【文献】
Ma Cheng et al,Chemical Journal of Chinese Universities,Vol.21, No.6,2000年06月,pp884-887
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
例示的な態様の説明
本開示は、がんを処置するため、および/またはDNAに結合するために用いられ得る化合物を提供する。いかなる理論によって拘束されることを望むことなく、アントラサイクリン部分がDNAヘリックス中にインターカレーションし、ポリアミンテイルがリン酸骨格に結合すると考えられる。いくつかの態様において、本明細書に記載の化合物は、血液脳関門を通過する透過性の増加を示し、化合物が脳組織中に進入することを可能にする。本明細書に提供される化合物は、がん、特に脳、肺、および膵臓のがんを処置するために使用され得る。
【0019】
I. 本発明の化合物
本開示によって提供される化合物は、例えば、先の発明の概要の項および以下の特許請求の範囲に示される。それらは、実施例の項で概説する方法を用いて作ることができる。これらの方法は、当業者によって適用される有機化学の原則および技術を使用して、さらに修飾および最適化することができる。そのような原則および技術は、例えば、March’s Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure (2007)に教示され、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0020】
本開示の化合物は、1つまたは複数の非対称に置換された炭素原子または窒素原子を含むことができ、光学活性体またはラセミ体で単離され得る。したがって、特定の立体化学または異性体が具体的に示されない限り、化学式のすべてのキラル体、ジアステレオマー体、ラセミ体、エピマー体、およびすべての幾何異性体が意図される。化合物は、ラセミ化合物およびラセミ混合物、単一エナンチオマー、ジアステレオマー混合物および個々のジアステレオマーとして存在し得る。いくつかの態様において、単一のジアステレオマーが得られる。本開示の化合物のキラル中心は、S配置またはR配置を有することができる。
【0021】
本開示の化合物を表すために用いられる化学式は、通常、あり得る種々の異なる互変異性体のうちの1つのみを示す。例えば、多くの型のケトン基が、対応するエノール基と平衡状態で存在することが知られている。同様に、多くの型のイミン基が、エナミン基と平衡状態で存在する。所与の化合物についてどちらの互変異性体が示されているかに関わらず、およびどちらが最も優勢であるかに関わらず、所与の化学式のすべての互変異性体が意図される。
【0022】
本開示の化合物はまた、本明細書に記載される適応症に用いられるかそうでないかにかかわらず、先行技術において公知の化合物よりも、有効であり、毒性が低く、長く作用し、強力であり、副作用が少なく、容易に吸収され、および/または良好な薬物動態プロファイル(例えば、高い経口バイオアベイラビリティおよび/または低いクリアランス)を有し、および/または他の有用な薬理学的、物理的、もしくは化学的特性を有するという利点を有し得る。
【0023】
加えて、本開示の化合物を構成する原子は、このような原子の全ての同位体形態を含むことが意図される。本明細書で用いられる場合、同位体には、同じ原子番号を有するが、異なる質量数を有する原子が含まれる。一般的な例としては、ただし限定するものではないが、水素の同位体には三重水素及び重水素が含まれ、炭素の同位体には
13C及び
14Cが含まれる。
【0024】
また、本開示の化合物は、プロドラッグ形態で存在することもできる。プロドラッグは、医薬品の数多くの所望の品質(例えば、可溶性、バイオアベイラビリティ、製造など)を高めることが知られているため、本発明のいくつかの方法で用いられる化合物は、所望の場合、プロドラッグ形態で送達することができる。よって、本開示は、本開示の化合物のプロドラッグ、およびプロドラッグを送達する方法を企図する。本開示で用いられている化合物のプロドラッグは、その修飾が通例の操作またはインビボのいずれかで親化合物に開裂されるような方法で化合物に存在する官能基を修飾することにより調製することができる。従って、プロドラッグには、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、またはカルボキシ基が任意の基に結合しており、プロドラッグが対象に投与された際に開裂してヒドロキシ、アミノ、またはカルボン酸をそれぞれ形成する、本明細書に記載される化合物が含まれる。
【0025】
本明細書に提供される化合物の任意の塩形態の一部を形成する特定のアニオンまたはカチオンは、その塩が全体として薬理学的に許容されるものである限り、決定的なものではないと認められるべきである。薬学的に許容される塩ならびにその調製及び使用方法のさらなる例は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, and Use (2002)に示されており、これは参照によって本明細書に組み入れられる。
【0026】
多くの有機化合物は、それらが反応する溶媒、またはそれらを沈殿もしくは結晶化する溶媒と複合体を形成し得ることが理解されるであろう。これらの複合体は、「溶媒和物」として知られている。溶媒が水である場合、その複合体は、「水和物」として知られている。多くの有機化合物が、結晶形および非晶形を含む、2つ以上の固体形態で存在し得ることも理解される。その任意の溶媒和物を含む、本明細書に提供される化合物の全ての固体形態は、本開示の範囲内である。
【0027】
II. がん及び他の過剰増殖性疾患
過剰増殖性疾患は、細胞に制御不能な複製を開始させる任意の疾患と関連し得、その典型例が、がんである。がんの重要な要素の1つは、細胞の正常なアポトーシスサイクルが妨げられることであり、従って、細胞数を低減させる薬剤はこれらの疾患を処置するための治療剤として用いることができる。本開示では、本明細書に記載される化合物は、がん細胞を死滅させるもしくはこれらの増殖を阻害する(例えば、がん細胞数の低減につながる)ために、または過剰増殖性細胞を死滅させるもしくはこれらの増殖を阻害するために用いることができ、脳、肺、および膵臓のがんを含む種々のがんを処置するために用いることができる。いくつかの態様において、本化合物は、神経膠腫などの脳がんを処置するために用いることができる。
【0028】
本開示の化合物を用いて処置できるがん細胞は、限定されないが、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、乳房、結腸、食道、胃腸、歯茎、頭部、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、首、卵巣、前立腺、皮膚、胃、膵臓、精巣、舌、頚部、または子宮に由来する細胞を含む。加えて、がんは、具体的には以下の組織型のものであり得るが、これらに限定されない:悪性新生物;がん腫;未分化がん腫;巨細胞と紡錘細胞がん;小細胞がん;乳頭状がん;扁平上皮がん;リンパ上皮がん;基底細胞がん;石灰化上皮がん;移行上皮がん;乳頭状移行上皮がん;腺がん;悪性ガストリン産生腫瘍;肝内胆管がん;肝細胞がん及び肝内胆管がんの合併症;小柱状腺がん;腺様嚢胞がん;腺腫性ポリープにおける腺がん;腺がん;家族性大腸腺腫症による腺がん;固形がん;悪性カルチノイド腫瘍;細気管支肺胞性腺がん;乳頭状腺がん;嫌色素性がん;好酸性がん;好酸素性腺がん;好塩基性がん;明細胞腺がん;顆粒細胞がん;濾胞性腺がん;乳頭状及び濾胞性腺がん;非被包性硬化性がん;副腎皮質がん;類内膜がん;皮膚付属器がん;アポクリン腺がん;皮脂腺がん;耳垢腺がん;粘膜表皮がん;嚢胞腺がん;乳頭状嚢胞腺がん;乳頭状漿液性嚢胞腺がん;ムチン性嚢胞腺がん;膠様腺がん;印環細胞がん;浸潤性腺管がん;髄様がん;小葉がん;炎症性がん;乳房パジェット病;腺房細胞がん;腺扁平上皮がん;扁平上皮化生を伴う腺がん;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質腫瘍;悪性莢膜腫;悪性顆粒膜細胞腫;悪性男性ホルモン産生細胞腫;セルトリ細胞がん;悪性ライディッヒ細胞腫瘍;悪性脂質細胞腫瘍;悪性傍神経節腫;悪性乳房外傍神経節腫;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在性拡大黒色腫;巨大色素性母斑における黒色腫;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑; 肉腫;線維肉腫;悪性線維性組織球腫;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉間質肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;悪性混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;がん肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンネル腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;卵巣精上皮腫;胎生期がん;悪性テラトーマ;悪性卵巣甲状腺腫;絨毛がん;悪性中腎腫;血管肉腫;悪性血管内皮腫;カポジ肉腫;悪性血管周皮腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍骨性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽腫;間葉性軟骨肉腫;骨の巨細胞腫;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;エナメル芽細胞歯芽肉腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル芽細胞線維肉腫;悪性の松果体腫;脊索腫;悪性神経膠腫;脳室上衣腫;星状細胞腫;原形質性星状細胞腫;原線維性星状細胞腫;星状芽細胞腫;膠芽腫;乏突起膠腫;希突起膠芽腫;原始神経外胚葉性(primitive neuroectodermal);小脳肉腫;節芽細胞腫;神経芽細胞腫;網膜芽腫;嗅覚神経原性腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘肉腫;悪性顆粒細胞腫瘍;悪性リンパ腫;ホジキン病;傍肉芽腫;悪性リンパ腫(小リンパ球性);悪性リンパ腫(大細胞型びまん性);悪性リンパ腫、濾胞性;菌状息肉症;他の特定の非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発骨髄腫;マスト細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞性白血病;骨髄性白血病;好塩基性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;マスト細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄様肉腫;及び有毛細胞白血病。ある局面において、腫瘍は、骨肉腫、血管肉腫、横紋筋肉腫、平滑筋肉腫、ユーイング肉腫、膠芽腫、神経芽細胞腫、または白血病を含み得る。
【0029】
III. 薬学的組成物および治療的投与
A.薬学的組成物および製剤
臨床応用が企図されている場合、意図された用途に適した形態で薬学的組成物を調製することが必要である。いくつかの態様において、本開示の化合物を用いたこのような製剤が企図される。概して、これには発熱物質およびヒトまたは動物に有害であり得る他の不純物を本質的に含まない組成物の調製を伴う。
【0030】
