(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下の実施の形態においては便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細、補足説明などの関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数など(個数、数値、量、範囲などを含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(要素ステップなども含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合などを除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素などの形状、位置関係などに言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【0013】
以下、実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施の形態では、特に必要なとき以外は同一または同様な部分の説明を原則として繰り返さない。
【0014】
また、断面図および平面図において、各部位の大きさは実デバイスと対応するものではなく、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。また、断面図が平面図と対応する場合においても、図面を分かりやすくするため、特定の部位を相対的に大きく表示する場合がある。
【0015】
また、実施の形態で用いる図面においては、図面を見易くするためにハッチングを省略する場合もある。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、携帯機器などに用いられる二次電池BAの保護回路である。二次電池BAは、例えばリチウムイオン電池である。この二次電池BAに対して、本実施の形態の半導体装置である半導体チップCHPと、制御部CPとが接続されている。
【0017】
半導体チップCHPは、MISFET群1QAおよびMISFET群2QAを有する。MISFET群1QAおよびMISFET群2QAは、互いに直列に接続され、それぞれ双方向スイッチの一部を構成している。MISFET群1QAは、互いに並列接続された複数のn型のMISFET1Qによって構成され、MISFET群2QAは、互いに並列接続された複数のn型のMISFET2Qによって構成されている。
【0018】
また、本実施の形態において、MISFET群1QAのゲート、ドレインまたはソースと表現した時は、それらは、複数のn型のMISFET1Qの各々のゲート電極GE1、ドレイン領域NEまたはソース領域NSを意味する。このような表現については、MISFET群2QAでも同様である。
【0019】
MISFET群1QAのドレインと、MISFET群2QAのドレインとは、共通のドレイン電極DEによって、互いに接続されている。MISFET群1QAのソースは、ソース配線S1を介して、保護回路の外部電源EPSのマイナス(−)端子に電気的に接続されている。MISFET群2QAのソースは、ソース配線S2を介して、二次電池BAのマイナス電極に電気的に接続されている。二次電池BAのプラス電極は、保護回路の外部電源EPSのプラス(+)端子に電気的に接続されている。MISFET群1QAのゲートおよびMISFET群2QAのゲートは、それぞれゲート配線G1およびゲート配線G2を介して、制御部CPに電気的に接続されている。
【0020】
この保護回路において二次電池BAを充電する場合、まず、制御部CPからの信号によって、半導体チップCHPでは、MISFET群1QAおよびMISFET群2QAの両方がオン状態となる。そして、
図1に示されるように、MISFET群2QAからMISFET群1QAに向かう方向に電流I1が流れることで、二次電池BAが充電される。充電が完了すると、制御部CPは、充電が完了したことを検知して、MISFET群1QAがオフ状態になるように制御する。これにより回路が遮断されて、二次電池BAへの過充電が防止される。
【0021】
また、この保護回路において二次電池BAを放電する場合は、
