(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主弁体は、前記副弁ポートに対して前記主弁ポート側に形成された筒状部と、前記筒状部に対して前記主弁ポート側における開口を塞ぐように取り付けられる閉塞部材と、を有し、
前記閉塞部材は、前記阻害壁を有するとともに、前記主弁ポートが形成された主弁座に着座または離座する主弁部を有することを特徴とする請求項1に記載の弁装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたような従来の電動膨張弁では、入口ポートと出口ポートとの圧力差や、副弁ポートの開口度等の条件によっては、副弁ポートを通過する流体の流速が高くなり、騒音の原因となる場合があった。そこで、音の発生部を消音部材によって覆うことで騒音を低減する構成が考えられる。このような消音部材としては金属メッシュのように多数の貫通孔が形成された部材が考えられるが、剛性が低くなりやすいため、消音部材自体が振動および変形して騒音が発生してしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、騒音を低減することができる弁装置および冷凍サイクルシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の弁装置は、主弁ポートを開閉する主弁体と、前記主弁体に形成された副弁ポートに対して接近または離間する副弁体と、
内部に主弁室が形成される弁本体と、を備えた弁装置であって、
前記主弁体は、軸線を軸方向とする円筒状の円筒部と、該円筒部の内部に形成された副弁室と、前記円筒部の周面部に形成された連通孔と、を有し、前記連通孔により、前記主弁室と前記副弁室は連通され、さらに、前記主弁体は、前記主弁ポート側から見て前記副弁ポート
の全体を覆う
とともに、軸線方向に対して略直交する平面に沿って延在する阻害壁と、前記阻害壁に沿って流体が通過可能な交差流路部と、前記交差流路部に連続するとともに前記阻害壁の両側の空間を連通する連通流路部と、を有し、前記副弁ポートから前記主弁ポートに向かうように流体が流れる場合、前記副弁ポートを通過した流体が、前記交差流路部および前記連通流路部をこの順に通過した後、前記主弁ポートに接続された継手管に流れ込むように構成されていることを特徴とする。
【0007】
このような本発明によれば、主弁ポート側から見て副弁ポートを覆うように阻害壁が設けられていることで、副弁ポートから主弁ポートに向かうように流体が流れる場合、副弁ポートを通過して副弁体の軸方向に沿って進行する流体は、阻害壁に衝突することによって進行方向を変え、阻害壁に沿った交差流路部を流れることになる。さらにこの流体は、交差流路部を通過した後に連通流路部を通過し、主弁ポートに接続された継手管に流れ込む。このように阻害壁によって流体の進行方向を変えることにより、流速を低下させることができ、騒音を低減することができる。このとき、阻害壁は消音用のメッシュ部材と比較して剛性を確保しやすく、阻害壁の振動や変形を抑制することができる。
【0008】
尚、上記では副弁ポートから主弁ポートに向かうように流体が流れる場合について説明したが、本発明の弁装置は、少なくとも、副弁ポートから主弁ポートに向かって流体が流れるように(主弁ポートを低圧側ポートとして)使用可能なものであればよく、これに加え、他の使用方法があってもよい。例えば、本発明の弁装置は、主弁ポートに対して双方向に流体が通過可能なように用いられる場合があってもよい。
【0009】
また、前記主弁体は、前記副弁ポートに対して前記主弁ポート側に筒状部を有し、前記筒状部は、前記主弁ポートが形成された主弁座に着座または離座する主弁部を有するとともに、前記主弁ポート側における開口が前記阻害壁によって覆われていることが好ましい。
【0010】
このような構成によれば、筒状部が主弁部を有することで、阻害壁を設ける際に、従来形状の主弁体を流用したり、主弁体の形状変更を少なくしたりすることができる。また、阻害壁が主弁座に対して着座しないことから、阻害壁の材質の選択自由度を向上させることができる。
