特許第6966488号(P6966488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6966488超音波デバイスと遠隔制御ユニットとの間の電気的接続の不良を検出する方法およびシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966488
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】超音波デバイスと遠隔制御ユニットとの間の電気的接続の不良を検出する方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/00 20060101AFI20211108BHJP
   A61B 8/00 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   A61B17/00 700
   A61B8/00
【請求項の数】17
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2018-569076(P2018-569076)
(86)(22)【出願日】2017年7月6日
(65)【公表番号】特表2019-522543(P2019-522543A)
(43)【公表日】2019年8月15日
(86)【国際出願番号】EP2017066899
(87)【国際公開番号】WO2018007500
(87)【国際公開日】20180111
【審査請求日】2020年2月4日
(31)【優先権主張番号】1656611
(32)【優先日】2016年7月8日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】518461997
【氏名又は名称】カルテラ
【氏名又は名称原語表記】CARTHERA
(74)【代理人】
【識別番号】100094640
【弁理士】
【氏名又は名称】紺野 昭男
(74)【代理人】
【識別番号】100103447
【弁理士】
【氏名又は名称】井波 実
(74)【代理人】
【識別番号】100111730
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 武泰
(74)【代理人】
【識別番号】100180873
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 慶政
(72)【発明者】
【氏名】キャニー、マイケル
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−050674(JP,A)
【文献】 特開2006−095288(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0171802(US,A1)
【文献】 欧州特許第01629779(EP,B1)
【文献】 特表2005−510265(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0028341(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0157299(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
17/225
17/32
8/00 − 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織に超音波を印加することによって病状の診断支援および/または治療をするための装置の異常を検出するための方法であって、
前記装置が、
− 超音波発生デバイス(1)と、
− 前記超音波発生デバイス(1)に電気を供給し、そして、前記デバイスの操作パラメータを決定および制御するための遠隔制御ユニット(2)であって、前記超音波発生デバイス(1)を作動させるために、少なくとも1つの作動サイクル(50)中に、前記超音波発生デバイス(1)に電気を供給するように構成され、そして各作動サイクル(50)が待機サイクル(40)の後に置かれてなる、遠隔制御ユニット(2)と
を備えてなり、
前記超音波発生デバイス(1)および前記遠隔制御ユニット(2)が、電気的接続手段(31、32)を介して電気的に接合され、
前記方法、前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との間の電気的接合不良を検出するために、少なくとも1つの待機サイクル(40)中に実施される制御段階を含んでなり、前記電気的接合不良が、前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との間に電気的連結が存在しないことであることを特徴とし、
ここで、前記制御段階が、
前記少なくとも1つの待機サイクル(40)中:
前記少なくとも1つの待機サイクル(40)の第1の瞬間に少なくとも1つの制御信号を、前記遠隔制御ユニット(2)によって発信する発信ステップ(410)であって、
前記少なくとも1つの制御信号が、前記電気的接続手段(31、32)を介して超音波発生デバイス(1)に向けて発信され、前記少なくとも1つの制御信号が、前記超音波発生デバイス(1)のトランスデューサ(12)の動作周波数範囲内で選択される周波数(F1)で発信される電気パルス信号からなる第1の制御信号である発信ステップと、
前記少なくとも1つの待機サイクル(40)の第2の瞬間に第1のフィードバック信号を、前記遠隔制御ユニット(2)によって取得する取得ステップ(420)であって、
前記第1のフィードバック信号が、前記第1の制御信号の発信に応答して、前記超音波発生デバイス(1)および前記電気的接続手段(31、32)によって反射された電気的信号である取得ステップと、
○前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との間の電気的接合の品質に関する情報を得るために、前記第1のフィードバック信号を処理する処理ステップ(430)と
を含んでなり、
当該方法がさらに、
前記少なくとも1つの待機サイクル(40)後の各作動サイクル(50)中、前記電気的接合の品質に関して得た情報に基づいて信号を発信する発信ステップ(51、52)であって、当該信号が、
○前記遠隔制御ユニット(2)が前記超音波発生デバイス(1)に適切に接合していない場合の、警告信号である発信ステップ(51、52)
