(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966464
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】炭素分子篩膜を作製する改善された方法
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20211108BHJP
B01D 53/22 20060101ALI20211108BHJP
B01D 71/64 20060101ALI20211108BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20211108BHJP
C01B 37/00 20060101ALI20211108BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20211108BHJP
【FI】
B01D71/02 500
B01D53/22
B01D71/64
B01D69/02
C01B37/00
C01B32/05
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-545916(P2018-545916)
(86)(22)【出願日】2017年3月2日
(65)【公表番号】特表2019-510624(P2019-510624A)
(43)【公表日】2019年4月18日
(86)【国際出願番号】US2017020432
(87)【国際公開番号】WO2017165098
(87)【国際公開日】20170928
【審査請求日】2020年2月17日
(31)【優先権主張番号】62/310,836
(32)【優先日】2016年3月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(73)【特許権者】
【識別番号】505477235
【氏名又は名称】ジョージア テック リサーチ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100173107
【弁理士】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヘスラー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ジェイ・コロス
(72)【発明者】
【氏名】リーレン・シュー
(72)【発明者】
【氏名】マーク・ケイ・ブライデン
(72)【発明者】
【氏名】マルコス・ヴイ・マルティネス
【審査官】
長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−011933(JP,A)
【文献】
特開2000−342944(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0053079(US,A1)
【文献】
中国特許出願公開第102527256(CN,A)
【文献】
特表2014−511274(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 61/00−71/82
B01D 53/22
C02F 1/44
C01B 37/00
C01B 32/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素分子篩膜を作製する方法であって、
(i)ポリイミド前駆体ポリマーを提供することと、
(ii)炉内で前記ポリイミド前駆体ポリマーを、600℃〜700℃の最終的な熱分解温度に、3〜7℃/分の熱分解加熱速度で400℃から前記最終的な熱分解温度まで加熱することであって、前記最終的な熱分解温度が、非酸化性雰囲気で最大60分の熱分解時間の間保持される、加熱することと、
(iii)炭素分子篩膜を、室温に冷却することと、を含み、
前記冷却が、冷却速度が前記最終的な熱分解温度から400℃まで、2℃/分超となるような除熱方法を使用して熱を除去することによって加速される、方法。
【請求項2】
前記最終的な熱分解温度から400℃までの平均冷却速度が、4℃/分超である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記熱分解加熱速度が、1つの加熱速度で保持される、請求項1〜2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
ガス分子を、前記ガス分子及び少なくとも1つの他のガス分子から成る供給ガスから分離するためのプロセスであって、
(i)請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により得られた前記炭素分子篩膜を提供することと、
(ii)前記炭素分子篩膜を通して前記供給ガスを流動させ、前記ガス分子の濃度が高い第1の流れと、前記他のガス分子の濃度が高い第2の流れとを生成することと、を含む、プロセス。
【請求項5】
