特許第6966315号(P6966315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6966315位相差フィルム、光学補償層付偏光板、画像表示装置、およびタッチパネル付き画像表示装置
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  • 特許6966315-位相差フィルム、光学補償層付偏光板、画像表示装置、およびタッチパネル付き画像表示装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966315
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】位相差フィルム、光学補償層付偏光板、画像表示装置、およびタッチパネル付き画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20211108BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20211108BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20211108BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20211108BHJP
   H05B 33/28 20060101ALI20211108BHJP
   G06F 3/041 20060101ALI20211108BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   G02B5/30
   H05B33/14 A
   H05B33/02
   H01L27/32
   H05B33/28
   G06F3/041 490
   G09F9/30 349Z
   G09F9/30 349E
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-242482(P2017-242482)
(22)【出願日】2017年12月19日
(65)【公開番号】特開2019-109377(P2019-109377A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2020年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122471
【弁理士】
【氏名又は名称】籾井 孝文
(74)【代理人】
【識別番号】100182822
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】高松 秀行
【審査官】 吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2018/030244(WO,A1)
【文献】 国際公開第2018/123725(WO,A1)
【文献】 特開2018−136483(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/164126(WO,A1)
【文献】 国際公開第2015/166991(WO,A1)
【文献】 特開2004−054266(JP,A)
【文献】 特許第6247373(JP,B1)
【文献】 国際公開第2017/104720(WO,A1)
【文献】 特開2017−049574(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
H01L 51/50
H05B 33/02
H01L 27/32
H05B 33/28
G06F 3/041
G09F 9/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
面内位相差が、100nm≦Re(550)≦160nm、Re(450)/Re(550)≦1、および、Re(650)/Re(550)≧1を満たし、
Nz係数が、0.4<Nz(550)<0.6、0≦|Nz(450)−Nz(550)|≦0.1、および、0≦|Nz(650)−Nz(550)|≦0.1を満たし、
光弾性係数が14×10−12Pa−1以下であり、
単層構造を有し、ポリカーボネート樹脂を含む、位相差フィルム:
ここで、Re(450)、Re(550)、およびRe(650)は、それぞれ、23℃における波長450nm、550nm、および650nmの光で測定した面内位相差を表し、Nz(450)、Nz(550)、およびNz(650)は、それぞれ、23℃における波長450nm、550nm、および650nmの光で測定したNz係数を表す。
【請求項2】
請求項1に記載の位相差フィルムにより構成される光学補償層と、偏光子とを有し、
前記光学補償層の遅相軸と前記偏光子の吸収軸とのなす角度が35°〜55°である、光学補償層付偏光板。
【請求項3】
前記光学補償層の前記偏光子とは反対側に導電層を有する、請求項2に記載の光学補償層付偏光板。
【請求項4】
請求項2に記載の光学補償層付偏光板を有する、画像表示装置。
【請求項5】
請求項3に記載の光学補償層付偏光板を有し、
