特許第6966911号(P6966911)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966911
(24)【登録日】2021年10月26日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】建物の壁構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20211108BHJP
【FI】
   E04B2/74 541H
   E04B2/74 551Z
   E04B2/74 541P
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-189008(P2017-189008)
(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公開番号】特開2019-65480(P2019-65480A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年7月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100161230
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 雅博
(72)【発明者】
【氏名】大屋 綾子
【審査官】 伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−262725(JP,A)
【文献】 特開2007−224528(JP,A)
【文献】 特開2015−061444(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/72 − 2/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下地フレームと、その下地フレームを挟んで両側に設けられる壁面材とを備えてなる壁パネルを備え、前記下地フレームは、一対の縦桟とその一対の縦桟の間に設けられる複数の横桟とを有し、それら縦桟及び横桟の間に壁内空間が形成されている建物の壁構造であって、
前記壁パネルには、分電盤が取り付けられており、
前記横桟には、前記横桟に沿う方向を長手方向として延びる長孔状をなし、前記横桟を上下方向に貫通する孔部が設けられ、その孔部内に、前記分電盤に接続される複数の配線を挿通させることが可能となっており、
前記孔部に前記複数の配線が挿通された状態で、当該孔部における隙間を塞ぐ閉塞部材が設けられており、
前記閉塞部材は、伸縮変形可能な弾性部材であり、
圧縮された状態で前記閉塞部材が前記孔部内に設けられることにより前記隙間が塞がれており、
前記壁パネルの厚み方向において前記配線を挟んで両側に、前記孔部の内周面に沿って前記閉塞部材がそれぞれ設けられており、
前記孔部内には、前記壁パネルの厚み方向において前記配線を挟んで一方の側に、前記閉塞部材を貼り付ける貼付部が設けられており、
前記孔部内において、前記壁パネルの厚み方向で前記配線を挟んで一方の側の前記閉塞部材は、前記貼付部により前記壁パネルに貼り付けられ、前記配線を挟んで他方の側の前記閉塞部材は、前記壁パネルに貼り付けられていないことを特徴とする建物の壁構造。
【請求項2】
前記下地フレームは、前記一対の縦桟の間に、前記分電盤の側面を固定する一対の補助縦桟を有しており、
前記一対の補助縦桟の間が前記孔部になっている請求項に記載の建物の壁構造。
【請求項3】
前記壁パネルは、その下端が床部に対して固定されるとともに、上端が天井部に対して固定されており、
前記壁パネルにおける最上部の前記横桟に前記孔部が設けられるとともに、前記天井部の天井面材に、その天井面材の上下に貫通し、かつ前記孔部に通じるように天井側の孔部が形成されており、