を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記超音波発生デバイス(1)のインピーダンスが、前記少なくとも1つの制御信号の周波数に応じて変化する、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの制御信号が、前記トランスデューサ(12)の動作周波数範囲外で選択される第2の周波数(F2)で発信される電気パルス信号からなる第2の制御信号をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記制御段階が、さらに
前記少なくとも1つの待機サイクル(40)中:
○前記トランスデューサ(12)の動作周波数範囲外で選択される第2の周波数(F2)の第2の制御信号を、前記遠隔制御ユニット(2)によって発信する発信ステップ(412)であって、
前記第2の制御信号が前記電気的接続手段(31、32)を介して超音波発生デバイス(1)に向けて発信されるものである発信ステップと、そして
第2のフィードバック信号を、前記遠隔制御ユニット(2)によって取得する取得ステップ(422)であって、
前記第2のフィードバック信号が、前記第2の制御信号の発信に応答して、前記超音波発生デバイス(1)および前記電気的接続手段(31、32)によって反射された電気的信号である取得ステップと、
前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との間の電気的接続における起こり得る不良を検出するために、前記第2のフィードバック信号を処理する処理ステップ(431)と
を含んでなり、当該方法が、さらに
− 前記少なくとも1つの待機サイクル(40)後の前記作動サイクル(50)中:
○前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との間の電気的接合不良が検出された場合、警告信号を前記遠隔制御ユニット(2)によって発信する発信ステップ(51)
を含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記処理ステップ(430)が、前記第1のフィードバック信号の電力と少なくとも1つの閾値とを比較することからなるサブステップを含んでなる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記処理ステップ(431)が、前記第1のフィードバック信号の電力及び前記第2のフィードバック信号の電力と、少なくとも1つの閾値とを比較することからなるサブステップを含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との間の電気的接合の品質に関する情報を得るために、前記第1のフィードバック信号を処理する処理ステップ(430)が、
○前記第1の制御信号の発信終了後に前記第1のフィードバック信号からピークを抽出し、その結果から前記トランスデューサ(12)の振動または非振動状態を推定することからなる処理ステップ(433)からなり
当該方法が、さらに
− 前記少なくとも1つの待機サイクル(40)後の各作動サイクル(50)中:
前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との間の電気的接合不良が検出された場合、警告信号を発信する発信ステップ(51
を含んでなる、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の待機サイクル(40)中:
○前記遠隔制御ユニット(2)によって、通信要求を前記超音波発生デバイス(1)に向かって発信する発信ステップと、
○前記遠隔制御ユニット(2)によって、前記超音波発生デバイス(1)によって発信される応答メッセージを取得する取得ステップと
− 前記作動サイクル(50)中:
○前記少なくとも1つの待機サイクル(40)中に応答メッセージが取得されなかった場合、警告信号を発信する発信ステップと、
をさらに含んでなる、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記超音波発生デバイス(1)と前記組織との間の音響結合における欠陥を検出するために、前記少なくとも1つの待機サイクル(40)中に実施されるモニタリング段階をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記モニタリング段階が、
前記少なくとも1つの待機サイクル(40)中:
○第3の制御信号を、前記遠隔制御ユニット(2)によって発信する発信ステップであって、
前記第3の制御信号が、前記電気的接続手段(31,32)を介して超音波発生デバイス(1)に向けて発信されるものである発信ステップと、
○第3のフィードバック信号を、前記遠隔制御ユニットによって取得する取得ステップであって、
前記第3のフィードバック信号が、前記第3の制御信号の発信に応答して、前記超音波発生デバイス(1)および前記電気的接続手段(31,32)によって反射された電気的信号である取得ステップと、
○前記装置と前記組織との間の音響結合の品質に関する情報を得るために、前記第3のフィードバック信号を処理する処理ステップと
を含んでなり、
当該方法が、さらに、
− 前記少なくとも1つの待機サイクル(40)後の各作動サイクル中、音響結合の品質に関して得た情報に基づいて信号を発信する発信ステップであって、前記信号が、
○前記装置が前記組織に適切に結合していない場合の、警告信号である発信ステップと
を含んでなる、請求項に記載の方法。
【請求項11】
病状の診断支援および/または治療のための装置であって、
− 超音波発生デバイス(1)と、
− 前記超音波発生デバイス(1)の操作パラメータを決定および制御し、少なくとも1つの作動サイクル(50)(ここで、各作動サイクル(50)は待機サイクル(40)の後に置かれてなる)中に、前記超音波発生デバイス(1)に電気を供給するための遠隔制御ユニット(2)と、
− 前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)とを電気的に接続する電気的接続手段(31、32)と
を備えてなり、
前記遠隔制御ユニット(2)が、少なくとも1つの待機サイクル(40)中に、前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との間の電気的接合不良を検出する制御段階を実施するようにプログラムされてなり、前記電気的接合不良が、前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との間に電気的連結が存在しないであることを特徴とし、
