特許第6966345号(P6966345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966345
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】配管継手部の封止方法および封止構造
(51)【国際特許分類】
   F16L 57/00 20060101AFI20211108BHJP
   F16L 58/10 20060101ALI20211108BHJP
   F16L 55/175 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   F16L57/00 C
   F16L58/10
   F16L55/175
【請求項の数】9
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-20639(P2018-20639)
(22)【出願日】2018年2月8日
(65)【公開番号】特開2019-138345(P2019-138345A)
(43)【公開日】2019年8月22日
【審査請求日】2020年11月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】391037814
【氏名又は名称】株式会社東京エネシス
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】大浦 仁
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−175420(JP,A)
【文献】 特開2014−105211(JP,A)
【文献】 特開2016−109215(JP,A)
【文献】 特開2009−171849(JP,A)
【文献】 特開平03−282092(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 51/00 − 55/48
F16L 57/00 − 58/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の継手部を封止する方法において、
上記配管を通すとともに上記継手部を囲うようにして型枠を設ける工程と、
樹脂エマルジョンからなる主剤とイソシアネートを含む硬化剤とを撹拌混合して流動性を有する混合剤を得る工程と、
上記混合剤を大気圧環境で上記型枠に流し込む工程と、
上記混合剤のゲル化により、上記継手部を覆うゲル状の封止体を得る工程と、
を備え、
上記混合剤を上記型枠に流し込む工程及び/又はこの流し込み工程の直後において、バイブレータを上記混合剤中に没入して上記混合剤に振動を付与することを特徴とする継手部封止方法。
【請求項2】
上記型枠が発泡樹脂からなることを特徴とする請求項1に記載の継手部封止方法。
【請求項3】
上記主剤が、石油樹脂とアクリル樹脂をポリビニルアルコールによって水に乳化させることにより得られることを特徴とする請求項1または2に記載の継手部止水方法。
【請求項4】
上記主剤における樹脂固形分が47.5〜49w%、水分が51〜52.5w%であることを特徴とする請求項3に記載の継手部封止方法。
【請求項5】
上記硬化剤は、上記主剤を緩やかに硬化させる硬化剤Aと、この硬化剤Aより短時間で上記主剤を硬化させることが可能な硬化剤Bとを含み、
最初に主剤に硬化剤Aを添加して撹拌混合し、次に硬化剤Bを添加して撹拌混合することにより、上記混合剤を得ることを特徴とする請求項4に記載の継手部封止方法。
【請求項6】
上記混合剤を上記型枠に流し込む工程において、上記バイブレータを上記混合剤中に没入させた状態で上記型枠に当てることにより、上記型枠に振動を付与することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の継手部封止方法。
【請求項7】
上記混合剤の流し込み工程の直後に、少なくとも上記継手部の上方の領域において、上記バイブレータを上記混合剤に没入させながら平行移動させることにより、上記混合剤に振動を付与することを特徴とする請求項記載の継手部封止方法。
【請求項8】
配管の継手部を封止する方法において、
