(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966902
(24)【登録日】2021年10月26日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】耐熱性を有する縮合硬化型シリコーン樹脂組成物及びこれを使用した光半導体装置
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20211108BHJP
C08K 5/5415 20060101ALI20211108BHJP
C08L 83/14 20060101ALI20211108BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20211108BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K5/5415
C08L83/14
H01L23/30 F
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-175122(P2017-175122)
(22)【出願日】2017年9月12日
(65)【公開番号】特開2019-52198(P2019-52198A)
(43)【公開日】2019年4月4日
【審査請求日】2020年6月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000100698
【氏名又は名称】アイカ工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】軽部 健太
【審査官】
吉田 早希
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2017/081850(WO,A1)
【文献】
特開昭60−163966(JP,A)
【文献】
特開平01−272682(JP,A)
【文献】
特開平05−163438(JP,A)
【文献】
特開2012−017427(JP,A)
【文献】
特開2010−163602(JP,A)
【文献】
米国特許第05204384(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC C08K 3/00 − 13/08
C08L 1/00 − 101/14
C08G 77/00 − 77/62
H01L 23/28 − 23/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シラノール基又はケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(A)と、1分子中に珪素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するシラン化合物(B)と、シラノール縮合触媒(C)と、耐熱性付与剤(D)として、
25℃における粘度が10〜10000mPa・sであるオルガノポリシロキサン(D1)と、
一般式(R1COO)nM(R1は同種又は異種の一価炭化水素基、Mはセリウムを主成分とする希土類元素混合物、n=3又は4)で示されるセリウムのカルボン酸塩(D2)と、
一般式(R2O)4Ti(R2は同種又は異種の一価炭化水素基)で示されるチタン化合物(D3)とを、
250℃以上の温度で熱処理して得られた希土類含有オルガノポリシロキサン化合物と、
を含み、
シラノール基又はケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(A)100重量部に対して、耐熱性付与剤(D)を0.2〜5重量部含有することを特徴とする耐熱性を有する縮合硬化型シリコーン樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1の硬化物で光半導体素子が封止されていることを特徴とする光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性を有し、高温下に長期間置かれても劣化せず、クラックが発生しない耐熱性を有する縮合硬化型シリコーン樹脂組成物及びこれを使用した光半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐熱着色安定性、薄膜硬化性に優れ、加熱減量を抑制することができる、シラノール縮合触媒、加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物、およびこれを用いる光半導体封止体が提案されている(特許文献1)。該シリコーン樹脂組成物は、(A)1分子中に2個以上のシラノール基を有するポリシロキサン100質量部と、(B)1分子中にケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するシラン化合物0.1〜2000質量部と、(C)特許文献1において式(I)で表されるジルコニウム金属塩とを含有する加熱硬化性光半導体封止用シリコーン樹脂組成物である。