ここで、前記遠隔制御ユニット(2)において実施される前記制御段階が、
前記少なくとも1つの待機サイクル(40)中における
前記少なくとも1つの待機サイクルの第1の瞬間の、前記少なくとも1つの制御信号の、前記遠隔制御ユニット(2)による、前記超音波発生デバイス(1)に向け発信(410、411、412、413)と(ここで、前記少なくとも1つの制御信号は、前記電気的接続手段(31、32)を介して超音波発生デバイス(1)に向けて発信され、また前記少なくとも1つの制御信号は、前記超音波発生デバイス(1)のトランスデューサ(12)の動作周波数範囲内で選択される周波数(F1)で発信される電気パルス信号からなる第1の制御信号を含むものである)、
前記遠隔制御ユニット(2)による、第1のフィードバック信号取得(420、421、422、423)と(ここで、前記第1のフィードバック信号が、前記発信された第1の制御信号に応答して、前記超音波発生デバイス(1)および前記電気的接続手段(31、32)によって反射された電気的信号である)
○前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との間の電気的接合不良を検出するための、前記遠隔制御ユニット(2)による、前記第1のフィードバック信号処理(430、431、433)
を含み、
ここで、前記遠隔制御ユニット(2)が、さらに
− 前記少なくとも1つの待機サイクル(40)後の作動サイクル(50)中:
前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との間の電気的接合不良が検出されなかった場合には、前記超音波発生デバイス(1)から作動信号を発信し(52)、
前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との間の電気的接合不良が検出された場合には、前記作動信号を発信しない
ようにプログラムされてなる、装置。
【請求項12】
前記超音波発生デバイス(1)のインピーダンスが、前記少なくとも1つの制御信号の周波数に応じて変化する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記少なくとも1つの制御信号が、前記トランスデューサ(12)の動作周波数範囲外で選択される第2の周波数F2で発信される電気パルス信号からなる第2の制御信号をさらに含む、請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記遠隔制御ユニット(2)において実施される前記制御段階が、さらに
前記少なくとも1つの待機サイクル(40)中における
前記少なくとも1つの待機サイクル(40)の第2の瞬間における前記第2の制御信号前記超音波発生デバイス(1)に向け発信(412)と、第2のフィードバック信号の取得(422)と(ここで、前記第2のフィードバック信号が、前記発信された第1の制御信号に応答して、前記超音波発生デバイス(1)および前記電気的接続手段(31、32)によって反射された電気的信号である)
○前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との間の前記電気的接合不良を検出するため、前記第2のフィードバック信号の処理(431)
を含み、
ここで、前記遠隔制御ユニット(2)が、さらに
− 前記前記少なくとも1つの待機サイクル(40)後の作動サイクル(50)中:
○前記超音波発生デバイス(1)と前記遠隔制御ユニット(2)との電気的接合不良が検出されなかった場合には、作動信号を前記超音波発生デバイス(1)に向けて発信し(52)、ここで、当該作動信号は、前記トランスデューサ(12)の動作周波数範囲内で選択される第1の周波数F1で発信される電気パルス信号からなり、その電力は前記第1および第2の制御信号の電力よりも大であり、
○電気的接合不良が検出された場合には、前記作動信号を発信しない
ようにプログラムされてなる、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記第1のフィードバック信号の、前記遠隔制御ユニット(2)による前記処理ステップ(430、431、433)が、前記第1のフィードバック信号の電力と少なくとも1つの閾値とを比較することを含んでなる、請求項11に記載の装置。
【請求項16】
前記遠隔制御ユニット(2)が、前記第1のフィードバック信号を取得するための方向性結合器(23)を備えてなり、当該方向性結合器は、インピーダンス整合回路(22)の上流に連結されてなる、請求項11から15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記遠隔制御ユニット(2)が、前記第1のフィードバック信号および前記第2のフィードバック信号を取得するための方向性結合器(23)を備えてなり、当該方向性結合器は、インピーダンス整合回路(22)の上流に連結されてなる、請求項14に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、遠隔制御ユニットと電気的に接合するよう意図された超音波デバイス(例えば、体内または埋め込み型デバイス)の技術分野に関する。
【0002】
このようなデバイスは、特に、診断を確立する際に施術者を補助するために、および/または、病変を治療するために、ヒトおよび哺乳動物に埋め込むことができる。
【背景技術】
【0003】
脳障害を治療する装置は、文献EP2539021号から知られている。図1を参照すると、そのような装置は、
− 非強磁性材料製の超音波デバイス1と、
− 超音波デバイス1から離れた所にある制御ユニット2と、
− 超音波デバイス1と制御ユニット2とを接続する手段と
から構成されている。
【0004】
超音波デバイス1は、患者の頭蓋に形成された穿頭孔に配置されるよう意図されている。超音波デバイス1は、有利には、磁気共鳴イメージング(MRI)技術と適合性があり、
− 電気絶縁材料製の壁から構成されるケーシング11と、
− 脳障害を治療するために超音波を発生させるようにケーシング内に配置された少なくとも1つのトランスデューサ12と、
− ケーシング11を患者の頭蓋に固定する固定手段13と、
− 接続手段と協働するよう意図された1つ(またはそれ以上)の電気接続端子14と
を備えている。
【0005】
制御ユニット2は、体内デバイス1に電気エネルギーを供給し、その操作パラメータを設定するよう意図されている。
【0006】
接続手段は、超音波デバイス1と制御ユニット2とを電気的に連結するよう意図されている。接続手段は一般に、