上記配管を通すとともに上記継手部を囲うようにして型枠を設ける工程と、
樹脂エマルジョンからなる主剤とイソシアネートを含む硬化剤とを撹拌混合して流動性を有する混合剤を得る工程と、
上記混合剤を大気圧環境で上記型枠に流し込む工程と、
上記混合剤のゲル化により、上記継手部を覆うゲル状の封止体を得る工程と、
を備え、
上記封止体の完成後、上記型枠の上端開口を発泡樹脂製の蓋で被うことを特徴とする継手部封止方法。
【請求項9】
上記封止体および蓋の外面には、アルミ層と樹脂層を含む粘着テープが貼られており、上記蓋で被う前に上記封止体の上面を樹脂フィルムで覆うことを特徴とする請求項に記載の継手部封止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の継手部を封止する方法および構造に関する。
【背景技術】
【0002】
配管同士の継手部や、配管とバルブ等の機器との継手部では、フランジ間に介在されたガスケットにより、継手部からの水漏れを防いでいる。ガスケットの劣化や地震によるフランジ締結の緩み等でガスケットの止水機能が低下することを想定して、保守点検が行われるが、より一層厳重な水漏れ対策が求められる場合がある。このような場合、継手部にパテ状の止水材を塗り込んで、継手部全体を覆うのが一般的である。
【0003】
特許文献1で提案された封止構造では、高濃度の澱粉溶液をゲル状にした止水材を継手部に塗り込んで団子状にして継手部を覆い、この止水材を透明ケースで囲っている。この止水材は漏水により膨張することができ、漏水防止機能を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−296789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した2つの封止構造では、止水材を継手部に隙間無く塗り込む作業に熟練に要し、未熟な作業者によると継手部と封止材の密着性を確保できず、確実な漏水防止機能を発揮できないことがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、配管の継手部を封止する方法において、
上記配管を通すとともに上記継手部を囲うようにして型枠を設ける工程と、
樹脂エマルジョンからなる主剤とイソシアネートを含む硬化剤とを撹拌混合して流動性を有する混合剤を得る工程と、
上記混合剤を大気圧環境で上記型枠に流し込む工程と、
上記混合剤のゲル化により、上記継手部を覆うゲル状の封止体を得る工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
上記方法によれば、主剤と硬化剤を撹拌混合して得られた流動性を有する混合剤を、大気圧環境で型枠に流し込むので、従来のような熟練を要する塗り込み作業を省くことができ、作業性良く容易に高い封止機能を有する封止体を作ることができる。また、ゲル状の封止体は弾性を有しているので、配管や継手部の熱膨張、熱収縮に追随でき、裂けたり破損することがないので、封止機能を長期にわたって維持できる。また、万一継手部から漏れがあっても封止体が弾性変形して受け止めることができ、外部への漏れを回避できる。
【0008】
好ましくは、上記型枠が発泡樹脂からなる。
上記方法によれば、配管と継手部の形状やサイズに応じて簡単かつ安価に型枠を作ることができる。また、型枠が断熱の役割を果たすので、混合剤を安定してゲル化させることができる。
【0009】
好ましくは、上記主剤が、石油樹脂とアクリル樹脂をポリビニルアルコールによって水に乳化させることにより得られる。
より好ましくは、上記主剤における樹脂固形分が47.5〜49w%、水分が51〜52.5w%である。
上記方法によれば、主剤の樹脂固形分が49w%以下であるので、混合剤の流動性を高くすることができ、継手部の外部形状が複雑であっても、混合剤を継手部外面に確実に到達させることができる。また、主剤の樹脂固形分が47.5w%以上であるので、最終製品である封止体の適度な弾性が得られ、良好な封止機能を確保することができる。
【0010】
好ましくは、上記硬化剤は、上記主剤を緩やかに硬化させる硬化剤Aと、この硬化剤Aより短時間で上記主剤を硬化させることが可能な硬化剤Bとを含み、最初に主剤に硬化剤Aを添加して撹拌混合し、次に硬化剤Bを添加して撹拌混合することにより、上記混合剤を得る。
