(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御態様選択手段における制御態様は、前記被圧延材の圧延中において前記ロール間の間隔をステップ状に変化させたときの前記圧延機に挿入される前記被圧延材の張力の変動、および圧延された前記被圧延材の板厚の変動に基づいて選択される請求項1に記載の圧延制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、圧延された被圧延材の板厚は、ロールの温度や、ロールと被圧延材との摩擦のような経時的な要因によっても変動するものであり、上述したような従来の圧延機を用いて金属箔のような極薄の板材に圧延を行う場合、圧延開始時のような過渡状態における板厚の急激な変化により上述した板厚制御や張力制御が追いつかず、被圧延材の破断等の不具合が発生する虞がある。
【0006】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、たとえ箔圧延を行う場合であっても、圧延された被圧延材の板厚の変動を抑制して出側板厚精度を向上することが可能な圧延制御装置、圧延制御方法、および圧延制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた発明は、
ロール対で被圧延材を圧延する圧延機の制御を行う圧延制御装置であって、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき前記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、前記圧延機に挿入される前記被圧延材の張力に基づき前記圧延機に前記被圧延材を送り出すテンションリールのトルクを一定値に制御する張力制御手段と、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき前記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、前記圧延機に挿入される前記被圧延材の張力に基づき前記テンションリールから送り出される前記被圧延材の速度を制御する速度張力制御手段と、
前記圧延機に挿入される前記被圧延材の張力に基づき前記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、圧延された前記被圧延材の板厚に基づき前記テンションリールから送り出される前記被圧延材の速度を制御する速度板厚制御手段と、
前記被圧延材の圧延状態に基づき、前記張力制御手段による制御、前記速度張力制御手段による制御、および前記速度板厚制御手段による制御のうちのいずれか1つの制御態様を選択する制御態様選択手段と、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき、前記ロール対におけるロールの周速度を制御するか否かを選択すると共に、前記周速度の制御が選択された場合に前記ロールの周速度を制御するロール速度選択制御手段と、を備えていることを特徴とする圧延制御装置である。
【0008】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、
ロール対で被圧延材を圧延する圧延機の制御を行う圧延制御装置であって、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき前記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、前記圧延機に挿入される前記被圧延材の張力に基づき前記圧延機に前記被圧延材を送り出すテンションリールのトルクを一定値に制御する張力制御手段と、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき、前記ロール対におけるロールの周速度を制御するか否かを選択すると共に、前記周速度の制御が選択された場合に前記ロールの周速度を制御するロール速度選択制御手段と、を備えていることを特徴とする圧延制御装置である。
【0009】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、
ロール対で被圧延材を圧延する圧延機の制御を行う圧延制御装置であって、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき前記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、前記圧延機に挿入される前記被圧延材の張力に基づき前記テンションリールから送り出される前記被圧延材の速度を制御する速度張力制御手段と、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき、前記ロール対におけるロールの周速度を制御するか否かを選択すると共に、前記周速度の制御が選択された場合に前記ロールの周速度を制御するロール速度選択制御手段と、を備えていることを特徴とする圧延制御装置である。
【0010】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、
ロール対で被圧延材を圧延する圧延機の制御を行う圧延制御装置であって、
前記圧延機に挿入される前記被圧延材の張力に基づき前記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、圧延された前記被圧延材の板厚に基づき前記テンションリールから送り出される前記被圧延材の速度を制御する速度板厚制御手段と、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき、前記ロール対におけるロールの周速度を制御するか否かを選択すると共に、前記周速度の制御が選択された場合に前記ロールの周速度を制御するロール速度選択制御手段と、を備えていることを特徴とする圧延制御装置である。
【0011】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、
ロール対で被圧延材を圧延する圧延機の制御を行う圧延制御方法であって、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき前記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に前記圧延機に挿入される前記被圧延材の張力に基づき前記圧延機に前記被圧延材を送り出すテンションリールのトルクを一定値に制御する制御態様、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき前記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に前記圧延機に挿入される前記被圧延材の張力に基づき前記テンションリールから送り出される前記被圧延材の速度を制御する制御態様、および
前記圧延機に挿入される前記被圧延材の張力に基づき前記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に圧延された前記被圧延材の板厚に基づき前記テンションリールから送り出される前記被圧延材の速度を制御する制御態様の中から、前記被圧延材の圧延状態に基づき、いずれか1つの制御態様を選択すると共に、この選択した制御態様を実行するステップと、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき、前記ロール対におけるロールの周速度を制御するか否かを選択すると共に、前記周速度の制御が選択された場合に前記ロールの周速度を制御するステップと、を備えていることを特徴とする圧延制御方法である。
【0012】
