特許第6966479号(P6966479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966479
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】熱スイッチを形成する方法
(51)【国際特許分類】
   F25B 9/00 20060101AFI20211108BHJP
   B23K 15/00 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   F25B9/00 Z
   B23K15/00 505
【請求項の数】27
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-562569(P2018-562569)
(86)(22)【出願日】2017年6月5日
(65)【公表番号】特表2019-528417(P2019-528417A)
(43)【公表日】2019年10月10日
(86)【国際出願番号】GB2017051611
(87)【国際公開番号】WO2017216519
(87)【国際公開日】20171221
【審査請求日】2020年5月18日
(31)【優先権主張番号】1610379.8
(32)【優先日】2016年6月15日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】507329985
【氏名又は名称】オックスフォード インストルメンツ ナノテクノロジー ツールス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100095898
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(72)【発明者】
【氏名】マシューズ アンソニー
【審査官】 笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2015/0196221(US,A1)
【文献】 特許第3881675(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 9/00 〜 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスギャップ式熱スイッチを形成するための方法であって、
(a)第1及び第2の導体と、各々が100Kの温度において前記導体よりも少なくとも5倍小さい熱伝導率を有する第1及び第2の接続部材と、を提供するステップと、
(b)前記第1の導体を前記第1の接続部材と、前記2の導体を前記第2の接続部材と接合するステップと、
(c)前記第1及び第2の導体が共通の主軸に沿って延びるように前記導体を整列させるステップと、
(d)前記導体が第1の温度のときに、整列した前記導体の近位端を互いに接触状態にするステップと、
(e)少なくとも前記導体の前記近位端の周りにチャンバを形成するように、前記第1の接続部材を前記第2の接続部材に接合するステップと、を含み、
前記チャンバを形成する前記接続部材の各々は、前記導体が前記第1の温度よりも低い第2の温度まで冷却されたときに、前記主軸に沿った前記導体の長さが前記主軸に沿った前記チャンバの長さに対して減少して、前記導体の前記近位端の間に間隙を形成するように、前記導体よりも小さい熱膨張係数を有し、
前記スイッチは、使用時に該スイッチの作動を引き起こすように、熱伝導性ガスを前記チャンバの中に選択的に供給するように構成される、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
ステップ(e)は、前記第1の接続部材を前記第2の接続部材に融合するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の接続部材は、前記第1及び第2の導体の少なくとも前記近位端を囲むように構成されたスリーブを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の接続部材を前記第2の接続部材に融合する前記ステップは、電子ビーム溶接を用いて実行される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(e)は、前記第1及び第2の接続部材の各々をこれら接続部材の間に設けられたスリーブに融合するステップを含み、
前記スリーブの前記熱伝導率は、100Kの温度において前記導体よりも少なくとも5倍小さく、
前記スリーブの熱膨張係数は、前記導体が前記第2の温度まで冷却された場合に、前記主軸に沿った前記導体の長さが減少し前記間隙を形成するように、前記導体の熱膨張係数よりも小さい、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1及び第2の接続部材は、それぞれ第1及び第2のフランジとして配置される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1及び第2の接続部材の各々を前記スリーブに融合する前記ステップは、電子ビーム溶接を用いて実行される、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記スリーブは、100Kの温度において前記導体よりも少なくとも10倍小さい熱伝導率を有する、請求項5〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記スリーブは、10Kの温度において前記導体よりも少なくとも1000倍小さい熱伝導率を有する、請求項5〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記スリーブはステンレス鋼でできている、請求項5〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記接続部材及び前記スリーブは同じ材料でできている、請求項5〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