前記導電層がタッチパネルセンサーとして機能する、タッチパネル付き画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位相差フィルム、光学補償層付偏光板、画像表示装置、およびタッチパネル付き画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、薄型ディスプレイの普及と共に、有機ELパネルを搭載した画像表示装置(有機EL表示装置)が提案されている。有機ELパネルは反射性の高い金属層を有しており、外光反射や背景の映り込み等の問題を生じやすい。そこで、光学補償層付偏光板(円偏光板)を視認側に設けることにより、これらの問題を防ぐことが知られている。また、液晶表示パネルの視認側に光学補償層付偏光板を設けることで、視野角を改善することが知られている。一般的な光学補償層付偏光板として、位相差フィルムと偏光子とを、その遅相軸と吸収軸とが用途に応じた所定の角度(例えば、45°)をなすように積層したものが知られている。しかし、従来の位相差フィルムは、光学補償層付偏光板に用いた場合に、斜め方向の色相に所望でない色付きが生じ得るという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3325560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、斜め方向の色相がニュートラルである画像表示装置を実現し得る位相差フィルム、並びに、そのような位相差フィルムを有する光学補償層付偏光板、画像表示装置、およびタッチパネル付き画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の位相差フィルムは、面内位相差が、100nm≦Re(550)≦160nm、Re(450)/Re(550)≦1、および、Re(650)/Re(550)≧1を満たし、Nz係数が、0.4<Nz(550)<0.6、0≦|Nz(450)−Nz(550)|≦0.1、および、0≦|Nz(650)−Nz(550)|≦0.1を満たし、光弾性係数が14×10−12Pa−1以下である。
1つの実施形態においては、上記位相差フィルムはポリカーボネート樹脂を含む。
本発明の別の局面によれば、光学補償層付偏光板が提供される。この光学補償層付偏光板は、上記位相差フィルムにより構成される光学補償層と、偏光子とを有し、上記光学補償層の遅相軸と上記偏光子の吸収軸とのなす角度が35°〜55°である。
1つの実施形態においては、上記光学補償層付偏光板は上記偏光子とは反対側に導電層を有する。
本発明のさらに別の局面によれば、画像表示装置が提供される。この画像表示装置は、上記光学補償層付偏光板を有する。
本発明のさらに別の局面によれば、タッチパネル付き画像表示装置が提供される。このタッチパネル付き画像表示装置は、上記光学補償層付偏光板を有し、上記導電層がタッチパネルセンサーとして機能する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、位相差フィルムの面内位相差が、100nm≦Re(550)≦160nm、Re(450)/Re(550)≦1、および、Re(650)/Re(550)≧1を満たし、Nz係数が、0.4<Nz(550)<0.6、0≦|Nz(450)−Nz(550)|≦0.1、および、0≦|Nz(650)−Nz(550)|≦0.1を満たすことにより、光学補償層付偏光板に用いた場合に斜め方向の色相がニュートラルである光学補償層付偏光板を実現し得る。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の1つの実施形態による光学補償層付偏光板の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した面内位相差である。Re(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx−ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定した厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定した厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、層(フィルム)の厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx−nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
【0010】
A.位相差フィルム
本発明の位相差フィルムは、面内位相差が、100nm≦Re(550)≦160nm、Re(450)/Re(550)≦1、および、Re(650)/Re(550)≧1を満たし、Nz係数が、0.4<Nz(550)<0.6、0≦|Nz(450)−Nz(550)|≦0.1、および、0≦|Nz(650)−Nz(550)|≦0.1を満たす。すなわち、上記位相差フィルムは、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示し、かつ、Nz係数の波長依存性が小さく、広い波長域の測定光に対して屈折率特性がnx>nz>nyの関係を示す。これにより、上記位相差フィルムは、光学補償層付偏光板に用いた場合に斜め方向の色相がニュートラルである光学補償層付偏光板を実現し得る。さらに、上記位相差フィルムは、光弾性係数が14×10−12Pa−1以下である。これにより、応力による位相差値の変化率が小さく、例えば、高温環境下における信頼性が高い。代表的には、位相差フィルムは、単層構造を有し、1枚のフィルムで構成されている。1つの実施形態においては、位相差フィルムは、ポリカーボネート樹脂を含む。位相差フィルムは、枚葉状であってもよいし、長尺状であってもよい。
【0011】
位相差フィルムの面内位相差Re(550)は、好ましくは120nm〜150nmであり、より好ましくは130nm〜145nmである。位相差フィルムの面内位相差が上記の範囲内であれば、位相差フィルムと偏光子とを、位相差フィルムの遅相軸方向と偏光子の吸収軸方向とのなす角度が約45°または約135°となるように積層して得られる光学補償層付偏光板は、優れた反射防止特性を実現し得る円偏光板として用いられ得る。
【0012】