また、上記課題を解決するためになされた別の発明は、
ロール対で被圧延材を圧延する圧延機の制御を行う圧延制御プログラムであって、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき前記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に前記圧延機に挿入される前記被圧延材の張力に基づき前記圧延機に前記被圧延材を送り出すテンションリールのトルクを一定値に制御する制御態様、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき前記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に前記圧延機に挿入される前記被圧延材の張力に基づき前記テンションリールから送り出される前記被圧延材の速度を制御する制御態様、および
前記圧延機に挿入される前記被圧延材の張力に基づき前記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に圧延された前記被圧延材の板厚に基づき前記テンションリールから送り出される前記被圧延材の速度を制御する制御態様の中から、前記被圧延材の圧延状態に基づき、いずれか1つの制御態様を選択すると共に、この選択した制御態様を実行するステップと、
圧延された前記被圧延材の板厚に基づき、前記ロール対におけるロールの周速度を制御するか否かを選択すると共に、前記周速度の制御が選択された場合に前記ロールの周速度を制御するステップと、を備えていることを特徴とする圧延制御プログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、たとえ箔圧延を行う場合であっても、圧延された被圧延材の板厚の変動を抑制して出側板厚精度を向上することが可能な圧延制御装置、圧延制御方法、および圧延制御プログラムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
圧延装置は、
図1に示すように、概略的に、圧延機1と、入側テンションリール2(以下、「入側TR2」ともいう)と、出側テンションリール3(以下、「出側TR3」ともいう)と、圧延制御装置とにより構成されている。上記圧延制御装置については、各実施形態の項にて詳述する。
【0016】
なお、本明細書において、「入側」とは被圧延材mが圧延機1に向かって送り出される側(圧延機1の上流側)を意味し、「出側」とは被圧延材mが圧延機1から送り出される側(圧延機1の下流側)を意味する。また、「偏差」とは、設定値や予測値と、実測値(実績値)との差分を意味する。
【0017】
圧延機1は、上作業ロールR1(以下、単に「ロールR1」ともいう)と下作業ロールR2(以下、単に「ロールR2」ともいう)とからなるロール対Rを有しており、圧延制御装置における後述のロールギャップ制御部21およびミル速度制御部31からの信号を受信し、所定の周速度で回転するロール対におけるロール(上作業ロールR1および下作業ロールR2)間の間隔(以下、「ロールギャップ」ともいう)を調整することでロール間を通過する被圧延材mを圧延する。
【0018】
入側TR2および出側TR3は、それぞれ圧延制御装置における後述の入側TR制御部42、出側TR制御部52からの信号を受信し、入側TR2および出側TR3に設けられた電動機(不図示)を用いて入側TR2では被圧延材mを圧延機1に送り出し、出側TR3では圧延機1にて圧延された被圧延材mを巻き取る。
【0019】
ここで、ロール対Rを用いた圧延機1における被圧延材mの板厚変動に関する圧延現象について説明する。圧延された被圧延材mの板厚は製品品質上重要であるため、板厚制御が実施される。この制御では、出側板厚計a2にて検出された被圧延材mの板厚の実績値を用い、例えば、ロールギャップ制御部21により上・下作業ロールR1、R2間のロールギャップを操作することで出側の被圧延材mの板厚が調整される。
【0020】
出側の被圧延材mの板厚は、現実的には、ロールR1、R2の熱膨張や、ロールR1、R2と被圧延材mとの間の摩擦係数の変動、被圧延材mの変形抵抗などに起因するロールR1、R2の弾性変形等によって変化する。
【0021】
まず、ロールR1、R2の熱膨張による板厚変化について説明する。
図2は、金属箔のような薄肉の板厚への圧延(以下、「箔圧延」ともいう)時のロール対Rの挙動を説明するための概略図である。被圧延材mの圧延は、
図2(a)に示すように、上下作業ロールR1、R2により被圧延材mを圧下することで行われる。圧延に必要な圧延荷重は、ロールR1、R2の両端にかけられるため(
図2の矢印参照)、圧延荷重によりロールR1、R2が撓んだ状態となる。この際、被圧延材mの板厚が厚肉の圧延状態においては、
図2(b)に示すように、ロールR1、R2が撓んだ状態であっても、被圧延材mの板幅方向全体にわたってロールギャップが開いているため、このロールギャップを変更することで被圧延材mにかかる圧延力を変更することが可能であり、これにより圧延状態を変化させて圧延機1の出側板厚を制御することができる。
【0022】
一方、被圧延材mの箔圧延時においては、
図2(c)に示すように、上下作業ロールR1、R2の両端部は互いに接触した状態となり、被圧延材mに十分な圧延力がかけられない状態となる。このため、被圧延材mを弾性変形状態(入側板厚と出側板厚とが同じ状態)から塑性変形状態(出側板厚が入側板厚よりも小さくなる状態)に移行させることができないか、または塑性変形状態に移行しても設定の出側板厚を得ることができない状態が発生する。このような状態になると、圧延機1のロールギャップ制御部21がロールギャップを変更しようとしても、上下作業ロールR1、R2の両端が接触しているため被圧延材mにかかる圧延力を変更することができない。
【0023】
しかしながら、上下作業ロールR1、R2は、後述のミル速度制御部31から出力された圧延速度で回転しており、上下作業ロールR1、R2と被圧延材mとの接触による発熱に伴ってその接触領域LにおけるロールR1、R2の温度が上昇する。このため、接触領域Lおよびその近傍で上下作業ロールR1、R2が熱膨張してロール半径R1d1が増大することになる。この際、
図2(d)に示すように、ロール半径R1d2の増大によりロールR1、R2両端部の接触状態が解消してロールギャップが開くようになり、被圧延材mに対して圧延力をかけることができる状態となる。
【0024】
次に、ロールR1、R2の弾性変形による板厚変化について説明する。圧延機1のロールR1、R2は金属で作られた弾性体であるため圧延の際には作業ロールR1、R2が弾性変形する。例えば、4段圧延機の場合ではバックアップロールと作業ロール、6段圧延機の場合ではバックアップロールと中間ロールと作業ロール(いずれも不図示)がそれぞれ変形するが、これらの中で、板厚変化に関しては被圧延材mと接触している作業ロールR1、R2の弾性変形が重要である。すなわち、ロールギャップを閉じていくと作業ロールR1、R2が撓んだ状態となって被圧延材mと作業ロールR1、R2との接触領域Lの面積が増加する。このため被圧延材にかかる単位面積当たりの荷重が頭打ちとなり、上記荷重が増加しなくなると被圧延材mが塑性変形しない状態となる。これは、作業ロールR1、R2の撓みを一因とする圧延可能な最小板厚が存在することを意味する。このような作業ロールR1、R2の撓みは、ロールR1、R2の弾性係数が小さく、被圧延材mの変形抵抗(塑性変形に必要な圧延荷重)が大きく、被圧延材mとロールR1、R2との間の摩擦係数が大きいほど大きくなる。
【0025】
ここで、上述した圧延可能な最小板厚は、以下のような近似式で表すことができる。
hmin∝[R×μ×(k−σ)]/E ・・・(1)