(f)前記主軸に沿った前記導体の長さが減少して前記導体の前記近位端の間に前記間隙を形成するように、前記第2の温度よりも低いそれぞれの温度まで前記導体の各々を冷却するステップを更に含む、請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ステップ(a)は、前記導体の各々に平坦な係合面を形成するように前記第1及び第2の導体を機械加工するステップを更に含み、
ステップ(d)は、前記係合面を互いに接触状態にするステップを含む、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記係合面は、前記主軸に沿って延びる法線を有する平面内に広がる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1及び第2の導体は細長い、請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記間隙は、前記第1の導体の前記第1の接続部材への接合点と前記第2の導体の前記第2の接続部材への接合点との間の、前記主軸に沿った前記導体の寸法の合計の0.05%よりも小さい、請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
ステップ(b)は、ろう付けプロセスによって実行される、請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記第1及び第2の接続部材は、100Kの温度において前記導体よりも少なくとも10倍小さい熱伝導率を有する、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記第1及び第2の制御部材は、10Kの温度において前記導体よりも少なくとも1000倍小さい熱伝導率を有する、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記導体は銅でできている、請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記接続部材はステンレス鋼でできている、請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記スイッチは、使用時に前記導体の反対側の遠位端を実質的に熱的に遮断するため、前記チャンバを排気するように構成される、請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記第1の温度は280〜310Kである、請求項1〜22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記第2の温度は5〜20Kである、請求項1〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
共通の主軸に沿って整列され、各々が前記主軸に沿って少なくとも5cmの長さを有する第1及び第2の導体と、
100Kにおいて前記導体よりも少なくとも5倍小さい熱伝導率を有し、前記導体の少なくとも近位端の周りにチャンバを形成する第1の接続部材及び第2の接続部材と、
を備えるガスギャップ式熱スイッチであって、
前記接続部材の各々は、前記導体よりも小さい熱膨張係数を有し、
前記第1の導体の近位端は、前記第1及び第2の導体が100Kより低いとき、50μm未満の間隙によって前記第2の導体の近位端から分離されており、
前記スイッチは、使用時に該スイッチの作動を生じるように、前記チャンバの中に熱伝導性ガスを選択的に供給するように構成されている、ことを特徴とするガスギャップ式熱スイッチ。
【請求項26】
前記接続部材の間に設けられ、少なくとも前記導体の近位端の上に延びるように配置されたスリーブを更に含み、
前記第1及び第2の接続部材の各々は、前記スリーブに融合され、
前記スリーブは、100Kの温度において前記導体よりも少なくとも5倍小さい熱伝導率を有し、
前記スリーブは、前記導体よりも小さい熱膨張係数を有し、
前記スリーブ及び前記接続部材は前記チャンバを形成する、請求項25に記載のガスギャップ式熱スイッチ。
【請求項27】
極低温システムであって、
請求項25又は26のガスギャップ式熱スイッチと、
第1の導体に接続された機械式冷凍機と
第2の導体に接続された対象装置と、
を備えることを特徴とする極低温システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、極低温の分野に関し、詳細には、ガスギャップ式熱スイッチを形成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスギャップ式熱スイッチ(又は「サーマルスイッチ」)は、極低温の分野で公知であり、「寒剤フリー」システムで特に有用であり、ここで冷却は、液化ガスではなくて、密閉サイクル機械的冷却器によって提供される。これらのスイッチは、スイッチの一端から他端へ熱負荷を伝達又は遮断するように制御することができる。一般に、これらは、ガスを導入することができるチャンバ内で互いに切り離された少なくとも2つの導体を含む。スイッチが閉鎖されると、チャンバ内部のガスは、熱伝導による導体間の熱伝達を助ける。スイッチは、チャンバからガスを排気することによって開放され、この熱伝達路はもはや利用できなくなる。
