特許第6966498号(P6966498)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966498
(24)【登録日】2021年10月25日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20211108BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20211108BHJP
【FI】
   H02M3/155 H
   H02M3/155 W
   H02M7/48 E
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-39562(P2019-39562)
(22)【出願日】2019年3月5日
(65)【公開番号】特開2020-145807(P2020-145807A)
(43)【公開日】2020年9月10日
【審査請求日】2020年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】田辺 義清
(72)【発明者】
【氏名】松元 智志
【審査官】 柳下 勝幸
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/096994(WO,A1)
【文献】 特開2008−072880(JP,A)
【文献】 特開昭62−268367(JP,A)
【文献】 特開平05−260787(JP,A)
【文献】 特開2017−093202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/155
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも正負1対の降圧スイッチング素子と、前記降圧スイッチング素子を介して電圧が印加される少なくとも正負1対のインダクタと、直列に接続され、前記インダクタを通過する電流により充電される正負1対の出力キャパシタと、を有し、入力電圧を降圧して出力する降圧回路と、
複数の逆変換スイッチング素子を有し、前記降圧回路の出力電圧を交流に逆変換する逆変換回路と、
前記降圧回路の出力電圧が所望の電圧となるよう前記複数の降圧スイッチング素子のスイッチングを制御する制御回路と、
を備え
前記降圧回路は、前記降圧スイッチング素子と前記インダクタとの間を前記1対の出力キャパシタの中間点に接続可能な少なくとも1対の昇圧スイッチング素子をさらに有し、
前記逆変換回路は、前記逆変換スイッチング素子と並列に設けられ、逆方向に電流を流すことができる複数の回生ダイオードをさらに有し、
前記制御回路は、前記逆変換回路に出力側から電流が供給される場合、前記逆変換回路から前記降圧回路に供給される電流が所定の値となるよう前記複数の昇圧スイッチング素子のスイッチングを制御する電源装置。
【請求項2】
前記降圧回路は、直列に接続される正負1対の入力キャパシタをさらに有し、
前記少なくとも1対の降圧スイッチング素子は、前記入力キャパシタの電圧が印加される、請求項に記載の電源装置。
【請求項3】
三相交流の一次電源から正の電圧及び負の電圧を取り出す複数の順変換ダイオードを有し、前記降圧回路に直流電圧を入力する順変換回路をさらに備える、請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記降圧回路は、前記降圧スイッチング素子及び前記インダクタをそれぞれ複数対有し、
前記制御回路は、複数対の前記降圧スイッチング素子を異なるタイミングでスイッチングする、請求項1からのいずれかに記載の電源装置。
【請求項5】
請求項1からのいずれかに記載の電源装置と、
前記降圧回路の入力側に接続される直流回路と、
を備える電力システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置及び電力システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工業用途において、交流電源で駆動される電気モータを用いる装置(産業機械)が広く利用されている。ユーザが利用できる交流電源の電圧、つまり構内配電系統の電圧は、ユーザによって異なる場合がある。一般的に、日本国では、AC200Vの三相交流で構内配電される場合が多いが、他の国では、例えばAC380VからAC480V程度の配電系統が採用される例が多い。また、同じ国の中であっても、受電設備の構成によって構内配電系統の電圧が異なる場合もある。