上記方法によれば、混合剤を安定してゲル化させることができ、しかもゲル化の時間を短縮することができる。
【0011】
好ましくは、上記混合剤を上記型枠に流し込む工程及び/又はこの流し込み工程の直後において、バイブレータを上記混合剤中に没入して上記混合剤に振動を付与する。
上記方法によれば、混合剤の流し込みの際に先に流し込んだ部分と後に流し込んだ部分の間に境界が生じても、混合剤に振動を付与することにより上記境界を解消することができ、最終製品である封止体に裂け目等が生じるのを回避することができる。また、撹拌混合の際に混入した空気や、ゲル化に伴い発生するガスの混合剤からの排出を促進することができ、ゲル化を均一に行うことができる。
【0012】
より好ましくは、上記混合剤を上記型枠に流し込む工程において、上記バイブレータを上記混合剤中に没入させた状態で上記型枠に当てることにより、上記型枠に振動を付与する。
上記方法によれば、型枠に振動を付与することにより、混合剤に広範囲に振動を付与することができる。
【0013】
より好ましくは、上記混合剤の流し込み工程の直後に、少なくとも上記継手部の上方の領域において、上記バイブレータを上記混合剤に没入させながら平行移動させることにより、上記混合剤に振動を付与する。
上記方法によれば、最終製品である封止体において、継手部の上方領域での裂け目を確実に防止できる。
【0014】
好ましくは、上記封止体の完成後、上記型枠の上端開口を発泡樹脂製の蓋で被う。この方法によれば、型枠と蓋により、ゲル状の封止体を外部と断熱した状態で保護することができ、封止体の凍結等を防止することができる。
より好ましくは、上記封止体および蓋の外面には、アルミ層と樹脂層を含む粘着テープが貼られており、上記蓋で被う前に上記封止体の上面を樹脂フィルムで覆う。この方法によれば、粘着テープで紫外線をカットでき、樹脂フィルムで水分の蒸発を防ぐことができるので、封止体の耐用年数を長くすることができる。
【0015】
本発明の他の態様は、配管の継手部を封止する構造であって、
ア.上記配管を通し上記継手部を囲うようにして設けられた発泡樹脂製のケースと、
イ.上記ケース内において、上記ケースと上記継手部および上記配管との間に充填された、弾性および柔軟性を有するゲル状の封止体と、
を備えたことを特徴とする。
好ましくは、上記封止体が、石油樹脂と、アクリル樹脂と、ポリウレタンを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、簡単な作業で継手部を確実かつ長期にわたって封止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態をなす配管継手部の封止方法において、配管継手部を囲むようにして型枠を設置した状態を示す縦断面図である。
図2】上記型枠の設置工程を配管の軸線方向から見た図であり、(A)は型枠本体と型枠補助片とが分離された状態、(B)は型枠本体に型枠補助片を嵌めることにより上記型枠が完成した状態をそれぞれ示す。
図3】上記封止方法において、主剤と硬化剤を撹拌混合して混合剤を作るための撹拌装置を示す縦断面図である。
図4図1の要部縦断面図であり、(A)は上記型枠に上記混合剤を流し込こんだ状態、(B)は上記混合剤のゲル化が完了した状態、(C)は上記型枠の上端開口に蓋をして封止構造が完成した状態をそれぞれ示す。
図5】本発明の第2実施形態に係る、配管とバルブの継手部の封止構造を示す縦断面図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る、垂直配管の継手部の封止構造を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の第1実施形態に係る配管継手部の封止方法を、図1図4を参照しながら説明する。
配管構造
図1に示すように、本実施形態の配管構造は、略水平に延びる配管1,2と、これら配管1,2を接続する継手部3とを有している。継手部3は、配管1,2の端部に形成されたフランジ1a,2aを、ガスケット5を介在させてボルトとナットの締結手段6で連結することにより構成されている。配管1,2はサポート7を介して床や地面に支持されている。