【0003】
一般に、導体は、例えば、導体の間に大きな熱伝達面を提供するように配置されたフィンの形態のインターリービング又は「櫛形」部材の形態をとる。間隙は、スイッチが開放されている場合に熱接続を遮断することを可能にするために、スイッチの各導体の間に存在する必要がある。それでもなお、この間隙サイズは、スイッチが閉鎖されているとき確実な熱伝達を達成するために、最小限に保つ必要がある。スイッチの性能は、有効な熱交換表面積を各導体の間の隔離距離(又は間隙)で除算した比率(A/L)によってパラメータ化される。特にスイッチが小型化される場合、櫛形設計を用いて高性能スイッチを製造することは比較的困難である。
【0004】
ガスギャップ式熱スイッチのためのより簡単な設計はすでに提案されており、導体は、櫛形配置ではなくて、同一直線上に配置される。しかしながら、一般的には、これらのスイッチは、閉鎖状態での不十分な熱伝達特性(間隙サイズによって制限される)に起因して、特に低温用途では避けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
確実かつ容易に構成することができ、低温で優れた性能をもたらす単純なガスギャップ式熱スイッチを提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様では、以下のステップ:
(a)第1の導体及び第2の導体、並びに第1の接続部材及び第2の接続部材を準備するステップであって、前記接続部材の各々が、100Kにおいて、上記導体よりも少なくとも5倍小さい熱伝導率を有する、ステップと、
(b)第1の導体を第1の接続部材と、及び第2の導体を第2の接続部材と融合させるステップと、
(c)第1の導体及び第2の導体が共通主軸に沿って延びるように導体を整列させるステップと、
(d)上記導体が第1の温度にある場合に、整列した各導体の近位端を互いに接触状態にするステップと、
(e)導体の少なくとも近位端の周りにチャンバを形成するように、第1の接続部材を第2の接続部材に接合するステップと、
を含むガスギャップ式熱スイッチを形成するための方法が提供され、
チャンバを形成する接続部材の各々は、導体が第1の温度よりも低い第2の温度まで冷却される場合に導体の近位端の間に間隙が形成されるように、主軸に沿った導体の長さが主軸に沿ったチャンバの長さに対して減少するよう導体よりも小さな熱膨張係数を有し、
スイッチは、使用時にスイッチの作動を引き起こすように、熱伝導性ガスをチャンバの中に選択的に供給するように構成される。
【0007】
櫛形の先行技術の設計とは異なって、導体は、共通主軸に沿って延びるように整列される(例えば、同一直線上に配置される)。従って、熱伝導性ガスは、各導体の全長に沿うのではなくて、導体の相対する近位端の間でだけ熱を伝達する。しかしながら、この有効な熱伝達面の減少は、従来の信頼性のある熱スイッチで実現可能であったものよりも、相対する導体の間のより小さな隔離距離によって補償される。従って、スイッチを横切る有効な熱伝達を維持することができ、同時に、確実で強固な切り離し可能な熱接続が保証される。
【0008】
本明細書では熱収縮ガスギャップ式熱スイッチが提案され、相対する同一直線上に配置された導体の間の離間距離は、導体の温度に応じて制御可能である。有利には、このスイッチは、室温(この場合には第1の温度である)で組み立てることができる。組み立てると、スイッチは、次いで、スリーブと導体との間の熱膨張係数の差よって導体がスリーブに対して縮小できるように冷却することができる。従って、各導体の対向端の間に小さな間隙が作り出される。熱伝達は、熱伝導性ガスを用いて主として熱伝導によってこの間隙で生じる。
【0009】
一般には、ステップ(a)〜(e)は順番に行われるが、ステップ(c)をステップ(b)の前に実行することが可能である。何れの場合も、ステージ(b)は、ステップ(d)及び(e)の前に実行される。一般には、ステップ(e)は、整列された導体の近位端が互いに接触状態にあるとき、すなわちステップ(d)の後で実行される。
【0010】
ステップ(e)は、当初は別々の接続部材を一緒に接合するプロセスに関する。1つの手法によれば、ステップ(e)は、第1の接続部材を第2の接続部材に融合するステップを含む。従って、これらの構成要素は、直接一緒に接合することができる。好ましくは、第1又は第2の接続部材は、第1及び第2の導体の少なくとも近位端を囲むように構成されたスリーブ部分を含むことができる。この場合、第1及び第2の接続部材は、チャンバを定めるチャンバ壁を一緒に作る。
【0011】
一般には、各接続部材を一緒に融合することは、熱をスイッチに入力することになる。この熱が導体の長さ全体にわたって伝導されないことを保証することが有利であり、それゆえ、電子ビーム溶接のような高度局在化加熱プロセスはこれらの接合部に対して行われる。従って、好ましくは、第1の接続部材の第2の接続部材への融合は、電子ビーム溶接を用いて行われる。これは、導体がステップ(e)の間にほぼ第1の温度、例えば、約20Kの平均値内にとどまることを可能にすることができる。