【0003】
例えば産業用ロボット等では、様々なサイズ、軸数、システム構成が存在し、ユーザが利用できる電源電圧も様々であり、個別の電圧に合わせて装置の設計を変更することは容易ではない。また、電圧毎に装置の設計を変更すると、保守が煩雑となるという不都合も生じる。このため、ユーザが利用できる電源の電圧が既存の装置の電圧とは異なる場合には、電源と装置との間に変圧トランスを配設することで対応することが少なくない。しかしながら、変圧トランスを利用すると、装置の大きさ及び重量が増大すると共にコストが増大する。
【0004】
また、産業用ロボット等では、サーボモータを駆動するために、例えば特許文献1に記載されるように交流を直流に順変換してから所望の周波数の交流に逆変換する電源装置を用いることがある。この場合、直流を変圧することで、電源電圧にかかわらずモータに最適な出力電圧を得ることができると考えられる。つまり、特許文献1に記載の電源装置の直流部分に、チョッパ回路を追加すれば、出力される交流の電圧を調整できる。
【0005】
また、近年、太陽項発電等の再生可能エネルギの利用が広がっており、直流電源が提供される可能性がある。直流電源も、系統毎に電圧が設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018−74794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
海外で良く使用される中性点接地されたAC380V〜AC480V電源を元に、AC200V用のモータを制御可能な交流電源に変換するためには、チョッパ回路により電圧を変換することで得られる。この場合、逆変換回路で三相交流に再変換すると、出力される三相交流電源の中性点がアース電位と異なる電位となってしまう。
【0008】
出力される交流の中性点がアース電位と大きく異なると、サーボモータ等の負荷回路においてアースに対して高い絶縁耐圧が必要となり、絶縁耐圧不足により使用できない場合がある。また、中性点電位がアース電位と大きく異なると、スイッチングノイズが大きくなり誤動作の危険性が増加する。
【0009】
また、サーボモータを駆動するための電源装置では、大容量のコンデンサに電流を流し込むため、サーボモータ加速時に高調波を含んだ大きなピーク電流が流れ、設備電源の大容量化が必要となる。対策として力率改善やピーク電流を抑制する手法が開発されているが、実現するためには高コスト化、大型化を招くため、容易に適用できない。
【0010】
以上のような実情に鑑みて、任意の電圧かつ任意の周波数の交流を出力することができる電源装置が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る電源装置は、少なくとも正負1対の降圧スイッチング素子と、前記降圧スイッチング素子を介して電圧が印加される少なくとも正負1対のインダクタと、直列に接続され、前記インダクタを通過する電流により充電される正負1対の入力キャパシタと、を有し、入力電圧を降圧して出力する降圧回路と、複数の逆変換スイッチング素子を有し、前記降圧回路の出力電圧を交流に逆変換する逆変換回路と、前記降圧回路の出力電圧が所望の電圧となるよう前記複数の降圧スイッチング素子のスイッチングを制御する制御回路と、を備える。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る電源装置は、任意の電圧かつ任意の周波数の交流を出力することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の第1実施形態に係る電源装置の構成を示す回路図である。
図2】本開示の第2実施形態に係る電源装置の構成を示す回路図である。
図3図2の電源装置の異なる使用例を示す回路図である。
図4】本開示の第3実施形態に係る電源装置の構成を示す回路図である。
図5】本開示の第4実施形態に係る電源装置の構成を示すブロック図である。
