下と異なり、本実施形態に係る靴下1によれば、開閉部4が完全に開けられた状態において、開口51の下端に相当する位置に、足を出し入れするための履き口を形成することが出来る。
【0025】
図1及び
図2に示すように、スライダー41が開閉部4の上端に位置する上止43により止められた状態において、開閉部4が完全に閉じられた状態(開閉可能な範囲である、ボディ部2の上端から所定の位置までの範囲が閉じられた状態)となり、この閉じられた状態において、ボディ部2が筒状となる。装着者は、開口51の下端から足先を挿入してフット部3へ足を挿入した後に、開閉部4を閉じることで、靴下1の装着を完了する。
【0026】
また、開口部5は、開口51の周縁を補強する補強部52を備えてもよい。この補強部52は、補強部52の周囲の厚みより厚くなるよう形成されるようにしてもよい。補強部52を周囲の厚みより厚く形成することで、開口51から露出される装着者の脚の部位(例えば、くるぶし)を、靴の内側に当たる(擦れる)ことから防ぐことが可能となり、当該部位を保護することが可能となる。
【0027】
なお、補強部51を形成する方法は、任意の方法が用いられてよく、例えば、開口51の周囲の編地を折り返して縫い付けることで形成する方法や、開口51の周囲にステッチ(厚めのステッチ)を施すことで形成する方法、開口51の周囲にゴム等を通すことで形成する方法、開口51の周囲に緩衝材等を貼り付ける(縫い付ける)ことで形成する方法等が用いられてよい。なお、開口51は、
図1に示すような円形状に限定されず、装着者の脚の一部を露出させる開口であれば、楕円形状や正方形状等、任意の形状であってよい。
【0028】
上述した実施形態によれば、装着者は、靴下1を履く際、靴下1の上端を持ちながら、足先を、靴下1の上端ではなく、上端よりも下方の位置(例えば、足首に相当する位置の周辺)から挿入することが可能となる。この場合、従来のように靴下の上端を持ちながら足先を靴下の上端から挿入する場合と比べて、靴下1の上端を持つ指先と足先との間の距離を持たせ、靴下1の上端を持つ手の位置が足先よりも手前にある状態で靴下1に足先を挿入することが可能となるため、腰や脚を大きく屈曲させることなく、足先を靴下1に挿入する(靴下を履く)ことが可能となる。そのため、上述した実施形態によれば、腰痛や、膝痛、脚の外傷、障害等を有する人や高齢者等にとっても履きやすさが向上した靴下を提供することが可能となる。
【0029】
また、開口部5を有することで、足先を挿入する位置を開閉部4よりも更に下方にすることが可能となり、腰や脚を屈曲させる度合い(量)を更に少なくすることが可能となり、履きやすさを向上させることが可能となる。また、開口部5が、くるぶしを露出させる開口51を有することで、靴下1を履く際に、くるぶしが靴下1の中で引っ掛かり履きにくくなることを防止することが可能となる。
【0030】
なお、開閉部4は、ボディ部2の上端から下方の位置までを開閉可能であれば、
図1に示された例に限定されるものではなく、例えば、面ファスナーや点ファスナー等であってもよい。また、開閉部4(線ファスナー)の構造は、
図1及び
図2で示した例に限定されるものではなく、任意の構造が用いられてよい。そのため、開閉部4は、例えば、
図1及び
図2で示した開閉部4の構造が上下反転した構造を有してよい。つまり、開具44及び箱45が、開閉部4(ボディ部2)の上端に位置し、上止43が、開閉部4の下端に位置し、スライダー41が開閉部4の上端に位置する箱45(箱棒44)により止められた状態において、開閉部4が完全に開けられた状態であり、スライダー41が開閉部4の下端に位置する上止43により止められた状態において、開閉部4が完全に閉じられた状態となる構造であってよい。
【0031】
また、靴下1は、上述した、ボディ部2、フット部3、開閉部4及び開口部5に加え、ずり落ち防止部6及び持ち手7の少なくとも一方を更に備えてもよい。ずり落ち防止部6は、装着者が靴下1を履く際又は装着した際に、靴下1が脚からずり落ちることを防止するための部位である。ずり落ち防止部6が設けられる位置は任意であるが、例えば、ずり落ち防止部6を、開口部5(開口51)の下方において、靴下1の全周にわたり設けることで、足を出し入れする履き口(開口51の下端)における靴下1のずり落ちを防止するようにしてもよい。
【0032】
図3は、本実施形態に係る靴下の一例を示す平面図である。
図3では、ボディ部2、フット部3、開閉部4、開口部5、ずり落ち防止部6及び持ち手7を備える靴下1を例示する。
図3に示すように、ずり落ち防止部6は、くるぶしに位置する開口部5(開口51)の下方において、靴下1の全周にわたり設けられており、且つ、開口51(補強部52)の下端に隣接するよう設けられている。これより、足をフット部3に挿入した後に、くるぶし周辺において、靴下1を脚に固定(密着)させることが出来るため、靴下1がずり落ちることなく開閉部4を閉めることが可能となり、開閉部4の開閉動作が容易になることから、靴下の履きやすさを更に向上させることが可能となる。また、靴下1を装着した後も、靴下1が脚からずり落ちることを防止することが可能となる。
【0033】
なお、
図3の例では、ゴム糸等を環状に編み込むことで、靴下1を脚に密着させるための締め付け力を有するずり落ち防止部6を例示しているが、ずり落ち防止部6の素材や構造は任意であり、例えば、靴下1の編地に固着(接着)されたシリコーンゴム等であってもよい。また、ずり落ち防止部6は、
図3で例示した位置以外にも、例えば、開閉部4の下端や、足首に相当する位置等に設けられてよく、これらの位置に設けられた場合であっても、上述と同様の理由により、開閉部4の開閉動作が容易になる。
【0034】
持ち手7は、ボディ部2の上端に位置する、装着者が靴下1に足先を挿入する際に靴下1を持つための部位である。持ち手7は、装着者が手で持ったり指を引っ掛けたりすることが可能な構造であれば、任意の構造を有してよい。また、持ち手7には、靴下1と同様の編地が用いられてもよいし、その他にも、綿、革、ポリエステル等、任意の素材が用いられてよい。装着者は、ボディ部2の上端に位置する持ち手7を持ちながら、足先を靴下1に挿入することで、ボディ部2の上端を持ちながら足先を挿入する場合と比べて、足先の挿入位置と靴下1を持つ手の位置との間の距離をより離すことが可能となるため、腰や脚を屈曲させる度合いをより少なくして、足先を靴下1に挿入する(靴下を履く)ことが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1 靴下
2 ボディ部
3 フット部
4 開閉部
41 スライダー
42 エレメント
43 上止
44 開具
45 箱
5 開口部
51 開口
52 補強部
6 ずり落ち防止部
7 持ち手
【要約】
【課題】履きやすさが向上した靴下を提供することを課題とする。
【解決手段】
靴下に、装着者に装着された状態において筒状であり、かかとから上の部位を覆うボディ部と、かかとから下の部位を覆うフット部と、前記ボディ部の上端から、該上端の下方にある所定の位置までの範囲を開閉可能とする開閉手段であって、前記ボディ部の上端から前記所定の位置までの範囲が開けられた状態において前記装着者の足先を前記上端よりも下方の位置から前記フット部へ挿入可能とし、前記ボディ部の上端から前記所定の位置までの範囲が閉じられた状態において前記ボディ部を筒状とする開閉手段と、を備えた。
【選択図】
図1