【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、前歯および臼歯が、異なる特性に関するニーズを満たすために異なる材料を有する、特有の義歯系を提供する。硬質であり、強度が高く、耐摩耗性の高い、重合可能な組成物が、このニーズを満たすように開発されており、幅広い用途に有用である。特定の有用性が歯科の分野で見いだされており、ここで当該組成物は、人工歯、そのエナメル質、象牙質の形成および構築、ならびに義歯床、義歯床プレート、義歯裏装材、義歯修復物(denture repair)、スプリント、歯科矯正装置、カスタムトレイ、べニア、クラウン、およびブリッジ、天然の歯の修復物、および歯の修復充填物などの他の歯科学および補綴学での使用に、非常に適している。具体的には、本発明は、前歯および臼歯が、前歯に関する高い破壊靭性、義歯床に対する優れた接着性、および高い強度、ならびに臼歯に関する高い摩耗性、義歯床に対する良好な接着性、および高い強度のニーズを満たすために異なる材料を使用している、義歯系に関する。また、本発明は、ポリマー、架橋したポリマー、モノマー、および、前駆体混合物を形成する上記モノマー用の、ウレタンベースの多官能性架橋モノマーまたはオリゴマー、特にウレタン(メタ)アクリラートを含む重合体の組成物に関する。これらの前駆体混合物は、形成または成形することができ、架橋剤としてのウレタン(メタ)アクリラートの使用による優れた耐摩耗性、驚くべき良好な靭性、高い曲げ強さなどの望ましい物理学的および生理化学的な特性を有する物品を提供するように重合化されている。さらに、優れた成形処理可能性が、人工歯の材料の生産に有用である。また、本発明は、その材料から生産される人工歯の材料、および優れた成形性を有する歯の材料に関する。また本発明は、異なる重合可能な材料からなるいくつかの層を伴う人工歯(prosthetic teeth)を形成するための異なる重合可能な材料の圧縮成形、3Dプリンティング、CAD/CAMでの処理、およびトランスファー成形に関する。異なる材料を伴う人工歯におけるいくつかの層の設計は、複数の層からなる天然の歯群と類似している。異なる材料の層は、異なる特性を示した。
【0019】
別の態様では、本発明は、歯科用組成物であって、
(i)メチルメタクリラート;メチルアクリラート;エチルメタクリラート;イソブチルメタクリラート;シクロヘキシルメタクリラート;イソボルニルメタクリラート;イソボルニルアクリラート;アリルメタクリラート;およびそれらの混合物の群から選択される、約40〜約95重量%の1つまたは複数のモノマーと、
(ii)エチレングリコールジメタクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラート、グリセロールトリ(メタ)アクリラート、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリラート、1,3−プロパンジオールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリラート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリラート、1,4−シクロヘキサンジオールジメタクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールテトラメタクリラート、ソルビトールヘキサアクリラート(hexacrylate)、およびそれらの混合物の群から選択される、約0〜約15重量%の第1の架橋剤と、
(iii)2,2−ビス(4−メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロイルオキシ−エトキシ)フェニル]プロパン;2,2−ビス[4−(メタクリロイルオキシ−エトキシ)フェニル]プロパン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、約5〜約20重量%の第2の架橋剤と、
(iv)1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラートおよびエチレングリコールジメタクリラートの反応生成物;1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラートの反応生成物、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラートの反応生成物;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、約5〜約40重量%の第3の架橋剤と、
(v)トリメチル1,6−ジイソシアナトヘキサンおよびビスフェノールAプロポキシレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラートの反応生成物;トリメチル1,6−ジイソシアナトヘキサンおよびビスフェノールAプロポキシレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラートの反応生成物;1,6ジイソシアナトヘキサンおよび水で変性させた2−ヒドロキシエチルメタクリラートの反応生成物;1,6ジイソシアナトヘキサンおよび水で変性させた2−ヒドロキシエチルアクリラートの反応生成物;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、約0〜約20重量%の第4の架橋剤と、
(vi)約0〜約10重量%の開始剤と
を含む、歯科用組成物を考案している。
【0020】