送達ベクターを安定化し、標的細胞による取り込みを可能にするための適切な塩及び緩衝液を用いることが概して望まれる。緩衝液は、組換え細胞を患者の中に導入する際にも用いられる。本発明の水性組成物は、薬学的に許容される担体または水性媒体中に溶解または分散している、細胞に対する有効量のベクターを含む。このような組成物は、接種物とも呼ばれる。「薬学的にまたは薬理学的に許容される」というフレーズは、動物またはヒトに投与した際に、副作用、アレルギー反応、または他の有害作用を生じない分子種及び組成物を意味する。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤などが含まれる。薬学的活性物質のためのこのような媒体および剤の使用は当技術分野で周知である。任意の従来の媒体または剤が本発明のベクターまたは細胞と不適合である場合を除き、治療組成物におけるその使用が企図される。追加の活性成分も組成物に組み込むことができる。
【0031】
本発明の活性組成物には、典型的な薬学的製剤が含まれ得る。本発明に記載のこれらの組成物の投与は、標的組織がその経路を介して利用可能である限り、任意の一般的な経路を介する。このような経路は、経口、鼻、口腔、直腸、腟、尿道、または局所の経路を含む。あるいは、投与は、同所、皮内、皮下、筋肉内、腫瘍内、腹腔内、または静脈内の注射によって行うことができる。このような組成物は、通常、上記の薬学的に許容される組成物として投与される。
【0032】
活性化合物は、非経口でまたは腹腔内に投与することもできる。遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合して水中で調製することができる。また、分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、およびこれらの混合物中並びに油中で調製することもできる。通常の貯蔵および使用条件下において、これらの製剤は微生物の増殖を防ぐために保存剤を含有する。
【0033】
注射用に適した薬学的形態には、無菌注射溶液または分散液を即時調製するために、無菌水溶液または分散液、及び無菌粉末が含まれる。全ての場合において、この形態は、無菌でなければならず、かつ容易に注射可能な程度の流体でなければならない。この形態は、製造および貯蔵条件下で安定でなければならず、かつ細菌および真菌などの微生物の混入行為から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、および植物油を含有する、溶媒または分散媒であり得る。例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要な粒径の維持、および界面活性剤の使用によって、適正な流動性を維持できる。微生物作用の予防は、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗細菌剤および抗真菌剤によってもたらされ得る。多くの場合、例えば、糖類や塩化ナトリウムといった等張剤を含ませることが好ましい。注射用組成物の持続的吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンといった、吸収を遅らせる物質を組成物中で使用することによってもたらされ得る。
【0034】
無菌注射溶液は、必要な量の活性化合物を、必要に応じ先に列挙された様々な他の成分と共に、適切な溶媒中に組み込み、次に濾過滅菌を行うことによって調製される。概して、分散液は、塩基性分散媒および先に列挙されたものからの必要な成分を含有する無菌ビヒクルの中に、様々な無菌化された活性成分を導入することによって調製される。無菌注射溶液の調製用の無菌粉末の場合には、好ましい調製方法は、あらかじめ滅菌濾過されたその溶液から活性成分に加えて任意の所望の追加成分の粉末を生じさせる、真空乾燥法および凍結乾燥法である。
【0035】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤並びに吸収遅延剤などが含まれる。薬学的活性物質に対するこのような媒体および剤の使用は当技術分野で周知である。任意の従来の媒体または剤が、活性成分と不適合である場合を除き、治療用組成物における使用が企図される。追加の活性成分も組成物に組み込むことができる。
【0036】
経口投与については、本明細書に記載される化合物は賦形剤と共に組み入れられ、非摂取用のマウスウォッシュ及び歯磨剤の形態で使用することができる。マウスウォッシュは、ホウ酸ナトリウム溶液(ドーベル液)などの適切な溶媒中に、必要な量の活性成分を組み込んで調製することができる。あるいは、活性成分は、ホウ酸ナトリウム、グリセリン及び炭酸水素カリウムを含有する殺菌洗浄液に組み込むことができる。また活性成分は、ゲル、ペースト、粉末およびスラリーを含む、歯磨剤中に分散させてもよい。水、結合剤、研磨材、矯味矯臭剤、発泡剤、および保湿剤を含み得る歯磨きペーストに、活性成分を治療的有効量で添加することができる。
【0037】
本開示の組成物は、中性の形態または塩の形態で配合することができる。薬学的に許容される塩には、(タンパク質の遊離アミノ基で形成された)酸付加塩が含まれ、これは、例えば塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成される。遊離カルボキシル基を用いて形成される塩は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウム、または水酸化鉄などの無機塩基、及びイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基から得ることもできる。
【0038】
処方時、溶液は、用量処方に適合する方法かつ治療に有効な量で投与される。製剤は、注射溶液、薬物放出カプセルなどの様々な剤形で容易に投与される。水溶液での非経口投与については、例えば、溶液は必要に応じて緩衝化され、液体希釈剤をまず十分な生理的食塩水またはグルコースで等張化すべきである。これらの特定の水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、及び腹腔内の投与に特に適している。これに関連し、用いることができる無菌水性媒体は、本開示に照らして当業者に公知である。例えば、1投薬量を1 mLの等張NaCl溶液に溶解し、1000 mLの皮下注入流体を添加するか、または提案された注入部位に注射することができる(例えば、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」、15th Edition、1035〜1038頁及び1570〜1580頁を参照)。処置を受けている対象の状態によって、投薬量の変動が必然的に生じる。いずれにせよ、投与責任者は個々の対象に適切な用量を決定する。さらに、ヒトへの投与については、調製物は、FDAのOffice of Biologics規格で要求される無菌性、発熱性、一般的安全性および純度の基準を満たすべきである。
【0039】
B. 処置方法
特に、本明細書には患者(例えば、ヒト対象)におけるがんの処置に使用することができる組成物が開示されている。上記の組成物は、好ましくは哺乳動物(例えば、齧歯類、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ネコなど)に有効量で、すなわち、処置対象に所望の結果をもたらす(例えば、がん性細胞のアポトーシスを引き起こす)ことが可能な量で、投与される。本発明の方法で利用される組成物の毒性及び治療有効性は、標準的な薬学的手順によって決定することができる。医学及び獣医学の技術分野に周知のとおり、任意の動物1頭のための投薬量は、対象のサイズ、体表面積、体重、年齢、投与される特定の組成物、投与の期間及び経路、全体的健康状態、がんの臨床症状、及び同時に投与される他の薬物を含む、多くの要因に依存する。本明細書に記載の組成物は、通常、がん性細胞の死滅を誘導する(例えば、がん細胞のアポトーシスを誘導する)投薬量で投与され、これは、血液学的パラメータ(全血球計算(CBC))の低下、またはがん細胞の成長もしくは増殖の低下を確認することによりアッセイされる。いくつかの態様において、がんの処置に使用される化合物の量は、約0.01mg〜約10,000mg/日と算定される。いくつかの態様において、その量は、約1mg〜約1,000mg/日である。いくつかの態様において、薬物の代謝的分解の増加もしくは減少、または経口投与の場合における、消化管による摂取の減少などの、特定の患者の生物学的因子に基づいて、これらの投薬を減らすかまたは増やすことができる。加えて、化合物は、より有効であり得るため、同様の効果を達成するために必要な用量がより少量となる。そのような用量は、通常、1日に1回数週間投与されるか、またはがん細胞の十分な低減が達成されるまで投与される。
【0040】
概して、本発明の処置方法(予防的処置を含む)は、治療的有効量の本明細書に記載の組成物を、哺乳動物、特にヒトを含む、それを必要とする対象に投与することを含む。そのような処置は、疾患、障害、またはこれらの症状を患っている、有する、それにかかりやすい、またはそうなる危険がある対象、特にヒトに、好適に投与される。それらの対象が「そうなる危険がある」かの判定は、対象または医療提供者の診断検査または所見(例えば、遺伝子検査、酵素またはタンパク質マーカー、(本明細書で定義される)マーカー、家族歴など)による客観的または主観的判定によってなされ得る。
【0041】
IV. 併用療法
本明細書に記載の化合物は、追加の化学療法剤または患者が経験する1つまたは複数の副作用を緩和する化合物を用いて、併用療法で使用され得ることが考慮されている。
【0042】
さらに、がん療法の分野では、治療法を組み合わせることが非常に一般的である。以下は、本開示の療法と共に使用され得る療法の全般的考察である。
【0043】
本開示の方法及び組成物を用いてがんを処置するためには、概して、腫瘍細胞または対象が、ある化合物および少なくとも1つの他の療法に接触させられうる。これらの療法は、1つまたは複数の疾患パラメータの低減の達成に有効な合計量で提供される。このプロセスは、細胞/対象を、同時に両方の薬剤/療法に接触させることを伴い、これは例えば、両方の薬剤を含む単一の組成物または薬理学的製剤を用いるか、または細胞/対象を、一方の組成物が本化合物を含み、他方が他の薬剤を含む2つの別々の組成物または製剤に接触させることによって行われる。
【0044】
あるいは、本明細書に記載の化合物は、分単位から週単位の範囲の間隔で、他の治療に先行するかまたは他の治療に続いてもよい。これらの療法が細胞/対象に依然有利な併用効果を発揮できるように、概して、各々の送達時間の間に著しい期間が過ぎないように注意が払われるであろう。このような場合、両方の治療を、相互に約12〜24時間以内に、相互に約6〜12時間以内に、または単に約1〜2時間の遅延時間で、細胞に接触させることが企図される。しかしながら、場合によっては、治療期間を著しく延長することが望ましいことがあり、この場合、それぞれの投与間で、数日(2、3、4、5、6または7日)〜数週間(1、2、3、4、5、6、7または8週間)が経過する。
【0045】
また、本化合物またはもう一方の療法のいずれかの投与を2回以上行うことが望ましいことも考えられる。以下に例示するように、本開示の化合物を「A」、もう一方の療法を「B」とした様々な組合せが用いられ得る。
【0046】
他の組み合わせもまた企図される。さらに、併用療法は、本明細書に提供される化合物および放射線療法または外科手術のいずれかを用いた患者の処置を含み得る。他の併用療法には、本明細書に提供される化合物および1つまたは複数の追加の化学療法化合物が含まれ得る。可能性のある化学療法併用療法の一般的な考察が以下に含まれる。
【0047】