【0019】
型枠の設置
図1に示すように、配管1,2を通し継手部3を囲うようにして、上端が開口した発泡スチロール製(発泡樹脂製)の型枠10を設置する。図1図2に示すように、型枠10は、型枠本体11と、2枚の型枠補助片15とを有している。
【0020】
型枠本体11は、断面J字形状の2枚の湾曲板12の下端を接合して断面U字形の湾曲板を形成し、この断面U字形の湾曲板における両端(配管1,2の軸方向の両端)の内周に2枚の平板形状の側板13を接合することにより、予め組み立てられている。上記接合にはビスおよびコーキング材等を用いる。
【0021】
上記型枠本体11の2枚の側板13はそれぞれ切欠14を有している。この切欠14は半円弧の凹形状をなす下縁14aと、この下縁14aの両端から垂直に直線状に延びる2つの側縁14bを有しており、上端が開放されている。側縁14bには側縁14bに沿って断面V字形の溝14xが形成されている。型枠本体11の外面全域には、複数のアルミ層と複数の樹脂層からなる粘着シート(図示しない)が貼り付けられている。この粘着シートにより型枠本体11全体の機械的強度が高められている。
【0022】
上記型枠本体11は、切欠14の半円弧形状の下縁14aを配管1,2の外周面の下半分に当てようにして設置される。型枠本体11は、台8により床や地面に支持される。この設置状態で、型枠本体11には配管1,2が通り継手3が収容されている。
【0023】
上記型枠補助片15は、型枠本体11の切欠14と同じ幅を有し、その下縁15aが半円弧の凹形状をなし、その側縁15bは直線状をなして垂直に延びている。側縁15bには側縁15bに沿って断面V字形の突条15xが形成されている。型枠補助片15の外面には、型枠本体11と同様に粘着シートが貼られている。
【0024】
図2(A)に示すように、2枚の型枠補助片15を下方へ移動させることにより、図2(B)に示すように、型枠補助片15は型枠本体11の切欠14を塞ぐようにして型枠本体11に組み付けられる。この組み付け状態において、型枠補助片11の下縁15aが配管1,2の外周面の上半分に当接し、突条15xが切欠14の溝14xに挿入されている。
【0025】
型枠補助片15の組み付け後に、粘着テープを配管1,2の外周と型枠本体11と型枠補助片15を跨ぐように巻き、コーキング材を施すことにより、型枠10が完成する。なお、これらの処理は、後述する養生後に実施してもよい。
【0026】
上述のように、型枠10は発泡スチロール製であるので、配管1,2や継手部3の種々の形状やサイズに対応して簡単に作ることができる。また、別体をなす型枠本体11の切欠14の下縁14aと型枠補助片15の下縁15aで配管1,2を囲うことにより、簡単に型枠10に配管1,2を通すことができる。
【0027】
次に、継手部3の封止に用いられる原料である、樹脂エマルジョンからなる主剤と、イソシアネートを含む2種の硬化剤A,Bについて、詳述する。
主剤
本実施形態の主剤は、石油樹脂(主にC9系)とアクリル・ポバール(アクリル樹脂)をポリビニルアルコールによって水に乳化させることにより得られる。より具体的には、下記原料を混合することにより得られる。
石油樹脂: 38〜43wt%
アクリル・ポバールのエマルジョン: 10〜13wt%
ポリビニルアルコール: 2〜4wt%
水: 42〜49wt%
ポリビニルアルコールは、約1μmの石油樹脂微粒子と約0.1μmのアクリル・ポバールの微粒子を囲む保護コロイドを形成している。
主剤における樹脂固形分の合計を47.5〜49w%とし、水分の合計を51〜52.5w%とするのが好ましい。樹脂固形分を49w%以下とするのは、後述するように型枠10に流し込む際に高い流動性を確保し、継手部3の複雑な形状に入り込ませるためである。47.5%以上とするのは、後述のゲル化により得られる封止体に所定以上の弾性係数を付与し、十分な止水機能を発揮させるためである。
【0028】
硬化剤A
硬化剤Aは下記の組成を有している。
ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン縮合物: 52〜63wt%
γ−ブチロラクトン: 18〜22wt%