図1に示されるように、充電時と逆の方向(MISFET群1QAからMISFET群2QAに向かう方向)に電流I2が流れることで、二次電池BAが放電される。放電が完了すると、制御部CPは、放電が完了したことを検知して、MISFET群2QAがオフ状態になるように制御する。これにより回路が遮断されて、二次電池BAへの過放電が防止される。
【0022】
図2は、本実施の形態の半導体装置である半導体チップCHPの平面レイアウト図である。
【0023】
図2に示されるように、半導体チップCHPの表面側の大部分は、ゲート配線G1、ゲート配線G2、ソース配線S1およびソース配線S2によって覆われている。ゲート配線G1およびゲート配線G2は、半導体チップCHPの外周に沿って、X方向に延在している。ソース配線S1およびソース配線S2は、平面視において、それぞれ櫛歯状に形成されており、半導体チップCHPの中央部では、各々の櫛歯が互いにかみ合うように配置されている。
【0024】
すなわち、ソース配線S1およびソース配線S2の平面形状は、Y方向に延在し、且つ、互いにX方向で隣接する複数の第1箇所と、X方向に延在し、且つ、複数の第1箇所と連結する第2箇所と、を有した形状である。本実施の形態では、このような形状を櫛歯状と称し、「各々の櫛歯が互いにかみ合う」とは、ソース配線S1の第1箇所と、ソース配線S2の第1箇所とが、X方向において、交互に配置されている状態を表している。
【0025】
また、
図2では図示はしていないが、ゲート配線G1、ゲート配線G2、ソース配線S1およびソース配線S2の各々の上面には、保護膜PFが形成されており、保護膜PFの一部には複数の開口部が設けられている。ゲート配線G1、ゲート配線G2、ソース配線S1およびソース配線S2のうち、これらの開口部から露出した領域は、ワイヤボンディングまたは銅板(クリップ)などの外部接続用端子を介して、配線基板または他の半導体チップと電気的に接続される。
【0026】
図3は、
図2に破線で示されている領域1Aを拡大した図であり、半導体チップCHPの要部平面図である。なお、
図3は平面図であるが、図面を見易くするため、ゲート電極GE1、ゲート電極GE2およびプラグPG1〜PG3にハッチングを付している。また、ゲート電極GE1およびゲート電極GE2と、その上層との配置関係を示すため、ゲート配線G2、ソース配線S1およびソース配線S2を破線で示している。
【0027】
図3に示される外周領域ORは、主に、ゲート電極GE2が、ゲート配線G2と接続するための領域であり、ゲート電極GE1およびゲート電極GE2の上方に、ゲート配線G2が形成されている。セル領域CRは、主に、複数のMISFET1Qおよび複数のMISFET2Qが、実際にトランジスタとして動作する領域であり、ソース配線S1およびソース配線S2の下方には、それぞれ、複数のMISFET1Qおよび複数のMISFET2Qが形成されている。
【0028】
セル領域CRにおいて、複数のゲート電極GE1および複数のゲート電極GE2は、Y方向に延在している。図示はしていないが、各ゲート電極GE1の間および各ゲート電極GE2の間には、それぞれ、ソース領域NSなどが形成されている。MISFET1Qのソース領域NSは、プラグPG1を介して、ソース配線S1に電気的に接続され、MISFET2Qのソース領域NSは、プラグPG2を介して、ソース配線S2に電気的に接続されている。
【0029】
外周領域ORでは、ゲート電極GE2が、プラグPG3を介して、ゲート配線G2に電気的に接続されている。なお、本実施の形態では図示を省略しているが、
図2に示されるゲート配線G1の下部も、
図3を反転させたようなレイアウトになっており、ゲート電極GE1は、他のプラグを介して、ゲート配線G1と電気的に接続されている。
【0030】
図4は、
図3に示されるA−A線に沿った断面図であり、トレンチゲート構造のパワートランジスタとして、MISFET群1QAを構成する複数のMISFET1Q、および、MISFET群2QAを構成する複数のMISFET2Qが示されている。
図4では、MISFET群1QAとなる領域、および、MISFET群2QAとなる領域も示している。
【0031】