− その一端が制御ユニットに連結されてなる、1つ(またはそれ以上)の電気接続ケーブル31と、
− ケーブル31の他端に接合されてなる、1つ(またはそれ以上)の経皮針32と
を備える。
【0007】
この装置の動作原理は以下の通りである。超音波デバイス1が患者の頭蓋に埋め込まれると、患者に影響を与える病状を治療するために、一連の治療セッションが当該患者に提供される。新しい治療セッションごとに、体内デバイス1は接続手段を介して制御ユニット2に連結される。
【0008】
施術者は、ケーブル31を制御ユニット2に連結し、次に針32を患者の皮膚を通して超音波デバイスの端子14まで挿入する。
【0009】
針32の端部が端子14に接続されると、制御ユニット2が作動され、超音波デバイス1に電気エネルギーを供給することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
EP2539021号に記載された装置が脳障害の効果的な治療を可能にしたとしても、体内デバイスと制御ユニット2との間の電気的接合において起こり得る欠陥を施術者に知らせる技術は現在ない。このような電気的接合欠陥は、
− 患者の安全上の問題(火傷、感電等)、および/または
− 病状の診断および/または治療に関する超音波デバイスの効率の問題
を引き起こし得る。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、
− 患者に埋め込まれた体内デバイス1と、
− 外部制御デバイス2と
の間の電気的接合において起こり得る欠陥を施術者が検出することを可能にする方法およびシステムを提供することである。
【0012】
この目的のため、本発明は、
− 超音波発生デバイスと、
− 前記デバイスの操作パラメータを決定および制御し、少なくとも1つの作動サイクル(各作動サイクルは、待機サイクルの後に置かれる)中に、前記デバイスに電気を供給するための遠隔制御ユニットと、
− 前記デバイスと前記制御ユニットとを電気的に接続する手段であって、制御ユニットが、少なくとも1つの待機サイクル中に、前記デバイスと当該制御ユニットとの間の電気的接合における欠陥を検出するように構成されていることを特徴とする手段と
を備えてなる、病状の診断支援および/または治療のための装置を提案する。
【0013】
本発明に関し、「電気的接合欠陥」とは、超音波発生デバイスとプローブとの間の電気的接続における脆弱性を意味し、この脆弱性は超音波発生デバイスとプローブとの間の電流の循環を妨げる。言い換えれば、「接合欠陥」は、超音波発生デバイスとプローブとの間に電気的連結が存在しないことからなる。
【0014】
本発明の好ましいが非限定的な態様は以下の通りである:
− 制御ユニットは、
○待機サイクル中:
■少なくとも待機サイクルの第1の瞬間に少なくとも1つの制御信号をデバイスに向けて発信し、
■発信された制御信号に応答する少なくとも1つのフィードバック信号を取得し、
■デバイスと制御ユニットとの間の電気的接合における欠陥を検出するために、取得されたフィードバック信号を処理し、
○待機サイクル後の作動サイクル中:
■電気的接合欠陥が検出されなかった場合には、デバイスから作動信号を発信し、
■電気的接合欠陥が検出された場合には、作動信号を発信しない
ようにプログラム可能であり;
− 少なくとも1つの制御信号は、デバイスのトランスデューサの動作周波数範囲内で選択される周波数F1で発信される低出力電気パルス信号からなることができ;
− デバイスのインピーダンスは、制御信号の周波数に応じて変化し得;
− 有利には:
○少なくとも第1の制御信号は、デバイスのトランスデューサの動作周波数範囲内で選択される第1の周波数F1で発信される電気パルス信号からなることができ、
○少なくとも第2の制御信号は、トランスデューサの動作周波数範囲外で選択される第2の周波数F2で発信される電気パルス信号からなることができ;
− 制御ユニットは、
○待機サイクル中:
■少なくとも待機サイクルの第1の瞬間に第1の制御信号をデバイスに向けて発信し、第1のフィードバック信号を取得し、
■少なくとも待機サイクルの第2の瞬間に第2の制御信号をデバイスに向けて発信し、第2のフィードバック信号を取得し、
■デバイスと制御ユニットとの間の電気的接合における欠陥を検出するために、第1および第2のフィードバック信号と第1および第2の閾値とを比較し、
○待機サイクル後の作動サイクル中:
■電気的接合欠陥が検出されなかった場合には、作動信号をデバイスに向けて発信し、ここで、上記作動信号は、トランスデューサの動作周波数範囲内で選択される第1の周波数F1で発信される電気パルス信号からなり、その電力は制御信号の電力よりも大であり、
■電気的接合欠陥が検出された場合には、作動信号を発信しない
ようにプログラム可能であり;
− 処理ステップは、各フィードバック信号の電力と少なくとも1つの閾値とを比較することからなるサブステップを含むことができ;
− 制御ユニットは、
○待機サイクル中:
■トランスデューサの動作周波数範囲内で選択される周波数F1の低出力パルス制御信号を発信し、
■応答フィードバック信号を取得し、
■フィードバック信号を処理し、トランスデューサの振動または非振動状態を決定し、その結果から、起こり得る接合欠陥を推定し、
○待機サイクル後の作動サイクル中:
■電気的接合欠陥が検出されなかった場合には、作動信号をデバイスに向けて発信し、ここで、上記作動信号は、トランスデューサの動作周波数範囲内で選択される第1の周波数F1で発信される電気パルス信号からなり、その電力は制御信号の電力よりも大であり、
■電気的接合欠陥が検出された場合には、作動信号を発信しない
ようにプログラム可能であり;
− 制御ユニットは、フィードバック信号を取得するための方向性結合器を備えることができ、当該方向性結合器は、インピーダンス整合回路の上流に連結されている。
【0015】
本発明はまた、組織に超音波を印加することによって病状の診断支援および/または治療をするための装置の異常を検出するための方法に関し、
前記装置は、
− 超音波発生デバイスと、
− 前記デバイスに電気を供給し、かつ、前記デバイスの操作パラメータを決定および制御するための遠隔制御ユニットであって、前記デバイスを作動させるために、少なくとも1つの作動サイクル中に、前記デバイスに電気を供給するように構成され、そして各作動サイクルが待機サイクルの後に置かれてなる、遠隔制御ユニットと
を備えてなり、
前記デバイスおよび前記制御ユニットは、電気的接続手段を介して電気的に接合され、
