(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2のデータ処理手段(9、12、1107)は、前記基質の前記処理特性及び前記予測特性を表示するようになっている表示手段を含む、請求項1に記載のシステム(10、11)。
【背景技術】
【0002】
当該技術分野において、土壌なしに無機栄養素溶液を用いて植物を栽培すること(すなわち、無土壌培養)を目的とする水耕栽培システムは公知である。水耕栽培システムにおける植物は、例えば、ミネラルウール、グラスウール、ココピート(コイア)、又はピート厚板などの様々な種類の基質中で栽培することができる。
【0003】
植物はミネラルウールの成長基質中で成長することが知られている。その成長基質は、典型的には、凝集性の差込み部、ブロック、厚板又はマット/ブランケットとして提供され、一般に結合剤を含み、通常は有機結合剤を含み、製品を完全な構造にしている。
【0004】
典型的には、植物の成長過程は2段階で管理される。第1段階は植物を種子から発芽させる「繁殖者」によって管理され、第2段階は「栽培者」によって管理され、その間に植物は成長し収穫が行われる。例えば、トマト植物の場合に、繁殖者は、25〜30mm程度の厚さと約20〜30mmの半径を持つ円筒形の差込み部に個々のトマト種子を植えればよい。種子の発芽後に、繁殖者は差込み部を直方体ブロック内に配置して根系や植物をさらに成長させる。次にブロック内の個々の植物は、それを繁殖者から栽培者に移せる段階になるまで育成される。
【0005】
多くの場合に、各ブロックには1つの植物しか供給されないが、1つのブロックに複数の植物を供給することも可能である。いくつかの例において、ブロック内の単一の植物は、成長の初期段階中に茎を分けて2つに分割されて、2つの植物が1つの根系を共有することになる。別の例において、複数の植物を共に接ぎ木して1個のブロック内で成長させてもよい。
【0006】
繁殖者による個別の差込み部とブロックの使用は、全ての植物にとって必須ではないが、例えば欧州出願特許EP2111746号にいくつかの利点を提供するものとして記載されている。特に小さなサイズの差込み部により、初期の段階にその基質を満杯にすることなく、植物により規則的に散水することができる。
【0007】
その植物を繁殖者から受け取った後に、栽培者はミネラルウールの1枚の厚板の上にいくつかのブロックを置いて、植物成長システムを形成する。ミネラルウールの厚板は、典型的には、植物とともにブロックを受ける上面の開口部及び底面に設けられた排水孔を除いて、箔又はその他の液体を透さない層で覆われている。
【0008】
その後の植物の成長中に、水及び栄養素を含有する液体を直接的にブロック又は厚板のいずれかのシステムに送達する点滴装置を使用して、水及び栄養素が供給される。ブロックと厚板中の水と栄養素は、植物の根によって吸収され、それによって植物は成長する。植物によって取り込まれない水及び栄養素は、基質システムに残るか、又は排水口を通して排水される。
【0009】
成長過程中に、できる限り効率的に水と栄養素を活用したいとの要望がある。その根拠はコストと環境の両方にある。特に栄養素は購入費が高く、一方でその栄養素を含む廃水は、環境の法令により処分するのが困難である。これらの必要性は、原材料(特にリン酸塩などの肥料)が益々希少になるにつれて増大する。その無駄を回避したい要望は、植物の成長条件を改善して、それによりこの方法で植物から得られる果実の収量及び品質を高めたいという願望と一致する。
【0010】
水耕栽培システム(例えば温室)環境は、例えば日照時間、風速、又は風向などの因子を調節する環境制御コンピューターによって制御することができる。環境制御コンピューターはまた、植物の成長、植物の健康状態、基質中の水分及び栄養素の含有量を監視できる。植物の成長基質内の水分及び/又は栄養素の含有量を測定することは知られている。既知のシステム及び装置は、農業用の土壌組成についての有用な情報を提供し、土壌への灌漑を自動的に支援できるが、ミネラルウール基質などの水耕栽培システムでの水及び水/栄養素の分配を効果的に管理する解決策は提供できない。
【0011】
欧州出願特許EP3016492号は、水耕栽培システムでの水及び栄養素の分配を効率的に管理する解決策を提供している。このシステムを使用する場合に、栽培者は(システムに供給すべき栄養素と水の量を表示する)灌漑手段を採用し、システムを監視して、例えば水分量や栄養素の測定値に基づいて灌漑水準を調節する。しかしこの手法の問題点は、灌漑手段が適時には調節されず、(例えば水又は栄養素の)目標水準に到達するのが早過ぎるか遅すぎるかのいずれかである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
水耕栽培システムで植物の成長中に植物の灌漑を管理するために、ユーザーが利用可能なシステムについて改善の継続的な要求がある。特に、環境要因のような急速に変化する因子、又はシステムに使用される植物、基質又はその他の材料の変化に応答して、成長条件の制御を改善することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従来技術の欠点に対処するために、本発明は、水耕栽培システムでの植物の成長条件を制御するシステムを提供する。このシステムは、
植物成長基質の少なくとも1つの特性を測定する少なくとも1つの検出器、
第1のデータ処理手段及び第2のデータ処理手段、及び
データ記憶手段を含み、
前記少なくとも1つの検出器は、植物成長基質の1つ以上の特性を測定し、検出器識別子及び前記測定された1つ以上の特性を前記第1のデータ処理手段に通信リンクを介して送信するようになっており、
前記第1のデータ処理手段は、
前記基質の温度、pH水準、含水量、栄養素含有量、酸素含有量、及び植物パラメータのうちの1つ以上に関する複数の値と、複数の所望の灌漑パラメータとの間の関係を規定する所定の灌漑データをメモリー中に保持し、
各検出器から受信した測定特性を処理して
、前記基質の温度、pH水準、含水量、栄養素含有量、酸素含有量、及び植物パラメータのうちの1つ以上を含む前記基質の処理特性を取得し、
前記処理特性及び前記所定の灌漑データに基づいて、前記成長基質に対する所望の灌漑の投入を示す出力を提供し、かつ
前記基質の前記処理特性を含む処理したデータを前記データ記憶手段に送信するようになっており、前記データ記憶手段は、前記送信されたデータをログデータとして記憶するようになっており、
前記第2のデータ処理手段は、
前記データ記憶手段から
ログデータを受信し、
前記ログデータに基づいて前記基質の予測特性を計算し、
前記基質の前記処理特性と前記基質の前記予測特性との間の差異を判定し、
前記差異に基づいて警報を出力する警報条件入力を受信し、
前記警報条件を前記ログデータの分析評価によって得られる最適の警報条件に調節し、
かつ、
前記差異が
調節された警報条件を満たすと警報を出力するようになっている。
【0014】
当然のことだが、このシステムは、上述のように繁殖段階ならびに成長段階の水耕システムに適しており、言い換えれば、このシステムは繁殖者ならびに栽培者によって使用されてもよい。
【0015】
好都合なことに、本発明による制御システムは、ユーザー(例えば、繁殖者又は栽培者)に、栽培中の非常に重要な時期に彼らの作物を最適に制御しうる能力を提供する。これは、灌漑手段の変更が必要なときにユーザーに警報を出力することにより可能になり、基質の予測特性が適時に到達するのが確実となる。
【0016】
データはその場所内に配置された検出器から取得され、第1のデータ処理手段に送信される。好ましい態様において、検出器は無線センサーである。次にデータは、第1のデータ処理手段からクラウドのようなデータ記憶手段に送信され、経時的にログデータとして記憶される。いくつかの態様において、データ記憶手段及び第1のデータ処理手段は、本明細書で「スマートボックス」と呼ばれることがある単一のユニットすなわち装置の一部であってもよい。別の態様において、データ記憶手段及び第1のデータ処理手段は、例えばクラウドサービスの一部であってもよい。当然のことだが、第1及び第2のデータ処理手段の機能は、例えば同一の装置又はクラウドサービスによって達成されてもよい。
【0017】
例えば、PC又はスマートフォンであってもよい第2のデータ処理手段は、次いでログデータに基づいて基質の予測特性を計算する。「予測特性」とは、ログデータに基づいて予測される特性を示している。例えば、特定の日に栽培者の区画で到達した含水量は、気象条件が同一のままなら、前日に到達した含水量から予測できる。クラウドに一旦保存されると、ログデータは任意の解析手段によって解析されてもよい。