別の態様では、本発明は、
a)約35〜約60重量%の液体成分であって、
(i)メチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルメタクリラート、イソブチルメタクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、イソボルニルメタクリラート、イソボルニルアクリラート、アリルメタクリラート、およびそれらの混合物の群から選択される、約60〜約95重量%の1つまたは複数のモノマーと、
(ii)エチレングリコールジメタクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラート、グリセロールトリ(メタ)アクリラート、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリラート、1,3−プロパンジオールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリラート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリラート、1,4−シクロヘキサンジオールジメタクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールテトラメタクリラート、ソルビトールヘキサアクリラート、およびそれらの混合物の群から選択される、約0〜約15重量%の第1の架橋剤と、
(iii)2,2−ビス(4−メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロイルオキシ−エトキシ)フェニル]プロパン;2,2−ビス[4−(メタクリロイルオキシ−エトキシ)フェニル]プロパン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、約0.5〜約20重量%の第2の架橋剤と、
(iv)1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラートおよびエチレングリコールジメタクリラートの反応生成物;1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラートの反応生成物、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラートの反応生成物;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、約0.5〜約15重量%の第3の架橋剤と、
(v)トリメチル1,6−ジイソシアナトヘキサンおよびビスフェノールAプロポキシレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラートの反応生成物;トリメチル1,6−ジイソシアナトヘキサンおよびビスフェノールAプロポキシレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラートの反応生成物;1,6ジイソシアナトヘキサンおよび水で変性させた2−ヒドロキシエチルメタクリラートの反応生成物;1,6ジイソシアナトヘキサンおよび水で変性させた2−ヒドロキシエチルアクリラートの反応生成物;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、約0〜約20重量%の第4の架橋剤と、
(vi)過酸化物、特に過酸化ベンゾイルを含む、約0〜約10重量%の開始剤と
を含む、約35〜約60重量%の液体成分と、
b)約30〜約65重量%の粒子状物質と
を含む組成物を含む、人工歯を考案している。
【0021】
別の態様では、本発明は、
a)約35〜約60重量%の液体成分であって、
(i)メチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルメタクリラート、イソブチルメタクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、イソボルニルメタクリラート、イソボルニルアクリラート、アリルメタクリラート、およびそれらの混合物の群から選択される、約40〜約95重量%の、1つまたは複数のモノマーと、
(ii)エチレングリコールジメタクリラート、グリセロールジ(メタ)アクリラート、グリセロールトリ(メタ)アクリラート、エチレングリコールジ(メタ)アクリラート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリラート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリラート、1,3−プロパンジオールジメタクリラート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリラート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリラート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリラート、1,4−シクロヘキサンジオールジメタクリラート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリラート、ペンタエリスリトールテトラメタクリラート、ソルビトールヘキサアクリラート、およびそれらの混合物の群から選択される、約0〜約15重量%の第1の架橋剤と、