図6】本開示の第一実施形態に係る電力システムの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の各実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本開示の第1実施形態に係る電源装置1の構成を示す回路図である。
【0015】
電源装置1は、一次電源(直流電源)Sから供給される直流を所定電圧の三相交流に変換して負荷(本実施形態ではモータM)に供給(力行運転)する装置である。より詳しくは、電源装置1は、モータMの定格電圧より高い電圧を有する一次電源Sに接続され、一次電源Sの三相交流を、電圧がモータMの定格電圧に等しく且つ周波数が外部の機器又はユーザによって設定される周波数に等しい三相交流に変換して、モータMに供給する。また、本実施形態の電源装置1は、逆方向にモータMから供給される三相交流を、一次電源Sと電圧が等しい直流に変換して、1次電源Sに供給(回生運転)することができるよう構成されている。
【0016】
電源装置1に、直流を供給する一次電源Sとしては、二次電池等の蓄電装置を含むことが想定される。つまり、1次電源Sは、電源装置1に電力を供給することができると共に、電源装置1から逆方向に供給される電力を蓄電することができるシステムとされる。
【0017】
電源装置1は、一次電源Sから入力される電圧を降圧して出力する降圧回路2と、降圧回路2の出力を交流に逆変換することによって所望の周波数の交流を出力する逆変換回路3と、降圧回路2及び逆変換回路3を制御する制御回路4とを備える。
【0018】
降圧回路2は、一次電源Sによって充電される互いに直列に接続された正負1対の入力キャパシタ(正の電圧により充電される入力キャパシタC11、及び負の電圧により充電される入力キャパシタC12)と、入力キャパシタC11,C12の電圧が印加される正負1対の降圧スイッチング素子(正の電圧が印加される降圧スイッチング素子T11、及び負の電圧が印加される降圧スイッチング素子T12)と、降圧スイッチング素子T11、T22を介して電圧が印加される正負1対のインダクタ(正側の降圧スイッチング素子T11を介して正の電圧が印加されるインダクタL1、及び負側の降圧スイッチング素子T12を介して負の電圧が印加されるインダクタL2)と、互いに直列に接続され、インダクタL1,L2を通過する電流により充電される正負1対の出力キャパシタ(正側のインダクタL1により充電される出力キャパシタC21、及び負側のインダクタL2により充電される出力キャパシタC22)と、降圧スイッチング素子T11,T22とインダクタL1,L2との間を1対の出力キャパシタC21,C22の中間点に接続可能な1対の昇圧スイッチング素子(正側の降圧スイッチング素子T11とインダクタL1との中間点を出力キャパシタC21,C22の中間点に接続する昇圧スイッチング素子T21、及び負側の降圧スイッチング素子T12とインダクタL2との中間点を出力キャパシタC21,C22の中間点に接続する昇圧スイッチング素子T22)と、降圧スイッチング素子T11,12と並列に設けられ、逆方向に電流を流すことができる1対のバイパスダイオード(正側の降圧スイッチング素子T11と並列に設けられるバイパスダイオードD11、及び負側の降圧スイッチング素子T12と並列に設けられるバイパスダイオードD12)と、昇圧スイッチング素子T21,22と並列に設けられ、逆方向に電流を流すことができる1対の保護ダイオード(正側の昇圧スイッチング素子T21と並列に設けられる保護ダイオードD21、及び負側の昇圧スイッチング素子T22と並列に設けられる保護ダイオードD22)と、入力キャパシタC11,C12の中間点及び出力キャパシタC21,C22の中間点を接地する接地コンデンサCgと、を備える。
【0019】
1対の入力キャパシタC11,C12は、それぞれ1又は複数のコンデンサによって構成することができ、互いに容量が等しい。1対の出力キャパシタC21,C22も同様に、それぞれ1又は複数のコンデンサによって構成することができ、互いに容量が等しい。降圧スイッチング素子T11,T22、及び昇圧スイッチング素子T21,T22は、例えば図示するFET等の半導体スイッチング素子によって構成することができ、後述する制御回路4によってオン/オフ状態が制御される。1対のインダクタL1,L2は、それぞれ1又は複数のコイルによって構成することができ、互いにインダクタンスが等しい。バイパスダイオードD11,D12及び保護ダイオードD21,D22は、降圧スイッチング素子T11,T12及び昇圧スイッチング素子T21,T22を逆方向の電圧から保護するものであり、降圧スイッチング素子T11,T12及び昇圧スイッチング素子T21,T22の種類によっては省略可能である。