上記式(1)中、hminは圧延可能な最小板厚、Eはロールの弾性係数(ヤング率)、Rは作業ロール径、μは摩擦係数、kは変形抵抗、σは入側出側張力平均値をそれぞれ示す。
【0026】
上記式(1)中、ロールの弾性係数Eおよび作業ロール径Rは圧延機の構成に依存し、変形抵抗kは被圧延材の構成に依存する。摩擦係数μは、被圧延材とロールとの間に発生する摩擦に因るものであり、被圧延材と作業ロールとの間に注入する潤滑油、作業ロールの表面粗度、圧延速度等に依存する。これらのうち摩擦係数μの圧延速度依存性については、一般に圧延速度が速い場合は小さく、遅い場合は大きい。このため、一般に圧延速度が大きいほど圧延可能な最小板厚は小さくなり、例えば、操業開始時の圧延速度の低速により塑性変形状態にできなかった被圧延材も、圧延速度の上昇により塑性変形可能な状態となる。また、上記式(1)が示すように、圧延機の入側および出側の張力を大きくすることでも圧延可能な最小板厚を小さくすることできる。
【0027】
ここで、箔圧延開始時の被圧延材mの出側板厚偏差について
図3を参照して説明する。被圧延材mを薄肉に圧延する際、ロールギャップが一定の場合、圧延速度が低速では圧延が弾性変形状態であり、圧延機の加速により圧延速度がある値を超えたところで圧延が塑性変形状態に移行する。
【0028】
なお、塑性変形状態へ移行する際は、ロールギャップが一定であっても圧延速度の上昇に従って出側板厚は薄くなるため、例えば、出側板厚の実績値のみで板厚制御をしようとして弾性変形状態の間にロールギャップを閉じると、
図4に示すように、塑性変形への移行後に板厚が薄くなりすぎる(アンダーシュート)ことがある。このようなアンダーシュートが発生した場合、適正な板厚への収束に時間を要すると共に、オフゲージ長(板厚が規格外または不安定な被圧延材の全長)が長くなる傾向にある。
【0029】
以上のように、箔圧延においては、圧延により被圧延材mが弾性変形状態から塑性変形状態に変わったり、塑性変形状態であっても厚肉の圧延に比べて出側板厚に変化を生じ易くなる。
【0030】
以下、上述した箔圧延時の圧延現象を踏まえ、本発明の圧延制御装置、圧延制御方法、および圧延制御プログラムについて図面を参照して説明するが、本発明は、当該図面に記載の実施形態にのみ限定されるものではない。なお、各実施形態では、テンションリール(入側TR2および出側TR3)を用いる代表的な圧延機であるシングルスタンド圧延機について例示する。
【0031】
[第1の実施形態]
(圧延制御装置)
当該圧延制御装置は、ロール対で被圧延材を圧延する圧延機の制御を行う圧延制御装置であって、
圧延された上記被圧延材の板厚に基づき上記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、上記圧延機に挿入される上記被圧延材の張力に基づき上記圧延機に上記被圧延材を送り出すテンションリールのトルクを一定値に制御する(この制御方法を、以下、「制御方法(A)」ともいう)張力制御手段と、
圧延された上記被圧延材の板厚に基づき上記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、上記圧延機に挿入される上記被圧延材の張力に基づき上記テンションリールから送り出される上記被圧延材の速度を制御する(この制御方法を、以下、「制御方法(B)」ともいう)速度張力制御手段と、
上記圧延機に挿入される上記被圧延材の張力に基づき上記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、圧延された上記被圧延材の板厚に基づき上記テンションリールから送り出される上記被圧延材の速度を制御する(この制御方法を、以下、「制御方法(C)」ともいう)速度板厚制御手段と、
上記被圧延材の圧延状態に基づき、上記張力制御手段による制御、上記速度張力制御手段による制御、および上記速度板厚制御手段による制御のうちのいずれか1つの制御態様を選択する制御態様選択手段と、
圧延された上記被圧延材の板厚に基づき、上記ロール対におけるロールの周速度を制御するか否かを選択すると共に、上記周速度の制御が選択された場合に上記ロールの周速度を制御する(この制御方法を、以下、「制御方法(D)」ともいう)ロール速度選択制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0032】
当該圧延制御装置11は、ロール対Rで被圧延材mを圧延する圧延機1の制御を行う圧延制御装置であり、上述した張力制御手段、速度張力制御手段、速度板厚制御手段、制御態様選択手段、およびロール速度選択制御手段が行う制御方法(A)〜(D)を実行するため、具体的には、例えば、
図1に示すように、ロールギャップ制御部21と、ミル速度制御部31と、入側TR速度指令部41と、入側張力設定部43と、出側張力設定部53と、入側張力電流変換部44と、出側張力電流変換部54と、入側TR制御部42と、出側TR制御部52と、入側張力制御部46と、出側張力制御部56と、圧下板厚制御部61と、速度板厚制御部62と、速度張力制御部63と、圧下張力制御部64と、ミル速度板厚制御部65と、ミル速度設定部81と、制御方法選択部71(制御態様選択部711、速度補正選択部712および制御出力選択部713)と、により構成することができる。なお、当該圧延制御装置11は、これらの具体的構成にのみ限定されるものではない。
【0033】
ロールギャップ制御部21は、上・下作業ロールR1、R2間のロールギャップを制御する。
【0034】
ミル速度制御部31は、圧延機1の速度(上・下作業ロールR1、R2の周速度)を制御する。このミル速度制御部31は、圧延の際、ミル速度設定部81から出力された速度指令を受信して圧延機1の速度(上・下作業ロールR1、R2の周速度)を一定とするような制御を実施する。
【0035】
入側TR速度指令部41は、
図5に示すように、オペレータの手動操作によりミル速度設定部81にて決定したミル速度V
MILLと圧延機入側後進率bとを用いて基準速度設定部82が作成した入側TR速度V
ETRと、制御方法選択部71からの入側TR速度変更量△Vと、を用い、入側TR速度指令V
ETRrefを作成してこれを入側TR制御部42に出力する。
【0036】
入側TR制御部42は、電流指令に応じてトルク一定制御(電流一定制御)を行う運転モード(トルク一定制御モード)と、速度指令に応じて速度一定制御を行う運転モード(TR速度一定制御モード)とを有し、入側TR速度指令部41からの入側TR速度指令V
ETRrefと、入側張力電流変換部44からの電流指令I
ETRsetと、制御方法選択部71からの指令とに応じ、上記トルク一定制御モードとTR速度一定制御モードとを切り替えて入側TR2への電流を出力する。ここで、入側TR2はテンションリールとそれを動かすための電動機(不図示)とより構成されており、入側TR2へ出力する電流とは、電動機への電流を意味する。
【0037】
入側TR制御部42は、
図6に示すように、具体的には、速度指令V
ETRrefと速度実績V
ETRfbとが一致するように、電動機への電流指令I
ETRrefを作成するP制御421およびI制御422と、作成された電流指令I
ETRrefと入側TR2の電動機に流れる電流I
ETRfbとが一致するように制御する電流制御423とにより構成されている。
【0038】
例えば、トルク一定制御モードが選択された場合、入側TR制御部42は、I制御422を入側張力電流変換部44からの入側TR電流設定値I
ETRsetで置き換える。一方、TR速度一定制御モードが選択された場合(トルク一定制御モードが選択されない場合)、入側TR制御部42は、入側TR速度偏差にしたがってP制御421およびI制御422を変更する。この状態でトルク一定制御モードが選択された場合、入側TR電流指令I