A. 化学療法
「化学療法」という用語は、がんを処置するための薬物の使用を意味する。「化学療法剤」は、癌の処置に投与される化合物又は組成物を意味するために使用される。これらの薬剤又は薬物は、細胞内でのそれらの作用形態、例えば、それらが細胞周期に影響を及ぼすかどうか、及びどの段階で細胞周期に影響を及ぼすかによって分類される。あるいは、薬剤は、DNAに直接架橋する、DNAの中にインターカレーションする、又は核酸合成に影響を及ぼすことによって染色体及び有糸分裂異常を誘導する、その能力に基づいて特徴付けられ得る。ほとんどの化学療法剤は、以下のカテゴリに属する:アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、およびニトロソウレア。
【0048】
化学療法剤の例には、以下が含まれる。チオテパ及びシクロホスファミドなどのアルキル化剤;ブスルファン、インプロスルファン及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾデパ(benzodopa)、カルボクオン、メツレデパ(meturedopa)、及びウレデパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホロアミド、トリエチレンチオホスホロアミド及びトリメチロールメラミンを含むエチレンイミン及びメチロールメラミン(methylamelamines);アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);カンプトテシン(合成類似体トポテカンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(アドゼレシン、カルゼルシン、及びビセレシン合成類似体を含む);クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオルカマイシン(合成類似体、KW-2189、及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン(spongistatin);クロラムブシル、クロルナファジン、シクロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、塩酸メクロレタミンオキシド、メルファラン、ノブエンビキン、フェネステリン、プレドニマスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどのナイトロジェンマスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチンなどのニトロソウレア;エンジイン抗生物質などの抗生物質(例えば、カリケアマイシン、特にカリケアマイシンγ1及びカリケアマイシンω1;ジネマイシンA、ウンシアラマイシン、及びこれらの誘導体を含むジネマイシン;クロドロネートなどのビスホスホネート;エスペラマイシン;並びにネオカルジノスタチン発色団、及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団、アクラシノマイシン、アクチノマイシン、アントラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カルビシン、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ヂアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ドキソルビシン(モルホリノ-ドキソルビシン、シアノモルホリノ-ドキソルビシン、2-ピロリン-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、例えばマイトマイシンCなどのマイトマイシン、マイコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾトシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの代謝抵抗物質;デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸類似体;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリン類似体;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロキシウリジンなどのピリミジン類似体;カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎剤(anti-adrenals);フォリン酸などの葉酸補填剤;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビスアントレン;エダトラキセート(edatraxate);デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジコン;エルフォルミチン(elformithine);エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;ガリウムトリニトラート;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシン及びアンサマイトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール(mopidanmol);ニトラエリン(nitraerine);ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK多糖類複合物);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2’’-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特にT-2トキシン、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド、例えば、パクリタキセル及びドセタキセル;クロラムブシル;ゲムシタビン;6-チオグアニン;メルカプトプリン;メトトレキサート;シスプラチン、オキサリプラチン、及びカルボプラチンなどの白金配位錯体;ビンブラスチン;白金;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン;ビノレルビン;ノバントロン;テニポシド;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;ゼローダ;イバンドロネート;イリノテカン(例えば、CPT-11);トポイソメラーゼ阻害薬RFS2000;ジフルオロメチルオルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン;シスプラチン(CDDP)、カルボプラチン、プロカルバジン、メクロレタミン、シクロホスファミド、カンプトテシン、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、ニトロソウレア、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリコマイシン(plicomycin)、マイトマイシン、エトポシド(VP16)、タモキシフェン、ラロキシフェン、エストロゲン受容体結合物質、タキソール、パクリタキセル、ドセタキセル、ゲムシタビン、ナベルビン、ファルネシルプロテイントランスフェラーゼ(tansferase)阻害剤、トランスプラチナ、5-フルオロウラシル、ビンクリスチン、ビンブラスチン及びメトトレキサート、並びに上記のいずれかの薬学的に許容される塩、酸、又は誘導体。いくつかの態様において、化学療法剤は、がんにおいて誤調節または過剰発現される1つまたは複数のキナーゼを阻害する化学療法薬である。いくつかの態様において、化学療法薬は、アファニビブ、アフリベルセプト、アキシチニブ、ベバシズマブ、ボスチニブ、カボザンチニブ、セツキシマブ、クリゾチニブ、ダサチニブ、エルロチニブ、ホスタマチニブ、ゲフィチニブ、イブルチニブ、イマチニブ、ラパチニブ、レンバチニブ、ムブリチニブ、ニロチニブ、パニツムマブ、パゾパニブ、ペガプタニブ、ポナチニブ、ラニビズマブ、レゴラフェニブ、ルキソリチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、SU6656、トラスツズマブ、トファシチニブ、バンデタニブ、またはベムラフェニブである。
【0049】
V. 定義
化学基との関連で使用される場合、「水素」は、-Hを意味し; 「ヒドロキシ」は、-OHを意味し; 「オキソ」は、=Oを意味し; 「カルボニル」は、-C(=O)-を意味し; 「カルボキシ」は、-C(=O)OHを意味し(-COOH又は-CO
2Hとも書かれる); 「ハロ」は、独立して-F、-Cl、-Br又は-Iを意味し; 「アミノ」は、-NH
2を意味し; 「ヒドロキシアミノ」は、-NHOHを意味し; 「ニトロ」は、-NO
2を意味し; イミノは、=NHを意味し; 「シアノ」は、-CNを意味し; 「イソシアネート」は、-N=C=Oを意味し; 「アジド」は、-N
3を意味し; 一価の状況において「ホスフェート」は、-OP(O)(OH)
2又はその脱プロトン化体を意味し; 二価の状況において「ホスフェート」は、-OP(O)(OH)O-又はその脱プロトン化体を意味し; 「メルカプト」は、-SHを意味し; 「チオ」は、=Sを意味し; 「スルホニル」は、-S(O)
2-を意味し; 「ヒドロキシスルフォニル」は、-S(O)
2OHを意味し; 「スルホンアミド」は、-S(O)
2NH
2を意味し; および「スルフィニル」は、-S(O)-を意味する。
【0050】
化学式との関連では、「-」という記号は単結合を意味し、「=」は二重結合を意味し、「≡」は三重結合を意味する。
という記号は任意の結合を表し、これは、存在する場合、単結合か二重結合のいずれかである。
という記号は、単結合又は二重結合を表す。このため、例えば、式
は、
を含む。また、そのような環原子の1つは2つ以上の二重結合の一部を形成しないことが理解される。さらに、「-」という共有結合の記号は、1つまたは2つの立体原子を繋いでいる場合、好ましい立体化学を何ら示さないことが留意される。むしろこれは、全ての立体異性体及びそれらの混合物を包含する。
という記号は、結合を横切って垂直に描かれる場合(例えば、メチルについて
)、基の結合点を示す。結合点は、通常、読者が結合点を明確に特定することを補助するために、大きな基についてこの様式で特定されるのみであることが留意される。
という記号は、楔形の幅が広い方の端部に付いた基が「ページ外」である単結合を意味する。
という記号は、楔形の幅が広い方の端部に付いた基が「ページ内」である単結合を意味する。
という記号は、二重結合の周りの幾何(例えば、E又はZのいずれか)が未定義である単結合を意味する。したがって、両方の選択肢及びそれらの組み合わせが意図される。本出願において示される構造の原子上の任意の未定義の原子価は、その原子に結合した水素原子を暗黙的に表す。炭素原子上の太字の点は、その炭素に結合した水素が紙面の外に配向されることを示す。
【0051】
「R」基が環系上で「浮動的な基」として示されている場合、例えば、以下の式
において、Rは、安定した構造が形成される限り、示された、暗示された、又は明確に定義された水素を含め、任意の環原子に結合する任意の水素原子を置き換えることができる。「R」基が縮合環系で「浮動的な基」として示されている場合、例えば、以下の式