【0011】
このとき、前記阻害壁は、前記筒状部に対して側面部が重ねられる有底筒状部材の底板部を構成するとともに、前記筒状部よりも前記主弁ポート側に配置され、前記連通流路部は、前記側面部に形成された貫通孔であることが好ましい。このような構成によれば、副弁ポートと阻害壁との距離を容易に調節することができる。また、距離を調節した場合であっても、阻害壁と連通流路部との位置関係は不変であることから、交差流路部を流れる流体を連通流路部に向かいやすくすることができる。
【0012】
また、前記主弁体は、前記副弁ポートに対して前記主弁ポート側に形成された筒状部と、前記筒状部に対して前記主弁ポート側における開口を塞ぐように取り付けられる閉塞部材と、を有し、前記閉塞部材は、前記阻害壁を有するとともに、前記主弁ポートが形成された主弁座に着座または離座する主弁部を有していてもよい。このとき、前記阻害壁が、前記筒状部における前記主弁ポート側の端面に対して離隔して配置されることにより、当該阻害壁と当該端面との間に前記交差流路部が形成され、前記連通流路部は、前記交差流路部よりも外周側において前記阻害壁に形成された貫通孔であることを特徴とすることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、阻害壁と筒状部の端面との間に交差流路部が形成されていることで、阻害壁に衝突することによって進行方向を変えた流体が、交差流路部を流れやすく、連通流路部に向かいやすい。また、連通流路部が、阻害壁に形成された貫通孔であることで、連通流路部を通過した流体は軸方向に沿って流れやすく、主弁ポートに接続された継手管に流れ込みやすい。
【0014】
また、前記主弁体には、複数の前記連通流路部が形成され、1つの前記連通流路部の開口面積が、前記副弁ポートの開口面積よりも小さいことが好ましい。このような構成によれば、副弁ポートを通過した流体を分流することができ、騒音をさらに低減することができる。
【0015】
また、前記副弁体は、先端側に向かうにしたがって外径が小さくなるように、その外周面にテーパ部を有し、前記阻害壁の前記副弁ポート側の面は、前記テーパ部を先端側に仮想的に延長した際の焦点よりも前記副弁ポート側に配置されていることが好ましい。このような構成によれば、副弁ポートから主弁ポートに向かうように流体が流れる場合に、副弁ポートを通過して軸方向に沿って進行する流体を、阻害壁に衝突させて進行方向を変えやすくすることができる。
【0016】
本発明の冷凍サイクルシステムは、圧縮機と、凝縮器と、膨張弁と、蒸発器と、を含む冷凍サイクルシステムであって、前記いずれかの弁装置が、前記膨張弁として用いられていることを特徴とする。
【0017】
このような冷凍サイクルシステムによれば、上記のように弁装置の騒音を低減することができるとともに、弁装置(膨張弁)に発生する振動が下流側の装置に伝達されることを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の弁装置および冷凍サイクルシステムによれば、主弁ポート側から見て副弁ポートを覆うように阻害壁が設けられていることで、騒音を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の各実施形態を図面に基づいて説明する。尚、第2実施形態においては、第1実施形態で説明する構成部材と同じ構成部材及び同様な機能を有する構成部材には、第1実施形態と同じ符号を付すとともに説明を省略する。
【0021】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る弁装置としての電動弁を
図1〜3に基づいて説明する。
図1に示すように、本実施形態の電動弁10は、弁ハウジング1と、主弁体2と、副弁体3と、駆動部4と、を備えている。なお、以下の説明における「上下」の概念は
図1の図面における上下に対応する。
【0022】
