(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記粘着剤層は、前記変色剤として、ビスマス系化合物、モリブデン系化合物および銅系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでいる請求項1に記載の粘着フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
[粘着フィルム]
まず、本発明の粘着フィルムについて説明する。
【0015】
≪第1実施形態≫
図1は、本発明の粘着フィルムの第1実施形態を示す模式的な縦断面図である。
【0016】
粘着フィルム1は、基材12と、レーザー光の照射により変色する変色剤および白色粒子を含む粘着剤層10とを備えている。
【0017】
粘着フィルム1では、粘着剤層10がレーザー光の照射により変色する変色剤を含むことにより、レーザー光を照射して、粘着剤層10の対応する部位に変色した部分である変色部11を形成することができ、これにより、所定の情報を記録することができる(レーザーマーキング)。これにより、粘着フィルム1は、例えば、ラベルとして用いることができる。
【0018】
特に、粘着フィルム1の構成部位の中でも、粘着剤層10を変色可能とすることにより、被着体20に貼着された状態で、記録された情報を好適に保護することができる。また、記録された情報が改ざんされることを効果的に防止することができる。また、粘着剤層10は、一般に、他の部位に比べて塑性変形しやすく、内部応力をためにくい。そのため、例えば、変色可能な部位が、変色に伴って体積変化する場合であっても、粘着フィルム全体としての不本意な変形が防止され、粘着フィルムの耐久性の低下等を生じにくい。以上のようなことから、粘着フィルム1の信頼性を優れたものとすることができる。
【0019】
また、粘着フィルムの他の部位を変色可能に構成する場合に比べて、粘着フィルムの製造が容易となる。また、変色可能な部位を別途設ける場合に比べて、粘着フィルムの層構成を単純化させることができる。
【0020】
また、粘着剤層10が白色粒子を含むことにより、変色部11が設けられた粘着フィルム1を観察する際の、粘着フィルム1の変色部11が設けられた部位とそれ以外の部位とのコントラストが大きくなり、記録された情報の視認性が優れたものとなる。
【0021】
これは、以下のような理由による。すなわち、粘着剤層10が白色粒子を含むことにより、当該白色粒子が入射した光を反射するため、粘着剤層10ひいては粘着フィルム1の地色の明度を調節できる。そして、粘着剤層10が白色粒子を含むことにより、レーザー光の照射により変色部11が形成された部位(変色部)と、粘着剤層10のそれ以外の部位(非変色部)とのコントラストをより向上させることができ、変色部11によるパターンの視認性をさらに向上させることができる。
【0022】
粘着フィルム1は、粘着剤層10を対向させることにより被着体20に貼着して用いられる。
【0023】
図1は、粘着フィルム1において、粘着剤層10に変色部11が形成され、さらに被着体20に貼着された状態を示している。
【0024】
以下、粘着フィルム1を構成する各構成について、詳細に説明する。
<基材>
基材12は、粘着剤層10を支持する機能を有している。
【0025】
基材12の構成材料としては、光透過性を有するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸メチル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸メチル共重合体等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;アセテート樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合(ABS)樹脂、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリ−p−フェニレンスルフィド、ポリエーテルエステル、ポリカーボネート、酢酸セルロース等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、可視光、レーザー光の透過性等の観点から、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0026】
また、基材12は、前述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等が挙げられる。
【0027】
また、基材12は、単層よりなるものであってもよいし、複数の層を備える積層体であってもよい。また、基材12は、例えば、厚さ方向に組成が傾斜的に変化する傾斜材料で構成されたものであってもよい。
【0028】
基材12の厚さは、特に限定されないが、15μm以上300μm以下であるのが好ましく、30μm以上200μm以下であるのがより好ましい。
【0029】
基材12は、光透過性を有するものであるのが好ましい。
これにより、基材12が設けられた面側からレーザー光を照射することにより、好適に変色部11を形成することができる。また、基材12が設けられた面側からの変色部11によるパターンの視認性を優れたものとすることができる。
