(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966483
(24)【登録日】2021年10月25日
    
      
        (45)【発行日】2021年11月17日
      
    (54)【発明の名称】静的試験および繰り返し試験下において物体内の欠陥を、その場で(in−situ)3軸走査および検出するための統合システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01N   3/02        20060101AFI20211108BHJP        
   G01N   3/08        20060101ALI20211108BHJP        
   G01N  27/90        20210101ALI20211108BHJP        
   G01N  19/08        20060101ALI20211108BHJP        
【FI】
   G01N3/02 A
   G01N3/08
   G01N27/90
   G01N19/08 B
【請求項の数】21
【全頁数】22
      (21)【出願番号】特願2018-568365(P2018-568365)
(86)(22)【出願日】2017年6月29日
    
      (65)【公表番号】特表2019-527820(P2019-527820A)
(43)【公表日】2019年10月3日
    
      (86)【国際出願番号】IB2017053912
    
      (87)【国際公開番号】WO2018002871
(87)【国際公開日】20180104
    【審査請求日】2020年5月19日
      (31)【優先権主張番号】201641022664
(32)【優先日】2016年7月1日
(33)【優先権主張国】IN
    
      
        
          (73)【特許権者】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ  トゥール  ワークス  インコーポレイティド
          (74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木  篤
          (74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋  真二
          (74)【代理人】
【識別番号】100112357
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬  繁樹
          (74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤  健太郎
        
      
      
        (72)【発明者】
          【氏名】プラディープ  ケー
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】チャンドル  ハララケレ  プッタスワミー
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】ムラリ  モハン
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】サンダー  ラマスッブ
              
            
        
        (72)【発明者】
          【氏名】ソマニャ  アマナギ
              
            
        
      
    
      【審査官】
        佐野  浩樹
      
    (56)【参考文献】
      
        【文献】
          特開平05−099646(JP,A)      
        
        【文献】
          米国特許出願公開第2006/0091880(US,A1)    
        
        【文献】
          特開2004−163124(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2006−138784(JP,A)      
        
        【文献】
          特開平02−147855(JP,A)      
        
        【文献】
          独国特許出願公開第102014117079(DE,A1)    
        
        【文献】
          特開2015−052467(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2014−178200(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2003−344360(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2013−156088(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2005−201908(JP,A)      
        
        【文献】
          特開2004−117138(JP,A)      
        
        【文献】
          米国特許第04064452(US,A)      
        
        【文献】
          特表2016−514289(JP,A)      
        
        【文献】
          中国特許出願公開第105486745(CN,A)      
        
      
    (58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N  3/00  −  3/62  、17/00  −19/10  、
        27/72  −27/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重をかけられている物体内の欠陥をその場で(in-situ)3軸走査および検出するためのシステムであって、
  試験対象物に所望の荷重をかけ、変位を与えるために複数の油圧ユニットによって作動するアクチュエーターおよびクロスヘッド組立体を有する試験システムと、
  前記試験対象物を保持するために前記アクチュエーターと前記クロスヘッド組立体との間に取り付けられる複数の取付具要素および複数の把持要素を有する取付具組立体と、
  一対の支持柱を通して前記試験システムと統合される走査システムであって、該走査システムは、
    前記試験対象物の表面に渦電流を生成し、測定する少なくとも1つの非破壊検知プローブと、該プローブの先端と前記試験対象物の表面との間の距離を測定する少なくとも1つの検知ユニットとを有するプローブ組立体と、
    前記プローブが前記試験対象物の3D走査のために前記試験対象物の表面エリア全体にわたって動かされるように、X軸、Y軸およびZ軸に沿って前記プローブ組立体を動かすために前記プローブ組立体に関連付けられる複数の伝達要素を配置されるXYZガントリシステムを有する3Dスキャナー組立体とを備える走査システムと、
  前記試験システム上に取り付けられるホルダー組立体で固定されるオペレーターコンソールとを備え、
  前記オペレーターコンソールは、前記油圧ユニットを通して前記アクチュエーターおよび前記クロスヘッド組立体の動きを制御するために、そして、前記XYZガントリシステムを通してX軸、Y軸およびZ軸に沿った前記プローブ組立体の3次元の動きを同期して制御するために、前記試験システムおよび前記走査システムに動作可能に接続され、
  前記走査システムによって前記プローブと前記試験対象物の表面との間の距離を保持しながら、前記試験システムによって荷重をかけられている前記試験対象物の表面にわたって前記プローブを走査させ、前記プローブにかかる被測定電圧の変化に基づいて前記試験対象物体内の欠陥を検出する、システム。
【請求項2】
  前記非破壊検知プローブは、前記試験対象物の表面に対してプローブ先端を位置決めするように、ばねで付勢され、前記プローブ組立体の取付具の中に固定される渦電流検知プローブを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
  前記検知ユニットは、前記プローブに隣接して配置されるレーザーセンサーを備える請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
  前記伝達要素は、前記試験システムの前記支持柱に固定される支持フレームに取り付けられる請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
  前記伝達要素はそれぞれ、回転−直線運動伝達を与えるために前記オペレーターコンソールによって制御されるモーターおよび電気駆動装置によって相互依存的に動作する請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
  前記オペレーターコンソールは、前記アクチュエーターと、前記クロスヘッド組立体と、前記プローブ組立体の前記プローブおよび前記検知ユニットと、前記XYZガントリシステムの前記伝達要素とを駆動する前記油圧ユニットおよび電気駆動装置を動作させるために、前記試験システム内に収容されるマルチチャネル制御およびデータ収集システムを通して、前記試験システムおよび前記走査システムに動作可能に接続される請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
  前記オペレーターコンソールは、前記試験対象物に荷重をかけ、前記試験対象物を走査する試験シーケンスを実行し、オンライン試験状態を表示し、試験システム正常動作および安全動作を診断し、試験報告および通知を生成するように構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
  前記オペレーターコンソールは、前記静的試験条件および繰り返し試験条件中であっても、前記試験対象物を確実に保持するために前記取付具組立体の前記把持要素を制御する請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
  前記取付具要素および前記把持要素はそれぞれ、前記試験対象物を取り付けるための上側取付具要素および下側取付具要素並びに上側把持要素および下側把持要素から構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
  前記伝達要素は、それぞれがその上に1つ以上のレールを形成される、第1の伝達要素、第2の伝達要素、第3の伝達要素および第4の伝達要素を備え、前記伝達要素は、前記試験対象物に対して前記伝達要素を3次元に動かすために結合器を通して互いに結合される請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
  前記第1の伝達要素および前記第2の伝達要素は、前記試験システムを基準にして、支持フレームに垂直に取り付けられる請求項1または10に記載のシステム。
【請求項12】
  前記第3の伝達要素は、該第3の伝達要素が前記X軸に沿って前記プローブ組立体を動かすために前記試験対象物に対して上下方向に前記第1の伝達要素および前記第2の伝達要素の前記レール上を移動可能であるように、前記第1の伝達要素と前記第2の伝達要素との間に水平に結合される請求項1または10に記載のシステム。
【請求項13】
  前記第4の伝達要素は、該第4の伝達要素が前記Y軸に沿って前記プローブ組立体を動かすために前記試験対象物に対して横方向に前記第3の伝達要素の前記レール上を移動可能であるように、前記試験対象物の表面に対して垂直に前記第3の伝達要素に結合される請求項1または10に記載のシステム。
【請求項14】
  前記プローブ組立体は、該プローブ組立体が前記Z軸に沿って前記プローブ組立体を動かすために前記試験対象物に対して後方向および前方向に前記第4の伝達要素の前記レールに沿って移動可能であるように、前記第4の伝達要素に平行に配置され、結合される請求項1または10に記載のシステム。
【請求項15】
  前記クロスヘッド組立体は、前記試験対象物に所望の荷重をかけるために、ロードセルを収容され、前記油圧ユニットによってサーボ制御される請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
  前記試験対象物は、CFRP(炭素繊維強化ポリマー又はプラスチック)複合材料および二方向CFRPラミネートを含む請求項1〜15の何れか1項に記載のシステム。
【請求項17】
  静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重をかけられている物体内の欠陥をその場で(in-situ)3軸走査および検出するための方法であって、
  (a)無荷重条件において取付具組立体の上側把持要素および取付具要素と下側把持要素および取付具要素との間に前記試験対象物を取り付けるステップと、
  (b)前記試験対象物と非破壊検知プローブとの間の所望の距離を保持しながら、3Dスキャナー組立体のX座標およびY座標を記録するために、前記試験対象物の左上角および右下角に該プローブを位置決めするステップと、
  (c)前記3Dスキャナー組立体の前記記録されたX座標およびY座標に基づいて、前記試験対象物の走査エリア全体を決定するステップと、
  (d)前記検知プローブの先端と前記試験対象物の表面との間の距離を測定するステップと、
  (e)XYZガントリシステムの複数の伝達要素を通してX軸、Y軸およびZ軸に沿った前記プローブの3次元の動きを操作および制御することによって、前記試験対象物の前記決定された走査エリアを走査するステップと、
  (f)前記無荷重条件において前記試験対象物内の欠陥を特定するために、前記プローブによって前記試験対象物の表面に渦電流を生成し、測定するステップと、
  (g)複数の油圧ユニットを通して試験システムのアクチュエーターおよびクロスヘッド組立体を作動させることによって前記試験対象物に所望の荷重をかけ、変位を与えるとともに、異なる荷重条件および異なる間隔において荷重をかけている間に、そして荷重をかけた後に、前記試験対象物内の欠陥の発生を分析するために、前記ステップ(d)、(e)および(f)を同期して繰り返すステップとを含み、
  前記プローブと前記試験対象物の表面との間の距離を保持しながら、荷重をかけられている前記試験対象物の表面にわたって前記プローブを走査させ、前記プローブにかかる被測定電圧の変化に基づいて前記試験対象物体内の欠陥を検出する、方法。
【請求項18】
  前記プローブによって前記試験対象物の表面に渦電流を生成し、測定する前記ステップは、
  (a)高周波交流電流を送り込み、前記プローブ内に過渡的な磁場を生成するステップと、
  (b)前記試験対象物の表面にわたって前記プローブを動かしながら、前記プローブおよび前記試験対象物を磁気的に結合し、前記試験対象物の表面に渦電流を生成し、前記表面の中に侵入させるステップと、
  (c)前記プローブにかかる電圧を測定し、自己誘導電磁力(EMF)と、前記プローブと前記試験対象物との間の相互誘導とを検出するステップと、
  (d)走査しながら、前記試験対象物内の前記欠陥を検出するために、前記プローブにかかる電圧に何らかの変化があるか否かを判断するステップとを更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
  前記検知プローブの動きは、前記試験対象物内の欠陥のゾーンを迅速に検出するために粗い走査において、そして、前記試験対象物内の各特定された欠陥ゾーン内の詳細な欠陥を検出するために細かい走査において前記試験対象物を走査するように制御される請求項17に記載の方法。
【請求項20】
  前記試験対象物の前記走査および前記試験を同期させて、欠陥の増大と前記試験対象物の物理的挙動との間の相関を確立する請求項17に記載の方法。
【請求項21】
  前記試験対象物は、CFRP(炭素繊維強化ポリマー又はプラスチック)複合材料および二方向CFRPラミネートを含む請求項17〜20の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本実施形態は包括的には、静的荷重および繰り返し荷重下で試験を受ける物体の走査に関する。本実施形態は、より詳細には、静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重が印加されているCFRP複合材料内の欠陥を、その場で(in-situ)3軸走査および検出するための統合システムおよび方法に関する。
 