本実施の形態で使用される半導体基板SBは、n型の不純物が導入されたシリコン基板である。半導体基板SBの上面(第1面)上には、n型の半導体層NEが形成されており、半導体基板SBの裏面(第2面)には、金属膜からなるドレイン電極DEが形成されている。半導体基板SBおよび半導体層NEは、それぞれ、パワートランジスタのドレイン領域の一部を構成し、ドレイン電極DEと電気的に接続されている。
図4に示されるように、ドレイン電極DEは、MISFET群1QAおよびMISFET群2QAで共通の電極として使用されている。
【0032】
半導体層NEの表面側には、p型のチャネル領域(不純物領域)PCが形成されており、チャネル領域PC内には、n型のソース領域(不純物領域)NS、および、p型のボディ領域(不純物領域)PBが形成されている。ソース領域NSおよびボディ領域PBは、それぞれ、後述のプラグPG1またはプラグPG2を介して、ソース電極S1またはソース電極S2と電気的に接続されている。ボディ領域PBは、プラグPG1またはプラグPG2がチャネル領域PCと接続する際に、接触抵抗を低減させる目的で設けられた領域である。このため、ボディ領域PBの不純物濃度は、チャネル領域PCの不純物濃度よりも高い。
【0033】
また、ソース領域NSおよびボディ領域PBの表面に、プラグPG1またはプラグPG2との接触抵抗を更に低減させる目的で、シリサイド層を形成してもよい。シリサイド層は、例えばチタンシリサイド(TiSi
2)、コバルトシリサイド(CoSi
2)またはニッケルシリサイド(NiSi)からなる。本実施の形態では、このようなシリサイド層の図示を省略している。
【0034】
半導体層NEには、ゲート電極GE1およびゲート電極GE2の形成に用いられるトレンチTRが形成されている。トレンチTRは、ソース領域NSおよびチャネル領域PCを貫通し、半導体層NEに達するように形成されている。すなわち、トレンチTRの底部は、半導体層NE内に位置している。また、トレンチTRは、2つのソース領域NSの間に位置するように形成されている。
【0035】
トレンチTRは、トレンチ上部TRaと、トレンチ上部TRaの下方の領域であるトレンチ下部TRbとに分けられる。トレンチ上部TRaは、ソース領域NS、チャネル領域PCおよび半導体層NEと接しており、実効的にトランジスタ動作が行われる領域である。
【0036】
トレンチ上部TRaには、相対的に膜厚の薄いゲート絶縁膜GIが形成されており、トレンチ下部TRbには、相対的に膜厚の厚いフィールド絶縁膜GFが形成されている。ゲート絶縁膜GIおよびフィールド絶縁膜GFは、例えば酸化シリコン膜である。ゲート絶縁膜GIの膜厚は、例えば20nm程度であり、フィールド絶縁膜GFの膜厚は、例えば100nm程度である。また、
図4の横方向(
図3のX方向)において、トレンチ下部TRbの幅は、トレンチ上部TRaの幅よりも広い。
【0037】
MISFET1QおよびMISFET2Qが実際にトランジスタとして動作するのは、薄いゲート絶縁膜GIが形成されているトレンチ上部TRaであり、厚いフィールド絶縁膜GFが形成されているトレンチ下部TRbは、主に、電界緩和の目的で設けられている。
【0038】
また、MISFET1QのトレンチTRのうち、MISFET2Qに最も近いトレンチTR、および、MISFET2QのトレンチTRのうち、MISFET1Qに最も近いトレンチTRでは、トレンチ上部TRaにゲート絶縁膜GIが形成されておらず、トレンチ下部TRbだけでなく、トレンチ上部TRaにもフィールド絶縁膜GFが形成されている。言い換えれば、MISFET群1QAの最外に位置するトレンチTR、および、MISFET群2QAの最外に位置するトレンチTRでは、トレンチ上部TRaおよびトレンチ下部TRbにフィールド絶縁膜GFが形成されている。このような構成は、本実施の形態の主な特徴であるが、これについては後で詳細に説明する。
【0039】
MISFET群1QAのトレンチTRの内部には、ゲート絶縁膜GIまたはフィールド絶縁膜GFを介して、ゲート電極GE1が埋め込まれており、MISFET群2QAのトレンチTRの内部には、ゲート絶縁膜GIまたはフィールド絶縁膜GFを介して、ゲート電極GE2が埋め込まれている。ゲート電極GE1およびゲート電極GE2は、例えばn型の不純物が導入された多結晶シリコン膜である。