TERrefが不連続に変化しないように、電流補正424にて補正する。
【0039】
このように入側TR制御部42が構成されていることで、圧延操業中においても入側TR制御部42の制御モードをトルク一定制御から速度制御、または速度制御からトルク一定制御へと自在に切り替えることができ、制御方法(A)と制御方法(B)と制御方法(C)とを自在に切り替えることができる。
【0040】
入側張力設定部43および出側張力設定部53は、それぞれ入側および出側の張力設定値を計算する。
【0041】
入側張力電流変換部44および出側張力電流変換部54は、それぞれ入側張力設定部43および出側張力設定部53からの信号を受信し、TR(テンションリール)機械系およびTR(テンションリール)制御部のモデルに基き、入側および出側の被圧延材mが張力設定値となるような電動機のトルクを得るための電流値を求める。
【0042】
入側TR制御部42および出側TR制御部52は、それぞれ入側張力電流変換部44および出側張力電流変換部54からの信号を受信し、上記電流値となるように電動機の電流を制御する。
【0043】
入側張力制御部46および出側張力制御部56は、それぞれ圧延機1の入側および出側に設置された入側張力計b1および出側張力計b2により測定された張力の実績値を用いて制御モデルの誤差を補正する。この入側張力制御部46および出側張力制御部56は、それぞれ入側張力電流変換部44および出側張力電流変換部54に補正値を付与し、これにより入側TR制御部42および出側TR制御部52へ設定する電流値が補正される。
【0044】
ここで、上述した張力制御手段、速度張力制御手段、速度板厚制御手段、制御態様選択手段、およびロール速度選択制御手段について詳述する。
【0045】
上述の張力制御手段は、圧延された被圧延材の板厚に基づきロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、圧延機に挿入される被圧延材の張力に基づき圧延機に被圧延材を送り出すテンションリールのトルクを一定値に制御する(制御方法(A))。この張力制御手段による制御方法(A)の実行は、具体的には、例えば、圧下板厚制御部61からの出力を用いたり、入側張力計b1や出側張力計b2で測定した張力の実績値を用いて電動機への電流指令を補正(例えば、電動機への電流を一定とする補正など)し被圧延材mにかかる張力を一定に制御することで行うことができる。
【0046】
上述の速度張力制御手段は、圧延された被圧延材の板厚に基づきロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、圧延機に挿入される被圧延材の張力に基づきテンションリールから送り出される被圧延材の速度を制御する(制御方法(B))。この速度張力制御手段による制御方法(B)の実行は、具体的には、例えば、圧下板厚制御部61からの出力と速度張力制御部63からの出力とを用いて行うことができる。
【0047】
上述の速度板厚制御手段は、圧延機に挿入される被圧延材の張力に基づきロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、圧延された被圧延材の板厚に基づきテンションリールから送り出される被圧延材の速度を制御する(制御方法(C))。この速度板厚制御手段による制御方法(C)の実行は、具体的には、例えば、速度板厚制御部62からの出力と圧下張力制御部64からの出力とを用いて実行することができる。
【0048】
ここで、上記圧下板厚制御部61、速度板厚制御部62、速度張力制御部63、および圧下張力制御部64について説明する。
【0049】
圧下板厚制御部61は、
図7に示すように、出側板厚計a2で測定した出側板厚実績値h
fbと出側板厚設定値h
refとの差である出側板厚偏差△hを用い、この出側板厚偏差△hに調整ゲインおよび出側板厚偏差△hからロールギャップへの変換ゲインを掛け合わせたものを積分し(I制御)、この積分値と前回の積分値との差分△△S
AGCを出力する。なお、
図7中、Mは圧延機のミル定数、Qは被圧延材の塑性定数をそれぞれ示す。
【0050】
速度板厚制御部62は、上述の出側板厚偏差△hを用い、この出側板厚偏差△hに調整ゲインおよび出側板厚偏差△hから入側速度への変換ゲインを掛け合わせたものを積分し(I制御)、この積分値と前回の積分値との差分△(△V/V)
AGCを出力する。
【0051】
速度張力制御部63は、入側張力計8で測定した入側張力実績値T
bfbbと入側張力設定値T
brefとの差である入側張力偏差△T
bを用い、この入側張力偏差△T
bに調整ゲインおよび入側張力偏差△T
bから入側速度への変換ゲインを掛け合わせたものを積分し(I制御)、この積分値と前回の積分値との差分△(△V/V)
ATRを出力する。
【0052】
圧下張力制御部64は、上述の入側張力偏差△T
bを用い、この入側張力偏差△T
bに調整ゲインおよび入側張力偏差△T
bからロールギャップへの変換ゲインを掛け合わせたものを積分し(I制御)、この積分値と前回の積分値との差分△△S
ATRを出力する。
【0053】
なお、上述した圧下板厚制御部61、速度板厚制御部62、速度張力制御部63、および圧下張力制御部64それぞれにおける積分手法としては、積分(I制御)の他、比例積分(PI制御)、微分比例積分(PID制御)などの他の手法を採用してもよい。
【0054】
上述の制御態様選択手段は、圧延された被圧延材の板厚に基づき、張力制御手段による制御(制御方法(A))、速度張力制御手段による制御(制御方法(B))、および速度板厚制御手段による制御(制御方法(C))のうちのいずれか1つの制御態様を選択する。この制御態様の選択手法としては、例えば、ロールギャップにステップ状の変化(外乱)を加えたときの出側板厚の変化に基づく手法等を採用することができる。上記制御態様選択手段による制御は、例えば、
図8に示す制御方法選択部71の制御態様選択部711により実行することができる。
【0055】
制御態様選択部711は、圧延された被圧延材mの板厚に基づき、制御方法(A)、制御方法(B)および制御方法(C)のうちのいずれの制御態様を実行するかを選択する。
【0056】
ここで、制御態様選択部711における制御態様の選択は、被圧延材mの圧延中においてロール間の間隔をステップ状に変化させたときの圧延機1に挿入される被圧延材mの張力の変動、および圧延された被圧延材mの板厚の変動に基づいて行われることが好ましい。
【0057】
図9および
図10は、制御態様選択部711による制御態様の選択の一例を示す概略図である。制御態様選択部711は、例えば、
図9に示すように、ロールギャップに外乱を加えた直後の入側張力の変動量dT
bおよび変動時間T
bT並びに出側板厚の変動量dhを測定する。この際、制御方法(A)〜(C)のうちの最適な制御方法は、被圧延材の鋼種、出側板厚および圧延速度により変わると考えられることから、例えば、圧延速度を低速、中速、高速の3段階に分け、各段階それぞれにおいてロールギャップに外乱(ステップ状変更S1〜S3)を加えて入側張力の変動量dT
bおよび変動時間T
bT並びに出側板厚の変動量dhを測定する。
【0058】
次に、制御態様選択部711は、
図10に示すように、(dh/h
ref)/(dT
b/Tb
ref)によって算出される値が、所定の閾値(制御方法(C)選択値)以下である場合、制御方法(C)が選択し、T
bTが所定の閾値(制御方法(B)選択値)以上である場合、制御方法(B)を選択し、上記以外の場合は制御方法(A)を選択する。なお、制御方法(C)選択値、制御方法(B)選択値は、過去の実績値や圧延機1のシミュレーション等によりあらかじめ求めて設定しておくことができる。また、
図9および
図10では、3段階に分けられた圧延速度において、低速については制御方法(A)、中速については制御方法(B)、高速については制御方法(C)を最適制御方法として選択したものが例示されている。