【0030】
基材12についての可視光の透過率は、特に限定されないが、80%以上であるのが好ましく、90%以上100%以下であるのがより好ましく、95%以上99.99%以下であるのがさらに好ましい。
【0031】
これにより、粘着剤層10中でレーザー光の照射により変色して形成される変色部11とそれ以外の部位(変色していない非変色部)とのコントラストをより大きいものとすることができ、変色部11によるパターンの視認性をより向上させることができる。
【0032】
基材12についてのレーザー光(変色部11の形成に用いるレーザー光)の透過率は、特に限定されないが、80%以上であるのが好ましく、90%以上100%以下であるのがより好ましく、95%以上99.99%以下であるのがさらに好ましい。
【0033】
これにより、粘着フィルム1の基材12が設けられた面側からレーザー光を照射して、変色部11を形成する場合に、基材12側から照射したレーザー光を、より効率よく、粘着剤層10に到達させることができる。その結果、レーザー光の照射による変色部11の形成のエネルギー効率をより向上させることができる。また。粘着剤層10中でレーザー光の照射により変色して形成される変色部11とそれ以外の部位(変色していない非変色部)とのコントラストをより大きいものとすることができ、変色部11によるパターンの視認性をより向上させることができる。
【0034】
<粘着剤層>
粘着剤層10は、粘着フィルム1を被着体20に貼着する際に、被着体20と接触(密着)する部位である。
【0035】
また、粘着剤層10は、レーザー光が照射された部位が変色して変色部11を形成することにより、各種情報が記録される層である。変色部11は、被着体20への貼着前に形成されるものであってもよいし、被着体20への貼着後に形成されるものであってもよい。
【0036】
なお、本明細書において、「変色」とは、レーザー光を照射する前の色調から変化することをいい、透明に変化することを含む概念である。
【0037】
(粘着剤)
粘着剤層10を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等が挙げられるが、中でも、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0038】
これにより、粘着剤層10と基材12との密着性をより高いものとすることができる。また、粘着剤の透明性をより高いものとすることができ、粘着剤層10が白色粒子を含むことによる効果がより顕著に発揮され、変色部11が設けられた粘着フィルム1を観察する際の、粘着フィルム1の変色部11が設けられた部位とそれ以外の部位とのコントラストがより大きくなり、記録された情報の視認性がより優れたものとなる。
【0039】
アクリル系粘着剤としては、主成分として、例えば、(メタ)アクリル酸エステル単独重合体、(メタ)アクリル酸エステル単位二種以上を含む共重合体および(メタ)アクリル酸エステルと他の官能性単量体との共重合体の中から選ばれた少なくとも一種を含有するもの(以下、単に「アクリル系ポリマー」ともいう。)が用いられる。該(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ブチルエステル、(メタ)アクリル酸ペンチルエステル、(メタ)アクリル酸ヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ヘプチルエステル、(メタ)アクリル酸オクチルエステル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルエステル、(メタ)アクリル酸デシルエステル等が挙げられる。また、官能性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルエステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。アクリル系粘着剤は、一般に、溶剤型とエマルジョン型に大別され、溶剤型は、通常前記アクリル系ポリマー、溶剤、架橋剤および所望に応じて用いられる粘着付与剤、可塑剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤等から構成されており、架橋システムとしてはメチロール基縮合、イオン架橋、ウレタン架橋、エポキシ架橋等が利用される。一方、エマルジョン型は、通常、前記アクリル系ポリマー、乳化剤、水性溶媒、所望に応じて用いられる粘着付与剤等から構成される。
【0040】
(変色剤)
変色剤は、レーザー光が照射されることにより変色する成分であり、粘着剤層10に変色部11を形成するのに寄与する成分である。
【0041】
変色剤としては、例えば、レーザー光の照射により、レーザー光の作用で変色剤自身が化学反応(例えば、酸化反応や還元反応等)により発色(変色)する物質、粘着剤層10が含む変色剤の周囲の樹脂組成物(例えば、粘着剤層10を構成する樹脂材料(粘着剤)等)が化学反応(例えば、炭化)し発色(変色)させる物質等を好適に用いることができる。
【0042】
変色剤は、粘着剤層10中において分散した状態であってもよいし、溶解した状態であってもよい。
【0043】