前記方法は、前記デバイスと前記制御ユニットとの間の電気的接合における欠陥を検出するために、少なくとも1つの待機サイクル中に実施される制御段階を含むことを特徴とする。
【0016】
本発明による方法の好ましいが非限定的な態様は以下の通りである:
− 本方法は、
○待機サイクル中:
■待機サイクルの第1の瞬間に少なくとも1つの制御信号を、制御ユニットによって発信するステップと、
■待機サイクルの第2の瞬間に少なくとも1つのフィードバック信号を、制御ユニットによって取得するステップと、
■超音波デバイスと制御ユニットとの間の電気的接合の品質に関する情報を得るために、フィードバック信号を処理するステップと、
○待機サイクル後の作動サイクル中、電気的接合の品質に関して得た情報に基づいて信号を発信するステップであって、当該信号が、
■制御ユニットが超音波デバイスに適切に接合している場合の、作動信号と、
■制御ユニットが超音波デバイスに適切に接合していない場合の、警告信号と
からなるステップと
を含み;
− 少なくとも1つの制御信号は、デバイスのトランスデューサの動作周波数範囲内で選択される周波数で発信される低出力電気パルス信号からなることができ;
− デバイスのインピーダンスは、制御信号の周波数に応じて変化し得;
− 有利には:
○少なくとも第1の制御信号は、デバイスのトランスデューサの動作周波数範囲内で選択される第1の周波数で発信される電気パルス信号からなることができ、
○少なくとも第2の制御信号は、トランスデューサの動作周波数範囲外で選択される第2の周波数で発信される電気パルス信号からなることができ;
− より具体的には、本方法は、
○待機サイクル中:
■超音波デバイスのトランスデューサの動作周波数範囲内で選択される第1の周波数の第1の低出力パルス制御信号を制御ユニットによって発信し、第1の応答フィードバック信号を制御ユニットによって取得するステップと、
■トランスデューサの動作周波数範囲外で選択される第2の周波数の第2の低出力パルス制御信号を制御ユニットによって発信し、第2の応答フィードバック信号を制御ユニットによって取得するステップと、
■起こり得る接合欠陥を検出するために、第1および第2のフィードバック信号を処理するステップと、
○待機サイクル後の作動サイクル中:
■接合欠陥が検出された場合、警告信号を制御ユニットによって発信するステップと、
■接合欠陥が検出されなかった場合、トランスデューサの動作周波数で発信される高出力電気パルス信号からなる作動信号を制御ユニットによって発信するステップと
を含むことができ、
− 処理ステップは、各フィードバック信号の電力と少なくとも1つの閾値とを比較することからなるサブステップを含むことができ;
−さらにより具体的には、本方法は、
○待機サイクル中:
■トランスデューサの動作周波数範囲内で選択される周波数の低出力パルス制御信号を発信するステップと、
■応答フィードバック信号を取得するステップと、
■起こり得る接合欠陥を検出するためにフィードバック信号を処理するステップであって、当該処理が、制御信号の発信終了後にフィードバック信号からピークを抽出し、それからトランスデューサの振動または非振動状態を推定することからなるステップと、
○待機サイクル後の作動サイクル中:
■接合欠陥が検出された場合、警告信号を発信するステップと、
■接合欠陥が検出されなかった場合、トランスデューサの動作周波数で発信される高出力電気パルス信号からなる作動信号を発信するステップと
を含むことができ;
− 本方法は、
○待機サイクル中:
■制御ユニットによって、通信要求を超音波発生デバイスに向かって発信するステップと、
■制御ユニットによって、超音波発生デバイスによって発信される応答メッセージを取得するステップと
○作動サイクル中:
■応答メッセージが取得されなかった場合、警告信号を発信するステップと、
■応答メッセージが取得された場合、作動信号を発信するステップと
をさらに含むことができ;
− 本方法は、超音波発生デバイスと組織との間の音響結合における欠陥を検出するために、少なくとも1つの待機サイクル中に実施されるモニタリング段階をさらに含み;
− 接合欠陥および結合欠陥の複合的検出のために、本方法は、
○待機サイクル中:
■待機サイクルの第1の瞬間に少なくとも1つの制御信号を制御ユニットによって発信するステップと、
■待機サイクルの第2の瞬間に少なくとも1つのフィードバック信号を制御ユニットによって取得するステップと、
■超音波デバイスと制御ユニットとの間の電気的接合の品質に関し、およびデバイスと組織との間の音響結合の品質に関する情報を得るために、フィードバック信号を処理するステップと、
○待機サイクル後の作動サイクル中、電気的接合の品質に関して得た情報および音響結合の品質に関して得た情報に基づいて信号を発信するステップであって、当該信号が、
■制御ユニットが超音波デバイスに適切に接合しており、装置が組織に適切に結合している場合の、作動信号と、
■制御ユニットが超音波デバイスに適切に接合しておらず、または装置が組織に適切に結合していない場合の、警告信号とからなるステップと
を含むことができる。
【0017】
本発明による方法の他の利点および特徴は、添付の図面から、非限定的な実施例として示されるいくつかの変形例を含む以下の説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、接続手段(経皮針+ケーブル)を介して遠隔制御ユニットに電気的に接合された超音波デバイスを含む、脳障害を治療するための装置の例を概略的に示す。
図2図2は、デバイスと制御ユニットとの間の電気的接合における欠陥を検出する方法のステップを示す。
図3図3は、図2の検出方法の第1の変形例を示す。
図4図4は、本発明の方法の第1の変形例による検出戦略の第1の例を示す。
図5図5は、図2の検出方法の第2の変形例を示す。
図6図6は、本発明による方法を実施するための制御ユニットの例を概略的に示す。
図7図7は、時間の関数としての電圧曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図2図7を参照して検出方法のさまざまな例を説明する。これらの異なる図において、同等の要素は、同じ参照番号によって示される。
【0020】
この検出方法により、施術者は、外部制御ユニットと、患者の体内に埋め込まれた超音波デバイスとの間の電気的接合が適切に行われているかどうかを確認することができる。
【0021】
以下では、検出方法は、文献EP2539021号に示される装置を参照して説明される。
【0022】
しかしながら、本発明による方法が、遠隔制御ユニットに電気的に接合された超音波デバイス(体内デバイス、埋め込み型デバイスまたは非埋め込み型デバイス)を含む任意のタイプの治療装置を用いて実施され得ることは、当業者にとって明らかである。