【0020】
逆変換回路3は、複数の逆変換スイッチング素子(第1相の正の電圧を出力する逆変換スイッチング素子T31、第2相の正の電圧を出力する逆変換スイッチング素子T32、第3相の正の電圧を出力する逆変換スイッチング素子T33、第1相の負の電圧を出力する逆変換スイッチング素子T34、第2相の負の電圧を出力する逆変換スイッチング素子T35、及び第3相の負の電圧を出力する逆変換スイッチング素子T36)と、逆変換スイッチング素子T31,T32,T33,T34,T35,T36と並列に設けられ、逆方向に電流を流すことができる複数の回生ダイオード(逆変換スイッチング素子T31と並列に設けられ、第1相の正の電流を通す回生ダイオードD31、逆変換スイッチング素子T32と並列に設けられ、第2相の正の電流を通す回生ダイオードD32、逆変換スイッチング素子T33と並列に設けられ、第3相の正の電流を通す回生ダイオードD33、逆変換スイッチング素子T34と並列に設けられ、第1相の負の電流を通す回生ダイオードD34、逆変換スイッチング素子T35と並列に設けられ、第2相の負の電流を通す回生ダイオードD35、及び逆変換スイッチング素子T36と並列に設けられ、第3相の負の電流を通す回生ダイオードD36)と、を有する
【0021】
逆変換スイッチング素子T31,T32,T33,T34,T35,T36は、FET等の半導体スイッチング素子によって構成することができ、後述する制御回路4によってオン/オフ状態が制御される。回生ダイオードD31,D32,D33,D34,D35,D36は、逆変換スイッチング素子T31,T32,T33,T34,T35,T36を逆方向の電圧から保護するダイオードと兼用することができる。
【0022】
制御回路4は、マイクロプロセッサーを有する構成とすることができる。制御回路4は、降圧回路2、及び逆変換回路3の制御のために必要な情報を、電源電圧モニタA1、入力電圧モニタA2、出力電流モニタA3、及び出力電圧モニタA4から取得する。なお、簡略化のために、回路図において、制御回路4及び各モニタA1〜A4の回路構成は図示が省略されており、制御のために必要とされる降圧回路2及び逆変換回路3、並びに各モニタA1〜A4と制御回路4との間の信号線、例えば降圧スイッチング素子T11,T22及び昇圧スイッチング素子T21,T22を制御するための信号線等は、降圧回路2及び逆変換回路3と制御回路4との間の単一の矢印を有する線としてまとめて示す。
【0023】
制御回路4は、降圧スイッチング素子T11,T22、昇圧スイッチング素子T21,T22、及び逆変換スイッチング素子T31,T32,T33,T34,T35,T36のスイッチングを制御することによって、降圧回路2の入力側に電源Sから供給される直流を圧力が低い交流に変換して逆変換回路3からモータMに供給する力行運転と、逆変換回路3に出力側のモータMから供給される交流を圧力が高い直流に変換して降圧回路2の入力側から電源Sに供給する回生運転とを行う。
【0024】
制御回路4は、力行運転時には、昇圧スイッチング素子T21,T22をオフ状態に保持し、降圧回路2の出力電圧(出力キャパシタC21,C22)が所望の電圧となるよう複数の降圧スイッチング素子T11,T22のスイッチングを制御する。また、制御回路4は、力行運転時には、逆変換回路3が外部から設定される周波数の交流を出力するように複数の逆変換スイッチング素子T31,T32,T33,T34,T35,T36のスイッチングを制御する。さらに、制御回路4は、出力キャパシタC21,C22の中間点の電位が所定の電位又は所定範囲内の電位となるよう、昇圧スイッチング素子T21,T22のスイッチングを制御する。
【0025】
降圧回路2の出力電圧は、降圧スイッチング素子T11,T12のデューティ(オンする時間の比率)を変更するPWM(Pulse Width Modulation)制御によって調整することができる。降圧回路2の出力電圧を逆変換回路3からモータMに供給する三相交流電圧の波高値に調整することによって、逆変換回路3が適切な電圧の三相交流を出力することができる。