【0018】
特に、処理値と予測値との間に差異があり、その差異が警報条件を満たすときに、例えばユーザーによって設定されてもよい所定の範囲内又は所定の閾値を超えるときに警報が発動される。例えば、警報の発動は、システムの所望の値又は特性(目標とも呼ぶ)を表す「設定値」をユーザーが入力することで設定してもよい。その警報のうちの1つ以上を設定して、ユーザーは、既存のシステムよりも迅速かつ効率的にカスタマイズした灌漑手段を確立することができる。
【0019】
処理特性は、センサーのデータに基づいて、温度などの直接的に測定した特性、又は栄養素含有量などの計算した特性に関連していてもよい。予測特性とは、ログデータ、例えばクラウドに記憶されたデータに基づく特性を示す。言い換えれば、予測値は、類似の一連の条件についてそれ以前に取得された値に基づいている。
【0020】
好ましい態様において、処理特性及び予測特性は、例えばユーザーがそれらを視覚的に比較し、それにより迅速な判定を下し、これらの判定の結果について迅速なフィードバックを取得することが可能となるグラフィカルユーザーインタフェースに表示される。このグラフィカルユーザーインタフェースは、PC又はスマートフォン、タブレットなどの「携帯型通信装置」と呼ばれるモバイル装置で実行されるアプリケーションに属してもよい。例えば、処理特性及び予測特性は、グラフィカルユーザーインタフェース内で隣同士(すなわち並んでプロットされた曲線)に表示されてもよい。特に、ユーザーの判定は、警報の発動水準及び/又は灌漑手段の調節に関連する。ユーザーとグラフィカルユーザーインタフェースとの間の相互作用により、新しいデータに応じて、又は環境因子又は植物もしくは基質又はシステムで使用されるその他の材料への変化などの他の影響因子に応じて、容易かつ集中的に再構成できる成長条件のより柔軟で正確な制御を可能とする。
【0021】
好ましい態様において、警報が発動される差異の水準、すなわち差異が警報の根拠となる所定の範囲又は閾値は、ユーザーによって調節されてもよい。好都合なことに、この柔軟性のある水準は、制御を改善しユーザーの経験を高めることにもなる。
【0022】
第2の検出器データ処理手段は、警報の発動を示す入力を調節するようになっていてもよい。これにより、システム担当者は、栽培者の灌漑制御システムに設定値と計算値を更新して、最良の灌漑手段についてユーザーに自動的に通知することができる。好都合なことに、最適な設定値及び計算値は、ログデータの一部として、経時的にシステムに対し照合されたデータ(例えばグラフ及び計算値)の解析評価によって得ることができる。
【0023】
システム内の携帯型通信装置は、例えば第2のデータ処理手段を備えるスマートフォン又はタブレットであってもよい。したがって、携帯型検出器通信装置は、植物の成長を制御するアプリケーションを実行するのに好都合に適している。あるいは、携帯型通信装置は、受信機と通信する専用の「手持ち式」装置であってもよい。この受信機は、データをデータ記憶手段に直接送信することもできる。
【0024】
携帯型通信装置が検出器と通信している際には、それを「携帯型検出器通信装置」と呼んでもよい。システム内の携帯型通信装置によりさらに、システムの個々の構成要素の確認及び試験を実行することが可能となり、かつユーザーが成長領域外に検出器を配置でき、システムの構成及び性能を確認又は更新するために中央コンピューター又は処理装置に戻る必要なしに出力を確認できるので、システムをより容易に設定することが可能となる。1台以上の検出器をシステムに使用してもよく、好ましい態様として1〜3台又はそれ以上の検出器を備えてもよい。好都合なことに、システムは、より詳細に以下に説明されるように、監視領域内に無線通信で配置されてもよい。
【0025】
携帯型通信装置は、所望の灌漑投入を示す出力に基づいて植物成長基質への灌漑投入を制御するように構成されてもよい。「所望の灌漑投入を示す出力」は、システムの第1の検出器データ処理手段によって提供された成長基質に対する投入パラメータを指す。例えば、灌漑投入パラメータは、水耕栽培システムの環境制御コンピューターへの入力であってもよい。言い換えれば、システムは、所望する目標に時間内に到達するかどうかを判断でき、手段の変更を推奨できるだけでなく、環境コンピューターの灌漑手段を変更してこの推奨に自動的に対処することもできる。
【0026】
好ましい態様において、第1の検出器データ処理手段への検出器によるデータの送信は、10分未満、好ましくは5分未満、より好ましくは3分未満の時間間隔で実施される。これにより、灌漑手段を適時に監視及び制御できる。さらに、検出器は、第2の検出器データ処理手段又はデータ記憶手段にデータを直接送信してもよい。
【0027】
したがって、本発明は、温度(すなわち根の温度)、含水量、及び栄養素含有量などの特性を使用して、例えば基質内の流体の導電率を判定し、個々の要素水準と対照して人工基質内の栄養素含有量を正確に判定してもよい。「栄養素含有量」はまた、例えばセンサーによって測定できる個々の栄養素含有量を指す。
【0028】
したがって、既存のシステムとは異なり、本発明は水耕システムの無土壌培養に特有の水廃棄問題に対処する柔軟な解決策を提供する。上述のように、水耕システム内の基質は、水を無制限の基質容積にわたってあらゆる方向に拡散できる土壌及び土壌中の移動とは異なり、一定の水量を持つことが多い。水耕栽培システムの一定の水量は、典型的には約1〜30リットル/m
2、最も一般的には4〜15リットル/m
2である。植物ごとに、一定の水量は典型的には0.5〜10リットルである。水耕栽培システムでの一定の水量はまた、土壌中の植物の発根面積と比較するとかなり少ない。
【0029】
水耕栽培システムの無土壌基質は、土壌の頂面に、コンクリートの床に、溝に、移動台などに配置してもよい。土壌のない成長との組合わせでの比較的少ない水量により、栽培者は、過剰な水を収集し、その水を消毒し、再利用して、新たな栄養溶液に使用することが可能になる。排水される水の量は比較的少ない(例えば、夏の日に0〜60m
3/ヘクタール)。(例えばこの目的のために特定のポンプを使用する)既存の消毒システムでは、収集した排水は、典型的には24時間以内に消毒でき、次の日には使用する準備ができている。
【0030】
例えば人工の基質では、吸水のために植物により加わる吸引圧は、一般的に0〜2pFの範囲にあり、最も一般的には0〜1.5pFの範囲にある。この範囲での植物による吸水量には制限はないが、この範囲での差異が植物中の乾燥物の分布の違いを決めることになる。対照的に、農業用土壌では、通常のpF範囲はpF2〜pF4.2である(植物により加わる吸引圧は、100〜16000気圧である)。この範囲では、乾燥重量の分布への影響ではなく、植物への水の利用可能性が話題となる。
【0031】
携帯型通信装置はさらに、システムの検出器から検出器データを受信し、かつ検出器データを第1の検出器データ処理手段に送信するようになっていてもよい。これにより、ユーザーは、成長領域内の検出器の出力に関する、又はその検出器状態での検出器データを確認し、さらに受信したデータを第1の検出器データ処理手段に転送して、その後の解析のためにデータを記憶し、あるいは補正後のシステムへの入力データ又は構成データを更新し、システムの構成要素の設置又は構成を更新できる。
【0032】
第1の検出器データ処理手段はさらに、各検出器から受信した測定特性を処理して各検出器に関連する基質の栄養素含有量を判定し、かつ基質の計算された栄養素含有量に基づいて、成長基質に対する所望の灌漑投入を示す出力を提供するようになっていてもよい。検出した放射線の水準や水の水準のようなその他の入力が一般に使用されているが、栄養素含有量に基づいて灌漑投入を操作することは公知ではない。灌漑を操作するための栄養素水準を使用するのは、少なくとも時折、含水量水準が栄養素水準に有害な影響を及ぼすのなら、特定の時点で含水量水準を維持すべきではないという認識を反映している。例えば、基質内で含水量水準を低下させる意図的な試みがなされると、栄養素水準が上昇する危険性がある。そのため、含水量水準の管理を実施する際に栄養素を無視することは不適切であると認識されている。好ましい態様において、栄養素含有量を示す特性は、成長基質中の流体の導電率である。
【0033】
携帯型通信装置はさらに、システムの検出器から検出器識別子を受信し、検出器に関連する検出器データを受信し、かつ「中央検出器処理手段」とも呼ばれる第1のデータ処理手段に検出器識別子及び検出器データを送信するようになっていてもよい。これにより、中央検出器データ処理装置手段が存在する必要はなく、システムの中央処理装置手段への検出器データの柔軟な入力が可能になり、それにより構成は成長領域外でより効率的に実行できる。