前記横桟及び前記天井面材の前記各孔部に、前記閉塞部材が圧縮状態で設けられている請求項1又は2に記載の建物の壁構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の壁構造に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建物では、例えば間仕切り壁の内部空間を利用して電気配線を通すようにした構成が知られている。具体的には、間仕切り壁は、一対の壁面材と、その一対の壁面材に挟まれて配置される下地フレームとにより構成されており、下地フレームにおいて最上部の横桟に形成されたものに天井裏空間から電気配線が挿通されることで、間仕切り壁内に電気配線が配されるようになっている(特許文献1参照)。例えば間仕切り壁には、その壁面に、分電盤やコンセント等の電気機器が設けられており、その電気機器に対して壁内空間内の電気配線が接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−61444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のとおり下地フレームに貫通孔を設けておくことで、壁内空間を利用しつつ間仕切り壁に電気配線を装備することができる。しかしながら、下地フレームの貫通孔に電気配線を通す構成では、貫通孔を介して天井空間等から壁内空間に空気が流入する。そのため、屋内空間における冷暖房効率の低下が懸念される。例えば、間仕切り壁の壁面に分電盤やコンセント等の電気機器が設けられている場合には、電気機器の取り付けのために設けた壁面材の孔を介して通気漏れが生じることが考えられる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、気密性の高い建物の壁構造を実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するのに有効な手段等につき、必要に応じて作用、効果等を示しつつ説明する。
【0007】
第1の発明は、
下地フレームと、その下地フレームを挟んで両側に設けられる壁面材とを備えてなる壁パネルを備え、前記下地フレームは、一対の縦桟とその一対の縦桟の間に設けられる複数の横桟とを有し、それら縦桟及び横桟の間に壁内空間が形成されている建物の壁構造であって、
前記横桟には、上下方向に貫通する孔部が設けられ、その孔部内に、前記壁パネルの外部からの配線を挿通させることが可能となっており、
前記孔部に前記配線が挿通された状態で、当該孔部における隙間を塞ぐ閉塞部材が設けられていることを特徴とする。
【0008】
壁パネル内の壁内空間を利用して配線を取り付ける場合には、壁パネルの横桟に設けられた孔部に配線が挿通されるが、その孔部を介して壁内空間に外部からの空気が流入することに起因して、屋内空間の気密性が低下することが懸念される。この点、上記構成では、孔部に配線が挿通された状態で、孔部における隙間が閉塞部材により塞がれているため、孔部を介して壁内空間に外部からの空気が流入することが抑制される。その結果、気密性の高い建物の壁構造を実現することができる。
【0009】
第2の発明は、前記閉塞部材は、伸縮変形可能な弾性部材であり、圧縮された状態で前記弾性部材が前記孔部内に設けられることにより前記隙間が塞がれていることを特徴とする。
【0010】
伸縮変形可能な弾性部材である閉塞部材を、圧縮した状態で孔部内に設け、それにより孔部の隙間を塞ぐようにした。この場合、閉塞部材の弾性を利用して、配線周りの隙間を好適に塞ぐことができる。
【0011】
第3の発明は、前記壁パネルに分電盤が取り付けられる建物の壁構造であって、前記孔部は、前記横桟に沿う方向を長手方向として延びる長孔状をなし、かつ前記分電盤に接続される複数の前記配線を挿通させることを可能にするものであり、前記壁パネルの厚み方向において前記配線を挟んで両側に、前記孔部の内周面に沿って前記閉塞部材がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0012】
壁パネルに分電盤が取り付けられ、その分電盤に複数の配線が接続されている構成では、横桟に長孔状の孔部が形成されることで、複数の配線を孔部内に好適に挿通させることができる。そして、壁パネルの厚み方向において配線を挟んで両側に、孔部の内周面に沿って閉塞部材がそれぞれ設けられていることで、壁厚み方向の両側から複数の配線を挟み込むような状態で、配線周りの隙間を好適に塞ぐことができる。
【0013】
第4の発明は、前記下地フレームは、前記一対の縦桟の間に、前記分電盤の側面を固定する一対の補助縦桟を有しており、前記一対の補助縦桟の間が前記孔部になっていることを特徴とする。
【0014】
上記構成において、下地フレームには、一対の縦桟の間に一対の補助縦桟が設けられ、その一対の補助縦桟の間に、側面が固定された状態で分電盤が固定されている。この場合、限られた大きさの壁内空間において分電盤を好適に固定することができる。また、一対の補助縦桟の間が長孔状の孔部になっているため、分電盤に対して横並びで接続される複数の配線をその横並びの状態で孔部に挿通させることができ、さらにその状態において複数の配線を閉塞部材により略均等に囲むことができる。これにより、複数の配線を挿通させるために比較的大きな孔部が形成されていても、その孔部を介しての通気を好適に遮断することができる。
