(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行体と、前記走行体の上部に旋回可能に設けられた旋回体と、前記旋回体の前部に設置した作業機と、前記旋回体の上部に備えられた運転席と、機体を駆動する複数の油圧アクチュエータと、前記複数の油圧アクチュエータを駆動する圧油を吐出する油圧ポンプと、前記油圧ポンプを駆動する原動機と、前記油圧ポンプから前記複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れを制御する複数のコントロールバルブと、機体を遠隔操作するためのリモコンと、前記リモコンからの無線操作信号に応じて前記複数のコントロールバルブを駆動する信号を出力する制御装置とを備えた無線操作式油圧ショベルにおいて、
前記リモコンの車載状態を検知するために前記旋回体に設置した質量センサと、
前記旋回体の周囲に設定された監視エリアに監視信号を送信する送信アンテナとを備え、
前記リモコンは、前記監視信号を受信すると前記無線操作信号とは周波数の異なる応答信号を送信するように構成されており、
前記制御装置は、前記応答信号を受信した場合、前記質量センサの信号を基に前記リモコンが車載状態であるかを判定し、前記リモコンが車載状態でなければ前記複数のコントロールバルブを動作不能とし、前記リモコンが車載状態であれば前記複数のコントロールバルブを動作可能とすることを特徴とする無線操作式油圧ショベル。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
−無線操作式油圧ショベル−
図1は本発明の一実施形態に係る無線操作式油圧ショベルの全体構造を表す側面図、
図2は上面図、
図3は
図1の無線操作式油圧ショベルに備えられた運転席の斜視図である。本願明細書では
図1の左右を前後とする。
図1〜
図3に示した無線操作式油圧ショベルは、オペレータが搭乗して操縦するいわゆる後方超小旋回機をベースマシンとして無線操作式に改修した機体である。後方小旋回機とは、狭隘な現場での作業を想定して後端旋回直径が走行体の全幅と同程度以下(クローラ全幅の120%以下)となるように設計された油圧ショベルである。本願明細書における以下の記載においては無線操作式油圧ショベルを「油圧ショベル」と略称し、単に油圧ショベルと記載した場合には断り書きのない限り本実施形態に係る無線操作式油圧ショベルを指すこととする。
図1及び
図2に示した油圧ショベルは、走行体10、旋回体20及び作業機70を備えている。
【0012】
−走行体−
走行体10は、左右の走行装置11及びセンタフレーム12(
図2)を備えている。左右の走行装置11はクローラ式であり、サイドフレーム11a、従動輪11b、駆動輪11c、走行用油圧モータ35(
図4)、減速機11e及び履帯11fそれぞれ備えている。左右のサイドフレーム11aは走行方向(
図1中では左右方向)に延び、長手方向の一方側(
図1では左側)に従動輪11bを、他方(同右側)に駆動輪11cを支持している。走行用油圧モータ35は、左右のサイドフレーム11aの長手方向の他方側に支持されており、減速機11eを介して出力軸が駆動輪11cに連結されている。履帯11fは左右の走行装置11のそれぞれにおいて従動輪11bと駆動輪11cとの間に掛け回されている。走行用油圧モータ35が駆動されると減速機11eを介して駆動輪11cに回転動力が伝達され、駆動輪11cと従動輪11bとの間で履帯11fが循環駆動して機体が走行する。
【0013】
センタフレーム12は左右の走行装置11(サイドフレーム11a)を連結すると共に、上部に旋回体20を支持する。このセンタフレーム12は左右のサイドフレーム11aと共に走行体10のフレーム、つまりトラックフレームを構成する。センタフレーム12には排土装置13が設けられている。排土装置13はセンタフレーム12の走行方向の一方側(
図1では左側)に連結されている。この排土装置13はブレード昇降用油圧シリンダ(不図示)及びブレード13aを備えており、ブレード昇降用油圧シリンダの伸縮動作に伴ってリンク機構を介してブレード13aが昇降するようになっている。なお、詳しい説明は省略するがセンタフレーム12は左右の幅が可変な構造としてあり、
