(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理工程(a)又は工程(b)が、約260℃(約500°F)〜約371℃(約700°F)の範囲の温度を更に含み、前記処理工程(a)又は(b)が、約30秒〜約1時間の範囲の時間にわたって適用される、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
前記改質された溶媒から、前記改質されたコーティングされた刃先の、いずれも取り出さない、その一部分を取り出す、又はその全てを取り出す工程(e)を更に含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
前記処理工程(a)又は工程(b)が、前記刃を容器内に配置すること、前記容器を密閉すること、前記溶媒を前記容器に配置すること、前記容器を加熱すること、前記溶媒を取り出すこと、又は前記刃を冷却することを更に含む、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、改善された刃先を提供するための新規な溶媒及びプロセスを提供する。
【0023】
本発明は、剃毛属性の改善を示すように形成される、カミソリ刃の刃先に関する。本発明の主要な一態様は、低い切断抵抗力及び低い摩擦力を有する薄いコーティングを刃先上に形成させる、新規な溶媒を生成することを目的とする。「薄い」という用語は、本発明のカミソリ刃先上のコーティングの厚さを指す。一般的に、刃先上のコーティングが薄くなるほど、切断抵抗力がより低くなり、剃毛属性はより良好になる。刃先のコーティングに通常利用される材料は、フルオロポリマーの一種、すなわち、ポリテトラフルオロエチレン又はPTFEである。したがって、PTFEは、本発明の説明の全体を通して言及されるが、実質的に等価として代用可能な任意の他の材料を排除するものではない。
【0024】
刃先上の薄すぎるPTFEコーティングは、ポリマー(例えば、PTFE)材料の固有特性のため、不十分な付着量及び耐摩耗性を引き起こし得る。あるいは、PTFEコーティングが厚すぎると、非常に高い初期の切断抵抗力値を生じさせる場合があり、これは一般に、より大きな抵抗、引張り、及び引きずりをもたらし、結果として、切断効率が失われ、続いて剃毛の快適性が失われる可能性がある。
【0025】
1つの手法は、本明細書の譲受人に譲受され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第5,985,459号に記載されているような、FLUTEC(登録商標)技術を適用したものであり、当該技術は、噴霧及び焼結プロセスによって生成される比較的厚いPTFEコーティングの厚さを低減させる(例えば、又は薄化する)ことができる。このプロセスは、
図1に示されるように、フロー10で表され、先端部13の上及び周辺に、PTFE粒子11を噴霧してコーティングした刃12を、工程14で示されるように、約1気圧(1atm)及び摂氏約330度(℃)〜約370℃の温度で、アルゴンを使用して焼結して、焼結PTFEコーティング16を生成する。続いて、工程17で示されるように、FLUTEC(登録商標)技術をコーティング16に行って、薄化PTFEコーティング18を生成する。これは、典型的に、約270℃〜約370℃高温度下で、及び約3気圧〜約6気圧の圧力で、PTFEコーティングした刃16を溶媒中に浸漬することを含む。FLUTEC(登録商標)プロセスで利用される溶媒としては、パーフルオロアルカン、パーフルオロシクロアルカン、又はパーフルオロポリエーテルを挙げることができる。
【0026】
本発明は、ポリマー材料の属性と、改善された剃毛属性の提供が可能な最も望ましい薄いコーティングとを両立させるための、技術的な課題を解決する。特定の実施形態において、本発明は、改善されたFLUTEC(登録商標)技術プロセス、及び改善されたFLUTEC(登録商標)溶媒を提供する。例えば米国特許第5,985,459号で述べられるように、刃は、2、3分以上にわたって、Flutec PP11などのFlutecオリゴマー、又はパーフルオロパーヒドロフェナントレンに浸漬され、圧力下で加熱される。この溶液は、刃上のコーティングを部分的に除去することによって、刃を処理する。具体的には、除去されるコーティングは、一般に、所望に応じて事前に噴霧された、又は噴霧され、焼結され得る外側コーティングであり、典型的には、軟質で潤滑性のコーティング(例えば、PTFEなどのポリマー材料)である。
【0027】