【0023】
前述のように、装置は、
− 超音波を発生させるための、少なくとも1つのトランスデューサ12が収容されているケーシング11を備えた超音波デバイス1と、
− 超音波デバイス1に電気エネルギーを供給し、デバイスの操作パラメータを設定する遠隔制御ユニット2と、
− 超音波デバイス1と制御ユニット2とを電気的に接合する接続手段(経皮針+ケーブル)と
を備える。
【0024】
この装置は、施術者によって指示されるいくつかの治療セッションを実施することによって脳障害の治療を可能にし、各セッションはそれぞれ待機サイクルの後に置かれる一連の作動サイクルで構成される。
【0025】
待機サイクルの間、超音波デバイス1は、待機期間(約975ミリ秒)の間停止される。この停止は、超音波デバイス1に電気エネルギーを供給しないことによって行われる。
【0026】
待機期間が終了すると、作動サイクルが実施される。超音波デバイス1の作動は、作動期間(約25ミリ秒)中、デバイスに電気エネルギーを供給することによって行われる。この電気エネルギーは、有利には、トランスデューサ12の動作周波数で制御ユニット2によって放出される。トランスデューサ12は、超音波デバイス1の真下に位置する脳領域の方向に超音波を発生する。
【0027】
作動期間が終了すると、新しい待機サイクルが実施され、それ以降セッションが終了するまで続く。
【0028】
以下に記載する検出方法は、超音波デバイス1と制御ユニット2との間の電気的接合の品質を検出するために、各作動サイクルの先に置かれる待機サイクルを使用することを提案する。
【0029】
1.超音波デバイスと制御ユニットとの間の電気的接合の品質を検出する方法
検出方法のさまざまな実施形態を、以下に詳細に説明する。
【0030】
以下、超音波デバイス1は患者の頭蓋に埋め込まれており、施術者は超音波デバイス1と制御ユニット2とを電気的に接合したものとする。
【0031】
図2を参照すると、検出方法は、
− 各待機サイクル40中:
○待機サイクル40の第1の瞬間に少なくとも1つの制御信号を、制御ユニット2が発信するステップ410と、
○待機サイクル40の第2の瞬間に少なくとも1つのフィードバック信号を、制御ユニット2が取得するステップ420と、
○超音波デバイス1と制御ユニット2との間の電気的接合の品質に関する情報を得るために、フィードバック信号を処理するステップ430と、
− 各作動サイクル50中、電気的接合の品質に関して得た情報に基づいて信号を発信するステップ51、52であって、当該信号が、
○制御ユニット2が超音波デバイス1と適切に接合している場合の、作動信号と、
○制御ユニット2が超音波デバイス1と適切に接合していない場合の、警告信号とからなるステップとを含む。
【0032】
各制御信号は、作動信号に対して低い電気エネルギー(治療に必要なエネルギーの1%程度)で発信される。これによって、超音波デバイス1と制御ユニット2との間の電気的接合の品質を制御する段階中に、特に接合が不良の場合に、患者を加熱する危険性を回避できる。特に、経皮針の極が組織と接触して経皮針で短絡した場合において、作動信号の発信が感電を引き起こす可能性がある。この感電は必ずしも危険ではないが、患者にとって痛みを伴う可能性があり、頭皮組織の小領域に火傷を引き起こす可能性がある。
【0033】
したがって、本発明による方法により、施術者は、各作動段階に先立って超音波デバイス1と制御ユニット2との間の電気的接合の品質を確認することが可能になる。これにより、各作動サイクル中の治療の有効性が保証される。
【0034】
さまざまなタイプの接合不良が起こる可能性がある:
− ケーブル31が制御デバイス2に電気的に連結されていない、
− 経皮針32が端子14に電気的に連結されておらず、この場合、針32の先端が、
○電気絶縁体(つまり、針32が端子14を覆う絶縁材料層を貫通していない)、または
○導電体(頭蓋の皮膚、または患者の頭蓋内を循環する流体)
と接触している。
【0035】
以下に記載の2つの変形例の方法により、これらの異なるタイプの電気的接合不良の検出が可能になる。
【0036】
1.1.第1の実施形態
図3および図4に示す第1の変形例の方法では、多周波数アプローチを使用する。特に、この第1の変形例では、制御信号が2つの異なる周波数で発信される。
【0037】
異なる周波数で制御信号を発信するという事実により、電気的接合不良を検出する方法の信頼性を向上させることが可能になる。
【0038】
実際、反射電力に対する許容範囲内で単一の周波数が使用される場合、
− 針32が超音波デバイス1に適切に連結されている場合に反射される電力、および
− 針32の先端が(導電性)組織と接触している場合に反射される電力
は類似している可能性があるため、適切な電気敵接合と、針が単に導電性媒体に入っている(針の先端に位置する2つの極により短絡されている)不良な電気的接合とを区別することは困難である。
【0039】
多周波数アプローチ、すなわち、2つの異なる周波数での制御信号の使用により、このような曖昧さがなくなる。実際、超音波デバイスは、印加される電気信号の周波数に応じてインピーダンスが変化するという特徴を有する。
【0040】
有利には、待機サイクル40中に発信される制御信号は電気パルス電流であり、当該制御信号の発信のために選択される周波数は:
− トランスデューサ12の動作周波数、例えば、共振周波数の範囲内で選択される第1の周波数F1(例えば、約1.05MHz)、
− トランスデューサ12の動作周波数範囲外で選択される、第1の周波数F1とは異なる第2の周波数F2
であるため、制御ユニット2により周波数F2で発信される制御信号はほとんど、それに向かって反射され;
図3を参照すると、本実施形態による方法は、
− 待機サイクル40中:
○超音波デバイス1のトランスデューサ12の動作周波数範囲内で選択される第1の周波数F1の第1の低出力パルス制御信号を発信するステップ411、そして第1の応答フィードバック信号を取得するステップ421と、
○トランスデューサ12の動作周波数範囲外で選択される第2の周波数F2の第2の低出力パルス制御信号を発信するステップ412、そして第2の応答フィードバック信号を取得するステップ422と、
○起こり得る接合欠陥を検出するために、第1のフィードバック信号および第2のフィードバック信号を処理するステップ431と、
− 作動サイクル50中:
○接合欠陥が検出された場合、警告信号を発信するステップ51と、