前記ガス分子及び他のガス分子が、エチレン及びエタン、プロピレン及びプロパン、ブチレン及びブタン、酸素及び窒素、または二酸化炭素及びメタンである、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
炭素分子篩膜を作製する方法であって、
(i)ポリイミド前駆体ポリマーを提供することと、
(ii)炉内で前記ポリイミド前駆体ポリマーを、500℃〜1500℃の最終的な熱分解温度に、0.01〜200℃/分の熱分解加熱速度で前記最終的な熱分解温度まで加熱することであって、前記最終的な熱分解温度が、非酸化性雰囲気で数秒〜数日の熱分解時間の間で保持される、加熱することと、
(iii)前記炭素分子篩膜を、前記最終的な熱分解温度から400℃まで、2℃/分超の加速冷却速度で室温に冷却することと、を含む、方法。
【請求項7】
前記冷却が、除熱方法を使用して熱を除去することによって加速される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記除熱方法が、以下の、前記炉から断熱材を除去すること、前記炭素分子篩膜上にガスを直接流動させること、前記炭素分子篩膜を通してガスを流動させること、前記炉の少なくとも一部上に液体を流動させること、または前記炉の少なくとも一部上にガスを流動させること、のうちの1つ以上から成る、請求項7に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス分離において使用するための炭素分子篩(CMS)膜に関する。具体的には、本発明は、改善された選択性、透過性、及び安定性を有するCMS膜を生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
膜は、例えば、天然ガスからのCO
2及びH
2S等の酸性ガスの分離、及び空気からのO
2の除去を含む、ガス及び液体の分離のための幅広く使用されている。かかる膜を通したガス輸送は、一般的に、吸着−拡散機構によってモデル化される。現在、高分子膜がよく研究されており、容易に処理が可能であり、低費用のため、気体分離に幅広く利用可能である。しかしながら、CMS膜は、高分子膜のものを超える魅力的な分離性能特性を有することが示されている。
【0003】
CMS膜は、典型的には、ポリマー前駆体の熱分解を通して生成される。例えば、欠陥のない中空繊維CMS膜は、セルロース中空繊維を熱分解することによって生成され得ることが既知である(J.E.Koresh and A.Soffer,Molecular sieve permselective membrane.Part I.Presentation of a new device for gas mixture separation.Separation Science and Technology,18,8(1983))。加えて、多くの他のポリマーを使用して、繊維及び高密度フィルムの形態でCMS膜が生成されており、中でもポリイミドが好ましい。ポリイミドは、高いガラス転移温度を有し、処理が容易であり、たとえ熱分解の前であっても、他の高分子膜の中でも最も高い分離性能特性のうちの1つを有する。
【0004】
ポリイミド中空繊維は、米国特許第6,565,631号に記載されているように、熱分解されて真空下でCMS膜を形成する。米国特許第6,565,631号は、CMS膜を使用して、1000psia及び50℃で10%のCO
2を含有するメタン流からCO
2を分離する方法も開示し、典型的な市販の高分子膜よりもはるかに高い約45の選択性を有する。炭素膜(非対称中空「フィラメント状」及び平面シートの両方)を生成するためのプロセス及びガス分離への適用を記載する他の特許には、米国特許第5,288,304号及び欧州特許第0459623号が挙げられる。
【0005】
先行研究は、CMS膜分離特性が主に次の要因に影響されることを示している:(1)熱分解前駆体、(2)熱分解温度、(3)熱浸漬時間、及び(4)熱分解雰囲気。例えば、Steel及びKorosは、炭素膜の性能に対する熱分解温度、熱浸漬時間、及びポリマー組成物の影響の詳細な調査を実施した。(K.M.Steel and W.J.Koros,Investigation of Porosity of Carbon Materials and Related Effects on Gas Separation Properties,Carbon,41,253(2003).)膜は、0.05mmHgの圧力の空気雰囲気下で生成された。結果は、温度及び熱浸漬時間の両方の上昇が選択性を上昇させたが、CO
2/CH
4分離に対する透過性を減少させたことを示した。加えて、Steelらは、密集した構造の前駆体ポリマーは、より緻密ではない前駆体ポリマーと比較して、より高い選択性を有するCMS膜をもたらす傾向があることを示した。
【0006】