【0059】
このように、当該圧延制御装置11は、制御態様選択手段(制御態様選択部711)が制御態様を被圧延材mの張力の変動および板厚の変動に基づいて選択することで、最適な制御態様を円滑に選択することができ、板厚が安定した圧延を行うことができる。
【0060】
なお、上述した制御態様選択部711による制御方法の決定方法は例示であり、例えば、
図11(a)〜(d)に示すように、圧延現象モデルを用いて圧延実績より影響係数を求め、得られた影響係数の大小関係に基づき最適な制御方法を選択するようにしてもよい。また、この測定は、被圧延材mの製品品質に影響を与えない範囲で上記外乱を加えることで、製品の製作中においても行うことができる。また、変動時間T
bTを測定する際にテンションリールのトルクを一定とする張力制御を用いるため、ロールギャップをステップ状に変化させる場合には、あらかじめ制御方法(A)を選択しておく。
【0061】
上述のロール速度選択制御手段は、圧延された被圧延材の板厚に基づき、ロール対におけるロールの周速度を制御する(制御方法(D))。このロール速度選択制御手段による制御方法(D)の実行は、具体的には、例えば、ミル速度板厚制御部65からの出力を用いて実行することができる。
【0062】
ミル速度板厚制御部65は、
図12(b)に示すように、出側板厚計a2にて測定した板厚から求めた出側板厚偏差を用い、この出側板厚偏差から偏差小判定値を減算し、上記出側板厚偏差にオフセットを与えた上で変換ゲインおよび積分ゲインを掛け合わせて処理し、加速方向のみをリミット処理で取り出すことでミル速度変更指令△V
AGCMrefをミル速度設定部81に出力する。なお、速度指令作成部811にてオペレータがミル速度の保持を実施した場合、積分ゲインK
IMILLを与え、ミル速度の加減速を実施した場合は保持指令がOFFとなり、保持指令のOFFにて積分ゲインK
IMILL=0として出力を停止する。また、圧延開始時においてミル速度が低速度で既に塑性加工状態となっている場合、ミル速度板厚制御部65による板厚制御(制御方法(D))は不要となる。
【0063】
ここで、ミル速度板厚制御部65による制御の一例を
図12(c)に示す。例えば、出側板厚偏差が偏差大判定値よりも大きい場合はミル速度を大きくし、出側板厚偏差が偏差大判定値よりも小さくなったらロールギャップ制御部21による圧下または入側TR2を操作する板厚制御を動作させ、ミル速度の変化量を小さくしつつ板厚制御を継続する。一方、出側板厚偏差が偏差小判定値よりも小さくなったらミル速度の操作を停止する。このように出側板厚偏差が偏差小判定値より小さい場合、ロールギャップ制御部21による圧下または入側TR2を操作する板厚制御が効果的であるため、塑性加工状態が継続しているとしてミル速度操作の停止を継続するが、出側板厚偏差が偏差小判定値よりも大きくなったら、ロールギャップ制御部21による圧下または入側TR2を操作する板厚制御の効果が少なくなるため、圧延可能な板厚でなくなりつつあると判断し、出側板厚偏差が偏差小判定値より小さくなるまでミル速度を増速する。
【0064】
ミル速度設定部81は、
図12(a)に示すように、速度指令作成部811にて圧延機1のオペレータにより作成されたミル速度指令値MRH
refを用い、ミル速度指令が折れ線状にならないように、S−Curve回路にて上記ミル速度指令値MRH
refとミル速度の実測値V
MILLrefとの差分である速度指令偏差△V
refを計算し、この計算値を時間積分することでミル速度指令V
MILLrefを算出する。また、圧延速度設定部81は、速度指令作成部811からミル速度の保持指令が出された場合、S−Curve回路へのMRH
ref−V
MILLrefの入力値を0とすることにより、その時点のミル速度を維持する。
【0065】
具体的には、ミル速度設定部81は、オペレータがミル速度を加減速しようとして速度指令作成部811が加減速の指令を出力している場合、これに従って加減速を出力し、オペレータがミル速度を保持しようとして速度指令作成部811が保持指令を出力している場合、速度補正選択部712(制御方法選択部71)は制御方法(D)の実行を許可し、S−Curve回路の出力値に加算して積分を行うことでミル速度指令V
MILLrefを変化させることができる。
【0066】
また、ロール速度選択制御手段は、上記制御方法(D)による制御の他、この制御方法(D)を実行するか否かを選択する。ロール速度選択制御手段による制御方法(D)を行うか否かの選択は、例えば、
図8に示す制御方法選択部71の速度補正選択部712により実行することができる。
【0067】
速度補正選択部712は、被圧延材mの圧延状態(例えば、圧延された被圧延材mが弾性変形状態であるか塑性変形状態であるか)に基づき、ミル速度板厚制御(制御方法(D))を行うか否かを選択する。この速度補正選択部712は、具体的には、出側板厚計a2にて測定した出側板厚と、入側板厚計a1にて測定した入側板厚(入側板厚計がない場合は前回圧延時の入側板厚の測定値等)との比較により弾性変形状態か塑性変形状態かの判断し、弾性変形状態である場合は被圧延材mが安定的に塑性変形状態に圧延されるように制御方法(D)を実行するための指令を出力する。なお、通板速度(圧延開始前の被圧延材が圧延機を通過する速度)で既に塑性変形状態であれば、制御方法(D)による制御は不要(被圧延材が安定的に塑性変形状態に圧延されている)であるため、速度補正選択部712は、板厚制御のみを許可し、制御方法(D)を実行するための指令をOFFとしてもよい。
【0068】
なお、オペレータによる手動加速中に板厚制御を選択してこの板厚制御が開始すると、上述のように出側板厚偏差がアンダーシュートしてしまう。このため、速度補正選択部712は、上記アンダーシュートの防止を目的とし、速度補正出側板厚補正値△hcmpを出力するようにしてもよい。具体的には、速度補正選択部712は、出側板厚計a2を用いて求めた出側板厚偏差△hに対して速度補正出側板厚補正値△hcmpによる補正を行い、
図14に示すように、ミル速度が塑性変形開始予測速度となった時点で出側板厚偏差をロックオンし、△hcmp=0となるような補正値を出力する。これにより、塑性変形開始予測速度になっても出側板厚が薄くならない場合は板厚制御がロールギャップを閉じることで塑性変形状態への移行を促進し、塑性変形状態への移行後は速度補正出側板厚補正値△hcmpに追従するように出側板厚偏差を制御することで過制御状態となるのを防止することができる。なお、上述した塑性変形開始予測速度は、例えば、過去の経験から予め設定しておき、圧延時の実績に応じて上記設定を適時修正するようにしてもよい。
【0069】
上述した制御態様選択手段により選択された制御方法(A)〜(C)およびロール速度選択制御手段により選択された制御方法(D)の制御は、
図8に示す制御方法選択部71の制御出力選択部713を介して行われる。この制御出力選択部713は、
図13に示すように、圧下板厚制御部61、速度板厚制御部62、速度張力制御部63、圧下張力制御部64、ミル速度板厚制御部65からの出力、制御態様選択部711からの制御態様の選択結果、速度補正選択部712からの制御方法(D)の選択結果、板厚制御の出力許可信号を入力とし、ロールギャップ制御部21、入側TR速度指令部41、入側TR制御部42、ミル速度設定部81へ制御指令を出力する。この制御出力選択部713による処理を以下に示す。
【0070】
制御態様選択部711が制御方法(A)を選択した場合、制御出力選択部713は、圧延された被圧延材mの板厚に基づきロール対Rにおけるロール間の間隔を制御するため、圧下板厚制御部61からの出力を積分処理部713aにて積分処理してこれをロールギャップ制御部21に出力する。また、制御出力選択部713は、圧延機1に挿入される被圧延材mの張力に基づき圧延機1に被圧延材mを送り出すテンションリールのトルクを一定値に制御するため、トルク一定制御モードの選択を入側TR制御部42に出力する。