位相差フィルムの面内位相差に関して、Re(450)/Re(550)の値は、好ましくは0.80〜0.90であり、より好ましくは0.80〜0.88であり、さらに好ましくは0.80〜0.86である。Re(650)/Re(550)の値は、好ましくは1.01〜1.20であり、より好ましくは1.02〜1.15であり、さらに好ましくは1.03〜1.10である。これにより、位相差板は、より優れた反射色相を達成することができる。これにより、位相差フィルムは、より優れた反射色相を達成することができる。
【0013】
位相差フィルムのNz係数は、上記のとおり、0.4<Nz(550)<0.6、0≦|Nz(450)−Nz(550)|≦0.1、および、0≦|Nz(650)−Nz(550)|≦0.1を満たす。Nz(550)は、好ましくは0.42〜0.58であり、より好ましくは0.45〜0.55であり、特に好ましくは約0.5である。Nz係数がこのような範囲であれば、広い波長域の測定光に対して屈折率特性がnx>nz>nyの関係を示し、これにより、斜め方向の色相がニュートラルであり、かつ、優れた視野角特性を有する光学補償層付偏光板を実現し得る。
【0014】
位相差フィルムの光弾性係数(の絶対値)は、上記のとおり、14×10−12Pa−1以下である。位相差フィルムの光弾性係数は、好ましくは1×10−12Pa−1〜14×10−12Pa−1であり、より好ましくは2×10−12Pa−1〜12×10−12Pa−1である。光弾性係数の絶対値がこのような範囲であれば、高温高湿環境下においても位相差値の変化を抑制することができ、優れた信頼性を実現することができる。また、小さい厚みでも十分な位相差を確保しつつ画像表示装置(特に、有機ELパネル)の屈曲性を維持することができ、さらに、屈曲時の応力による位相差変化(結果として、有機ELパネルの色変化)をより抑制することができる。
【0015】
位相差フィルムは、その吸水率が好ましくは3%以下であり、より好ましくは2.5%以下、さらに好ましくは2%以下である。このような吸水率を満足することにより、表示特性の経時変化を抑制することができる。なお、吸水率は、JIS K 7209に準拠して求めることができる。
【0016】
位相差フィルムは、好ましくは、水分およびガス(例えば酸素)に対するバリア性を有する。位相差フィルムの40℃、90%RH条件下での水蒸気透過率(透湿度)は、好ましくは1.0×10−1g/m/24hr未満である。バリア性の観点からは、透湿度の下限は低いほど好ましい。位相差フィルムの60℃、90%RH条件下でのガスバリア性は、好ましくは1.0×10−7g/m/24hr〜0.5g/m/24hrであり、より好ましくは1.0×10−7g/m/24hr〜0.1g/m/24hrである。透湿度およびガスバリア性がこのような範囲であれば、光学補償層付偏光板を有機ELパネルに貼り合わせた場合に、当該有機ELパネルを空気中の水分および酸素から良好に保護し得る。なお、透湿度およびガスバリア性はいずれも、JIS K 7126−1に準じて測定され得る。
【0017】
位相差フィルムの厚みは、好ましくは10μm〜150μmであり、より好ましくは10μm〜100μmであり、さらに好ましくは10μm〜70μmである。このような厚みであれば、上記所望の面内位相差およびNz係数が得られ得る。
【0018】
B.位相差フィルムの製造方法
上記位相差フィルムは、上記特性を実現し得る任意の適切な樹脂で形成される。上記位相差フィルムは、例えば、上記樹脂を任意の適切な溶媒に溶解または分散した塗布液を収縮性フィルムに塗布して塗膜を形成し、当該塗膜を収縮させることにより形成され得る。代表的には、塗膜の収縮は、収縮性フィルムと塗膜との積層体を加熱して収縮性フィルムを収縮させ、このような収縮性フィルムの収縮により塗膜を収縮させる。塗膜の収縮率は、好ましくは0.50〜0.99であり、より好ましくは0.60〜0.98であり、さらに好ましくは、0.70〜0.95である。加熱温度は、好ましくは130℃〜170℃であり、より好ましくは150℃〜160℃である。1つの実施形態においては、塗膜を収縮させる際に、当該収縮方向と直交する方向に積層体を延伸してもよい。この場合、積層体の延伸倍率は、好ましくは1.01倍〜3.0倍であり、より好ましくは1.05倍〜2.0倍であり、さらに好ましくは1.10倍〜1.50倍である。延伸に用いる延伸機としては、ロール延伸機、テンター延伸機、および二軸延伸機等の任意の適切な延伸機が採用され得る。以上のようにして、収縮性フィルム上に、複屈折層を形成することができる。得られた複屈折層を収縮性フィルムから剥離し、本発明の位相差フィルムとして用いてもよいし、複屈折層を収縮性フィルムから剥離することなく複屈折層(位相差フィルム)と収縮性フィルムとの積層体をそのまま用いてもよい。
【0019】
この位相差フィルムを形成する上記樹脂としては、例えば、ポリアリレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリフマル酸エステル、ノルボルネン樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂およびポリウレタンが挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いてもよく組み合わせて用いてもよい。好ましくは、ポリカーボネート樹脂である。上記樹脂の具体例は、例えば特開2015−212828号公報に熱可塑性樹脂として記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0020】
上記ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は、110℃以上180℃以下であることが好ましく、より好ましくは120℃以上165℃以下である。ガラス転移温度が過度に低いと耐熱性が悪くなる傾向にあり、フィルム成形後に寸法変化を起こす可能性があり、又、得られる有機ELパネルの画像品質を下げる場合がある。ガラス転移温度が過度に高いと、フィルム成形時の成形安定性が悪くなる場合があり、又フィルムの透明性を損なう場合がある。なお、ガラス転移温度は、JIS K 7121(1987)に準じて求められる。