【0012】
代替の手法では、ステップ(e)は、第1及び第2の接続部材の各々をこの接続部材の間に設けたスリーブに融合するステップを含み、スリーブの熱伝導性は、100Kにおいて導体よりも少なくとも5倍小さく、導体が第2の温度まで冷却される場合、上述の間隙が形成されるよう主軸に沿った導体の長さが減少するよう、スリーブの熱膨張係数は導体よりも小さい。従って、中間スリーブは、チャンバの一部を形成するように設けることができる。従って、第1及び第2の接続部材は、ステップ(e)によって間接的に一緒に接合することができる。この方法は、一般には、接続部材の各々をスリーブに融合するために追加の接合部を作る必要があるが(好ましくは、同様に電子ビーム溶接を用いて)、一部の事例では、熱スイッチ及び何らかの付随の装置の形状及びサイズ次第で、より容易に組み立てが可能になる。好ましくは、第1及び第2の接続部材は、それぞれ第1及び第2のフランジを形成する。これらのフランジは、使用中にスリーブの開放端を閉鎖するように配置することができる。第1及び第2の接続部材並びにスリーブは一緒にチャンバ壁を形成することができるので、本実施形態のチャンバを定め、フランジは、チャンバのそれぞれの反対端として機能する。スリーブ自体は、単体とすること又はいくつかの部分から形成することができる。
【0013】
導体及び間隙をバイパスしてスイッチの開放を実際的に阻止することになるので、スリーブに沿って有意な熱交換経路が確立されないことを保証することが有利である。従って、スリーブ(接続部材の別部材又は一部分として)は、100Kにおいて、導体よりも少なくとも10倍小さい熱伝導率を有するのが好ましい。異なる材料の熱伝導率は、低温で異なる傾向があるので、スリーブは、10Kの温度にある場合に導体よりも少なくとも1000倍小さい熱伝導性を有することができる。同様の理由のために、第1及び第2の接続部材は、好ましくは、100Kの温度にある場合に導体よりも少なくとも10倍小さい熱伝導率を有する。好ましくは、第1及び第2の接続部材は、10Kの温度にある場合に導体よりも少なくとも1000倍小さい熱伝導率を有する。
【0014】
好ましくは、導体は、高い熱伝導性及び熱膨張特性により銅、又は銅系(無酸素銅を含む)である。好ましくは、接続部材は、銅に比べて望ましい熱伝導性及び熱膨張特性を示すのでステンレス鋼である。また、ステンレス鋼は、優れた溶接性を示すので望ましい。また、好ましくは、スリーブは、同様の理由のためにステンレス鋼で作られる。
【0015】
好ましくは、本方法は、第2の温度よりも低いそれぞれの温度まで導体の各々を冷却して、導体の近位端の間に間隙を形成するように、主軸に沿った導体の長さを減少させるステップ(f)を更に含む。このステップは、典型的には、作動場所に設置されて、例えば、冷却するために機械式冷凍機に接続された状態で、ガスギャップ式熱スイッチのエンドユーザによって実行される。冷却は、この段階の間に外部部材によって導体のうちの1つに直接加えることができ、スイッチは、熱伝達が他の導体から生じるのを可能にするように閉鎖状態に維持される。これに代えて、両導体は、この段階の間に直接冷却することができる。最も典型的には、温度差は、2つの導体の各々が第2の温度よりも低い異なる温度にあるように、スイッチを横切って維持される。
【0016】
ガスが相対する導体の間を移動する経路長は、最小限に保たれることを保証することが望ましい。従って、導体の対向表面の間に均一な間隙サイズを達成することが有利である。
【0017】
従って、ステップ(a)は、各導体上に平坦係合面を形成するように第1及び第2の導体を機械加工するステップを更に含むことができ、ステップ(d)は、上述の係合面を互いに接触状態にするステップを含むことができる。また、湾曲係合面は、理論的には、当接する導体の係合面上の全ての点から均一な間隙サイズを得るように用いることができるが、平担表面は、一般に高精度に機械加工することができるので好ましい。最も好ましくは、上述の係合面は、それぞれの導体の主軸に沿って延びる法線を有する平面に広がる。
【0018】
間隙は、第1及び第2の導体の全ての相対する表面の間の最接近部と考えることができる。主軸に対して直角の相対する(係合)表面を有する導体に対して、この間隙は主軸に沿って測定されることになるが、他の場合には、間隙は、2つの導体の間の最小離間距離に応じて異なる方向に沿って測定することができる。
【0019】
間隙は、これらの主軸に沿って導体の熱収縮によって形成される。従って、第1及び第2の導体は、好ましくは、2つの導体が第2の温度で互いに直接接触しないように、適用可能な収縮が起こることを保証するように細長い。
【0020】
最も典型的には、間隙は、第1の接続部材を有する第1の導体と第2の接続部材を有する第2の導体の各接合点の間の主軸に沿った導体寸法の合計の0.05%よりも小さい。導体及び接続部材は、複数の接合点又は広範な接合領域を有することができるので、関連の接合点は、それぞれの導体の近位端に最も近い。接合構成要素の間の相互歪みゼロの位置をもたらすのはこの箇所であり、これに対して、相対的な熱収縮差が生じる。主軸に沿った数センチメートル程度の寸法を有する導体は、数マイクロメートル程度の間隙サイズを生成することができ、結果的に、導体の間の熱伝導性ガスによる優れた熱伝達が可能になる。
【0021】