図2に二点鎖線で示したように左右の走行装置11の間隔は専用の油圧シリンダ(不図示)を伸長することで拡大できるようになっている。
【0014】
−旋回体−
旋回体20は、旋回フレーム21、カウンタウエイト22、運転室23、リモコン台24及びカバー25を備えている。運転室23以外の大部分を覆うカバー25を備えている。旋回フレーム21は旋回体20の基礎支持構造体であり、旋回輪26を介して走行体10の上部に旋回可能に設けられている。カウンタウエイト22は作業機70とのバランスをとるための錘であり、旋回フレーム21の後縁部に設けられている。旋回フレーム21にはまた、旋回用油圧モータ(
図4の作業用油圧アクチュエータ79参照)、燃料タンク(不図示)、作動油タンク(不図示)、エンジン33、油圧ポンプ34、パイロットポンプ39(各
図4)等が搭載されており、これらがカバー25で覆われている。
【0015】
また、旋回フレーム21の前部には作業機70を取り付けるためのスイングポスト27が設けられている。スイングポスト27は、垂直ピン(不図示)を介して旋回フレーム21に対し水平に回動可能となっている。また、スイングポスト27は旋回フレーム21に設けられたスイング用油圧シリンダ28に連結ピン(不図示)を介して連結されており、スイング用油圧シリンダ28の伸縮に伴って垂直ピンを中心に回動する。後述する作業機70はスイングポスト27に支持されており、スイングポスト27が左右に回動するのに伴って作業機70が左右方向にスイングするようになっている。
【0016】
運転室23は、旋回フレーム21の上部に備えられた運転席29の上方をルーフ23cで覆う3柱キャノピー(支柱3本のキャノピー)である。運転室23の1本の前支柱23aは運転席29の前方の右側に位置するように、2本の後支柱23bは運転席29の後方の左右両側に位置するようにそれぞれ旋回体20に設置されており、運転席29の上方に配置したルーフ23cを支持している。通常の油圧ショベルであれば、運転席の左右の両側に作業機及び旋回用油圧モータを操作する操作レバー(十字レバー)、運転席の前方に走行体を操作する走行用の操作レバー(ペダル付きレバー)が旋回体に組み付けられている。それに対し、本実施形態の油圧ショベルでは、こうした組み付けられた車載の操作装置が省略されており、操縦用の操作装置として備わっているのは後述するリモコン43のみである。
【0017】
リモコン台24は、機体(油圧ショベル)を遠隔操作するための無線操作式の操作装置であるリモコン43(
図4)を置くための台である。このリモコン台24は、運転席29の前方において、運転席29の背凭れの上端よりも低く運転席29の座面よりも高い位置に設置されている。運転席29に座ったオペレータに操作し易い位置でリモコン43を支持するためである。本実施形態でリモコン台24を支持しているのはL字型に形成されたバー31aであり、このバー31aは運転席29の前方左側で旋回フレーム21から立ち上がり、右側に折れ曲がって運転室23の前支柱23aに接続している。リモコン台24は、運転席29の前方に位置するバー31aにおける水平部分に対してボルト31b及びナット31cを介して支持されている。ボルト31bは左右に延びており、ボルト31b及びナット31cを緩めることでリモコン台24はボルト31bを軸にして前後に傾斜して変位するように構成されている。ボルト31b及びナット31cを締め込むことで、リモコン台24は任意の角度で固定される。また、リモコン台24には質量センサ32が備わっており、この質量センサ32によりリモコン台24にリモコン43が置かれたこと、つまりリモコン43が車載状態であることが検知できるようになっている。
【0018】
−作業機−