しかしながら、本発明は、FLUTEC(登録商標)溶媒(又は同等物)の最初の使用が、一般に、ウールフェルト切断抵抗値などの所望される刃先属性を改善する際に、完全に効果的であるとは限らないと認識している。驚くべきことに、いくつかの事例において、刃先に関するウールフェルト切断抵抗試験値を取得したときに、Flutecの最初の使用が、悪影響を受けたことを見出した。
【0028】
本発明の刃は、既に利用したFLUTEC(登録商標)溶媒溶液を通して、1回又は複数回、あるときには、およそ50回、80回、又は100回処理又は「稼働」される(又は約1回〜約100回の範囲で「稼働」される)。この新規なプロセスは、予想外にも、刃先に関して改善されたウールフェルト切断抵抗を達成した。更に、同じ既に利用したFLUTEC(登録商標)溶媒を通して、刃を複数回、あるときには、およそ50回、80回、又は100回「稼働」した(又は約1回〜約100回の範囲で「稼働」した)後にだけ、取得した望ましいウールフェルト切断抵抗値が、その後の稼働時に維持された(例えば、安定した)、又は再現された。
【0029】
したがって、本発明の好ましい一実施形態によれば、高められたウールフェルト切断抵抗値などの刃先属性を提供する際に非常に効果的である、「処理された」又は改質されたFlutec溶媒が提供される。また、改質されたFlutec溶媒が、更なる利点を溶液に提供するものとして認識された1つ以上の化合物を有したことも驚くべきことであった。本明細書に記載される本発明のこれらの化合物は、脱フッ素化合物と称され、また、1ppm未満の濃度である。これらの化合物に加えて、除去した刃先コーティングの一部分又は粒子、及び特にTeflon又はPTFEコーティング、又は鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はその粒子、表面、若しくは化合物もまた新規な溶媒中に存在させることができる。
【0030】
本発明は、元々のFlutec溶媒、1つ以上の脱フッ素化合物、Teflon又はPTFE、及び/又は鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はその粒子、表面、若しくは化合物による、(元々の、又は改質された)Flutec溶媒のドーピング、又はその追加を想到する。
【0031】
本明細書に記載される全ての割合及び比率は、別途指示されない限り、重量基準である。
【0032】
本明細書で使用するときに、「カミソリ刃先」又は「カミソリ刃の刃先」又は「刃先」という用語は、刃の切断点及び切断面を含む。
【0033】
本明細書で使用するときに、「溶液」とは、成分が共に混合されることを示す均質な混合物である。「溶液」は、溶解されている物質である溶質で構成される。「溶媒」は、溶質が溶解する最大量の物質である。本発明の溶液は、好ましくは、Flutec溶媒、又は他の化合物、成分、溶質、又はこれらの組み合わせを含む、改質されたFlutec溶媒を含む。本発明の溶質は、好ましくは、1つ以上の脱フッ素化合物、PTFE、又は鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はその粒子、表面、若しくは化合物を含む。本発明の理想的な改質されたFlutec溶液は、溶媒溶液の一種であり、したがって、溶媒及び溶液という用語は、本明細書で交換可能に使用され得る。
【0034】
本明細書で使用するときに、「化合物」は、不純物、ドーパント、反応副生成物、分解生成物、又はこれらの任意の組み合わせとして定義される。
【0035】
本発明において、刃の属性は、種々の試験を使用して測定することができる。切断抵抗力の測定は、刃の鋭さと相関する。処理した刃の、刃の鋭さは、切断抵抗力について刃を試験することによって定量化することができる。切断抵抗力は、各刃がウールフェルトを切断するのに必要な力を測定することによって刃の切断抵抗力値を測定する、ウールフェルト切断試験によって決定される。各刃は、ウールフェルト切断機を通して5回稼働され、(例えば、ポンドでの)各切断力を記録器で測定する。5回の切断のうち最も低いものが、切断抵抗力として定義する。本発明において、ウールフェルト切断試験は、好ましくは、各処理又は稼働の後に、刃又は刃の試料に対して行われる。刃の属性を決定するための、シリコン油滴試験及び顕微鏡隆起評価などの他の試験もまた本発明で想到される。
【0036】
図2に示されるように、本発明の新規なプロセス20の概略図が提供される。
図3は、本発明の新規なプロセスの補完的なフロー
図30を示す。
図2には、複数のカミソリ刃のスタック22が存在し、各スタックは、
