(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966273
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月10日
(54)【発明の名称】車両用ディスクブレーキ
(51)【国際特許分類】
F16D 65/16 20060101AFI20211028BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20211028BHJP
F16D 125/08 20120101ALN20211028BHJP
F16D 121/04 20120101ALN20211028BHJP
【FI】
F16D65/16
F16J15/18 A
F16D125:08 Z
F16D125:08 A
F16D121:04
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-182144(P2017-182144)
(22)【出願日】2017年9月22日
(65)【公開番号】特開2019-56450(P2019-56450A)
(43)【公開日】2019年4月11日
【審査請求日】2020年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】三澤 君廣
【審査官】
羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−247187(JP,A)
【文献】
特開平07−197964(JP,A)
【文献】
特開2012−107740(JP,A)
【文献】
特開2007−032766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 49/00−71/04
F16J 15/16−15/3296
F16J 15/46−15/53
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリパボディに形成したシリンダ孔に、摩擦パッドをディスクロータの側面に向けて押動するピストンを内挿した車両用ディスクブレーキにおいて、
前記ピストンのシリンダ孔底部側の外周面にオイルシール溝を周設し、該オイルシール溝にブレーキオイルをシールするオイルシールを嵌着させるとともに、前記シリンダ孔の開口側に、シリンダ孔底部側壁と溝外周壁とを有するピストンシール溝を周設し、該ピストンシール溝に制動解除時に前記ピストンをロールバックさせるロールバック部を備えたピストンシールを嵌着させ、
前記ロールバック部の前記ピストンをロールバックさせるピストン戻し力を、前記オイルシールのシリンダ孔との摺動抵抗よりも大きく設定し、
前記ピストンシール溝は、前記シリンダ孔底部側壁の外周側に、シリンダ孔底部側に向けて凹となる凹溝が周設され、前記ピストンシールは、シリンダ孔底部側面に前記凹溝に挿入される突部が形成され、該突部は、液圧無負荷時には前記凹溝に不接触であり、液圧負荷時には前記凹溝に当接する
ことを特徴とする車両用ディスクブレーキ。
【請求項2】
前記ピストンシールは、前記ロールバック部よりもシリンダ孔開口側の内周部に、内周面をシリンダ孔開口側面に向けて漸次内周側に突出させて形成したダストシール部を設けたことを特徴とする請求項1記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項3】
前記ロールバック部と前記ダストシール部との間に周溝を設けたことを特徴とする請求項2記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項4】
前記ピストンシールは、シリンダ孔開口側の外周部に、前記溝外周壁に接触しない非接触部を設けていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項5】
前記ピストンシールは、前記ロールバック部の内周面に、ディスク軸方向に連通する切欠き部を設けていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項6】
前記ピストンシールは、前記ロールバック部に金属製の環状部材をモールドしていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。
【請求項7】