【0026】
出力キャパシタC21,C22の中間点の電位は、正側の降圧スイッチング素子T11のデューティと負側の降圧スイッチング素子T12のデューティとを異ならせることにより調節することができる。出力キャパシタC21,C22の中間点の電位を適切に調整することによって、モータMに供給される三相交流の中性点電位を安定させることができ、モータMに要求される絶縁耐圧を小さくすることができる。
【0027】
制御回路4は、回生運転時には、逆変換回路3から降圧回路2に供給される電流が所定の値となるよう複数の昇圧スイッチング素子T21,T22のスイッチングを制御する。逆変換回路3から降圧回路2に供給される電流は、昇圧スイッチング素子T21,T22のデューティを変更するPWM制御によって調整することができる。昇圧スイッチング素子T21,T22のデューティを調節することで、出力キャパシタC21,C22からインダクタL1,L2に流出する電流を調節することができる。これにより、出力キャパシタC21,C22の電圧が変更されるので、モータMから逆変換回路3を介して降圧回路2に供給される電流を調節することができる。これにより、モータMの過電流を防止してモータMを保護することができる。
【0028】
本実施形態に係る電源装置1は、降圧回路2、逆変換回路3及び制御回路4を備えることによって、一次電源1の電圧よりも低い所定の電圧(モータMの定格電圧に対応する電圧)かつ任意の周波数の交流を出力することができる。
【0029】
また、本実施形態に係る電源装置1は、降圧回路2が昇圧スイッチング素子T21,T22を有し、逆変換回路3が回生ダイオードD31,D32,D33,D34,D35,D36を有するため、モータMが発電機として動作する場合、モータが発電した電力を1次電源Sの電圧に昇圧して1次電源Sに供給することができる。
【0030】
また、電源装置1において、降圧回路2は、正負1対の入力キャパシタC11,C12を有するため、特に回生運転時に入力側の電圧が安定するため、1次電源Sに対して適切に電力を供給することができる。
【0031】
図2は、開示の第2実施形態に係る電源装置1aの構成を示す回路図である。図2の電源装置1aについて、図1の電源装置1と同じ構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する。
【0032】
本実施形態の電源装置1aは、一次電源(交流電源)Saから供給される三相交流を電圧及び周波数が異なる三相交流に変換して負荷(本実施形態ではモータM)に供給(力行運転)する装置である。より詳しくは、電源装置1aは、モータMの定格電圧以上の電圧を有する中性点接地された一次電源Saに接続され、一次電源Saの三相交流を、電圧がモータMの定格電圧に等しく、且つ周波数が外部の機器又はユーザによって設定される周波数に等しい三相交流に変換して、モータMに供給する。また、本実施形態の電源装置1aは、逆方向にモータMから供給される三相交流を、一次電源Saと電圧及び位相が等しい三相交流に変換して、1次電源Saに供給(回生運転)することができるよう構成されている。
【0033】
電源装置1aは、一次電源Saから正の電圧及び負の電圧を取り出す順変換回路5と、順変換回路5から入力される電圧を降圧して出力する降圧回路2と、降圧回路2の出力を交流に逆変換することによって所望の周波数の交流を出力する逆変換回路3と、順変換回路5及び逆変換回路3を制御する制御回路4aとを備える。つまり、本実施形態の電源装置1aは、第1実施形態の電源装置1に順変換回路5を付加し、制御回路4aに順変換回路5を制御する機能を付加したものである。
【0034】
順変換回路5は、三相交流の一次電源Saの各相から正の電圧及び負の電圧を取り出す複数の順変換ダイオード(第1相の正の電圧を取り出す順変換ダイオードD41、第2相の正の電圧を取り出す順変換ダイオードD42、第3相の正の電圧を取り出す順変換ダイオードD43、第1相の負の電圧を取り出す順変換ダイオードD44、第2相の負の電圧を取り出す順変換ダイオードD45、及び第3相の負の電圧を取り出す順変換ダイオードD46)を有する。つまり、順変換回路5は、いわゆる三相ダイオードブリッジ回路である。
【0035】