図2Aの拡大矢視に示されるように、個々のカミソリ刃22aを含む。最初に、これらの刃を容器24内に配置する。本発明のいくつかの刃スタック22は、互いに隣接して配置された、最高5000枚の刃を有することができる。本発明における処理については、1枚〜約50枚以上の刃スタックを調製することができる。これらの調製された刃は、望ましくは、ポリマー、好ましくはテロマー又はポリテトラフルオロエチレン若しくはPTFEなどのポリフルオロカーボンの軟質で潤滑性の層でコーティングされる。コーティングされた刃は、
図3のフロー
図30の工程31に示される。コーティングプロセスは、噴霧によって、又は噴霧及び焼結によって生じさせることができるが、刃先へのこのコーティングの任意の実現可能な適用が本発明で想到される。例えば、コーティングプロセスは、浸漬、スピンコーティング、スパッタリング、又は熱化学蒸着(CVD)が挙げられるが、これに限定されない、任意の方法によって最初に蒸着させることができる。
【0037】
複数のコーティングされた刃22aを有する調製したカミソリ刃スタック22のうちの1つ以上を容器26の中へ配置する。次いで、溶媒25を容器26の中へ配置する。これも
図3のフロー工程32に示される。このプロセスに使用することができる溶媒の種類は、例えば米国特許第5,985,459号に開示されるように、ポリフルオロカーボンの溶解力、溶解温度、極性、及び他のパラメータに基づいて選択することができる。
【0038】
本発明溶媒の好適な構造式は、C
14F
24である。この構造式を有する任意の構造が本発明で想到される。本発明のC
14F
24溶媒の1つの例示的な化合物構造42を
図4に示す。本発明の1つの好適な溶媒は、パーフルオロテトラデカヒドロフェナントレンである。本発明で使用するための溶媒の好適な商標名は、FLUTEC(登録商標)である。好適な種類のFLUTEC(登録商標)溶媒は、Flutec(登録商標)PP−11である。
【0039】
その元々の、又は未改質の状態におけるFlutec溶媒25は、それが供給元から受容したままの溶媒であるという点で、「未使用」又は開始状態の溶媒とみなすことができる。次いで、この元々のFlutec溶媒を、刃先上のポリマーコーティングを薄くする、及び/又は溶解させる温度まで加熱する。本発明において、溶媒を加熱するための好ましい温度は、約260℃〜約371℃(華氏約500度〜約700度)の範囲、好ましくは約326℃(華氏約618度)である。刃は、約30秒〜約1時間の範囲の時間にわたって、好ましくは約90秒の時間にわたって、好ましくは加熱した溶媒の中に、望ましくは密閉容器26の中に配置される。容器から刃を取り出すために、望ましくは容器から溶媒を排出することができ、そして、望ましくは刃を冷却することができる。
【0040】
「稼働」という用語は、本発明で使用されるときに、好ましくは、刃を容器に配置する工程、容器を密閉する工程、溶媒を容器に配置する工程、容器を加熱して一定量の時間にわたって溶媒を加熱する工程、改質された溶媒を取り出す工程、刃を冷却する工程、及び試験のために刃を取り出す工程が挙げられるが、これらに限定されない工程を含む。本発明の代替の実施形態において、「稼働」は、上記の全ての工程を含まない場合があり、又は稼働は、異なる順序の工程を含み得る。
【0041】
これらの条件の下で、(例えば、
図3の工程33で)刃先からのPTFEコーティングの部分的な除去が存在するように、刃を処理する。上で述ベたように、この除去は、一般に、刃先上のコーティングの低減、溶解、又は薄化に望ましい。故に、コーティングされたカミソリ刃先が改質され、これらの改質された刃22a’は、
図2において参照される。加えて、Flutec溶媒25も改質されており、現時点で
図2において溶媒25’であり、当該溶媒は、現時点で、除去されたコーティング、特にTeflon又はPTFEコーティングの少なくとも一部分又はその粒子を含む。
【0042】
PTFEの一部分又は粒子は、望ましくは、Flutec溶液中に溶解される。例えば、この改質されたFlutec溶媒25’を
図2に示す。
【0043】
本発明の好ましい実施形態の新規な態様によれば、また、矢印27及び37によってそれぞれ
図2及び
図3に示されるように、この改質されたFlutec溶液25’は、1回以上再使用される。改質された溶媒25’は、好ましくは、刃スタック22上の改質された刃22a’のいずれによっても再使用されないか、その一部分又は全てが再使用される。
【0044】
刃は、改質されたFlutec溶媒中で処理及び/又は再処理される。本発明は、改質された溶媒中で再処理するための複数の「刃」のシナリオを想到する。いくつかの場合では、
図3の工程38に示されるように、同じ刃(例えば、同じ刃スタック)を処理し続けることが望ましくなり得る。他の場合では、
図3の工程38に示されるように、1回以上の稼働の後に、改質された刃スタックを取り出し、それをテロマーでコーティングした新しい刃の刃スタック(例えば、新たに噴霧した刃、及び/又は新たに噴霧し、焼結した刃)と交換することが望ましくなり得る。また更に、