前記キャリパボディは、ダイカスト製法で形成されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の車両用ディスクブレーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ディスクブレーキに関し、詳しくは、制動解除時にピストンをロールバックさせるピストンシールを備えた車両用ディスクブレーキに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用ディスクブレーキでは、キャリパボディに形成したシリンダ孔の内部にピストンシール溝を周設し、該ピストンシール溝に、制動解除時にピストンをロールバックさせるピストンシールを嵌着し、該ピストンシールを介してピストンをシリンダ孔内に内挿したものがあるが、シリンダ孔の内部に形成するピストンシール溝は加工し難く、また、このピストンシール溝にピストンシールを嵌着させるのにも手間が掛かっていた。このため、ピストンにピストンシール溝を周設し、該ピストンシール溝にピストンシールを嵌着することによって、加工性や作業効率の向上を図ったものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−142316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の特許文献1のように、ピストンにピストンシールを取り付けると、シリンダ孔に対してピストンシールの緊迫力が働き難いことから、制動解除時にピストンを確実にロールバックさせることが難しかった。
【0005】
そこで本発明は、加工性や作業効率の向上を図りながら、制動解除時にピストンシールでピストンを確実にロールバックさせることができる車両用ディスクブレーキを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の車両用ディスクブレーキは、キャリパボディに形成したシリンダ孔に、摩擦パッドをディスクロータの側面に向けて押動するピストンを内挿した車両用ディスクブレーキにおいて、前記ピストンのシリンダ孔底部側の外周面にオイルシール溝を周設し、該オイルシール溝にブレーキオイルをシールするオイルシールを嵌着させるとともに、前記シリンダ孔の開口側に、シリンダ孔底部側壁と溝外周壁とを有するピストンシール溝を周設し、該ピストンシール溝に制動解除時に前記ピストンをロールバックさせるロールバック部を備えたピストンシールを嵌着させ、前記ロールバック部の前記ピストンをロールバックさせるピストン戻し力を、前記オイルシールのシリンダ孔との摺動抵抗よりも大きく設定し
、前記ピストンシール溝は、前記シリンダ孔底部側壁の外周側に、シリンダ孔底部側に向けて凹となる凹溝が周設され、前記ピストンシールは、シリンダ孔底部側面に前記凹溝に挿入される突部が形成され、該突部は、液圧無負荷時には前記凹溝に不接触であり、液圧負荷時には前記凹溝に当接することを特徴としている。
【0007】
また、前記ピストンシールは、前記ロールバック部よりもシリンダ孔開口側の内周部に、内周面をシリンダ孔開口側面に向けて漸次内周側に突出させて形成したダストシール部を設けていると好ましい。さらに、前記ロールバック部と前記ダストシール部との間に周溝を設けていると好適である。
【0008】
また、前記ピストンシールは、シリンダ孔開口側の外周部に、前記溝外周壁に接触しない非接触部を設けているとよい。さらに、前記ピストンシールは、前記ロールバック部の内周面に切欠き部を設けていると好ましい。また、前記ピストンシールは、前記ロールバック部に金属製の環状部材をモールドしていると好適である。
【0009】
さらに
、前記キャリパボディは、ダイカスト製法で形成されると好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車両用ディスクブレーキによれば、シリンダ孔の開口側にピストンシール溝が、ピストンにオイルシール溝がそれぞれ形成され、加工し易い場所にピストンシール溝とオイルシール溝とが設けられることから、ピストンシール溝やオイルシール溝を容易に加工することができる。また、ピストンシールやオイルシールを組み付けし易い場所にピストンシール溝やオイルシール溝が設けられ、ピストンシールやオイルシールの嵌着作業も容易に行うことができ、コストの低減化を図ることができる。さらに、ピストンシールのロールバック部のピストン戻し力を、オイルシールのシリンダ孔との摺動抵抗よりも大きく設定したことにより、制動解除時に、オイルシールに影響されることなくピストンを良好にロールバックさせることができる。
【0011】