熱分解雰囲気の影響は、制限された範囲までしか研究されなかった。Suda及びHarayaは、異なる環境下でのCMS膜の構造を開示した。(H.Suda and K.Haraya,Gas Permeation Through Micropores of Carbon Molecular Sieve Membranes Derived From Kapton Polyimide,J.Phys.Chem.B,101,3988(1997)。)CMS高密度フィルムは、アルゴン下または真空下のいずれかにおいて1000℃でポリイミドKapton(登録商標)から調製された。それらのガス分離特性に従って、O
2/N
2分離の結果は、異なる雰囲気下で形成された6膜の間でほぼ同じであった。Suda及びHarayaは、天然ガスからのCO
2分離における雰囲気の効果、または分離特性が能力及び低費用によってどのように変化するかを開示しなかった。同様に、Geiszler及びKorosは、O
2/N
2及びH
2/N
2分離の両方に対する、ヘリウム及びアルゴン中でのフッ素化ポリイミドの熱分解によって生成されるCMS繊維の結果を開示した。
(V.C.GEISZLER and W.J.Koros,“Effects of Polyimide Pyrolysis Conditions on Carbon Molecular Sieve Membrane Properties,”American Chemical Society,1996,v.35,no.9,pp.2999−3003)。この文書は、パージされた熱分解プロセスよりも、真空熱分解による若干高い選択性を開示した。加えて、Geiszler及びKorosは、パージガスの流量が性能に影響を与えたことを示した。米国特許第8,486,179号では、熱分解雰囲気中で少ない酸素の量を有する雰囲気の使用の効果が記載された。
【0007】
CMS膜を作製する改善された方法及び上述のもの等の先行技術の問題のうちの1つ以上に対処する方法によって作製されたCMS膜を提供することが望ましいだろう。例えば、特定の透過ガス分子/残余ガス分子に対する選択性及び透過度(または透過性)の改善された組み合わせを有するCMS膜を提供することが望ましいだろう。
【発明の概要】
【0008】
炭素分子篩膜を作製する本発明の方法の第1の態様は、
(i)ポリイミド前駆体ポリマーを提供することと、
(ii)炉内でポリイミド前駆体ポリマーを、600℃〜700℃の最終的な熱分解温度に、3〜7℃/分の熱分解加熱速度で400℃から最終的な熱分解温度まで加熱することであって、最終的な熱分解温度が、非酸化性雰囲気で最大60分の熱分解時間の間保持される、加熱することと、
(iii)炭素分子篩膜を、室温に冷却することと、を含む。
【0009】
本発明の方法は、選択性及び透過度の改善された組み合わせを有するCMSを実現し得る。例証的に、本方法は、同様の大きさのガス分子(例えば、エチレン/エタン及びプロピレン/プロパン)に対する良好な選択性を有すると同時に、依然として標的透過ガス分子(例えば、エチレンまたはプロピレン)のより高い透過度を有するCMS膜を可能にする。
【0010】
本発明の第2の態様は、第1の態様のプロセスによって作製された炭素分子篩である。
【0011】
本発明の第3の態様は、ガス分子及び少なくとも1つの他のガス分子から成る供給ガスからガス分子を分離するためのプロセスであり、
(i)第1の態様の炭素分子篩膜を提供することと、
(ii)炭素分子篩膜を通してガス供給を流動させ、ガス分子の濃度が高い第1の流れと、他のガス分子の濃度が高い第2の流れとを生成することと、を含む、プロセスである。
【0012】
本発明の第4の態様は、密閉可能なエンクロージャ内に収容された、請求項1〜9のいずれか1項に記載の少なくとも1つの炭素分子篩膜を含む、複数の炭素分子篩膜と、少なくとも2つの異なるガス分子から成るガス供給を導入するための注入口と、透過ガス流の流出を可能にするための第1の放出口と、残余ガス流の流出のための第2の放出口とから成る、密閉可能なエンクロージャを備える、炭素分子篩モジュールである。
【0013】
本発明の第5の態様は、炭素分子篩膜を作製する方法であって、
(i)ポリイミド前駆体ポリマーを提供することと、
(ii)炉内でポリイミド前駆体ポリマーを、500℃〜1500℃の最終的な熱分解温度に、0.01〜200℃/分の熱分解加熱速度で最終的な熱分解温度まで加熱することであって、最終的な熱分解温度が、非酸化性雰囲気で数秒〜数日の熱分解時間の間で保持される、加熱することと、
(iii)炭素分子篩膜を、加速冷却速度で室温に冷却することと、を含む。
改善された透過度/選択性は、幅広く変化する熱分解条件でなお実現され得るということが、意外にも見出されている。
【0014】