2,4−トリレンジイソシアネート: 9.5〜12.0wt%
2,6−トリレンジイソシアネート: 2,5〜3.0wt%
硬化剤Aは主剤を硬化させる速度が遅く、単独で硬化剤Aを用いる場合には、後述するゲル状の封止体が完成するのに4日ほど費やす。
【0029】
硬化剤B
硬化剤Bは下記の組成を有している。
ポリイソシアネートを主材料とするウレタンプレポリマー: 50〜70w%
ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI):5〜15w%
有機酸エステル
硬化剤Bは単独で用いることはできない。硬化剤Bは硬化剤Aに比べて硬化速度が著しく早く、単独で主剤Aに混合すると、爆発的に硬化が進み、ゲル状の封止体を得ることができない。硬化剤Bは硬化剤Aと協働して主剤のゲル化を促進する役割を担う。
【0030】
撹拌装置
図3に示すように、撹拌装置20は主たる構成要素として、水槽21と、撹拌槽22と、撹拌機25と、を備えている。
水槽21内には支持台23が設置されている。支持台23は環状の鍔23aを有している。支持台23には水槽21内の水を撹拌するためのポンプ24が設置されている。
【0031】
支持台23の鍔23aに撹拌槽22の胴部に形成された環状の鍔22aが載ることにより、撹拌槽22は水槽21の底部から浮いた状態で支持台23に着脱可能に支持されている。撹拌槽22の内周には、周方向に間隔をおいて複数の凸部22bが形成されている。
【0032】
撹拌機25は、円盤形状のベース25aと、ベース25aの上面中央に設置されたモータ25bと、ベース25aの中央部を貫通して下方に延びる回転シャフト25cと、回転シャフト25cの下部に設けられたアジテータ25dとを有している。
【0033】
撹拌槽22の上端には、スタンド26が着脱可能に載置されている。スタンド26の中央部には軸受部26aが形成されており、この軸受部26aに、上記撹拌機25の回転シャフト25cが回転可能かつ軸方向(上下方向)に移動可能に挿入されている。
【0034】
撹拌槽22内の原料は、回転するアジテータ25dと撹拌槽22の内周から突出する複数の凸部22bの協働により、撹拌混合される。この際、撹拌機25のベース25aを持って撹拌機25を上下動させることにより、撹拌混合効果を高めることができる。
【0035】
主剤と硬化剤の撹拌混合
水槽21に撹拌槽22をセットし、撹拌槽22に撹拌機25をセットする。最初に主剤を撹拌槽22に投入し、撹拌機25を駆動して、主剤を予備撹拌する。撹拌時間は約10秒である。
次に、硬化剤Aと希釈水をヘラ等を用いて別容器内で混ぜ、撹拌槽22に投入しながら約30秒撹拌を行い、主剤と希釈された硬化剤Aを混合する。
次に、硬化剤Bを撹拌槽22に投入しながら45秒ほど撹拌を行い、硬化剤Bを主剤及び硬化剤Aと混合する。
【0036】
混合割合
上記混合割合は、主剤10重量部に対して、硬化剤Aが4.5〜5.5重量部、より好ましくは5重量部、希釈水が2重量部、硬化剤Bが2.7〜3.3重量部、より好ましくは3重量部である。
【0037】
撹拌時の温度管理
撹拌時の原料の温度は、5〜20℃の範囲を維持するように管理される。5℃未満、20℃超では、ゲル化が安定して行えないからである。環境温度(撹拌前の主剤、硬化剤A,Bの温度)が上記温度範囲から外れている場合には、水槽21に水を満たし、ポンプ24を作動させて水を撹拌させる。この状態で、水温が5℃未満の場合には水槽21内に加熱器(図示しない)を入れて水を加熱し、20℃超の場合には、水槽21に冷却器を入れて水を冷却する。これにより、撹拌槽22内の原料の温度を上記温度範囲になるように管理する。
【0038】
混合剤の流し込み
上記撹拌混合が終了した直後に、図4(A)に示すように、混合により得られた混合剤30を型枠10に流し込む。混合剤30は高い流動性を有しているので大気圧環境でも継手部3の複雑な形状に沿って隙間なく充填される。また、高圧化で流し込まないので、発泡スチロール製の型枠10は破壊されずに混合剤30を受け止めることができる。
本実施形態では、混合剤30の充填レベルは、継手部3の上端より高く、型枠10の上端より低くしている。型枠10の上端より低くするのは、後述するように蓋の装着性を良くするためであるが、混合剤30を型枠10の上端まで充填してもよい。