【0034】
携帯型通信装置はさらに、ユーザー入力によってユーザー定義した検出器データを受信し、ユーザー定義した検出器データを検出器識別子と関連付け、検出器識別子及びユーザー定義した検出器データを第1の検出器データ処理手段に送信するようになっていてもよい。ユーザーデータを入力することにより、ユーザーは、検出器用のデータを定義し、そのデータを遠隔地用の第1の検出器データ処理手段に送信することができ、それにより、成長領域外でより効率的に構成を実行できる。
【0035】
検出器識別子に関連するデータは、検出器の位置データ、検出器の電力状態、検出器と第1の検出器データ処理手段との間の通信リンクの状態、検出器によって測定された成長基質の種類及び/又はサイズを示す情報、及び/又は検出器によって測定された成長基質の1つ以上の特性のうちのいずれか又はすべてを含んでもよい。上記データの一部又は全部は、検出器によって送信されるか、又はユーザーによる携帯型検出器通信装置への入力のいずれかであってもよい。
【0036】
携帯型通信装置はさらに、測定特性を検出器から受信し、検出器の検出器識別子と測定特性と関連付け、かつ検出器識別子及び関連付けられた測定特性をシステムの第1の検出器データ処理手段に送信するようになっていてもよい。これにより、ユーザーは成長領域内の検出器出力を確認し、さらにその出力を中央処理手段に転送してその後の解析のためにデータを記憶し、又は装置又はシステムの構成要素の構成の修正又は更新後にシステムへの入力データ又は構成データを更新することができる。
【0037】
携帯型通信装置は、装置又は検出器の位置データを決定する位置決定手段をさらに備えてもよく、さらに検出器の識別子を決定された位置データに関連付け、検出器識別子及び関連付けられた位置データをシステムの第1の検出器データ処理手段に送信するようになっていてもよい。これにより、第1の検出器データ処理手段に戻る必要なく、システムの1台以上の検出器の位置を第1の検出器データ処理手段に送ることが可能になる。
【0038】
本発明はさらに、本発明によるシステムを使用して植物成長条件を制御する方法を提供する。
【0039】
この方法はさらに、上述のように本発明によるアプリケーションを実行している携帯型通信装置に警報条件入力を入力することを含んでもよい。
【0040】
本発明によるシステムで使用するのに適合した携帯型通信装置、例えばスマートフォン又は専用の手持ち式装置がさらに提供される。好ましくは、使用時には、携帯型通信装置は本発明によるシステムの一部を形成する。
【0041】
本発明はさらに、電子通信装置のメモリー内に搭載可能であり、電子通信装置によって実行されるとそれを特許請求の範囲に記載の携帯型検出器通信装置とする命令を含むコンピュータープログラム製品を提供する。
【0042】
本発明はさらに、本発明によるシステム内で使用されるログデータを処理するデータ解析のためのプラットフォームを提供する。好都合なことに、これにより、ユーザーは解析されたデータに基づいて専門家の助言を受けることができる。
【0043】
システムの検出器により監視されるいくつかの因子は、単独で又は栄養素水準と組合わせて影響を及ぼしてもよく、それらの因子は、大規模な植物成長システムでは異なっていてもよい。本発明のシステムにより、低コストのシステムを実行し、装置又は検出器を温室又は他の成長領域の異なる領域に迅速かつ容易に再配置することがユーザーに可能となり、それにより各領域に新規の機器を購入する必要もなく、状況を迅速かつ容易に複数の領域で監視できる。
【0044】
したがって、本発明は、厚板内の栄養素水準を綿密かつ確実に監視し、この水準に応じて注ぐ水を制御するのに使用できる迅速で柔軟なフィードバックシステムを提供する。これにより、各植物の環境を適時に制御することができ、所定の水及び/又は栄養素の供給に対して最大の成果が得られる。
【0045】
水及び/又は栄養素の分配の制御を改善する利点は、植物含有のブロックが厚板上に新規に配置される初期段階において特に重要である。この時点で、第1の層が十分な水と栄養分を含んで厚板内に良好な根を確保することは重要である。これにより、明確に根が成長することが可能になり、最適で健康な植物が確実に成長する。有益なことに、本発明の厚板は十分な水と栄養素を供給するだけでなく、根の近傍の水と栄養素の水準を厳密に制御することができる。これは、果物及び/又は野菜の成長を低下させる可能性がある植物の過剰摂取を避けるのに役立つ。
【0046】
本発明のシステムは、(繁殖者及び同様に栽培者により)任意の植物成長システムで使用することができ、天然又は人工の材料を含んでもよく、かつ温室、プラスチック製のトンネル内、又は外部環境中などの管理された環境で実施してもよい本質的に任意の植物成長基質を用いて実施することができる。本発明の利点は、本明細書に記載された成長条件が監視される本質的に任意の農業用途又は園芸用途において実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1を参照すると、第2の密度の第2の層の上に配置された第1の密度の第1の層を持つミネラルウール厚板1が示されている。厚板1は6.8リットルの容積であるが、より一般的には好ましい態様として、その容積は3リットル〜20リットルの範囲、より好ましくは5リットル〜15リットルの範囲、最も好ましくは5リットル〜11リットルの範囲であってもよい。いくつかの厚板は6リットル〜8リットルの範囲の容積であってもよい。あるいは、容積は、例えば3リットル〜15リットル、又は3リットル〜10リットルの範囲にあってもよい。別の好ましい厚板は9リットルの容積である。厚板は、成長条件が互いに異なっていてもよい底部層及び頂部層を含む複数の層を含んでもよい。
【0049】
図1に示す態様の場合のように、底部層の高さは頂部層の高さよりも大きいことが好ましい。例えば、底部層と頂部層の高さの比は、1:(1〜3)、又は好ましくは1:(1.2〜2.5)であってもよい。より好ましくは、この比は1:(1.2〜1.8)である。
【0050】
好ましい態様の厚板で2つの異なる密度をその比較的小さいサイズと共に使用することは、水及び栄養素の保持を促進し、またこれらが厚板全体にわたって実質的に均一に分布することを確実にすることが分かった。
【0051】
次に
図2を参照すると、厚板1はその上面に配置されたブロック2と共に示されている。厚板1は、ミネラルウールの周りに液体不透過性のカバーをさらに含み、そのカバーは2つの開口部を持つ。第1の開口部は上面にあり、厚板1のミネラルウールとブロック2との間の接触が可能となっている。第2の開口部は下面にあり、排水孔3として作用する。
【0052】
ブロック2及び厚板1は、同一又は類似の材料で形成されるのが好ましい。したがって、厚板1の材料に関する以下の説明は、ブロック2にも同様に応用できる。特に、ブロック2は、後述のストーンウールと結合剤及び/又は湿潤剤とを含んでもよい。
【0053】
ブロック寸法は、成長させる植物に応じて選択することができる。例えば、コショウ又はキュウリ植物のためのブロックの好ましい長さ及び幅は10cmである。トマト植物の場合、長さは15cm、さらには20cmに大きくする。ブロックの高さは、好ましくは7〜12cmの範囲、より好ましくは8〜10cmの範囲である。
【0054】
したがって、コショウ及びキュウリの好ましい寸法は、10cm×10cm×7cm〜10cm×10cm×12cm、より好ましくは10cm×10cm×8cm〜10cm×10cm×10cmの範囲である。
【0055】
図3は、
図2に示すようなブロック2内に配置された差込み部4内に位置した植物5を示す。ブロック2と同様に、差込み部4は、典型的には厚板1に関連して後に記載される結合剤及び/又は湿潤剤を備えるミネラルウールで形成される。
【0056】
いくつかの態様においては、差込み部4は設けられず、種子がブロックの穴の内部に直接配置され、そこから植物5がその後成長する。この方法が取られる植物の例はキュウリである。
【0057】
好ましくは、植物5は、トマト植物などの果物又は野菜植物である。あるいは、植物は、例えばキュウリ、ナス又は甘唐辛子植物であってもよい。本発明は、一本の植物からの果物又は野菜の収量の増加を促進することができ、植物が成長している基質の成長条件の制御の精度を増加させて、その果物又は野菜の品質を向上できる。
【0058】