弁ハウジング1は、筒状の弁本体1Aと、弁本体1Aの内部に固定される支持部材1Bと、を有している。弁本体1Aは、その内部に円筒状の主弁室1Cが形成され、弁本体1Aには、側面側から主弁室1Cに連通して冷媒が流入される一次継手管11が取り付けられ、底面側から主弁室1Cに連通して冷媒が流出される二次継手管12が取り付けられている。さらに、弁本体1Aには、主弁室1Cと二次継手管12とを連通する位置に主弁座13が形成されるとともに、この主弁座13から二次継手管12側に断面形状が円形の主弁ポート14が形成されている。支持部材1Bは、金属製の固定部15によって弁本体1Aに溶接固定されている。支持部材1Bは、樹脂成形品であって、主弁座13側に設けられた円筒状の主弁ガイド部16と、駆動部4側に設けられて内周面に雌ねじが形成された雌ねじ部17と、を有して形成されている。弁本体1Aの上端部には、ケース18が溶接等によって気密に固定されている。
【0023】
主弁体2は、
図2、3にも示すように、主弁座13に対して着座または離座する主弁部21を有する弁体主部2Aと、ばね受け部2Bと、副弁座2Cと、有底筒状部材2Dと、を有している。弁体主部2Aは、軸線Lを軸方向とする円筒状の円筒部22と、この円筒部22の内部に形成されて流体が流通する副弁室23と、軸線Lに沿って副弁座2Cを貫通する副弁ポート24と、を有している。円筒部22の周面部には複数の連通孔25が形成され、副弁室23は連通孔25により主弁室1Cに連通されている。弁体主部2Aの円筒部22の内周面には、軸線Lに沿った挿通孔26が形成され、この挿通孔26内には副弁体3の副弁基部3Aが挿通されている。ばね受け部2Bは、円環状に形成されて弁体主部2Aの上端部に固定され、その内部にロータ軸46が挿通されている。ばね受け部2Bの上面と支持部材1Bの天井面との間には、主弁ばね27が配設されており、この主弁ばね27により主弁体2は主弁座13方向(閉方向)に付勢されている。
【0024】
副弁体3は、円筒状の副弁基部3Aと、副弁基部3Aから下方に突出する副弁部3Bと、副弁基部3Aの上側に設けられたスラストワッシャ3Cと、副弁基部3Aの内部に設けられた副弁ばね(不図示)と、で構成されている。副弁基部3Aは、主弁体2の挿通孔26に挿通され、軸線Lに沿った上下方向に進退自在かつ軸線L回りに回転自在に支持されている。スラストワッシャ3Cは、副弁基部3Aの上面及びばね受け部2Bの下面に当接可能になっており、その当接面同士の摩擦力が極めて小さくなるようになっている。副弁基部3Aの上部には挿通孔が設けられてロータ軸46が挿通され、ロータ軸46の下端部に形成されたフランジ部(不図示)と副弁基部3Aの底部に接合された副弁部3Bの上端部との間に副弁ばねが配設されている。この副弁ばねにより副弁体3はロータ軸46(マグネットロータ44)に対して副弁座2C方向(閉方向)に付勢されている。なお、副弁基部3Aは、ロータ軸46および副弁部3Bと一体に形成されてもよく、その場合には、副弁基部3Aが中実状に形成され、副弁ばねが省略されてもよい。
【0025】
駆動部4は、電動モータとしてのステッピングモータ41と、ステッピングモータ41の回転により副弁体3を進退させるねじ送り機構42と、ステッピングモータ41の回転を規制するストッパ機構43と、を備える。ステッピングモータ41は、外周部が多極に着磁されたマグネットロータ44と、ケース15の外周に配設されたステータコイル45と、マグネットロータ44に固定されたロータ軸46と、を備えている。ロータ軸46は、固定部材46aを介してマグネットロータ44に固定されるとともに、軸線Lに沿って延び、その上端部はストッパ機構43のガイド47に挿入されている。ロータ軸46の中間部には雄ねじ部46bが一体に形成され、この雄ねじ部46bが支持部材1Bの雌ねじ部17に螺合し、これによってねじ送り機構42が構成されている。マグネットロータ44が回転すると、ロータ軸46の雄ねじ部46bが雌ねじ部17に案内されることで、マグネットロータ44およびロータ軸46が軸線L方向に進退移動し、これに伴って副弁体3も軸線Lに沿って上昇または下降する。
【0026】