また、ピストンシールのロールバック部よりもシリンダ孔開口側の内周部に、内周面をシリンダ孔開口側面に向けて漸次内周側に突出させて形成したダストシール部を形成したことにより、ピストンを戻すロールバック機能を備えたピストンシールに、シリンダ孔内への塵埃の侵入を防止するダストシール機能を付加することができ、部品点数の増加を防止できる。さらに、ロールバック部とダストシール部との間に周溝を設けたことにより、ロールバック部とダストシール部とをそれぞれ独立して作用させ易くなる。
【0012】
また、ピストンシールのシリンダ孔開口側の外周部に、溝外周壁に接触しない非接触部を設けたことにより、ピストンシールのシリンダ孔開口側の緊迫力を低くし、制動時にピストンを良好にスライドさせることができる。さらに、ピストンシールのシリンダ孔開口側にダストシール部を設けた場合では、ダストシール部の緊迫力を低くすることができ、ダストシール部に影響を受けることなく、ロールバック部の作用でピストンを良好にロールバックさせることができる。
【0013】
また、ピストンシールのロールバック部の内周面に、切欠き部を設けたことにより、ピストンシールを組み付ける際に、切欠き部から空気が抜け、ピストンシールの組み付け性の向上を図ることができる。さらに、ピストンシールのロールバック部に金属製の環状部材をモールドしたことにより、ロールバック部の剪断力と緊迫力とを上げることができ、制動解除時にピストンを良好にロールバックさせることができる。
【0014】
また、ピストンシール溝のシリンダ孔底部側壁の外周側に、シリンダ孔底部側に向けて凹となる凹溝を周設するとともに、ピストンシールのシリンダ孔底部側面に凹溝に挿入される突部を形成し、該突部は、液圧無負荷時には凹溝に不接触であり、液圧負荷時には凹溝に当接することにより、ピストンシールをピストンシール溝に良好に組み付けることができるとともに、液圧負荷時には突部が凹溝に接触してピストンシールの剪断力を上げることができ、制動解除時にピストンを良好にロールバックさせることができる。
【0015】
さらに、キャリパボディをダイカスト製法で形成したことにより、キャリパボディの仕上げ加工を簡略化でき、更なるコストの削減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1形態例を示す車両用ディスクブレーキの断面図である。
【
図2】同じく液圧無負荷時の車両用ディスクブレーキの要部断面図である。
【
図3】同じく液圧負荷時の車両用ディスクブレーキの要部断面図である。
【
図7】本発明の第1形態例を示すピストンシールの一部切欠き斜視図である。
【
図8】本発明の第2形態例を示す液圧無負荷時の車両用ディスクブレーキの要部断面図である。
【
図9】同じく液圧負荷時の車両用ディスクブレーキの要部断面図である。
【
図10】本発明の第3形態例を示すピストンシールの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1乃至
図7は本発明の車両用ディスクブレーキの第1形態例を示す図である。本形態例の車両用ディスクブレーキ1は、ディスクロータ2の一側部に配設される作用部3aとディスクロータ2の他側部に配設される反作用部3bと、これらをディスクロータ2の外側を跨いで連結するブリッジ部3cとを有するキャリパボディ3を、スライドピン(図示せず)を介して、車体に取り付けられたキャリパブラケット(図示せず)に固設している。
【0018】
前記ディスクロータ2の両側部に対向配置される一対の摩擦パッド4,4は、ディスクロータ2の側面に摺接するライニング4aと、キャリパボディ3に保持される裏板4bとで形成されており、ブリッジ部3cの内側で作用部3aと反作用部3bとの間にディスクロータ2を挟んでディスク軸方向へ移動可能に設けられている。
【0019】
キャリパボディ3は、ダイカスト製法で形成されたもので、作用部3aには、ディスクロータ側が開口した有底のシリンダ孔3dが設けられており、該シリンダ孔内に、コップ状のピストン5が、開口側をディスクロータ側に向けて、液密かつ移動可能に内挿されている。このピストン5は、ピストン5とシリンダ孔3d底部との間に画成された液圧室6に供給されるブレーキオイルにより、シリンダ孔3d内をディスクロータ方向へ移動して作用部側の摩擦パッド4をディスクロータ2の一側面に向けて押動する。また、反作用部3bには、反作用部側の摩擦パッド4をディスクロータ2の他側面に向けて押動する反力爪3eが設けられている。
【0020】