上述のように、厚板1は、好ましくはミネラルウール厚板である。使用されるミネラル繊維は、ガラス繊維、セラミック繊維、バサルト繊維、スラグウール、ストーンウールなどのような任意の人造ガラス質繊維(MMVF)であってもよいが、通常はストーンウール繊維である。ストーンウールは一般に、ミネラルウールのその他の通常の酸化物成分と共に、少なくとも3%の酸化鉄含量及び10〜40%のアルカリ土類金属(酸化カルシウム及び酸化マグネシウム)含量を有する。これらはシリカ、アルミナ、通常少量で存在するアルカリ金属(酸化ナトリウム及び酸化カリウム)であり、またチタニア及びその他の少量の酸化物も含むこともできる。一般に、この製品は、成長基質の製造に関して従来から公知である任意の種類の人造ガラス繊維から形成することができる。
【0059】
ミネラルウールは、典型的には、結合剤組成物、さらに湿潤剤を含む結合システムによって結合されている。
【0060】
図4は、
図1〜3の厚板1、ブロック2及び差込み部4と灌漑装置とを含む植物成長システムを示す。灌漑装置6は、水と栄養素の溶液をシステムに、ブロック又は厚板のいずれかに直接供給するように配置されている。好ましくは、灌漑装置は水及び/又は栄養溶液を直接ブロック2に供給するように配置されている。ブロックは、(
図2を参照して上述するように)排水孔3から離れて配置されるので、灌漑装置からの溶液は、排水孔3に達する前に厚板に沿った距離の50%以上を通過する必要がある。あるいは、灌漑装置は、厚板1に直接水及び栄養素溶液を供給してもよいが、ブロックに隣接するか、又は排水口3に対してブロック2の遠位側のいずれかに供給するように配置してもよい。
【0061】
灌漑装置6は、栄養素貯蔵槽と水貯蔵槽に別々に接続されてもよく、栄養素と水の適切な割合を選択するように制御されてもよい。あるいは、灌漑装置が貯蔵槽にあるのと同じ割合の水及び栄養素を含む液体をシステムに提供するように、単一の栄養素と水の一体化貯蔵槽を設けてもよい。
【0062】
灌漑装置の制御は、本発明の態様に従って制御システム又は制御方法を使用して有効に実施することができる。制御システムは、各々がその上に植物含有ブロック2が配置されている厚板1を含む複数の植物成長システムに栄養素及び水を供給する灌漑装置を制御することができる。参照により本明細書に組み込まれている欧州出願特許EP2953447A号に記載されているように、制御システムは、1つ以上の厚板中の検出された水の水準と栄養素の水準に基づいて制御されてもよい。検出された含水量水準及び/又は1つ以上の厚板内の温度に基づいて、追加の制御を実行してもよい。
【0063】
一態様において、これらの水準を検出するのに使用される検出器7の位置を
図5に示す。好ましい検出器の例は、参照により本明細書に組み込まれる欧州出願特許EP2953446A号に記載されている。検出器は、典型的には、本体から厚板内に延びる1つ以上、通常は3つ又は6つのプローブを共に備える本体部分を含む。プローブは、典型的にはステンレス鋼又は他の導電性材料から作られ、基質の温度、抵抗及び/又は静電容量を解析して基質中の含水量及び/又は電気伝導度(EC)水準を測定するのに使用される。EC水準は、それらの水準がその溶液のイオン含有量を反映するので、厚板1中の溶液内の栄養素水準を推測するのに使用することができる。
【0064】
好ましくは、EC水準は1.0mS/cm〜812mS/cmの範囲に、より好ましくは2mS/cm〜7mS/cmの範囲に維持される。好ましいEC水準は作物の種類に従って選択されてもよい。ECが低い(例えば1.0mS/cm未満)場合には、植物には栄養素が不足していることになる。ECが2mS/cm〜3.5mS/cmの範囲にある場合には、これは生産量を最大化することになる。ECが僅かに高い(例えば、3.5mS/cm〜5mS/cmの範囲のEC)場合には、果実品質が向上する。ECが高すぎる(例えば、コショウとキュウリでは5mS/cm超、トマトでは12mS/cm超)場合には、尻腐れ病のような果実品質の問題が発生することになる。ECが高いことは、基質に高水準のナトリウムと塩素が含まれ、これは収率の低下につながり、温室から水を廃棄する必要があることを意味する。
【0065】
従来技術のシステムにおいて、検出器7は厚板1の上面に配置され、プローブは厚板を貫通して垂直に延びている。この手法は、厚板1の垂直範囲にわたって水分又は栄養素の全体的な含有量を反映する測定を行うことを意図している。しかしながら、実際には、そのプローブは、典型的に厚板の頂部などの厚板の1つ以上の領域内で、条件によっては不均衡から影響を受けた結果が戻ってくる。この不一致が生じ得る1つの理由は、厚板1にわたるEC水準の変動のためであり、それは例えば含水量が計算される抵抗及び/又は静電容量のような測定した電気的特性に明らかに影響を及ぼす。
【0066】
従来技術の手法では、厚板1上に通常配置されるブロック2の数により、さらなる問題が生じてくる。特に、システム内に厚板1の一端にある排水孔3の位置により潜在的な非対称性がある場合に、各ブロック2に対して機能的に等しい厚板1上部の位置を見出すことが困難であることが多い。
【0067】
本発明のシステムにおいて、これらの問題を克服することができる。特に、
図5は、検出器7が厚板1の側面に配置されている(すなわち、検出器7の本体部分は厚板の垂直面に対して配置され、プローブは水平に延びている)ことを示している。厚板1内の含水量分布及びEC分布が改善されているために、この手法は有効である。好ましい態様の厚板1ではこれらは実質的に均一であるので、プローブの水平方向への広がりは正確な読取りを提供する。
【0068】
図5の厚板1は複数の検出器7と共に示されているが、実際にはこれは全ての好ましい態様に当てはまるわけではない。
図5に示される検出器7の配列は、含水量分布及びEC分布の測定を可能にし、厚板1の特性を解析するのに使用されており、以下に詳述されるような結果を提供する。しかし実際には、厚板毎に1台の検出器7しか必要とされず、検出器は成長領域内の異なる厚板の周りに分布されて、その領域の全体的な成長条件の例示的な表示を得ることができる。この検出器7は、ブロックから排水孔3に向かってずれた位置に配置された水平方向に延びるプローブを含むことが好ましい。
【0069】
参照により本明細書に組み込まれる欧州出願特許EP3016492A1号に記載されているように、検出器7を使用して、
図6に示すような制御システム10を使用して厚板1に供給される水及び/又は栄養素の量を制御することができる。制御システムはまた、灌漑装置6によって厚板1に供給される溶液内の栄養素の濃度を変更してもよい。
図6から分かるように、検出器7は厚板1内のデータを観察し、ネットワーク8を介して制御ユニット9及びネットワークと通信する携帯電話、スマートフォン、タブレット又は類似の装置のような携帯型通信装置12にこのデータを通信する。データはクラウドサービスなどのデータベースにアップロードされる。次に制御ユニットは、厚板1に水及び栄養素を供給するために、ネットワーク8経由で灌漑装置(点滴装置)6を駆動する。制御ユニット9は、所望の灌漑手段によりプログラムすることができ、自動的に灌漑が厚板1中の栄養素水準を制御するように確実に実行でき、かつこの方法で含水量水準も制御できる。このようにして、所望の結果を提供する灌漑プロセスの自動制御が達成される。
【0070】
システムは、
図7に関連して後述するように、スマートフォン、タブレットなどの1つ以上の携帯型通信装置12、及び/又は受信機(図示せず)と組み合わせた専用の「手持ち式」装置を備えてもよい。例えば、ネットワークに接続された携帯型通信装置12又はPCは、以下により詳細に説明するように制御方法を実行するアプリケーションを作動するようになっていてもよい。
【0071】
典型的には、各制御システムは多数の厚板1を含む。各厚板1に配置された検出器7があってもよく、あるいは代表的な結果を提供するように選択した厚板1に配置された検出器があってもよい。検出器1は、それらが一定の間隔で制御ユニット9に結果を提供できるように、厚板1に固定的に取り付けられている。例えば、検出器は、1分、5分、又は別の適切な時間間隔で結果を提供してもよい。これにより、システム内の厚板は常時又は定期的に監視されて、それらが適切に灌漑されるようにできる。
【0072】
システムの灌漑装置6は、特定の灌漑手段を適用するように制御されてもよい。例えば、その手段は、生殖成長及び栄養成長を通して植物を操作するように設計されたいくつかの異なる段階を含んでもよい。当該技術分野で理解されているように、生殖成長は、花/果実の生成が促進される成長型を指し、植物の栄養成長中には、より高い割合で葉及び他の緑色要素が生成される。植物が相対的に水を欠いている場合には生殖成長が促進されるが、栄養成長は豊富な水の供給により促進される。栄養成長は植物の全体的なバイオマスのより高い増加を生み出し、生殖成長は果実又は花の生成に寄与する成長の割合を増加させる。