において、Rは、別途特定されない限り、縮合環のいずれかの任意の環原子に結合した任意の水素を置き換えことができる。置き換え可能な水素には、安定した構造が形成される限り、示された水素(例えば、上記式における窒素に結合した水素)、暗示された水素(例えば、示されてはいないが存在することが理解される上記式の水素)、明確に定義された水素、及びその存在が環原子の素性に依存する任意の水素(例えば、Xが-CH-と等しいときにX基に結合する水素)が含まれる。示された例では、Rは、縮合環系の5員環上又は6員環上のいずれかに存在し得る。上記式では、丸括弧で囲まれた「R」基の直後の下付き文字「y」は、数値変数を表す。別途特定されない限り、この変数は、0、1、2、又は2を超える任意の整数であることができ、これは、環または環系の置き換え可能な水素原子の最大数によってのみ制限される。
【0052】
化学基および化合物クラスについて、基またはクラス中の炭素原子の数は以下に示されるとおりである。「Cn」は基/クラス中の炭素原子の正確な数(n)を規定する。「C≦n」は、基/クラス中に存在しうる炭素原子の最大数(n)を規定し、最小数は対象となる基/クラスについて可能な限り小さい数である。例えば、「アルケニル
(C≦8)」基または「アルケン
(C≦8)」クラスの炭素原子の最小数は2であると理解される。1〜10個の炭素原子を有するアルコキシ基を意味する「アルコキシ
(C≦10)」と比較される。「Cn〜n’」は、基の炭素原子の最小数(n)と最大数(n’)との両方を規定する。したがって、「アルキル
(C2〜10)」は、2〜10個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。これらの炭素数の指標は、それが修飾する化学基またはクラスに先行しても後続してもよく、括弧で閉じられていても閉じられていなくてもよく、そのことが意味の変化を表すものではない。したがって、「C5オレフィン」、「C5-オレフィン」、「オレフィン
(C5)」、および「オレフィン
C5」という用語はすべて同義である。
【0053】
化合物または化学基を修飾するために使用される場合の「飽和」という用語は、以下に記載の場合を除いて、化合物または化学基が炭素-炭素二重結合および炭素-炭素三重結合を有さないことを意味する。この用語は、原子を修飾するために使用される場合、原子が任意の二重結合または三重結合の一部ではないことを意味する。飽和基の置換バージョンの場合、1個もしくは複数の炭素酸素二重結合、または炭素窒素二重結合が存在してもよい。そのような結合が存在する場合、ケト-エノール互変異性またはイミン/エナミン互変異性の一部として生じうる炭素-炭素二重結合は除外されない。「飽和」という用語は、物質の溶液を修飾するために使用される場合、その物質がその溶液にこれ以上溶解不可能であることを意味する。
【0054】
「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「脂肪族」という用語は、そのように修飾された化合物または化学基が、非環式または環式であるが非芳香族炭化水素化合物または基であることを意味する。脂肪族化合物/基においては、炭素原子は直鎖、分岐鎖、または非芳香環(脂環式)中で一緒に結合されうる。脂肪族化合物/基は飽和であることができ、すなわち炭素-炭素単結合で結合されていてもよく(アルカン/アルキル)、不飽和で、1個または複数の炭素-炭素二重結合を有していてもよく(アルケン/アルケニル)、1個または複数の炭素-炭素三重結合を有していてもよい(アルキン/アルキニル)。
【0055】
化合物あるいは化学基原子を修飾するために使用される場合の「芳香族」という用語は、化合物または化学基が、環を形成する結合間の相互作用によって安定化する原子の平面状の不飽和環を含有することを意味する。
【0056】
「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「アルキル」という用語は、結合点としての炭素原子を有し、直鎖状または分岐状の非環式構造を有し、炭素および水素以外の原子を有さない、一価の飽和脂肪族基を意味する。-CH
3(Me)、-CH
2CH
3(Et)、-CH
2CH
2CH
3(n-Prまたはプロピル)、-CH(CH
3)
2(i-Pr、
iPr、またはイソプロピル)、-CH
2CH
2CH
2CH
3(n-Bu)、-CH(CH
3)CH
2CH
3(sec-ブチル)、-CH
2CH(CH
3)
2(イソブチル)、-C(CH
3)
3(tert-ブチル、t-ブチル、t-Bu、または
tBu)、および-CH
2C(CH
3)
3(ネオペンチル)といった基がアルキル基の非限定的な例である。「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「アルカンジイル」という用語は、結合点としての1個または2個の飽和炭素原子を有し、直鎖状または分岐状の非環式構造を有し、炭素-炭素二重結合または三重結合を有さず、炭素および水素以外の原子を有さない、二価の飽和脂肪族基を意味する。-CH
2-(メチレン)、-CH
2CH
2-、-CH
2C(CH
3)
2CH
2-、および-CH
2CH
2CH
2-といった基がアルカンジイル基の非限定的な例である。「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「アルキリデン」という用語は、二価の基=CRR'を意味し、ここでRおよびR'は独立して水素またはアルキルである。アルキリデン基の非限定的な例には=CH
2、=CH(CH
2CH
3)、および=C(CH
3)
2が含まれる。「アルカン」とは、式H-Rを有する化合物のクラスを意味し、ここでRはアルキルであり、この用語は上記定義の通りである。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語付きで使用される場合、1個または複数の水素原子が独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2で置き換えられている。以下の基が置換アルキル基の非限定的な例である: -CH
2OH、-CH
2Cl、-CF
3、-CH
2CN、-CH
2C(O)OH、-CH
2C(O)OCH
3、-CH
2C(O)NH
2、-CH
2C(O)CH
3、-CH
2OCH
3、-CH
2OC(O)CH
3、-CH
2NH
2、-CH
2N(CH
3)
2、および-CH
2CH
2Cl。「ハロアルキル」という用語は、炭素、水素、およびハロゲン以外の原子が存在しないように、水素原子の置換がハロ(すなわち-F、-Cl、-Br、または-I)に限定されている、置換アルキルのサブセットである。-CH
2Clといった基がハロアルキルの非限定的な例である。「フルオロアルキル」という用語は、炭素、水素、およびフッ素以外の原子は存在しないように、水素原子の置換がフルオロに限定されている、置換アルキルのサブセットである。-CH
2F、-CF
3、および-CH
2CF
3といった基がフルオロアルキル基の非限定的な例である。
【0057】
「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「アリール」という用語は、環原子がすべて炭素である1個または複数の6員芳香環構造の一部を形成する芳香族炭素原子を結合点として有し、かつ炭素および水素以外の原子から構成されない、一価の不飽和芳香族基を意味する。2個以上の環が存在する場合、環は縮合していても縮合していなくてもよい。本明細書において使用されるこの用語は、第1の芳香環または存在する任意のさらなる芳香環に結合した1個または複数のアルキル基またはアラルキル基(炭素数の限定が可能である)の存在を排除しない。アリール基の非限定的な例には、フェニル(Ph)、メチルフェニル、(ジメチル)フェニル、-C
6H
4CH
2CH
3(エチルフェニル)、ナフチル、およびビフェニルに由来する一価の基が含まれる。「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「アレーンジイル」という用語は、環原子がすべて炭素である1個または複数の6員芳香環構造の一部を形成する2個の芳香族炭素原子を結合点として有し、かつ一価の基が炭素および水素以外の原子から構成されない、二価の芳香族基を意味する。本明細書において使用されるこの用語は、第1の芳香環または存在する任意のさらなる芳香環に結合した1個または複数のアルキル基、アリール基、またはアラルキル基(炭素数の限定が可能である)の存在を排除しない。2個以上の環が存在する場合、環は縮合していても縮合していなくてもよい。非縮合環は以下のうち1つまたは複数を経由して接続し得る: 共有結合、アルカンジイル基、またはアルケンジイル基(炭素数の限定が可能である)。アレーンジイル基の非限定的な例には以下が含まれる:
「アレーン」とは、式H-Rを有する化合物のクラスを意味し、ここでRはアリールであり、その用語は上記定義の通りである。ベンゼンおよびトルエンがアレーンの非限定的な例である。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語付きで使用される場合、1個または複数の水素原子は独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2で置き換えられる。
【0058】
「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「ヘテロアリール」という用語は、1個又は複数の芳香環構造の一部を形成する、芳香族炭素原子又は窒素原子を結合点として有し、環原子のうちの少なくとも1個が、窒素、酸素、または硫黄であり、かつ炭素、水素、芳香族窒素、芳香族酸素、および芳香族硫黄以外の原子からは構成されない、一価芳香族基を意味する。2個以上の環が存在する場合、環は縮合していても縮合していなくてもよい。本明細書において使用されるこの用語は、芳香環又は芳香環系に結合した1個または複数のアルキル基、アリール基、および/またはアラルキル基(炭素数の限定が可能である)の存在を排除しない。ヘテロアリール基の非限定的な例には、フラニル、イミダゾリル、インドリル、インダゾリル(Im)、イソオキサゾリル、メチルピリジニル、オキサゾリル、フェニルピリジニル、ピリジニル(ピリジル)、ピロリル、ピリミジニル、ピラジニル、キノリル、キナゾリル、キノキサリニル、トリアジニル、テトラゾリル、チアゾリル、チエニル、およびトリアゾリルが含まれる。「N-ヘテロアリール」という用語は、結合点として窒素原子を有するヘテロアリール基を意味する。「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「ヘテロアレーンジイル」という用語は、1個又は複数の芳香環構造の一部を形成する、2個の芳香族炭素原子、2個の芳香族窒素原子、または1個の芳香族炭素原子と1つの芳香族窒素原子を、2つの結合点として有する二価の芳香族基を意味し、環原子のうちの少なくとも1個が、窒素、酸素、または硫黄であり、かつ二価の基が、炭素、水素、芳香族窒素、芳香族酸素、および芳香族硫黄以外の原子からは構成されない、二価芳香族基を意味する。2個以上の環が存在する場合、環は縮合していても縮合していなくてもよい。非縮合環は以下のうち1つまたは複数を経由して接続し得る: 共有結合、アルカンジイル基、またはアルケンジイル基(炭素数の限定が可能である)。本明細書において使用されるこの用語は、芳香環又は芳香環系に結合した1個または複数のアルキル基、アリール基、および/またはアラルキル基(炭素数の限定が可能である)の存在を排除しない。ヘテロアレーンジイル基の非限定的な例には、以下が含まれる:

「ヘテロアレーン」とは、式H-Rを有する化合物のクラスを意味し、ここでRはヘテロアリールである。ピリジンおよびキノリンがヘテロアレーンの非限定的な例である。これらの用語が「置換された」という修飾語付きで使用される場合、1個または複数の水素原子は、独立して、-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2で置き換えられる。