変色剤としては、例えば、銅系化合物、モリブデン系化合物、ビスマス系化合物、鉄系化合物、ニッケル系化合物、クロム系化合物、ジルコニウム系化合物、ネオジム系化合物、アンチモン系化合物、チタン系化合物、マイカ系化合物、スズ系化合物等が挙げられる。
【0044】
これらの中でも、粘着剤層10は、変色剤として、ビスマス系化合物、モリブデン系化合物および銅系化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含んでいることが好ましい。
【0045】
これにより、レーザー光照射時における粘着剤層10の発色性をより優れたものとすることができるとともに、レーザー光照射による粘着剤層10の不本意な膨れや、粘着剤層10と基材12との密着性の低下等をより効果的に防止することができる。その結果、変色部11の視認性、粘着フィルム1の信頼性をより向上させることができる。
【0046】
粘着剤層10中における変色剤の含有率は、特に限定されないが、0.5質量%以上50質量%以下であるのが好ましく、1.0質量%以上3.0質量%以下であるのがより好ましい。
【0047】
これにより、粘着剤層10中の変色剤以外の成分の機能を十分に発揮させつつ、粘着剤層10の発色性をより優れたものとすることができる。また、レーザー光照射時における粘着フィルム1の不本意な変性、劣化等をより効果的に防止することができる。
【0048】
また、非変色部との明度差を大きくしコントラストを高めるために、変色部11の色は暗色であることが好ましい。
【0049】
具体的には、粘着フィルム1の使用状態における観察者の視点30側の面についての粘着フィルム1の変色部11が設けられた部位におけるL
*の値(JIS Z8781−4で規定されるL
*a
*b
*表示の色度図でのL
*の値)は、0以上60以下であるのが好ましく、0以上40以下であるのがより好ましい。
【0050】
(白色粒子)
白色粒子は、変色部11が形成されていない状態、変色部11が形成されていない部位での白色度を上げ、変色部11と、非変色部とのコントラストを向上させ、変色部11によるパターンの視認性をさらに向上させる機能を有している。
ことができる。
【0051】
白色粒子は、一般に、レーザー光による影響を受けにくいものである。
このような白色粒子としては、例えば、白色染料や白色顔料等を用いることができ、具体的には、酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、硫化亜鉛、硫酸バリウム等が挙げられる。
【0052】
中でも、白色粒子は、酸化チタン、炭酸カルシウムのうち少なくとも1種を含んでいるのが好ましい。
【0053】
これにより、白色粒子の白色度や安定性をより優れたものとすることができ、上述したような効果をより安定的にかつより顕著に発揮させることができる。
【0054】
白色粒子の平均粒径は、0.05μm以上50μm以下であるのが好ましく、0.05μm以上3.0μm以下であるのがより好ましく、0.1μm以上2.0μm以下であるのがさらに好ましい。
これにより、前述した効果がより顕著に発揮される。
【0055】
粘着剤層10中における白色粒子の含有率は、0.1質量%以上30質量%以下であるのが好ましく、0.2質量%以上25質量%以下であるのがより好ましい。
【0056】
これにより、粘着剤層10中の他の成分の機能を十分に発揮させつつ、前述したような白色顔料を含むことによる効果をより顕著に発揮させることができる。
【0057】
(その他の成分)
また、粘着剤層10は、前述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、粘着付与剤、染料、顔料等の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等が挙げられる。
【0058】
粘着剤層10の厚さは、5μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上50μm以下であるのがより好ましい。
【0059】
これにより、粘着フィルム1の被着体20に貼着する際の貼着のしやすさ等の粘着フィルム1の取り扱いのしやすさをより向上させることができるとともに、変色部11によるパターンの視認性をより向上させることができる。
【0060】
粘着フィルム1は、被着体20への貼着前には、被着体20への接触面(本実施形態では、粘着剤層10)が剥離ライナーで被覆されていてもよい。
【0061】
これにより、粘着フィルム1の搬送時および保管時等において、粘着フィルム1(被着体20への接触面)を好適に保護することができる。
【0062】
剥離ライナーとしては、特に制限されず、粘着フィルムの分野で通常使用されるものを用いることができる。剥離ライナーとしては、例えば、紙基材またはフィルム基材の表面に剥離層が設けられたもの等が挙げられる。
【0063】
紙基材としては、例えば、上質紙、クラフト紙、グラシン紙等の紙類が挙げられる。また、フィルム基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の各種樹脂で構成されたフィルムが挙げられる。紙基材およびフィルム基材には、填料等の充填剤が含有されていてもよい。
【0064】
剥離層の構成材料としては、例えば、シリコーン、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂等が挙げられる。