【0040】
ソース領域NS上には、ゲート絶縁膜GIの一部およびフィールド絶縁膜GFの一部が形成されている。ゲート絶縁膜GIの一部、フィールド絶縁膜GFの一部、ゲート電極GE1およびゲート電極GE2の各々の上面には、例えば酸化シリコンからなる層間絶縁膜ILが形成されている。そして、層間絶縁膜IL内には、コンタクトホールが形成されている。コンタクトホールは、層間絶縁膜ILと、ゲート絶縁膜GIまたはフィールド絶縁膜GFと、を貫通し、ソース領域NSおよびボディ領域PBに達するように形成されている。このコンタクトホール内に、例えばタングステンからなる導電性膜が埋め込まれることで、プラグPG1およびプラグPG2が形成されている。なお、ここでは図示を省略しているが、プラグPG3も、同様の構成によって形成されている。
【0041】
なお、トレンチTR外に形成されているゲート絶縁膜GIの一部およびフィールド絶縁膜GFの一部は、除去されていても構わない。
【0042】
層間絶縁膜IL上には、ソース配線S1およびソース配線S2が形成されている。ソース配線S1はプラグPG1と接続し、ソース配線S2はプラグPG2と接続している。
【0043】
ソース配線S1およびソース配線S2の各々の上面には、ポリイミドなどの樹脂、または、窒化シリコンからなる保護膜PFが形成されている。上述のように、保護膜PFの一部には複数の開口部が設けられており、これらの開口部から露出した領域が、ワイヤボンディングまたは銅板(クリップ)などの外部接続用端子と接続されるための領域となる。
【0044】
なお、本実施の形態では、1層の配線構造としているが、2層以上の配線構造としてもよい。例えば、1層目の配線上に、更に層間絶縁膜およびプラグを形成し、2層目の配線に、ソース配線S1およびソース配線S2を形成してもよい。
【0045】
<検討例1の説明>
本実施の形態の主な特徴を説明する前に、
図21を用いて、本願発明者が検討した検討例1の半導体装置を説明する。
【0046】
検討例1の半導体装置は、本実施の形態の半導体装置と同様に、トレンチゲート構造の複数のMISFET1Qおよび複数のMISFET2Qを有する。しかし、検討例1の半導体装置は、本実施の形態の半導体装置と異なり、MISFET群1QAの最外に位置するトレンチTR、および、MISFET群2QAの最外に位置するトレンチTRでは、トレンチ上部TRaに、相対的に膜厚の薄いゲート絶縁膜GIが形成されている。
【0047】
双方向スイッチの動作時には、ソース配線S1と接続するMISFET群1QA、または、ソース配線S2と接続するMISFET群2QAのうち、印加される電位が高い側のMISFET群において、空乏層が伸びる。
図21では、MISFET群1QAにおいて、二点鎖線で示す空乏層DLが伸びている状態を示している。ここで、この空乏層DLの終端にかかるMISFET群1QAの最外に位置するトレンチTRに、高い電界がかかることにより、膜厚の薄いゲート絶縁膜GIの絶縁破壊が発生する問題がある。従って、検討例1の半導体装置の信頼性が低下する問題がある。
【0048】
<本実施の形態の半導体装置の主な特徴について>
本実施の形態の半導体装置では、上述の検討例1と異なり、MISFET群1QAの最外に位置するトレンチTR、および、MISFET群2QAの最外に位置するトレンチTRでは、トレンチ上部TRaおよびトレンチ下部TRbに、膜厚の厚いフィールド絶縁膜GFが形成されている。言い換えれば、MISFET1QのトレンチTRのうち、MISFET2Qに最も近いトレンチTR、および、MISFET2QのトレンチTRのうち、MISFET1Qに最も近いトレンチTRでは、トレンチ上部TRaに膜厚の薄いゲート絶縁膜GIが形成されておらず、トレンチ下部TRbだけでなく、トレンチ上部TRaにもフィールド絶縁膜GFが形成されている。
【0049】
このため、MISFET群1QAの最外に位置するトレンチTR、および、MISFET群2QAの最外に位置するトレンチTRにおいて、電界を緩和させることができる。従って、双方向スイッチの動作時に、MISFET群1QAと接続するソース配線S1、または、MISFET群2QAと接続するソース配線S2のうち、何れかの電位が高くなったとしても、ゲート絶縁膜GIの絶縁破壊が発生する問題を抑制できる。以上より、本実施の形態では、検討例1と比較して、半導体装置の信頼性を向上させることができる。
