特許第6966788号(P6966788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6966788複数のアクチュエータを用いて同一動翼を制御する場合の同期方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966788
(24)【登録日】2021年10月26日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】複数のアクチュエータを用いて同一動翼を制御する場合の同期方法
(51)【国際特許分類】
   A63H 27/20 20060101AFI20211108BHJP
   A63H 30/00 20060101ALI20211108BHJP
   B64C 9/00 20060101ALI20211108BHJP
   B64C 13/50 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   A63H27/20
   A63H30/00 A
   B64C9/00
   B64C13/50
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-669(P2019-669)
(22)【出願日】2019年1月7日
(65)【公開番号】特開2020-108705(P2020-108705A)
(43)【公開日】2020年7月16日
【審査請求日】2020年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】518162463
【氏名又は名称】小西模型株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120341
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】小西 智久
(72)【発明者】
【氏名】澤 和孝
【審査官】 宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−301277(JP,A)
【文献】 特開2003−134882(JP,A)
【文献】 特開2012−116466(JP,A)
【文献】 特開2017−113867(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00−37/00
B64B 1/00−1/70
B64C 1/00−99/00
B64D 1/00−47/08
B64F 1/00−5/60
B64G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
模型飛行機に複数搭載され且つ前記模型飛行機の可動する翼を制御するアクチュエータを同期させる方法において、
前記翼を制御するn個のアクチュエータMの駆動を同調させるにあたり、
前記アクチュエータMのうち、a番目のアクチュエータMを基準とし、b番目のアクチュエータMを同期対象とし、
前記アクチュエータに対して、基準の指令値を含む複数の指令値を入力して、二つのアクチュエータMとアクチュエータMを駆動させた際の電流値Aが最小となるAminを探索し、
得られた電流の最小値Aminにおける前記アクチュエータに対する指令値と、前記基準の指令値との差分を求め、
求めた差分を、前記アクチュエータMの駆動と同期するための前記アクチュエータMの補正値αとし、
前記複数のアクチュエータMの駆動を同調させるにあたり、以下のステップ(S1)〜(S12)の手順に従って行うことを特徴とする複数のアクチュエータを用いて同一動翼を制御する場合の同期方法。
(S1):アクチュエータの出力軸の回転可能範囲を所定の角度ごとに区分ける作業を、n個全てのアクチュエータMについて行う。
(S2):アクチュエータMのうち、a番目のアクチュエータMを基準のアクチュエータとする。
(S3):(S1)で区分けしたもののうち一つの区分けにおいて、基準のアクチュエータMに対して、出力軸の角度を任意の位置に制御する指令値θを入力する。
(S4):(S3)で入力した指令値θを、基準の角度とする。
(S5):複数搭載されているアクチュエータMのうち、b番目のアクチュエータMを同期対象とする。
(S6):アクチュエータMとアクチュエータMに対して、(S4)で決定した指令値θを入力して駆動させる。