(iii)2,2−ビス(4−メタクリルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロポキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(アクリロイルオキシ−エトキシ)フェニル]プロパン;2,2−ビス[4−(メタクリロイルオキシ−エトキシ)フェニル]プロパン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、約0〜約20重量%の第2の架橋剤と、
(iv)1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラートおよびエチレングリコールジメタクリラートの反応生成物;1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラートの反応生成物、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラートの反応生成物;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、約0〜約40重量%の第3の架橋剤と、
(v)トリメチル1,6−ジイソシアナトヘキサンおよびビスフェノールAプロポキシレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラートの反応生成物;トリメチル1,6−ジイソシアナトヘキサンおよびビスフェノールAプロポキシレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラートの反応生成物;1,6ジイソシアナトヘキサンおよび水で変性させた2−ヒドロキシエチルメタクリラートの反応生成物;1,6ジイソシアナトヘキサンおよび水で変性させた2−ヒドロキシエチルアクリラートの反応生成物;ならびにそれらの混合物からなる群から選択される、約0〜約20重量%の第4の架橋剤と、
(vi)過酸化物、特に過酸化ベンゾイルを含む、約0〜約10重量%の開始剤と
を含む、約35〜約60重量%の液体成分と、
b)約30〜約65重量%の粒子状物質であって、
(i)ポリ(メチルメタクリラート)ベースの成分と、
(ii)修飾されたポリ(メチルメタクリラート)と
を含む、約30〜約65重量%の粒子状物質と
を含む組成物を含む、人工歯を考案している。
【0022】
別の態様では、本発明は、
a)約1〜約80重量%の粒子状物質であって、
(i)約40〜約60重量%のメチルメタクリラート;
(ii)約0〜約15重量%のエチレングリコールジメタクリラート;
(iii)約10〜約20重量%の2,2−ビス(4−メタクリルオキシフェニル)プロパン;
(iv)約15〜約40重量%の、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラートおよびエチレングリコールジメタクリラートの反応生成物;
(v)約0〜約10重量%の、トリメチル1,6−ジイソシアナトヘキサンおよびビスフェノールAプロポキシレートおよび2−ヒドロキシエチルメタクリラートの反応生成物;および
(vi)約0〜約10重量%の過酸化ベンゾイル
を含む約1〜約80重量%の粒子状物質と、
b)約30〜約65重量%の粒子状物質と
を含む組成物を含む、人工歯を考案している。
【0023】
さらなる別の態様では、本発明の態様のいずれかは、以下の特徴のうちの1つまたはいずれかの組み合わせをさらに特徴とし得る:
人工歯は、約0.015〜約0.080の範囲の摩耗損失(容積喪失:37℃、mm
3)を有する;人工歯は、約0.035〜約0.070の範囲の摩耗損失(容積喪失:37℃、mm
3)を有する;人工歯は、約125〜約155(MPa)の範囲の曲げ強さを有する;人工歯は、約135〜約145(MPa)の範囲の曲げ強さを有する;人工歯は、約2750〜約3750(MPa)の範囲の弾性率を有する;人工歯は、約3000〜約3500MPa(MPa)の範囲の弾性率を有する;人工歯は、約0.85〜約1.85(MPa m
1/2)の範囲の破壊靭性を有する;人工歯は、約1.1〜約1.6(MPa m
1/2)の範囲の破壊靭性を有する;人工歯は、約1.6〜約2.7(MPa m
1/2)の範囲の破壊靭性を有する;人工歯は、約1.8〜約2.5(MPa m
1/2)の範囲の破壊靭性を有する;人工歯は、約0.045〜約0.14の範囲の耐摩耗性(容積喪失:37℃、mm
3)を有する;人工歯は、約0.06〜約0.125の範囲の耐摩耗性(容積喪失:37℃、mm
3)を有する;本組成物は、約30〜約65重量%の粒子状物質をさらに含む;粒子状物質は、1つもしくは複数のPMMAポリマー、1つもしくは複数の架橋/修飾されたPMMAポリマー、および/もしくはそれらの混合物を含む;1つもしくは複数のPMMAポリマーは、メチルメタクリラートポリマーを含む;1つもしくは複数の架橋/修飾されたPMMAポリマーは、メチルメタクリラート/エチレングリコールジメタクリラートコポリマーを含む;本組成物は、約4:1〜約1:4の範囲の、1つもしくは複数のPMMAポリマー:1つもしくは複数の架橋/修飾されたPMMAポリマーの比率を含む;本組成物は、約1:1〜約1:3の範囲の、1つもしくは複数のPMMAポリマー:1つもしくは複数の架橋/修飾されたPMMAポリマーの比率を含む;1つもしくは複数の架橋/修飾されたPMMAポリマーは、約4:1〜約1:4の範囲の、1つもしくは複数のPMMAポリマー:エチレングリコールジメタクリラートの比率を含む;1つもしくは複数の架橋/修飾されたPMMAポリマーは、約1:1〜約1:3の範囲の、1つもしくは複数のPMMAポリマー:エチレングリコールジメタクリラートの比率を含む;または、それらの組み合わせ。