ストッパ機構43は、ケース18の天井部から垂下された円筒状のガイド47と、ガイド47の外周に固定されたガイド線体48と、ガイド線体48にガイドされて回転かつ上下動可能な可動スライダ49と、を備えている。可動スライダ49には、径方向外側に突出した爪部49aが設けられ、マグネットロータ44には、上方に延びて爪部49aと当接する延長部44aが設けられ、マグネットロータ44が回転すると、延長部44aが爪部49aを押すことで、可動スライダ49がガイド線体48に倣って回転かつ上下するようになっている。ガイド線体48には、マグネットロータ44の最上端位置を規定する上端ストッパ48aと、マグネットロータ44の最下端位置を規定する下端ストッパ48bと、が形成されている。これらの上端ストッパ48aおよび下端ストッパ48bに可動スライダ49が当接することで、可動スライダ49の回転が停止され、これによりマグネットロータ44の回転が規制され、副弁体3の上昇または下降も停止される。
【0027】
次に、主弁体2の要部について
図2、3に基づいて説明する。後述するように、主弁ポート14を低圧側ポートとして用いる場合、
図2、3において副弁ポート24を基準としてその上方側(主弁ポート14とは反対側)が上流側となり、下方側(主弁ポート14側)が下流側となることから、以下の説明では、この「上流側」および「下流側」を用いて各部の位置関係を説明する。弁体主部2Aは、副弁ポート24の下流側に筒状部28を有する。筒状部28は、円筒部22を下流側に延長したものであり、円筒状に形成されている。筒状部28の先端(下流側端部)の外周部に主弁部21が設けられている。筒状部28は、上流側よりも下流側において内径が大きくなるように段差が形成されており、即ち拡径部281が形成されている。
【0028】
有底筒状部材2Dは、弁体主部2Aとは別体に構成されており、円板状の底板部291と、底板部291の外周縁に連続した円筒状の側面部292と、を一体に有している。有底筒状部材2Dの材質としては、ステンレス等の金属が例示される。側面部292のうち下流側部分には複数の貫通孔292Aが形成されている。1つの貫通孔292Aの開口面積は、副弁ポート24の開口寸法よりも小さい。尚、「副弁ポート24の開口寸法」とは、副弁ポート24の内径によって決まる開口面積を意味する。
【0029】
有底筒状部材2Dは、側面部292の一部が筒状部28に挿通されて内側に重ねられることにより、弁体主部2Aに固定される。尚、有底筒状部材2Dの固定方法は、溶接であってもよいし、ろう付けであってもよいし、圧入であってもよい。筒状部28の拡径部281に側面部292が配置されるようになっている。また、弁体主部2Aに有底筒状部材2Dが固定されることにより、筒状部28の下流側開口282が底板部291によって覆われる。これにより、副弁ポート24の下流側において、筒状部28と有底筒状部材2Dとが減速室2Eを形成する。
【0030】
有底筒状部材2Dが弁体主部2Aに固定される際、貫通孔292Aは、筒状部28から露出する。即ち、底板部291が、筒状部28の下流側端面283よりも下流側に配置されており、軸線L方向において、底板部291と下流側端面283との間に貫通孔292Aが位置している。これにより、貫通孔292Aによって減速室2Eの内外が連通され、即ち、貫通孔292Aは、底板部291の上面側の空間と下面側の空間とを連通し、連通流路部として機能する。
【0031】
底板部291は、副弁ポート24の下流側に配置されるとともに、軸線L方向に対して略直交する平面に沿って延在する。底板部291は副弁ポート24よりも大面積に形成され、これらの中心同士が略一致することにより、軸線L方向における主弁ポート14側から見て副弁ポート24の全体が底板部291によって覆われる。即ち、底板部291が阻害壁として機能するようになっている。
【0032】
以上の電動弁10は、以下のように動作する。まず、