(S7):指令値θをアクチュエータMに入力し、指令値(θ+x)と指令値(θ−x)の間の値をアクチュエータMに入力し、指令値(θ±x)の範囲で駆動させる。
(S8):(S7)で指令値(θ±x)の範囲内で駆動しているとき、アクチュエータ
とアクチュエータMに流れる電流値Aを測定し、電流値の最小値Aminを探索する。
(S9):(S8)で探索した電流値の最小値Aminにおける指令値θ’と、基準の指令値θとの差分yを求め、その差分yを、アクチュエータMの駆動と同期するためのアクチュエータMの補正値αとする。ただし、x≧yである。
(S10):(S9)で決定した補正値αをアクチュエータMに記録する。
(S11): 同期対象のアクチュエータMにて、所定の角度ごとに区分けをした全てにおいて、(S6)〜(S10)の手順を実施して、それぞれの区分けにおける補正値αを求めて、アクチュエータMに記録する。
(S12):(S5)に戻って、複数のアクチュエータMから、同期対象となるアクチュエータMを新たに選び出して、(S11)までの手順を、同期対象となる全てのアクチュエータMに対して実施して、補正値αを所定の角度ごとに区分けをした全てにおいて求めて、アクチュエータMのそれぞれに記録する。
【請求項2】
前記アクチュエータMは、前記補正値αが記録可能な構成とされていることを特徴とする請求項1に記載の複数のアクチュエータを用いて同一動翼を制御する場合の同期方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信で遠隔操縦を行う模型飛行機において、複数搭載され且つエルロンなどの可動する翼の動きを制御するアクチュエータ(サーボモータ)を同期させる技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、無線通信で遠隔操縦を行う模型飛行機を飛行させている時には、地上から送信機を介して指令を出して、エンジン・モータなどの駆動源の操作や、エルロン(補助翼)、ラダ−(方向舵)、エレベーター(昇降舵)、フラップ(高揚力装置)などの可動する翼を操作することにより、推進・上昇・下降・旋回などの機体の操縦を行っている。
可動する翼は、アクチュエータ(サーボモータ)によって、動きが制御されている。例えば、特許文献1の図1を参照すると、垂直尾翼に機体の左右方向の動きを制御するためのラダーが設けられていて、機体にアクチュエータが1個の取り付けられている。そのラダーとアクチュエータは、リンケージ部材を介して接続されている。
【0003】
また、同文献の図2を参照すると、水平尾翼には、機体の上下方向の動きを制御するためのエレベーターが設けられていて、アクチュエータが1個の取り付けられている。そのエレベーターとアクチュエータは、リンケージ部材を介して接続されている。
このように、一般的な模型飛行機においては、ラダー、エレベーター、エルロン、フラップなどの可動する翼は、1個のアクチュエータにより制御されていることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−223158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、無線通信で遠隔操縦を行う(ラジオ・コントロール)模型飛行機については、機体の種類が様々存在する。その中においても、全長(機体)や全幅(主翼部)のそれぞれが1mを超えるような大型の機体がある。それ故、大型の模型飛行機は、左右の主翼、水平尾翼、垂直尾翼なども大きく長いものとなっている。また、エルロンなどの可動する翼も大きく長いものとなっている。
【0006】
その可動する翼が大きく長いものになると、1個のアクチュエータで可動する翼の動きを制御することがむずかしくなるので、複数のアクチュエータにより可動する翼の動きを制御するようになっている。
しかしながら、複数のアクチュエータを同時に駆動させても、同じ量駆動するとは限らない。すなわち、複数のアクチュエータに同じ角度の指令を入力しても、アクチュエータの出カ軸は全て同じ角度になるとは限らない。
【0007】
例えば、エルロンを3個のアクチュエータで制御する場合、傾きが10°となる指令を3個のアクチュエータに入力しても、そのうち1個のアクチュエータは10°となっても、その他のアクチュエータは、11°や9°といったように、指令に沿った駆動にならないことがある。
その理由として、例えば、アクチュエータには個体差があるため、複数備えた場合、それらのアクチュエータの出力軸がバラバラに駆動する。これは、アクチュエータに内蔵された角度センサーのバラツキに起因するものである。