【0021】
上記樹脂を溶解または分散する溶媒としては、上記樹脂組成物の種類に応じて、適宜決定することができ、クロロホルム、ジクロロメタン、トルエン、塩化メチレン、キシレン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等があげられる。溶媒は、一種類を単独で用いてもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0022】
収縮性フィルムの形成材料としては、特に制限されないが、後述の延伸処理に適していることから、熱可塑性樹脂が好ましい。具体的には、例えば、アクリル樹脂、ポリエチレンやポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート樹脂、ノルボルネン樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアクリル、アセテート樹脂、ポリアリレート、ポリビニルアルコール、およびこれらの混合物等があげられる。また、液晶ポリマー等も使用できる。収縮性フィルムは、好ましくは、1種または2種以上の上記形成材料から形成された一軸または二軸の延伸フィルムである。収縮性フィルムは、例えば、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、東洋紡績(株)製の「スペースクリーン」、グンゼ(株)製の「ファンシーラップ」、東レ(株)製の「トレファン」、東レ(株)製の「ルミラー」、JSR(株)製の「アートン」、日本ゼオン(株)製の「ゼオノア」、旭化成(株)製の「サンテック」等があげられる。
【0023】
収縮性フィルムの厚みは、特に制限されないが、例えば、10μm〜300μmの範囲であり、好ましくは、20μm〜200μmの範囲であり、より好ましくは、40μm〜150μmの範囲である。収縮性フィルムの表面には、複屈折層との密着性向上等を目的に、表面処理を施してもよい。表面処理としては、例えば、クロム酸処理、オゾン暴露、火炎暴露、高圧電撃暴露、イオン化放射線処理等の化学的または物理的処理があげられる。また、収縮性フィルム表面には、下塗り剤(例えば、粘着物質)の塗布によるプライマー層が形成されていてもよい。
【0024】
上記収縮性フィルム上に上記塗布液を塗布する方法としては、任意の適切な塗布方法が採用され得る。上記塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ロールコート法、フローコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法があげられる。また、塗布に際しては、必要に応じて、多層コーティングを採用することもできる。塗布液の厚みは、得られる位相差フィルムが所望の厚みとなるように適切に設定され得る。
【0025】
塗布後の塗布液を乾燥する方法としては、塗布液に応じて任意の適切な乾燥方法が採用され得る。乾燥方法は、例えば、自然乾燥、風を吹き付けての風乾、低温乾燥、加熱乾燥が挙げられ、これらを組み合わせた方法であってもよい。乾燥方法は、後述の延伸工程前の収縮性フィルムの収縮を抑制する観点から、好ましくは低温乾燥である。低温乾燥の乾燥温度は、好ましくは20℃〜100℃である。
【0026】
C.光学補償層付偏光板
図1は、本発明の1つの実施形態による光学補償層付偏光板の概略断面図である。本実施形態の光学補償層付偏光板100は、偏光子10と光学補償層30とを備える。光学補償層30は、上記A項に記載の位相差フィルムからなる。1つの実施形態においては、光学補償層の遅相軸と偏光子の吸収軸とのなす角度が35°〜55°である。実用的には、図示例のように、偏光子10の光学補償層30と反対側に保護層20が設けられ得る。また、光学補償層付偏光板は、偏光子10と光学補償層30との間に別の保護層(内側保護層とも称する)を備えてもよい。図示例においては、内側保護層は省略されている。この場合、光学補償層30が内側保護層としても機能し得る。このような構成であれば、光学補償層付偏光板のさらなる薄型化が実現され得る。さらに、必要に応じて、光学補償層30の偏光子10と反対側(すなわち、光学補償層30の外側)に導電層および基材をこの順に設けてもよい(いずれも図示せず)。基材は、導電層に密着積層されている。本明細書において「密着積層」とは、2つの層が接着層(例えば、接着剤層、粘着剤層)を介在することなく直接かつ固着して積層されていることをいう。導電層および基材は、代表的には、基材と導電層との積層体として光学補償層付偏光板100に導入され得る。導電層および基材をさらに設けることにより、光学補償層付偏光板100は、インナータッチパネル付き画像表示装置に好適に用いられ得る。
【0027】
C−1.偏光子
偏光子10としては、任意の適切な偏光子が採用され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体を用いて作製されてもよい。
【0028】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、ポリビニルアルコール(PVA)系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0029】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3〜7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0030】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離し、当該剥離面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012−73580号公報に記載されている。当該公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0031】