【0065】
剥離ライナーの厚さは、特に限定されないが、10μm以上150μm以下であるのが好ましく、20μm以上130μm以下であるのがより好ましく、40μm以上50μm以下であるのがさらに好ましい。
【0066】
本実施形態の粘着フィルム1が貼着される被着体20は、特に限定されず、いかなる材料で構成されたものであってもよく、また、いかなる形状、大きさのものであってもよい。
【0067】
[レーザーマーキング]
粘着フィルム1は、レーザー光を照射して、粘着剤層10の対応する部位に変色部11を形成することにより所定の情報を記録し(レーザーマーキング)、例えば、ラベルとして用いることができる。
【0068】
情報の記録に用いるレーザー光としては、例えば、半導体レーザー、YAGレーザー、He−Neレーザー、CO
2レーザー等が挙げられ、中でも、YAGレーザーが好ましい。
【0069】
これにより、変色部11を容易かつ確実に形成することができるとともに、基材12等の不本意な変性、劣化等をより好適に防止することができる。
【0070】
レーザーマーキングにより記録される情報の内容は、特に限定されず、例えば、種々の文字、記号、符号、点、線、図形、模様またはこれらの任意の組合せとすることができ、当該情報の内容は任意であり、いかなるものであってもよい。
【0071】
例えば、複数の粘着フィルム1に同じ内容が記録されてもよいし、例えば、製造番号、製品情報等のように、個体識別のために、粘着フィルム1毎に異なる情報が記録されてもよい。
前記情報は、例えば、バーコードのような二次元コードであってもよい。
【0072】
レーザー光の照射による変色部11の形成(レーザーマーキング)は、例えば、粘着フィルム1の被着体20への貼着前に行ってもよいし、被着体20への貼着後に行ってもよい。また、レーザー光の照射による変色部11の形成(レーザーマーキング)は、例えば、被着体20への接触面が剥離ライナーで被覆された状態で行ってもよいし、被着体20への接触面が露出した状態で行ってもよい。
【0073】
≪第2実施形態≫
図2は、本発明の粘着フィルムの第2実施形態を示す模式的な縦断面図である。
図3は、第2実施形態の粘着フィルムに対して、レーザー光を照射することにより、粘着剤層に変色部を形成する様子を模式的に示した図である。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
【0074】
本実施形態の粘着フィルム1は、基材12と、レーザー光の照射により変色する変色剤および白色粒子を含む粘着剤層10と、光を反射する機能を有し粘着フィルム1を被着体20に貼着して用いる際に粘着剤層10よりも観察者の視点30からの奥側(粘着剤層10の基材12に対向する面とは反対の面側)に配された反射層13とを有している。言い換えると、粘着フィルム1は、基材12と、レーザー光の照射により変色する変色剤および白色粒子を含む粘着剤層10とを備え、さらに、粘着フィルム1を被着体20に貼着して用いる際の粘着剤層10よりも観察者の視点30からの奥側に、光を反射する機能を有する反射層13が配されている。
【0075】
このように、本実施形態では、白色粒子を含む粘着剤層10に加えて、粘着剤層10よりも観察者の視点30からの奥側に配置された、光を反射する機能を有する反射層13を有することにより、変色部11が設けられた粘着フィルム1を観察する際の、粘着フィルム1の変色部11が設けられた部位とそれ以外の部位とのコントラストが特に大きくなり、記録された情報の視認性をさらに向上させることができる。
【0076】
また、粘着剤層10中における白色粒子の含有率が比較的低い場合であっても、粘着フィルム1全体としての変色部11によるパターンの視認性を十分に優れたものとすることができる。そのため、粘着剤層10層中における白色粒子以外の成分の含有率を高めることができ、粘着剤層10の特性(例えば、粘着力やレーザー光による発色性等)のさらなる向上を図ることができる。
【0077】
また、反射層13は、一般に、レーザー光の反射性にも優れているため、レーザー光の照射による変色部11の形成を行う際のエネルギー効率を向上させることができる。すなわち、変色部11の形成のためにレーザー光Leを照射する際、照射したレーザー光Leの一部は、粘着剤層10で吸収されないが、反射層13が配されていることにより、当該吸収されなかったレーザー光Leは、反射層13で反射されることとなる(
図3参照)。その結果、当該反射されたレーザー光Leが、変色部11の形成に寄与することができる。したがって、照射したレーザー光Leのエネルギーのうち変色部11の形成に寄与する成分の割合を高めることができる。よって、より小さいエネルギーで変色部11を形成することができたり、所定のエネルギー量のレーザー光Leでより変色の度合いの大きい変色部11を形成することができたりする。
【0078】
<反射層>
反射層13は、粘着剤層10よりも観察者の視点30からの奥側に設けられており、光を反射する機能を有している。
【0079】
反射層13は、光を反射する機能を有していればよいが、レーザー光により変色した粘着剤層10(変色部11)よりも明度が高い明色層であるのが好ましい。
【0080】