【0059】
「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「アシル」という用語は-C(O)R基を意味し、ここでRは水素、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、またはヘテロアリールであり、それらの用語は上記定義の通りである。-CHO、-C(O)CH
3(アセチル、Ac)、-C(O)CH
2CH
3、-C(O)CH
2CH
2CH
3、-C(O)CH(CH
3)
2、-C(O)CH(CH
2)
2、-C(O)C
6H
5、-C(O)C
6H
4CH
3、-C(O)CH
2C
6H
5、-C(O)(イミダゾリル)といった基がアシル基の非限定的な例である。「チオアシル」は、-C(O)R基の酸素原子が硫黄原子で置き換えられて-C(S)Rとなる以外は同様に定義される。「アルデヒド」という用語は上記定義のアルカンに対応し、ここで少なくとも1個の水素原子が-CHO基で置き換えられている。「エステル」という用語は、Rがアルコキシである、-C(O)R基を意味する。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語付きで使用される場合、1個または複数の水素原子(もしあれば、カルボニル基またはチオカルボニル基の炭素原子に直接結合した水素原子を含む)が独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2で置き換えられている。-C(O)CH
2CF
3、-CO
2H(カルボキシル)、-CO
2CH
3(メチルカルボキシル)、-CO
2CH
2CH
3、-C(O)NH
2(カルバモイル)、および-CON(CH
3)
2といった基が置換アシル基の非限定的な例である。
【0060】
「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「アルコキシ」という用語は-OR基を意味し、ここでRはアルキルであり、その用語は上記定義の通りである。非限定的な例には、-OCH
3(メトキシ)、-OCH
2CH
3(エトキシ)、-OCH
2CH
2CH
3、-OCH(CH
3)
2(イソプロポキシ)、-OC(CH
3)
3(tert-ブトキシ)、-OCH(CH
2)
2、-O-シクロペンチル、および-O-シクロヘキシルが含まれる。「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「シクロアルコキシ」、「アルケニルオキシ」、「アリールオキシ」、「アラルコキシ」、「ヘテロアリールオキシ」、「ヘテロシクロアルコキシ」、および「アシルオキシ」という用語は、-ORとして定義される基を意味し、ここでRはそれぞれシクロアルキル、アルケニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、およびアシルである。「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「アルキルチオ」および「アシルチオ」という用語は-SR基を意味し、ここでRはそれぞれアルキルおよびアシルである。「アルコール」という用語は上記定義のアルカンに対応し、ここで少なくとも1個の水素原子がヒドロキシ基で置き換えられている。「エーテル」という用語は上記定義のアルカンに対応し、ここで少なくとも1個の水素原子がアルコキシ基で置き換えられている。これらの用語のいずれかが「置換」という修飾語付きで使用される場合、1個または複数の水素原子が独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2で置き換えられている。
【0061】
「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「アルキルアミノ」という用語は-NHR基を意味し、ここでRはアルキルであり、その用語は上記定義の通りである。非限定的な例には、-NHCH
3および-NHCH
2CH
3が含まれる。「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「ジアルキルアミノ」という用語は-NRR'基を意味し、ここでRおよびR'は同一のまたは異なるアルキル基でありうるか、あるいは、RおよびR'は一緒になってアルカンジイルを表しうる。ジアルキルアミノ基の非限定的な例には-N(CH
3)
2および-N(CH
3)(CH
2CH
3)が含まれる。「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「シクロアルキルアミノ」、「アルケニルアミノ」、「アルキニルアミノ」、「アリールアミノ」、「アラルキルアミノ」、「ヘテロアリールアミノ」、「ヘテロシクロアルキルアミノ」、「アルコキシアミノ」、および「アルキルスルホニルアミノ」という用語は、-NHRとして定義される基を意味し、ここでRはそれぞれシクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アラルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクロアルキル、アルコキシ、およびアルキルスルホニルである。アリールアミノ基の非限定的な例は-NHC
6H
5である。「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「アミド」(アシルアミノ)という用語は-NHR基を意味し、ここでRはアシルであり、その用語は上記定義の通りである。アミド基の非限定的な例は-NHC(O)CH
3である。「置換された」という修飾語なしで使用される場合の「アルキルイミノ」という用語は=NRという二価の基を意味し、ここでRはアルキルであり、その用語は上記定義の通りである。これらの用語のいずれかが「置換された」という修飾語付きで使用される場合、炭素原子に結合した1個または複数の水素原子が独立して-OH、-F、-Cl、-Br、-I、-NH
2、-NO
2、-CO
2H、-CO
2CH
3、-CN、-SH、-OCH
3、-OCH
2CH
3、-C(O)CH
3、-NHCH
3、-NHCH
2CH
3、-N(CH
3)
2、-C(O)NH
2、-C(O)NHCH
3、-C(O)N(CH
3)
2、-OC(O)CH
3、-NHC(O)CH
3、-S(O)
2OH、または-S(O)
2NH
2で置き換えられている。-NHC(O)OCH
3および-NHC(O)NHCH
3といった基が置換アミド基の非限定的な例である。
【0062】
特許請求の範囲および/または明細書において「含む(comprising)」という用語と組み合わせて使用される場合の「a」または「an」という単語の使用は、「1つ」を意味しうるが、「1つまたは複数」、「少なくとも1つ」、および「1つまたは2つ以上」の意味とも一致している。
【0063】
本出願を通じて、「約」という用語は、ある値が、装置や該値を決定するために使用される方法に固有である誤差変動、または試験対象間で存在する変動を含むことを示すために使用される。
【0064】
「含む(comprise)」、「有する(have)」、および「含む(include)」という用語はオープンエンド型(open-ended)の連結動詞である。「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」などの1つまたは複数のこれらの動詞の任意の形態または時制もオープンエンド型である。例えば、1つまたは複数の段階を「含み(comprises)」、「有し(has)」、または「含む(includes)」任意の方法は、それらの1つまたは複数の段階のみを有することに限定されず、他の列挙されていない段階も包含する。
【0065】
明細書および/または特許請求の範囲において使用される「有効な」という用語は、所望の、予期される、または意図される結果を実現するために十分であることを意味する。患者または対象を化合物で処置する文脈において使用される場合の「有効量」、「治療的有効量」、または「薬学的有効量」とは、疾患を処置するために対象または患者に投与される際に、該疾患のそのような処置を達成するために十分な該化合物の量を意味する。
【0066】
本明細書において使用される「IC
50」という用語は、得られる最大応答の50%である阻害用量を意味する。この定量的尺度は、所与の生物学的、生化学的、もしくは化学的プロセス(またはプロセスの構成要素、すなわち酵素、細胞、細胞受容体、もしくは微生物)を半分阻害するために特定の薬物または他の物質(阻害剤)がどの程度必要であるかを示す。
【0067】
第1の化合物の「異性体」は、各分子が第1の化合物と同一の構成原子を含有しているが三次元でのそれらの原子の配置が異なる、別個の化合物である。
【0068】
本開示は代替物のみ、および「および/または」を意味する定義を支持するが、特許請求の範囲における「または」なる用語の使用は、代替物だけを意味するか、または代替物が互いに排他的であると明らかに示されていないかぎり、「および/または」を意味するように用いられる。本明細書において使用される「別の」という用語は、少なくとも第2のもの、またはそれ以上を意味する。
【0069】
本明細書において使用される「患者」または「対象」という用語は、ヒト、サル、ウマ、雌ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、またはそのトランスジェニック種などの生きている哺乳類生物を意味する。ある態様において、患者または対象は霊長類である。ヒト対象の非限定的な例は、成人、若年、乳幼児、および胎児である。
【0070】
本明細書において一般的に使用される「薬学的に許容される」とは、正しい医学的判断の範囲内で、ヒトおよび動物の組織、臓器、および/または体液と接触させて使用するために適しており、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症を伴わず、妥当な損益比に相応している、化合物、物質、組成物、および/または剤形を意味する。
【0071】
「薬学的に許容される塩」とは、先に定義された、薬学的に許容されるものであり、かつ所望の薬理活性を有する、本発明の化合物の塩を意味する。そのような塩には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸などの無機酸; または1,2-エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、3-フェニルプロピオン酸、4,4'-メチレンビス(3-ヒドロキシ-2-エン-1-カルボン酸)、4-メチルビシクロ[2.2.2]オクタ-2-エン-1-カルボン酸、酢酸、脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、脂肪族硫酸、芳香族硫酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクロペンタンプロピオン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルタミン酸、グリコール酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ヒドロキシナフトエ酸、乳酸、ラウリル硫酸、マレイン酸、リンゴ酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムコン酸、o-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、シュウ酸、p-クロロベンゼンスルホン酸、フェニル置換アルカン酸、プロピオン酸、p-トルエンスルホン酸、ピルビン酸、サリチル酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、tert-ブチル酢酸、トリメチル酢酸などの有機酸と共に形成される酸付加塩が含まれる。薬学的に許容される塩には、存在する酸性プロトンが無機塩基または有機塩基と反応可能な場合に形成可能な塩基付加塩も含まれる。許容される無機塩基には、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アルミニウム、および水酸化カルシウムが含まれる。許容される有機塩基には、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、N-メチルグルカミンなどが含まれる。本発明の任意の塩の一部を形成する特定のアニオンまたはカチオンは、その塩が全体として薬理学的に許容される限り決定的ではないと認識すべきである。薬学的に許容される塩ならびにそれらの調製方法および使用方法のさらなる例は、Handbook of Pharmaceutical Salts: Properties, and Use (P. H. Stahl & C. G. Wermuth eds., Verlag Helvetica Chimica Acta, 2002) に示される。