【0008】
さらには、上述したアクチュエータのバラツキに加えて、エルロンなどを動かすリンケージ部材の精度(アクチュエータと可動する翼の組み付けの精度)の問題もある。そのため、例え、アクチュエータが指示通りに動作したとしても、動翼としては異なる角度に動作してしまっている場合があり得る。
このように、指令に対して、複数のアクチュエータがそれぞれ異なる駆動をする(10°に対して11°や9°など異なる角度になる)と、互いに牽制し合って、アクチュエータが損傷することとなる。またこれにより、エルロンなど可動する翼が捻れてしまい、飛行において不具合が生じることとなる。
【0009】
すなわち、複数のアクチュエータの駆動を同調させる制御が必要となってくる。
そこで、本発明は、上記問題点に鑑み、複数のアクチュエータを制御するにあたり、入力された指令に沿った駆動にならないアクチュエータに対して、補正値を与えておき、指令が入力されると補正値により指令に沿った駆動を出力することで、エルロンなどの可動する翼(同一動翼)の動きを精確に制御することができる複数のアクチュエータを用いて同一動翼を制御する場合の同期方法、言い換えれば、模型飛行機に複数搭載されたアクチュエータの同期方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
本発明にかかる複数のアクチュエータを用いて同一動翼を制御する場合の同期方法は、模型飛行機に複数搭載され且つ前記模型飛行機の可動する翼を制御するアクチュエータを同期させる方法において、前記翼を制御するn個のアクチュエータMの駆動を同調させるにあたり、前記アクチュエータMのうち、a番目のアクチュエータMを基準とし、b番目のアクチュエータMを同期対象とし、前記アクチュエータに対して、基準の指令値を含む複数の指令値を入力して、二つのアクチュエータMとアクチュエータMを駆動させた際の電流値Aが最小となるAminを探索し、得られた電流の最小値Aminにおける前記アクチュエータに対する指令値と、前記基準の指令値との差分を求め、求めた差分を、前記アクチュエータMの駆動と同期するための前記アクチュエータMの補正値αとすることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記アクチュエータMは、前記補正値αが記録可能な構成とされているとよい。
好ましくは、前記複数のアクチュエータMの駆動を同調させるにあたり、以下のステップ(S1)〜(S12)の手順に従って行うとよい。
(S1):アクチュエータの出力軸の回転可能範囲を所定の角度ごとに区分ける作業を、n個全てのアクチュエータMについて行う。
【0012】
(S2):アクチュエータMのうち、a番目のアクチュエータMを基準のアクチュエータとする。
(S3):(S1)で区分けしたもののうち一つの区分けにおいて、基準のアクチュエータMに対して、出力軸の角度を任意の位置に制御する指令値θを入力する。
(S4):(S3)で入力した指令値θを、基準の角度とする。
【0013】
(S5):複数搭載されているアクチュエータMのうち、b番目のアクチュエータMを同期対象とする。
(S6):アクチュエータMとアクチュエータMに対して、(S4)で決定した指令値θを入力して駆動させる。
(S7):指令値θをアクチュエータMに入力し、指令値(θ+x)と指令値(θ−x)の間の値をアクチュエータMに入力し、指令値(θ±x)の範囲で駆動させる。
【0014】
(S8):(S7)で指令値(θ±x)の範囲内で駆動しているとき、アクチュエータMとアクチュエータMに流れる電流値Aを測定し、電流値の最小値Aminを探索する。
(S9):(S8)で探索した電流値の最小値Aminにおける指令値θ’と、基準の指令値θとの差分yを求め、その差分yを、アクチュエータMの駆動と同期するためのアクチュエータMの補正値αとする。ただし、x≧yである。
【0015】
(S10):(S9)で決定した補正値αをアクチュエータMに記録する。
(S11): 同期対象のアクチュエータMにて、所定の角度ごとに区分けをした全てにおいて、(S6)〜(S10)の手順を実施して、それぞれの区分けにおける補正値αを求めて、アクチュエータMに記録する。
(S12):(S5)に戻って、複数のアクチュエータMから、同期対象となるアクチュエータMを新たに選び出して、(S11)までの手順を、同期対象となる全てのアクチュエータMに対して実施して、補正値αを所定の角度ごとに区分けをした全てにおいて求めて、アクチュエータMのそれぞれに記録する。
