特許第6966434号(P6966434)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6966434セロビオースおよび/またはプシコースで、オフテイストをマスキングする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966434
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】セロビオースおよび/またはプシコースで、オフテイストをマスキングする方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20211108BHJP
   A23L 27/30 20160101ALI20211108BHJP
   A23C 9/13 20060101ALN20211108BHJP
   A23L 7/143 20160101ALN20211108BHJP
   A23G 1/56 20060101ALN20211108BHJP
   A23F 3/16 20060101ALN20211108BHJP
   A23F 5/24 20060101ALN20211108BHJP
   A23L 2/00 20060101ALN20211108BHJP
   A23L 2/60 20060101ALN20211108BHJP
   A23L 2/52 20060101ALN20211108BHJP
【FI】
   A23L27/00 Z
   A23L27/30 C
   A23L27/30 Z
   !A23C9/13
   !A23L7/143
   !A23G1/56
   !A23F3/16
   !A23F5/24
   !A23L2/00 B
   !A23L2/60
   !A23L2/52
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-520425(P2018-520425)
(86)(22)【出願日】2016年10月20日
(65)【公表番号】特表2018-531030(P2018-531030A)
(43)【公表日】2018年10月25日
(86)【国際出願番号】EP2016075209
(87)【国際公開番号】WO2017068033
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2019年8月23日
(31)【優先権主張番号】62/244,819
(32)【優先日】2015年10月22日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】ウングレアーヌ,イオアナ マリア
(72)【発明者】
【氏名】ファン オンメレン,エステル
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−159908(JP,A)
【文献】 特開2009−148190(JP,A)
【文献】 特開2009−142187(JP,A)
【文献】 特開2009−125064(JP,A)
【文献】 特開2009−124999(JP,A)
【文献】 特開2009−124948(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0342044(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0021111(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0342043(US,A1)
【文献】 特開2012−070708(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/152818(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23F
A23G
A23C
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高甘味度甘味料を含む食用組成物ベースに、20〜50ppmのセロビオースを添加することを含む、高甘味度甘味料のオフテイストマスキングする方法。
【請求項2】
高甘味度甘味料のオフテイストが、苦味および/または金属味である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
食用組成物ベース、少なくとも1つの高甘味度甘味料および20〜50ppmのセロビオースを含む食用組成物。
【請求項4】
高甘味度甘味料が、アスパルテーム、AceK、スクラロース、サッカリン、シクラメート、ステビオシド、もしくはレバウジオシドA、またはそれらの組み合わせである、請求項3に記載の食用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高甘味度甘味料におけるオフノートを抑制する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
永久的な摂取、または喀出のために一時的に、のいずれかのために口に入れられることが意図された製品である、食用製品における甘さは、しばしば望ましい特徴である。伝統的に、甘さは、甘味付与化合物の添加によってもたらされてきた。伝統的に、この化合物はスクロースであった。スクロースは、望ましくない後味がなく、かなりの甘さを提供するという利点を有する。しかし、健康またはダイエット品において、より少ない砂糖を使用することが望ましく、これは消費者に受け入れられない甘味の低下の可能性を意味する。