【0072】
本明細書において使用される「薬学的に許容される担体」という用語は、化学剤を運搬または輸送することに関与する、液体もしくは固体充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料などの、薬学的に許容される物質、組成物、または媒体を意味する。
【0073】
「予防」または「予防する」は、(1) 疾患の危険性がある、および/または疾患に罹患しやすい素因があるが、疾患の病状または総体的症状のいずれかまたは全部を未だ経験または提示していない対象または患者において、疾患の発症を阻害すること、および/または(2) 疾患の危険性がある、および/または疾患に罹患しやすい素因があるが、疾患の病状または総体的症状のいずれかまたは全部を未だ経験または提示していない対象または患者において、疾患の病状または総体的症状の発症を遅らせることを含む。
【0074】
「立体異性体」または「光学異性体」とは、同一原子が他の同一原子に結合しているが、三次元でのそれら原子の立体配置が異なる、所与の化合物の異性体のことである。「エナンチオマー」とは、左手および右手のように互いの鏡像である所与の化合物の立体異性体のことである。「ジアステレオマー」とは、エナンチオマーではない所与の化合物の立体異性体のことである。キラル分子は、立体中心または不斉中心とも呼ばれるキラル中心を含有し、これは、任意の2個の基の交換が立体異性体を生じさせる基を有する分子中の、必ずしも原子ではない、任意の点である。他の原子が有機化合物および無機化合物中の立体中心であることも可能であるが、有機化合物において、キラル中心は、通常、炭素原子、リン原子、または硫黄原子である。分子は、多くの立体異性体を与える複数の立体中心を有することができる。その立体異性が四面体不斉中心(例えば四面体炭素)に起因する化合物では、仮定上可能な立体異性体の総数は2
nを超えず、ここでnは四面体立体中心の数である。対称性を有する分子はしばしば最大可能数よりも少ない数の立体異性体を有する。エナンチオマーの50:50混合物はラセミ混合物と呼ばれる。あるいは、一方のエナンチオマーが50%を超える量で存在するようにエナンチオマーの混合物を鏡像異性的に豊富にしてもよい。通常、エナンチオマーおよび/またはジアステレオマーは当技術分野に公知の技術を使用して分割または分離することができる。立体化学配置が規定されていない任意の立体中心またはキラリティー軸について、その立体中心またはキラリティー軸がそのR型、S型、または、ラセミ混合物および非ラセミ混合物を含むR型とS型との混合物として存在し得ることが企図される。本明細書において使用される「他の立体異性体を実質的に含まない」という語句は、組成物が15%以下、より好ましくは10%以下、さらに好ましくは5%以下、または最も好ましくは1%以下の他方の立体異性体を含有することを意味する。
【0075】
「処置」または「処置する」は、(1) 疾患の病状または総体的症状を経験または提示している対象または患者の疾患を阻害すること(例えば、病状および/または総体的症状のさらなる進行を停止させること)、(2) 疾患の病状または総体的症状を経験または提示している対象または患者の疾患を寛解させること(例えば、病状および/または総体的症状を逆転させること)、および/または(3) 疾患の病状または総体的症状を経験または提示している対象または患者の疾患の任意の測定可能な減少を達成することを含む。
【0076】
上記定義は、参照により本明細書に組み入れられる任意の参考文献における任意の相反する定義に優先する。しかし、ある特定の用語が定義されているという事実は、未定義の任意の用語が不明確であることを示すとみなされるべきではない。むしろ、使用される全ての用語は、当業者が本発明の範囲を認識しかつ本発明を実施できるように本発明を用語で記述するものであると考えられる。
【実施例】
【0077】
VI. 実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を示すために含まれる。実施例に開示される技術は、本発明の実施に十分に機能すべく、本発明者によって発見された技術を代表するものであり、したがってその実施のための好ましい様式を構成するとみなされ得るということが当業者に認識されるべきである。しかし、当業者は、本開示に照らして、本発明の主旨および範囲を逸脱することなく、開示されている具体的な態様に多くの変更を行うことができ、かつ類似または同様の結果を依然得ることができることを認識すべきである。
【0078】
実施例1 - DNA結合物質のモジュール式の設計
本発明者は、独特のDNA結合物質の設計に「モジュール式の」方法を用いた。「モジュール式の」設計戦略は、有意な選択性を与えるべく、分子の中へのインターカレーションおよび溝結合方法を、必要なキラリティーおよび結合部位サイズと組み合わせる。それらは、モジュール式設計が、拡張したGCおよびAT含有配列を標的とする小分子バインダーを考察することを可能する、アントラサイクリン骨格およびジスタマイシンベースの断片の構築ブロックライブラリーを利用する。本発明者らは、ジスタマイシンのピロール含有断片をアントラサイクリンモジュールと接続するには、非常に特異的な要件を有することを示す。芳香族リンカーの使用が、(以下の)表1に列記される化合物の合成をもたらした。
【0079】
(表1)合成した化合物の構造
【0080】
実施例2 - WP1244の薬物動態評価
特に、化合物WP1244(
図1A〜B参照)は、サブナノモル範囲のインビトロでのIC
50値を有し、極めて強力であることが見出され、現在、前臨床試験にいてその治療可能性について試験されている。WP1244は、アミノ糖に結合したポリアミド部分を有し、比較的高い分子量(MW)(981.3)を有する。WP1244を用いて行われた従前の5-マウス予備試験では、マウス脳組織におけるWP1244の存在が確認され、血漿中および脳中の平均正規化濃度は、約5mg/kgでの単回の静脈内投与の1時間後に、それぞれ283±128 ng/mL(範囲159〜487 ng/mL)および122±67.6 ng/g(範囲43〜203 ng/g)であった。この予備単回投与薬物動態学的試験の後に、特にWP1244の脳組織における、血漿経時変化および組織生体内分布をさらに解明すべく設計された完全単回投与薬物動態/生体内分布試験を行った。この試験は、55匹の動物および10mg/kgの用量の使用を含む。実験は24時間間隔で行われ、その方法および結果を以下に概説する。
【0081】
単回IV投与後のマウス血漿PKおよび脳内分布試験 - WP1244を、10mg/kgの用量で、55匹の雄のCD1マウス(Charles River Lab, Wilmington, MA)に急速IVプッシュにより静脈内投与した。各マウス(平均体重22.0g、範囲20.7〜26.6g)に、DMSO:水(50:50、v/v)中に配合した2.2 mg/mLのWP1244溶液のうちの0.1 mLを与えた。5匹の動物を、24時間の試験期間にわたる、時間によって分離された11群のうちの1つに割り当てた。1つの群の動物を次の各時点で屠殺し、マウスの血漿および目的の組織を分析のために収集した。該時点は、静脈内ボーラス投与後、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、および24時間であった。試料(血漿および組織)を凍結し、LC/MS/MSによるその後の分析まで-80℃で保存した。
【0082】
血漿からの試料の調製および薬物の単離(抽出)は、本発明者らが以前に行った他のアントラサイクリン類の薬物動態および生体内分布試験で用いられたのと同じ基本的な方法を利用した。簡潔には、固相抽出法を用いて、ある量のマウス血漿(0.1mL)からWP1244を抽出した。クロロホルム:2-プロパノール(80:20、v/v)混合物による液体-液体抽出を利用して、マウスの脳組織から分析物を単離した。組織1g当たり10〜1000ngの範囲にわたる薬物脳組織濃度の決定に脳組織由来の検量線を利用した一方で、マウスの血漿から抽出したWP1244の定量的測定のために、1〜1000 ng/mL(1、2.5、10、25、50、100、500、および1000 ng/mL)のWP1244の濃度ダイナミックレンジに及ぶように、8点の血漿抽出検量線を作成した。検量線のダイナミックレンジを超える試料は、抽出緩衝液で希釈した後に再分析した。
【0083】
クロマトグラフィー分離および質量分析法(LC/MS/MS)を用いた同定/定量により、試料の定量分析を行った。使用した具体的な機器は、Micromass Quattro Micro(Micro2)質量分析計と提携するAgilent HP1100シリーズ液体クロマトグラフであった。 Phenomenex(登録商標)Luna C5、4.6×50mm、3.5μm)分析カラムをクロマトグラフィー分離およびピーク分解に使用した。前述のとおり、試料分析は、本発明者らによって試験された他のアントラサイクリン類の定量分析のために従前に開発したのと同じ基本的な確認方法を利用した。
【0084】
結果 - WP1244は、この単回投与IV薬物試験(
図2)の24時間の時間経過にわたり、投与前試料を除いて、すべての血漿および脳組織試料中に存在した。血漿試料分析の結果は、この薬物クラスの他の薬剤と同様に、WP1244の薬物動態が、このマウスモデルにおいて標準的な2-コンパートメントモデルを用いて最も適合していることを明らかにした。薬物クリアランスは41ml/h/kgであり、分布パラメータの容積は、V
c、V
p、およびV
ssに対してそれぞれ9.7、326、および336mL/kgであった。平均ピーク血漿濃度は、薬物投与の5分後に3.7 mg/mLであり、IVボーラス注射の24時間後のWP1244の平均ナディア濃度(nadir concentration)は21.5 ng/mLであることが判明した。WP1244の曲線下面積は250 mg/mL*hrであった。
【0085】
脳組織中のWP1244濃度は、測定した全区間にわたり、同時に測定された血漿濃度(5分の時点を除く)をほぼ1桁上回り、(脳組織対血漿濃度比が常に1を超えていることによって実証されるとおり)薬物分布が迅速であり、薬物が脳組織中に隔離されていることを示唆する。脳組織中のWP1244の平均ピーク濃度は、915 ng/g 組織であり、投与後15分で生じ、24時間でのナディア脳組織濃度は、100 ng/g 組織を超えた。血漿および脳組織中の測定濃度は、24時間の実験期間を通して、インビトロ試験での細胞傷害活性に関連するサブナノモル濃度を超えていた。確認として、ここで報告された値は、従前の予備的な実現可能性PK試験で観察された値とほぼ同じである。