【0039】
振動付与
上記混合剤30の流し込みの途中から、混合剤30に振動を与える。具体的には、棒状のバイブレータ40(図4(A)において想像線で示す)を混合剤30中に没入させ、型枠10の内周に当てて振動を付与する。混合剤30はバイブレータ40から直接振動を受けるとともに、型枠10の振動により広範囲に振動を受ける。
【0040】
上記振動付与は、型枠10の周方向に均等に行うのが好ましい。本実施形態のように型枠10の平面形状が矩形をなし、その内側面と継手部3との間隔が狭く、4隅部にバイブレータ40を収容するスペースがある場合には、バイブレータ40を周方向に沿って順に4隅部に移動させ、これら隅部で型枠10に振動を付与する。ただし、バイブレータ40は、隅部から他の隅部へ移動する際に、混合剤30から抜き取らず、下端部を混合剤30に没入させたまま移動させる。空気混入を回避するためである。
本実施形態では、バイブレータ40は型枠10の内周を一周する際に、4隅部毎に6秒程度静止して振動を付与し、これを2周分行う。
上記振動付与は、混合剤30の流し込みが完了した時点とほぼ同時期に終了する。上記振動付与を流し込み完了後まで行ってもよい。
【0041】
混合剤30の流し込みが完了した後、バイブレータ40を混合剤30に浅く没入させた状態で、混合剤30の上面において少なくとも継手部3の上方領域、好ましくは全域をジグザグに平行移動して約25秒、混合剤30に振動を付与する。
【0042】
混合剤30の流し込みの際に先に流し込んだ部分と後に流し込んだ部分の間に境界が生じ、後述するゲル化後にこの境界に沿って裂け目が生じることがある。しかし、本実施形態では混合剤30に振動を付与して境界を解消するので、ゲル化後に裂け目が生じるのを回避することができる。
また振動付与により、撹拌混合の際に混入した空気や、ゲル化反応に伴い発生するガスの混合剤30からの排出を促進することができ、ゲル化を均一に安定して行うことができる。
【0043】
養生
振動付与後に、2日〜3日程度養生を行う。養生工程では、混合剤30の上に布を被せさらに通気性の紫外線カットカバーを被せる。混合剤30の上面に浮いた水分は布で吸い取られ、紫外線カットカバーから蒸気となって放出される。紫外線カバーで紫外線をカットすることにより、混合剤30の劣化を防止できる。型枠10が発泡スチロール製であり、外部環境と断熱することができるので、安定した養生を行うことができる。
【0044】
混合剤は、主剤と硬化剤を混合させた時からゲル化が始まり、型材10への流し込み工程および養生工程において、ゲル化が進行する。簡単に説明すると、主剤中の水分と硬化剤A,Bのイソシアネートが反応してポリウレタンが生成され、この水分吸収に伴いポリビニルアルコールの保護コロイドが欠落し、石油樹脂およびアクリル・ポバールの微粒子が融着する。その結果、図4(B)に示すゲル化した封止体50が完成する。この封止体50は、石油樹脂、アクリル・ポバール、ポリウレタンを含むゲル状の物体であり、適度の弾性および柔軟性を有し、指で押すと弾性変形する。
【0045】
仕上げ
上記養生後、図4(B)に示すように封止体50の上面に樹脂フィルムを被せてから、封止体50の上面と型枠10の上端部により形成された浅い凹部に、グラスウール等の保温材52を敷き、さらに図4(C)に示すように発泡スチロール製の蓋54を被せる。蓋54の下面には環状の低い凸部54aが形成されており、この凸部54aを型枠10の上端内周に嵌めることにより、安定して蓋54を装着できる。
蓋54の上面には前述した粘着シートがその周縁からはみ出すようにして貼られており、この粘着シートのはみ出し部を型枠10の上端部外周に貼り付けることにより、仕上げ工程が完了する。
【0046】
完成された封止構造
上記のようにして封止構造が完成する。継手部3のガスケット5の止水機能が万一劣化しても、継手部3に密着したゲル状の封止体50により、継手部3からの漏水を阻止することができる。封止体50は弾性を有しているので、継手部3および配管1,2の熱膨張・収縮に追随することができ、良好な止水性能を長期にわたって確保することができる。また、仮に継手部3からの漏水があっても、封止体50の弾性によりこれを受け入れて外部に漏れるのを防ぐことができる。