【0003】
しかしながら、該シリコーン樹脂組成物は、250℃程度の高温下に長時間置かれると劣化して硬化物にクラックが発生することがあり、光半導体素子(以下、LEDという)の封止剤として使用すると該LEDの輝度が低下する場合があるという課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−163602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、耐熱性を有し長時間高温下に置かれても劣化してクラックが発生することが無く、結果としてLED封止剤に使用した場合、LEDの輝度低下が少ない耐熱性を有する縮合硬化型シリコーン樹脂組成物及びこれを使用した光半導体装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1記載の発明は、
シラノール基又はケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(A)と、1分子中に珪素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するシラン化合物(B)と、シラノール縮合触媒(C)と、耐熱性付与剤(D)として、
25℃における粘度が10〜10000mPa・sであるオルガノポリシロキサン(D1)と、
一般式(R
1COO)
nM(R
1は同種又は異種の一価炭化水素基、Mはセリウムを主成分とする希土類元素混合物、n=3又は4)で示されるセリウムのカルボン酸塩(D2)と、
一般式(R
2O)
4Ti(R
2は同種又は異種の一価炭化水素基)で示されるチタン化合物(D3)とを、
250℃以上の温度で熱処理して得られた希土類含有オルガノポリシロキサン化合物と、
を含
み、
シラノール基又はケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(A)100重量部に対して、耐熱性付与剤(D)を0.2〜5重量部含有することを特徴とする耐熱性を有する縮合硬化型シリコーン樹脂組成物を提供する。
【0007】
また、請求項2記載の発明は、請求項1の硬化物で光半導体素子が封止されていることを特徴とする光半導体装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の耐熱性を有する縮合硬化型シリコーン樹脂組成物は、高温下に長時間置かれても物性の低下が無く、クラックの発生が無いという効果があり、結果としてLEDの輝度が低下することが無い効果がある。また請求項2記載の光半導体装置は、結果として輝度の低下が無いと言う効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る耐熱性を有する縮合硬化型シリコーン樹脂組成物について具体的に説明する。
【0010】
<分子鎖末端が水酸基で封鎖されたポリジメチルシロキサン(A)>
本発明に使用されるシラノール基又はケイ素原子に結合した加水分解性基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサン(A)は、硬化前の本組成物に適度の流動性を与え、また硬化後のゴム状弾性体に優れた機械的性質を与えるために配合され、25℃における粘度は0.01〜1000Pa・sであることが望ましい。粘度が0.01Pa・s未満では硬化後のゴム状弾性体の機械的特性が不十分となり、1000Pa・s超では均一な組成物が得にくくなり、流動性が悪くなる。より好ましい25℃における粘度は0.1〜100Pa・sであり、0.1Pa・s未満では硬化後のゴム状弾性体の機械的特性が不十分となる傾向があり、100Pa・s超では均一な組成物が得にくくなる傾向があり、また流動性が悪くなる傾向がある。加水分解性基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基が例示される。
【0011】
ケイ素原子に直接結合する有機基としては合成の容易さからメチル基が好ましいが、他にメチル,エチル,プロピル,ブチル,ヘキシルのようなアルキル基,ビニル,アリルのようなアルケニル基,及びクロロメチル基,β−シアノエチル基,3,3,3−トリフルオロプロピル基のような1価の置換炭化水素基などが結合していても良い。
【0012】