【背景技術】
【0002】
  一般に、広範な適用例:(a)航空機を製造するために航空宇宙産業において、(b)船舶、ボート等を製造する海運業において、(c)高速車両を製造するために自動車において、(d)テニスラケットや、バドミントンラケット、ホッケーのスティック、クリケットのバット、自転車のリム、車輪およびフレームを製造するためにスポーツ器材において、(e)コンクリートや、木材等の強度を高めるために土木工学において、(f)ギターや、バイオリン、ドラムを製造するために楽器において、(g)木または金属部品の代わりに使用するために銃器において、(h)三脚家具の脚のような家具、釣りざお、ビリヤードおよびステッキにおいて、(i)歯根管の代わりに使用するために歯科において、炭素繊維強化ポリマーまたはプラスチック(CFRP)複合材料が使用される。CFRP複合材がこのように広範に適用されるのは、(i)高い強度重量比、(ii)高い剛性、(iii)異方性の導電率、(iv)低い熱膨張係数、(v)高い耐疲労性、(vi)耐食性および化学的安定性、(vii)可燃性、(viii)熱安定性および良好な熱伝導率等の、その優れた特性に起因する。
【0003】
  しかし、これらのCFRP複合材は、かなり多くの場合に、製造時の不具合、或いはその耐用期間中の外部荷重パターンに起因して欠陥を有することが知られている。CFRP複合材の欠陥のうちのいくつかは、層間剥離、空隙、積層異常、含有物、水分、衝撃損傷、繊維破損および不整合を含む。CFRP複合材内のこれらの欠陥が持続すると、結果として、種々の適用例において使用されるときに、深刻な結果を招く可能性がある。それゆえ、そのような結果を回避し、CFRP複合材の耐用期間を長くするために、これらの欠陥を検出することが不可欠である。これらの欠陥は、肉眼によって気づくことはできず、材料特性および幾何学的特性を変更することなく検出される必要がある。
【0004】
  CFRP複合材内の欠陥および損傷は、数多くの方法において検出することができるが、従来の検出方法は、多くの場合に、或る特定の種類の材料および構造的形状に限定される。具体的には、それは、超音波厚さ測定(A−スキャン)、超音波線形走査(ultrasonic linear scan)(B−スキャン)、超音波透過走査(ultrasonic through-transmission scan)(C−スキャン)、音響法(AC:acoustography)、レーザー超音波(LU:laser ultrasound)、膜共振(MR:membrane resonance)、音響放出(AE:acoustic emission)、音響超音波(AU: acousto-ultrasonics)、レーザー立体画法(LS:laser stereography)、渦電流試験(ECT:eddy current testing)、過渡サーモグラフィー(TT:transient thermography)、ロックインサーモグラフィー(LT:lock-in thermography)、振動サーモグラフィー(VT:vibro thermography)、X線撮影法(XR:X-Radiography)、X線断層撮影法(XT:X-Ray Tomography)、X線後方散乱(XB:X-Ray Backscatter)および音響衝撃法(AI:acoustic impact)等の複雑な非破壊試験(NDT)方法を要求する。CFRP複合材内の炭素繊維に対する渦電流測定の特定の応答と、被検体(CFRP)表面を調製する必要がないこととにより、層間剥離および繊維破損の形の損傷を検出するのに渦電流試験が適している。
【0005】
  CFRP複合材に関するNDT技法の既存の方法において、被検体、すなわち、CFRP複合材はオフラインで試験され、NDT中にいかなる荷重もかけられない。この非破壊CFRP走査は、CFRP複合材の表面領域にわたってセンサーを動かすために、高精度変位制御3次元マニピュレーター(ガントリシステム)を必要とする。非破壊渦電流試験(ECT)方法の構成において、CFRP複合材または試験対象物内に電磁信号が生成され、CFRP複合材が或る導電率を有する。この結果として、CFRP複合材内に渦電流が形成され、不具合箇所(flaw)の周りのこれらの渦電流の変化を分析して、CFRP複合材内の欠陥を検出する。
【0006】
  図1は、従来技術による、渦電流センサー3を用いてCFRP複合材4をオフライン走査するためのシステム1の概略図である。従来技術のシステム1およびCFRP複合材4を走査するその方法は基本的に:(a)製造直後にCFRP複合材サンプル4内の製造欠陥を検出するために、(b)その耐用期間中に、或いは実験室における耐用期間条件のシミュレーション中に、すなわち、種々の荷重条件を有する独立した試験システムを用いてCFRP複合材4を試験した後に、CFRP被検体4の状態を検出するために、オフライン走査することに限定される。
【0007】
  図1に示すオフライン走査において、CFRP複合材サンプル4は平坦な表面領域上に配置され、3D(X、Y、Z軸に沿った線形運動)ガントリシステム2またはマニピュレーターを用いて、その表面領域にわたって渦電流センサープローブ3が動かされる。プローブ3を伴うレーザー変位センサーは、CFRP複合材4の表面とプローブ3の先端との間の距離を与える。このサーボ制御XYZスキャナー2は、CFRPサンプル4の表面領域全体を走査し、CFRP複合材4内の欠陥を検出するのを容易にする。しかしながら、この独立システム1は、CFRP複合材4が機械的試験システム上で静的試験条件または繰り返し試験条件下で荷重を印加している間に同時にCFRPサンプルを走査するために使用することはできない。
【0008】
  しかし、これらの従来のシステムおよび方法では、種々の荷重条件下の試験および走査は別々に実行される。試験システム上で静的試験条件または繰り返し試験条件下で荷重を印加している間に同時にCFRP複合材を走査する単一のシステムは存在しない。従来の方法において、CFRP複合材は、種々の荷重を印加することによってCFRP複合材の機械的挙動を試験するために、材料試験システム上に取り付けられる。機械的荷重を印加する前後に被検体の中の欠陥を検出するために、独立したスキャナーにわたって被検体が配置される。
【0009】
  従来の手法に従うことによって、種々の静的荷重および繰り返し荷重条件で同時に試験されるときに、CFRP複合材内の欠陥の増大を走査し、検出することはできない。さらに、CFRP複合材内の欠陥を検出するために独立したスキャナーおよび試験システムを使用することは手間がかかり、煩わしく、長々と時間を要し、それはまた、機械的試験後および走査前のCFRP複合材の何らかの取り扱いミスに起因して、CFRP複合材内の欠陥を誤検出することにつながるおそれもある。
【0010】
  従って、当該技術分野において、上記の問題の1つ以上に対する解決策を提供することが必要とされている。本実施形態は、独自の経済的な方法において、これらの問題の多くを克服する。それゆえ、実験室において静的荷重条件または繰り返し荷重条件下で機械的挙動に関して試験されている間にCFRP複合材料内の欠陥を、その場で(in-situ)3軸走査および検出するための統合システムおよび方法を提供することが望ましく、それにより、上記で言及された問題および短所を克服することができる。
 