図1、2の状態では、主弁体2の主弁部21が主弁座13に着座し、主弁ポート14が閉じられた弁閉状態である。一方、副弁ポート24に最も近接した位置にある副弁体3は、副弁座2Cに着座せず、副弁体3の副弁部3Bの外周面と副弁ポート24の内周面との隙間によって流路が形成されている。従って、冷媒(流体)が一次継手管11から主弁室1Cに流入した場合、この冷媒は、弁体主部2Aの連通孔25を通過し、副弁室23に流入する。副弁室23に流入した冷媒は、副弁部3Bと副弁ポート24との隙間を通り、減速室2Eに流入する。減速室2Eに流入した冷媒は、貫通孔292Aを通過し、主弁ポート14から二次継手管12に向かって流出する。このように、電動弁10は、弁開度がゼロであっても微少な流量が生じるように構成されているが、副弁部3Bを副弁ポート24に対して着座させ、弁開度がゼロとなった際に流量がゼロとなるように構成してもよい。
【0033】
上記のように減速室2Eに流入した冷媒は、副弁体3の軸線L方向に沿って進行し、底板部291に衝突することによって進行方向を変え、底板部291の上面に沿って流れるようになる。即ち、減速室2Eのうち、底板部291の上面近傍が、阻害壁(底板部291)に沿って冷媒が通過可能な交差流路部2Fとなる。このように冷媒が進行方向を変えることで、流速が低下する。交差流路部2Fを流れる冷媒は、有底筒状部材2Dの側面部292に到達し、貫通孔292Aを通過して減速室2Eの外側に流出する。尚、
図1、2に示すように主弁体2により主弁ポート14が閉じられた状態において、主弁ポート14を低圧側ポートとして用いる場合には、副弁ポート24から主弁ポート14に向かうように冷媒が流れる。
【0034】
次に、駆動部4のステッピングモータ41を駆動してマグネットロータ44を回転させて副弁体3を上昇させ、副弁体3を副弁ポート24から離間させることで、副弁体3の副弁部3Bが副弁ポート24から抜け出し、副弁部3Bと副弁ポート24との隙間による流路が拡大され、流量が徐々に増加する。この際、主弁体2の主弁部21は主弁座13に着座したままであるため、流量の増加は微少である。このように主弁体2を閉じたまま副弁体3の開度を変更する制御域が小流量制御域である。次に、副弁体3をさらに上昇させると、スラストワッシャ3Cがばね受け部2Bに当接し、副弁体3によって主弁体2が引き上げられ、主弁部21が主弁座13から離座する。このように主弁体2を着座位置(閉位置)から弁開位置(開位置)に向かって上昇させる制御域が大流量制御域であって、この大流量制御域における主弁体2の開度(ステッピングモータ41の回転量=弁リフト量)に対する流量の変化は大きなものとなり、
図3に示すような主弁体2の全開状態において、流量は最大となる。このように主弁ポート14が開いた状態においては、主弁ポート14に対して双方向に冷媒が通過可能となっている。
【0035】
以上の本実施形態によれば、主弁ポート14側から見て副弁ポート24を覆う阻害壁としての底板部291が設けられていることで、副弁ポート24を通過した冷媒を底板部291に衝突させて流速を低下させることができ、騒音を低減することができる。このとき、有底筒状部材2Dは消音用のメッシュ部材と比較して剛性を確保しやすく、有底筒状部材2D自体の変形や振動を抑制することができる。
【0036】
また、弁体主部2Aの筒状部28に主弁部21が設けられていることで、有底筒状部材2Dを取り付ける際に、従来形状の弁体主部を流用したり、弁体主部の形状変更を少なくしたりすることができる。また、阻害壁を含む有底筒状部材2Dが主弁座13に対して着座しないことから、有底筒状部材2Dの材質の選択自由度を向上させることができる。
【0037】
また、阻害壁としての底板部291を有する有底筒状部材2Dの側面部292が、筒状部28に重ねられることで、副弁ポート24と底板部291との距離を容易に調節することができる。また、距離を調節した場合であっても、底板部291と貫通孔292Aとの位置関係は不変であることから、交差流路部2Fを流れる流体を貫通孔292Aに向かいやすくすることができる。
【0038】
また、有底筒状部材2Dに複数の貫通孔292Aが形成され、1つの貫通孔292Aの開口面積が副弁ポート24の開口面積よりも小さいことで、副弁ポート24を通過した流体を分流することができ、騒音をさらに低減することができる。