シリンダ孔3dの開口側には、ピストンシール溝3fが周設され、該ピストンシール溝3fに制動解除時にピストン5をロールバックさせるピストンシール7が嵌着される。また、ピストン5のシリンダ孔底部側の外周面には、オイルシール溝5aが周設され、該オイルシール溝5aにブレーキオイルをシールするオイルシール8が嵌着される。
【0021】
ピストンシール溝3fは、シリンダ軸CLに直交するシリンダ孔底部側壁3gと、シリンダ軸CLに平行な溝外周壁3hとを有し、シリンダ孔底部側壁3gの内周側には、シリンダ孔底部側に向けて漸次ピストン側に傾斜した切欠き3iが形成されている。
【0022】
ピストンシール7は、角シールとも呼ばれる断面が略四角形状を有するもので、シリンダ孔開口側の内周部に、内周面をシリンダ孔開口側面7fに向けて漸次内周側に突出させて形成したダストシール部7aを備え、該ダストシール部7aよりもシリンダ孔底部側の内周面に、周溝7bを介してロールバック部7cが形成されている。また、ロールバック部7cには、周溝7bとシリンダ孔底部側面7dとに亘って、3個の切欠き部7eが周方向に等間隔に設けられ、さらに、シリンダ孔開口側面7fの外周部は、外周面に向けて前記シリンダ孔底部側に傾斜し、溝外周壁3hに接触しない非接触部7gが形成されている。
【0023】
オイルシール溝5aは、シリンダ軸CLに直交するシリンダ孔底部側壁5b及びシリンダ孔開口部側壁5cと、シリンダ孔底部側壁5bとシリンダ孔開口部側壁5cとを繋ぎ、シリンダ軸CLに平行な溝内周壁5dとを有し、オイルシール8は、Oリングで形成されている。また、ピストンシール7のロールバック部7cがピストン5をロールバックさせるピストン戻し力は、オイルシール8がシリンダ孔3dとの摺接する際に発生する摺動抵抗よりも大きく設定され、その設定は、ピストンシール7やオイルシール8の材質や形状等によって設定される。
【0024】
上述のように形成された車両用ディスクブレーキ1では、
図2に示されるように、ピストン5のオイルシール溝5aにオイルシール8を嵌着し、シリンダ孔3dのピストンシール溝3fにピストンシール7を嵌着させた状態で、ピストン5をシリンダ孔3dに内挿する。ピストンシール7は、シリンダ孔底部側面7dの外周部をシリンダ孔底部側壁3gに当接させた状態でピストンシール溝3fに嵌着され、シリンダ孔底部側面7dの内周側とシリンダ孔底部側壁3gとの間には僅かな隙間E1が形成され、さらに、ダストシール部7aの内周面とロールバック部7cの内周面とはピストン5の外周面に密着した状態となる。また、オイルシール8はシリンダ孔3dの内周面に密着した状態となる。
【0025】
このように形成された車両用ディスクブレーキ1は、運転者の制動操作によってキャリパボディ3の液圧室6に昇圧したブレーキオイルが供給されると、ピストン5がシリンダ孔内をシリンダ孔開口部方向へ前進して作用部側の摩擦パッド4を押動し、該摩擦パッド4のライニング4aをディスクロータ2の一側面へ押圧する。次に、この反作用により、キャリパボディ3がスライドピンの案内で作用部3a方向へ移動し、反作用部側の摩擦パッド4をディスクロータ2の他側面へ押圧し、制動力が作用する。ピストン5がシリンダ孔開口部方向へ移動する際に、
図3に示されるように、ピストンシール7は、ダストシール部7aがピストン5の外周面に摺接するとともに、ロールバック部7cがピストン5とともにピストン移動方向へ変形する。また、オイルシール8は、シリンダ孔3dの内周面に密着した状態で摺動し、液圧室6のブレーキオイルをシールする。
【0026】
制動を解除し、液圧室6の圧力が低下すると、ピストンシール7が元の形状に戻る復元力によってピストン5が所定量ロールバックするとともに、キャリパボディ3が反作用部側にスライドして元位置に復帰し、双方の摩擦パッド4,4がディスクロータ2から離間する。この時、ピストン5の後退に伴って、ダストシール部7aの先端がピストン5の外周面に摺接することにより、ピストン5の先端側に付着した塵埃を効率よく排除し、シリンダ孔内への塵埃の侵入を防止する。
【0027】
本形態例は上述のように、シリンダ孔3dの開口側にピストンシール溝3fを、ピストン5にオイルシール溝5aをそれぞれ形成することから、加工し易い場所にピストンシール溝3fとオイルシール溝5aとが設けられ、加工性の向上を図ることができる。また、ピストンシール7は、ピストンシール溝3fがシリンダ孔3dの開口部に設けられていることから嵌着させ易く、オイルシール8も、オイルシール溝5aがピストン5に設けられていることから嵌着させ易いことから、作業効率の向上を図ることができる。
【0028】