【0050】
<半導体装置の製造方法>
以下に、
図5〜
図18を用いて、本実施の形態の半導体装置の製造方法を説明する。
図5〜
図18でも、
図4と同様に、
図3のA−A線に沿った断面が示されている。
【0051】
まず、
図5に示されるように、n型の不純物が導入された半導体基板SB上に、n型の不純物を導入しながらエピタキシャル成長をさせることで、n型の半導体層(エピタキシャル層)NEを形成する。ここで、半導体層NEの不純物濃度は、半導体基板SBの不純物濃度よりも高い。
【0052】
次に、半導体層NE上に、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、窒化シリコンからなる絶縁膜IF1を形成する。なお、窒化シリコン膜の形成前に、酸化シリコン膜を形成し、絶縁膜IF1を酸化シリコン膜と窒化シリコン膜との積層膜としてもよい。次に、フォトリソグラフィ法およびエッチング処理によって、絶縁膜IF1をパターニングする。次に、パターニングされた絶縁膜IF1をマスクとして、ドライエッチング処理を行うことで、半導体層NEにトレンチTRを形成する。なお、この段階では、トレンチTRのうちトレンチ上部TRaのみが形成され、トレンチ下部TRbは形成されない。
【0053】
図6は、絶縁膜IF2の形成工程を示している。
【0054】
トレンチTR内(トレンチ上部TRa内)の側面および底面を覆うように、絶縁膜IF1上に、例えばCVD法によって、例えば窒化シリコンからなる絶縁膜IF2を形成する。ここで、絶縁膜IF2の材料は、絶縁膜IF1の材料と同じであることが望ましい。
【0055】
図7は、絶縁膜IF2の加工工程を示している。
【0056】
絶縁膜IF2に対して異方性エッチングを行うことで、トレンチ上部TRaの底面上および絶縁膜IF1上に形成されていた絶縁膜IF2を除去する。これによって、トレンチ上部TRaの側面上に、絶縁膜IF2がサイドウォール状に残される。
【0057】
図8は、トレンチ下部TRbの形成工程を示している。
【0058】
半導体層NE上の絶縁膜IF1、および、トレンチ上部TRaの側面の絶縁膜IF2をマスクとして、ドライエッチング処理を行うことで、半導体層NEにトレンチ下部TRbを形成する。トレンチ上部TRaおよびトレンチ下部TRbは、連続的に形成されており、トレンチTRとして一体化している。
図8では、トレンチ上部TRaおよびトレンチ下部TRbを、それぞれ破線で示している。
【0059】
図9は、絶縁膜IF3の形成工程を示している。
【0060】
トレンチ下部TRbの形成工程に続いて、熱酸化処理を行うことで、絶縁膜IF1および絶縁膜IF2から露出している半導体層NEが酸化され、絶縁膜IF3が形成される。すなわち、トレンチ下部TRbの側面上および底面上に、酸化シリコンからなる絶縁膜IF3が形成される。絶縁膜IF3の膜厚は、例えば50〜100nm程度である。
【0061】
図10は、絶縁膜IF4の形成工程を示している。
【0062】
トレンチTR内の側面および底面を覆うように、絶縁膜IF1上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコンからなる絶縁膜IF4を形成する。これによって、絶縁膜IF1、絶縁膜IF2および絶縁膜IF3の各々の表面が、絶縁膜IF4によって覆われる。また、絶縁膜IF4の膜厚は、例えば30〜50nm程度である。
【0063】
図11は、レジストパターンRP1の形成工程、および、絶縁膜IF4の一部の除去工程を示している。
【0064】
まず、絶縁膜IF4の一部を覆うように、レジストパターンRP1を形成する。レジストパターンRP1は、MISFET群1QAの最外に位置するトレンチTR、および、MISFET群2QAの最外に位置するトレンチTRを開口するようなパターンを有する。
【0065】
次に、レジストパターンRP1をマスクとして、フッ酸を含む溶液を用いたウェットエッチング処理を行うことで、レジストパターンRP1に覆われていない絶縁膜IF4を除去する。その後、例えばアッシング処理によって、レジストパターンRP1を除去する。