【0073】
好ましい含水量水準がその途上に変化する灌漑手段を適用して、これらの異なる成長型を利用することが知られている。この灌漑手段によれば、植物成長基質は、所望の含水量水準を達成するように毎日水を供給される。基質の含水量は、基質が完全に飽和したときの基質の含水量の百分率として測定される。したがって0%の値は乾燥した基質を表し、100%の値は完全に飽和した基質を表す。
【0074】
典型的には、この種の灌漑手段はいくつかの異なる段階を含む。第1に、厚板1にブロック2を置く前に、厚板1は典型的には水で飽和又はほぼ飽和される。これにより、ブロック2が最初に厚板1に置かれたときに、厚板1への根の成長が確実に促進されることを支援する。しかしこの時点で、栽培者は植物5ができるだけ早く確実に実を結ぶことを切望している。これを達成するために、栽培者は「生殖刺激」(すなわち生殖成長を開始するための刺激)を与えることを目指している。これは、灌漑手段の最初の期間中に、所望の水分量を再度増加させる前に最小水準まで低下させることで実施される。その原理は、含水量の低減が植物の生殖成長を促進し、それにより可能な限り早い時期に実を結ぶ植物の開花を促進することにある。
【0075】
生殖刺激が与えられた後に、栽培者は、現在成長している果実を支える葉及び植物構造を取得するために、植物が主に栄養成長が持続可能な段階まで戻ることを望んでいる。したがって、灌漑手段の第1期間の終了に向かうにつれ、所望の含水量を増加させる。所望の含水量水準は、それが灌漑手段の第2期間中に実質的に一定に保たれる持続可能な値に達するまで増加させる。
【0076】
第2期間では、より多くの栄養成長が、基質中のより高い含水量により促進される。第2期間は、夏の季節にほぼ対応し、その間に比較的高い量の日光が植物からより速い速度で蒸気が発散する。したがって、比較的高い量の水を植物に供給する必要がある。成長は他の期間よりもこの期間中に栄養成長へ操作されて、速度はこの操作で制御されるが、果実は成長し続けることを認識すべきである。季節が秋それから冬になるにつれて、蒸散速度は減少する。その結果、基質中に同じ含水量を維持することはもう必要ではない。さらに、この段階では、植物がサイクルの終わりに達する前に、さらなる果実の成長を促進することが望まれる。これらの両方の理由から、灌漑手段は、含水量水準を低減する第3期間を含んでもよい。その低減率は比較的緩やかにする。
【0077】
第3期間中の含水量を低減すると、植物の生殖成長を促進し、それにより有用な果実が植物から取得できる季節が長くなる。
【0078】
したがって、植物から得られる果実の収量を増加させるために、灌漑手段を用いて植物を生殖成長状態と栄養成長状態との間で操作するように試みることができる。従来、このプロセスは、基質内の含水量水準を所望の水準に操作して実施されてきた。しかしながら現在では、その制御は最適な成長条件を提供するのに十分ではないことが分かっている。特に植物の成長を阻害できるものと見られていた含水量水準の低減は、栄養水準の増加をもたらすことができる。したがって、本態様において、厚板に供給される水の水準は、不必要な影響を回避するように栄養水準に依存して制御される。
【0079】
図7は、複数の検出器1101(センサーとも呼ばれる)、受信機1102、第1の検出器データ処理装置1103(特定の態様において、中央検出器データ処理装置又はスマートボックスと呼ばれる)、信号変換器1104(「変換器」)、ならびに携帯型通信装置1105及び12を含むシステム11を示す。
【0080】
この例において、第1の携帯型通信装置1105は、無線技術を使用して受信機1102と通信する専用の「手持ち式」装置である。この例において、第2の携帯型通信装置12は、受信機1102を必要としないスマートフォンである。
【0081】
システムはまた、クラウドサービス1120などのデータベースを含み、中央検出器データ処理装置1103は、クラウドからデータセットにアクセスし、処理のためにそのメモリーに一時的に記憶されるデータを検索するようになっている。データは、検出器1101から受信機1102へ、及び受信機1102からスマートボックス1103へ送信されてもよい。スマートボックスは、生データを処理して処理値を取得する。例えば、検出器(すなわちセンサー)は基質の特性を測定でき、スマートボックスは未処理データを処理又は変換し、データはクラウドに送信されて、ログデータとして記憶される。
【0082】
図7から分かるように、データ通信は双方向である。したがって、データはスマートボックス1103からクラウド1120へ、又はクラウド1120からスマートボックス1103へ送信されてもよい。当然のことであるが、他の態様において、
図7に示すようにデータは受信機及び/又はセンサーから直接クラウドへ送信されてもよい。その態様において、本明細書で説明されるようなスマートボックスの機能は、例えばクラウドサービスにおいて、栽培者の場所から遠隔で実行されてもよい。言い換えれば、栽培者の場所の装置でこれが実行されるか、又は遠隔の装置で実行されるかにかかわらず、重要なのはその装置自体ではなくスマートボックス装置の機能性である。
【0083】
この例において、1つの携帯型通信装置しかユーザーに警報するのに使用されないことは当然のことであるが、システムは、スマートフォン12と専用の手持ち式装置1105の両方を備える。また当然のことであるが、アプリケーションにより発動された警報は、例えばユーザーのPCなどのユーザー端末に送信された電子メール又はメッセージによって、携帯型通信装置を使用せずとも、任意の手段によってユーザーに送信できる。
【0084】
しかしながら、携帯型通信装置は、適時の警報を確実にユーザーに届けるという利点を持つ。スマートフォン12は、クラウド1102と無線で通信することができ、以下に詳細に説明されるようにグラフィカルユーザーインタフェースを含むアプリケーションを実行することができる。手持ち式装置は受信機1102を必要とし、センサー1101から記憶されたデータをダウンロードできる。別の態様において、スマートフォンはセンサーを検査する手持ち式装置として、かつ本発明に従ってアプリケーションを実行する処理装置としての両方として、ユーザーに警報を発しグラフィカルユーザーインタフェースの表示するように機能できる。
【0085】
システムはまた、成長基質中の水及び栄養素の送達を制御するために、環境コンピューター1106に接続できる。ラップトップコンピューター、デスクトップコンピューター、移動体通信装置又は他の電子インタフェースのようなユーザー端末は、1107のように物理的又は無線ネットワークを介してシステムに接続されてもよい。本発明のシステムは上記要素の一部又は全部を含んでもよく、本態様に関するそれらの説明は、記載された構成要素及び/又は特徴項目の副次的な組合せを用いて本発明を実施できるので、いずれか又はすべての要素が必須の要素であることを意味するものではない。
【0086】
システムの各検出器又は各センサー1101は、検出器が植物成長基質上に配置されるか、それと接触するか、又は少なくとも部分的にその内部に挿入されるときに、植物成長基質の温度、含水量、pH水準及び栄養素含有量などの基質の少なくとも1つの特性を測定することができるようになっている。検出器は、特定のシステムでは、個々の栄養素及び温度を直接測定し、例えば基質の含水量、pH水準又は栄養素含有量を計算することができる。しかし本発明のシステムでは、検出器が基質の温度、含水量、酸素含有量、全体の栄養素含有量、個々の栄養素含有量(カルシウム、カリウムなど)、根パラメータ、植物パラメータ又はpH水準を示す関連特性を読み取り、記録され送信されたパラメータの変換が、制御され、管理され、検出器又はセンサー1101から中央及び遠隔で実行されるように、好ましい態様のスマートボックスのような遠隔プロセッサーにその特性を直接送信することが好ましいことが見出された。一般に、導電率(EC)を全体的な栄養素状態の設定値として使用することができる。しかしながら、栄養素の個々の測定は、例えばアンモニアと硝酸塩の間の濃度がどのように関連するかを明確にするような個々のバランス要素を検出するために重要な場合もある。
【0087】
検出器はまた、質量分析による突出物又は微生物などの他の関連する植物パラメータを判定するようになっていてもよい。植物パラメータは、例えば、長さ及び幅などの物理的な根パラメータだけでなく、根の周囲のpH(取込みプロセスに関連する)、根による化学的酸素使用量、又は例えば成長状態としてのエチレンの生産を指してもよい。植物の測定値には、例えば、光合成、葉の面積、長さ、茎の太さ、頭の厚さ、茎の流れの中のECを含んでもよい。