また、本発明にかかる複数のアクチュエータを用いて同一動翼を制御する場合の同期方法の最も好ましい形態は、模型飛行機に複数搭載され且つ前記模型飛行機の可動する翼を制御するアクチュエータを同期させる方法において、前記翼を制御するn個のアクチュエータMの駆動を同調させるにあたり、前記アクチュエータMのうち、a番目のアクチュエータMを基準とし、b番目のアクチュエータMを同期対象とし、前記アクチュエータに対して、基準の指令値を含む複数の指令値を入力して、二つのアクチュエータMとアクチュエータMを駆動させた際の電流値Aが最小となるAminを探索し、得られた電流の最小値Aminにおける前記アクチュエータに対する指令値と、前記基準の指令値との差分を求め、求めた差分を、前記アクチュエータMの駆動と同期するための前記アクチュエータMの補正値αとし、前記複数のアクチュエータMの駆動を同調させるにあたり、以下のステップ(S1)〜(S12)の手順に従って行うことを特徴とする。
(S1):アクチュエータの出力軸の回転可能範囲を所定の角度ごとに区分ける作業を、n個全てのアクチュエータMについて行う。
(S2):アクチュエータMのうち、a番目のアクチュエータMを基準のアクチュエータとする。
(S3):(S1)で区分けしたもののうち一つの区分けにおいて、基準のアクチュエータMに対して、出力軸の角度を任意の位置に制御する指令値θを入力する。
(S4):(S3)で入力した指令値θを、基準の角度とする。
(S5):複数搭載されているアクチュエータMのうち、b番目のアクチュエータM
を同期対象とする。
(S6):アクチュエータMとアクチュエータMに対して、(S4)で決定した指令値θを入力して駆動させる。
(S7):指令値θをアクチュエータMに入力し、指令値(θ+x)と指令値(θ−x)の間の値をアクチュエータMに入力し、指令値(θ±x)の範囲で駆動させる。
(S8):(S7)で指令値(θ±x)の範囲内で駆動しているとき、アクチュエータMとアクチュエータMに流れる電流値Aを測定し、電流値の最小値Aminを探索する。
(S9):(S8)で探索した電流値の最小値Aminにおける指令値θ’と、基準の指令値θとの差分yを求め、その差分yを、アクチュエータMの駆動と同期するためのアクチュエータMの補正値αとする。ただし、x≧yである。
(S10):(S9)で決定した補正値αをアクチュエータMに記録する。
(S11): 同期対象のアクチュエータMにて、所定の角度ごとに区分けをした全てにおいて、(S6)〜(S10)の手順を実施して、それぞれの区分けにおける補正値αを求めて、アクチュエータMに記録する。
(S12):(S5)に戻って、複数のアクチュエータMから、同期対象となるアクチュエータMを新たに選び出して、(S11)までの手順を、同期対象となる全てのアクチュエータMに対して実施して、補正値αを所定の角度ごとに区分けをした全てにおいて求めて、アクチュエータMのそれぞれに記録する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、複数のアクチュエータを制御するにあたり、入力された指令に沿った駆動にならないアクチュエータに対して、補正値を与えておき、指令が入力されると補正値により指令に沿った駆動を出力することで、エルロンやラダーなどの可動する翼(同一動翼)の動きを精確に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】模型飛行機に備えられたエルロン(可動する翼)の制御系統を概略を模式的に示した図である。
図2】アクチュエータ(サーボモータ)に対する補正値を求める手順を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかる同期方法(複数のアクチュエータを用いて同一動翼を制御する場合の同期方法)の実施形態を、図を参照して説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明を具体化した一例であって、その具体例をもって本発明の構成を限定するものではない。また、図面に関して、見やすくするため、模型飛行機の構成部品の一部を省略して描いている。また、翼の前後及び左右等の方向については、図1に示す通りである。
【0019】
まず、模型飛行機の構成について説明する。
機体(胴体)は、前後方向(長手方向)に長く、内部は空洞となっている。その内部には、機体を制御する制御機構(受信機、アクチュエータ3(サーボモータ)など)、バッテリ又は燃料タンクなどが収容されている。また、プロペラ機タイプの場合、機体の機首側に、モータ又はエンジンなどの駆動部が取り付けられている。