特にメチル基は原料中間体が最も容易に得られるばかりでなく,シロキサンの重合度が高くても低粘度となり,硬化前の本組成物の流動性と硬化後のゴム状弾性体の物性のバランスを良好なものとする。上記他の有機基が結合している場合であっても全有機基の85%以上はメチル基であることが好ましい。
【0013】
<1分子中に珪素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するシラン化合物(B)>
本発明に使用される1分子中に珪素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するシラン化合物(B)は、1分子中1個のケイ素原子を有し、ケイ素原子にアルコキシ基が2個以上結合している化合物の他、1分子中2個以上のケイ素原子を有し、骨格がポリシロキサン骨格であり、ケイ素原子に結合しているアルコキシ基を2個以上有するオルガノポリシロキサン化合物のどちらであっても良いが、どちらかと言うと前者のシラン化合物(B)が好ましい。
【0014】
1分子中1個のケイ素原子を有し、ケイ素原子にアルコキシ基が2個以上結合しているシラン化合物としては、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランのようなジアルコキシシラン;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランのようなトリアルコキシシラン;テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピルオキシシランのようなテトラアルコキシシラン;トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシランの加水分解物;γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシランのような(メタ)アクリロキシアルキルトリアルコキシシランを挙げることが出来る。
【0015】
<シラノール縮合触媒(C)>
本発明に使用するシラノール縮合触媒(C)は、オクチル酸錫、ネオデカン酸錫、ナフテン酸錫、ステアリン酸錫、ジブチル錫ジオクトエート、ジブチル錫ジラウレート、ジオクチル錫ジバーサテート、ジブチル錫ビストリエトキシシリケート、ジブチル錫ジオレイルマレート、ジブチル錫ジアセテート、1,1,3,3−テトラブチル−1,3−ジラウリルオキシカルボニル−ジスタノキサン、ジブチル錫オキシビスエトキシシリケート、ジブチル錫オキサイド、ジオクチル錫塩と正珪酸エチルとの反応生成物、ジブチル錫塩と正珪酸エチルとの反応生成物、ジブチル錫オキサイドとフタル酸エステルとの反応生成物、ジブチル錫オキサイドとマレイン酸ジエステルとの反応生成物、ジブチル錫ジアセチルアセトナートなどの有機錫化合物が挙げられる。このようなシラノール縮合触媒(C)を用いることにより,本組成物の内部硬化性が良好となる。
【0016】
シラノール縮合触媒の(C)の配合量は(A)成分100重量部に対して0.1〜1.0重量部であり,0.1重量部未満では硬化速度が遅くなる場合があり,1.0重量部超では可使時間が短くなる場合がある。市販のステアリン酸錫として、ネオスタンU−50(日東化成株式会社製、商品名)がある。
【0017】
<耐熱性付与剤(D)>
本発明に使用する耐熱付与剤(D)は、25℃における粘度が10〜10000mPa・sであるオルガノポリシロキサン(D1)と、一般式(R
1COO)
nM(R
1は同種又は異種の一価炭化水素基、Mはセリウムを主成分とする希土類元素混合物、n=3又は4)で示されるセリウムのカルボン酸塩(D2)と、一般式(R
2O)
4Ti(R
2は同種又は異種の一価炭化水素基)で示されるチタン化合物(D3)とを、250℃以上の温度で熱処理して得られた希土類含有オルガノポリシロキサン化合物である。
【0018】
オルガノポリシロキサン(D1)は、従来公知の25℃における粘度が10〜10000mPa・sのオルガノポリシロキサンであればよく、これは実質的にジオルガノポリシロキサン単位の繰り返し(直鎖状構造)を主体とした、常温で液体を保つ直鎖状または分岐状のものである。このケイ素原子に結合した有機基(即ち、非置換又は置換の一価炭化水素基)は、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;シロクヘキシル基などのシクロアルキル基;あるいはこれらの炭素原子に結合した水素原子の1部または全部をハロゲン原子、シアノ基などで置換した基、例えばクロロメチル基、フロロプロピル基、シアノメチル基などから選択される。