【0088】
上記の特性を示す特性の例は、含水量を示す静電容量又は栄養素含有量を示す導電率を含むことができる。全体の栄養素水準、又は個々の栄養素水準を示す特性は、導電率の値から導き出すことができる。厚板内の空気含有量はまた、知られているように、厚板の体積、その繊維密度、含水量及び栄養素含有量に関連するので、間接的に測定することもできる。したがって、空気含有量は、これらの特性が測定されているときに計算できる。例えば、厚板の体積が11リットルの場合には、いくつかの例では、2%が繊維であり、98%が細孔である。含水量が60%の場合には、細孔容積−含水量、すなわち98%?60%=38%が空気量となる。11リットルの38%すなわち4.18リットルが空気となる。温度は、直接測定して直接送信してもよく、検出器又はセンサーから送信後に最小限の変換が必要か、又は変換の必要はない。
【0089】
本発明のスマートボックス又は第1の検出器データ処理装置、又はシステムの手持ち式装置での表示特性の送信及び実値の計算は、検出器又はセンサー1101における電子機器の性能要件及び関連コストを、計算が検出器又はセンサー自体で行われる場合よりも低く維持するのに役立つことができる。さらに、これにより、必要となる可能性がある補正及び変換のための任意の較正係数の集中管理が可能になり、さらにシステム全体の測定及び変換プロセスの精度の向上が可能になる。またこれにより、中央制御装置で処理を実行することができるので、検出器での処理が少なくて済むために、検出器1101の電源への負担を軽減して検出器の電池寿命を延ばすことができ、これは、例えば、本線接続、太陽電池、又は風力電源のより実態に即した又はより長持ちする電源、又はより実態に即した電池を備えることができる。これらの要因はまた、検出器1101の重量を低減する助けになることができる。これにより、検出器を所定の位置に保持する特別の取付け装置又は保持手段を必要とせずに、検出器1101を植物成長基質の上に又は内部に配置することが可能になる。
【0090】
好ましい態様のセンサー又は検出器のデータは、電子通信のための既知の手段であるRFID〜UHF(Mhz/Ghz)帯域を利用して、間隔をおいて、好ましくは3分ごとに特定の周波数で通信される。有用な時間間隔は、必要とされる更新の頻度及びユーザーの要求に応じて、例えば20秒〜10分の間で変更できる。
【0091】
特定の態様において、検出器は、その特性を測定するように植物成長基質に挿入される複数の細長いプローブ1108を含んでもよい。検出器は、実質的に上面であってもよい植物成長基質の表面からある設定距離で細長いプローブ1108を維持するようになっているガイド要素又はプレート1109をさらに含んでもよい。限定された電子機器、軽量の電源、及び簡単な取り付け機構の使用により、1台以上の検出器を容易に移動可能にし、それによって温室又は灌漑領域などの植物成長領域内の複数の場所に最小限の労力で、かつ最小限の再取り付けの実行手順で容易に配置できる。
【0092】
検出器又はセンサー1101は、好ましい態様においてスマートボックスとして知られている中央検出器データ処理装置1103と、又はシステムに関して説明された携帯型通信装置と通信リンクを介して通信するようになっていてもよい。通信リンクは直接有線接続によるものでもよい。しかしながら、検出器の移動が容易になり設置労力が最小になるので、無線接続の使用が好ましいことが見出されている。無線通信は、中央検出器データ処理装置1103と直接に通信することができ、この中央検出器データ処理装置は無線通信機能を備える。しかしながら、検出器1101から無線通信を受信し、任意に無線通信を送信するように、別個の無線受信機1102を設けることが好ましい場合がある。受信機1102は、イーサネットのような物理リンク、ケーブル接続、又は中央検出器データ処理装置1103との無線リンク1110を介して接続されてもよい。受信機及びスマートボックスの両方に、電力を供給する電池パックを設けることができる。これはスマートボックス中央検出器データ処理装置1103に内蔵されてもよい。
【0093】
無線通信は、800〜1000MHz又は2.4GHzの範囲のRFID〜UFH帯域などの電子通信で通常使用されるような既知の技術によって設けられてもよい。しかしながら、代わりに例えばIEEE802.11などの無線通信手段が使用されてもよい。システム内の様々な装置間の物理的接続は、銅線、光ファイバー、及び必要に応じて移動データ通信ネットワークを含む電子及びコンピューター関連通信で一般に公知の他の適切な通信手段によるイーサネット接続を介してもよい。
【0094】
中央検出器データ処理、すなわちスマートボックス装置1103は、少なくとも1つのプロセッサーと少なくとも1つのメモリーとを含む。メモリーは、データベース内に又は別々のデータファイルとして、あるいは任意の適切なデータ記憶手段に、1つ以上の灌漑手段又はサイクルに関連する1つ以上のデータファイルを記憶することができる。好ましくは、データセットは、ログデータとして経時的に照合され、クラウドサービス1120などのデータベース内に記憶される。スマートボックス装置1103は、クラウドからのデータセットにアクセスして一時的に記憶されるデータをその処理のためにそのメモリー内で検索するようになっている。
【0095】
データセットは、検出器によって提供された測定パラメータと、所望の灌漑パラメータとも呼ばれる所望の灌漑出力との間の関係を提供することができる。所望の灌漑出力は、灌漑手段を規定するパラメータを表す。例えば、灌漑出力は、所望の灌漑サイクル、灌漑機器への単純なオン/オフ指示に関連し、又は灌漑の流速、灌漑サイクルのオン期間及びオフ期間の長さを規定する灌漑サイクル、及び灌漑サイクルを適用すべき時間長さなどのさらなる詳細を含んでもよい。好ましい態様は、1つのデータベースを含むが、より多くの、例えば2、3又は4つのデータベースを含んでもよい。第1のデータベースは、未処理の記録されたパラメータを保持し、第2のデータベースは、含水量、導電率及び温度などの特性について、変換後の変換パラメータを保持してもよい。
【0096】
1つ以上、好ましくは2つのモデルもまた、装置1103のメモリーに保持される。第1のモデルは基質モデルとして知られていて、未処理の検出器又はセンサー出力データを含水量、導電率及び温度の真値に変換する命令を含む。装置1103に保持されるさらなるモデルは、灌漑モデルと呼ばれることがあり、さらなる基質の灌漑サイクルを出力できるように、2つの灌漑サイクル間の含水量の減少を計算すること、又は解析、提示又は比較のためにデータを配置することなどの新しい値を計算する命令を含む。このモデルはまた、単一のデータベースに纏めることもできる。中央検出器データ処理装置からの他の出力は、経時的に検出器から収集され、及び/又はその検出器又は各検出器の異なる位置に関して表示された集約データを含んでもよい。
【0097】
したがって、データ処理装置1103のプロセッサーは、検出器によって測定されたパラメータに関する検出器出力データを受信し、検出器出力データを処理して成長基質の温度、含水量、pH水準及び栄養素含有量のうちの1つ以上を選択し、集約された検出器データ、所望の灌漑手段又は灌漑指示を出力するようになっていてもよい。
【0098】
第1の(「中央の」)データ処理装置1103はまた、環境コンピューター1106及びユーザー端末1107の一方又は両方に接続されていてもよい。環境コンピューターは、成長領域での放射、温度、湿度など様々な環境因子を監視及び制御するようになっていてもよい。処理装置1103と環境コンピューター1106との間の接続1111は、無線、物理的、又はイーサネット又は他のコンピューターネットワーク接続であってもよい。しかし場合によっては、中央処理装置1103及び環境コンピューター1106は、単一の装置に統合されていてもよく、共通のハードウェア装置で実行する別々の論理的コンピュータープログラムを単に表していてもよい。この場合に、2つの要素間の通信は、ハードウェア装置内のプロセッサーバスやメモリーなどのハードウェア内の内部通信手段を介する、あるいは装置上で実行している論理コンピュータープロセス間で機能及び変数を送ることによる単なる通信であってよい。そのように、中央検出器データ処理手段1103及び環境コンピューターは、共通の計算装置で別々の論理プロセスとして実行されてもよい。したがって、本システムは、本システムが灌漑及び/又は施肥を制御するように、環境コンピューターと共に機能することができ、一方で環境コンピューターは、暖房、換気、及び/又は空調などの環境条件を必要に応じて制御してもよい。
【0099】