作業機70は土砂の掘削等の作業をするために旋回体20の前部に設けた多関節型のフロント作業機(本実施形態ではスイングポスト式)であり、作業腕71及びアタッチメント74を含んで構成されている。作業腕71は、ブーム72、アーム73、ブーム用油圧シリンダ75、アーム用油圧シリンダ76及びアタッチメント用油圧シリンダ77を備えている。ブーム72はスイングポスト27に回動可能に連結され、アーム73はブーム72の先端に、アタッチメント74はアーム73の先端に、それぞれ回動可能に連結されている。ブーム72、アーム73及びアタッチメント74はいずれも左右に水平に延びる回転軸を支点にして鉛直面内で回動する。
図1では作業腕71にアタッチメント74としてバケットを装着した例を表しているが、装着されるアタッチメントの種類はこれに限られない。ブーム用油圧シリンダ75は旋回体20(スイングポスト27)及びブーム72に、アーム用油圧シリンダ76はブーム72及びアーム73に、それぞれ両端が連結されている。アタッチメント用油圧シリンダ77は、基端がアーム73に連結される一方、先端がリンク78を介してアーム73の先端部及びアタッチメント74に連結されている。ブーム用油圧シリンダ75、アーム用油圧シリンダ76及びアタッチメント用油圧シリンダ77は、油圧ポンプ34から吐出される圧油で駆動されて伸縮動作により作業機70を駆動する。
【0019】
−駆動システム−
図4は本発明の一実施形態に係る無線操作式油圧ショベルを駆動する駆動システムの要部を抜き出して示す回路図である。
図4では、スイング用油圧シリンダ、ブレード昇降用油圧シリンダについての回路は図示省略してある。同図に示したシステムは、油圧ポンプ34、パイロットポンプ39、コントロールバルブ36,38、電磁比例弁41a,41b,42a,42b、遮断弁40、レシーバ44及び制御装置50を備えている。これらの構成要素について以下に順次説明していく。
【0020】
油圧ポンプ34は、機体(油圧ショベル)を駆動する複数の油圧アクチュエータを駆動する圧油を吐出する可変容量型油圧ポンプである。この油圧ポンプ34は原動機としてのエンジン33により駆動される。原動機としてエンジン(内燃機関)に代えて電動機が採用される場合もある。
【0021】
パイロットポンプ39は、油圧ポンプ34から機体を駆動する複数の油圧アクチュエータへの圧油の流れを制御する複数のコントロールバルブ(コントロールバルブ36,38を含む)を駆動するパイロット信号の元圧を出力する固定容量型の油圧ポンプである。本実施形態ではパイロットポンプ39も油圧ポンプ34と共にエンジン33で駆動されるが、油圧ポンプ34の原動機とは異なる原動機で駆動される構成が採用される場合もある。
【0022】
コントロールバルブ36は、油圧ポンプ34から走行用油圧モータ35への圧油の流れを制御する油圧パイロット操作式の方向切換弁である。走行用油圧モータ35は機体(油圧ショベル)を駆動する複数の油圧アクチュエータに含まれるものであり、前述した通り走行体10の左右の走行装置11を駆動する油圧アクチュエータである。コントロールバルブ38は、油圧ポンプ34から作業用油圧アクチュエータ79への圧油の流れを制御する油圧パイロット操作式の方向切換弁である。作業用のコントロールバルブ38は逆止弁37を介して油圧ポンプ34に接続されている。作業用油圧アクチュエータ79は機体(油圧ショベル)を駆動する複数の油圧アクチュエータに含まれるものであり、ブーム用油圧シリンダ75、アーム用油圧シリンダ76、アタッチメント用油圧シリンダ77及び旋回用油圧モータを総称したものである。
図4では図の簡単のために作業用油圧アクチュエータ79を1つの油圧シリンダで代表して示してある。前述した通り、ブーム用油圧シリンダ75はブーム72を、アーム用油圧シリンダ76はアーム73を、アタッチメント用油圧シリンダ77はアタッチメント74を駆動する油圧アクチュエータである。また、旋回用油圧モータは、旋回体20を旋回駆動する油圧アクチュエータである。
【0023】