【0020】
主翼1は、機体の前後方向中央に、左右一対取り付けられている。ジェット機タイプの場合、主翼1に、駆動源(モータ又はエンジン)が取り付けられている。その主翼1には、エルロン2やフラップが設けられている。
エルロン2は、補助翼とも呼ばれ、主翼1の後部外側に備えられていて、機体の前後方向軸心回りの動き(ローリング、傾き)を制御するための翼である。フラップは、高揚力装置とも呼ばれ、主翼1の後部内側に備えられていて、機体の揚力を発生させるための翼である。
【0021】
垂直尾翼は、機体の前後方向後側に、上方に向かって突設されている。垂直尾翼の後側に、ラダ−が設けられている。ラダ−は、方向舵とも呼ばれ、垂直尾翼に備えられていて、機体の上下方向軸心回りの動き(ヨーイング、左右方向の動き)を制御するための舵である。
水平尾翼は、機体の前後方向後側に、左右一対取り付けられている。水平尾翼の後側に、エレベーターが設けられている。エレベーターは、昇降舵とも呼ばれ、水平尾翼に備えられていて、機体の左右方向軸心回りの動き(ピッチング、機首の上下方向の動き)を制御するための舵である。
【0022】
エルロン2(補助翼)、ラダ−(方向舵)、エレベーター(昇降舵)、フラップ(高揚力装置)などの可動する翼(同一動翼)が動きが、アクチュエータ3(サーボモータ)によって制御され、上昇・下降・旋回などの模型飛行機の操縦が行われる。
例えば、ラジオ・コントロール模型飛行機の動作について、飛行中の機体を左側へ旋回させるとき、垂直尾翼のラダーを左に向け、左側の主翼1のエルロン2を上げると共に右側の主翼1のエルロン2を下げて機体を左へ傾け、水平尾翼のエレベーターを下に向けて機首を上げる動作をすることで、左方向へ旋回する。
【0023】
なお、飛行機は飛行時浮いた状態であるので、方向を変える場合、エルロン2で機体を傾ける必要がある。機体を傾けただけでは、斜め下方に滑り落ちるような状態になるので、エレベーターで機首を上げる。
ここで、本発明にかかる複数のアクチュエータ3(サーボモータ)を用いて同一動翼を制御する場合の同期方法について、詳細に説明する。
【0024】
なお、本実施形態においては、エルロン2を制御するアクチュエータ3を例に挙げて説明するが、ラダ−、エレベーター、フラップなどの可動する翼(同一動翼)を制御するアクチュエータ3についても、本発明は適用可能である。
図1は、模型飛行機の主翼1(左主翼)に備えられたエルロン2の制御系統の概略を模式的に示した図であり、下方(裏面)から見上げた図である。
【0025】
本発明は、模型飛行機に複数搭載され、エルロン2を制御するアクチュエータ3(サーボモータ)を同期する方法であり、所定の角度の間において、任意の角度(位置)に固定することができるように制御されたアクチュエータ3を複数搭載し、その複数のアクチュエータ3の制御角度を同期させ、且つ駆動を同調させることができる同期方法である。
すなわち、エルロン2の動作を一定にするため、複数のアクチュエータ3の動作を同期(同調)させる。
【0026】
まず、アクチュエータ3(サーボモータ)の構成については、以下の通りである。
本実施形態においては、複数のアクチュエータ3は直列に接続されており、その間に電流計9が接続されている。
通常、アクチュエータ3は角度センサに則り、指示された角度θ(指令値)の位置で止まるように、出カ軸の回転を制御している。
【0027】
本実施形態では、角度センサのバラツキ(主に角度に対するセンサ値の直線性)を補正するため、出力軸4が回転することができる範囲(制御角度可能範囲)を、所定の間隔(ある程度の細かさ)で区分けし、それぞれの区分けにおいて適切な個別の補正情報(指令値θに対する補正値α)を予めアクチュエータ3に与えておき、角度センサのバラツキを補正できる仕組みを持たせておくこととしている。
【0028】
本実施形態では、補正値αを複数登録することができるアクチュエータ3を採用している。つまり、本実施形態のアクチュエータ3は、制御装置11などに接続して、細かな設定データの登録・変更ができるプログラマブルサーボである。
また、アクチュエータ3を調整するときの構成については、以下の通りである。
単一物(例えば、エルロン2)を複数のアクチュエータ3で操作する際、アクチュエータ3のそれぞれにおいて、角度センサにバラツキがある場合、アクチュエータ3全体としては同じように動作しているように見えるが、個々のアクチュエータ3に着目すると、入力された指令値θに対して制御角度が異なる(例えば、θ=10°に対して11°となる)ことがあり、互いに牽制し合う場合が発生することがある。