偏光子の厚みは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは1μm〜12μmであり、さらに好ましくは3μm〜12μmであり、特に好ましくは3μm〜8μmである。偏光子の厚みがこのような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0032】
偏光子は、好ましくは、波長380nm〜780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、上記のとおり43.0%〜46.0%であり、好ましくは44.5%〜46.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。
【0033】
C−2.保護層
保護層20は、偏光子の保護層として使用できる任意の適切なフィルムで形成される。当該フィルムの主成分となる材料の具体例としては、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂や、ポリエステル系、ポリビニルアルコール系、ポリカーボネート系、ポリアミド系、ポリイミド系、ポリエーテルスルホン系、ポリスルホン系、ポリスチレン系、ポリノルボルネン系、ポリオレフィン系、(メタ)アクリル系、アセテート系等の透明樹脂等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ウレタン系、(メタ)アクリルウレタン系、エポキシ系、シリコーン系等の熱硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂等も挙げられる。この他にも、例えば、シロキサン系ポリマー等のガラス質系ポリマーも挙げられる。また、特開2001−343529号公報(WO01/37007)に記載のポリマーフィルムも使用できる。このフィルムの材料としては、例えば、側鎖に置換または非置換のイミド基を有する熱可塑性樹脂と、側鎖に置換または非置換のフェニル基ならびにニトリル基を有する熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物が使用でき、例えば、イソブテンとN−メチルマレイミドからなる交互共重合体と、アクリロニトリル・スチレン共重合体とを有する樹脂組成物が挙げられる。当該ポリマーフィルムは、例えば、上記樹脂組成物の押出成形物であり得る。
【0034】
保護層20には、必要に応じて、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理等の表面処理が施されていてもよい。さらに/あるいは、保護層20には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、光学補償層付偏光板は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0035】
保護層20の厚みは、代表的には5mm以下であり、好ましくは1mm以下、より好ましくは1μm〜500μm、さらに好ましくは5μm〜150μmである。なお、表面処理が施されている場合、保護層の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0036】
偏光子10と光学補償層30との間に内側保護層が設けられる場合、当該内側保護層は、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm〜10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が−10nm〜+10nmであることをいう。内側保護層は、光学的に等方性である限り、任意の適切な材料で構成され得る。当該材料は、例えば、保護層20に関して上記した材料から適切に選択され得る。
【0037】
内側保護層の厚みは、好ましくは5μm〜200μm、より好ましくは10μm〜100μm、さらに好ましくは15μm〜95μmである。
【0038】
C−3.導電層または基材付導電層
導電層は、必要に応じてパターン化され得る。パターン化によって、導通部と絶縁部とが形成され得る。結果として、電極が形成され得る。電極は、タッチパネルへの接触を感知するタッチセンサー電極として機能し得る。パターンの形状はタッチパネル(例えば、静電容量方式タッチパネル)として良好に動作するパターンが好ましい。具体例としては、特表2011−511357号公報、特開2010−164938号公報、特開2008−310550号公報、特表2003−511799号公報、特表2010−541109号公報に記載のパターンが挙げられる。
【0039】
導電層は、任意の適切な成膜方法(例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法、イオンプレーティング法、スプレー法等)により、任意の適切な基材上に、金属酸化物膜を成膜して形成され得る。成膜後、必要に応じて加熱処理(例えば、100℃〜200℃)を行ってもよい。加熱処理を行うことにより、非晶質膜が結晶化し得る。金属酸化物としては、例えば、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、インジウム−スズ複合酸化物、スズ−アンチモン複合酸化物、亜鉛−アルミニウム複合酸化物、インジウム−亜鉛複合酸化物が挙げられる。インジウム酸化物には2価金属イオンまたは4価金属イオンがドープされていてもよい。好ましくはインジウム系複合酸化物であり、より好ましくはインジウム−スズ複合酸化物(ITO)である。インジウム系複合酸化物は、可視光領域(380nm〜780nm)で高い透過率(例えば、80%以上)を有し、かつ、単位面積当たりの表面抵抗値が低いという特徴を有している。
【0040】