【0086】
図3は、0〜8時間区画の血漿および組織WP1244薬物濃度対時間プロファイルの拡大図を示し、その区画にわたる脳組織中の3〜4倍高いWP1244濃度を示す。マウスへの10 mg/kgの用量でのWP1244の静脈内ボーラス投与は、薬物投与後24時間まで、試験動物において臨床的に観察可能な急性毒性を生じなかった。また、
図4A〜Bおよび(以下の)表2は、マウスの血漿および組織試料中のWP1244を測定するためのこのタンデム質量分析法の選択性および感度を実証する。
【0087】
(表2)選択された化合物のインビトロ抗腫瘍活性の概要
【0088】
実施例3 - 多形性膠芽腫のU87同所移植モデルにおけるWP1244のインビボ評価
インビボ手順 - 動物実験のための制度ガイドラインの下、WP1244を試験するために、マウス同所異種移植片脳神経膠腫モデルを使用した。簡潔には、継代U87 MG細胞10〜20 × 10
6/1ディッシュ(150mm)を10% FBSを含む25 mLのDMEM/F12中で増殖させた。この培養物から、細胞を1 × 10
6 U87 MG高グレード神経膠腫細胞を含有する10μLの容積に希釈し、NuNu無胸腺ヌードマウスの脳に注入した。スクリューガイドシステムを用いて細胞を右被殻に移植した。WP1244の場合、動物各6匹の3つの群があり、動物を対照群、1 mg/kg動物体重または5 mg/kg動物体重のいずれかで処置した。i.p.経路で腫瘍細胞を移植した5日後に、全ての動物を処置した。全ての対象動物が死亡してからKaplan-Meier生存曲線を作成し、実験を終了した。その結果を
図5に示す。
【0089】
実施例4 - DNA結合物質の合成
副溝バインダー部分の合成 - メチル4-(4-アミノ-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキシラートの合成。
【0090】
2,2,2-トリクロロ-1-(1-メチル-1H-ピロール-2-イル)エタノンの合成:
【0091】
N-メチルピロール(20 g、0.246 mol、22 mL)のジクロロメタン(100 mL)溶液を、激しく撹拌した塩化トリクロロアセチル(0.258 mol、47 g、29 mL)のジクロロメタン溶液に加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌し、次いで溶媒を蒸発乾固させ、残渣をシリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィーによって精製した。生成物をジクロロメタンで溶離した。生成物を含む画分を集め合わせ、蒸発させて35.5 gの淡黄色固体を得た(収率61%)。
【0092】
メチル2,2,2-トリクロロ-1-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-イル)エタノンの合成:
【0093】
2,2,2-トリクロロ-1-(1-メチル-1H-ピロール-2-イル)エタノン(35.4 g、0.157 mol)を無水酢酸(200 mL)に溶解した。得られた溶液を-40℃に冷却した。硝酸(d = 1.5 g/mL、1.8当量、14 mL)を30分間かけて加えた。反応混合物を室温まで加温し、撹拌をさらに2時間続けた。混合物を-20℃に冷却し、次いでイソプロピルアルコールを加えて生成物を沈殿させ、次いでそれをろ過し、イソプロピルアルコールで洗浄した。
【0094】
メチル1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキシラートの合成:
【0095】
2,2,2-トリクロロ-1-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-イル)エタノン(24 g、87 mmol)のメタノール(75 mL)溶液を、NaH(300 mg)のメタノール(30 mL)懸濁液に滴下した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、次いで濃硫酸(0.75 mL)を加えて反応を停止させた。次いで、反応混合物を加熱還流し、ゆっくりと室温まで冷却した。生成物を反応混合物から白色針状結晶として結晶化した。生成物をろ過し、真空下で乾燥した。
【0096】
1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボン酸の合成:
【0097】
4-ニトロ-1-メチル-ピロール-2-カルボン酸メチルエステル(5 g、27.15 mmol)をエタノール(70 mL)に懸濁させた。NaOH(3.2 g、80 mmol)の水溶液(50 mL)を加え、得られた混合物を室温で17時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固させた。6N HCl(13.5 mL、81 mmol)を加え、混合物を室温で15分間撹拌した。得られた白色固体生成物をろ過し、水で洗浄し、減圧下で乾燥させた。1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボン酸(4.36 g)を94%の収率で得た。
【0098】
メチル4-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキシラートの合成:
【0099】
4-ニトロ-1-メチルピロール-カルボン酸(1.92 g、11.28 mmol)およびHBTU(O-ベンゾトリアゾール-N,N,N’,N’,-テトラメチル-ウロニウム-ヘキサフルオロ-ホスフェート)(4.28 g、11.28 mmol)の乾燥DMF(25 mL)溶液にジイソプロピルエチルアミン(4.91 mL、28.18 mmol)を加えた。得られた褐色溶液を20分間撹拌し、次いでそれを4-アミノ-1-メチルピロールカルボン酸メチルエステル(1.74 g、11.29 mmol)を含有するフラスコに注いだ。得られた反応混合物をN
2下で18.5時間撹拌した。反応中に沈殿が生じた。結晶を収集し、少量のDCMで洗浄して、2.13 gの純粋な生成物を61.6%の収率で得た。
【0100】
メチル4-(4-アミノ-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキシラートの合成:
【0101】
メチル1-メチル-4-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキシラート(0.48 g、1.56 mmol)の酢酸エチル:メタノール混合物(1:1, v/v) (100 mL)分散液にPd/C(10%)(179 mg)を加えた。得られた混合物をパル(Parr)装置(H
2、30 psi)中で水素化に供した。24時間の反応が完了した後、触媒をろ別し、溶媒を蒸発乾固して、純粋な生成物を〜100%収率で得た。
【0102】
メチル1-メチル-4-(1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキシアミド)-1H-2-カルボン酸の合成:
【0103】
1-メチル-2-ピロール-カルボン酸(297 mg、2.37 mmol)およびHBTU(893 mg、2.35 mmol)を無水DMF(5 mL)に溶解した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(0.68 mL、7.9 mmol)を加え、得られた溶液を室温で20分間撹拌した後、予め調製したメチル4-(4-アミノ-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキシラート(1.56 mmol)のDMF(5 mL)溶液に加えた。得られた溶液を室温で24時間攪拌した。溶媒を蒸発乾固させ、残渣をDCM(50 mL)に溶解し、水で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させた。乾燥剤および溶媒を除去し、生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル グラジエント)によって精製した。生成物を含有する画分を集め合わせ、蒸発させて、534.5 mgのメチル1-メチル-4-(1-メチル-4-(1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキサミド)- 1H-ピロール-2-カルボキシラート(収率89.3%)を得た。
【0104】
メチル1-メチル-4-(1-メチル-4-(1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキシラート(513 mg、1.33 mmol)をエタノール(10 mL)に溶解した。NaOH水溶液(0.506 M、13.1 mL)を加え、反応混合物を室温で24時間撹拌した。エタノールを蒸発により除去し、6N HCl(6.0 mmol、1.0 mL)を加えて、残った水溶液のpHを1〜2に調整した。得られた固体をろ過し、水で洗浄し、減圧下乾燥して、411.3 mgの1-メチル-4-(1-メチル-4-(1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボン酸の淡黄色固体を収率83.7%で得た。
【0105】
1-メチル-4-(1-メチル-4-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボン酸の合成:
【0106】
1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボン酸(259 mg、2.05 mmol)およびHBTU(753 mg、1.98 mmol)を無水DMF(4 mL)に溶解した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(0.57 mL、3.27 mmol)を加え、得られた溶液を室温で20分間撹拌した後、予め調製したメチル4-(4-アミノ-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキシラート(1.21 mmol)のDMF(5 mL)溶液に加えた。得られた溶液を室温で24時間攪拌した。溶媒を蒸発乾固し、残渣をCHCl
3(50 mL)に溶解し、水で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させた。乾燥剤および溶媒を除去し、生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル グラジエント)によって精製した。生成物を含有する画分を集めて合わせ、蒸発させて、386 mgのメチル1-メチル-4-(1-メチル-4-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキシラートを76.6%の収率で得た。
【0107】
メチル1-メチル-4-(1-メチル-4-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキシラート(338 mg、0.879 mmol)をエタノール(11 mL)に懸濁させた。NaOH水溶液(0.506 M、8.7 mL)を加え、反応混合物を40℃で4.5時間撹拌した。エタノールを蒸発により除去し、6N HCl(6.0 mmol、0.73 mL)を加えて、残った水溶液のpHを1〜2に調整した。得られた固体をろ過し、水で洗浄し、減圧下で乾燥させて、307.7 mgの1-メチル-4-(1-メチル-4-(1-メチル-1H-イミダゾール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボン酸の淡褐色固体を94.5%の収率で得た。