【0003】
これを回避する方法の1つは、高甘味度甘味料(HIS)の使用である。天然または人工であってもよいこれらの材料は、砂糖の数百倍の甘さを有するため、理論的には、はるかに多量の砂糖の代わりとなることができる。典型的なHISの例は、サッカリン、シクラメート、アスパルテーム、ステビオシド、レバウジオシドA(「Reb A」)およびスクラロースを含む。これらの物質は一般に、食用製品に、望ましくないオフテイスト、典型的には苦味または金属味を与えるという欠点を有する。
【発明の概要】
【0004】
高甘味度甘味料を含有するか否かにかかわらず、食用組成物におけるオフテイストが、部分的にまたは完全に抑制されることが、今や見出された。したがって、20〜50ppmのセロビオースおよびプシコースの少なくとも1種の、高甘味度甘味料を含む食用組成物ベースへの添加を含む、食用組成物におけるオフテイストをマスキングする方法が提供される。
【0005】
セロビオースは、式
【化1】
の二糖である。
これはセルロースの酵素分解生成物であり、工業規模で容易に入手可能である。これは数多くの薬理学的用途を有する。
【0006】
プシコース、リボ−2−ヘキソース
【化2】
は「希少糖」とも呼ばれ、自然界においてわずかに生じる。これは、スクロースよりも低い甘味を有する超低エネルギーの単糖であるが、カロリーの含有量がはるかに低く、したがってダイエット製品における砂糖の減少の可能性に興味が持たれている。また、最近米国で甘味料として承認された。
【0007】
PCT公開WO 2007/061753は、高甘味度甘味料および追加の甘味改善組成物と共に、グルコサミン(機能性成分)を含む、機能性甘味付与組成物を記載する。甘味改善組成物は、セロビオースおよびプシコースなどの炭水化物を含む、様々な材料から選択することができる。
【0008】
しかしながら、この刊行物は、幅広い範囲の甘味改善組成物のごく一部のみを例示するのみであり、どの組成物が、どの状況において、どのような特徴を与えるかについての指針を提供していない。さらに、炭水化物は、1,000〜100,000ppmの濃度で必要とされると述べられている。驚くべきことに、セロビオース、プシコースまたはこれらの2つの組み合わせが、以前に予想された濃度よりもはるかに低い濃度において、HISと共に用いてオフノートをマスクすることが見出された。セロビオースおよびプシコースの使用は完全に互換性があり、一方を他方の完全な代替として使用することができる。
【0009】
また、食用組成物ベース、少なくとも1つの甘味料および20〜50ppmの少なくとも1つのセロビオースおよびプシコースを含む食用組成物もまた提供される。
【0010】
「食用組成物ベース」とは、甘味料(単数または複数)およびセロビオース/ショ糖とは別に、食用組成物に必要なすべての原料を意味する。これらは、食用組成物の性質および用途に応じて、性質および割合の両方において自然に変化するであろうが、それらはすべて当該技術分野において周知であり、当該技術分野で認知された割合で使用され得る。したがって、考えられるあらゆる目的のための、かかるベースの処方は、当該技術分野の通常の技術の範囲内である。
【0011】
甘味料は、組成物に所望のレベルの甘さを付与するためのあらゆる適切な甘味料であり得る。これは、人工または天然であってもよく、特定の態様において、上記のタイプの高甘味度甘味料であり、特にそれらが添加される組成物にオフテイストを提供する傾向があることが知られているものである。
【0012】
食用組成物ベースにおける原料は、固結防止剤、消泡剤、酸化防止剤、結合剤、着色剤、希釈剤、崩壊剤、乳化剤、カプセル化剤または製剤、酵素、脂肪、フレーバー増強剤、フレーバー付与剤、ガム、潤滑剤、多糖類、保存剤、タンパク質、可溶化剤、溶媒、安定化剤、糖誘導体、界面活性剤、甘味付与剤、ビタミン、ワックスなどを含むが、これらに限定されない。使用することができる溶媒は、当業者に知られており、例えば、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンおよびトリアセチンを含む。カプセル剤およびガムは、マルトデキストリン、アラビアガム、アルギン酸塩、ゼラチン、加工デンプン、および多糖類を含む。
【0013】
フレーバーまたはフレグランス化合物のための添加剤、賦形剤、担体、希釈剤または溶媒の例は、例えば、“Perfume and Flavour Materials of Natural Origin”, S. Arctander, Ed., Elizabeth, N.J., 1960;"Perfume and Flavour Chemicals", S. Arctander, Ed., Vol. I & II, Allured Publishing Corporation, Carol Stream, USA, 1994; “Flavourings”, E. Ziegler and H. Ziegler (ed.), Wiley-VCH Weinheim, 1998、および“CTFA Cosmetic Ingredient Handbook”, J.M. Nikitakis (ed.), 1st ed., The Cosmetic, Toiletry and Fragrance Association, Inc., Washington, 1988に見出すことができる。
【0014】
セロビオース、プシコースおよびこれらの2つの化合物の混合物は、単独で、または様々な組み合わせにおいて使用することができ、セロビオースが混合物の0〜100%であり、一方、プシコースの濃度=100%−プシコースのパーセンテージである。