【0015】
第5の発明は、前記孔部内には、前記壁パネルの厚み方向において前記配線を挟んで一方の側に、前記閉塞部材を貼り付ける貼付部が設けられており、前記孔部内において、前記壁パネルの厚み方向で前記配線を挟んで一方の側の前記閉塞部材は、前記貼付部により前記壁パネルに貼り付けられ、前記配線を挟んで他方の側の前記閉塞部材は、前記壁パネルに貼り付けられていないことを特徴とする。
【0016】
横桟の長孔状の孔部内に複数の配線を挿通した状態で壁厚み方向の両側に閉塞部材を介在させる壁構造において、壁厚み方向の一方の側に閉塞部材を貼り付けておくことにより、閉塞部材の下方への落下や位置ずれを生じさることなく、その閉塞部材の側方(手前側)に配線を容易に配置できる。また、壁厚み方向の他方の側においては、下地フレームの両側に壁面材を固定した状態で、孔部内の隙間に閉塞部材を押し込めばよく、貼付部が無くても孔部内に閉塞部材を適正に収容させることができる。この場合、孔部内への閉塞部材の取り付け作業を加味しつつ、好適なる構成を実現できる。
【0017】
第6の発明は、前記壁パネルは、その下端が床部に対して固定されるとともに、上端が天井部に対して固定されており、前記壁パネルにおける最上部の前記横桟に前記孔部が設けられるとともに、前記天井部の天井面材に、その天井面材の上下に貫通し、かつ前記孔部に通じるように天井側の孔部が形成されており、前記横桟及び前記天井面材の前記各孔部に、前記閉塞部材が圧縮状態で設けられていることを特徴とする。
【0018】
天井裏空間から壁内空間に分電盤用の配線が導入される場合において、上記のとおり天井面材及び壁パネルの横桟にそれぞれ設けられた孔部内に閉塞部材が収容されていることで、天井面材と壁パネルとの境界部を跨ぐ状態で閉塞部材が設けられることになる。そのため、天井面材と壁パネルとの境界部を介して通気漏れが生じることを抑制することができる。
【0019】
第7の発明は、前記閉塞部材は、伸縮変形可能である弾性シートであり、前記弾性シートには、周縁部から中央部に向けて切り込みが形成されており、前記横桟の上面又は下面に前記弾性シートが貼り付けられ、前記切り込みに沿って延びる切込端部どうしを重ね合わせた状態で前記隙間が塞がれていることを特徴とする。
【0020】
伸縮変形可能な閉塞部材(弾性シート)を横桟の上面又は下面に貼り付けることで、孔部の隙間を塞ぐようにした。この場合特に、弾性シートの切り込みに沿って延びる切込端部どうしを重ね合わせ、その状態で隙間を塞いでいるため、孔部に挿通されている配線を周りから囲むようにして弾性シートが設けられることになり、孔部内の隙間を適正に塞ぐことができる。また、孔部に配線が挿通されていなくても、切込端部どうしを重ね合わせることで、孔部を適正に塞ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】間仕切り壁の正面図。
図2】壁パネルの構成を示す分解斜視図。
図3】建物における壁パネルの取り付け状態を示す正面図。
図4】分電盤が設けられる壁パネルの分解斜視図。
図5】壁パネルの上端部周辺における壁内部構造を示す断面図。
図6】壁パネルの横断面図。
図7】壁パネルに設けた閉塞部材を示す図。
図8】横桟に弾性シートを貼り付けた状態を示す図。
図9】下地フレームの正面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明を具体化した一実施形態について図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、住宅等の建物において屋内空間を複数に仕切る間仕切り壁が設けられており、その間仕切り壁において本発明の壁構造を具体化している。住宅は、例えば複数の建物ユニットにより構築されるユニット式建物である。図1は間仕切り壁10の正面図、図2は壁パネル11の構成を示す分解斜視図である。なお、図1においては、間仕切り壁10について、壁紙26よりも内側の内部構造、及び壁面材22よりも内側の内部構造を破断図にて部分的に示している。
【0023】