また、順変換回路5は、順変換ダイオードD41,D42,D43,D44,D45,D46と並列に設けられる複数の回生スイッチング素子T41,T42,T43,T44,T45,T46をさらに有する。回生スイッチング素子T41,T42,T43,T44,T45,T46は、例えば図示するFET等の半導体スイッチング素子によって構成され、制御回路4aによってオン/オフ状態が制御される。
【0036】
順変換回路5は、回生運転時には、降圧回路2から入力側に出力される直流を1次電源Saに同期する交流電圧に変換して1次電源Saに供給する。このために、制御回路4aは、図1の電源装置1における制御に加えて、回生運転時には、電圧モニタA4から一次電源Saの電圧及び位相の情報を取得し、1次電源Saに同期して各相に正負の電流を供給するよう回生スイッチング素子T41,T42,T43,T44,T45,T46のスイッチングを制御する。
【0037】
本実施形態の電源装置1aは、順変換回路5を備えるため、一次電源1aから供給される三相交流を整流して降圧回路2に供給し、降圧回路2でモータMに合わせた電圧に降圧してから、逆変換回路3により任意の周波数の三相交流に逆変換して出力することができる。また、本実施形態の電源装置1aは、順変換回路5が回生スイッチング素子T41,T42,T43,T44,T45,T46を有するため、モータMが発電した電力を1次電源Saに供給することができる。
【0038】
図3は、図2の電源装置1aの異なる利用例を示す回路図である。図3において、電源装置1aは、順変換回路の入力側に三相交流の一次電源1aが接続され、降圧回路2の入力側に直流の一次電源Sが接続されている。
【0039】
このように、電源装置1aは、直流の一次電源Sと三相交流の一次電源1aとの両方から電力が供給され得ると共に、直流の一次電源Sと三相交流の一次電源1aとの両方にモータMが発電した電力を逆方向に供給することができる。
【0040】
図4は、本開示の第3実施形態に係る電源装置1bの構成を示す回路図である。本実施形態の電源装置1bは、図2の電源装置1aと同様に、一次電源(交流電源)Saから供給される三相交流を、電圧及び周波数が異なる三相交流に変換して、モータMに供給することができると共に、逆方向にモータMから供給される三相交流を、一次電源Saと電圧及び位相が等しい三相交流に変換して、1次電源Sに供給することができる。
【0041】
本実施形態の電源装置1bは、一次電源Saから正の電圧及び負の電圧を取り出す順変換回路5と、順変換回路5から入力される電圧を降圧して出力する降圧回路2bと、降圧回路2bの出力を交流に逆変換することによって所望の周波数の交流を出力する逆変換回路3と、順変換回路5及び逆変換回路3を制御する制御回路4bとを備える。図4の電源装置1bは、降圧回路2bの構成が図2の電源装置1aの降圧回路2の構成とは異なり、これに伴って制御回路4bの制御の内容が図2の電源装置1aの制御回路4aの内容とは異なる点を有する。
【0042】
降圧回路2bは、順変換回路5の出力電流により充電される互いに直列に接続された容量が等しい正負1対の入力キャパシタC11,C12と、入力キャパシタC11,C12の電圧が印加される正負3対の降圧スイッチング素子(入力側が互いに接続され、正の電圧が印加される3つの降圧スイッチング素子T111,T112,T113、及び入力側が互いに接続され、負の電圧が印加される3つの降圧スイッチング素子T121,T122,T123)と、降圧スイッチング素子T111,T112,T113,T121,T122,T123の出力側にそれぞれ接続され、降圧スイッチング素子T111,T112,T113,T121,T122,T123を介して電圧が印加されるインダクタンスが等しい正負3対のインダクタ(正側の降圧スイッチング素子T111,T112,T113を介して正の電圧が印加されるインダクタL11,L12,L13、及び負側の降圧スイッチング素子T121,T122,T123を介して負の電圧が印加されるインダクタL21,L22,L23)と、互いに直列に接続され、正側のインダクタL11,L12,L13又は負側のインダクタL21,L122,L123を通過する電流により充電される容量が等しい正負1対の出力キャパシタC21,C22と、降圧スイッチング素子T111,T112,T113,T121,T122,T123とインダクタL11,L12,L13,L21,L22,L23との間を1対の出力キャパシタC21,C