ステップ(b)は、好ましくはろう付けプロセスによって実行される。このようなプロセスは、熱サイクリング中に好都合な強固な接合部を生成する。また、このプロセスは、ガス漏れに対して耐性を示すのでチャンバの密封に寄与できる接合部を生成することができる。特に真空ろう付けは、完全性及び強度が高く、非常に清浄でフラックスフリーのろう付け接合部を生成するので好ましい。ステップ(b)の間の入熱(及び導体の関連の熱膨張)は、導体が接触していないので問題を引き起こさない−ステップ(d)。
【0022】
好ましくは、スイッチは、導体の反対側の遠位端を実質的に熱的に絶縁するために使用する場合に、チャンバを排気するように構成される。このステップは、スイッチの2つの導体の間で無視できるほどの熱伝達が生じるように、スイッチを有効に「開放」する。ガスポンプ又は吸着ポンプ及びゲッタを含む他の排気手段は、このプロセスを助けるために設けることができる。随意的に、ゲッタ及び/又は吸着ポンプは、シールユニットを提供するようにスイッチに一体化することができる。
【0023】
最も典型的には、第1の温度は280〜310Kである。従って、好都合には、スイッチは、ほぼ室温で組み立てることができる。2つの整列した導体の間の間隙は低温で生じるが、これは第2の温度である。この第2の温度は、スイッチを開閉することができる熱スイッチの作動温度と考えることができる。スイッチは、例えば、システムを低い温度に冷却するのを助けるために、相互に接触する導体に沿って熱伝達路を形成する上で、第2の温度よりも高い温度で依然として有用とすることができる。第2の温度は、100Kより低いあらゆる温度を含むことができるが、最も典型的には5〜20Kである。スイッチの目的は、スイッチの一端を他端から選択的に熱的に絶縁することであるので、「開放」状態にある場合のスイッチの端部の各々は、それぞれ第2の温度よりも低い異なる温度とすることができる。
【0024】
本発明の第2の態様では、
共通主軸に沿って整列された、各々が主軸に沿って少なくとも5cmの長さを有する第1及び第2の導体と、
導体の少なくとも近位端の周りにチャンバを形成する第1の接続部材及び第2の接続部材であって、100Kにおいて導体よりも少なくとも5倍小さい熱伝導率を有する、接続部材と、
を含むガスギャップ式熱スイッチが提供され、
接続部材の各々は、導体よりも小さい熱膨張係数を有し、
第1の導体の近位端は、50μm未満の間隙で第2の導体の近位端から分離され、
スイッチは、使用時に、チャンバの中に熱伝導性ガスを選択的に供給してスイッチを作動させるように構成される。
【0025】
好ましくは、間隙は30マイクロメートル未満であり、これは相対する導体の間の熱伝導性ガスによる更に良好な熱伝達を可能にする。
【0026】
好ましくは、第2の態様のガスギャップ式熱スイッチは、上述の接続部材の間に設けられ、少なくとも導体の近位端の上に延びるように配置されたスリーブを更に含み、
第1及び第2の接続部材の各々は、スリーブに融合され、
スリーブは、100Kにおいて導体よりも少なくとも5倍小さい熱伝導率を有し、
スリーブは、導体よりも小さい熱膨張係数を有し、
スリーブ及び接続部材はチャンバを形成する。
【0027】
本発明の第3の態様では、
第2の態様によるガスギャップ式熱スイッチと、
第1の導体に接続された機械式冷凍機と
第2の導体に接続された対象装置と、
を含む極低温システムが提供される。
【0028】
一部の実施形態において、第3の態様は、一部の先行技術のガスギャップ式熱スイッチを用いて達成可能であるよりも対象装置に対してより速い冷却時間を提供することができる。対象装置は、理論的には、機械式冷凍機の追加のステージを含む、冷却されるあらゆる要素とすることができる。
【0029】
本発明の第2及び第3の態様は、第1の態様の同様の特徴を共有することができ、同じ利点が類似性によって適用される。
【0030】
本発明の実施例は、添付の図面を参照して以下に説明されることになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】第1の導体及び第1の接続部材の断面図である。
図2】スリーブの内部に配置された第1及び第2の導体の断面図である。
図3】ガスギャップ式熱スイッチの実施形態の断面図である。
図4】一実施形態による極低温システムの概略図である。
図5】一実施形態による方法を示すフローチャートである。
図6】ガスギャップ式熱スイッチの一実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
熱収縮ガスギャップ式熱スイッチ10を形成するための方法の実施形態、並びにこのスイッチ10の実施形態は、図5のフローチャート並びに図1図3の添付の図面を参照して説明されることになる。
【0033】
第1及び第2の導体2、3は、図5のステップ300で準備示される。第1の導体2及び第1のフランジ4の形態の第1の接続部材の断面図は、図1に提示されている。第1の導体2は、細長く実質的に円筒形である。第1のフランジ4は、約1cmの直径を有する中心ボアを含み、これは、第1の導体2の第1の末端部分11と係合する。第1の末端部分11は、その長さに沿って1cmの直径を有し、導体2の残りの部分は、その長さに沿って2cmのより大きな一定の直径を有し、その結果、第1のフランジ4は、単なるカラーとして第1の末端部分11の上及びその周りに嵌合される。第1の末端部分11は、機械式冷凍機又は対象装置のような接続部材に対する導体2の物理的接続を可能にするための中心ボア18を含み、それによって熱が伝達される。この物理的接続は、ある程度、第1のフランジ4を貫通して第1の末端部分11に設けられたボルト孔9のピッチ円の中に延びる複数のボルトを締結することによって達成することができる。