電磁比例弁41a,41bは走行用のコントロールバルブ36の受圧室に繋がるパイロットライン36a,36bに、電磁比例弁42a,42bは作業用のコントロールバルブ38の受圧室に繋がるパイロットライン79a,79bにそれぞれ設けられている。パイロットライン36a,36b,79a,79bはパイロットポンプ39の吐出配管であるパイロットライン39aにそれぞれ並列に接続している。電磁比例弁41a,41b,42a,42bは電磁比例減圧弁であり、リモコン用コントローラ46(後述)からの電気信号により作動する。電気信号によりソレノイドが励磁されると、電磁比例弁41a,41b,42a,42bは電気信号の大きさに比例した開度で開き、パイロットライン36a,36b,79a,79bを対応するコントロールバルブの受圧室に接続する。つまりパイロットポンプ39の吐出圧が電磁比例弁41a,41b,42a,42bで減圧され、コントロールバルブ36,38を駆動するパイロット信号が生成される。消磁状態では、電磁比例弁41a,41b,42a,42bはパイロットライン36a,36b,79a,79bをタンクに接続する。
【0024】
例えば電磁比例弁41aが開くと走行用のコントロールバルブ36の
図4中の上側の受圧室にパイロット信号が作用し、コントロールバルブ36が図中上側のポジションに切り換わって走行用油圧モータ35が一方側に回転する。電磁比例弁41bが開くと走行用のコントロールバルブ36の下側の受圧室にパイロット信号が作用し、コントロールバルブ36が図中下側のポジションに切り換わって走行用油圧モータ35が他方側に回転する。また電磁比例弁42aが開くと作業用のコントロールバルブ38の上側の受圧室にパイロット信号が作用し、コントロールバルブ38が図中上側のポジションに切り換わって作業用油圧アクチュエータ79が一方側に駆動する。電磁比例弁42bが開くと作業用のコントロールバルブ38の下側の受圧室にパイロット信号が作用し、コントロールバルブ38が図中下側のポジションに切り換わって作業用油圧アクチュエータ79が他方側に駆動する。いずれの受圧室にもパイロット信号が作用していない場合、コントロールバルブ36,38はスプリングにより中立位置に固定される。これにより圧油の給排が遮断されて対応する油圧アクチュエータが停止する。
【0025】
遮断弁40は、パイロットポンプ39から複数のコントロールバルブ(コントロールバルブ36,38を含む)へのパイロット信号を遮断する電磁駆動式の遮断弁(切換弁)である。この遮断弁40はリモコン用コントローラ46(後述)からの電気信号により駆動され、パイロットライン39aの連通及び遮断を切り換える。パイロットライン39aが開通することで、電磁比例弁41a,41b,42a,42bがパイロットポンプ39に接続されてリモコン43による機体の遠隔操作が有効化される。反対にパイロットライン39aが遮断される(タンクに接続される)ことで、遠隔操作が無効化される。遮断弁40が閉じると、コントロールバルブ36,38を含め、油圧ショベルの動作に関わる油圧アクチュエータに対応する全てのコントロールバルブが動作不能となる。遮断弁40はいわゆるゲートロック弁(特開2018−123631号公報参照)と同様の役割を果たす。ゲートロック弁を遮断弁40に流用しても良い。
【0026】
レシーバ44は、油圧ショベルを遠隔操作する無線信号を受信する無線受信機であり、例えば運転席29の下方に位置するように旋回体20に設けられている。このレシーバ44は、検知用コントローラ47にケーブルで接続され、受信したリモコン43からの信号を検知用コントローラ47に出力する。
【0027】
ここで、リモコン43は油圧ショベルを遠隔操作する無線信号を送信する無線送信機で、油圧ショベルとは別個独立した構成であり操作者が携帯可能である。このリモコン43には、例えば複数(2本のみ図示)の操作レバー43aや、これら操作レバー43aの傾斜角を検出するポテンショメータ(不図示)等が備わっている。操作レバー43aを操作するとその操作方向と操作量がポテンショメータで検出され、操作に応じた無線信号がレシーバ44に送信される。本実施形態では、走行体の左右の走行装置11による走行動作、ブーム72、アーム73及びアタッチメント74による掘削等の動作、旋回体20の旋回動作が、リモコン43の操作レバー43aの操作により指示される。またリモコン43は受信機(不図示)を内蔵しており、受信機により監視信号(後述)を受信すると応答信号を送信するように構成されている。この応答信号はレシーバ44に出力する無線操作信号とは周波数帯の異なる別個の無線信号であり、リモコン43は、応答信号を無線操作信号とは異なる送信部から送信するか、又は無線操作信号に優先して応答信号を送信するように構成されている。