【0015】
セロビオースおよびセロビオース/プシコースは、HISの有無にかかわらず、あらゆる種類の可食性消費製品に使用することができる。特定の態様において、HISが存在する場合、HISは、レバウジオシドAおよびスクラロースから選択される。これらの甘味料との併用において、セロビオース、プシコースおよびセロビオース/プシコースの望ましい効果が、特に高められることが見出された。
【0016】
かかる消費製品の非限定例は以下を含む:
− 冷凍スープを含む、濃度または容器に関係ない、湿った/液体のスープ。この定義の目的のために、スープ(単数または複数)とは、肉、鶏肉、魚、野菜、穀物、果物および他の原料から調製された食品であって、これらの原料の一部または全部の目に見える欠けらを含みえる液体で調理された食品を意味する。それは、(ブロスとして)透明または(チャウダーとして)濃厚であってもよく、滑らか、ピューレ状、または塊の入っている、そのまま食べられる(ready-to-serve)、半濃縮または濃縮であってもよく、食事の最初のコースまたはメインコースとして、または(飲料のように少しずつ飲まれる)食事間のスナックとして、暖かくまたは冷たく提供されてもよい。スープは、他の食事構成要素を調製するための原料として使用されてもよく、ブロス(コンソメ)からソース(クリームまたはチーズベースのスープ)までに及んでもよい;
【0017】
− 調理補助製品を含む脱水したおよび料理用食品:例えば最終製品として、または製品、ソースおよびレシピミックス(技術に関係ない)における原料として個別に販売される、粉末、顆粒、ペースト、濃縮された液体製品、圧縮されたキューブ、タブレットまたは粉末または顆粒形態の濃縮ブイヨン、ブイヨンおよびブイヨン様製品;
【0018】
− 食事解決製品:例えば、脱水したスープミックス、脱水したインスタントスープ、脱水したすぐに調理できる(ready-to-cook)スープを含む脱水したおよび凍結乾燥したスープ、パスタ、ポテトおよびコメ料理を含む、既成の(ready-made)料理、食事および個食アントレの脱水したまたは常温の調製物;
【0019】
− 食事装飾製品:例えば、調味料、マリネ、サラダドレッシング、サラダトッピング、ディップ、パン粉、バッターミックス、貯蔵安定スプレッド、バーベキューソース、液体レシピミックス、濃縮物、最終製品として、または製品内の原料として販売される、脱水、液体または冷凍の何れであってもよい、サラダのためのレシピミックスを含むソースまたはソースミックス;
【0020】
− 飲料ミックスおよび濃縮物を含み、アルコールおよびノンアルコールの、そのまま飲める(ready to drink)および乾燥粉末状飲料、炭酸および非炭酸飲料、例えばソーダ、果物または野菜ジュース、アルコールおよびノンアルコール飲料を含むがこれらに限定されない飲料、菓子製品、例えば、ケーキ、クッキー、パイ、キャンディ、チューインガム、ゼラチン、アイスクリーム、シャーベット、プリン、ジャム、ジェリー、サラダドレッシング、および他の調味料、シリアル、および他の朝食用食品、缶詰の果物および果物ソースなど。
− ミルク、チーズ、ヨーグルト、および他の乳製品。
【0021】
本開示は、以下の非限定的な実施例を参照してさらに説明する。

例1
アスパルテーム/AceKで甘味付された、ストロベリーフレーバーのゼロ脂肪ヨーグルトにおいて、甘味の長引きおよび他のオフノートのマスキングに関して、プシコースを50ppmでテストした。
サンプルを、6人の専門テイスターのパネルによって評価した。テイスターは、HISの甘味の長引きおよび他のオフノートに焦点を当てて記述するように求められた。
【0022】
ベースは、0%脂肪ヨーグルト、100ppmアスパルテームおよび300ppmAceK、独自のストロベリーフレーバー@0.1%である。
【0023】
ベース:甘い、熟したストロベリー、長引く甘さおよびリコリス
ベース+50ppmプシコース:甘さの長引くオフノートの減少、渋みの低下、より高いストロベリーのインパクト、口当たりの増加
【0024】
例2〜8
セロビオースのマスキング例:
【表1】
【0025】
例9
低糖インスタントオートミールにおける30ppmでのセロビオースの効果。
6人の訓練を受けたテイスターは、低糖インスタントオートミール(33gインスタントオート麦、375gの沸騰した水、0.6gの塩、200メッシュおよび9gの砂糖を混合し、少なくとも2分放置した後に消費した)を、同一の条件下で消費した30ppmのセロビオース(12.5mg)を含有する同一の低糖インスタントオートミールと比較した。
セロビオースを含有するインスタントオートミールは、より甘く、より少ないオフノート、増強したボディおよび口当たりを有すると判断された。
【0026】
例10
ヨーグルトにおけるプシコースのテスト。
0.1重量%の独自のストロベリーフレーバーを含有し、100ppmのアスパルテームおよび300ppmのAceKで甘味付されたストロベリーフレーバーゼロ脂肪ヨーグルトに、50ppmでプシコースを添加した。
サンプルを6人の専門テイスターのパネルによって評価した。テイスターは、HISの甘味の長引きおよび他のオフノートに焦点を当てて記述するように求められた。
プシコースを欠くヨーグルトは、甘く、熟したストロベリー、長引く甘さおよびリコリスとテイスターによって査定された。
ヨーグルト+50ppmプシコースは、甘い長引くオフノートの減少、渋みの減少、より高いストロベリーのインパクト、および口当たりの増加を有することが観察された。