導電層が金属酸化物を含む場合、該導電層の厚みは、好ましくは50nm以下であり、より好ましくは35nm以下である。導電層の厚みの下限は、好ましくは10nmである。
【0041】
導電層の表面抵抗値は、好ましくは300Ω/□以下であり、より好ましくは150Ω/□以下であり、さらに好ましくは100Ω/□以下である。
【0042】
導電層は、上記基材から光学補償層に転写されて導電層単独で光学補償層付偏光板の構成層とされてもよく、基材との積層体(基材付導電層)として光学補償層に積層されてもよい。代表的には、上記のとおり、導電層および基材は、基材付導電層として光学補償層付偏光板に導入され得る。
【0043】
基材を構成する材料としては、任意の適切な樹脂が挙げられる。好ましくは、透明性に優れた樹脂である。具体例としては、環状オレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂が挙げられる。
【0044】
好ましくは、上記基材は光学的に等方性であり、したがって、導電層は等方性基材付導電層として光学補償層付偏光板に用いられ得る。光学的に等方性の基材(等方性基材)を構成する材料としては、例えば、ノルボルネン系樹脂やオレフィン系樹脂などの共役系を有さない樹脂を主骨格としている材料、ラクトン環やグルタルイミド環などの環状構造をアクリル系樹脂の主鎖中に有する材料などが挙げられる。このような材料を用いると、等方性基材を形成した際に、分子鎖の配向に伴う位相差の発現を小さく抑えることができる。
【0045】
基材の厚みは、好ましくは10μm〜200μmであり、より好ましくは20μm〜60μmである。
【0046】
C−4.その他
本発明の光学補償層付偏光板を構成する各層の積層には、任意の適切な粘着剤層または接着剤層が用いられる。粘着剤層は、代表的にはアクリル系粘着剤で形成される。接着剤層は、代表的にはポリビニルアルコール系接着剤で形成される。
【0047】
図示しないが、光学補償層付偏光板100の光学補償層30側には、粘着剤層が設けられていてもよい。粘着剤層が予め設けられていることにより、他の光学部材(例えば、有機ELセル)へ容易に貼り合わせることができる。なお、この粘着剤層の表面には、使用に供されるまで、剥離フィルムが貼り合わされていることが好ましい。
【0048】
D.画像表示装置
本発明の画像表示装置は、表示セルと、該表示セルの視認側に上記C項に記載の光学補償層付偏光板と、を備える。光学補償層付偏光板は、光学補償層が表示セル側となるように(偏光子が視認側となるように)積層されている。導電層を有する光学補償層付偏光板を備える画像表示装置は、導電層がタッチパネルセンサーとして機能することにより、表示セル(例えば、液晶セル、有機ELセル)と偏光子との間にタッチセンサーが組み込まれた、いわゆるインナータッチパネル付き画像表示装置を構成し得る。
【実施例】
【0049】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。各特性の測定方法は以下の通りである。なお、特に明記しない限り、実施例および比較例における「部」および「%」は重量基準である。
(1)厚み
ダイヤルゲージ(PEACOCK社製、製品名「DG−205 type pds−2」)を用いて測定した。
(2)位相差
各位相差フィルムから50mm×50mmのサンプルを切り出して測定サンプルとし、Axometrics社製のAxoscanを用いて測定した。測定波長は450nm、550nm、650nm、測定温度は23℃であった。
また、アタゴ社製のアッベ屈折率計を用いて平均屈折率を測定し、得られた位相差値から屈折率nx、ny、nz、およびNz係数を算出した。
【0050】
[実施例1]
1.ポリカーボネート樹脂の作製
撹拌翼および100℃に制御された還流冷却器を具備した縦型反応器2器からなるバッチ重合装置を用いて重合を行った。ビス[9−(2−フェノキシカルボニルエチル)フルオレン−9−イル]メタン(化合物3)29.60質量部(0.046mol)、ISB 29.21質量部(0.200mol)、SPG 42.28質量部(0.139mol)、DPC 63.77質量部(0.298mol)、酢酸カルシウム1水和物1.19×10−2質量部(6.78×10−5mol)を仕込んだ。反応器内を減圧窒素置換した後、熱媒で加温を行い、内温が100℃になった時点で撹拌を開始した。昇温開始40分後に内温を220℃に到達させ、この温度を保持するように制御すると同時に減圧を開始し、220℃に到達してから90分で13.3kPaにした。重合反応とともに副生するフェノール蒸気を100℃の還流冷却器に導き、フェノール蒸気中に若干量含まれるモノマー成分を反応器に戻し、凝縮しないフェノール蒸気は45℃の凝縮器に導いて回収した。第1反応器に窒素を導入して一旦大気圧まで復圧させた後、第1反応器内のオリゴマー化された反応液を第2反応器に移した。次いで、第2反応器内の昇温および減圧を開始して、50分で内温240℃、圧力0.2kPaにした。その後、所定の攪拌動力となるまで重合を進行させた。所定動力に到達した時点で反応器に窒素を導入して復圧し、生成したポリエステルカーボネートを水中に押し出し、ストランドをカッティングしてペレットを得た。
得られたポリカーボネート樹脂のガラス転移温度は130℃であった。
2.位相差フィルムの作製
得られたポリカーボネート樹脂を塩化メチレンに溶解させ、25重量%の樹脂溶液を得た。収縮性フィルム(PPの二軸延伸フィルム、400mm×300mm、厚み60μm)上に、上記樹脂溶液を、乾燥後の厚みが60μmとなるようにコーターにより塗工し、30℃で5分間、80℃で5分間乾燥することにより、収縮性フィルムと塗膜との積層体を作製した。
得られた積層体を、長さ150mm、幅120mmに切り出し、ラボストレッチャーKARO IV(Bruckner社製)を用いて、温度134℃で幅方向に収縮率0.78倍で収縮し、長手方向に延伸倍率1.3倍で延伸することにより、位相差フィルム(厚み:60μm)を得た。