図1及び図2に示すように、住宅等の建物には間仕切り壁10が設けられており、間仕切り壁10により、隣り合う部屋等の居住空間が仕切られている。間仕切り壁10は、複数の壁パネル11が横並びに複数配置されることで構成されている。壁パネル11は、略矩形板状に形成されており、屋内空間の天井高さとほぼ同じ高さ寸法を有している。壁パネル11は、その下端が床部13に対して固定されるとともに、上端が天井部12に対して固定されている。
【0024】
壁パネル11は、壁下地としての下地フレーム21と、その下地フレーム21を挟んで両側に設けられた一対の壁面材22とを有している。下地フレーム21は、全体として矩形枠状に形成されている。下地フレーム21は、互いに離間して設けられた一対の縦桟23と、それら縦桟23を連結する複数の横桟24とを備えている。縦桟23は上下方向(鉛直方向)に延び、横桟24は左右方向(水平方向)に延びている。縦桟23及び横桟24は、いずれも木材等の材料で長尺状に形成されたフレーム材であり、断面略矩形状とされ、それぞれビス等の固定具を打ち込むことが可能な中実の部材となっている。
【0025】
また、各横桟24には、孔部として、横桟24の厚み方向(上下方向)に貫通する複数の貫通孔25が設けられており、その貫通孔25を通じて、壁内空間に配線Wを通すことが可能になっている。この配線Wには、電力用の配線以外に、情報通信用の配線が含まれる。本実施形態では、天井裏空間から壁内空間に配線Wを導入することとしており、複数の横桟24のうち最下部を除く各横桟24に貫通孔25が設けられている。なお、横桟24ごとに貫通孔25を1つずつ設け、その貫通孔25に複数の配線Wを挿通可能にしてもよい。
【0026】
壁面材22は、石膏ボード等の板材により略矩形状に形成されており、下地フレーム21を挟んで両側に配置されている。各壁面材22の表側面には、隣り合う壁面材22(壁パネル11)の境界を跨ぐように壁紙26が張り付けられている。壁紙26は、紙材や合成樹脂材料などによりシート状に形成された仕上げ材であり、間仕切り壁10における屋内側壁面の表面を形成する表面材に相当する。壁紙26は、壁面材22に重ねられ、接着材等により壁面材22の屋内側板面に貼付されている。
【0027】
間仕切り壁10には、その壁面に、電気機器として分電盤31や照明スイッチ32、コンセント33が設けられている。このうち照明スイッチ32、コンセント33は、壁面材22に形成した開口部(図示略)に設けられており、照明スイッチ32、コンセント33に対して、貫通孔25を通して設けられる配線Wが接続されている。その他、壁面に設けられる電気機器としては、インタホンや音響機器(スピーカ)、HEMS操作装置等が考えられる。
【0028】
次に、分電盤31の設置に関する構造を説明する。図3は、建物における壁パネル11の取り付け状態を示す正面図であり、特に分電盤31が設けられる壁パネル11Aの構造を示している。また、図4は、分電盤31が設けられる壁パネル11Aの分解斜視図である。なお、図3図4では、壁パネル11Aの両方の壁面材22のうち、分電盤31が設けられない側の壁面材22が下地フレーム21に取り付けられ、分電盤31が設けられる側の壁面材22が取り外された状態を示している。
【0029】
図3及び図4に示す壁パネル11Aは、他の壁パネル11の構成とは異なり、一対の縦桟23の間に、複数の横桟24に加え、分電盤31を支持する支持構造を有している。すなわち、一対の縦桟23の内側には、パネル上下方向の中間位置にある横桟24から上方に延びる一対の補助縦桟41が縦桟23に平行に設けられている。一対の補助縦桟41の間の離間寸法は、分電盤31の横幅寸法と略同じであり、一対の補助縦桟41の間に分電盤31が配置されるようになっている。
【0030】
補助縦桟41の上端は、縦桟23の上端と同じ位置にあり、一対の縦桟23及び一対の補助縦桟41は上桟42,43により互いに連結されている。詳しくは、一対の補助縦桟41は、その上端部にて上桟42により互いに連結されている。また、壁パネル11の左右方向両端側において縦桟23及び補助縦桟41は、上端部にて上桟43により互いに連結されている。なお、上桟42,43は、壁パネル11における最上部の横桟を構成するものとなっている。
【0031】
ここで、上桟42,43のうち中央の上桟42は、板面が鉛直方向に延びる向き(縦向き)で設けられており、それ故に壁パネル11の厚み方向における寸法が縦桟23や横桟24の同寸法よりも小さいものとなっている。したがって、下地フレーム21に壁面材22を取り付けた状態では、壁パネル11の上面において上桟42に対応する位置に孔部44(図5(a)参照)が形成され、その孔部44を通じて壁内空間への配線Wの挿通が可能となっている。一対の補助縦桟41の間が孔部44になっている。孔部44は、上桟42に沿う方向を長手方向として延びる長孔状をなしており、複数(例えば10〜30本程度)の配線Wを孔部44に通すことが可能になっている。