【0029】
このように、2個以上のアクチュエータ3が互いに牽制した状態のままでは、いずれかのアクチュエータ3、もしくは、全てのアクチュエータ3が焼損するおそれがある。これを防ぐためには、全てのアクチュエータ3が牽制し合わずに同調して駆動するように、補正する必要がある。
アクチュエータ3の駆動を補正する方法としては、いくつか挙げられるが、本実施形態ではアクチュエータ3の牽制のみに着目している。なお、実際の直線性までは考慮していない。このような場合、まず任意に、基準となるアクチュエータ3を決め、その基準のアクチュエータ3に対して、従属するアクチュエータ3の直線性を合わせることが望ましい。従属するアクチュエータ3の直線性を合わせるためには、アクチュエータ3側の構成を利用して補正する。その際、補正するための基準として、アクチュエータ3が消費する電流を用いる。
【0030】
理由としては、例えば、2個のアクチュエータ3が互いに牽制している状態では、その2個のアクチュエータ3が消費する電流が増加することとなる。このような状態になると、アクチュエータ3の焼損が発生してしまうおそれがある。つまり、アクチュエータ3の牽制がなくなれば、消費する電流が最小限に落ち着くこととなるので、それを利用する。
本発明の同期方法について、詳細に説明する。
【0031】
図1に示すように、本実施形態においては、アクチュエータ3は主翼1に3個(n=3)搭載されていて、左から順に、アクチュエータM、アクチュエータM、アクチュエータMとする。
アクチュエータ3には、出力軸4が設けられていて、その出力軸4にはサーボホーン5が取り付けられている。サーボホーン5の先端には、リンゲージ部材6が取り付けられている。リンゲージ部材6は、一方端側がエルロン2に接続されている。
【0032】
つまり、エルロン2は、リンゲージ部材6を介して、アクチュエータ3に接続されている。
アクチュエータ3には、電源が供給される電源線7と、指令値θが入力される信号線8が接続されている。なお、入力される指令値θは、デジタル信号であり、アクチュエータ3の全てにおいて同じものとされている。また、信号線8は双方向に通信可能とされている。本実施形態においては、アクチュエータ3にデジタルサーボを採用している。電源線7と信号線8は、電流計9と制御部10を備える制御装置11(テストツール)に接続される。
【0033】
テストツール11は、本発明の同期方法が内蔵された制御部10と電流計9を備えている。このテストツール11は、飛行前に模型飛行機に接続され、アクチュエータ3の調整が実施される。その調整終了後に、テストツール11は模型飛行機から取り外される。その後、電源線7と信号線8は、機体内の受信機などに接続される。
複数のアクチュエータM(サーボモータM)の駆動を同調させるにあたり、以下のステップ(S1)〜(S12)の手順に従って行う。
【0034】
(S1):アクチュエータ3に設けられている出力軸4の回転可能範囲を、所定の角度ごとに区分けを、3個全てのアクチュエータMにおいて行っておく。
アクチュエータ3の駆動領域(出力軸4の回転可能領域)を所定の間隔(角度)で複数の区分けし、その区分けごとに補正情報を登録可能な状態にしておく。
図2に示すように、例えば、出力軸4の回転可能範囲が60°=±30°であり、10°ごとに区分けする場合、「−30°、−20°、−10°、0°、10°、20°、30°」とに区分けされる。
【0035】
なおここで、便宜的に、順に「区分け1(−30°)、区分け2(−20°)、区分け3(−10°)、区分け4(0°)、区分け5(10°)、区分け6(20°)、区分け7(30°)」とする。
この区分けを、3個全てのアクチュエータMにおいて行っておく。
(S2):3個のアクチュエータMのうち、2番目のアクチュエータMを基準とする。
【0036】
アクチュエータ3が3個搭載されている場合、中央のもの(真ん中の2番目のアクチュエータM)とすることが望ましい。
(S3):(S1)で区分けしたもののうち一つの区分けにおいて、基準のアクチュエータMに対して、出力軸4の角度を任意の位置に制御する指令値θを入力する。
例えば、基準のアクチュエータMの「区分け5」において、出力軸4の角度を10°の位置に固定する指令値θを入力する。すなわち、「区分け5」で、指令値θ=10°を基準のアクチュエータMに入力する。
【0037】
(S4):(S3)で入力した指令値θを、基準の角度とする。