得られた位相差フィルムのRe(450)は116nm、Re(550)は136nm、Re(650)は144nmであり、Nz(450)は0.54、Nz(550)は0.59、Nz(650)は0.62であった。
3.導電層の作製
上記位相差フィルム表面に、インジウム−スズ複合酸化物からなる透明導電層(厚み20nm)をスパッタリングにより形成し、位相差フィルム/導電層の積層体を作製した。具体的な手順は以下のとおりである:ArおよびO(流量比はAr:O=99.9:0.1)を導入した真空雰囲気下(0.40Pa)で、10重量%の酸化スズと90重量%の酸化インジウムとの焼結体をターゲットとして用いて、フィルム温度を130℃とし、水平磁場を100mTとするRF重畳DCマグネトロンスパッタリング法(放電電圧150V、RF周波数13.56MHz、DC電力に対するRF電力の比(RF電力/DC電力)は0.8)を用いた。得られた透明導電層を150℃温風オーブンにて加熱して結晶転化処理を行った。
4.偏光子の作製
厚み30μmのポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルム(クラレ製、製品名「PE3000」)の長尺ロールを、ロール延伸機により長手方向に5.9倍になるように長手方向に一軸延伸しながら同時に膨潤、染色、架橋、洗浄処理を施し、最後に乾燥処理を施すことにより厚み12μmの偏光子を作製した。
具体的には、膨潤処理は20℃の純水で処理しながら2.2倍に延伸した。次いで、染色処理は得られる偏光子の単体透過率が45.0%になるようにヨウ素濃度が調整されたヨウ素とヨウ化カリウムの重量比が1:7である30℃の水溶液中において処理しながら1.4倍に延伸した。更に、架橋処理は、2段階の架橋処理を採用し、1段階目の架橋処理は40℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.2倍に延伸した。1段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は5.0重量%で、ヨウ化カリウム含有量は3.0重量%とした。2段階目の架橋処理は65℃のホウ酸とヨウ化カリウムを溶解した水溶液において処理しながら1.6倍に延伸した。2段階目の架橋処理の水溶液のホウ酸含有量は4.3重量%で、ヨウ化カリウム含有量は5.0重量%とした。また、洗浄処理は、20℃のヨウ化カリウム水溶液で処理した。洗浄処理の水溶液のヨウ化カリウム含有量は2.6重量%とした。最後に、乾燥処理は70℃で5分間乾燥させて偏光子を得た。
5.光学補償層付偏光板の作製
上記偏光子の片側に、ポリビニルアルコール系接着剤を介してトリアセチルセルロースフィルム(厚み40μm、コニカミノルタ社製、商品名「KC4UYW」)を貼り合わせた。偏光子のもう片側に、ポリビニルアルコール系接着剤を介して上記位相差フィルムを貼り合わせた。ここで、位相差フィルムの遅相軸が偏光子の吸収軸に対して反時計回りに45°となるように貼り合わせた。
このようにして、保護層/偏光子/位相差フィルム(光学補償層)/導電層の積層構造を有する光学補償層付偏光板を得た。
6.画像表示装置代替品の作製
有機EL表示装置の代替品を以下のようにして作製した。ガラス板に、アルミ蒸着フィルム(東レフィルム加工社製、商品名「DMS蒸着X−42」、厚み50μm)を粘着剤で貼り合せ、有機EL表示装置の代替品とした。得られた光学補償層付偏光板の導電層側にアクリル系粘着剤で粘着剤層を形成し、寸法50mm×50mmに切り出し、有機EL表示装置代替品に実装した。
【0051】
[実施例2]
位相差フィルムの作製工程において、幅方向の収縮率を0.75倍とし、長手方向の延伸倍率を1.35倍としたこと以外は実施例1の方法と同様に位相差フィルム(厚み:60μm)を得た。
得られた位相差フィルムのRe(450)は119nm、Re(550)は139nm、Re(650)は147nmであり、Nz(450)は0.47、Nz(550)は0.52、Nz(650)は0.54であった。
上記位相差フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして光学補償層付偏光板および有機EL表示装置代替品を得た。
【0052】
[実施例3]
位相差フィルムの作製工程において、幅方向の収縮率を0.72倍とし、長手方向の延伸倍率を1.40倍としたこと以外は実施例1の方法と同様に位相差フィルム(厚み:60μm)を得た。
得られた位相差フィルムのRe(450)は120nm、Re(550)は141nm、Re(650)は150nmであり、Nz(450)は0.37、Nz(550)は0.42、Nz(650)は0.44であった。
上記位相差フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして光学補償層付偏光板および有機EL表示装置代替品を得た。
【0053】
[比較例1]
ポリカーボネート樹脂の作製工程において、9,9−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(BHEPF)、イソソルビド(ISB)、ジエチレングリコール(DEG)、ジフェニルカーボネート(DPC)、および酢酸マグネシウム4水和物を、BHEPF/ISB/DEG/DPC/酢酸マグネシウム=0.348/0.490/0.162/1.005/1.00×10−5のモル比率で用いたこと、および、位相差フィルムの作製工程において、延伸温度を155℃とし、幅方向の収縮率を0.8倍とし、長手方向の延伸倍率を1.3倍としたこと以外は実施例1の方法と同様に位相差フィルム(厚み:60μm)を得た。
得られた位相差フィルムのRe(450)は125nm、Re(550)は140nm、Re(650)は146nmであり、Nz(450)は0.47、Nz(550)は0.50、Nz(650)は0.52であった。