【0108】
1-メチル-4-(1-メチル-4-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボン酸の合成:
【0109】
1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボン酸(386 mg、2.26 mmol)およびHBTU(861 mg、2.27 mmol)を無水DMF(5 mL)に溶解した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(0.66 mL、3.78 mmol)を加え、得られた溶液を室温で20分間撹拌した後、予め調製したメチル4-(4-アミノ-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキシラート(1.515 mmol)のDMF(5 mL)溶液に加えた。得られた溶液を室温で24時間攪拌した。溶媒を蒸発乾固させ、次いでCHCl
3(50 mL)を加えて、生成物の大部分を沈殿させた。得られた黄色固体をクロロホルムで洗浄し、減圧下乾燥した。495.4 mgのメチル1-メチル-4-(1-メチル-4-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキシラートを76.3%の収率で得た。
【0110】
メチル1-メチル-4-(1-メチル-4-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキシラート(495 mg、1.15 mmol)をエタノール(16 mL)に懸濁させた。NaOH水溶液(0.506 M、11.5 mL)を加え、反応混合物を60〜65℃で15時間撹拌した。エタノールを蒸発により除去し、6N HCl(6.0 mmol、1.0 mL)を加えて、残った水溶液のpHを1〜2に調整した。得られた黄色固体をろ過し、水で洗浄し、減圧下乾燥して、473.6 mgのメチル1-メチル-4-(1-メチル-4-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキシラートを収率99.4%で得た。
【0111】
4-(4-(4-ホルムアミド-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボン酸の合成:
【0112】
1-メチル-4-(1-メチル-4-(1-メチル-4-ニトロ-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボン酸(519 mg、1.25 mmol)をNa
2CO
3(75 mL)およびDMF(25 mL)の1M水溶液に懸濁した後に、10%のPd/C(湿潤、〜50%H
2O、201 mg)を加え、次いで混合物をパル装置(H
2、p=20 psi)を用いて一晩水素化した。反応混合物をセライト(登録商標)でろ過した。ろ液を蒸発乾固させ、得られた残渣をCHCl
3:MeOH(1:1、v/v)(2 mL)の混合物に溶解し、さらに精製することなく本製法の次の工程で使用した。
【0113】
98%ギ酸(0.1 mL、2.60 mmol)をカルボニルジイミダゾール(429 mg、2.64 mmol)の乾燥THF(1.5 mL)溶液に加えた。混合物を室温で20分間撹拌し、予め調製し、0℃に冷却した、4-(4-(4-アミノ-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボン酸の溶液に加えた。反応混合物を30分間撹拌した後に、濃縮乾固した。酢酸エチルを加えて生成物を沈殿させた。4-(4-(4-ホルムアミド-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボン酸(186.6 mg、収率36.2%)の褐色固体を分離し、減圧下乾燥した。
【0114】
1-メチル-4-(1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボン酸の合成:
【0115】
1-メチル-1H-ピロール-2-カルボン酸(890 mg、7.14 mmol)およびHBTU(2.7 g、7.14 mmol)を無水DMF(15 mL)に溶解した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(3.1 mL、17.8 mmol)を加え、得られた溶液を室温で20分間撹拌した後、予め調製したメチル4-アミノ-1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキシラート(7.14 mmol)のDMF(5 mL)溶液に加えた。得られた溶液を室温で24時間攪拌した。
【0116】
溶媒を蒸発乾固させ、残渣をDCM(75 mL)に溶解し、水で洗浄し、無水Na
2SO
4で乾燥させた。乾燥剤および溶媒を除去し、生成物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル グラジエント)によって精製した。生成物を含有する画分を集めて合わせ、蒸発させて、1.69 gのメチル1-メチル-4-(1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキシラートを90%の収率で得た。
【0117】
メチル1-メチル-4-(1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキシラート(1.68 g、6.43 mmol)をエタノール(16 mL)に懸濁させた。NaOH水溶液(0.506 M、14 mL)を加え、反応混合物を60〜65℃で3時間撹拌した。エタノールを蒸発により除去し、6N HCl(6.0 mmol、2.0 mL)を加えて、残った水溶液のpHを1〜2に調整した。得られた白色固体をろ過し、水で洗浄し、減圧下乾燥させて、1.52 gの1-メチル-4-(1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボン酸を得た。(収率95%)
【0118】
3’-(4’’-アミノベンジル)-ダウノルビシンの合成:
【0119】
DMF(5 mL)中のダウノルビシン塩酸塩(564 mg、1 mmol)、4-ニトロベンジルブロミド(216 mg、1 mmol)の混合物を調製した。炭酸ナトリウム(255 mg、2.40 mmol)を加え、反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応が完了した後、反応混合物をDCM(50 mL)で希釈し、中性になるまで水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤をろ別し、溶媒を蒸発させ、生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、トルエン/アセトン グラジエントを使用)により精製した。生成物を含有する画分を集めて合わせ、蒸発させて490 mgの3’-(4-ニトロ)ベンジル-ダウノルビシンを得た。収率73.9%
【0120】
3’-(4-ニトロ)ベンジル-ダウノルビシン(490 mg、0.74 mmol)をメタノールとDCMの混合物(1:1、v/v、74 mL)に溶解した。塩化スズ(II)二水和物(8.17g、36.2 mmol)を加え、反応混合物を室温で24時間撹拌した。反応混合物をクロロホルム(100 mL)で希釈し、重炭酸ナトリウムの飽和溶液(750 mL)に注いだ。得られた混合物を4時間激しく撹拌し、次いでセライト(登録商標)でろ過した。層が分離した。中性になるまで有機層を水で洗浄し、次いで硫酸ナトリウムで乾燥させた。乾燥剤および溶媒を除去し、生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、クロロホルム/メタノール クラジエントを溶離液として使用)で精製した。生成物を含有する画分を集めて合わせ、蒸発乾固して303 mgの3’-(4-アミノ)ベンジル-ダウノルビシンを得た。収率64.8%
【0121】
WP1244の合成:
【0122】
3’-(4-アミノ)ベンジル-ダウノルビシン(124.5 mg、0.338 mmol)およびHBTU(134.3 mg、0.354 mmol)を乾燥DMF(1 mL)に溶解した。ジイソプロピルエチルアミン(0.078 mL、0.448 mmol)を加え、得られた溶液を室温で30分間撹拌した後に、それをリンカー(I)(上記スキーム)(71 mg、0.112 mg)のDMF(0.5 mL)溶液に加えた。最終反応混合物を窒素下で98時間撹拌した。DMFを65℃で減圧下蒸発させた。残渣をクロロホルム:メタノール(95:5、v/v、5 mL)の混合物に溶解し、得られた溶液をクロマトグラフィーカラムの上端に適用した。生成物をクロロホルム/メタノール グラジエントで溶離した。生成物含有フラクションを集めて合わせ、蒸発させて赤色固体を得た。クロロホルム/ヘキサン系を用いて生成物をさらに沈殿させた。69.1 mgのWP1244(収率62.7%)を得た。
【0123】
3’-(4’’-アミノベンジル)-ダウノルビシンおよび適切な副溝結合部分を用い、WP1244について上記した手順に従って、以下に特徴づけられる化合物を合成した。
【0124】
WP1249:
【0125】
WP1276:
【0126】
WP1248:
【0127】
WP1243:
【0128】
WP1402:
【0129】
WP1277:
1-メチル-4-(1-メチル-4-(1-メチル-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボキサミド)-1H-ピロール-2-カルボン酸(51 mg、0.138 mmol)およびHBTU(54 mg、0.142 mmol)の無水DMF(1 mL)溶液に、DIEA(0.054 mL、0.308 mmol)を加えた。得られた混合物を20分間撹拌し、次いでダウノルビシン塩酸塩(50 mg、0.088 mmol)のDMF(0.5 mL)溶液に加えた。得られた混合物を室温で4.5時間撹拌した。クロロホルム(2 mL)を加え、ヘキサンを用いて生成物を沈殿させた。固体粗生成物を、溶離系としてクロロホルム/メタノール グラジエントを用いたカラムクロマトグラフィーにより精製した。WP1277を含有する画分を集めて合わせ、蒸発乾固させた。さらなる沈殿(CHCl
3/ヘキサン)により、純粋な赤色固体を得、これを減圧下で乾燥した。61.4 mgのWP1277を79.3%の収率で得た。
【0130】
WP1401:
【0131】
本明細書で開示及び請求する方法は全て、本開示の見地から、過度な実験をすることなく作製及び実施可能である。好ましい態様の点から本発明の組成物および方法について記述してきたが、本発明の概念、精神及び範囲から逸脱することなく、本明細書で記載される方法、および方法の工程または一連の工程に変更を加えてよいことが、当業者に明らかとなるであろう。より具体的には、化学的及び生理学的の両方で関係するある種の物質が、本明細書で記載される物質と置換されてよく、同一または同様の結果がもたらされることが明らかとなるであろう。当業者に明らかである、そのような類似の代替物及び改変物の全てが、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の精神、範囲及び概念の中にあるとみなされる。
【0132】
参考文献
以下の参考文献は、本明細書で説明したものを補足する例示的手順または他の詳細を提供する限りにおいて、参照により本明細書に具体的に組み入れられる。