別の方法において、特定の状況ではアナログ入力及び出力接続により環境コンピューターと通信することが必要となる。この場合に、物理的接続を介して中央検出器データ処理装置1103に接続でき、又はデータ処理装置内に一体的に形成でき、及び中央検出器データ処理装置から出力されるデジタル値を、デジタルインタフェース1113を通過した後に、アナログインタフェース1112を介して環境コンピューターに送信されるアナログ電子出力信号に変換できるデジタルアナログ変換器1104が必要となる場合がある。
【0100】
ユーザー端末1107は、上述のように、環境コンピューター1106及び中央データ処理装置1103の一方又は両方に接続するか、又は論理的に統合してもよい。ユーザー端末は、キーボード、タッチスクリーン、オーディオ入力手段、又は電子機器でよく知られている他の人−機械インタフェースの形式の画面及び入力手段を含んでもよい。ユーザー端末は、データファイルを処理手段にアップロードして、検出器入力と灌漑制御出力との間の関係を規定し、かつ処理手段に一般的な構成設定を適用して、中央検出器データ処理手段を構築するように使用できる。灌漑操作は、灌漑を開始する設定開始時間、停止時間、滴下速度、サイクル長及び/又は頻度、灌漑を再び開始する前の設定間隔時間(休憩時間)などの設定値に基づくことが多い。
【0101】
本発明のシステムにより、成長領域内のある範囲の領域からの1つ以上の異なるセンサー入力が単一のシステム内で測定、変換及び結合され、そのシステムは、所望の灌漑又は栄養素の投入制御を出力して、灌漑又は栄養素の投入を開始又は停止し、かつ灌漑又は栄養素の投入サイクル及び頻度などに適合することができる。
【0102】
このシステムは、手持ち式装置としても知られる携帯型検出器通信装置1105をさらに含んでもよく、なぜなら、それはユーザーの片手で都合よく持ち運びできるようになっていて、1台以上の検出器1101のような装置及び他の機器をユーザーのもう一方の手で容易に輸送ができるからである。検出器1101は、温室又は灌漑領域の周辺の離れた場所又は異なる場所に配置されることも多く、これは場合によっては数ヘクタールにわたることもある。したがって、ユーザーは検出器の構成又は設置を確認するために、あるいは検出器を新しい場所に移動させるために、検出器に到達するのにかなりの距離を移動する必要があることが多い。それゆえに、システム内の検出器の設置、較正、構成及び一般的な状態の確認を支援する軽量で携帯可能な手持ち式装置を備えるのが都合がよい。これにより、検出器からユーザー端末又は中央処理装置に戻って、設備の態様を変更し次に構成又は出力を確認する複数回の帰還の必要性が回避される。それゆえに、手持ち式携帯装置は、それが独立して持ち運べるようにそれ自身の電源を備えている。それはまた、任意の検出器1101からの出力又は状態情報を装置に表示できるように、一体型の表示部を含む。この装置は耐久性があり、その本体は農業用又は園芸用の環境で使用されるときの損傷を防ぐ、耐衝撃性材料で作られていてもよい。この装置は一般に、システム内の検出器に到達するのに徒歩で長距離を移動する必要のあるユーザーによって容易に携帯可能であるようになっている。しかしながら、手持ち式装置は、検出器及びシステムの全体としての設置、検査及び設定を容易にする特定の機能の態様を含む必要がある。
【0103】
中央データ処理手段は、各検出器についていくつかの因子を認知している必要がある。携帯型通信装置は、これらのいずれか又はすべてを中央検出器データ処理(スマートボックス)装置に読み取り、入力し、又は通信するのに使用できる。これらの因子として、その現在位置の詳細、検出器がその現在位置に配置された日付及び/又は時刻、どの特性を監視及び送信するように設定されているかに関する検出器の任意の設定、検出器の電源の電力状態、中央処理装置への検出器の接続状態、センサーの読み取り出力の確認、センサー又は検出器がシステム通信に割り当てられているアクセスポイントの確認、未処理の出力データの確認、又は材料、種類、寸法、及びその他の関連センサーデータなどの検出器又はセンサーが適用されている基質の特性が挙げられる。
【0104】
したがって、携帯型通信装置は、以下の機能を備えることが好ましい。この装置は、それ自身の位置を判定すること、又は装置及び/又は関連する検出器の位置に関するユーザー入力を受信することのうちのいずれかができる。この装置は、ユーザー入力によって、又は検出器1101との直接通信によって、通信している検出器の少なくとも識別子を受信することができる。これは、バーコード、英数字識別子、QRコード又は他の光学的すなわち視覚的識別子を光学的に読み取ること、あるいはRFID又は近距離無線通信(NFC)識別子を読み取ることを含んでもよい。好ましい態様は、典型的には800〜1000Mhz又は2.4GHzの周波数範囲において適宜選択されたRFID〜UHF帯域を使用する。識別子は、検出器又はセンサーの通し番号及び/又は製品コードを含んでもよい。携帯型通信装置は、その位置データを特定の検出器に関連付け、かつその位置データ及び検出器識別子を中央データ処理装置に送信するようになっていてもよく、それにより中央データ処理装置は、各検出器の位置の記録を記憶でき、これは中央データ処理手段によって、検出器が経時的に出力するパラメータと関連付けることができる。携帯型通信装置はまた、検出器を試験形式に設定することが可能であってもよい。
【0105】
好ましい態様において、多くの機能の特徴は、スマートボックス中央検出器データ処理装置と手持ち式装置との間で共通になる。これら特徴として、ユーザーに利用可能な又は接続されたノード(センサー又は検出器)及び検出器又はセンサーに関するデータを表示すること、ノード(センサー又は検出器)を選択すること、及び出力、通信機能などを試験すること、正確なセンサー読取値を検証すること、ノードの場所を設定すること、センサーと中央データ処理手段との接続を検証すること、ノードを正しいアクセスポイント/中央検出器データプロセッサーにアドレス指定すること、及び含水量(WC)、導電率(EC)、及び温度値を計算することが挙げられる。
【0106】
携帯型通信装置(例えば、専用の手持ち式装置又は専用のアプリケーションを実行しているスマートフォン)には、さらに複数のブロック内の測定値を記録し、結果の基本的な統計解析を行うことができ、例えばブロックごとに平均値と標準偏差を計算でき、テキストベースのヘルプ機能を含めることができ、可変言語を設定でき、電源状態の読み出しもできる等の追加の機能があってもよい。
【0107】
少なくとも1つのセンサー1109と組み合わされた専用携帯装置1105は、「計器」と呼ばれることがある。手持ち式装置は、一度に1つの検出器と通信できる。例えばスマートフォンとは異なり、手持ち式装置は独立して動作し、ネットワークには接続されていない。手持ち式装置は、1つ以上の測定値、ある期間(例えば数日)にわたって取られたログデータを取得することができる。次にこのログデータは、照合され、処理され、例えばPC、タブレット、携帯電話などの任意の適切な装置に適切なアプリケーションで時間の関数として表示できる。
【0108】
中央検出器データ処理装置1103又はスマートボックスは、データをデータベース又はクラウド1120に送信することができる(
図7に示すように、通信は双方向である)。そのデータに基づくグラフを含むユーザーインタフェースの例は、以下に説明される
図8〜
図11に示される。ユーザーインタフェースは、携帯型通信装置、好ましくはスマートフォン又はタブレットなどの無線装置に表示されることが好ましいが、PCなどのアプリケーションを実行している任意のユーザー端末に表示してもよい。
【0109】
図8は、時間の関数としての導電率(EC)、含水量(WC)及び温度(T)の測定例を示し、各曲線は栽培者の用地の1つの「区画」に配置された1つ以上の検出器から受信したそれぞれの測定値の平均を表示する。
図9Aは、様々な区画で36時間にわたって得られた平均データのグラフを備えるグラフィックユーザーインタフェースの「計器盤」機能での表示である。その日付は1つ以上の検出器から受信される。
図9Bの例では、区画内の2つのセンサーのデータが互いに隣接して表示されている。この例では、WCは容積基準の%WCで表され、ECはdS/m(デカジーメンス/メートル)で表され、Tは℃で表される。
図10に示すように、温室内の2箇所で検出されたWC、EC、及び温度が表示されている。好ましい態様において、システムは少なくとも3つの検出器を含む。
【0110】