【0071】
制御態様選択部711が制御方法(B)を選択した場合、制御出力選択部713は、圧延された被圧延材mの板厚に基づきロール対Rにおけるロール間の間隔を制御するため、圧下板厚制御部61からの出力を積分処理部713aにて積分処理してこれをロールギャップ制御部21に出力する。また、制御出力選択部713は、圧延機1に挿入される被圧延材mの張力に基づきテンションリールから送り出される被圧延材mの速度を制御するため、速度張力制御部63からの出力を積分処理部713bにて積分処理してこれを入側TR速度指令部41に出力する。
【0072】
制御態様選択部711が制御方法(C)を選択した場合、制御出力選択部713は、圧延された被圧延材mの板厚に基づきテンションリールから送り出される被圧延材mの速度を制御するため、速度板厚制御部62からの出力を積分処理部713bにて積分処理してこれを入側TR速度指令部41に出力する。また、制御出力選択部713は、圧延機1に挿入される被圧延材mの張力に基づきロール対Rにおけるロール間の間隔を制御するため、圧下張力制御部64からの出力を積分処理部713aにて積分処理してこれをロールギャップ制御部21に出力する。
【0073】
速度補正選択部712が制御方法(D)を選択した場合、制御出力選択部713は、ロールの周速度を制御するため、ミル速度板厚制御部65からの出力をミル速度設定部81に出力する。また、制御出力選択部713は、速度補正選択部712からの板厚制御出力の許可信号に従い、各板厚制御、張力制御の出力可否(積分項への入力可否)を決定する。
【0074】
制御出力選択部713が上記構成であることで、圧延操業中であっても、例えば圧延速度に応じて制御方法(A)〜(C)を相互に切り替えることができ、かつミル速度板厚制御(制御方法(D))を実施することが可能である。
【0075】
(圧延制御方法)
当該圧延制御方法は、ロール対で被圧延材を圧延する圧延機の制御を行うものであって、圧延された上記被圧延材の板厚に基づき上記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に上記圧延機に挿入される上記被圧延材の張力に基づき上記圧延機に上記被圧延材を送り出すテンションリールのトルクを一定値に制御する制御態様、圧延された上記被圧延材の板厚に基づき上記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に上記圧延機に挿入される上記被圧延材の張力に基づき上記テンションリールから送り出される上記被圧延材の速度を制御する制御態様、および上記圧延機に挿入される上記被圧延材の張力に基づき上記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に圧延された上記被圧延材の板厚に基づき上記テンションリールから送り出される上記被圧延材の速度を制御する制御態様の中から、上記被圧延材の圧延状態に基づき、いずれか1つの制御態様を選択すると共に、この選択した制御態様を実行するステップ(以下、「第1ステップ」ともいう)と、圧延された上記被圧延材の板厚に基づき、上記ロール対におけるロールの周速度を制御するか否かを選択すると共に、上記周速度の制御が選択された場合に上記ロールの周速度を制御するステップ(以下、「第2ステップ」ともいう)と、を備えていることを特徴とする。
【0076】
図14および
図15は、圧延方法の一例を説明する概略図である。ここでは、上述した圧延制御装置11を例にとって説明する。圧延を行う際、まずロールギャップの初期設定を行う。この初期設定は、例えば過去に行った圧延の経験から予め決定しておいてもよい。そして圧延開始時においては、
図14に示すように、例えば生産効率向上等目的とし、オペレータが手動でミル速度を増速(手動加速)する。箔圧延においては、ミル速度の増速に伴って弾性変形状態から塑性変形状態に移行するため、手動加速中に塑性変形により出側板厚が薄くなり、ミル速度が塑性変形開始予測速度に達すると、制御態様選択手段(制御態様選択部711)は、上述したように制御態様を選択すると共に、速度補正選択部712が上記制御態様を実行するように許可を出力し、制御出力選択部713からの出力に従って選択した制御態様を実行する(第1ステップ)。なお、ここでは、圧下板厚制御部61、速度板厚制御部62からの出力を用いたの制御態様が例示されている。
【0077】
なお、制御方法(A)と、制御方法(B)および(C)とでは入側TR2の制御方法が異なるため、圧延操業中には切替できない場合もある。その場合は、制御方法(A)で圧延操業を継続し、次回同一鋼種、同一板幅の被圧延材が来た場合に制御方法を切り替えればよい。また、圧延設備によって圧延操業中に制御方法(A)と、制御方法(B)および制御方法(C)との切替ができない場合は、制御方法(A)の代わりに制御方法(B)を用いてもよい。このようにすれば、低速では制御方法(A)であるが高速では制御方法(C)が最適である被圧延材の場合、低速では制御方法(B)かつ高速では制御方法(C)を選択することで、全速度域において安定かつ高精度で圧延することができる。
【0078】
ここで、制御態様選択部711が決定した最適な制御方法は、被圧延材mの鋼種、出側板厚およびミル速度域をパラメータとしてデータベース(
図16参照)に記録しておき、例えば、次回の圧延時に、上記パラメータを検索キーとして最適制御態様を検索できるようにしてもよい。
【0079】
また、上述した速度補正選択部712は、切り替えた制御態様開始時の出側板厚偏差のアンダーシュートを防止するため、速度補正出側板厚補正値△hcmpを出力するようにしてもよい。
【0080】
次いで、手動加速による増速によりミル速度が目標速度に近づくと、ロール速度選択制御手段(速度補正選択部712)は、圧延された被圧延材mの板厚に基づき、ロール対RにおけるロールR1、R2の周速度を制御するか否かを選択すると共に、周速度の制御が選択された場合に制御出力選択部713からの出力に従ってロールR1、R2の周速度を制御する(第2ステップ)。これにより、制御方法(D)によりミル速度を制御することで安定的に圧延が行われる。次いで、圧延終了時は、
図15に示すように、制御方法(D)による制御からオペレータによる手動でのミル速度の減速(手動減速)に移行し、この手動減速により通板速度まで減速して1回の圧延を終了する。なお、手動減速の際は、手動加速のときとは逆に、塑性変形開始予測速度で出側板厚が入側板厚と同等となる(塑性変形状態から弾性変形状態に移行する)として速度補正出側板厚補正値を出力し、ミル速度が塑性変形開始予測速度未満となった時点で上記制御態様(圧下板厚制御または速度板厚制御)を終了する。
【0081】
また、上述した圧延方法では、オペレータが圧延開始時および圧延終了時に手動で加減速(手動加速、手動減速)を行う圧延について説明したが、公知の手法を用いて自動的に加減速を行ってもよい。特に、圧延を終了する際の減速時は、被圧延材の残量を計算し、この残量が発生しない(残量≒0)ように圧延機を停止することが好ましい。
【0082】
(圧延制御プログラム)