例えば、基準のアクチュエータMの「区分け5」においては、指令値θ=10°が基準の角度となる。
(S5):複数搭載されているアクチュエータMのうち、1番目のアクチュエータMを同期対象とする。その後、アクチュエータMの補正値αを求め、合わせて、アクチュエータMの補正値αを求めることとしている。
【0038】
(S6):アクチュエータMとアクチュエータMに対して、(S4)で決定した指令値θを入力して駆動させる。
(S4)で決定した指令値θ=10°を入力して、アクチュエータMとアクチュエータMを駆動させる。
(S7):指令値θを入力した後に、アクチュエータMとアクチュエータMが互いに牽制し合い、アクチュエータMとアクチュエータMに供給される電流値Aが増加した場合、入力した基準の指令値θに対して、指令値(θ+x)と指令値(θ−x)をアクチュエータMに入力し、指令値θ’=(θ±x)の範囲で連続的に駆動させる。
【0039】
なお、基準のアクチュエータMには、指令値θが入力されたままである。
例えば、アクチュエータMに対し、12°〜8°((θ+x)〜(θ−x))の範囲で駆動する指令値θ’を入力し、その範囲でアクチュエータMを駆動させる。すなわち、指令値θ’=(θ±x)=10°±2°の範囲で、エルロン2を揺動させる。
(S8):(S7)で指令値θ’=(θ±x)の範囲内で駆動しているとき、アクチュエータMとアクチュエータMに流れる電流値Aを測定し、アクチュエータMとアクチュエータMの牽制が最小となるときの電流値の最小値Aminを探索する。
【0040】
アクチュエータMとアクチュエータMが互いに牽制し合うと、電流値Aが増加することとなり、アクチュエータMとアクチュエータMが焼損するおそれがあるので、牽制し合わない電流値の最小値Aminを探す。
その後、電流値の最小値Aminを探索するまで、(S7)の指令値θ’=(θ±x)の入力と(S8)の電流値Aの測定を繰り返す。
【0041】
つまり、入力する指令値θ’=(θ±x)を入れ替えて、エルロン2を指令値θ’の範囲内で揺動させて、アクチュエータMとアクチュエータMの牽制が最小となるときの電流値の最小値Aminが見つかるまで探し出す。
(S9):(S8)で探索した電流値の最小値Aminにおける指令値(θ+y)と、基準の指令値θとの差分yを求める。その差分yを、基準であるアクチュエータMの駆動と同調するためのアクチュエータMの補正値α21とする。ただし、y≧xである。
【0042】
例えば、(S8)において、電流値の最小値Aminを探し出したときの指令値(θ+y)が11°であった場合、基準の指令値θ=10°であるので、その差分y=11°−10°=1°と求まる。この値y=1°を補正値α21とする。
(S10):(S9)で決定した補正値α21をアクチュエータMに記録する。すなわち、補正値α21=1°を「区分け5」における補正値として、アクチュエータMに書き込む。つまり、補正値α21を、指令値θ=10°に対する補正情報として、アクチュエータMに登録する。
【0043】
(S11): 同期対象のアクチュエータMにて、所定の角度ごとに区分けをした全てにおいて、(S6)〜(S10)の手順を実施して、それぞれの区分けにおける補正値α21を求めて、アクチュエータMに記録する。
補正値α21に関し、(S6)〜(S10)の手順に従って、アクチュエータMの「区分け1」〜「区分け7」の全てにおいて、それぞれに適した補正値α21を求める。補正値α21については、図2に示すようなグラフとなる。求めた補正値α21を、区分けごとの補正情報として、アクチュエータMに全て書き込む。
【0044】
つまり、補正値α21には、指令値θ=−30°に対する補正情報(「区分け1」)、指令値θ=−20°に対する補正情報(「区分け2」)、指令値θ=−10°に対する補正情報(「区分け3」)、指令値θ=0°に対する補正情報(「区分け4」)、指令値θ=10°に対する補正情報(「区分け5」)、指令値θ=20°に対する補正情報(「区分け6」)、指令値θ=30°に対する補正情報(「区分け7」)が含まれていて、アクチュエータMに登録されている。
【0045】
ここで、アクチュエータMとアクチュエータMの接続を解除するようにしてもよい。
(S12):(S5)に戻って、アクチュエータMから、同期対象となるアクチュエータMを新たに選び出して、(S11)までの手順を、同期対象となる全てのアクチュエータMに対して実施して、補正値α23を所定の角度ごとに区分けをした全てにおいて求めて、アクチュエータMのそれぞれに記録する。