22の中間点に接続可能な3対の昇圧スイッチング素子(正側の第1の降圧スイッチング素子T111と第1のインダクタL11との中間点を出力キャパシタC21,C22の中間点に接続する昇圧スイッチング素子T211、正側の第2の降圧スイッチング素子T112と第2のインダクタL12との中間点を出力キャパシタC21,C22の中間点に接続する昇圧スイッチング素子T212、正側の第3の降圧スイッチング素子T113と第1のインダクタL13との中間点を出力キャパシタC21,C22の中間点に接続する昇圧スイッチング素子T213、負側の第1の降圧スイッチング素子T121と第1のインダクタL21との中間点を出力キャパシタC21,C22の中間点に接続する昇圧スイッチング素子T221、負側の第2の降圧スイッチング素子T122と第2のインダクタL22との中間点を出力キャパシタC21,C22の中間点に接続する昇圧スイッチング素子T222、及び負側の第3の降圧スイッチング素子T123と第1のインダクタL23との中間点を出力キャパシタC21,C22の中間点に接続する昇圧スイッチング素子T223)と、降圧スイッチング素子T111,T112,T113,T121,T122,T123とそれぞれ並列に設けられ、逆方向に電流を流すことができる3対のバイパスダイオードD111,D112,D113,D121,D122,D123と、昇圧スイッチング素子T211,T212,T213,T221,T222,T223とそれぞれ並列に設けられ、逆方向に電流を流すことができる3対の保護ダイオードD211,D212,D213,D221,D222,D223と、入力キャパシタC11,C12の中間点及び出力キャパシタC21,C22の中間点を接地する接地コンデンサCgと、を備える。
【0043】
制御回路4bは、力行運転時には、正側の降圧スイッチング素子T111,T112,T113をPWM制御の周期内で位相をずらして異なるタイミングでオン/オフする。負側の降圧スイッチング素子T121,T122,T123は、それぞれ対をなす正側の降圧スイッチング素子T111,T112,T113と略同じ位相(入力キャパシタC11,C12の中間点及び出力キャパシタC21,C22の中間点の電位調節のための微小なタイミングのずれを許容する)でオン/オフされることが好ましい。このように、降圧スイッチング素子T111,T112,T113,T121,T122,T123のスイッチングのタイミングをずらすことにより、スイッチングノイズを分散して、単一のスイッチング素子により電流を制御する場合と比べてノイズレベルを低減することができる。同様に、制御回路4bは、回生運転時には、昇圧スイッチング素子T211,T212,T213,T221,T222,T223のスイッチングの位相をずらすことで、ノイズレベルを低減する。
【0044】
また、複数対の降圧スイッチング素子T111,T112,T113,T121,T122,T123及び複数対の昇圧スイッチング素子T211,T212,T213,T221,T222,T223を設けることによって、各素子を流れる電流が少なくなるため、より高速な動作を実現したり、電源装置1bを小型化したりすることも可能となる。さらに、複数対の降圧スイッチング素子T111,T112,T113,T121,T122,T123及び複数対の昇圧スイッチング素子T211,T212,T213,T221,T222,T223を用いることにより、リップル電圧の低減による電圧の安定化や、発熱を分散することで動作を安定させることもできる。
【0045】
図5は、本開示の第4実施形態に係る電源装置1cの構成を示すブロック図である。本実施形態の電源装置1cは、一次電源(交流電源)Saから避雷器(Surge Protective Device)Pを介して供給される三相交流を、電圧及び周波数が異なる三相交流に変換して、複数の負荷(モータM)に供給することができると共に、負荷から逆方向に供給される電力を、一次電源Saと電圧及び位相が等しい三相交流に変換して、1次電源Saに供給することができるよう構成されている。
【0046】