当該圧延制御プログラムは、ロール対で被圧延材を圧延する圧延機の制御を行うものであって、圧延された上記被圧延材の板厚に基づき上記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に上記圧延機に挿入される上記被圧延材の張力に基づき上記圧延機に上記被圧延材を送り出すテンションリールのトルクを一定値に制御する制御態様、圧延された上記被圧延材の板厚に基づき上記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に上記圧延機に挿入される上記被圧延材の張力に基づき上記テンションリールから送り出される上記被圧延材の速度を制御する制御態様、および上記圧延機に挿入される上記被圧延材の張力に基づき上記ロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に圧延された上記被圧延材の板厚に基づき上記テンションリールから送り出される上記被圧延材の速度を制御する制御態様の中から、上記被圧延材の圧延状態に基づき、いずれか1つの制する御態様を選択すると共に、この選択した制御態様を実行するステップ(第1ステップ)と、圧延された上記被圧延材の板厚に基づき、上記ロール対におけるロールの周速度を制御するか否かを選択すると共に、上記周速度の制御が選択された場合に上記ロールの周速度を制御するステップ(第2ステップ)と、を備えていることを特徴とする。
【0083】
なお、この圧延制御プログラムにより実行される制御方法は、(圧延制御装置)および(圧延制御方法)の項で上述したものと同様であるので、その詳細な説明は省略する。
【0084】
ここで、上述した圧延制御装置11、圧延制御方法、および圧延制御プログラムにおける制御は、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせることによって実現することができる。上記ハードウェアとしては、
図17に示すように、例えば、中央処理装置(CPU)91、ランダムアクセスメモリ(RAM、)92、リードオンリーメモリ(ROM)93、ハードディスクドライブ(HDD)94、インターフェース(I/F)95、バス96等により構成することができる。
【0085】
CPU91は、情報を処理する演算手段であり、処理された情報により圧延制御装置11全体の動作を制御する。RAM92は、情報の読み書きが可能な揮発性の記憶媒体であり、CPU91が情報を処理する際の作業領域として用いられる。ROM93は、読み出し専用の不揮発性記憶媒体であり、プログラム(ソフトウェア)が格納されている。HDD94は、情報の読み書きが可能な不揮発性の記憶媒体であり、OS(オペレーティングシステム)や、上述した圧延制御方法などを実行する圧延制御プログラム等(ソフトウェア)が格納されている。I/F95は、圧延制御装置11の情報を表示したり圧延制御装置11への情報の入力をおこなうものであり、例えば、ディスプレイ装置951やキーボード952等により構成されている。バス96は、CPU91やHDD94等を接続する。
【0086】
以上のように、上述した圧延制御装置11、圧延制御方法、および圧延制御プログラムは、上記構成であることで、圧延状態に応じた制御方法(A)、制御方法(B)、制御方法(C)の切り替えにより出側板厚制御および入側板厚制御に最適な制御構成を選択し、かつミル速度板厚制御(制御方法(D))により安定した塑性加工状態を維持することができ、たとえ箔圧延を行う場合であっても、圧延された被圧延材mの板厚の変動を抑制して出側板厚精度を向上することができる。その結果、製品品質や操業効率を大幅に向上することが可能となる。
【0087】
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。当該圧延制御装置12は、圧延された被圧延材の板厚に基づきロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、圧延機に挿入される被圧延材の張力に基づき圧延機に被圧延材を送り出すテンションリールのトルクを一定値に制御する(制御方法(A))張力制御手段と、圧延された被圧延材の板厚に基づき、ロール対におけるロールの周速度を制御するか否かを選択すると共に、周速度の制御が選択された場合にロールの周速度を制御する(制御方法(D))ロール速度選択制御手段と、を備えている。
【0088】
当該圧延制御装置12は、上述した張力制御手段およびロール速度選択制御手段が行う制御方法(A)および(D)を実行するため、具体的には、例えば、
図18に示すように、ロールギャップ制御部21と、ミル速度制御部31と、入側TR速度指令部41と、入側張力設定部43と、出側張力設定部53と、入側張力電流変換部44と、出側張力電流変換部54と、入側TR制御部42と、出側TR制御部52と、入側張力制御部46と、出側張力制御部56と、圧下板厚制御部61と、ミル速度板厚制御部65と、ミル速度設定部81と、制御方法選択部72と、により構成することができる。なお、当該圧延制御装置12は、以下に示す具体的構成にのみ限定されるものではない。また、制御方法選択部72以外の各部の構成は、第1の実施形態のものと同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。また、当該圧延制御装置12を用いた圧延制御方法については、制御態様が制御方法(A)および(D)に限定されていること以外は第1の実施形態と同様であるので、その説明を援用する。
【0089】
制御方法選択部72は、被圧延材mの圧延状態に応じ、上述した制御方法(A)および(D)の制御方法を用いて圧延を行う。この制御方法選択部72は、
図19に示すように、概略的に、速度補正選択部712と、制御態様選択部721と、制御出力選択部723とにより構成されている。なお、速度補正選択部712は、第1の実施形態のものと同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0090】
制御態様選択部721は、制御方法(A)を実行するための指令を出力する。
【0091】
制御出力選択部723は、圧下板厚制御部61、ミル速度板厚制御部65からの出力、速度補正選択部712からの制御方法(D)の選択結果、制御方法(A)の出力許可信号を入力とし、ロールギャップ制御部21、入側TR速度指令部41、入側TR制御部42、ミル速度設定部81へ制御指令を出力する。
【0092】
制御出力選択部723は、具体的には、圧延された被圧延材mの板厚に基づきロール対Rにおけるロール間の間隔を制御するため、圧下板厚制御部61からの出力を積分処理部にて積分処理してこれをロールギャップ制御部21に出力する。また、制御出力選択部723は、圧延機1に挿入される被圧延材mの張力に基づき圧延機1に被圧延材mを送り出すテンションリールのトルクを一定値に制御するため、トルク一定制御モードの選択を入側TR制御部42に出力する。
【0093】
また、制御出力選択部723は、速度補正選択部712が制御方法(D)を選択した場合、ロールR1、R2の周速度を制御するため、ミル速度板厚制御部65からの出力をミル速度設定部81に出力する。
【0094】
以上のように、当該圧延制御装置12が上記構成であることで、制御方法(A)およびミル速度板厚制御(制御方法(D))を用いて安定した塑性加工状態を維持することができ、たとえ箔圧延を行う場合であっても、圧延された被圧延材mの板厚の変動を抑制して出側板厚精度を向上することができる。
【0095】
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。当該圧延制御装置13は、圧延された被圧延材の板厚に基づきロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、圧延機に挿入される被圧延材の張力に基づきテンションリールから送り出される被圧延材の速度を制御する(制御方法(B))速度張力制御手段と、圧延された被圧延材の板厚に基づき、ロール対におけるロールの周速度を制御するか否かを選択すると共に、周速度の制御が選択された場合にロールの周速度を制御する(制御方法(D))ロール速度選択制御手段と、を備えている。
【0096】