ガス分離方法は、エタン/エチレン及びプロパン/プロピレン等の非常に類似した分子径を有するガス供給中のガス分子を分離するために特に有用である。大気空気から酸素等のガスを分離する、または天然のガス供給中のガス(例えば、メタン)を分離するためにも使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】例示的な本発明の加速冷却及び受動的冷却のグラフである図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ポリイミド前駆体ポリマーは、CMS膜を作製するための任意の有用なポリイミドポリマーであり得る。ポリイミドは、従来のまたはフッ素化ポリイミドであり得る。望ましいポリイミドは、典型的には、2,4,6−トリメチル−1,3−フェニレンジアミン(DAM)、オキシジアナリン(ODA)、ジメチル−3,7−ジアミノジフェニル−チオフェン−5,5’−ジオキシド(DDBT)、3,5−ジアミノ安息香酸(DABA)、2.3,5,6−テトラメチル−1,4−フェニレンジアミン(ズレン)、メタ−フェニレンジアミン(m−PDA)、2,4−ジアミノトルエン(2,4−DAT)、テトラメチルメチレンジアナリン(TMMDA)、4,4’−ジアミノ2,2’−ビフェニルジスルホン酸(BDSA)、5,5’−[2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチリデン]−1,3−イソベンゾフランジオン(6FDA)、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BPDA)、ピロメリット酸ジアンヒドリド(PMDA)、1,4,5,8−ナフタリンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(NTDA)、及びベンゾフェノンテトラカルボン酸ジアンヒドリド(BTDA)から選択される少なくとも2つの異なる部分を含有し、6FDA、BPDA、及びDAMのうちの2つ以上が好ましい。
【0017】
6FDA/BPDA−DAMと指定される特に有用なポリイミドは、各々が例えば、Sigma−Aldrich Corporationから市販されている3つのモノマー、DAM、6FDA、及びBPDAの組み合わせから、熱または化学プロセスによって合成され得る。以下の式1は、X及びY間の比率を調節し、ポリマー特性を調整する可能性を有する6FDA/BPDA−DAMの代表的な構造を示す。以下の例において使用されるように、成分X及び成分Yの1:1比は、6FDA/BPDA(1:1)−DAMという形に省略され得る。
【0019】
6FDA−DAMと指定される第2の特に有用なポリイミドは、上述の式1においてYがゼロと等しくなるようにBPDAを欠く。以下の式2は、このポリイミドの代表的な構造を示す。
【0021】
第3の有用なポリイミドは、MATRIMID(商標)5218(Huntsman Advanced Materials)であり、3,3’,4,4’−ベンゾ−フェノンテトラカルボン酸ジアンヒドリドと、5(6)−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン(BTDA−DAPI)とのコポリマーである市販されているポリイミドである。
【0022】
中空繊維が生成されるが熱分解されない好ましいポリイミドポリマー前駆体中空繊維膜は、実質的に欠陥のないものである。「欠陥のない」とは、典型的には酸素(O
2)及び窒素(N
2)である中空繊維膜を通るガスの対の選択性が、ポリマー前駆体中空繊維膜を作製するために使用されたものと同じ組成物から調製された高密度フィルムを通る同じガスの対に対する選択性の少なくとも90パーセントであることを意味する。例示として、6FDA/BPDA(1:1)−DAMポリマーは、4.1の本質的なO
2/N
2選択性(「高密度フィルム選択性」としても既知である)を有する。
【0023】
前駆体ポリイミドポリマーは、典型的には中空繊維またはフィルムに形成される。これらを作製するための従来の手順が使用され得る。例えば、乾燥噴射湿式紡糸プロセス(紡糸口金の先端と凝固もしくは急冷浴との間にエアギャップが存在する)または湿式紡糸プロセス(ゼロのエアギャップ距離を有する)等を含む共押出手順を使用して、中空繊維を作製することができる。
【0024】
特定の加熱速度、最終的な熱分解温度、冷却速度、及びそれらの組み合わせが、本明細書に記載されている分離における対象とするガス分子の透過度及び選択性の改善された組み合わせを有するCMS膜を作り出し得ることが発見された。ポリイミド前駆体が炭素を形成し始める温度(〜400℃)から最終的な熱分解温度までの加熱速度が、加速冷却がない場合において特に重要であることが見出された。如何様にも制限するものではないが、加熱速度が速すぎる場合、ポリマー鎖がより大きな破砕を受け、それによって密集しすぎて透過度を不十分にさせる場合があり、またその速度が遅すぎる場合、破砕が低すぎて、選択性があまりにも不十分になる場合があると考えられる。400℃から最終的な熱分解温度までの加熱速度は、3℃〜7℃/分である。加熱速度はまた、室温からの速度と同じ速度であり得る。400℃から最終的な熱分解温度までの加熱速度は、4℃/分のような1つの加熱速度で保持されることが望ましい。室温(〜20℃から30℃)から最終的な熱分解温度まで、同じ加熱速度を保持することもまた望ましくあり得る。
【0025】