【0034】
同様の第2の導体3(図1には示さず)が提供され、これは同様の方式で第2のフランジ5の形態の第2の接続部材と係合する。各導体2、3は、その主軸に沿って約5cmの長さを有する。代替の実施形態において、導体2、3は、これらのそれぞれの主軸に沿って異なる長さを有することができる。
【0035】
第1及び第2の導体2、3は、ステップ301においてそれぞれ第1及び第2のフランジ4、5に融合される。好ましくは、第1のフランジ4は、熱サイクリングに対して強固な信頼性のある恒久的接続を達成するために、導体2の第1の末端部分11の上に真空ろう付けされる。これとは別に、このプロセスは、次いで、第2のフランジ5を用いて第2の導体3に対して繰り返される。
【0036】
スイッチに沿った熱伝達を可能にするために、第1及び第2の導体2、3の各々は、高熱伝導性材料から形成される。100Kより低い温度を含む低温でスイッチを用いることが意図される場合、これは、導体2、3がこのような低温で高い熱伝導性である必要があることを意味する。一般には、第1及び第2の導体2、3の各々は、同じ材料から形成され、同様の熱伝導及び膨張特性を保証する。最も一般的には、この材料は、銅、好ましくは無酸素銅であるが、原理上は銀を用いることもできる。理想的には、導体は、20Kの温度で5000W/mK以上の熱伝導率を有することになる。
【0037】
第1及び第2の導体2、3は、共通主軸(又は「長手方向軸」)に沿って延びるようにステップ302において整列され(この場合には「同一直線上に配置される」)、その結果、第1の末端部分11、12は、導体2、3の相対する遠位端に配置され、フランジはこれらの端部に設けられる。ろう付けプロセスは、導体2、3に熱を入力することができ、これは導体2、3を膨張させる。オペレータは、ステップ303を開始する前に、この熱が導体2、3から放散するのを待つ必要がある。
【0038】
導体2、3の直径よりも部分的に大きい内径を有する環状スリーブ6が提供される。その主軸に沿ったスリーブの長さは、これらの主軸に沿って導体2、3の寸法の合計によって形成されるスイッチ長よりも短い。この場合に、スイッチ長は約10cmであり、スリーブ長は主軸に沿って約9cmである。
【0039】
図5のステップ303において、導体2、3は、次いで、互いに近接している導体2、3の端部13、14が第1の温度で相互接触状態になるまで、室温(又は290〜300K)である第1の温度でスリーブ6の内部で一緒にされる又は「押圧」される。従って、導体2、3及びスリーブ6のそれぞれの主軸は、この段階で共通主軸に沿って整列される。スリーブ6は、好ましくは単体構造である(すなわち、一体部品で形成される)が、これに代えて、いくつかの部品から構成することができる。代替の組立プロセスでは、最初に導体2、3が同一直線上に配置され、次にスリーブ6が接続部材のうちの1つの上を摺動するか、又は導体2、3を囲むように導体2、3の周りに組み付けられる。
【0040】
第1及び第2の導体2、3は、第1の温度で導体2、3の当接面の間に間隙がないように配置される。本実施形態において、これは、導体2、3が一緒に当接する、導体2、3の主軸に垂直な近位端13、14に平坦面(又は「係合面」)を有することを保証することによって達成される。この平坦性の均一性及び精度は、ステップ303で組み立てる前に(ステップ301前又は後に)機械加工を用いて達成することができる。一緒に押圧する際に巨視的間隙を残さないように、導体2、3の近位端13、14が互いに噛み合うとすれば、他の形状面も可能である。好ましくは、各係合面は、同じ表面積を有し、導体2、3の半径方向表面が近位端13、14で同一平面上にあるように配置される。
【0041】
スリーブ6及びフランジ4、5は、第1のフランジ4と第2のフランジ5との間の領域にチャンバ16を定めるハウジングを形成する。詳細には、スリーブ6の内径は、例えば、1mmだけ導体2、3の外径よりも大きいので、導体2、3の長さに沿って環状チャンバ16が形成される。
【0042】
ステップ304において、スリーブ6は、密封チャンバ16を形成してこれによりスイッチ10を形成するように、第1及び第2のフランジ4、5の上に融合される。スリーブ6は、電子ビーム溶接のような局在化加熱プロセスを用いてスリーブ6のそれぞれの端部においてフランジ4、5に接合される。有利には、導体2、3に対する、このプロセス中にこれらを膨張させることになる著しい入熱は存在しない。
【0043】
フランジ4、5及びスリーブ6は、導体2、3に比べて、低温で断熱する材料から形成され、その結果、これらは、スイッチ10の相対する遠位端11、12の間の熱伝達路の一部を形成しない。詳細には、導体2、3の熱伝導率は、100Kの温度でフランジ4、5及びスリーブ6よりも少なくとも5倍大きくなるはずである。熱伝導率は、低温で異なる材料の間で異なる傾向があるので、この差は、例えば、10Kの温度で1000倍だけ更に大きくなる場合がある。フランジ4、5及びスリーブ6に対する好適な候補材料は、良好な溶接性を提供する追加の利点を有するステンレス鋼である。最も好ましくは、フランジ4、5及びスリーブ6の各々は、同様の熱伝導性及び膨張/収縮特性を示すように同じ材料から形成される。
【0044】