図3の工程38に示されるように、溶媒によってまだ処理されていない、新たに噴霧した刃、及び/又は新たに噴霧し、焼結した刃と、処理されており、したがって、PTFEが除去されていない改質された刃とみなされる刃(例えば、1回以上の処理を受けたスタック上にある刃)との組み合わせを有することが望ましくなり得る。また更に、
図2に示されるように、PTFE又は他のポリマー28及び/又は元々のFlutec溶媒29は、Flutec溶媒の中へ直接加えることができる。したがって、
図2又は
図3に示されるように、ポリマー28、元々のFlutec溶媒29、鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はその粒子、表面、若しくは化合物21、及び/又は1つ以上の脱フッ素化合物23は、一番最初を含む、本明細書に記載されるプロセス工程のうちの任意の1つの間に、任意の量で、任意のときに溶媒25の中へ加えることができる。この、ポリマー又はPTFE28、及び元々のFlutec溶媒29、及びこれらの他の化合物を加える態様もまた、矢印37から生じる工程38で
図3に示される。
【0045】
その後の各溶媒処理又は稼働(例えば、改質されたFlutec溶液の使用及び再使用)によって、刃先から、残留するPTFEコーティングのますます多くの部分が除去された。これは、コーティングされたカミソリ刃先(例えば、より薄いコーティング)を再度改質し、また、Flutec溶液を再度改質する(例えば、除去された刃先コーティングの追加的な粒子が、改質されたFlutec溶液中に溶解する)。
【0046】
溶媒溶液が改質されるにつれて、溶媒の色が突然変化する。その色は、元々のFlutecの色と異なる。その色は、溶媒がその元々の、又は「未使用の」状態であるときの(例えば、水のような)透明かつ無色から、溶媒がその理想的な改質された状態であるときの(例えば、尿のような)淡黄色〜黄色の範囲に変化する。いくつかの事例において、溶媒は、黄褐色である。
【0047】
1回又は複数回の稼働後に、刃属性を試験することができる。これは、例えば、
図3の試験工程35において生じる。1つの既知の刃属性は、鋭さである。上で述べたように、切断抵抗力の測定は、鋭さと相関する。処理した刃の、刃の鋭さは、切断抵抗力について刃を試験することによって定量化することができる。切断抵抗力は、各刃がウールフェルトを切断するのに必要な力を測定することによって刃の切断抵抗力値を測定する、ウールフェルト切断試験によって測定される。各刃は、ウールフェルト切断機を通して5回稼働され、(例えば、ポンドでの)各切断力を記録器で測定する。5回の切断のうち最も低いものが、切断抵抗力として定義する。本発明において、ウールフェルト切断試験は、好ましくは、各処理又は稼働の後に、刃又は刃の試料に対して行われる。
【0048】
刃の属性を決定するための、シリコン油滴試験及び顕微鏡隆起評価などの他の既知の試験もまた本発明で想到される。
【0049】
多量のTeflon又はPTFEが溶解した、又は別様にはその中に存在する溶液の再使用が、効果的な溶媒を提供することは明確に理解されていないか、明白でなかった。
【0050】
本発明の改質されたFlutec溶液はまた、驚くべきことに、下でより詳細に論じられる1つ以上の脱フッ素化合物でも構成される。これらの1つ以上の脱フッ素化合物は、Flutec溶媒との均質な溶液であり得る。改質されたFlutec溶液はまた、鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はその粒子、表面、若しくは化合物(例えば、鉄化合物Fe
2O
3)でも構成され得る。容器が鋼で構成される場合、これらの後者の要素、粒子、化合物、又は表面は、カミソリ刃又は容器に由来し得る。例えば、鉄の存在は、鉄がFlutec溶液(改質された溶液であるかどうかにかかわらず)と接触しているときに、有益な1つ以上の脱フッ素化合物を生成する触媒であり得る。改質されたFlutec溶液はまた、好ましくは黄色でも構成される。
【0051】
改質されたFlutec溶液のこれらの新規な態様は、下で論じる。
【0052】
更に、Flutec溶媒25(元々のFlutec溶媒)が、Teflon又はPTFEなどのポリフルオロカーボンの個体粒子でドープされ得ることが本発明で想到される。
【0053】
また、Flutec溶媒25(元々のFlutec溶媒)が、1つ以上の脱フッ素化合物でドープされ得ることも本発明で想到される。
【0054】