このオルガノポリシロキサン(D1)としては、その分子鎖末端がトリメチルシロキシ基等のトリアルキルシロキシ基、ビニルジメチルシロキシ基等のアルケニルジアルキルシロキシ基、ジビニルメチルシロキシ基等のジアルケニルアルキルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等のトリアルケニルシロキシ基などのトリオルガノシロキシ基や、水酸基、アルコキシ基などで封鎖されたものが挙げられる。また、これらの各種オルガノポリシロキサンの混合物であってもよい。また、オルガノポリシロキサン(D1)成分の粘度は、25℃における粘度が10〜10000mPa・sであり、好ましくは50〜1000mPa・sである。粘度が10mPa・s以下の場合、高温でのシロキサン蒸発量が多くなりやすく、重量変化が大きくなるため、耐熱性が低下しやすい。また、10000mPa・sを超えた場合、後述するセリウム化合物との混和が円滑に行われなくなるため、やはり耐熱性が低下しやすくなる。
【0019】
(D2)成分としてのセリウムのカルボン酸塩は一般式:
(R
1COO)
nM
で示され、ここで、R
1は同種または異種の一価炭化水素基、Mはセリウムを主成分とする希土類元素混合物であり、2−エチルヘキサン酸、ナフテン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸などのセリウム塩が例示される。なお、このセリウムのカルボン酸塩はその取り扱いの容易さ、下記(D3)成分のチタンとの相溶性の面から、有機溶剤溶液として使用されるのがよく、この有機溶剤としては、スタンダードソルベント、ミネラルスピリット、リグロイン、石油エーテルなどの石油系溶剤、トルエン、キシレンなどの芳香族系溶剤が例示される。
【0020】
(D2)成分の添加量は、セリウム量が、本発明である耐熱性付与剤が配合される縮合硬化型シリコーン樹脂組成物を構成する成分の、分子鎖末端が水酸基にて封鎖されたポリジメチルシロキサン(A)100重量部に対して0.05〜5重量部となる量、好ましくは0.1〜3重量部となる量である。セリウム量が0.05重量部未満の場合、期待される耐熱性が得られない。また、5重量部より多い場合、セリウム化合物が上記ポリジメチルシロキサン(A)成分中で不均一となり、やはり所定の耐熱性が得られない。
【0021】
(D3)成分としてのチタン化合物は、一般式:
(R
2O)
4Ti
で示される。ここで、R
2は各々独立して一価炭化水素基、好ましくはイソプロピル基、n−ブチル基、ステアリル基、オクチル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基であり、Tiはチタンである。かかる化合物には、テトラアルコキシチタンが例示されるが、その部分加水分解縮合物であってもよい。
【0022】
本願発明に係る耐熱性付与剤(D)は、上記(D1)〜(D3)成分を混合後、250℃以上の温度で熱処理することによって得られるものであるが、その加熱温度が250℃未満では均一な組成を得ることが難しく、310℃を超えると(D1)成分の熱分解速度が大きくなるので、250〜310℃で処理するのが好ましい。
【0023】
本願発明である耐熱性付与剤は、縮合硬化型シリコーン樹脂組成物を構成する成分の、分子鎖末端が水酸基にて封鎖されたポリジメチルシロキサン(A)100重量部に対して、0.2〜5重量部添加するのが好ましく、さらに好ましくは0.5〜4重量部添加する。本願発明である耐熱性付与剤の添加量が0.2重量部未満の場合、高温での耐熱性向上の効果が見られず、逆に5重量部を超えた場合でも高温での耐熱性向上の効果が得られにくくなる。
【0024】
なお、上記希土類含有オルガノポリシロキサン化合物の構造は、熱処理前のセリウムのカルボン酸塩(D2)がセリウムを主成分とする希土類元素の混合物のカルボン酸塩であり、熱処理によって得られる希土類含有オルガノポリシロキサン化合物は単体ではないため、それぞれを微量成分についても単離して同定することは困難であって、その構造により特定することは不可能である。また、希土類含有オルガノオルガノポリシロキサンを混合物として分離することも困難であり、熱処理によって得られる希土類含有オルガノポリシロキサン化合物をその特性によって直接特定することも到底できない。したがって、上記希土類含有オルガノポリシロキサン化合物については、「出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定すること」が不可能又はおよそ非実際的である事情が存在する。
【0025】
<シリコーンオイル>
本発明には必要によりシリコーンオイルを配合することができる。シリコーンオイルは本組成物を使用する際の作業性を向上させ,泡抜け性等を良好とし,硬化後のゴム状弾性体の硬さや伸びを調整することを目的として配合される。シリコーンオイルとは,分子中にアルコキシ基やシラノール基などの反応基を有しない非反応性のシリコーンオイルであり,分子鎖末端はトリメチルシロキシ基などのトリオルガノシロキシ基で封鎖されている。最も好適に使用されるのは両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサンである。