【0028】
−制御装置−
制御装置50はコンピュータであり、リモコン43からの無線操作信号に応じてコントロールバルブ36,38を含む複数のコントロールバルブを駆動する信号を出力するようにプログラムされている。本実施形態では範囲検知装置45及びリモコン用コントローラ46の2つのコンピュータで制御装置50を構成した場合を例として図示しているが、単体のコンピュータで制御装置50を構成しても良い。これらの範囲検知装置45やリモコン用コントローラ46はいずれも運転席29の下方に位置するように旋回体20に搭載されている。
【0029】
図5は制御装置の模式図である。
図5を
図4と共に参照して制御装置50について説明する。
【0030】
・範囲検知装置
範囲検知装置45はリモコン43を携帯したオペレータが油圧ショベルの周囲に居るかを判定する装置であり、その実現手段として、検知用コントローラ47、送信アンテナ48及び受信アンテナ49を備えている。
【0031】
送信アンテナ48は旋回体20の周囲に設定された監視エリアに監視信号(例えば赤外線)を送信する送信機である。監視信号は送信アンテナ48に給電されている間は常時出力される。監視エリアは、半径が最大旋回半径(旋回中心から最大限前方に伸ばした作業機70の先端までの距離)と同じかそれよりも所定値だけ大きく設定されていて中心が旋回体20の旋回中心に一致する球体の又は油圧ショベルの接地面に規定される円形の領域である。監視エリアはメンテナンス等を行うサービス員等の特定の人員(設定変更用のパスワードや操作パターンを知る者、又は設定変更用の特定の器具を持つ者)により拡大及び縮小することができるように構成してある。監視エリアの拡大及び縮小は、例えば送信アンテナ48による監視信号の出力強度を変更することにより行うことができる。
【0032】
受信アンテナ49は、監視信号を受けたリモコン43からの応答信号を受信する受信機である。応答信号は前述した通り監視信号に応答してリモコン43から出力される無線信号であり、例えばオペレータが監視エリア内に進入するとオペレータが携帯するリモコン43から出力される。従って受信アンテナ49で応答信号が応答されたことにより監視エリア内にオペレータが居ることが推定される。
【0033】
検出用コントローラ47は、受信アンテナ49を介して入力される応答信号と基にリモコン43による油圧ショベルの無線操作の有効及び無効を切り換えるようにプログラムされている。検出用コントローラ47は、SCI(シリアルコミュニケーションインタフェイス)51〜53、ROM(リードオンリーメモリ)54、CPU(中央演算処理装置)55、RAM(ランダムアクセスメモリ)56、SCI57及びA/D変換機58を備えている。SCI51はケーブルを介してレシーバ44から無線操作信号に基づくシリアルデータを入力する。SCI52は監視信号について送信アンテナ48にシリアルデータを出力する。SCI53はケーブルを介して受信アンテナ49から応答信号に基づくシリアルデータを入力する。ROM54は無線操作の有効及び無効を切り換える制御処理プログラム(後述)を記憶している。CPU55は、ROM54に記憶されたプログラムに従って、リモコン43からの無線操作信号及び応答信号、質量センサ(重量センサ)32の信号を基に演算処理を実行し、電磁比例弁41a,41b,42a,42b及び遮断弁40に対する電気指令信号を生成する。RAM56は例えばCPU55の演算途中の数値等を一時的に記憶する。SCI57は、CPU55によって生成された電気指令信号のシリアルデータをケーブル経由でリモコン用コントローラ46に出力する。A/D変換機58は質量センサ32からの検出信号(アナログ信号)をデジタル信号に変換する。
【0034】
・リモコン用コントローラ