また、Flutec溶媒25(元々のFlutec溶媒)が、鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はその粒子、表面、若しくは化合物(例えば、鉄化合物Fe
2O
3)でドープされ得ることも本発明で想到される。
【0055】
脱フッ素化合物、PTFEの一部分又は粒子を含み、鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はその粒子、表面、若しくは化合物(例えば、鉄化合物Fe
2O
3)を有する、本発明の好適な理想的な改質されたFlutec溶液25’を含む、容器26を表す説明図を
図9に示す。示されないが、理想的な改質された溶液25’は、1つ以上の脱フッ素化合物又はPTFE、又は鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はその粒子、表面、若しくは化合物、又はこれらの任意の組み合わせだけを含み得る。
【0056】
溶媒の再使用が、本明細書に記載されるうちのいくつかを挙げれば脱フッ素化合物又は鉄又は鉄化合物などの新しい構造が提供されるような、及びこれらの構造又は粒子が効果的な溶媒を提供するような方法で、当該溶媒を改質することも認識されていなかった。
【0057】
本発明において、改質された溶媒の好ましくは複数の処理又は稼働(例えば、刃及び溶媒の改質)は、望ましい刃(例えば、刃の最後の一組に対する5回の切断について、約0.32kg(約0.7lb)〜約0.64kg(約1.4lb)の範囲のウールフェルト切断抵抗値)を得るために必要である。許容可能な属性を有する刃が生成されると、溶媒を再利用して更に処理する必要がなくなる。そうした望ましい刃を生成する溶液は、理想的な改質された溶媒を含むものとみなされる。
図3の工程36で示されるように、この溶液は、望ましくは、極めて大規模な刃の生産に使用することができる。
【0058】
本発明において、稼働回数は、刃に関する望ましいウールフェルト切断抵抗、したがって、望ましい溶液又は理想的な改質された溶媒を得るための稼働回数は、1回〜最高約100回の稼働の範囲であり得る。
【0059】
図8を参照すると、新規な溶媒を生成するための本発明プロセスの多数回の稼働にわたるウールフェルト切断抵抗値の分布をチャート80に示す。このチャート80は、ウールフェルト切断抵抗値83に関連する、「稼働」回数81又は溶媒中で刃が処理され、改質された回数を表す。このチャートから、複数回の初期稼働後の、チャート80の領域82内のウールフェルト切断抵抗値は、一般に、約0.73kg(約1.6ポンド(lb))であることが分かり、これらの値は、一般に、切断抵抗力値に好ましいものではない。約35回〜45回の稼働又は処理の後に、領域84に示されるウールフェルト切断抵抗値は、一般に約0.73kg(約1.6lb)〜約0.82kg(約1.8lb)の範囲で、予想外及び不所望に増加する。
図8のチャート領域86から、刃に関する所望のウールフェルト切断抵抗値(例えば、約0.54kg(約1.2lb))を取得し、維持するために、事実上ほぼ約80回の「稼働」が必要であったことが分かる。このチャートには80回の稼働が示されているが、他の場合において、刃に関する所望のウールフェルト切断抵抗値を達成するために80回未満の稼働が必要である場合があり、又は刃に関する所望のウールフェルト切断抵抗値を達成するために80回を超える稼働が必要である場合がある。
【0060】
故に、
図3のフロープロセス30を再度参照して、試験工程35の後に望ましい切断抵抗値が取得された時点で、最後の一組の刃が容器16から取り出され、よって、溶媒自体は、工程36で、容器24(例えば、製造)からの新しいバッチの刃と共に保持し、利用することができることに留意されたい。
【0061】
脱フッ素化合物
本明細書に記載されるように、本発明の元々の溶媒は、好ましくは、
図4に示される例示的な構造42を有する分子式C
14F
24を有する化合物で構成されるが、この構造式の他の立体異性体及び構造異性体が本明細書で想到される。
【0062】
同じく本明細書に記載されるように、本発明の改質された溶媒は、望ましくは、1つ以上の脱フッ素化合物で構成される。これらの化合物は、処理の1回以上の繰り返し又は「稼働」、好ましくは1回〜約100回の繰り返し又は「稼働」、より好ましくは30回〜90回の繰り返し、最も好ましくは約50回〜60の繰り返しの後に、溶媒中で得られる。
【0063】
本発明の1つ以上の脱フッ素化合物は、分子式C
14F
nを含み、式中、変数「n」は、10〜23の範囲の値を有する。本発明の好ましい実施形態において、例示的な脱フッ素化合物は、10、14、及び18に等しいnの値を有する。好適な脱フッ素化合物は、以下の構造式、C
14F
10、C
14F
14、又はC
14F