最終的な熱分解温度は、加速冷却がない場合において、600℃〜700℃または675℃であることが望ましい。最終的な熱分解温度での時間の長さは、加熱速度の観点から実行可能である短時間(例えば、数秒または1分)〜約60分であることが望ましい。一実施形態では、最終的な熱分解温度での保持時間は、15分〜60分である。より長い時間は必要でない傾向があり、透過度及び選択性の所望の組み合わせに負の影響を与える可能性がある。
【0026】
分離性能が、500℃〜1500℃、または少なくとも550℃もしくは600℃〜最大1000℃、900℃、もしくは800℃の最終的な熱分解温度、0.01℃/分〜200℃/分、または0.1℃/分もしくは1℃/分〜100℃/分、50℃/分、もしくは20℃/分の加熱速度、及び数秒〜数日、24時間、8時間、2時間、または1時間の保持時間といった、幅広く変化する熱分解条件にわたって改善され得ることは意外である。冷却速度を加速することとは、本明細書では、静止雰囲気が炉の内側及び外側の周りにある状態で、炉への電力を遮断することから単に発生する、冷却速度が加熱速度から加速されることを意味する。例示的な
除熱方法は、断熱材を除去すること(例えば、管炉内の管の周りの断熱箱を除去すること)、炉内で炭素分子篩膜上にガスを直接流動させること、炉内で炭素分子篩膜を通してガスを流動させること、炉の少なくとも一部上に液体を流動させること、または炉の少なくとも一部上にガスを流動させること、を含む。
除熱方法の任意の1つまたは組み合わせを使用することができるが、少なくとも最終的な熱分解温度から約400℃または室温(〜20℃から30℃)までのできるだけ高い冷却速度を有することが望ましい。概して、最終的な熱分解温度から400℃までの平均冷却速度は、約2、4、またはさらには6℃/分を超える。平均加熱速度は、最終的な熱分解温度と400℃との間の温度差及び400℃に達するまでの合計時間である。400℃から室温までの冷却速度が任意で実行可能であり得、単に生産性目的でより望ましい。
【0027】
全ての温度、加熱速度、及び冷却速度は、炉内で測定されるものであり、形成されている実際のCMS膜ではないことが理解される。形成されているCMS膜の実際の温度は、炉内の熱質量、使用される特定の炉等による温度差のためにやや変化し得、当事者によって容易に決定可能である。
【0028】
2つのメタリックワイヤメッシュの間に挟むこと、またはステンレス鋼ワイヤと組み合わせたステンレス鋼メッシュ板を使用することを含む、及び参照により組み込まれる米国特許第8,709,133号の第6欄58行目から第7欄4行目に記載されるような、CMS膜を保持するための任意の好適な支持手段が熱分解の間に使用され得る。
【0029】
前駆体ポリイミドポリマーは、真空熱分解のための種々の不活性ガスパージまたは真空条件下、好ましくは不活性ガスパージ条件下で、好ましくは低圧力(例えば、0.1ミリバール未満)で炭化され得る。一実施形態では、熱分解は、低レベルの酸素が不活性ガス中に存在する制御されたパージガス雰囲気を熱分解中に利用する。例として、アルゴン等の不活性ガスが、パージガス雰囲気として使用される。他の好適な不活性ガスには、窒素、ヘリウム、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。弁等の任意の好適な方法を使用することによって、特定の濃度の酸素を含有する不活性ガスが、熱分解雰囲気に導入され得る。例えば、パージ雰囲気中の酸素の量は、約50ppm(百万分率)未満のO
2/Arであり得る。代替的に、パージ雰囲気中の酸素の量は、40ppm未満のO
2/Arであり得る。実施形態は、約8ppm、7ppm、または4ppmのO
2/Arの熱分解雰囲気を含む。
【0030】
膜のガス透過特性は、ガス透過実験によって判定され得る。2つの固有特性が、膜材料の分離性能の評価における有用性を有する:膜の固有の生産性の測定値である「透過性」、及び膜の分離効率性の測定値である「選択性」。典型的には、Barrerで「透過性」を判定する(1Barrer=10
−10[cm
3(STP)cm]/[cm
2s cmHg]、流速(n
i)を膜の上流と下流との間の部分圧力差(Δpi)で除し、膜の厚さ(i)を乗算することによって計算される。
【0032】
別の用語「透過度」は、非対称中空繊維膜の生産性として本明細書において定義され、典型的には、Gas Permeation Units(GPU)(1GPU=10
−6[cm
3(STP)]/[cm
2s cmHg])で測定され、透過性を有効な膜分離層厚で除算することによって判定される。
【0034】
最後に「選択性」は、あるガスの膜を通る透過能力または別のガスの同じ特性と比較した透過度として本明細書において定義される。これは単位のない割合として測定される。
【0036】