【0039】
次に、
図4に基づいて本発明の冷凍サイクルシステムについて説明する。冷凍サイクルシステム90は、例えば、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる。前記実施形態の電動弁10は、空気調和機の第1室内側熱交換器91(除湿時冷却器として作動)と第2室内側熱交換器92(除湿時加熱器として作動)との間に設けられており、圧縮機93、四方弁94、室外側熱交換器95および電子膨張弁96とともに、ヒ−トポンプ式冷凍サイクルを構成している。第1室内側熱交換器91と第2室内側熱交換器92及び電動弁10は室内に設置され、圧縮機93、四方弁94、室外側熱交換器95および電子膨張弁96は室外に設置されていて冷暖房装置を構成している。
【0040】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態に係る弁装置としての電動弁を
図5、6に基づいて説明する。本実施形態の電動弁10Bは、第1実施形態の電動弁10に対し、弁体主部2Aの筒状部28の形状が変更されるとともに、有底筒状部材2Dに代えて閉塞部材5が設けられている点で相違している。尚、本実施形態においても、第1実施形態における主弁体2の要部の位置関係についての説明と同様に、主弁体2により主弁ポート14が閉じられて主弁ポート14を低圧側ポートとして用いる場合の「上流側」および「下流側」を用いて位置関係を説明する。また、電動弁10Bの使用方法は、電動弁10の使用方法と同様である。
【0041】
電動弁10Bの弁体主部2Aは、外周面の先端側に段差状の縮径部284が形成された筒状部28Bを有し、この筒状部28Bに対して閉塞部材5が固定される。尚、閉塞部材5の固定方法は、溶接であってもよいし、ろう付けであってもよいし、圧入であってもよい。閉塞部材5は、円板状の底板部51と円筒状の筒状部52とを有して有底筒状に構成され、主弁座13に対して着座または離座する主弁部53が設けられている。主弁部53は、筒状部52の外周面のうち底板部51側の位置から突出するように形成されている。
【0042】
閉塞部材5の筒状部52は、弁体主部2Aの筒状部28Bの縮径部284に配置されることにより、上下方向位置が決まる。このとき、底板部51の上面が筒状部28Bの下流側端面285に対して離隔して配置され、これらの間に隙間6が形成される。さらに、底板部51には、この隙間6の下方側の位置に、複数の貫通孔511が形成される。複数の貫通孔511は、底板部51の外周近傍において円形に沿って配置される。1つの貫通孔511の開口面積は、副弁ポート24の開口寸法よりも小さい。尚、「副弁ポート24の開口寸法」とは、副弁ポート24の内径によって決まる開口面積を意味する。
【0043】
閉塞部材5の底板部51は、第1実施形態における底板部291と同様に、副弁ポート24の下流側に配置されるとともに軸線L方向における主弁ポート14側から見て副弁ポート24を覆う阻害壁として機能する。また、筒状部28Bに対して閉塞部材5が固定されることにより、筒状部28Bの下流側開口286が底板部51によって覆われ、副弁ポート24の下流側において、筒状部28Bと閉塞部材5とが減速室2Gを形成する。底板部51に形成された貫通孔511によって減速室2Gの内外が連通され、即ち、貫通孔511は、底板部51の上面側の空間と下面側の空間とを連通し、連通流路部として機能する。
【0044】
副弁体3の副弁部3Bは、円錐状の外周面を有しており、即ち、先端側に向かうにしたがって外径が小さくなるように、その外周面にテーパ部3Dを有している。
図6に示すように副弁ポート24の弁開度を最大とした状態において、テーパ部3Dを先端側に仮想的に延長した際の焦点Oよりも、底板部51の上面は上流側に配置される。尚、テーパ部3Dを先端側に仮想的に延長した際、この延長面はある一点に集約され、この一点を焦点Oとする。また、