これにより、変色部11によるパターンの視認性をより向上させることができるとともに、レーザー光の照射による変色部11の形成を行う際のエネルギー効率をより向上させることができる。
【0081】
このような反射層13は、例えば、着色剤を含む材料で構成することができる。具体的には、着色剤および結着剤(バインダー樹脂)を含む材料で構成することができる。着色剤としては、特に限定されないが、粘着剤層10の変色部11よりも明度が高い明色を呈するものであることが好ましい。
【0082】
特に、反射層13は、白色を呈するものであるのが好ましい。
これにより、変色部11によるパターンの視認性をさらに向上させることができるとともに、レーザー光の照射による変色部11の形成を行う際のエネルギー効率をさらに向上させることができる。
【0083】
以下、反射層13が白色を呈する白色層である場合について中心的に説明する。
反射層13としての白色層は、例えば、白色を呈する白色系着色剤を含む材料で構成されたものとすることができる。具体的には、例えば、白色系着色剤および結着剤(バインダー樹脂)を含む材料で構成されたものとすることができる。
【0084】
白色系着色剤としては、白色を呈する無機顔料、有機顔料が挙げられる。
白色を呈する無機顔料としては、例えば、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、硫化亜鉛、タルク、カオリン、炭酸カルシウム、酸化チタン、シリカ、フッ化リチウム、フッ化カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム、マイカ等が挙げられる。
【0085】
また、白色を呈する有機顔料としては、例えば、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリレート共重合体等が挙げられる。
【0086】
中でも、白色性(反射性)付与の観点からは、白色系着色剤として、ルチル型二酸化チタンを用いるのが好ましい。
【0087】
反射層13中に白色系着色剤が分散状態で含まれる場合、その平均粒径は、0.1μm以上1μm以下であるのが好ましく、0.2μm以上0.8μm以下であるのがより好ましい。
【0088】
これにより、反射層13の表面の平滑性を十分に優れたものとしつつ、反射層13での白色系着色剤の分散性を特に優れたものとすることができる。
【0089】
結着剤(バインダー樹脂)としては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、架橋化ポリエステルウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、活性エネルギー線硬化型化合物の硬化樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリオール系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、セルロース誘導体、アセテート誘導体、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、ラテックス樹脂、デンプン、ゼラチン、植物タンパク、カゼイン、アラビアゴム、アルブミン等の有機結着剤が挙げられる。
【0090】
また、反射層13は、粘着剤を含む材料で構成されていてもよい。
これにより、反射層13は、隣接する層との密着性が特に優れたものとなる。また、後述するような第2の粘着剤層14を省略することができる。
このような粘着剤は、前述したバインダーとして機能するものであってもよい。
【0091】
反射層13中に含まれる粘着剤としては、例えば、前述した粘着剤層10の構成成分として例示した粘着剤が挙げられる。
【0092】
反射層13中における白色系着色剤の含有量は、特に限定されないが、結着剤100質量部に対して10質量部以上50質量部以下であるのが好ましく、20質量部以上40質量部以下であるのがより好ましい。
【0093】
これにより、反射層13の強度や隣接する層との密着性を優れたものとしつつ、前述したような反射層13としての機能をより効果的に発揮することができる。
【0094】
反射層13の厚さは、3μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上50μm以下であるのがより好ましい。
【0095】
なお、反射層13は、例えば、金属材料で構成された金属層等であってもよい。
反射層13が金属材料で構成された金属層である場合、当該反射層13の厚さは、0.01μm以上5.0μm以下であるのが好ましい。
【0096】
反射層13は、前述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、粘着付与剤、白色系着色剤以外の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等が挙げられる。
【0097】
反射層13についての可視光の反射率は、特に限定されないが、30%以上100%以下であるのが好ましく、50%以上100%以下であるのがより好ましく、70%以上100%以下であるのがさらに好ましい。
【0098】
これにより、前述したような反射層13を設けることによる効果がより顕著に発揮される。
【0099】
<第2の粘着剤層>
また、