【0046】
(S5)に戻って、例えば、残りのアクチュエータMを同期対象として新たに選び出す。(S6)〜(S11)までの手順に従って、基準であるアクチュエータMの駆動と同調するためのアクチュエータMの補正値α23を求める。補正値α23を「区分け1」〜「区分け7」ごとに求める。求めた補正値α23を、区分けごとの補正情報として、アクチュエータMに全て書き込む。
【0047】
また、補正値α23には、補正値α21と同様に、指令値θ=−30°に対する補正情報(「区分け1」)、指令値θ=−20°に対する補正情報(「区分け2」)、指令値θ=−10°に対する補正情報(「区分け3」)、指令値θ=0°に対する補正情報(「区分け4」)、指令値θ=10°に対する補正情報(「区分け5」)、指令値θ=20°に対する補正情報(「区分け6」)、指令値θ=30°に対する補正情報(「区分け7」)が含まれていて、アクチュエータMに登録されている。
【0048】
ここで、表1に、5個のアクチュエータMの場合を示す。基準のアクチュエータ3をMとし、同期対象のアクチュエータ3をM、M、M、Mとする。
表1に示すように、補正値αにおいては、例えば、基準のアクチュエータMに対するアクチュエータMのα31に関し、区分けした全て(「区分け1」〜「区分け7」)の補正情報を有している。
【0049】
すなわち、アクチュエータMには、補正値α31に関し、指令値θ=−30°に対する補正値α31、指令値θ=−20°に対する補正値α31、指令値θ=−10°に対する補正値α31、・・・、指令値θ=10°に対する補正値α31、指令値θ=20°に対する補正値α31、指令値θ=30°に対する補正値α31が補正情報として登録されている。
【0050】
【表1】
【0051】
なお、アクチュエータM、アクチュエータM、アクチュエータMについても、アクチュエータMと同様に、区分けした全ての補正情報が登録されている。
以上のように、区分けした全ての補正値αが予め登録されたアクチュエータ3は、任意(所定の区分け)の指令値θが入力されると、その指令値θに対応する補正値αにより、エルロン2は指令値θに沿った動作を行う。
【0052】
ところで、本発明の同期方法については、ステップ(S1)〜(S12)までの全ての工程を自動化することが可能となっている。例えば、機体に着脱可能なテストツール11(制御装置)に本発明の機能を実装し、自動的に実行されるものとしてもよい。
また、従属すベきアクチュエータ3が複数の場合、基準となるアクチュエータ3に対して、近くに搭載されているアクチュエータ3から、順に補正作業を行うことが望ましい。その際、補正作業が済んでいないアクチュエータ3については、配線(信号線8・電源線7)を取り外しておく必要がある。一方、補正作業が済んだアクチュエータ3については、残りのアクチュエータ3を補正する際、接続したままでもよい。
【0053】
また、基準となるアクチュエータ3に関して、2個搭載されている場合はいずれか一方とし、3個搭載されている場合は中央のもの(真ん中の2番目)とすることが望ましい。また、4個搭載されている場合、できる限り中央(中央の2番目又は3番目)のアクチュエータ3を基準にすることが望ましい。
本発明によれば、複数のアクチュエータ3(サーボモータ)を制御するにあたり、入力された指令値θに沿った駆動にならないアクチュエータ3に対して、補正値αを与えておき、指令値θが入力されると補正値αにより指令値θに沿った駆動を出力することで、エルロン2などの可動する翼(同一動翼)の動きを精確に制御することができる。
【0054】
なお、本発明は、上で詳説した模型飛行機の動翼だけでなく、例えば、模型自動車(ラジオコントロールカー)のステアリングなどを制御する場合においても適用可能である。また、本発明は、無線通信おける同期方法について述べたが、無線通信だけでなく有線通信でのコントロールにおいても有用である。
ただし、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。
【0055】
特に、今回開示された実施形態において、明示されていない事項、例えば、作動条件や操作条件、構成物の寸法、重量などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
【符号の説明】
【0056】
1 主翼
2 エルロン
3 アクチュエータ(サーボモータ)
4 出力軸
5 サーボホーン
6 リンゲージ部材
7 電源線
8 信号線
9 電流計
10 制御部
11 制御装置(テストツール)
図1
図2