重要なことは、スリーブ6は、ステンレス鋼フランジ4、5に融合され、銅導体2、3には直接融合されない。フランジ4、5(これらは導体2、3よりも低い熱伝導率を有する)は、融合プロセス中に導体2、3の長さに沿って伝導される熱量を低減する熱障壁として働く。従って、あらゆる加熱は局在化されて、ステップ304の融合プロセス中に熱膨張の結果としての導体2、3の膨張が実質的に回避される。従って、導体2、3の間の接触は、第1の温度(融合プロセスからの入熱により上昇した温度ではない)で達成される。これの利点は後で明らかになる。
【0045】
ステップ305において、スイッチ10は、作動場所に設置され、第1及び第2の導体2、3が冷却される。例えば、極低温冷凍機は、ボア18(随意的に追加的な接続ボルト)を用いて熱スイッチ10のそれぞれの遠位端11、12で導体2、3のいずれか又は両方に接続することができる。チャンバ16は、この段階で、熱伝導性ガス、典型的には1バール絶対圧力においてヘリウムで充填することができる。約10mKの低温用途に関して、ヘリウム−3は、ヘリウム−4よりもはるかに低い超流動遷移温度を有し、従って、望ましくない熱短絡を生じる可能性は低いので好ましい。しかしながら、いずれのガスも用いることができる。
【0046】
熱スイッチ10は、使用時にスイッチ10を横切る制御可能な熱伝達を可能にするように、チャンバ16の中に熱伝導性ガスを選択的に供給するように構成される。これは、ガス源からスリーブ6又はフランジ4、5のいずれかに及び、チャンバ16への/そこからの熱伝導性ガスの流れを可能にするようにチャンバ16で終端する1又は2以上の管体を設けることによって達成することができる。代替的に、これらの管体は、導体2、3のいずれかを貫通して延び、各導体の遠位端13、14で終端することができる。図2に示す実施形態において、ガス送出管15は、第2のフランジ5を貫通して延びてチャンバ16の内部で終端する。ガス源は、随意的にゲッタ又は吸着ポンプの形態をとり、スイッチを開放するように必要に応じてガスを排気するのを助けることができる。随意的に、ゲッタ又は吸着ポンプは、スイッチに一体化することができる。
【0047】
スリーブ6及びフランジ4、5の各々の熱膨張係数は導体2、3よりは小さく、導体2、3が第1の温度よりも低い第2の温度まで冷却される場合、主軸に沿った導体2、3の長さが、導体2、3の近位端の間に間隙8(図3には縮尺通りに示されていない)を形成するように減少するようになっている。この離間距離は、スリーブ6及び導体2、3の熱膨張特性の間の差、並びにスイッチ10の構成要素の物理的配置の結果として生じる。詳細には、第1及び第2の導体2、3は、フランジ4、5によってこれらの遠位端11、12のみにおいてスリーブ6に接続される。従って、導体2、3は、これらを分離するスリーブ6に力を及ぼすことなく主軸に沿って自由に収縮する。また、スリーブ6(より少ない程度にフランジ4、5)は、スイッチ10の温度が第2の温度まで冷却されると収縮する可能性があるが、この変化は、導体2、3の長さの減少ほどにはならないはずである。
【0048】
第2の温度は、スイッチの「開放」状態を保証する2つの導体のうちの1つ又は各々が達成可能な最大温度と考えることができる。実際に、これは作動温度と考えることができ、典型的には、第1の温度をかなり下回り、例えば、100Kより低いあらゆる温度を含むことができる。勿論、遠位端11、12は、異なる温度(各々は第2の温度を下回る)とすることができ、実際に、これは、典型的には、熱スイッチ10の作動中の場合であろう。10Kの温度では、ステンレス鋼シェル6は約0.29%だけ収縮するのに対して、銅導体2、3は約0.31%だけ収縮することになる。好ましい実施形態において、収縮のこの相対差は、導体2、3の対向面の間に約20μmの間隙8を生成することになる(前記で定めた約10cmのスイッチ長と想定すると)。この間隙8の大きさは、導体2、3とスリーブ6との間の熱膨張係数の差、主軸に沿った導体2、3の長さ、及び導体2、3が冷却される温度により決まる。典型的には、間隙は、スイッチ長の0.05%以下である。
【0049】
ガスギャップ式熱スイッチ10を構成する上記方法は、スイッチ設計と共に、導体2、3がほぼ室温にある場合に導体2、3の遠位端がステップ304において物理的に接続するという注目すべき利点を有する。逆に、スリーブ6を導体2、3の遠位端13、14に直接溶接した場合、これらが相互接触状態にある限り、このプロセスは、導体2、3を通って伝導されてこれらを膨張させるシステムに熱を入力することになる。導体2、3の間の接触は、ひいてはむしろ高温で生じることになる。これは、最終的には、スイッチ10が第2の温度まで冷却されたときはるかに大きな間隙8が作り出されることを意味し、これにより不十分な熱伝達性能につながる。
【0050】
一部の実施形態において、更に小さな間隙8は、熱スイッチ10がプレストレス又はプレテンションを受けて、ステップ305において導体2、3に部分的に熱的に収縮するときゼロまで減少する僅かな負の歪みが生じるように、ステップ303において大きな力で導体2、3を押圧し、場合によっては締め具を用いてスリーブ6を取り付けることによって得ることができる。
【0051】
図4を参照して、熱スイッチ10が特定の利益をもたらす組立体の実施例を以下に説明する。パルス管冷凍機の形態の機械式冷凍機は、全体が符号100で示されている。これを用いて、磁石システム、実験センサ、又は実験用途の他の装置の部品を含む種々のタイプの対象装置を冷却すること、又は例えば、希釈冷凍機の種々のステージを予冷することができる。このような対象装置103は、熱スイッチ10を介してPTR100に取り付けられるように示されている。熱伝導プレートのような接続部材は、熱スイッチ10とPTR100又は対象装置103との間に設けられて熱接続を容易にすることができる。また、ガス源101が概略的に示されており、スイッチ10の作動を引き起こすように熱スイッチ10に出入りする熱伝導性ガスの制御可能な流れを提供するように配置されるが、これはスイッチ10の構造の内部とすることもできる。