リモコン用コントローラ46は、範囲検知装置45から入力されたシリアルデータに基づき、遮断弁40及び電磁比例弁41a,41b,42a,42bに電気指令信号を出力する。リモコン用コントローラ46には、SCI61、ROM62、CPU63、RAM64及びD/A変換機65が備わっている。
【0035】
SCI61は、ケーブルを介して検知用コントローラ47からシリアルデータを入力する。ROM62は、検知用コントローラ47から入力されたシリアルデータに基づいて遮断弁40及び電磁比例弁41a,41b,42a,42bに対する電気信号を演算するプログラムを記憶している。CPU63は、このROM62に記憶されたプログラムに従って処理を実行し、遮断弁40及び電磁比例弁41a,41b,42a,42bに対する電気指令信号を生成する。RAM64は例えばCPU63の演算途中の数値等を一時的に記憶する。D/A変換機65はCPU63で生成された電気指令信号をデジタル信号からアナログ信号に変換し、遮断弁40及び電磁比例弁41a,41b,42a,42bに出力する。
【0036】
−制御手順−
制御装置50は、リモコン43からの応答信号を受信した場合、質量センサ32の信号を基にリモコン43が車載状態であるか、本実施形態ではリモコン台24に置かれているかを判定する。制御装置50は、リモコン43が車載状態でなければ遮断弁40を閉じてコントロールバルブ36,38を含む複数のコントロールバルブを動作不能とし、リモコン43が車載状態であれば遮断弁40を開いて複数のコントロールバルブを動作可能とする。この制御装置50による遠隔操作の有効及び無効の切換手順を表すフローチャートを
図6に示す。
【0037】
図6の手順は制御装置50に通電されている間に繰り返し実行される。同図の手順を開始すると、制御装置50は、まずリモコン43からの応答信号が受信アンテナ49を介して入力されているか、言い換えればリモコン43が監視エリア内にあるかを判定する(ステップS11)。リモコン43が監視エリア内にあって応答信号が入力されている場合、制御装置50は質量センサ32からの検出質量Mを入力し、これが設定質量M0以上かを判定する(ステップS12)。設定質量M0はリモコン43の質量又はこれよりも若干軽い値に設定されており、M≧M0でリモコン台24にリモコン43が設置されていること、つまりオペレータが搭乗してリモコン43が車載状態にあることが推定される。
【0038】
リモコン43が監視エリア外にあって応答信号が入力されていない場合(ステップS11)、又はリモコン43が監視エリア内にあってM≧M0である場合(ステップS12)、制御装置50はステップS13に手順を移す。ステップS13に手順を移すと、制御装置50は、遮断弁40を開放してリモコン43による油圧ショベルの遠隔操作を有効化してステップS11に手順を戻す。この状態においてリモコン43の操作レバー43aを操作すると、電磁比例弁41a,41b,42a,42b等が操作に応じて駆動され、コントロールバルブ36,38等が作動して油圧ショベルが動作する。つまりリモコン43による油圧ショベルの無線操作が可能となる。
【0039】
リモコン43が監視エリア内にあって(ステップS11)かつM<M0である場合(ステップS12)、制御装置50はステップS14に手順を移す。ステップS14に手順を移すと、制御装置50は、遮断弁40を遮断してリモコン43による油圧ショベルの遠隔操作を無効化してステップS11に手順を戻す。この場合、リモコン43の操作レバー43aを操作しても遮断弁40で遮断されて電磁比例弁41a,41b,42a,42b等にパイロットポンプ39からの一次圧が入力されず、コントロールバルブ36,38等が中立位置で固定されて油圧ショベルが停止する。つまりリモコン43による油圧ショベルの無線操作が不能となる。
【0040】
−効果−