○接合欠陥が検出されなかった場合、トランスデューサ12の動作周波数F1で発信される高出力電気パルス信号からなる作動信号を発信するステップ52と
を含むことができる。
【0041】
有利には、第1および第2のフィードバック信号を取得することは、例えば方向性結合器を使用することによって、当該フィードバック信号の電力を測定することにあり得る。これにより、制御ユニットの複雑さを制限できる。
【0042】
多周波数アプローチは、超音波デバイス1と制御ユニット2との間の電気的接合欠陥に加えて、例えば、針32を患者に挿入する前に図3に示す方法を実施することによって、針32の極における短絡等の経皮針32の製造上の欠陥を検出することを可能にする。
【0043】
図4は、本発明の第1の変形例の方法を実施することによって接合欠陥を検出するために使用可能な例示的な戦略を示す。
【0044】
3つの制御信号61、62、63(それぞれ、100マイクロ秒の持続時間を有する低出力電気パルスからなる)は、各待機サイクル40中に超音波デバイスに向けて発信される:
− トランスデューサ12の動作周波数範囲外で選択される周波数F2で発信される第1のパルス61、
− トランスデューサ12の動作周波数範囲内で選択される周波数F1で発信される第2のパルス62、
− 周波数F2で発信される第3のパルス63。
【0045】
第1のフィードバック信号、第2のフィードバック信号および第3のフィードバック信号は、第1のパルス61、第2のパルス62および第3のパルス63の発信に応じて取得される。
【0046】
これらの第1のフィードバック信号、第2のフィードバック信号および第3のフィードバック信号は、制御ユニット2のメモリに格納される閾値と比較される。この比較により、制御ユニット2が超音波デバイス1に適切に接合されているかどうか、また電気的接合に欠陥があるかどうかを判定できる。
【0047】
制御ユニット2が超音波デバイス1に適切に接合されている場合、高出力(すなわち、制御信号の出力よりも大きい出力)かつ23.8マイクロ秒の持続時間の周波数F1での作動信号71が、各作動サイクル50中に超音波デバイス1に向かって発信される。作動信号71の発信により、患者の治療を可能とする超音波の発生が誘起される。
【0048】
次に、待機サイクル40および作動サイクル50が複数回(図4に示す例では、150回)繰り返される。
【0049】
下表は、(周波数F1およびF2で発信される2つの制御信号の発信に応答して取得された)2つのフィードバック信号PR1、PR2と、閾値S、Sとの比較によって、どのようにして、超音波デバイス1と制御ユニット2との間の電気的接合が適切であるかどうかを判定できるかを示す。
【0050】
(フィードバック信号PR1、PR2と閾値S、Sとの比較に関する)第1の条件および第2の条件が、
− 測定された電力が閾値Sより大きい場合、フィードバック信号PR1に関する第1の条件が満たされ、
− 測定された電力が閾値Sよりも小さい場合、フィードバック信号PR2に関する第2の条件が満たされる
という組み合わせで満たされる場合、電気的接合は適切であるとみなされる。
【0051】
第1の条件および第2の条件のうちの一方および/または他方が満たされない場合、制御ユニットと超音波デバイスとの間の電気的接合は不良である。
【0052】
【表1】
【0053】
事例番号5は、超音波デバイス1と制御ユニット2との間の電気的接合が適切であるが、トランスデューサ12が治療対象の組織と接触していない状態を表す。当業者は、(フィードバック信号PR1と第3の閾値S(例えば、230に等しい)との比較に関連する)第3の条件を追加することによって、この異常を検出できることを理解するであろう。読者は、値PR1、PR2が、アナログ−デジタル変換器から得られる生の値に対応することを理解するであろう。
【0054】
上記例に関し、値PR1、PR2は出力値に変換されておらず、閾値S、Sは出力レベルの任意の尺度に対応する。
【0055】
当然ながら、値PR1、PR2は、例えば本発明による装置の較正プロセスによって決定される二次関数または多項式関数を使用することによって、出力値に変換することができる。
【0056】
1.2.第2の実施形態
第2の変形実施形態の方法では、振動アプローチを使用する。振動アプローチは、トランスデューサ12が共振素子であるという事実に基づいている。このような共振素子がその動作範囲内で選択される周波数で発信される電気パルスによって励起されるとき、共振素子は励起の終了後でさえも振動し続ける。図7は、作動期間83中に作動信号81によって励起されたトランスデューサ12の場合におけるこの現象を示している。トランスデューサ12によって反射された信号82は、励起終了後も非ゼロ期間84の間振動し続けることが観察される。
【0057】
この「残留」振動は、いくつかの技法を使用して、すなわち、
− トランスデューサ12に送信される電圧を直接測定することによって(この技法は、電圧信号が励起周波数の2倍以上の周波数でデジタル化されることを必要とし(ナイキスト限界);制御ユニットにおける高速デジタイザの組み込みを必要とする)、または
− トランスデューサ12によって反射される電圧を測定することによって(この技法は、反射電圧のピークを特定するために二乗平均値(RMS値)変換器またはピーク検出器を組み込む必要があるが、高速デジタイザを使用する必要はない)
測定できる。
【0058】
フィードバック信号のシグネチャは超音波デバイス1に固有のものであり、針32が食塩水等の導電性材料内に配置されているときには発生しない。
【0059】
図5を参照すると、本実施形態による方法は、
− 各待機サイクル40中:
○トランスデューサ12の動作周波数範囲内で選択される周波数F1の低出力パルス制御信号を発信するステップ413と、
○応答フィードバック信号を取得するステップ423と、
○起こり得る接合欠陥を検出するために、フィードバック信号を処理するステップ433であって、当該処理が、制御信号の発信終了後にフィードバック信号からピークを抽出し、その結果からトランスデューサ12の(振動または非振動)状態を推定することからなるステップと、
− 各作動サイクル50中:
○接合欠陥が検出された場合、警告信号を発信するステップ51と、
○接合欠陥が検出されなかった場合、トランスデューサ12の周波数F1で発信される高出力電気パルス信号からなる作動信号を発信するステップ52と
を含むことができる。
【0060】
2.制御ユニット
図6に、上述の方法を実施するための制御ユニット2の例示的な装置を示す。
【0061】
制御ユニット2は、
− 超音波デバイスに電気エネルギーを供給する電力供給発生器21と、