18の各々のうちの1つ以上、又はこれらの任意の組み合わせで構成される。本発明の代替の好ましい実施形態では、分子式C
14F
nを含む1つの脱フッ素化合物だけが存在し、式中、変数「n」は、10〜23の範囲の値を有する。
【0064】
C
14F
18、C
14F
14、及びC
14F
10の分子構造式に関する本発明の例示的な脱フッ素化合物構造を、それぞれ、構造52、構造54、及び構造56として
図5に示すが、各々について、これらの構造の他の立体異性体及び構造異性体が本発明で想到される。
【0065】
全てのこれらの化合物構造が改質された溶媒中に観察される場合、当該化合物構造は、元々の溶媒から6個、10個、及び14個のフッ素原子を失った脱フッ素を表し得る。化合物は、相対濃度で存在し得る。
【0066】
溶媒中の1つ以上の脱フッ素化合物のうちのいずれか1つは、全溶媒の組成物の約1重量ppm以下である。
【0067】
改質された溶媒中のC
14F
18化合物の濃度は、約0.05%〜約1.0%の範囲であり、好ましくは約0.7%である。改質された溶媒中のC
14F
14化合物の濃度は、約0.05%〜約1.0%の範囲であり、好ましくは約0.4%である。改質された溶媒中のC
14F
10化合物の濃度は、約0.05%〜約1.0%の範囲であり、好ましくは約0.1%である。1つを超える種類の脱フッ素化合物が存在する場合、化合物は、各々が、改質された溶媒中にほぼ同じ濃度レベルで、又は異なるレベルであり得る。例えば、一実施形態において、C
14F
18化合物の濃度は、C
14F
14化合物の濃度よりも高い濃度であり得、これらの両方の以前の濃度は、改質された溶媒中のC
14F
10化合物の濃度よりも高くなり得る。
【0068】
図6は、改質されたFlutec溶液及び蒸留されたFlutec溶液をそれぞれ表す、クロマトグラフィオーバーレイスペクトル60b及び60cを表し、蒸留された溶媒であるか、改質された(例えば、破損した)溶媒であるかにかかわらず、どちらも、本発明の溶媒のピーク62及びピーク64においてそれぞれ表される構造式C
14F
18及びC
14F
14の脱フッ素化合物の存在を示す。
図6にはまた、元々の溶媒C
14F
24のピーク66も表す。元々の未改質のFlutec溶液を表すスペクトル60aには、元々の溶媒を表すピーク66以外のいかなるピークも存在せず、したがって、脱フッ素化合物が元々の溶媒中に存在しないことが認識されることに留意されたい。
【0069】
図7は、改質されたFlutec溶媒及び蒸留されたFlutec溶媒をそれぞれ表す、クロマトグラフィオーバーレイスペクトル70b及び70cを示し、どちらも、本発明の溶媒のピーク72、ピーク74、及びピーク76においてそれぞれ表されるC
14F
18、C
14F
14、及びC
14F
10の脱フッ素化合物の存在を示す。同じく
図7に示され、元々の、「未使用の」、又は未改質のFlutec溶媒を表すスペクトル70aには、いかなるそのようなピークも存在せず、したがって、いかなる脱フッ素化合物も存在しないことに留意されたい。
【0070】
図9は、新規な状態の改質されたFlutec溶液25’を有する容器26を表す。
図9に示されるように、その理想的な改質された状態において、本発明のFlutec溶液は、1つ以上の脱フッ素化合物92、94、及び96を含む。記載されるように、各種類の化合物の濃度は、約0.05%〜約1.0%の範囲である。
【0071】
図9に示されるように、別の実施形態において、本発明の理想的な改質されたFlutec溶液は、Teflon粒子又はPTFE93の濃度を構成する。Teflon又はPTFE粒子の濃度は、約50ppm〜約1000ppmの範囲であり得る。
【0072】
図9の説明図に示されるように、更に別の実施形態において、理想的な改質されたFlutec溶液は、鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はその粒子、表面、若しくは化合物95の濃度を構成する。これらの粒子の濃度は、約5ppm〜約1000ppmの範囲であり得る。
【0073】
更に別の実施形態において、本発明の改質されたFlutec溶液は、黄色を含む。
図10には、本発明の改質されたFlutec溶液の複数の試料100a、100b、100cの写真が示され、各々が、黄色110a、110b、110cをそれぞれ有する。黄色110cは、試料100a及び100bのそれぞれの黄色110a及び110bよりも明るい色調であることが分かる。
【0074】