【0052】
この場合に、PTR100の第2のステージは、スイッチ10の第1の端部おいて熱スイッチの第1の導体2に接続されるのに対して、対象装置103は、スイッチ10の第2の端部において第2の導体3に接続される。従って、導体2は、第2の導体3よりも低い温度まで冷却され、熱流路は、スイッチが閉鎖される場合にスイッチ10を横切って確立される。
【0053】
導体2、3の各々が100Kより低いそれぞれの温度まで冷却される場合、第1の導体2と第2の導体3との間に間隙8が形成される。熱スイッチ10が閉鎖状態にある場合、熱伝導性ガスは、スリーブ6及び導体2、3によって形成されたチャンバ16内に存在する。その結果、熱は、対象装置103とPTR100との間でスイッチ10を横切って伝達される。これは、最初に導体2、3の各々に沿った熱伝導によって、次に間隙8の領域内の熱伝導性ガスを用いた熱伝導によって生じる。スリーブ材料の低熱伝導性により、無視できるほどの熱伝達がスリーブ6に沿って生じる。この閉鎖状態において、ガスが導体2、3の間で熱を伝達するために進む必要がある経路長がより短いので、熱スイッチ10は、従来技術の設計よりも優れた改善された熱伝導性を提供する。
【0054】
熱スイッチ10は、制御可能なガス源101を用いて熱スイッチ10を排気することによって、PTR100を対象装置103から熱的に絶縁するように開放することができる。これは、熱スイッチ10の第1の導体2と第2の導体3との間のガス伝導による熱伝達の可能性を取り去る。
【0055】
スイッチ10が開放されている場合、依然としてスリーブ6を横切って少量の熱伝達が生じ得る。この熱の漏れ量は、少なくとも一部は、スリーブ6の特性、並びにスイッチ10の両端に接続された本体100、103の温度に依存する。1mmの壁厚で主軸に沿った長さが20cmの直径20mmのステンレス鋼スリーブ6に対して、4Kの温度の第1の本体100と1Kの温度の第2の本体103との間で約0.5mWが伝導されることになると見込むことができる。熱の漏れ値は、スリーブの長さに反比例して増える。
【0056】
図6は別の実施形態のガスギャップ式熱スイッチ10’を示し、主たる参照番号は、前述の熱スイッチ10と等価な特徴部を示すように付与される。熱スイッチ10’は、2つの重要な相違点を除いて前記の実施形態と類似している。
【0057】
第1に、主軸に沿った、導体2’、3’の長さの合計は、フランジ及びこれらの中間スリーブの全長よりもかなり大きい。従って、末端部分11’、12’は、間隙8’から離れる方向に主軸に沿って接続部材4’、5’を越えてかなり延びる。接続部材4’、5’からそれぞれの遠位端まで延びる導体2’、3’の各部分は、間隙サイズに影響を与えないが、導体の露出した表面積の増加により接続装置とより良好な熱接続を達成するように用いることができる。所与の長さ(主軸に沿って導体の遠位端の間で測定されたような)のスイッチに対して、中間スリーブ及び接続フランジを、(図2及び3に示すように)スイッチのほぼ全長にわたって延びるように配置するのではなく、(図6に示すように)導体のより小さな部分にわたって延びるように配置することによって、より小さな最終間隙サイズを達成することができる。これは、冷却時にそれぞれの接続部材に向かって自由に収縮する短縮化された導体の結果である。
【0058】
第2に、スリーブ及び第2の接続部材5’は単体構造である。換言すると、第2の接続部材5’は、前記の実施形態のスリーブ6及び第2のフランジ5の両方を形成する。従って、第2の接続部材5’は、単一ステンレス鋼構成要素として構成することができる。従って、ステップ304においてチャンバを形成するために、一つのみの接合部を形成すればよい。この接合部は、電子ビーム溶接を用いて第1及び第2の接続部材4’、5’の間に直接形成される。図示の実施形態において、第1の接続部材4’は、フランジ又はカラーとしてのみ機能するが、別の実施形態において、接続部材4’、5’の各々は、全体としてスリーブ及びチャンバが2つの接続部材4’、5’を一緒に融合することによって形成されるように、延伸スリーブ部を有することができる。
【0059】
更なる実施形態において、導体は、図6の実施形態のように間隙から離れる方向に接続部材をかなり越えて延びるが、スリーブは、図1図3の実施形態のようにスリーブの両端部においてフランジに接続された別個の部分である。
【0060】
従って、理解できるように、先行技術の櫛形設計よりも簡単で強固なガスギャップ式熱スイッチが提供される。この熱スイッチを製作する方法は、従来可能であったものに比べて(典型的には、0.5〜1.0mm)、熱導体の対向端の間のより小さな(数十マイクロメートルオーダーの)離間距離を達成できるという更なる利点を有する。従って、スイッチ開放時に、スイッチの両端に接続された各本体を熱的に絶縁するためのスイッチ能力に影響を与えることなく、スイッチ閉鎖時の有効な熱伝達を保証することができる。
【符号の説明】
【0061】
300 導体を準備する
301 導体をフランジ要素に融合する
302 導体を整列する
303 導体を一緒に押圧する
304 チャンバを形成する
305 導体を冷却する
図1
図2
図3
図4
図5
図6