【0026】
シリコーンオイルの粘度は25℃で5〜50,000mPa・sであることが好ましく、5mcSt未満では本組成物の硬化後のゴム状弾性体の機械的特性が不十分となる場合があり,50,000mPa・s超では本組成物の流動性が悪くなる場合がある。より好ましくは50〜5,000mP・sであり,50mP・s未満では本組成物の硬化後のゴム状弾性体の機械的特性が不十分となる傾向があり,5,000mPa・s超では本組成物の押し出し作業性が悪くなる傾向がある。
【0027】
シリコーンオイルの配合量は、前記(A)成分100重量部当たり、0.1〜100重量部であり、好ましくは0.2〜80重量部である。0.1重量部未満では本組成物の流動性が不十分となり、100重量部超では硬化物の機械的強度が低下する。0.2重量部未満では本組成物の押し出し作業性が不十分となる傾向があり、80重量部超では硬化物の機械的強度が低下する傾向がある。
【0028】
本発明の請求項2に記載の光半導体装置は、上記請求項1に記載の耐熱性を有する縮合硬化型シリコーン樹脂組成物の硬化物により光半導体(LED)等の光半導体素子が封止されている光半導体装置である。
【実施例】
【0029】
以下,実施例及び比較例にて具体的に説明する。
【0030】
<耐熱性付与剤(D)の調製>
25℃における粘度が10〜10000mPa・sであるオルガノポリシロキサン(D1)として、両末端がトリメチルシロキシ基で封止された、粘度が100mP・s/25℃である直鎖状ジメチルポリシロキサンを、セリウムのカルボン酸塩(D2)として、2−エチルへキサン酸希土のターペン溶液 レア・アースOCTOATE 6%(希土類元素含有量6重量%、DIC社製)を、チタン化合物(D3)としてチタンテトラノルマルブトキシド(チタン含有量14重量%)を使用し、表1に示した配合にて、(D2)成分、(D3)成分を混合し、該混合液を(D1)成分に攪拌しながら添加した後、窒素ガスを流通しながら加熱してターペンを揮発させた。続いて攪拌しながら300℃で1時間過熱し、褐色で透明な耐熱性付与剤(D)を調製した。
【0031】
【表1】
【0032】
<実施例及び比較例>
表2に示す配合にて(A)成分として粘度3Pa・s/25℃の分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたポリジメチルシロキサンを使用し、シラン化合物(B)としてテトラエトキシシランを使用し、シリコーンオイルとして粘度0.1Pa・s/25℃の両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖されたポリジメチルシロキサンを使用し、シラノール縮合触媒(C)としてネオスタンU−50(日東化成株式会社製、商品名)を使用し、耐熱性付与剤(D)として、上記のように調製した耐熱性付与剤(D)を使用して、すべての材料を均一に混合して実施例又は比較例の縮合硬化型シリコーン樹脂組成物を得た。
【0033】
【表2】
【0034】
<評価項目及び評価方法>
【0035】
<デュロメータ硬さ>
実施例及び比較例の縮合硬化型シリコーン樹脂組成物を直径3cmの容器内に流し込み、23℃50%RH雰囲気下で7日間放置し、10mm厚みの硬化物を作製する。この硬度をJIS K 6253に規定するタイプAデュロメータにより測定し初期のデュロメータ硬さとした。その後、該硬化物を250℃のオーブン中に100時間、200時間放置し、それぞれの時間経過後に23℃に徐冷し、デュロメータ硬さを同様に測定した。
【0036】
<重量変化率>
実施例及び比較例の縮合硬化型シリコーン樹脂組成物を直径3cmの容器内に流し込み、23℃50%RH雰囲気下で7日間放置し、10mm厚みの硬化物を作製する。この重量を測定し初期重量とする。その後、該硬化物を250℃のオーブン中に100時間、200時間放置し、それぞれの時間経過後に23℃に徐冷し、重量を測定し加熱後重量とする。加熱後重量より初期重量を減じた値を初期重量で除した値を重量変化率(%)として算出した。
【0037】
<クラック>
実施例及び比較例の縮合硬化型シリコーン樹脂組成物を直径3cmの容器内に流し込み、23℃50%RH雰囲気下で7日間放置し、10mm厚みの硬化物を作製する。その後、該硬化物を250℃のオーブン中に100時間、200時間放置し、それぞれの時間経過後に目視にて硬化物にクラックが発生しているどうかを目視にて確認した。
【0038】
<評価結果>
評価結果を表3に示す。
【0039】
【表3】