図2に示す構成では、反射層13の粘着剤層(第1の粘着剤層)10に対向する面とは反対の面側に、他の粘着剤層(第2の粘着剤層)14が設けられている。
【0100】
これにより、例えば、反射層13が粘着性を有さない場合であっても、粘着フィルム1を被着体20に好適に貼着することができる。また、粘着フィルム1の製造において、各層の形成順序の自由度が増す。
【0101】
第2の粘着剤層14を構成する粘着剤としては、例えば、前述した粘着剤層(第1の粘着剤層)10の構成成分として例示した粘着剤が挙げられる。
【0102】
反射層13は、前述した以外の成分(その他の成分)を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、粘着付与剤、白色系着色剤以外の着色剤、アニリド系、フェノール系等の酸化防止剤、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤、光安定剤、改質剤、防錆剤、充填剤、表面潤滑剤、腐食防止剤、熱安定剤、滑剤、プライマー、帯電防止剤、重合禁止剤、架橋剤、触媒、可塑剤、レベリング剤、増粘剤、軟化剤、分散剤等が挙げられる。
【0103】
第2の粘着剤層14の厚さは、5μm以上100μm以下であるのが好ましく、10μm以上50μm以下であるのがより好ましい。
【0104】
これにより、粘着フィルム1の被着体20に貼着する際の貼着のしやすさ等の粘着フィルム1の取り扱いのしやすさをより向上させることができる。
【0105】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の粘着フィルムの第3実施形態について説明する。
【0106】
図4は、本発明の粘着フィルムの第3実施形態を示す模式的な縦断面図である。
図5は、第3実施形態の粘着フィルムに対して、レーザー光を照射することにより、粘着剤層に変色部を形成する様子を模式的に示した図である。以下の説明では、前述した実施形態との相違点について中心的に説明し、同様の事項についての説明は省略する。
【0107】
前述した実施形態では、被着体20に貼着する面側から、第2の粘着剤層14、反射層13、粘着剤層(第1の粘着剤層)10および基材12がこの順で積層されていたのに対し、本実施形態の粘着フィルム1では、被着体20に貼着する面側から、粘着剤層(第1の粘着剤層)10、反射層13、第2の粘着剤層14および基材12がこの順で積層されている。言い換えると、前述した実施形態では、観察者の視点30が、粘着フィルム1の被着体20に接触する面とは反対の面側であり、反射層13が、粘着剤層10の被着体20に接触する面側に設けられていたのに対し、本実施形態の粘着フィルム1では、観察者の視点30が、粘着フィルム1の被着体20に接触する面側(粘着剤層(第1の粘着剤層)10が光透過性を有する被着体20に接触する部位)であり、反射層13が、粘着剤層10の被着体20に接触する面とは反対の面側に設けられている。
【0108】
すなわち、本実施形態の粘着フィルム1を被着体20に貼着する際には、粘着剤層10を被着体20に対向させることにより、光透過性を有する被着体20に貼着して用いられる。前述した実施形態では、観察者は、基材12側から、粘着剤層10に形成された変色部11を観察していたが、本実施形態では、観察者は、光透過性を有する被着体20側から、粘着剤層10に形成された変色部11を観察することになる。
【0109】
このような構成により、基材12が光透過性を有していなくても、前述したような本発明による効果を得ることができる。したがって、基材12の構成材料等の選択の幅を広げることができ、例えば、各種紙材料、不織布、織物等で構成された基材12を好適に用いることができる。その結果、粘着フィルム1全体として構成の幅を広げることができる。
【0110】
また、基材12とは反対の面側からレーザー光Leを照射することにより、粘着剤層10に情報を記録すること(変色部11を形成すること)ができるため(
図5参照)、レーザー光による粘着フィルム1の構成部材の不本意な変性劣化をより効果的に防止することができる。
【0111】
変色部11を形成するためのレーザー光の照射は、例えば、被着体20に貼着されていない状態において露出した粘着剤層10に対して行ってもよいし、光透過性を有する剥離ライナーで被覆された状態で行ってもよいし、粘着フィルム1を被着体20に貼着した状態で行ってもよい。
【0112】
前述した実施形態と同様に、本実施形態でも、反射層13の粘着剤層10に対向する面とは反対の面側に他の粘着剤層(第2の粘着剤層)14が設けられているが、本実施形態においては、このような構成により、例えば、反射層13が粘着性を有さない場合であっても、反射層13と基材12との密着性を特に優れたものとすることができる。
【0113】
本実施形態の粘着フィルム1が貼着される被着体20は、少なくとも粘着フィルム1が貼着される部位が、光透過性を有するものであれば、特に限定されない。
【0114】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0115】
例えば、本発明の粘着フィルムは、前述した以外の構成をさらに備えるものであってもよい。例えば、本発明の粘着フィルムは、コート層(例えば、印刷用コート層等)や中間層を備えていてもよい。