本実施形態の電源装置1cは、一次電源Saが供給する三相交流から正の電圧及び負の電圧を取り出す順変換回路5と、並列に接続され、順変換回路5から入力される電圧を降圧して出力する複数の降圧回路2と、降圧回路2の出力を交流に逆変換することによってそれぞれ所望の周波数の交流を出力する複数の逆変換回路3と、順変換回路5及び逆変換回路3を制御する制御回路4cとを備える。また、図5には、制御回路4cのための制御電源Qを合わせて示す。図5の電源装置1cは、図2の電源装置1aの降圧回路2及び逆変換回路3を複数設け、制御回路が各降圧回路2及び各逆変換回路3の動作を制御するよう構成されている。
【0047】
電源装置1cは、複数のモータMの駆動周波数をそれぞれ個別に設定することができる。また、電源装置1cは、駆動したいモータMの数が増大した場合に、逆変換回路3を追加することによって、各モータMを独立して駆動することができる。さらに、電源装置1cは、モータMの合計容量が増大する場合には、降圧回路2を追加することによって、すべてのモータMに同時に定格以上の電力を供給することができる。
【0048】
図6に、開示の一実施形態に係る電力システムの構成を示す。この電力システムは、交流バス(交流配電網)Xを有する交流回路と、直流バス(直流配電網)Yを有する直流回路と、交流回路及び直流回路に接続される図2の電源装置2aとを備える。具体的には、電源装置2aの受変換回路6の入力側には交流回路の交流バスXから三相交流が供給され、電源装置2aの降圧回路2の入力側には直流回路の直流バスYから直流が供給される。つまり、この電力システムは、図3の電源装置1aにおいて、交流電源Saを交流電力ネットワークに置き換え、直流電源Sを直流電力ネットワークに置き換えたものである。
【0049】
交流バスXは、電力会社から供給される高圧の三相交流を低圧の三相交流に変圧して供給する構内配電網が想定される。一方、直流バスYは、例えばソーラーパネル発電モジュールG1、風力発電機G2等の発電装置、及び例えば二次電池E1、フライホイールE2等の蓄電装置が接続され得る。
【0050】
本実施形態に係る電力システムは、モータ(負荷)Mの仕様に合わせて、交流バスX及び直流バスYより低い電圧且つ所望の周波数の交流をモータMに供給することができる。また、本実施形態に係る電力システムはモータMを発電機として利用し、モータMが発電した電力を昇圧して交流バスX及び直流バスYに供給することもできる。
【0051】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は前述した実施形態に限るものではない。また、本実施形態に記載された効果は、本開示から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、本開示による効果は、本実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0052】
上記実施系形態の電源装置において、回生運転のための構成は省略してもよい。また、上記実施系形態の電源装置において、接地コンデンサも省略することができる。本開示に係る電源装置は、モータ以外の負荷に交流電力を供給するために使用してもよい。
【0053】
上述の第3実施形態に係る電源装置では、降圧回路が降圧スイッチング素子、インダクタ及び昇圧スイッチング素子をそれぞれ3対有しているが、降圧回路は、降圧スイッチング素子、インダクタ及び昇圧スイッチング素子をそれぞれ2対又は4対以上有していてもよい。
【0054】
本開示に係る電力システムは、電源装置が順変換回路を有せず、直流回路のみに接続されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,1a,1b,1c 電源装置
2,2a 平滑回路
3 逆変換回路
4,4a,4b,4c 制御回路
5 順変換回路
C11,C12 入力キャパシタ
C21,C22 出力キャパシタ
Cg 接地コンデンサ
L1,L2,L11,L12,L13,L21,L22,L23 インダクタ
S,Sa 一次電源
T11,T12,T111,T112,T113,T121,T122,T123 降圧スイッチング素子
T21,T22,T211,T212,T213,T221,T222,T223 昇圧スイッチング素子
T31,T32,T33,T34,T35,T36 逆変換スイッチング素子
T41,T42,T43,T44,T45,T46 回生スイッチング素子
X 交流バス
Y 直流バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6