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
  本発明の主な目的は、静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重が印加されているCFRP複合材料内の欠陥を、その場で(in-situ)3軸走査および検出するための統合システムを提供することであり、該システムは、CFRP複合材上の使用荷重をシミュレートするためのサーボ制御試験システムと、試験システムからのCFRP複合材の取り出しを必要とすることなく、CFRP複合材に適用された機械的試験前/中/後にCFRP複合材を自動的に、かつ同期して3D走査するための走査システム(渦電流センサーおよびガントリシステム)との統合を達成する。
【0012】
  本発明の別の目的は、静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重が印加されているCFRP複合材料内の欠陥を、その場で(in-situ)3軸走査および検出するための統合システムであって、CFRP複合材内の欠陥を分析する精度を高めたシステムを提供することである。
【0013】
  本発明の別の目的は、静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重が印加されているCFRP複合材料内の欠陥を、その場で(in-situ)3軸走査および検出するための統合システムであって、単純で、かつ、試験プロセスおよび走査プロセスの両方において膨大な長さの時間を節約する経済的なシステムを提供することである。
【0014】
  本発明の更に別の目的は、静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重が印加されているCFRP複合材料内の欠陥を、その場で(in-situ)3軸走査および検出するための方法であって、機械的試験プロセスを中断することなく、試験システム上に取り付けられたCFRP複合材の3D走査が可能な方法を提供することである。
 