また、ピストンシール7のロールバック部7cのピストン戻し力を、オイルシール8のシリンダ孔3dとの摺動抵抗よりも大きく設定していることから、制動解除時に、オイルシール8に影響されることなくピストン5を良好にロールバックさせることができる。
【0029】
さらに、ピストンシール7のロールバック部7cよりもシリンダ孔開口側の内周部にダストシール部7aを形成したことにより、ピストンシール7を用いてシリンダ孔内への塵埃の侵入を防止することができる。また、ダストシール部7aとロールバック部7cとの間には、周溝7bが設けられていることから、ダストシール部7aとロールバック部7cとをそれぞれ独立して作用させ易くなる。さらに、シリンダ孔開口側面7fの外周部に、溝外周壁3hに接触しない非接触部7gが形成されていることから、ダストシール部7aに掛かる緊迫力を小さく抑えることができ、ロールバック部7cによりピストン5をロールバックさせる際に、ダストシール部7aに影響される虞がない。
【0030】
また、ピストンシール7のロールバック部7cの内周面に、切欠き部7eを設けたことにより、ピストンシール7を組み付ける際に、切欠き部7eから空気が抜け、ピストンシール7の組み付け性の向上を図ることができる。
【0031】
さらに、本形態例のキャリパボディ3は、ダイカスト製法で形成されていることにより、キャリパボディ3の仕上げ加工を簡略化でき、加工コストの削減化を図ることができる。
【0032】
図8乃至
図10は、本発明の他の形態例を示すもので、第1形態例と同様の構成要素を示すものには、同一の符号をそれぞれ付して、その詳細な説明は省略する。
【0033】
図8及び
図9は、本発明の第2形態例を示す図で、本形態例のピストンシール溝3jは、シリンダ孔底部側壁3kの外周側に、シリンダ孔底部側に向けて凹となる凹溝3mが周設されている。
【0034】
ピストンシール9は、シリンダ孔底部側面9aに、凹溝3mに挿入される突部9bが形成されている。突部9bは、凹溝3mに挿入された状態で液圧無負荷時には、
図8に示されるように、凹溝3mの外周壁3nと内周壁3pとシリンダ孔底部側壁3qとの間にそれぞれ隙間が形成され、凹溝3mと不接触状態となっている。また、液圧負荷時には、
図9に示されるように、ロールバック部7cの変形に伴って、突部9bの内周面9cと、凹溝3mの内周壁3pとが当接した状態となる。
【0035】
本形態例は、上述のように、液圧無負荷時には、突部9bは凹溝3mに不接触状態となることから、ピストンシール9をピストンシール溝3jに良好に組み付けることができる。また、液圧負荷時には突部9bが凹溝3mに接触することにより、ピストンシール9のロールバック部7cの剪断力を上げることができ、制動解除時にピストン5を良好にロールバックさせることができる。
【0036】
図10は、本発明の第3形態例を示すもので、本形態例のピストンシール10は、シリンダ孔底部側に金属製の環状部材11をモールドしている。これにより、ピストンシール10のシリンダ孔底部側の剪断力と緊迫力とを上げることができ、制動解除時にピストンシール10のロールバック部7cで、ピストンを良好にロールバックさせることができる。
【0037】
なお、本発明のピストンシールは、上述の各形態例に限るものではなく、ダストシール部を備えていないものでもよく、また、シリンダ孔開口側の外周部に、溝外周壁に接触しない非接触部を備えていなくてもよい。さらに、ロールバック部の内周面に切欠き部を設けていなくてもよい。また、本発明のキャリパボディは、ダイカスト製法で形成されるものに限らない。さらに、本発明は、ピンスライド型のディスクブレーキに限らず、ピストン対向型のディスクブレーキにも適用することができる。
【符号の説明】
【0038】
1…車両用ディスクブレーキ、2…ディスクロータ、3…キャリパボディ、3a…作用部、3b…反作用部、3c…ブリッジ部、3d…シリンダ孔、3e…反力爪、3f…ピストンシール溝、3g…シリンダ孔底部側壁、3h…溝外周壁、3i…切欠き、3j…ピストンシール溝、3k…シリンダ孔底部側壁、3m…凹溝、3n…外周壁、3p…内周壁、3q…シリンダ孔底部側壁、4…摩擦パッド、4a…ライニング、4b…裏板、5…ピストン、5a…オイルシール溝、5b…シリンダ孔底部側壁、5c…シリンダ孔開口部側壁、5d…溝内周壁、6…液圧室、7…ピストンシール、7a…ダストシール部、7b…周溝、7c…ロールバック部、7d…シリンダ孔底部側面、7e…切欠き部、7f…シリンダ孔開口側面、7g…非接触部、8…オイルシール、9…ピストンシール、9a…シリンダ孔底部側面、9b…突部、9c…内周面、10…ピストンシール、11…環状部材