特定の実施形態では、本方法によって生成されるCMS膜は、標的ガス分子(透過)に対して少なくとも5GPUの透過度及び少なくとも10の選択性、ならびに該透過度及び選択性が、残余ガス分子及び透過ガス分子から成る供給ガスを連続して10日間分離した後、20%未満で変化するような安定性を有する炭素中空繊維CMS膜を可能にする。透過度及び選択性は、残余及び透過ガス分子の対から成る供給ガスを連続して10、30、または60日間分離した後、15%、10%、または5%未満で変化することが望ましい。特定の実施形態では、透過/残余ガス分子の対は、エチレン/エタン、プロピレン/プロパン、ブチレン/ブタン、メタン/二酸化炭素、メタン/水、酸素/窒素、及びメタン/硫化水素であり得る。例証的に、供給ガスは概して、少なくとも50%の透過ガス分子(例えば、エチレンまたはプロピレン)及び25%の残余ガス分子(例えば、エタンまたはプロパン)から成る。
【0037】
特定の実施形態では、生成されたCMS膜は、プロピレン(透過)に対して少なくとも10GPUの透過度及び少なくとも35のプロピレン/プロパンの選択性を有する。この実施形態では、透過度は、プロピレンに対して少なくとも12、15、またはさらには18GPUであることが望ましい。同様に、この実施形態では、選択性は、プロピレン/プロパンに対して少なくとも40、45、またはさらには50である。別の特定の実施形態では、生成されるCMS膜は、エチレン(透過)に対して少なくとも10GPUの透過度及び少なくとも6のエチレン/エタンの選択性を有する。この実施形態では、透過度は、エチレンに対して少なくとも15、18、またはさらには20GPUであることが望ましい。同様に、この実施形態では、選択性は、エチレン/エタンに対して少なくとも8、10、またはさらには12である。さらなる実施形態では、生成されるCMS膜は、ブチレン(透過)に対して少なくとも10GPUの透過度及び少なくとも5のブチレン/ブタンの選択性を有する。望ましくは、この実施形態では、透過度は、ブチレンに対して少なくとも20、30、またはさらには40GPUである。同様に、この実施形態では、選択性は、ブチレン/ブタンに対して少なくとも10、15、またはさらには30である。
【0038】
CMS膜は、上述のもの等の大きさが同様のガスを分離するのに特に好適であり、CMS膜を通して所望のガス分子及び少なくとも1つの他のガス分子を含有するガス供給を流動させることに関与する。流動は、所望のガス分子の濃度が高い第1の流れと、他のガス分子の濃度が高い第2の流れとをもたらす。プロセスは、前述のガスの対のうちのいずれかを分離するために利用され得、エチレン及びエタンまたはプロピレン及びプロピレンを分離するために特に好適である。同様に、プロセスは、上述の経時的な透過度及び選択性に関するものと同じ安定性を呈する。プロセスを実践するとき、CMS膜は、密閉可能なエンクロージャ内に収容される、本発明の方法によって生成された少なくとも1つの炭素分子篩膜から成る複数の炭素分子篩膜から成る密閉可能なエンクロージャを備えるモジュールに組み立てられることが望ましい。少なくとも2つの異なるガス分子から成るガス供給を導入する注入口と、透過ガス流の流出を可能にするための第1の放出口と、残余ガス流の流出のための第2の放出口とを有する、密閉可能なエンクロージャ。
【実施例】
【0039】
CMS膜の調製:
6FDA:BPDA−DAMポリマーを使用してCMS膜を作製した。6FDA:BPDA−DAMは、Akron Polymer Systems,Akron,OHから得た。ポリマーを110℃で24時間にわたって真空下で乾燥させ、次いでドープを形成した。6FDA:BPDA−DAMポリマーを表1の溶媒及び化合物と混合してドープを作製し、ポリテトラフルオロエチレン(TEFLON(登録商標))キャップで密閉されたQorpak(商標)ガラス瓶中で、5回転毎分(rpm)の回転速度で約3週間の期間にわたって回転混合し、均質なドープを形成した。
【0040】
【表1】
【0041】
均質なドープを500ミリリットル(mL)のシリンジポンプに装填し、加熱テープを使用してポンプを50℃の設定点温度に加熱することによって、一晩かけてドープからガスを取り除く。
【0042】
ボア流体(ボア流体の総重量に基づいて80重量%のNMP及び20重量%の水)を別個の100mLのシリンジポンプに装填し、次いで、ドープに対して1時間当たり180ミリリットル(mL/時間)、ボア流体に対して60mL/時間の流量で操作し、40μm及び2μmの金属フィルターを使用して送達ポンプと紡糸口金との間で、直列でボア流体及びドープの両方を濾過しながら、紡糸口金を通してドープ及びボア流体を共押出した。熱電対を使用して温度を制御し、加熱テープを70℃の設定点温度で紡糸口金、ドープフィルター、及びドープポンプ上に置いた。
【0043】
15センチメートル(cm)エアギャップを通過させた後、紡糸口金によって形成された初期の繊維を水浴(50℃)中で急冷し、繊維を相分離させた。直径0.32メートル(M)のポリエチレンドラムを使用し、TEFLON(登録商標)ガイド上を通過させ、42メートル毎分(M/分)の巻き取り速度で操作して、繊維を収集した。
【0044】
繊維をドラムから切断し、48時間の間隔にわたって別個の水浴中で少なくとも4回濯いだ。繊維を回収し、それらを110℃の設定点温度で1時間にわたり真空下で乾燥させる前に、ガラス容器中で濯いだ繊維及び有効な溶媒を3回、20分間メタノールと交換し、次いで20分間ヘキサンと交換する。