【課題を解決するための手段】
【0015】
  1つの実施形態によれば、上記目的を達成する本発明は、静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重が印加されている物体内の欠陥を、その場で(in-situ)3軸走査および検出するための統合システムに関する。該システムは、試験対象物に所望の荷重を印加し、変位を与えるために複数の油圧ユニットによって作動するアクチュエーターおよびクロスヘッド組立体を有する試験システムを備える。取付具組立体は、試験対象物を保持するためにアクチュエーターとクロスヘッド組立体との間に取り付けられる複数の取付具要素および複数の把持要素を有する。走査システムは、一対の支持柱を通して試験システムと統合される。走査システムは、試験対象物の表面上に渦電流を生成し、測定する少なくとも1つの非破壊検知プローブと、プローブの先端と試験対象物の表面との間の距離を測定する少なくとも1つの検知ユニットとを有するプローブ組立体と、プローブが試験対象物の3D走査のために試験対象物の表面領域全体にわたって移動するように、X、Y、Z軸に沿ってプローブ組立体を移動させるために、プローブ組立体に関連付けられる複数の伝達要素を配置されるXYZガントリシステムを有する3Dスキャナー組立体とを備える。オペレーターコンソールは、試験システム上に取り付けられるホルダー組立体で固定され、オペレーターコンソールは、油圧ユニットを通してアクチュエーターおよびクロスヘッド組立体の動きを制御するために、そして、XYZガントリシステムを通してX、Y、Z軸に沿ったプローブ組立体の3次元の動きを同期して制御するために、試験システムおよび走査システムに動作可能に接続される。そのような統合試験および走査システムは、試験システムからのCFRP複合材の取り出しを必要とすることなく、CFRP複合材に適用された機械的試験前/中/後にCFRP複合材内の欠陥の増大を正確に検出するために、試験システム上に取り付けられたCFRP複合材の自動的、かつ同期した3D走査を達成する。
【0016】
  さらに、非破壊検知プローブは、試験対象物の表面に対してプローブ先端を位置決めするように、ばねで付勢され、プローブ組立体の取付具の中に固定される渦電流検知プローブを備える。検知ユニットは、プローブに隣接して配置されるレーザーセンサーを備える。伝達要素は、試験システムの支持柱に固定される支持フレームに取り付けられる。伝達要素はそれぞれ、回転−直線運動伝達(rotary-to-linear motion transmission)を与えるためにオペレーターコンソールによって制御されるモーターおよび電気駆動装置によって相互依存的に動作する。取付具要素および把持要素はそれぞれ、試験対象物を取り付けるための上側取付具要素および下側取付具要素並びに上側把持要素および下側把持要素から構成される。クロスヘッド組立体はロードセルを収容され、試験対象物に所望の荷重を印加するために、油圧ユニットによってサーボ制御される。試験対象物は、CFRP(炭素繊維強化ポリマーまたはプラスチック)複合材料および二方向CFRPラミネートを含む。
【0017】
  オペレーターコンソールは、アクチュエーターと、クロスヘッド組立体と、プローブ組立体のプローブおよび検知ユニットと、XYZガントリシステムの伝達要素とを駆動する油圧ユニットおよび電気駆動装置を動作させるために、試験システム内に収容されるマルチチャネル制御およびデータ収集システムを通して、試験システムおよび走査システムに動作可能に接続される。オペレーターコンソールは、試験対象物に荷重を印加し、試験対象物を走査する試験シーケンスを実行し、オンライン試験状態を表示し、試験システム正常動作および安全動作を診断し、試験報告および通知を生成するように構成される。オペレーターコンソールは、静的試験条件および繰り返し試験条件中であっても、試験対象物を確実に保持するために取付具組立体の把持要素を制御する。
【0018】
  また、伝達要素は、それぞれがその上に1つ以上のレールを形成される、第1の伝達要素、第2の伝達要素、第3の伝達要素および第4の伝達要素を備え、伝達要素は、試験対象物に対して伝達要素を3次元に動かすために結合器を通して互いに結合される。第1の伝達要素および第2の伝達要素は、試験システムを基準にして、支持フレームに垂直に取り付けられる。第3の伝達要素は、第3の伝達要素がX軸に沿ってプローブ組立体を動かすために試験対象物に対して上下方向に第1の伝達要素および第2の伝達要素のレール上を移動可能であるように、第1の伝達要素と第2の伝達要素との間に水平に結合される。第4の伝達要素は、第4の伝達要素がY軸に沿ってプローブ組立体を動かすために試験対象物に対して横方向に第3の伝達要素のレール上を移動可能であるように、試験対象物の表面に対して垂直に第3の伝達要素に結合される。プローブ組立体は、プローブ組立体がZ軸に沿ってプローブ組立体を動かすために試験対象物に対して後方向および前方向に第4の伝達要素のレールに沿って移動可能であるように、第4の伝達要素に平行に配置され、結合される。
【0019】
  別の実施形態によれば、上記目的を達成する本発明は、静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重が印加されている物体内の欠陥を、その場で(in-situ)3軸走査および検出するための方法に関する。その方法は、無荷重条件において取付具組立体の上側把持要素および取付具要素と下側把持要素および取付具要素との間に試験対象物を取り付けるステップと、試験対象物と非破壊検知プローブとの間の所望の距離を保持しながら、3Dスキャナー組立体のX座標およびY座標を記録するために、試験対象物の左上角および右下角にプローブを位置決めするステップと、3Dスキャナー組立体の記録されたX座標およびY座標に基づいて、試験対象物の走査エリア全体を決定するステップと、検知プローブの先端と試験対象物の表面との間の距離を測定するステップと、XYZガントリシステムの複数の伝達要素を通してX、Y、Z軸に沿ったプローブの3次元の動きを操作および制御することによって、試験対象物の決定された走査エリアを走査するステップと、無荷重条件において試験対象物内の欠陥を特定するために、プローブによって試験対象物の表面上に渦電流を生成し、測定するステップと、複数の油圧ユニットを通して試験システムのアクチュエーターおよびクロスヘッド組立体を作動させることによって試験対象物に所望の荷重を印加し、変位を与えるとともに、異なる荷重条件および異なる間隔において荷重を印加している間に、そして荷重が印加された後に、試験対象物内の欠陥の発生を分析するために、上記測定するステップおよび走査するステップを同期して繰り返すステップとを含む。この方法は、機械的試験プロセスを中断することなく、試験システム上に取り付けられたCFRP複合材の3D走査を達成することができ、膨大な長さの試験時間を節約することもできる。
【0020】
  また、プローブによって試験対象物の表面上に渦電流を生成し、測定するステップは、高周波交流電流を送り込み、プローブ内に過渡的な磁場を生成するステップと、試験対象物の表面にわたってプローブを動かしながら、プローブおよび試験対象物を磁気的に結合し、試験対象物の表面上に渦電流を生成し、表面の中に侵入させるステップと、プローブにかかる電圧を測定し、自己誘導電磁力(EMF)と、プローブと試験対象物との間の相互誘導とを検出するステップと、走査しながら、試験対象物内の欠陥を検出するために、プローブにかかる電圧に何らかの変化があるか否かを判断するステップとを更に含む。検知プローブの動きは、試験対象物内の欠陥のゾーンを迅速に検出するために粗い走査において、そして、試験対象物内の各特定された欠陥ゾーン内の詳細な欠陥を検出するために細かい走査において試験対象物を走査するように制御される。試験対象物の走査および試験を同期させて、欠陥の増大と試験対象物の物理的挙動との間の相関を確立する。試験対象物は、CFRP(炭素繊維強化ポリマーまたはプラスチック)複合材料および二方向CFRPラミネートを含む。
【0021】
  上記の概要および以下の好ましい実施形態の詳細な説明は、添付の図面とともに読まれるときにより深く理解され、図面は、一例として、本発明の1つの形態のみを示す。本発明の適用例を例示するために、図面において、本発明の構成および実施態様が示される。しかしながら、本発明は開示される具体的なシステムおよび方法に限定されない。本発明は、添付の図を参照しながら、より詳細に論じられることになる。
 
 
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】従来技術による、渦電流センサーを使用するCFRP複合材のオフライン走査のためのシステムの概略図である。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による、3D(3次元)走査システムと、静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重が印加されているCFRP複合材料内の欠陥を、その場で(in-situ)3軸走査および検出するための試験システムとの統合システムの概略図である。
【
図3a】本発明の例示的な実施形態による、3D走査システムおよび試験システムを備える、
図2に示す統合システムの側面図である。
【
図3b】本発明の例示的な実施形態による、3D走査システムおよび試験システムを備える、
図2に示す統合システムの背面図である。
【
図4a】本発明の例示的な実施形態による、3D走査システムおよび試験システムを備える、
図2に示す統合システムの正面等角図である。
【
図4b】本発明の例示的な実施形態による、3D走査システムおよび試験システムを備える、
図2に示す統合システムの背面等角図である。
【
図5】本発明の例示的な実施形態による、検知プローブ組立体をXYZ方向に移動させる、
図2に示す3D走査システムの詳細図である。
【
図6】本発明の例示的な実施形態による統合システムを用いて、静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重が印加されているCFRP複合材料内の欠陥を、その場で(in-situ)3軸走査および検出する方法のフローチャートである。
【
図7(a)】本発明の例示的な実施形態による統合システムにおいて使用される渦電流検知プローブの動作原理を表すフロー図である。
【
図7(b)】本発明の例示的な実施形態による統合システムにおいて使用される渦電流検知プローブの動作原理を表すフロー図である。
【
図7(c)】本発明の例示的な実施形態による統合システムにおいて使用される渦電流検知プローブの動作原理を表すフロー図である。
【
図7(d)】本発明の例示的な実施形態による統合システムにおいて使用される渦電流検知プローブの動作原理を表すフロー図である。
【
図7(e)】本発明の例示的な実施形態による統合システムにおいて使用される渦電流検知プローブの動作原理を表すフロー図である。
【
図7(f)】本発明の例示的な実施形態による統合システムにおいて使用される渦電流検知プローブの動作原理を表すフロー図である。
【
図8(a)】本発明の例示的な実施形態による二方向CFRPラミネートを示す図である。
【
図8(b)】本発明の例示的な実施形態による
図8(a)に示す二方向CFRPラミネートにわたる検知プローブの往復動作中に検知プローブにかかる電圧の変化の時間履歴を表すグラフである。
【
図9(a)】本発明の例示的な実施形態による試験システムに取り付けられている間に3D走査の妥当性を検証するために撮影された既知の欠陥を有するCFRP複合材サンプルを示す図である。
【
図9(b)】本発明の例示的な実施形態による統合システム上に取り付けられた3D渦電流スキャナーから得られたCFRP複合材サンプルの対応する2D走査画像を示す図である。
【
図10(a)】本発明の例示的な実施形態による試験システムを用いて、CFRP複合材に静的に荷重を印加、除去して、CFRP複合材サンプルの表面領域にわたって取得した走査画像を示す図である。
【
図10(b)】本発明の例示的な実施形態による試験システムを用いて、CFRP複合材に静的に荷重を印加、除去して、CFRP複合材サンプルの表面領域にわたって取得した走査画像を示す図である。
【
図10(c)】本発明の例示的な実施形態による試験システムを用いて、CFRP複合材に静的に荷重を印加、除去して、CFRP複合材サンプルの表面領域にわたって取得した走査画像を示す図である。
【
図10(d)】本発明の例示的な実施形態による試験システムを用いて、CFRP複合材に静的に荷重を印加、除去して、CFRP複合材サンプルの表面領域にわたって取得した走査画像を示す図である。
【
図10(e)】本発明の例示的な実施形態による試験システムを用いて、CFRP複合材に静的に荷重を印加、除去して、CFRP複合材サンプルの表面領域にわたって取得した走査画像を示す図である。
【
図11(a)】本発明の例示的な実施形態による、多数サイクルにわたって一定振幅の疲労荷重を受けたCFRP複合材被検体内の欠陥の増大を示す走査画像である。
【
図11(b)】本発明の例示的な実施形態による、多数サイクルにわたって一定振幅の疲労荷重を受けたCFRP複合材被検体内の欠陥の増大を示す走査画像である。
【
図11(c)】本発明の例示的な実施形態による、多数サイクルにわたって一定振幅の疲労荷重を受けたCFRP複合材被検体内の欠陥の増大を示す走査画像である。
【
図11(d)】本発明の例示的な実施形態による、多数サイクルにわたって一定振幅の疲労荷重を受けたCFRP複合材被検体内の欠陥の増大を示す走査画像である。
【
図11(e)】本発明の例示的な実施形態による、多数サイクルにわたって一定振幅の疲労荷重を受けたCFRP複合材被検体内の欠陥の増大を示す走査画像である。
 