【0032】
また、一対の補助縦桟41の間には、分電盤支持用の横桟45,46が架け渡されている。
【0033】
壁面材22には、壁パネル11に分電盤31を取り付けるための矩形状の開口部27が設けられている。分電盤31は、開口部27を通じて壁面の側に露出するものとなっている。分電盤31は、一対の補助縦桟41の間に配置された状態で、分電盤31の内部からビス34を打つことにより補助縦桟41に対して固定されるようになっている。つまり、分電盤31ではその側面が一対の補助縦桟41に固定されている。分電盤31の上面には、複数の配線Wを接続するための複数のコネクタ部35が横並びで設けられている。
【0034】
また、天井部12は、天井下地材としての天井小梁14及び野縁15と、天井面材16とを有している。天井小梁14は、図示しない天井大梁に連結されている。天井面材16は、例えば2枚重ねの石膏ボードにより形成されており、野縁15を介して天井小梁14に対してビス等により固定されている。
【0035】
天井面材16には、上下に貫通し、かつ壁パネル11のフレーム上部に設けられた孔部44に通じる孔部17が形成されている。孔部17は、フレーム上部の孔部44と同様に長孔状をなし、開口寸法も孔部44と略同じである。配線Wは、天井裏空間から、天井面材16及び壁パネル11の各孔部17,44を通じて壁内空間に導入され、その壁内空間にて分電盤31に接続されている。
【0036】
ところで、天井面材16及び壁パネル11の各孔部17,44を通じて壁内空間に配線Wが導入される構成では、各孔部17,44が通気経路となることで、屋内空間の気密性が低下することが懸念される。そこで本実施形態では、各孔部17,44に配線Wが挿通された状態で、その各孔部17,44に存在する隙間に閉塞部材を設け、その閉塞部材により孔部17,44内の隙間を塞ぐようにしている。
【0037】
図5は、壁パネル11の上端部周辺における壁内部構造を示す断面図であり、具体的には図3のA−A線の断面図である。図5の(a)は、配線Wと閉塞部材51とを挿入する前の状態を示し、(b)は、配線Wと閉塞部材51とを挿入した後の状態を示す。図6は、壁パネル11の横断面図であり、具体的には図5(b)のB−B線の断面図である。
【0038】
図5(a)に示すように、壁パネル11側の孔部44と天井面材16側の孔部17とは上下に連通している。これにより、各孔部17,44を通じて、天井面材16の上方の天井裏空間と壁内空間とが連通されている。なお、図示のとおり孔部17,44の内周面が上下に連続しているとよい。
【0039】
図5(b)及び図6に示すように、孔部17,44内には閉塞部材51が収容されている。閉塞部材51は、例えば発泡ゴム材料であるEPDM(エチレンプロピレンゴム)よりなる伸縮変形可能な弾性部材であり、壁厚み方向(図5の左右方向)において配線Wを挟んで両側に、孔部44の内周面に沿って設けられている。すなわち、閉塞部材51は、壁厚み方向において配線Wの一方の側に配置される第1部分51aと、他方の側に配置される第2部分51bとからなる。これら各部分51a,51bは、長尺状をなし、自然状態で壁幅方向における孔部寸法よりも大きい長さ寸法を有している。閉塞部材51は、圧縮状態で孔部17,44内に収容されている。また、閉塞部材51は、天井面材16と壁パネル11との境界部を跨ぐ状態で孔部17,44内に設けられている。
【0040】
なお、図6では、閉塞部材51の間において複数の配線Wを積み重ねずに一列に配置するようにしている。これにより、複数の配線Wを積み重ねて配置する場合に比べて、孔部17,44内の隙間が生じにくくなっている。
【0041】
上桟42には、孔部44側の側面に、接着材や両面テープからなる貼付部52が設けられており、その貼付部に、第1部分51aが貼り付けられている。この場合、孔部44内に配線Wが挿通される前に、閉塞部材51の一部を下地フレーム21に対して先付けしておくことが可能になっている。
【0042】
分電盤付きの壁パネル11Aにより間仕切り壁を製作する際には、下地フレーム21の片面側に壁面材22を取り付けた状態(図4の状態)で、壁パネル11Aが所定の間仕切り位置に固定される。このとき、天井面材16の孔部17と壁パネル11Aの孔部44とが位置合わせされる。また、下地フレーム21の一対の補助縦桟41の間に、分電盤31が固定される。