(1)本実施形態においては、例えば油圧ショベルの周囲の状況を目視確認するためにオペレータが油圧ショベルに近付いて監視信号が放射されている監視エリアに進入した場合、オペレータの携帯するリモコン43から監視信号に対する応答信号が出力される。この応答信号を受信すると制御装置50によってコントロールバルブ36,38が動作不能とされ、油圧ショベルの動作に自動的にインターロックが掛かる。従って、油圧ショベルを確実に停止させた状態でオペレータが油圧ショベルに乗り込むことができる。そして、監視エリア内であっても、オペレータが搭乗してリモコン台24が車載状態となったことが質量センサ32の信号を基に検出された場合には、制御装置50によりインターロックが解除される。オペレータは、このようにして運転室23で保護された状態でリモコン43を用いた油圧ショベルを搭乗操作することができる。以上のように、リモコン43を持ったオペレータが周囲にいる状況で油圧ショベルが作動することがなく、かつオペレータが搭乗した状態ではリモコン43による油圧ショベルを無線操作することができる。
【0041】
(2)本実施形態ではパイロットポンプ39のパイロットライン39aに遮断弁40を設け、電磁比例弁41a等に対する一次圧を遮断弁40により断ってコントロールバルブ36,38に対するパイロット圧を遮断することによりインターロックを掛ける。このように油圧回路を利用して物理的なインターロック機構を構成することで、インターロックの作動について高い信頼性が確保できる。但し、上記の本質的な効果(1)を得る限りにおいては、必ずしも油圧的なインターロックには限定されず、例えば応答信号が入力されたら制御装置50から電磁比例弁41a等に対する電気指令信号が出力されないようにすることもできる。
【0042】
(3)運転席29の前方にリモコン台24を設置し、リモコン台24にリモコン43を置くことでリモコン43の車載状態が検知されるように構成したので、リモコン台24にリモコン43を設置して搭乗操作の準備を整えることでインターロックを解除できる。但し、上記効果(1)を得る限りにおいてはリモコン台24を設置する必要は必ずしもなく、例えば運転席29に質量センサ32を設け、オペレータが運転席29に座ったらインターロックが解除される構成としても良い。ただ、運転席29に質量センサ32を取り付ける場合、例えば運転席29に荷物を置いた場合にもインターロックが解除されてしまう可能性がある。このような可能性を排除する上では、質量センサ付きのリモコン台24を設けることに優位性がある。
【0043】
(4)リモコン台24が変位可能であるため、オペレータの体格や姿勢に合わせてリモコン台24の姿勢を調整することで、搭乗操作時の操作性が向上する。但し、上記効果(1)を得る限りにおいてはリモコン台24は固定構造であっても良い。
【0044】
(5)本実施形態においては操縦用の操作装置がリモコン43のみである。一般的な十字操作式の操作レバーや走行操作用のペダル付き操作レバーを省略することで機体を軽量化することができ、またこれら操作装置が存在しない分だけリモコン43を用いた搭乗操作時における運転室23の居住性が良い。但し、上記効果(1)を得る限りにおいては、一般的な操作装置が併存する構成であって構わない。
【0045】
−変形例−
上記の実施形態では、後方小旋回機と呼ばれる小型の油圧ショベルに本発明を適用した場合を例に挙げて説明したが、例えば中型又は大型の油圧ショベルにも本発明は適用可能である。また、電磁比例弁41a,41b,42a,42bを介してコントロールバルブ36,38を駆動する構成を例に挙げて説明したが、例えばコントロールバルブ36,38を電磁駆動式として電磁比例弁41a,41b,42a,42bを省略した構成としてもよい。また、リモコン用コントローラ46を介して遮断弁40に電気指令信号を出力する構成としたが、検知用コントローラ47から遮断弁40に電気指令信号を直接出力する構成としても良い。更には、監視信号の強度を調節して監視エリアを設定する場合を例示して説明したが、監視エリアは情報として設定しておく構成であっても良い。この場合、監視エリアよりも広範に監視信号を送信し、例えば
図6のステップS11で応答信号を基に計算されたリモコン43の位置情報が監視エリアの内側であるかを判定することで上記実施形態と同様の処理を実行することができる。