好ましい態様において、スマートフォンやタブレットなどの携帯型通信装置は、一組ごとに、例えば散水区画ごとに、平均値及び数値分布を自動的に表示する。好都合なことに、これにより灌漑手段を最適に設定した信頼できる調節が可能になる。測定は通常約20枚の厚板に対して行われ、平均測定値は代表的な厚板で生成され、これを基準厚板と呼ぶことがある。温室内の基準厚板は、複数の測定値を使用して容易に決定できる。
【0111】
専用の手持ち式装置はまた、検出器と通信して検出器の方式を断続的出力から連続的出力に変更するようになっていてもよい。断続的出力は、検出器の電池寿命を保持するように使用でき、連続的出力は、検出器の継続監視又は状態確認のために使用できる。
【0112】
例えば、いくつかの好ましい態様において、その計器は、測定値が所定の時間間隔で取得されるロギング機能を備えてもよい。例えば、ユーザーは、厚板内で測定を実施する時間間隔を容易に調節できる。好ましい態様において、計器は厚板内で実行された2300以上の測定値を取得して記憶することができる。これにより、例えば栽培者によって決定された期間にわたって取得された時間の関数として、WC、EC及び温度値に関する信頼できる情報(すなわち曲線)が得られる。このような曲線の例を
図8、
図9、
図10に示す。中断や故障なしに計器を長期間使用することで、安定した信頼性の高い測定データが得られる。これらのデータに基づいて、灌漑手段は、栽培を最適化するために本発明による方法を用いて調節できる。
【0113】
栽培者は、例えば含水量に関する設定値を入力して、警報が発動される条件を構築することができる。例えば、栽培者は、含水量が3%(EG)低下した場合に警報を受け取るようにシステムを設定できる。システムは、ログデータを使用して、例えば当日の区画のパラメータを予測できる。したがってシステムは、例えば前日からログしたデータを使用して、例えば環境条件が類似している場合に含水量がどこで終了するかを示す予測を行うことができる。これは例えば夕方から表示することができる。
【0114】
図11A及び
図11Bは、ユーザーが毎日及び毎年のそれぞれの変動に基づいて、灌漑手段を制御する設定値を入力できるグラフィカルユーザーインタフェースの例を示す。設定値の設定は、例えば、WC水準及び/又はEC水準について行ってもよい。
図11Aを参照すると、WC設定値又は閾値は、1日の含水量の増加(日毎の変動)に対して10%に設定されている。例えば、減少%は0.5〜30%であってもよい。期間は、時間及び/又は分で設定してもよい。
【0115】
図11Bは、1年の変動に対して設定値の生成源として例示しており、それによって栽培者は、その年の特定の週にEC及びWCの所望の値を設定できる。
図11Bにおいて、示す週は、(カレンダー週ではなく)作物の開始からの週を表し、その作物の開始の週は0週と表示されている。栽培者によって設定された設定値の隣に、例えば解析プラットフォーム又は助言者から受信された助言を受けた設定値を表示することが可能である。当然のことであるが、設定値は、例えば作物の種類又は厚板の種類ごとに変更してもよい。三角印の点付き曲線は目標ECを表し、四角印の点付き曲線は目標WCを表す。連続線はそれぞれ、実際に測定されたEC及びWC水準を(スマートボックスからの処理済みデータとして)表す。
図11Cにおいて、予測線(菱形)が特定の設定値に基づいてプロットされている。警報の一例を
図11Dに示す。
図11Eは、スマートフォンで実行されるグラフィカルユーザーインタフェースの別の画面例を示す。
図11Eにおいて、グラフィカルユーザーインタフェースの基本的な「メニュー」が示されており、それによってユーザーは表示されるグラフの種類(区域、個々のセンサー、日/年の変動)の中から選択することができる。
【0116】
好ましい態様において、システムは環境コンピューターに接続され、即座に又は連続的にデータをグラフィック形式で有効に報告することができる。例えば、データは3分ごとにクラウド又は環境のコンピューターに直接送信されてもよく、それゆえにデータは継続的に送信される。データはまた、受信するとすぐにグラフに表示されてもよい。
【0117】
(上述のように、専用の手持ち式装置でもスマートフォン装置でもよい)携帯型通信装置は、検出器と通信する通信インタフェースを含んでもよい。装置はさらに、検出器と通信して検出器の識別子を判定し、検出器識別子を位置情報と結合し、その情報を中央検出器データ処理手段に転送するようになっていてもよい。例えば、位置情報は、ユーザーによって手持ち式装置1105に入力されてもよく、あるいは、又はさらに、GPSハードウェア又は他の位置決定手段を使用して装置自体によって決定されてもよい。位置決定手段は、装置の位置に配置されて位置に関する情報を示すバーコード、英数字識別子、QRコード又は他の光学的又は視覚的識別子、RFID又は近距離無線通信(NFC)装置を光学的に読み取るように配置された手段を含んでもよい。位置情報は、成長領域内の基質の位置に関する地図座標又はGPS座標又は列及び行の情報を含んでもよい。位置情報はさらに、温室番号又はコード、灌漑区画コード、覆いのコード、列番号及び厚板番号を含んでもよい。好ましい態様において、位置情報は、灌漑区画コード及び行番号などを少なくとも含む。装置はさらに、検出器の出力の測定値を取得し、それらをユーザーに表示し、それらをさらに通信リンクを介して中央データプロセッサーに任意に転送するようになっていてもよい。装置は、ユーザー入力に応答して、検出器を設定形式又は試験形式にして、状態変化の結果又は試験の結果を中央検出器データ処理手段にさらに通信リンクを介して送信するようになっていてもよい。通信リンクは物理的又は無線であってもよいが、無線通信の使用は設置時間及び設定時間を短縮し、長距離の場合の材料費用を低減することができる。
【0118】
携帯型通信装置は、PDA又はスマートフォンのような携帯電話などの標準的な電子通信機器であってもよく、したがって本発明は、遠隔通信手段を備える電子通信装置のプロセッサーによって実行されると、検出器との通信リンクを確立する装置を構築し、検出器に問合わせて検出器識別子を決定し、識別子を検出器の構成情報と関連付け、かつ構成情報を中央検出器データ処理に送信する命令を含むコンピュータープログラム製品で具現化されてもよい。構成情報は、手持ち式装置に関して上述した機能及びパラメータに加えて、位置データ、検出器構成データ、電源情報や使用時間などの検出器状態データを含んでもよい。
【0119】
栽培者から収集されたデータは、クラウドにアップロードされ、例えば解析プラットフォーム内で処理されるようにサーバに記憶されてもよい。これにより、助言者は、ノートパソコン、PCタブレット又はスマートフォンなどの遠隔装置に栽培者のデータを遠隔で表示できる。解析プラットフォームは、データの視覚化、データ解析、データの統合、及びプロセス制御の各工程を実行できる。好ましくは、アップロードされたデータは経時的に照合され評価される。例えば、専門家又は助言者によって実施された解析的評価の結果は、自動的にユーザーに提供される報告書内に提示されてもよい。好ましい態様において、設定値及び計算は、自動操作(すなわち灌漑の制御)が都合よく可能となるように、栽培者の環境コンピューターに自動的にアップロードされてもよい。解析されたデータは、例えば個々の灌漑手段を操作又は修正するように、クラウドから環境コンピューター及び/又は任意の他の遠隔装置に送信されてもよい。
【0120】
(プラットフォームデータとも呼ばれる)ログデータは、任意の測定装置又は環境コンピューターからさらに収集されて、プラットフォームに統合データを形成してもよく、このプラットフォームは遠隔装置に存在する。プラットフォームデータはまた、環境コンピューターの設定値及びパラメータ、作物登録データなどのデータ、及び栽培者に関連する他のデータを含んでいてもよい。
【0121】
上述の態様に対する変更及び改良は、当業者にとって明白である。その変更及び改良は、既知であり本明細書で説明される特徴項目の代わりに、又はそれに加えて使用される同等の特徴項目及び他の特徴項目を含んでもよい。別々の態様の文脈中で説明される特徴項目は、1つの態様内で組み合わせて提供されてもよい。逆に、1つの態様の文脈中で説明された特徴項目はまた、別々に又は任意の適切な組合せで提供されてもよい。
【0122】
なお「含む」という用語は、他の要素又は工程を排除するものではなく、また「1つの」という用語は複数を排除するものではなく、1つの特徴項目は、特許請求項に記載のいくつかの特徴項目の機能を果たしてもよく、特許請求項中の参照符号は請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。なお図は必ずしも縮尺通りではなく、それよりも本発明の原理を説明することに、概して重点を置いている。