上記位相差フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして光学補償層付偏光板および有機EL表示装置代替品を得た。
【0054】
[比較例2]
1.位相差フィルムの作製
実施例1と同様にして作製したポリカーボネート樹脂を、単軸押出機(いすず化工機社製、スクリュー径25mm、シリンダー設定温度:220℃)、Tダイ(幅300mm、設定温度:220℃)、チルロール(設定温度:120〜130℃)および巻取機を備えたフィルム製膜装置を用いて、長さ3m、幅300mm、厚み120μmのポリカーボネート樹脂フィルムを作製した。このポリカーボネート樹脂フィルムを長さ150mm、幅120mmに切り出し、ラボストレッチャーKARO IV(Bruckner社製)を用いて、温度134℃、倍率2.8倍で固定端一軸延伸を行い、位相差フィルム(厚み:47μm)を得た。
得られた位相差フィルムのRe(450)は119nm、Re(550)は139nm、Re(650)は147nmであり、Nz(450)は1.08、Nz(550)は1.13、Nz(650)は1.15であった。
2.液晶固化層の作製
下記化学式(I)(式中の数字65および35はモノマーユニットのモル%を示し、便宜的にブロックポリマー体で表している:重量平均分子量5000)で示される側鎖型液晶ポリマー20重量部、ネマチック液晶相を示す重合性液晶(BASF社製:商品名PaliocolorLC242)80重量部および光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ社製:商品名イルガキュア907)5重量部をシクロペンタノン200重量部に溶解して液晶塗工液を調製した。そして、基材フィルム(ノルボルネン系樹脂フィルム:日本ゼオン(株)製、商品名「ゼオネックス」)に当該塗工液をバーコーターにより塗工した後、80℃で4分間加熱乾燥することによって液晶を配向させた。この液晶層に紫外線を照射し、液晶層を硬化させることにより、基材上に第2の位相差層となる液晶固化層(厚み:1μm)を形成した。この層のRe(550)は0nm、Rth(550)は−100nmであり(nx:1.5326、ny:1.5326、nz:1.6550)、nz>nx=nyの屈折率特性を示した。
【化1】
3.光学補償層付偏光板の作製
上記位相差フィルムに、アクリル系粘着剤を介して上記液晶固化層を貼り合わせた後、上記基材フィルムを除去して、位相差フィルムに液晶固化層が転写された積層体(厚み:48μm)を得た。
得られた積層体のRe(450)は119nm、Re(550)は139nm、Re(650)は147nmであり、Nz(450)は0.31、Nz(550)は0.52、Nz(650)は0.60であった。
上記積層体の液晶固化層側の表面に、実施例1と同様にして導電層を形成し、位相差フィルム/液晶固化層/導電層の積層体を作製した。
実施例1と同様にして得られた偏光子に、上記積層体の位相差フィルム側を貼り合わせたこと以外は実施例1と同様にして、保護層/偏光子/位相差フィルム/液晶固化層/導電層の積層構造を有する光学補償層付偏光板を得た。
4.画像表示装置代替品の作製
有機EL表示装置の代替品を以下のようにして作製した。ガラス板に、アルミ蒸着フィルム(東レフィルム加工社製、商品名「DMS蒸着X−42」、厚み50μm)を粘着剤で貼り合せ、有機EL表示装置の代替品とした。得られた光学補償層付偏光板の導電層側にアクリル系粘着剤で粘着剤層を形成し、寸法50mm×50mmに切り出し、有機EL表示装置代替品に実装した。
【0055】
[比較例3]
比較例2と同様にして作製した位相差フィルムを用いたこと以外は、実施例1と同様にして光学補償層付偏光板および有機EL表示装置代替品を得た。
【0056】
<評価>
実施例および比較例の位相差フィルムおよび有機EL表示装置代替品について、下記の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(1)位相差フィルムの光弾性係数
収縮性フィルムを剥離して得られた塗膜、または未延伸フィルムを幅20mm、長さ100mmの長方形状に切り出して試料を作製した。この試料を日本分光(株)製エリプソメータM−150により波長550nmの光で測定し、光弾性係数を得た。
(2)位相差変化率
粘着剤を介して位相差フィルムをガラスに貼り合わせることによりサンプルを作製し、前記位相差の測定と同様の方法で位相差を測定した。測定後のサンプルを85℃の加熱オーブンに180時間投入後、サンプルを取り出し、再度位相差を測定し、Re(550)の変化率を求めた。
(3)反射率及び反射色相
有機EL表示装置代替品を試料とし、コニカミノルタ(株)製分光測色計CM−2600dを用いて正面反射率と正面反射色相とを測定した。正面反射率はSCI方式で測定した。正面反射色相は、a色度図上における無彩色からの距離Δaを評価した。
(4)斜め方向の反射率及び反射色相
有機EL表示装置代替品を試料とし、コニカミノルタ(株)製DMS 505を用いて斜め方向の反射率と反射色相を測定した。斜め方向の反射率は極角60°、方位角0°、45°、90°および135°の4点の視感反射率Yの平均値を評価した。斜め方向の反射色相は、a色度図上における、進相軸を基準に60°傾けて測定したときの斜め方向の反射色相と遅相軸を基準に60°傾けて測定したときの反射色相の2点間距離Δaを評価した。
【0057】
【表1】
【0058】
実施例の位相差フィルムは位相差変化率が小さく、かつ、実施例の位相差フィルムを用いた有機EL表示装置代替品は反射色相が6.0を下回り良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の位相差フィルムを有する光学補償層付偏光板は、有機ELパネルなどの画像表示装置に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0060】
10 偏光子
20 保護層
30 光学補償層(位相差フィルム)
100 光学補償層付偏光板
図1