【0066】
また、レジストパターンRP1の形成工程時において、MISFET群1QAの最外に位置するトレンチTRと、MISFET群2QAの最外に位置するトレンチTRとの間の領域には、レジストパターンRP1が形成されないようにする。
【0067】
図12は、絶縁膜IF1および絶縁膜IF2の除去工程を示している。
【0068】
例えば、リン酸を含む溶液を用いたウェットエッチング処理によって、絶縁膜IF4に覆われていない絶縁膜IF1および絶縁膜IF2を除去する。これにより、MISFET群1QAの最外に位置するトレンチTR内、および、MISFET群2QAの最外に位置するトレンチTR内において、絶縁膜IF2が選択的に除去される。また、これらの周囲の半導体層NE上に形成されていた絶縁膜IF1も、選択的に除去される。
【0069】
図13は、絶縁膜IF3および絶縁膜IF4の除去工程を示している。
【0070】
例えば、フッ酸を含む溶液を用いたウェットエッチング処理によって、絶縁膜IF4および絶縁膜IF3を除去する。これにより、MISFET群1QAおよびMISFET群2QAの全てのトレンチ下部TRbに形成されていた絶縁膜IF3が除去され、トレンチ下部TRbの側面および底面の半導体層NEが露出する。
【0071】
図14は、フィールド絶縁膜GFの形成工程を示している。
【0072】
トレンチ下部TRbの側面および底面の半導体層NEが露出された状態で、熱酸化処理を行うことで、トレンチ下部TRbの側面上および底面上に、フィールド絶縁膜GFを形成する。フィールド絶縁膜GFの膜厚は、例えば100nm程度である。MISFET群1QAの最外に位置するトレンチTR、および、MISFET群2QAの最外に位置するトレンチTRにおいては、各々のトレンチ上部TRaの半導体層NEも露出しているので、トレンチ上部TRaの側面上、および、トレンチTR外部の半導体層NE上にも、フィールド絶縁膜GFが形成される。
【0073】
図15は、絶縁膜IF1および絶縁膜IF2の除去工程、並びに、ゲート絶縁膜GIの形成工程を示している。
【0074】
まず、リン酸を含む溶液を用いたウェットエッチング処理によって、絶縁膜IF1および絶縁膜IF2を除去する。これにより、MISFET群1QAの最外に位置するトレンチTR、および、MISFET群2QAの最外に位置するトレンチTR以外のトレンチTRにおいて、トレンチ上部TRaの半導体層NEが露出する。
【0075】
次に、熱酸化処理によって、露出している半導体層NE上に、ゲート絶縁膜GIが形成される。ゲート絶縁膜GIの膜厚は、例えば20nm程度である。このとき、フィールド絶縁膜GFも熱酸化処理に晒されるため、フィールド絶縁膜GFの膜厚も若干厚くなる。
【0076】
図16は、ゲート電極GE1およびゲート電極GE2の形成工程を示している。
【0077】
まず、トレンチTR内を埋め込むように、トレンチTR外のフィールド絶縁膜GF上およびゲート絶縁膜GI上に、例えばCVD法によって、例えば多結晶シリコンからなる導電性膜を形成する。次に、上記導電性膜に対して、ドライエッチング処理を行うことで、トレンチTR外の上記導電性膜が除去され、トレンチTR内に上記導電性膜が残される。これにより、MISFET群1QAのトレンチTR内に、上記導電性膜からなるゲート電極GE1が埋め込まれ、MISFET群2QAのトレンチTR内に、上記導電性膜からなるゲート電極GE2が埋め込まれる。
【0078】
図17は、チャネル領域PCおよびソース領域NSの形成工程を示している。
【0079】
まず、フォトリソグラフィ法およびイオン注入法を用いて、ボロンなどのイオンを半導体層NEの一部に選択的に注入する。これにより、半導体層NEの一部に、p型の導電型を有するチャネル領域PCが形成される。次に、砒素またはリンなどのイオンを半導体層NEの一部に選択的に注入する。これにより、半導体層NEの一部に、n型の導電型を有するソース領域NSが形成される。ここで、ソース領域NSがチャネル領域PC内に形成されるように、ソース領域NSの形成時のイオン注入を制御する。
【0080】
図18は、層間絶縁膜IL、ボディ領域PB、プラグPG1およびプラグPG2の形成工程を示している。
【0081】