【0045】
繊維を熱分解する前に、サンプル量の上述の繊維(「前駆体繊維」としても既知である)を、皮の完全性に関して試験した。1つ以上の中空前駆体繊維を1/4インチ(0.64cm)(外径、OD)のステンレス鋼導管に入れた。各導管の末端を1/4インチ(0.64cm)ステンレス鋼T字管に接続し、各T字管を1/4インチ(0.64cm)の雌及び雄のNPT管アダプタに接続し、エポキシでNPT継ぎ手に密閉した。35℃で維持された定容積システム内で純ガス透過試験を実施した。各透過試験のため、全システム及び漏れ率を判定し、漏出が、最も遅いガスの透過速度の1パーセント未満であったことを確実にした。排気後、下流端(供給源から最も遠い末端)を真空下に保持しながら、供給ガス(例えば、純酸素または純窒素)で管の上流端(供給源に最も近い末端)を加圧した。定常状態に達するまでLABVIEWソフトウェア(National Instruments,Austin,TX)を使用して経時的に、一定の既知の下流容積における圧力上昇を記録した。圧力上昇の速度、膜面積、及び膜を横断する圧力差によって、膜を通る各ガスの透過度を判定した。個々のガスの透過度の比率として各ガスの対の選択性を計算した。
【0046】
中空繊維を熱分解し、前駆体繊維をステンレス鋼ワイヤメッシュ板上に置くことによってCMS膜を形成し、それらの各々はステンレス鋼ワイヤを使用して板に別個に固定された。中空繊維とメッシュ板との組み合わせを、管炉内の石英管に入れた。繊維を不活性ガス(200立方センチメートル毎分(sccm)の速度で流動するアルゴン)下で熱分解した。熱分解の前に、管炉を排気し、次いで最低でも4時間にわたってパージすることによって炉を酸素でパージし、酸素レベルを1ppm未満に低減させた。繊維の全てを、表
2に示されるように傾斜率で加熱し、最大浸漬温度で保持した。繊維を受動的に冷却した(炉が約室温まで冷却されるまで〜15時間、同じ不活性ガス流動で炉を停止した)。
【0047】
冷却後、繊維を不活性ガス流下で24時間置いたままにし、新たに形成されたCMSを安定化させた。その後、それらを炉から取り出し、上述のようにモジュールに入れた。透過試験システムに装填される前に、モジュールを2時間置いた。35℃で50psiaの上流及び下流真空を有する上述の定容積システム内で、プロピレン及びプロパンの50:50の混合物を使用して全ての透過試験を判定した。
【0048】
【表2】
【0049】
【表3】
【0050】
比較実施例1:
素早く真空に引いて、全周囲ガスをシステムから取り除き、直後にC3”/C3(プロピレン/プロパン)の50:50の混合物を、表2に示される熱分解された繊維を有するモジュールに供給した。各試験に対して、複数の透過速度測定を行い、ガスクロマトグラフを使用して透過を測定することによって、定常状態を確認した。これらの測定値が2%未満で変化したとき、システムが定常状態にあると見なした。プロピレン透過度及びプロピレン/プロパン選択性が、表2に示される。
【0051】
比較実施例2
比較実施例2は、CMSモジュールに使用された繊維を表2に示されるように熱分解したことを除いて、比較実施例1と同じであった。プロピレン透過度及びプロピレン/プロパン選択性が、表2に示される。
【0052】
比較実施例3
比較実施例3は、CMSモジュールに使用された繊維を表2に示されるように熱分解したことを除いて、比較実施例1と同じであった。プロピレン透過度及びプロピレン/プロパン選択性が、表2に示される。
【0053】
比較実施例4
比較実施例4は、CMSモジュールに使用された繊維を表2に示されるように熱分解したことを除いて、比較実施例1と同じであった。プロピレン透過度及びプロピレン/プロパン選択性を表2に示す。
【実施例1】
【0054】
実施例1は、CMSモジュールに使用された繊維を表2に示されるように熱分解したことを除いて、比較実施例1と同じであった。実施例1の透過度及び選択性もまた、表2に示される。
【0055】
比較実施例5
比較実施例3は、CMSモジュールに使用された繊維を10℃/分で660℃まで、次いで4℃/分で675℃まで加熱することによって熱分解し、60分間その温度で浸漬させたことを除いて、比較実施例1と同じであった。比較1と同様の方法で繊維を受動的に冷却した。プロピレン透過度及びプロピレン/プロパン選択性が、表3に示される。
【実施例2】
【0056】
実施例2は、管炉の断熱箱を途中まで開けることによって繊維を素早く冷却(急速冷却)したことを除いて、比較実施例5と同じであった。プロピレン透過度及びプロピレン/プロパン選択性が、表3に示される。
【実施例3】
【0057】
実施例3は、管炉の断熱箱を完全に開けることによって繊維をさらにより素早く冷却(過冷却)したことを除いて、実施例2と同じであった。プロピレン透過度及びプロピレン/プロパン選択性が、表3に示される。比較実施例5ならびに実施例2及び3の冷却速度が、
図1に示される。
(態様)
(態様1)