好ましい実施形態において、本発明の理想的なFlutec溶液は、1つ以上の脱フッ素化合物、約50ppm〜約1000ppmの範囲のTeflon粒子の濃度、約5ppm〜約1000ppmの鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はその粒子、表面、若しくは化合物の濃度、黄色、のうちの1つ以上、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0075】
更には、様々な製造供給元からの原材料の、種々の分散体又は他の形態を容易に使用して、薄く均一なコーティングを達成することができる。
【0076】
本発明は、PTFEに加えて、PFA(perfluoroalkoxy polymer resin:パーフルオロアルコキシポリマー樹脂)、FEP(fluorinated ethylene-propylene:フッ化エチレン−プロピレン)、ETFE(polyethylenetetrafluoroethylene:ポリエチレンテトラフルオロエチレン)、PVF(polyvinylfluoride:ポリフッ化ビニル)、PVDF(polyvinyllidene fluoride:ポリフッ化ビニリデン)、及びECTFE(polyethylenechlorotrifluoroethylene:ポリエチレンクロロトリフルオロエチレン)が挙げられるが、これらに限定されない、他のフルオロポリマーとの適用性を想到する。
【0077】
本発明は、PTFE/ナノダイヤモンド、PTFE/シリカ、PTFE/アルミナ、PTFE/シリコーン、PTFE/PEEK(polyetheretherketone:ポリエーテルエーテルケトン)、及びPTFE/PFAが挙げられるが、これらに限定されない、フルオロポリマー(例えば、PTFE)複合体との適用性を想到する。
【0078】
更には、本発明のプロセスは、必ずしも、PTFE又はPTFE型の材料への適用に制約されるものではなく、他の非フルオロポリマー(例えば、非PTFE)コーティング材料にもまた適用可能であり、それらのコーティング材料としては、例えば、ポリビニルピロリドン(polyvinylpyrorridone、PVP)、ポリエチレン、ポリプロピレン、超高分子量ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート、パリレン、及び/又は他のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
更には、カミソリ刃の基材は、クロム(Cr)、ダイヤモンドライクカーボン(Diamond-like Carbon、DLC)、非結晶ダイヤモンド、クロム/白金(Cr/Pt)、又は他の好適な材料、若しくは材料の組み合わせなどの最上層コーティングを有する鋼、あるいはこのコーティングを有さない鋼からなってもよい。
【0080】
本発明の別の実施形態では、刃は、湿式シェーバーに加えて、乾式シェーバーと併せて使用され得ることが想到され、この乾式シェーバーの切断刃は、本明細書に記載されるように、同様に生成される。
【0081】
本発明の更に別の実施形態では、上述の本発明を、外科用の刃、手術用メス、ナイフ、ピンセット、ハサミ、大ハサミなどのような内科的若しくは外科的器具において実装される刃、又は他の非外科用の刃若しくは切断器具において実装される刃に関連して使用可能であることが、更に想到される。
【0082】
実施例/組み合わせ
A.1つ以上のコーティングされたカミソリ刃先を処理する方法であって、
当該1つ以上のコーティングされたカミソリ刃先を溶媒中で処理することによって、当該1つ以上のコーティングされたカミソリ刃先及び当該溶媒を改質する工程と、
当該改質された1つ以上のコーティングされたカミソリ刃先を当該改質された溶媒中で処理し、当該1つ以上の改質されたコーティングされたカミソリ刃先及び当該改質された溶媒を更に改質する工程と、
工程(b)を1回以上の繰り返す工程と、を含む、方法。
B.工程(b)又は工程(c)の後に、当該コーティングされた刃先のウールフェルト切断抵抗値を取得する工程(d)を更に含む、パラグラフAに記載の方法。
C.工程(b)の1回以上の繰り返しの後に、工程(d)で取得したウールフェルト切断抵抗値に実質的な変化がない場合に、当該工程(c)が中止される、パラグラフA又はBに記載の方法。
D.当該工程(c)が、1〜100回の後で中止される、パラグラフA、B、又はCに記載の方法。
E.当該ウールフェルト切断抵抗値が、約0.32kg(約0.7ポンド)〜約0.64kg(約1.4ポンド)の範囲内である、パラグラフA、B、C、又はDに記載の方法。
F.当該コーティングされたカミソリ刃先上のコーティングが、ポリマー材料を含む、パラグラフA〜Eのいずれか1つに記載の方法。
G.当該ポリマー材料が、フルオロポリマーを含む、パラグラフFに記載の方法。
H.当該溶媒が、C
14F