【発明を実施するための形態】
【0023】
  本発明はここで図面を参照しながら説明され、図面を通して同じ要素を指すために参照番号が使用される。以下の説明において、本発明を完全に理解してもらうために、説明の目的上、数多くの具体的な細部が記述される。しかしながら、これらの具体的な細部を用いることなく、本発明が実施される場合があることが明らかな場合がある。他の事例では、本発明を説明するのを容易にするために、既知の構造およびデバイスはブロック図の形で示される。本明細書において、静的荷重条件または繰り返し荷重条件下で機械的挙動に関して実験室において試験されている間にCFRP複合材料内の欠陥を、その場で(in-situ)3軸走査および検出するための統合システムおよび方法が説明される。
 
【0024】
  以下の説明は本発明の例示的な実施形態にすぎず、本発明の範囲、適用可能性または構成に関して限定されない。むしろ、以下の説明は、本発明の種々の実施形態を実施するための好都合の例示を提供することを意図している。後に明らかになるように、本明細書において記述されるような本発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態において説明される構造上/動作上の特徴の機能および構成に関して種々の変更を加えることができる。本明細書の説明は、異なる形状、構成要素等を有する別の構成のデバイスで利用されるように構成される場合があるが、それでも、本発明の範囲内に入る場合があることは理解されたい。従って、本明細書における詳細な説明は、例示のためのみに提示され、限定するものではない。
 
【0025】
  図2は、本発明の例示的な実施形態による3D(3次元)走査システム20と、静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重が印加されているCFRP複合材料150内の欠陥を、その場で(in-situ)3軸走査および検出するための試験システム10との統合システム100の概略図である。該システムは3Dスキャナーシステムを備え、3Dスキャナーシステムは、渦電流センサー52を用いて試験対象物(CFRP複合材料)150を走査するためのサーボ制御試験システム10と統合される。詳細には、該システムは、CFRP複合材150にかかる使用荷重をシミュレートするためのサーボ制御試験システム10と、CFRP複合材150の3D走査のための走査システム20(渦電流センサー52およびガントリシステム62)とを統合する。このシステムは、その材料特性に影響を及ぼすことなく、そして、CFRP複合材料150の取り外しを必要とすることなく、機械的試験前/中/後にCFRP複合材料150内の欠陥を検出するのを容易にする。本明細書において、CFRP複合材150は、限定はしないが、CFRP複合材料、二方向CFRPラミネート、CFRPサンプル、試験対象物および被検体と呼ぶことができ、それらは結局、全てCFRP複合材に関連している。
 
【0026】
  該システムは主に、試験システム10および走査システム20から構成され、走査システム20は、
図3a、3bに示すように、一対の支持柱30を通して、試験システム10に統合、固定され、
図3a、3bはそれぞれ、本発明の例示的な実施形態による3D走査システム20および試験システム10を備える、
図2に示す統合システム100の側面図および背面図である。最初に、試験システム10は主に、アクチュエーター12およびクロスヘッド組立体14から構成され、試験システム10は、試験対象物、すなわち、CFRP複合材150に所望の荷重を印加し、変位を与えるために、アクチュエーター12およびクロスヘッド組立体14を駆動するように特に設計および配置されるいくつかの油圧ユニット(図示せず)を収容する。また、試験システム10は、CFRP複合材150に荷重を印加するサーボ制御試験システム10と呼ぶこともできる。アクチュエーター12は、規定された性能仕様下で所望の荷重をかけ、変位を与えるために使用される、内側にリニアエンコーダー(図示せず)を取り付けられた油圧アクチュエーターである。油圧ユニットは、限定はしないが、電源函、サーボ弁、アキュムレーター、冷却ユニットおよび熱交換器を含む。
 
【0027】
  また、試験システム10は、CFRP複合材150を保持するために、試験システム10のアクチュエーター12およびクロスヘッド組立体14に関連付けられる取付具組立体40も収容する。クロスヘッド組立体14は、異なる重量のいくつかのロードセル(図示せず)を収容され、機械的挙動に関してCFRP複合材150を試験しながら、CFRP複合材150に所望の適切な荷重を印加するために、油圧ユニットによってサーボ制御される。試験システム10の上側部分は、ロードセルを収納する可動クロスヘッド組立体14を設けられ、その組立体はまた、LED色の変化を通して機械の状態(ポンプオン/オフ、波形ビジー/アイドル)を観測するのを容易にする。試験システム10の下側部分は、
図4a、4bに示すように、アクチュエーター12、油圧ポンプ、油圧ユニット、冷却ユニット、およびオペレーターコンソール70によって操作されるコントローラーを収納する筐体80を設けられ、
図4a、4bはそれぞれ、本発明の例示的な実施形態による3D走査システム20および試験システム10を備える、
図2に示す統合システム100の正面等角図および背面等角図である。取付具組立体40は、一対の取付具要素42および一対の把持要素44を有し、把持要素44間にCFRP複合材150を保持するために、それらの要素はアクチュエーター12とクロスヘッド組立体14との間に取り付けられる。取付具要素42および把持要素44は、試験システム10によってCFRP複合材150に所望の荷重を印加している間に、CFRP複合材150を確実に保持するために特に設計および作製される。取付具要素42および把持要素44はCFRP複合材150を取り付けるために、それぞれ上側取付具要素および下側取付具要素42、並びに上側把持要素および下側把持要素44に分割される。
 