まず、ゲート電極GE1、ゲート電極GE2、ゲート絶縁膜GIおよびフィールド絶縁膜GFの各々の上面上に、例えばCVD法によって、例えば酸化シリコンからなる層間絶縁膜ILを形成する。
【0082】
次に、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング処理によって、層間絶縁膜IL中に複数のコンタクトホールを形成する。複数のコンタクトホールは、層間絶縁膜ILおよびソース領域NSを貫通し、チャネル領域PCに達するように形成される。
【0083】
次に、イオン注入法を用いて、ボロンなどのイオンを、コンタクトホールの底部に位置するチャネル領域PCに注入することで、チャネル領域PC内にボディ領域PBを形成する。ボディ領域PBは、p型の導電性を有し、チャネル領域PCよりも高い不純物濃度を有する。
【0084】
また、本実施の形態では図示していないが、コンタクトホールの形成工程後に、ソース領域NSの一部、および、ボディ領域PBの各々の上面に、シリサイド層を形成してもよい。その場合、シリサイド層は、具体的には次のようにして形成することができる。まず、ソース領域NSの一部、および、ボディ領域PBの各々の上面に、例えばチタン(Ti)、コバルト(Co)またはニッケル(Ni)からなるシリサイド層形成用の金属膜を形成する。次に、この金属膜に熱処理を施すことによって、ソース領域NSおよびボディ領域PBを構成する材料と、金属膜とを反応させることで、例えばチタンシリサイド(TiSi
2)、コバルトシリサイド(CoSi
2)またはニッケルシリサイド(NiSi)からなるシリサイド層が形成される。その後、未反応の金属膜を除去する。
【0085】
次に、複数のコンタクトホール内を埋め込むように、層間絶縁膜IL上に、例えばスパッタリング法によって、例えばタングステンを主体とする導電性膜を形成する。次に、例えばCMP(Chemical Mechanical Polishing)法による研磨処理を行うことで、複数のコンタクトホール外に形成されている上記導電性膜を除去する。これにより、MISFET群1QAのコンタクトホール内に、上記導電性膜からなるプラグPG1が埋め込まれ、MISFET群2QAのコンタクトホール内に、上記導電性膜からなるプラグPG2が埋め込まれる。
【0086】
なお、ここでは図示を省略しているが、
図3に示されるプラグPG3は、プラグPG1およびプラグPG2と同じ工程によって形成してもよいし、これらと別の工程で形成してもよい。
【0087】
図18の工程後、ソース配線S1、ソース配線S2、保護膜PFおよびドレイン電極DEを形成することで、
図4に示される半導体装置が製造される。以下に、それらの製造工程の一例を説明する。
【0088】
まず、層間絶縁膜IL上に、例えばCVD法またはスパッタリング法によって、例えばアルミニウムを主体とする導電性膜を形成する。次に、フォトリソグラフィ法およびドライエッチング処理によって、上記導電性膜をパターニングすることにより、ソース配線S1およびソース配線S2を形成する。ソース配線S1は、プラグPG1に接続し、ソース配線S2は、プラグPG2に接続される。なお、ここでは図示を省略しているが、上記導電性膜をパターニングすることで、ゲート配線G1およびゲート配線G2も形成される。
【0089】
次に、ソース配線S1およびソース配線S2上に、例えば塗布法またはCVD法によって、ポリイミドなどの樹脂膜または窒化シリコン膜である保護膜PFを形成する。
【0090】
次に、半導体基板SBの裏面に対して研磨処理を実施し、半導体基板SBを、所望の厚さまで薄くする。次に、半導体基板SBの裏面に、例えばスパッタリング法またはCVD法によって、例えば窒化チタン膜などの金属膜からなるドレイン電極DEを形成する。
【0091】
本実施の形態の半導体装置の製造方法の主な特徴として、
図11で説明したように、レジストパターンRP1の形成工程時において、MISFET群1QAの最外に位置するトレンチTRと、MISFET群2QAの最外に位置するトレンチTRとの間の領域には、レジストパターンRP1が形成されていない事が挙げられる。この理由を、以下の検討例2を用いて説明する。
【0092】
<検討例2の説明>
図22を用いて、本願発明者が検討した検討例2の半導体装置を説明する。