24を含む、パラグラフA〜Gのいずれか1つに記載の方法。
I.当該溶媒が、パーフルオロテトラデカヒドロフェナントレンを含む、パラグラフA〜Gのいずれか1つに記載の方法。
J.当該改質された溶媒が、1つ以上の脱フッ素化合物を含む、パラグラフA〜Iのいずれか1つに記載の方法。
K.当該1つ以上の脱フッ素化合物が、C
14F
nを含む、パラグラフJに記載の方法。
L.nが、10〜23である、パラグラフKに記載の方法。
M.以下の化合物のうちの当該1つ以上が、C
14F
10、C
14F
14、又はC
14F
18のうちの1つ以上、又はこれらの任意の組み合わせを含む、パラグラフA〜Lのいずれか1つに記載の方法。
N.当該改質された溶媒中の当該1つ以上の化合物のいずれか1つの濃度が、約1ppm以下である、パラグラフMに記載の方法。
O.当該溶媒中の当該C
14F
18化合物の濃度が、約0.05%〜約1.0%であり、当該溶媒中の当該C
14F
14化合物の濃度が、約0.05%〜約1.0%であり、当該溶媒中の当該C
14F
10化合物の濃度が、約0.05%〜約1.0%である、パラグラフM〜Nのいずれか1つに記載の方法。
P.当該1つ以上の脱フッ素化合物の濃度が、約0.05%〜約3%の範囲である、パラグラフJ〜Oのいずれか1つに記載の方法。
Q.当該処理工程(a)又は工程(b)が、約260℃(約500°F)〜約371℃(約700°F)の範囲の温度を更に含み、当該処理工程(a)又は(b)が、約30秒〜約1時間の範囲の時間にわたって適用される、パラグラフA〜Pのいずれか1つに記載の方法。
R.当該ポリマーのコーティングが噴霧され、焼結され、又はこれらの任意の組み合わせの後に、当該処理工程(a)が当該コーティングに適用される、パラグラフF〜Qのいずれか1つに記載の方法。
S.当該改質された溶媒から、当該改質されたコーティングされた刃先の、いずれも取り出さない、その一部分を取り出す、又はその全てを取り出す工程(e)を更に含む、パラグラフA〜Rのいずれか1つに記載の方法。
T.工程(b)の前に、又は工程(c)の前に、未改質のコーティングされたカミソリ刃先を当該改質された溶媒中に提供する工程(f)を更に含む、パラグラフA〜Sのいずれか1つに記載の方法。
U.当該未改質のコーティングされたカミソリ刃先が、当該溶媒又は当該改質された溶媒によって処理されていない、ポリマーコーティングされた刃先で構成される、パラグラフTに記載の方法。
V.稼働が、1回行われる当該処理工程(a)及び(b)を含む、パラグラフA〜Uのいずれか1つに記載の方法。
W.当該処理工程(a)又は工程(b)が、当該刃を容器内に配置すること、当該容器を密閉すること、当該溶媒を当該容器に配置すること、当該容器を加熱すること、当該溶媒を取り出すこと、又は刃を冷却することを更に含む、パラグラフA〜Vのいずれか1つに記載の方法。
X.当該処理工程が、当該コーティングを部分的に除去する、パラグラフA〜Wのいずれか1つに記載の方法。
Y.当該改質された溶媒が、Teflon粒子を含む、パラグラフA〜Xのいずれか1つに記載の方法。
Z.当該改質された溶媒が、鉄、炭素系鋼、ステンレス鋼、又はその粒子、表面、若しくは化合物を含む、パラグラフA〜Yのいずれか1つに記載の方法。
AA.当該改質された溶媒が、黄色を含む、パラグラフA〜Zのいずれか1つに記載の方法。
【0083】
本明細書にて開示された寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。その代わりに、特に指示がない限り、このような寸法はそれぞれ、列挙された値とその値を囲む機能的に同等な範囲との両方を意味することが意図されている。例えば、「40mm」と開示された寸法は、「約40mm」を意味するものとする。
【0084】
「発明を実施するための形態」の中で引用される文献は全て、関連部分において参照により本明細書に組み込まれる。いかなる文献の引用も、それが本発明に対する先行技術であることを認めるものとして解釈されるべきではない。本文献における用語のいずれかの意味又は定義が、参照により組み込まれる文献における同じ用語のいずれかの意味又は定義と相反する限りにおいては、本文献においてその用語に割り当てられた意味又は定義が優先するものとする。
【0085】
本発明の特定の実施形態を例示及び説明してきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく他の様々な変更及び修正を行うことができる点は当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲内に含まれるそのような全ての変更及び修正は、添付の特許請求の範囲にて網羅することを意図したものである。