− 前記発生器と超音波デバイスとの間の電気エネルギー伝達を最適化するインピーダンス整合回路22と、
− 発生器21とインピーダンス整合回路22との間の双方向性結合器23と、
− 結合器23から受信した信号から電力値を抽出する、前記結合器の下流にあるセンサ24と、
− センサ24から得られる信号を処理し、超音波デバイス1と制御ユニット2との間の電気的接合の状態を施術者に知らせるコントローラ25と
を備える。
【0062】
双方向性結合器23は、フィードバック信号を取得することを可能にする。より具体的には、結合器23は、超音波デバイス1および接続手段(ケーブル31/針32)によって反射された信号を測定することを可能にする。双方向性結合器23は、例えば、Mini−Circuits(登録商標)社製のZFBDC20−61HP+モデルであり、Pico−Technology(登録商標)社製のPicoscopeモデル3206Bのような低コストのアナログ−デジタル変換器と組み合わせて使用される。有利には、双方向性結合器23はインピーダンス整合回路22の上流に配置されており、これにより、フィードバック信号の処理を単純化し、その結果から反射電力を抽出することが可能になる。
【0063】
制御ユニット2の動作原理は以下の通りである。1つの(または各)待機サイクル40中、コントローラ25は発生器21に低出力制御信号を発信するように命令する。発生器21によって生じる制御信号は、双方向性結合器23およびインピーダンス整合回路22を通過する。制御信号は、電気接続手段(ケーブル31+針32)を介して超音波デバイス1に向けて発信される。
【0064】
双方向性結合器23は、フィードバック信号(またはいくつかのフィードバック信号)を取得する。より具体的には、双方向性結合器23は、体内超音波デバイス1、接続手段31、32によって反射された高周波信号、またはそのような高周波信号がないことを測定する。
【0065】
双方向性結合器23によって取得されたフィードバック信号は、センサ24に送信され、センサ24はそのフィードバック信号を処理し、それから電力値を抽出する。この電力値はコントローラ25に送信され、コントローラ25は、その電力値を1つ(またはそれ以上)の閾値と比較し、起こり得る電気的接合欠陥を検出する。
【0066】
接合欠陥が検出されない場合、コントローラ25は、超音波デバイス1のトランスデューサ12による超音波の発生を誘起するために、周波数F1で高出力作動信号を発信するように発生器21に命令する。
【0067】
接合欠陥が検出される場合、コントローラ25は、例えば制御ユニット2のインターフェース(インターフェースはスクリーンおよび/またはスピーカーを含むことができる)に音声および/または視覚的刺激を発することによって、当該欠陥を施術者に警告するための警告信号を発信する。
【0068】
したがって、本発明は、埋め込み型超音波デバイスと遠隔制御ユニットとの間の接合における欠陥を検出するという課題に対する解決手段を提案する。実際、このデバイスは接続回路の「遮断」を検出することを可能にする。
【0069】
本発明はまた、上述のように、例えばトランスデューサのインピーダンス変動を検出することによって、治療(または撮像)装置と治療(または撮像)される組織との間の音響結合における欠陥を検出することを可能にする。このインピーダンス変動は、トランスデューサと組織との間の音響接触における欠陥に起因し得る。トランスデューサのインピーダンス変動は、トランスデューサ自体の欠陥、例えば短絡または開回路によっても発生する可能性がある。本発明が電気的接合欠陥および音響結合欠陥の双方を検出することを可能にする場合、本発明の方法は、
− 待機サイクル中:
○待機サイクルの第1の瞬間に少なくとも1つの制御信号を制御ユニットによって発信するステップと、
○待機サイクルの第2の瞬間に少なくとも1つのフィードバック信号を制御ユニットによって取得するステップと、
○超音波デバイスと制御ユニットとの間の電気的接合の品質に関し、および装置と組織との間の音響結合の品質に関する情報を得るために、フィードバック信号を処理するステップと、
− 待機サイクル後の作動サイクル(50)中、電気的接合の品質に関して得た情報および音響結合の品質に関して得た情報に基づいて信号を発信するステップであって、当該信号が、
○制御ユニットが超音波デバイスに適切に接合しており、装置が組織に適切に結合している場合の、作動信号と、
○制御ユニットが超音波デバイスに適切に接合しておらず、または装置が組織に適切に結合していない場合の、警告信号とからなるステップと
を含むことができる。
【0070】
読者は、本明細書に記載の新しい教示および利点から物理的に逸脱することなく、上記の本発明に対していくつかの改良を加えることができることを理解するであろう。
【0071】
例えば、本発明による方法は、文献EP2539021号に記載されているもの以外の治療装置と共に使用することができる。
【0072】
また以上の説明では、インピーダンス整合回路は、制御ユニットに組み込んだものとして説明したが、あるいは、インピーダンス整合回路は超音波デバイスに組み込んでもよい。
【0073】
さらに、待機サイクル中に、他の電気信号(超音波デバイスの電気制御信号または電力供給信号)を制御ユニットによって発信することができる。例えば、本発明の変形例では、超音波デバイスは、複数のトランスデューサに接続されたデマルチプレクサを含む。このデマルチプレクサは、トランスデューサの逐次作動(または複数のトランスデューサの中から選択されるいくつかのトランスデューサの同時作動)を可能にする。この場合、制御ユニットは、それが応答していること(双方向デジタル通信)を確認するために、1つまたはそれ以上の待機サイクル中に、デマルチプレクサに問い合わせするようにプログラム可能である。この目的のため、本方法は、
− 1つの(または各)待機サイクル中:
○制御ユニットによって、通信要求を超音波発生デバイスに向かって発信するステップと、
○制御ユニットによって、超音波発生デバイスによって発信される応答メッセージを取得するステップと
− 作動サイクル中:
○応答メッセージが取得されなかった場合、警告信号を発信するステップと
を追加で含むことができる。
【0074】
これらの追加のステップは、電気的接合欠陥の検出に関するステップよりも前に、またはそれと同時に実施することができる。
【0075】
したがって、このタイプの改良はすべて、添付の特許請求の範囲に記載された発明の範囲に組み込まれることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7