【0047】
上記型枠10と蓋54は、そのままケースSとして用いることができ、封止体50を保持する。ケースSの断熱作用により、封止体50が凍結しひいては継手を通る流体の凍結するのを、防止できる。また、封止体50の上面を覆う樹脂フィルムにより封止体50の水分の蒸発を防ぐことができ、型枠10と蓋54の外面を覆うアルミ層と樹脂層の粘着テープにより、紫外線を遮断することができるので、封止体50の劣化を抑制してその耐用年数を長くすることができる。
【0048】
継手部の保守点検
継手部3を例えば数年毎に定期的に保守点検する場合、封止構造は簡単に継手部3から除去できる。すなわち、粘着テープを切断して、蓋54を取り除き、型枠10を封止体50から取り外す。ゲル状の封止体50は、刃物で切込みを入れることにより、人手で裂くことができ、簡単に継手部3から取り除くことができる。
【0049】
次に、本発明の他の実施形態について図を参照しながら説明する。これら実施形態において、第1実施形態に対応する構成部には同番号を付してその詳細な説明を省略する。
図5に示す第2実施形態では、配管1,2間にバルブ4が介在されている。バルブ4は、本体部4aと、本体部4aから上方に突出した操作部4bと、本体部4aから水平に突出した部位の先端に形成された一対のフランジ4c、4dと、を有している。
【0050】
バルブ4の一方のフランジ4cと配管1のフランジ1aが、ガスケット5を介して連結されることにより、継手部3Aが構成されている。バルブ4の他方のフランジ4dと配管2のフランジ2aがガスケット5を介して連結されることにより、継手部3Bが構成されている。
【0051】
型枠10は、第1実施形態と同様にして形成されるが、バルブ4の本体部4aと2つの継手部3A、3Bを収容する大きさを有し、平面形状が長方形をなしている。バルブ4の操作部4bは型枠10の上端から上方に突出している。
【0052】
主剤と硬化剤A,Bの撹拌混合により得られた流動性を有する混合剤を、型枠10に流し込み、そのゲル化により封止体50を得ることは第1実施形態と同様である。これにより、バルブ4の本体部4aと継手部3A,3Bが、封止体50に覆われるが、バルブ4の操作部4bは封止体50で覆われていない。
【0053】
養生後に、二分割された蓋54A,54Bが、型枠10の上端開口の長手方向両端部に被せられる。バルブ4の操作部4bが配置される型枠10の上端開口の長手方向中間部は、ヒンジ55により開閉可能に型枠10に支持された開閉蓋54C(蓋)により開閉されるようになっている。開閉蓋54Cは板金製であるが、発泡スチロールの内張りにより断熱されている。バルブ4を開閉操作する際には、開閉蓋54Cを開いて操作部4bを露出させ、この操作部4bにハンドルを掛けて回す。
【0054】
図6に示す第3実施形態では、配管1,2が縦に(垂直に)配置されている。発泡スチロール製の型枠10Dは、2枚の平板形状をなす半円板形状の底板17と、2枚の半円弧形状をなす湾曲板18とを接合することにより得られる。2枚の底板17は、それぞれ配管2に嵌る半円弧状の切欠17aを有するとともに互いに接合されて、型枠10Dの底部を構成している。2枚の湾曲板18は互いに接合されることにより、配管1,2と同心の円筒形状をなす型枠10Dの胴部を構成している。胴部の下端は底部に接合されている。
2枚の蓋56は、底板17と同形状をなしており、配管1に嵌る半円弧状の切欠56aを有している。
【0055】
第3実施形態では、混合剤への振動付与の際、バイブレータを円筒形状をなす型枠10Dの胴部内周に当接させながら、周方向に沿って連続的に移動させることにより、型枠10Dに振動を付与するのが好ましい。
【0056】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、配管の継手部を封止する構造に適用することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,2 配管
3,3A,3B 継手部
10,10D 型枠
30 混合剤
50 封止体
54,54A,54B 蓋
54C 開閉蓋(蓋)
56 蓋
S ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6