図22は、本実施の形態の
図11に対応する製造工程である。
【0093】
図22に示されるように、検討例2では、MISFET群1QAの最外に位置するトレンチTRと、MISFET群2QAの最外に位置するトレンチTRとの間の領域に、レジストパターンRP1の一部が形成されている。
【0094】
しかしながら、各トレンチTR間の間隔を小さくしたい場合には、この間隔は、レジストパターンRP1の幅に依存することになるため、この領域にレジストパターンRP1を形成すると不利になる。すなわち、レジストパターンRP1が最外のトレンチTR内に形成されないように、合わせずれなどの設計マージンも考慮するため、2つの最外のトレンチTR間の間隔を、広く設計する必要がある。このため、検討例2では、半導体装置の微細化を図ることが難しくなる。
【0095】
<本実施の形態の半導体装置の製造方法の主な特徴>
本実施の形態では、検討例2と異なり、
図11に示されるように、2つの最外のトレンチTR間の領域に、レジストパターンRP1が形成されていない。このため、レジストパターンRP1の設計マージンなどを考慮する必要がなく、これら2つの最外のトレンチTR間の間隔を狭くすることができる。すなわち、本実施の形態では、半導体装置の微細化を図ることができる。
【0096】
特に、本実施の形態では、
図2に示されるように、半導体チップCHPの中央部付近において、櫛歯状のソース配線S1と、櫛歯状のソース配線S2とが、互いにかみ合うように配置されている。すなわち、ソース配線S1の下方に形成されたMISFET群1QAと、ソース配線S2の下方に形成されたMISFET群2QAとが、交互に配置されている。このため、2つの最外のトレンチTR間の領域が、複数存在している。従って、このような工夫は、半導体装置の微細化に対して、更に有利となる。
【0097】
(実施の形態2)
以下に、実施の形態2の半導体装置を、
図19および
図20を用いて説明する。
図19は、実施の形態1の
図3と同様の箇所を示す要部平面図であり、
図20は、
図19のA−A線に沿った断面図である。なお、以下の説明では、実施の形態1との相違点を主に説明する。
【0098】
実施の形態1では、MISFET群1QAの最外に位置するゲート電極GE1は、他のゲート電極GE1と同様に、ゲート配線G1に電気的に接続され、MISFET群2QAの最外に位置するゲート電極GE2は、他のゲート電極GE2と同様に、ゲート配線G2に電気的に接続されていた。
【0099】
これに対して、実施の形態2では、複数のゲート電極GE1のうち、少なくとも一部がゲート配線G1に電気的に接続され、複数のゲート電極GE2のうち、少なくとも一部がゲート配線G2に電気的に接続されている。
【0100】
すなわち、
図19および
図20に示されるように、MISFET群1QAの最外に位置するゲート電極GE1は、プラグPG4を介して、ソース配線S1に電気的に接続され、それ以外のゲート電極GE1は、ゲート配線G1に電気的に接続されている。また、MISFET群2QAの最外に位置するゲート電極GE2は、プラグPG5を介して、ソース配線S2に電気的に接続され、それ以外のゲート電極GE2は、ゲート配線G2に電気的に接続されている。
【0101】
従って、実施の形態2では、MISFET群1QAの最外に位置するMISFET1Q、および、MISFET群2QAの最外に位置するMISFET2Qは、トランジスタとして動作しないダミートランジスタとなる。しかしながら、これら最外のMISFET1Q、2Qでは、実施の形態1と同様に、薄いゲート絶縁膜GIが形成されておらず、トレンチTR内に、厚いフィールド絶縁膜GFが形成されている。よって、最外のMISFET1Q、2Qは、元々、トランジスタの動作にはほぼ寄与していない。すなわち、実施の形態2の半導体装置は、実施の形態1の半導体装置と比較して、特にデメリットが無く、同じ効果を得ることができる。
【0102】
また、プラグPG4およびプラグPG5は、上述のプラグPG1およびプラグPG2と同じ工程で形成してもよいし、これらと別の工程で形成してもよい。
【0103】
以上、本願発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。