【0028】
  走査システム20は主に、プローブ組立体50および3D(3次元)スキャナー組立体60から構成される。プローブ装置または組立体50は、CFRP複合材150の表面上に渦電流を生成し、測定するための非破壊検知プローブ52と、プローブ先端とCFRP複合材150の表面との間の距離を測定するための検知ユニット54とを備える。検知ユニット54は、プローブ52に隣接して配置され、位置決めされるレーザーセンサーである。非破壊検知プローブ52は、渦電流検知プローブ52としての役割を果たし、そのプローブ52は、CFRP複合材150の表面と直に接触してしまうという思いも寄らない事態による損傷を回避するために、一般にばねによって付勢され、すなわち、ばね式プローブ52である。プローブ52は、CFRP複合材150の表面に対してプローブ先端を位置決めするようにプローブ組立体50の取付具の中に固定され、すなわち、プローブ先端は、CFRP複合材表面と全く接触することなく、CFRP複合材150の表面に近接して対面し、取付具はプローブ52を保持するように設計される。
 
【0029】
  図5は、本発明の例示的な実施形態による検知プローブ組立体50をXYZ方向に移動させる、
図2に示す3D走査システム20の詳細図である。走査システム20において、3Dスキャナー組立体60はXYZガントリシステム62を備えており、ガントリシステムは、CFRP複合材150にわたってプローブ52を3軸方向に動かすために互いに固定されるいくつかの伝達要素64a、64b、64c、64dを配置され、3Dスキャナーはまた、XYZ渦電流スキャナーとしての役割も果たし、XYZ渦電流スキャナーとも呼ばれる。3Dスキャナー内に収容される伝達要素64a、64b、64c、64dは、CFRP複合材150を3D走査するために、そして、CFRP複合材150内の欠陥を検出するために、プローブ52がCFRP複合材150の表面領域全体にわたって移動するように、プローブ組立体50をX、Y、Z軸に沿って移動させるために、プローブ組立体50に関連付けられる。3Dスキャナー組立体60のこのXYZガントリシステム62は、試験システム10内に収容される電気駆動装置によって駆動され、電気駆動装置はまた、油圧ユニットとともに、プローブ組立体50およびXYZガントリシステム62を駆動するように動作する。試験システム10のクロスヘッド組立体14および走査システム20のXYZガントリシステム62は、試験システム10内に収容される支持柱30の助けを借りて支持され、これらの支持柱30は、電源、駆動装置、センサー、コントローラー等の隠しケーブルおよびワイヤを収容するために中空の支柱として形成される。
 
【0030】
  本実施形態において、伝達要素は、4つの伝達要素、すなわち、第1の伝達要素64a、第2の伝達要素64b、第3の伝達要素64cおよび第4の伝達要素64dに分割される。各伝達要素64a、64b、64c、64dは、その上に1つ以上のレール66を形成される。
図5に示すように、第1の伝達要素64aおよび第2の伝達要素64bは、CFRP複合材150にわたって、390mmの可変長だけX方向にプローブ52を動かすために配置される。同様に、第3の伝達要素64cは、CFRP複合材150にわたって、390mmの可変長だけY方向にプローブ52を動かすために配置される。さらに、第4の伝達要素64dは、CFRP複合材150にわたって、100mmの可変長だけZ方向にプローブ52を動かすために配置される。
 
【0031】
  詳細には、第1の伝達要素64aおよび第2の伝達要素64bは、試験システム10を基準にして、詳細には、試験システム10の支持柱30と一列になるように、支持フレーム68に垂直に取り付けられる。第3の伝達要素64cは、第3の伝達要素64cが第1の伝達要素64aおよび第2の伝達要素64bのレール66上を上下方向に移動可能であり、結果としてCFRP複合材150に対してプローブ組立体50がX軸に沿って移動するように、第1の伝達要素64aと第2の伝達要素64bとの間に水平に結合される。
 
【0032】
  第4の伝達要素64dは、第4の伝達要素64dが第3の伝達要素64cのレール66上を横方向に移動可能であり、すなわち、長手方向において左右方向に移動し、結果として、CFRP複合材150に対してプローブ組立体50がY軸方向に沿って移動するように、CFRP複合材150の表面に対して垂直に第3の伝達要素64cに結合される。プローブ組立体50は、プローブ組立体50が第4の伝達要素64dのレール66に沿って前後方向に移動可能であり、結果としてCFRP複合材150に対してプローブ組立体50がZ軸に沿って移動するように、第4の伝達要素64dの上に平行になるように配置され、結合器90を通して第4の伝達要素64dに結合される。
 
【0033】
  さらに、オペレーターコンソール70が試験システム10上に取り付けられるホルダー組立体72で固定され、スマートタップまたはスマートフォン(ウィンドウズ/アンドロイド)が、プラグアンドプレイ試験システム10上に取り付けられるタップホルダー72で固定されるオペレーターコンソール70として構成され、使用される。オペレーターコンソール70は、一般に、CFRP複合材150を取り付けると、試験システム10および走査システム20の迅速な動作を助長するアンドロイドタブレットの形で設けられる。オペレーターコンソール70は、(i)アクチュエーター12およびクロスヘッド組立体14の動きを制御するために油圧駆動装置を動作させること、(ii)試験下(すなわち、静的試験条件および繰り返し試験条件下)でCFRP複合材150を保持するために取付具要素42および把持要素44を制御すること、(iii)プローブ組立体50内の渦電流プローブ52のXYZ方向への動きを制御するために電気駆動装置を動作させること、(iv)CFRP複合材150を取り付ける、CFRP複合材150に荷重を印加する、オンライン試験状態を表示する、試験システム10の正常動作および安全動作を診断する、試験報告および通知を生成するという試験シーケンスを実行することのために構成され、使用される。さらに、コンピューター(ウィンドウズPCやラップトップ)が、試験荷重シーケンス、データ収集、測定値のオンライングラフ表示、並びに結果および報告生成を実行するための統合システム100のフロントエンド構成を容易にする。
 
【0034】
  詳細には、オペレーターコンソール70は、油圧ユニットを通してアクチュエーター12およびクロスヘッド組立体14の動きを制御するために、そして、XYZガントリシステム62を通してのX、Y、Z軸に沿ったプローブ組立体50の3次元方向の動きを同期して制御するために、試験システム10内に収容されるマルチチャネル制御およびデータ収集システムを通して、試験システム10および走査システム20に動作可能に接続される。オペレーターコンソール70は、アクチュエーター12、クロスヘッド組立体14、プローブ組立体50のプローブ52および検知ユニット54、並びにXYZガントリシステム62の伝達要素64a、64b、64c、64dを駆動するために、油圧ユニットおよび電気駆動装置を動作させるように構成される。この統合システム100の試験システム10および走査システム20はいずれも、オペレーターコンソール70を通して単一のコントローラーによって駆動され、それは、荷重システムおよび走査システムの同期制御および測定を容易にすることに留意されたい。そのようなシステムは、試験システム10および走査システム20を統合し、それは、その機械的特性に影響を及ぼすことなく、そして、走査プロセスのために試験システム10からのCFRP複合材150の取り外しを全く必要とすることなく、試験システム10を用いて機械的試験前/中/後にCFRP複合材サンプル150内の欠陥を検出するために、同時に、かつ同期して、CFRP複合材150上での機械的試験および3D走査の両方を容易にする。
 