図5に示すように副弁ポート24の弁開度を最小とした場合には、テーパ部3Dを延長した際の焦点はさらに下方側に位置することから、この場合においても底板部51の上面は焦点よりも上流側に配置される。また、テーパ部3Dの傾斜角度が一定でない場合、テーパ部3Dの適宜な位置(例えば副弁座2Cに最も接近した位置)における接面を延長面とすればよい。
【0045】
本実施形態の電動弁10Bにおいても、第1実施形態の電動弁10と同様に、主弁ポート14が閉じられた弁閉状態においては、一次継手管11から主弁室1Cに流入した冷媒は、副弁室23に流入する。副弁室23に流入した冷媒は、副弁部3Bと副弁ポート24との隙間を通り、減速室2Gに流入する。減速室2Gに流入した冷媒は、貫通孔511を通過し、主弁ポート14から二次継手管12に向かって流出する。
【0046】
上記のように減速室2Gに流入した冷媒は、副弁体3の軸線L方向に沿って進行し、底板部51に衝突することによって進行方向を変え、底板部51に沿って流れるようになる。底板部51に沿って流れる流体は、底板部51の外周側に向かうことで、底板部51の上面と筒状部28Bの下流側端面285との隙間6に到達し、この隙間6を通過する。即ち、隙間6が、阻害壁(底板部51)に沿って流体が通過可能な交差流路部として機能する。隙間6を通過した冷媒は、貫通孔511を通過して減速室2Gの外側に流出する。
【0047】
以上の本実施形態によれば、前記第1実施形態と同様に、主弁ポート14側から見て副弁ポート24を覆う阻害壁としての底板部51が設けられていることで、副弁ポート24を通過した冷媒を底板部51に衝突させて流速を低下させることができ、騒音を低減することができる。このとき、底板部51は消音用のメッシュ部材と比較して剛性を確保しやすく、閉塞部材5自体の変形や振動を抑制することができる。
【0048】
また、底板部51と筒状部28Bの下流側端面285との間の隙間6が交差流路部として機能することで、底板部51に衝突することによって進行方向を変えた冷媒が、この隙間6を流れやすく、貫通孔511に向かいやすい。また、底板部51に形成された貫通孔511が連通流路部として機能することで、貫通孔511を通過した冷媒は軸線L方向に沿って流れやすく、二次継手管12に流れ込みやすい。
【0049】
また、副弁体3のテーパ部3Dを先端側に仮想的に延長した際の焦点Oよりも、底板部51の上面が上流側(副弁ポート24側)に配置されていることで、副弁ポート24を通過して軸線L方向に沿って進行する冷媒を、底板部51に衝突させて進行方向を変えやすくすることができる。
【0050】
なお、本発明は、前記第1実施形態および前記第2実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。例えば、前記第1実施形態では、家庭用エアコン等の空気調和機に用いられる電動弁10を例示したが、本発明の電動弁は、家庭用エアコンに限らず、業務用エアコンであってもよいし、空気調和機に限らず、各種の冷凍機等にも適用可能である。
【0051】
また、前記第1実施形態および前記第2実施形態では、複数の貫通孔292A、511が形成されるとともに、1つの貫通孔292A、511の開口面積が副弁ポート24の開口面積よりも小さいものとしたが、1つの連通流路部のみを形成してもよいし、1つの連通流路部の開口面積を、副弁ポート24の開口面積以上としてもよい。このように、連通流路部の開口面積を大きくして数を少なくすることで、主弁体に連通流路部を形成する際の作業性を向上させることができる。
【0052】
また、前記第2実施形態では、副弁体3のテーパ部3Dを先端側に仮想的に延長した際の焦点Oよりも、阻害壁としての底板部51の上面が上流側に配置されているものとしたが、阻害壁は、想定される冷媒の流量や、減速室の大きさ、他の部材との干渉等に応じて適宜な位置に配置されればよく、焦点Oよりも下流側に配置されてもよい。また、前記第1実施形態のように有底筒状部材2Dが設けられる構成においても、副弁体のテーパ部を先端側に仮想的に延長した際の焦点よりも、阻害壁の上面を上流側(副弁ポート側)に配置してもよい。
【0053】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。