【0043】
その後、孔部17,44を通じて壁内空間に複数の配線Wが導入され、その壁内空間にて配線Wが分電盤31に接続される。なお、下地フレーム21の上桟42に対しては、配線Wが壁内空間に導入される前に、貼付部52により閉塞部材51(ここでは特に第1部分51a)が貼り付けられている。その後、下地フレーム21において分電盤側の側面に壁面材22が取り付けられる。そして、例えば天井裏空間の側から第2部分51bが押し込められることで、孔部17,44における隙間が閉塞部材51により閉塞される。ここで、孔部44内において、壁厚み方向で配線Wを挟んで一方の側の閉塞部材51は貼付部52により下地フレーム21に貼り付けられ、配線Wを挟んで他方の側の閉塞部材51は、下地フレーム21に貼り付けられていないものとなっている。
【0044】
なお、第2部分51bの取り付けに関して、天井裏空間の側から第2部分51bを押し込むとした構成以外に、分電盤側の壁面材22が取り付けられる前に、孔部17,44内の配線Wの手前側にテープ等により第2部分51bを取り付け、その状態で、各部分51a,51bを圧縮変形させつつ壁面材22を取り付ける構成であってもよい。
【0045】
第1部分51aと第2部分51bとを一体にして(すなわち連続する一体の長尺物として)閉塞部材51を形成することも可能ある。具体的には、図7に示すように、閉塞部材51の約半分を、第1部分51aとして上桟42に貼り付けておき、残りの部分(非貼り付け部分)を、孔部17,44内に配線Wを挿通させた後に、配線Wを囲むように手前側に配置する。そして、その配線Wを閉塞部材51で囲んだ状態で、手前側から壁面材22を取り付ける。
【0046】
また、壁パネル11において、照明スイッチ用又はコンセント用の配線Wの挿通部分である貫通孔25にも閉塞部材が設けられているとよい。その構成を図8に示す。
【0047】
図8に示す構成では、下地フレーム21の横桟24に、貫通孔25を塞ぐようにして、閉塞部材として弾性シート53が貼り付けられている。弾性シート53は、例えばクロロプレンゴムよりなる伸縮変形可能なシート材であり、一方の面が、横桟24に貼り付けられる貼着面となっている。弾性シート53には、周縁部から中央部に向けて切り込み54が形成されており、弾性シート53が横桟24に貼り付けられた状態では、切り込み54に沿って延びる切込端部どうしを重ね合わせることで、貫通孔25を介しての通気が遮断されるようになっている(図8の斜線部参照)。ここで、貫通孔25に配線Wを挿通させる場合には、配線Wを弾性シート53で囲み、かつ切り込み54での重ね合わせ(切込端部どうしの重ね合わせ)により隙間を塞ぐようにする。
【0048】
図9には、下地フレーム21において横桟24の貫通孔25に弾性シート53が貼り付けられた状態を示している。図9では、横桟24により上下に仕切られた上下5段の壁内空間のうち、上から3段目の壁内空間に照明スイッチ32が設けられるとともに、上から5段目(最下段)の壁内空間にコンセント33が設けられる構成としており、それら照明スイッチ32及びコンセント33に配線Wが接続されている。この場合、照明スイッチ32及びコンセント33のうち上側の照明スイッチ32の上方において横桟24の各貫通孔25が弾性シート53により塞がれている。これにより、照明スイッチ32やコンセント33を設けるために壁面材22に開口部が設けられていても、その開口部を通じて屋内空間の通気性が損なわれることが抑制されるようになっている。
【0049】
以上、詳述した本実施形態の構成によれば、以下の優れた効果が得られる。
【0050】
壁パネル11の横桟24に設けられた貫通孔25や孔部44に配線Wが挿通された状態で、貫通孔25や孔部44における隙間が閉塞部材51及び弾性シート53により塞がれる構成とした。そのため、貫通孔25や孔部44を介して壁内空間に外部からの空気が流入することが抑制される。その結果、気密性の高い建物の壁構造を実現することができる。
【0051】
伸縮変形可能な弾性部材である閉塞部材51を、圧縮した状態で孔部44内に設け、それにより孔部44の隙間を塞ぐようにした。この場合、閉塞部材51の弾性を利用して、配線周りの隙間を好適に塞ぐことができる。
【0052】