【0035】
  図6は、本発明の例示的な実施形態による統合システム100を用いて、静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重が印加されているCFRP複合材料150内の欠陥を、その場で(in-situ)3軸走査および検出する方法のフローチャート600を示す。XYZ走査システム20および試験システム10を統合したシステムが動作するように設定されると、静的試験条件および繰り返し試験条件下で荷重が印加されているCFRP複合材料150内の欠陥を、その場で(in-situ)走査および検出を実行する方法の種々のステップが実行される。最初に、ステップ602に示すように、CFRP複合材150が、無荷重条件において、取付具組立体40の上側把持要素および取付具要素と下側把持要素および取付具要素44、42との間に取り付けられる。CFRP複合材150を取り付け、試験システム10上にCFRP複合材150を設置するために、適切な上部および底部グリップおよび取付具が選択される。CFRP複合材150は、油圧または手動グリップを用いて試験システム10上に取り付けられ、CFRP複合材150に荷重がかからないのを確実にする。
 
【0036】
  その後、ステップ604に示すように、CFRP複合材150と非破壊検知プローブ52との間の所望の距離を保持しながら、非破壊検知プローブ52が主に動かされ、3Dスキャナー組立体のX座標およびY座標の位置を記録するためにCFRP複合材150の左上角に位置決めされ、同様に、非破壊検知プローブ52が再び動かされ、3Dスキャナー組立体のX座標およびY座標の位置を記録するためにCFRP複合材150の右下角に位置決めされる。従って、CFRP複合材150の左上角および右下角に対応する上記のX座標およびY座標は、走査されるべきCFRP複合材150の全エリアを画定する。
 
【0037】
  その後、ステップ606に示すように、3Dスキャナー組立体の記録されたX座標およびY座標に基づいて、CFRP複合材150の走査エリア全体が決定される。その後、ステップ608に示すように、検知プローブ52の先端と、CFRP複合材150の表面との間の距離が測定および保持され、特定の距離において3D走査が実行される。CFRP複合材150内の欠陥を検出する種々の分析のために、プローブ時間と、CFRP複合材表面との間の距離差を測定および保持することによって、さらに、3D走査が実行される。
 
【0038】
  さらに、ステップ610に示すように、走査システム20のXYZガントリシステム62の伝達要素64a、64b、64c、64dを通して、X、Y、Z軸に沿ったプローブ52の3次元の動きを操作および制御することによって、CFRP複合材150の決定された走査エリアが走査される。検知プローブ52の3次元の動き(X、Y、Z方向の動き)が操作および制御され、CFRP複合材150の走査エリア全体が粗くおよび/または細かく走査および網羅される。CFRP複合材150内の欠陥のゾーンを迅速かつ短時間に検出し、見つけるために粗い走査が実行されるのに対して、CFRP複合材150内の各特定された欠陥ゾーン内の詳細な欠陥を検出するために、すなわち、粗い走査において特定された欠陥のゾーンに対して局所的な欠陥を明確にし、その画像を完成するために、細かい走査が実行される。
 
【0039】
  その後、ステップ612に示すように、CFRP複合材150の表面上にプローブ52によって渦電流が生成され、無荷重条件においてCFRP複合材150内の欠陥を特定するために測定される。ここで、試験システム10によって機械的特性に関するCFRP複合材150上の任意の試験を行う前に、CFRP複合材150の走査エリア全体にわたってプローブ52が動かされ、後に説明され、
図7(a)〜
図7(f)に示す渦電流の動作原理を用いてCFRP複合材の状態および欠陥が観測される。
 
【0040】
  最後に、ステップ614に示すように、油圧ユニットを通して、試験システム10のアクチュエーター12およびクロスヘッド組立体14を作動させることによって、CFRP複合材150に所望の荷重がかけられ、変位が与えられる。その後、ステップ616に示すように、異なる荷重条件および異なる間隔においてCFRP複合材150に荷重を印加しながら、そして、異なる荷重条件および異なる間隔においてCFRP複合材150に荷重がかけられた後に、CFRP複合材150内の欠陥の発生を分析するために、ステップ608、610、612が同期して繰り返される。CFRP複合材150の走査および試験を同期させて、CFRP複合材150の欠陥の増大と物理的挙動との間の相関を確立する。
 
【0041】
  ここで、タブホルダー組立体72上に取り付けられる操作コンソール70を用いて、CFRP走査の間隔とともに、CFRP複合材150の物理的挙動(ヤング率、疲労強度、靭性等)を見つけるための試験シーケンス(使用荷重の荷重パターンのシミュレーション)が規定される。CFRP複合材150内の欠陥を検出するために、規定された間隔において、渦電流走査とともに試験シーケンスが実行され、機械的挙動に関して測定が行われる。実行時間中に評価される、CFRP複合材150の機械的特性および欠陥状態も提示される。機械的試験の最後に、CFRP複合材150内の欠陥を検出するために、走査システム20によってCFRP複合材150が再度走査される。
 
【0042】
  図7(a)〜
図7(f)は、本発明の例示的な実施形態による統合システム100において使用される渦電流検知プローブ52の動作原理を表すフロー
図700を示す。渦電流検知プローブ52の動作は、CFRP複合材150の表面上に渦電流を生成し、測定するための種々のサブステップを実行する。最初に、検知プローブ52の円筒形のフェライトコアにわたって銅線701が巻き付けられ、結果として、検知プローブ52が誘導性コイルとしての役割を果たす。その後、高周波交流電流がプローブ52の中に送り込まれ、高周波交流電流は、プローブ52内に大きな磁束を生成するほど十分に増幅される。高周波交流電流がプローブ52に通されるとき、プローブ52は、プローブ52の周りに過渡的な磁場を生成する。
 
【0043】
  磁場の発生源を伴うプローブ52がCFRP複合材150(それは導電性被検体である)に近づけられるとき、CFRP複合材150内にらせん形の電流、すなわち、渦電流が生成および誘導される。CFRP複合材150の表面にわたってプローブ52が移動するのに応じて、プローブ52がCFRP複合材150と磁気的に結合され、CFRP複合材150の表面上に渦電流が生成され、その表面の中に侵入する。詳細には、CFRP複合材150(導電性被検体)にわたってプローブ52が移動すると、プローブ自体の磁場、すなわち、一次磁場の影響下で、プローブ52および走査対象のCFRP複合材150が磁気的に結合され、結果として、CFRP被検体の表面上に渦電流が生成され、CFRP被検体に侵入する。この生成された渦電流は、CFRP複合材150の表面の数層下まで侵入することができ、電流が侵入する深さは、プローブ52に通される交流電流の周波数に反比例する。CFRP複合材150内に誘導される電磁力(EMF)は、ファラデーの法則に従って磁束の変化率に比例する。
 
【0044】
  さらに、CFRP複合材150内に生成される渦電流は、プローブ52内に、自らの磁場、すなわち、渦電流を生成する原因である一次磁場と対立する二次磁場を更に生成する。渦電流の方向はレンツの法則に基づくので、CFRP複合材150内の渦電流によって生成される二次磁場は、プローブ52内の一次磁場と対立する。その後、自己誘導電磁力(EMF)と、プローブ52とCFRP複合材150との間の相互誘導とを検出するために、プローブ52にかかる電圧が測定される。CFRP複合材150の表面にわたってプローブ52を動かすことによってCFRP複合材150を走査しながら、CFRP複合材150内の欠陥を検出するために、プローブ52にかかる被測定電圧の任意の変化が特定される。
 
【0045】
  CFRP複合材被検体150にわたるプローブ52の往復動作中に、欠陥に直面するたびに、渦電流の経路が中断され、結果として二次磁場の強度が低下する。この現象の結果として更に、プローブ52とCFRP複合材被検体150との間の結合に起因してプローブ52にかかる電圧が変化する。この電圧の変化は、CFRP複合材被検体150の損傷を受けた表面領域と損傷を受けていない表面領域とを区別するために利用される。このようにして、この統合試験および走査システム20の動作の規定された動作原理は、CFRP複合材150に関して適用される機械的試験前/中/後にCFRP複合材150の状態を検出できるようにする。また、該システムは、CFRPサンプル内の欠陥をその機械的特性と相関させるのを、そして、最終的には、その設計、製造段階または応用段階で更なる適切な措置を講じるのを助ける。
 