当該圧延制御装置13は、上述した速度張力制御手段およびロール速度選択制御手段が行う制御方法(B)および(D)を実行するため、具体的には、例えば、
図20に示すように、ロールギャップ制御部21と、ミル速度制御部31と、入側TR速度指令部41と、入側張力設定部43と、出側張力設定部53と、入側張力電流変換部44と、出側張力電流変換部54と、入側TR制御部42と、出側TR制御部52と、入側張力制御部46と、出側張力制御部56と、圧下板厚制御部61と、速度張力制御部63と、ミル速度板厚制御部65と、ミル速度設定部81と、制御方法選択部73と、により構成することができる。なお、当該圧延制御装置13は、以下に示す具体的構成にのみ限定されるものではない。また、制御方法選択部73以外の各部の構成は、第1の実施形態のものと同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。また、当該圧延制御装置13を用いた圧延制御方法については、制御態様が制御方法(B)および(D)に限定されていること以外は第1の実施形態と同様であるので、その説明を援用する。
【0097】
制御方法選択部73は、被圧延材mの圧延状態に応じ、上述した制御方法(B)および(D)の制御方法を用いて圧延を行う。この制御方法選択部73は、
図21に示すように、概略的に、速度補正選択部712と、制御態様選択部731と、制御出力選択部733とにより構成されている。なお、速度補正選択部712は、第1の実施形態のものと同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0098】
制御態様選択部731は、制御方法(B)を実行するための指令を出力する。
【0099】
制御出力選択部733は、圧下板厚制御部61、速度張力制御部63、ミル速度板厚制御部65からの出力、速度補正選択部712からの制御方法(D)の選択結果、制御方法(B)の出力許可信号を入力とし、ロールギャップ制御部21、入側TR速度指令部41、入側TR制御部42、ミル速度設定部81へ制御指令を出力する。
【0100】
制御出力選択部733は、具体的には、圧延された被圧延材mの板厚に基づきロール対Rにおけるロール間の間隔を制御するため、圧下板厚制御部61からの出力を積分処理部にて積分処理してこれをロールギャップ制御部21に出力する。また、制御出力選択部733は、圧延機1に挿入される被圧延材mの張力に基づきテンションリールから送り出される被圧延材mの速度を制御するため、速度張力制御部63からの出力を積分処理部にて積分処理してこれを入側TR速度指令部41に出力する。
【0101】
また、制御出力選択部733は、速度補正選択部712が制御方法(D)を選択した場合、ロールR1、R2の周速度を制御するため、ミル速度板厚制御部65からの出力をミル速度設定部81に出力する。
【0102】
以上のように、当該圧延制御装置13が上記構成であることで、制御方法(B)および制御方法(D)を用いて安定した塑性加工状態を維持することができ、たとえ箔圧延を行う場合であっても、圧延された被圧延材mの板厚の変動を抑制して出側板厚精度を向上することができる。
【0103】
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。当該圧延制御装置14は、圧延機に挿入される被圧延材の張力に基づきロール対におけるロール間の間隔を制御すると共に、圧延された被圧延材の板厚に基づきテンションリールから送り出される被圧延材の速度を制御する(制御方法(C))速度板厚制御手段と、圧延された被圧延材の板厚に基づき、ロール対におけるロールの周速度を制御するか否かを選択すると共に、周速度の制御が選択された場合にロールの周速度を制御する(制御方法(D))ロール速度選択制御手段と、を備えている。
【0104】
当該圧延制御装置14は、上述した速度板厚制御手段およびロール速度選択制御手段が行う制御方法(C)および(D)を実行するため、具体的には、例えば、
図22に示すように、ロールギャップ制御部21と、ミル速度制御部31と、入側TR速度指令部41と、入側張力設定部43と、出側張力設定部53と、入側張力電流変換部44と、出側張力電流変換部54と、入側TR制御部42と、出側TR制御部52と、入側張力制御部46と、出側張力制御部56と、速度板厚制御部62と、圧下張力制御部64と、ミル速度板厚制御部65と、ミル速度設定部81と、制御方法選択部74と、により構成することができる。なお、当該圧延制御装置14は、以下に示す具体的構成にのみ限定されるものではない。また、制御方法選択部74以外の各部の構成は、第1の実施形態のものと同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。また、当該圧延制御装置14を用いた圧延制御方法については、制御態様が制御方法(C)および(D)に限定されていること以外は第1の実施形態と同様であるので、その説明を援用する。
【0105】
制御方法選択部74は、被圧延材mの圧延状態に応じ、上述した制御方法(C)および(D)の制御方法を用いて圧延を行う。この制御方法選択部74は、
図23に示すように、概略的に、速度補正選択部712と、制御態様選択部741と、制御出力選択部743とにより構成されている。なお、速度補正選択部712は、第1の実施形態のものと同様であるので、同一部分には同一符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0106】
制御態様選択部741は、制御方法(B)を実行するための指令を出力する。
【0107】
制御出力選択部743は、速度板厚制御部62、圧下張力制御部64、ミル速度板厚制御部65からの出力、速度補正選択部712からの制御方法(D)の選択結果、制御方法(C)の出力許可信号を入力とし、ロールギャップ制御部21、入側TR速度指令部41、入側TR制御部42、ミル速度設定部81へ制御指令を出力する。
【0108】
制御出力選択部743は、具体的には、圧延された被圧延材mの板厚に基づきテンションリールから送り出される被圧延材mの速度を制御するため、速度板厚制御部62からの出力を積分処理部にて積分処理してこれを入側TR速度指令部42に出力する。また、制御出力選択部743は、圧延機1に挿入される被圧延材mの張力に基づきロール対Rにおけるロール間の間隔を制御するため、圧下張力制御部64からの出力を積分処理してこれをロールギャップ制御部21に出力する。
【0109】
また、制御出力選択部743は、速度補正選択部712が制御方法(D)を選択した場合、ロールR1、R2の周速度を制御するため、ミル速度板厚制御部65からの出力をミル速度設定部81に出力する。
【0110】
以上のように、当該圧延制御装置14が上記構成であることで、制御方法(C)および制御方法(D)を用いて安定した塑性加工状態を維持することができ、たとえ箔圧延を行う場合であっても、圧延された被圧延材mの板厚の変動を抑制して出側板厚精度を向上することができる。
【0111】
なお、本発明は、上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0112】
例えば、上述した実施形態では、圧延制御装置11〜14が制御する圧延機1としてシングルスタンド圧延機を例示して圧延制御装置等を説明したが、複数のスタンドを有するタンデム圧延機(不図示)の制御を行う圧延制御装置であってもよい。このようなタンデム圧延機に用いる圧延制御装置は、タンデム圧延機の複数のスタンド全てにおいて被圧延材が塑性変形状態となるように、最下流のスタンド(複数のスタンドのうちの最も後段のスタンド)のミル速度をロール速度選択制御手段が制御すればよい。この場合、出側板厚は、各スタンドの出側に設置された板厚計により計測したり、前後のスタンドのミル速度を比較することで得ることができる。