壁パネル11Aに分電盤31が取り付けられ、その分電盤31に複数の配線Wが接続されている構成では、孔部44が長孔状に形成されることで、複数の配線Wを孔部44内に好適に挿通させることができる。そして、壁厚み方向において配線Wを挟んで両側に、孔部44の内周面に沿って閉塞部材51がそれぞれ設けられていることで、壁厚み方向の両側から複数の配線Wを挟み込むような状態で、配線周りの隙間を好適に塞ぐことができる。
【0053】
下地フレーム21において、一対の縦桟23の間に一対の補助縦桟41を設け、その一対の補助縦桟41の間に、側面が固定された状態で分電盤31を固定した。この場合、限られた大きさの壁内空間において分電盤31を好適に固定することができる。また、一対の補助縦桟41の間が長孔状の孔部44になっているため、分電盤31に対して横並びで接続される複数の配線Wをその横並びの状態で孔部44に挿通させることができ、さらにその状態において複数の配線Wを閉塞部材51により略均等に囲むことができる。これにより、複数の配線Wを挿通させるために比較的大きな孔部44が形成されていても、その孔部44を介しての通気を好適に遮断することができる。
【0054】
長孔状の孔部44内に複数の配線Wを挿通した状態で壁厚み方向の両側に閉塞部材51を介在させる壁構造において、壁厚み方向の一方の側に閉塞部材51(第1部分51a)を貼り付けておくことにより、閉塞部材51(第1部分51a)の下方への落下や位置ずれを生じさることなく、その閉塞部材51の側方(手前側)に配線Wを容易に配置できる。また、壁厚み方向の他方の側においては、下地フレーム21の両側に壁面材22を固定した状態で、孔部44内の隙間に閉塞部材55(第2部分51b)を押し込めばよく、貼付部が無くても孔部44内に閉塞部材51を適正に収容させることができる。この場合、孔部44内への閉塞部材51の取り付け作業を加味しつつ、好適なる構成を実現できる。
【0055】
天井裏空間から壁内空間に分電盤31用の配線Wが導入される場合において、上記のとおり天井面材16及び壁パネル11Aの横桟24にそれぞれ設けられた孔部17,44内に閉塞部材51が収容されていることで、天井面材16と壁パネル11Aとの境界部を跨ぐ状態で閉塞部材51が設けられることになる。そのため、天井面材16と壁パネル11Aとの境界部を介して通気漏れが生じることを抑制することができる。
【0056】
弾性シート53を横桟24の上面に貼り付けることで、貫通孔25の隙間を塞ぐようにした。この場合特に、弾性シート53の切り込み54に沿って延びる切込端部どうしを重ね合わせ、その状態で隙間を塞いでいるため、貫通孔25に挿通されている配線Wを周りから囲むようにして弾性シート53が設けられることになり、貫通孔25内の隙間を適正に塞ぐことができる。また、貫通孔25に配線Wが挿通されていなくても、切込端部どうしを重ね合わせることで、貫通孔25を適正に塞ぐことができる。
【0057】
本発明は上記実施形態に限らず、例えば次のように実施されてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、一対の補助縦桟41の上端部を上桟42により連結し、上桟42の側方(手前側)に孔部44を設ける構成としたが、これを変更してもよく、例えば、上桟42を無くした構成としてもよい。この場合、一対の補助縦桟41の間が孔部44となり、壁パネル11の最上部では互いに離間する上桟43により横桟が構成される。
【0059】
・上記実施形態では、天井裏空間から壁内空間に対して配線Wを導入する構成としたが、これを変更し、床下空間から壁内空間に対して配線Wを導入する構成であってもよい。この場合、下地フレーム21の最下部の横桟に貫通孔等が設けられるとともに、その貫通孔等が閉塞部材により閉塞されるとよい。
【0060】
・壁パネル11の分電盤用以外の貫通孔25において、分電盤用の孔部44と同様に、貫通孔25内にEPDM等の弾性部材を押し込む構成としてもよい。
【0061】
・下地フレーム21の横桟24に形成された貫通孔25を塞ぐ弾性シート53を、横桟24の下面に貼り付けることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
10…間仕切り壁、11…壁パネル、12…天井部、13…床部、16…天井面材、17…孔部(貫通孔)、21…下地フレーム、22…壁面材、23…縦桟、24…横桟、25…貫通孔、31…分電盤、44…孔部(貫通孔)、51…閉塞部材、52…貼付部、53…弾性シート(閉塞部材)、54…切り込み、W…配線。
図1
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