【0046】
  この統合試験および走査システムを使用することによって、CFRP複合材サンプル150に関して実行されたそのような試験および走査から得られた結果のいくつかが
図8(a)、8(b)に示す。
図8(a)は、本発明の例示的な実施形態による二方向CFRPラミネート150を示す。本発明は、CFRP複合材サンプル150に関する渦電流試験を行うことによって妥当性を検証される。ここで、本発明の統合システム100を使用する渦電流試験のために、中央において17ジュール衝撃損傷を有するサイズ15cm×10cm×2cmの二方向CFRPラミネート150(
図7aに示す)が利用される。その後、二方向CFRPラミネート150の表面にわたってプローブ52(10巻きの銅線および5MHzの交流を用いる)が動かされている間に、プローブ52にかかる電圧が測定された。
図8(b)に示すように、曲線のピーク付近における電圧の変化は、約130mVであり、CFRPラミネート150内の欠陥に対応することがわかり、
図8(b)は、本発明の例示的な実施形態による
図8(a)に示す二方向CFRPラミネート150にわたる検知プローブ52の往復動作中に検知プローブ52にかかる電圧の変化の時間履歴を表すグラフ800を示す。
 
【0047】
  図9(a)は、本発明の例示的な実施形態による試験システム10上に取り付けられている間に3D走査の妥当性を検証するために利用される、既知の欠陥を有するCFRP複合材サンプル150を示す。それに対して、
図9(b)は、本発明の例示的な実施形態による統合システム100上に取り付けられる3D渦電流スキャナーから得られたCFRP複合材サンプル150の対応する2D走査画像900を示す。白色のパッチがCFRP複合材サンプル150内に存在する既知の損傷に対応し、それが本発明のこの統合システム100の助けを借りて正確に分析されることが、
図9(a)、9(b)の写真から明らかである。
 
【0048】
  図10(a)〜
図10(e)はそれぞれ、本発明の例示的な実施形態による試験システム10を用いてCFRP複合材150が徐々に増加する静的荷重を受けているときおよび荷重を除去されているときに、CFRP複合材サンプル150の表面領域にわたって取得した走査画像1000を示す。
図10(a)〜
図10(e)から、CFRP複合材150が静的条件下で荷重をかけられるとき、および荷重が除去されるときにそれぞれ、CFRP複合材150内の欠陥のサイズが増加、減少することが観測される。
図10aは、CFRP複合材150が1.0kNまで荷重をかけられ、その後、0.1kNまで荷重が除去されることを示す。同様に、
図10b、
図10d、10eはそれぞれ、CFRP複合材150が2.0kN、2.5kN、3.0kNまで荷重をかけられ、その後、そのたびに0.1kNまで荷重が除去されることを示す。これらの図から、静的荷重を増加させていくと欠陥のサイズも増大し、CFRP複合材150の荷重の除去時に元のサイズに戻ることが明らかである。
図10cは、2.0kNの一定振幅における500サイクルの疲労荷重後の欠陥サイズの増大を示す。ここで、荷重の除去後に、CFRP複合材被検体150が、元のサイズを取り戻す。
 
【0049】
  図11(a)〜
図11(e)はそれぞれ、本発明の例示的な実施形態による多数サイクルにもわたって一定振幅の疲労荷重を受けるCFRP複合材被検体150内の欠陥の増大を示す走査画像1100を示す。以下の表1は、
図11(a)〜
図11(e)に対応する荷重条件と、これらの試験条件に対応する被測定欠陥サイズとを与える。ここで、荷重振幅および荷重サイクル数の増加とともに、欠陥サイズが増大することが明らかである。
図11(e)は、欠陥のサイズがそれ以上増大できないことを示す。
 
【0051】
  本発明の統合システム100は、静的荷重および繰り返し荷重下で試験を受けるCFRP複合材150を走査するための3Dスキャナーを設けるのを容易にし、該システムは、(i)静的荷重および/または繰り返し荷重下での機械的試験、(ii)CFRP複合材150内の欠陥に関する3D走査の両方を行うために、試験システム10および3Dスキャナーのための統合制御およびアプリケーション(統合制御システム)を備える、3Dスキャナーとサーボ制御試験システム10との統合を提供する。詳細には、CFRP複合材150が試験システム10上に取り付けられると、この統合システム100だけで、機械的特性に関する試験および欠陥に関する走査の両方を実行することができ、機械的特性に関する試験後に走査のためにCFRP複合材150を取り出すのを不要にする。
 
【0052】
  本発明のそのようなシステムは、CFRP複合材にかかる使用荷重をシミュレートするためのサーボ制御試験システムと、CFRP複合材の3D走査のための走査システム(渦電流センサーおよびガントリシステム)との統合を達成する。該システムは、試験プロセスおよび走査プロセスの両方において膨大な長さの時間を節約するために、CFRP複合材内の欠陥の分析の精度を簡単かつ経済的に高める。該システムは、機械的試験プロセスを中断することなく、試験システム上に取り付けられたCFRP複合材の3D走査を達成することができる。また、該システムは、プローブ52とCFRP複合材の表面との間の規定された一定の間隙を保持する非接触位置フィードバックサーボ制御と、走査中に信号周波数および強度の両方を掃引できるようにするプログラム可能な信号周波数および強度の供給とを提供する。該システムは、制御された歪み条件または荷重条件下にあるときに、欠陥を見つけるためにCFRP複合材被検体を走査し、デジタル画像相関(DIC)を通して局所的な荷重または歪み測定値を分析するためにカメラを組み込む。さらに、機械的試験(CFRP複合材に所望の荷重を印加するか、或いは歪みを加える)とCFRP複合材内の欠陥に関する3D走査を同期させることにより、CFRP複合材被検体の欠陥の増大と機械的挙動との間の相関を確立する。該システムは、スキャナーを用いて特定された欠陥の数または広がりに基づいて、試験終了条件を指定できるようにする。ここで、本発明では、走査システムを自動サーボ制御荷重フレームと統合することによって、走査システムが例示されるが、原理的には、走査システムを手動荷重フレームまたは機械的荷重フレーム上に統合することもできる。
 
【0053】
  これまでの説明は本発明の或る特定の実施形態である。この実施形態が例示のためにのみ説明されることは理解されたい。本明細書における発明はその特定の実施形態に関して説明されるが、本発明の数多くの代替形態、変更形態や変形形態があることは当業者には明らかである。全てのそのような変更形態や改変形態が、特許請求の範囲に記載される本発明の趣旨および範囲、或いはその均等物に入る限り、それらの変更形態および改変形態も含まれることを意図している。それゆえ、広範な添付の特許請求の範囲に入る全ての変形形態、変更形態および代替形態が本発明の範囲に入る。
 
 
【符号の説明】
【0054】
  10    サーボ制御試験システム
  12    アクチュエーター
  14    クロスヘッド組立体
  20    XYZ走査システム
  30    支持柱
  40    取付具組立体
  42    下側取付具要素
  44    下側把持要素
  50    検知プローブ組立体
  52    非破壊検知プローブ
  54    検知ユニット
  60    3Dスキャナー組立体
  62    XYZガントリシステム
  66    レール
  68    支持フレーム
  70    オペレーターコンソール
  72    ホルダー組立体
  80    筐体
  90    結合器
  100    統合システム
  150    CFRP複合材被検体