炭素分子篩膜を作製する方法であって、
(i)ポリイミド前駆体ポリマーを提供することと、
(ii)炉内で前記ポリイミド前駆体ポリマーを、600℃〜700℃の最終的な熱分解温度に、3〜7℃/分の熱分解加熱速度で400℃から前記最終的な熱分解温度まで加熱することであって、前記最終的な熱分解温度が、非酸化性雰囲気で最大60分の熱分解時間の間保持される、加熱することと、
(iii)前記炭素分子篩膜を、室温に冷却することと、を含む、方法。
(態様2)
前記冷却が、除熱方法を使用して熱を除去することによって加速される、態様1に記載の方法。
(態様3)
前記除熱方法が、以下、前記炉から断熱材を除去すること、前記炭素分子篩膜上にガスを直接流動させること、前記炭素分子篩膜を通してガスを流動させること、前記炉の少なくとも一部上に液体を流動させること、または前記炉の少なくとも一部上にガスを流動させること、のうちの1つ以上から成る、態様2に記載の方法。
(態様4)
前記最終的な熱分解温度から400℃までの平均冷却速度が、2℃/分を超える、態様2または3のいずれかに記載の方法。
(態様5)
前記炉の少なくとも一部上の前記液体の前記流動が、金属冷却ジャケットまたは冷却コイルを使用することによって行われる、態様3または4のいずれかに記載の方法。
(態様6)
状態制御雰囲気が、少なくとも99%の標的透過ガス分子から成る、態様1〜5のいずれか1項に記載の方法。
(態様7)
前記熱分解加熱速度が、1つの加熱速度で保持される、態様1〜6のいずれか1項に記載の方法。
(態様8)
同一の加熱速度が、室温から前記最終的な熱分解温度まで維持される、態様7に記載の方法。
(態様9)
前記熱分解時間が、15分〜60分である、態様1〜8のいずれか1項に記載の方法。
(態様10)
ガス分子を、前記ガス分子及び少なくとも1つの他のガス分子から成る供給ガスから分離するためのプロセスであって、
(i)先行態様のいずれか1項に記載の前記炭素分子篩膜を提供することと、
(ii)前記炭素分子篩膜を通して前記ガス供給を流動させ、前記ガス分子の濃度が高い第1の流れと、前記他のガス分子の濃度が高い第2の流れとを生成することと、を含む、プロセス。
(態様11)
前記ガス分子及び他のガス分子が、エチレン及びエタン、プロピレン及びプロパン、ブチレン及びブタン、酸素及び窒素、または二酸化炭素及びメタンである、態様10に記載のプロセス。
(態様12)
前記ガス分子及び他のガス分子が、エチレン及びエタンまたはプロピレン及びプロパンである、態様11に記載のプロセス。
(態様13)
エチレンが、35℃で少なくとも6のエチレン/エタンの選択性及び少なくとも10GPUのエチレン透過度を有する、態様11に記載のプロセス。
(態様14)
プロピレンが、35℃で少なくとも35のプロピレン/プロパンの選択性及び少なくとも10GPUのプロピレン透過度を有する、態様11に記載のプロセス。
(態様15)
態様1〜9のいずれか1項に記載の方法によって作製される、炭素分子篩膜。
(態様16)
前記供給ガスが、少なくとも30%のエチレン及び25%のエタンから成り、前記ガス分子がエチレンである、態様11〜13のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様17)
前記供給ガスが、少なくとも30%のプロピレン及び25%のプロパンから成り、前記ガス分子がプロピレンである、態様11、12、または14のいずれか1項に記載のプロセス。
(態様18)
前記供給ガスが、少なくとも30%のブチレン及び25%のブタンから成り、前記ガス分子がブチレンである、態様11または12のいずれかに記載のプロセス。
(態様19)
密閉可能なエンクロージャ内に収容された、態様1〜9のいずれか1項に記載の少なくとも1つの炭素分子篩膜を含む、複数の炭素分子篩膜と、少なくとも2つの異なるガス分子から成るガス供給を導入するための注入口と、透過ガス流の流出を可能にするための第1の放出口と、残余ガス流の流出のための第2の放出口とから成る、前記密閉可能なエンクロージャを備える、炭素分子篩モジュール。
(態様20)
炭素分子篩膜を作製する方法であって、
(i)ポリイミド前駆体ポリマーを提供することと、
(ii)炉内で前記ポリイミド前駆体ポリマーを、500℃〜1500℃の最終的な熱分解温度に、0.01〜200℃/分の熱分解加熱速度で前記最終的な熱分解温度まで加熱することであって、前記最終的な熱分解温度が、非酸化性雰囲気で数秒〜数日の熱分解時間の間で保持される、加熱することと、
(iii)前記炭素分子篩膜を、加速冷却速度で室温に冷却することと、を含む、方法。
(態様21)
前記冷却が、除熱方法を使用して熱を除去することによって加速される、態様20に記載の方法。
(態様22)
前記除熱方法が、以下の、前記炉から断熱材を除去すること、前記炭素分子篩膜上にガスを直接流動させること、前記炭素分子篩膜を通してガスを流動させること、前記炉の少なくとも一部上に液体を流動させること、または前記炉の少なくとも一部上にガスを流動させること、のうちの1つ以上から成る、態様21に記載の方法。