特許第6966915号(P6966915)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966915
(24)【登録日】2021年10月26日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/06 20160101AFI20211108BHJP
   H01M 8/04029 20160101ALI20211108BHJP
   H01M 8/04 20160101ALI20211108BHJP
   H01M 8/0432 20160101ALI20211108BHJP
   H01M 8/10 20160101ALN20211108BHJP
【FI】
   H01M8/06
   H01M8/04029
   H01M8/04 N
   H01M8/0432
   !H01M8/10 101
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-193363(P2017-193363)
(22)【出願日】2017年10月3日
(65)【公開番号】特開2019-67662(P2019-67662A)
(43)【公開日】2019年4月25日
【審査請求日】2020年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001472
【氏名又は名称】特許業務法人かいせい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂上 祐一
(72)【発明者】
【氏名】小山 貴志
(72)【発明者】
【氏名】吉岡 良
(72)【発明者】
【氏名】山藤 考弘
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−313054(JP,A)
【文献】 特開2012−109094(JP,A)
【文献】 特開平03−158634(JP,A)
【文献】 特開2007−032994(JP,A)
【文献】 特開2013−178022(JP,A)
【文献】 特開2007−066591(JP,A)
【文献】 特開平11−283648(JP,A)
【文献】 特開平11−242962(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0025460(US,A1)
【文献】 特開2013−178021(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/00−8/2495
F24F 11/00−11/89
110/00
120/00
130/00
140/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と酸素とを電気化学反応させ、前記電気化学反応に伴って水を生成する燃料電池(10)と、
前記燃料電池から回収された水を貯蔵するとともに、貯蔵された水を排出可能となっている貯水部(31、35)と、
前記貯水部の水を使用する水使用部(39)と、
前記貯水部からの水の排出を制御する制御部(50)と
前記燃料電池で発生した熱を系外に放出する熱交換器(22)とを備え、
前記水使用部は、水の蒸発潜熱を利用して前記熱交換器を冷却するために、前記貯水部の水を前記燃料電池に散布する散布部であり、
前記制御部は、
前記貯水部の水が前回排出されてから第1所定時間が経過した場合に、前記貯水部の水を排出し、
前記第1所定時間より短い第2所定時間内に前記水使用部で水が使用されると予測される場合には、前記貯水部の水が排出されてから前記第1所定時間が経過していても、前記貯水部の水を排出せず、
前記第2所定時間内における前記燃料電池の運転状況を予測し、予測された前記燃料電池の運転状況に基づいて、前記第2所定時間内に前記散布部によって前記貯水部の水を前記熱交換器に散布するか否かを予測する燃料電池システム。
【請求項2】
前記熱交換器の温度を検出する温度検出部(27)を備え、
前記制御部は、前記貯水部の水が排出されてから前記第1所定時間が経過した場合において、前記熱交換器の温度が所定値を下回っているときは、前記貯水部からの水の排出を制限する請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記制御部は、前記貯水部の水が排出されてから前記第1所定時間が経過した場合において、前記熱交換器の温度が前記所定値を下回っているときは、前記貯水部から水を排出しない請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記貯水部の水が排出されてから前記第1所定時間が経過した場合において、前記熱交換器の温度が前記所定値を下回っているときは、前記熱交換器の温度が前記所定値を上回っているときよりも少ない流量で前記貯水部の水を排出する請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記貯水部の水が排出されてから前記第1所定時間が経過した場合にいて、前記熱交換器の温度が前記所定値を下回っているときは、前記貯水部の水が排出されてから前記第1所定時間より長い第3所定時間が経過したときに、前記流量で前記貯水部の水を排出する請求項に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池の生成水を回収して貯蔵する燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、車両に搭載された燃料電池の生成水を回収してタンクに貯蔵しておき、タンクに貯蔵された水をラジエータに散布してラジエータの冷却能力を向上させることが提案されている。このようにタンクで水を貯蔵する場合には、貯蔵水を長期間使用しないと、水の腐食や水中での生物発生などの水質が悪化するおそれがある。
【0003】
貯蔵水の水質悪化を抑制するために、特許文献2では、貯蔵水を加熱殺菌することが提案されており、特許文献3では、貯蔵水を定期的に排出することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−343396号公報
【特許文献2】特開2012−109094号公報
【特許文献3】特開2007−32994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2のように、貯蔵水を加熱殺菌する場合には、加熱殺菌のための装置が必要となり、システムが複雑になる。加熱殺菌の他、抗菌作用のある材料(銅・亜鉛など)を使用すること、貯蔵水に紫外線を照射すること、薬品などにより貯蔵水を強酸性にすることなども考えられるが、これらの手段もシステムが複雑になる。
【0006】
また、特許文献3のように、貯蔵水を定期的に排出する場合には、貯蔵水が必要なときに水が確保できない状況が発生しうる。さらに、貯蔵水の排出をラジエータに散布することで行う場合には、ラジエータに冷却水が流通していない状況で貯蔵水を排出すると、ラジエータで蒸発しない水が多く発生し、ラジエータ風下側の部品を被水させてしまう可能性がある。
【0007】
本発明は上記点に鑑み、燃料電池の生成水を貯蔵する燃料電池システムにおいて、構成を複雑化させることなく、水質の悪化を抑制しつつ貯蔵水を確保することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、水素と酸素とを電気化学反応させ、電気化学反応に伴って水を生成する燃料電池(10)と、燃料電池から回収された水を貯蔵するとともに、貯蔵された水を排出可能となっている貯水部(31、35)と、貯水部の水を使用する水使用部(39)と、貯水部からの水の排出を制御する制御部(50)と、燃料電池で発生した熱を系外に放出する熱交換器(22)とを備え、水使用部は、水の蒸発潜熱を利用して熱交換器を冷却するために、貯水部の水を燃料電池に散布する散布部であり、制御部は、貯水部の水が前回排出されてから第1所定時間が経過した場合に、貯水部の水を排出し、第1所定時間より短い第2所定時間内に使用部で貯水部の水が使用されると予測される場合は、貯水部の水が排出されてから第1所定時間が経過していても、貯水部の水を排出せず、第2所定時間内における燃料電池の運転状況を予測し、予測された燃料電池の運転状況に基づいて、第2所定時間内に散布部によって貯水部の水を熱交換器に散布するか否かを予測することを特徴とする。
【0009】
本発明では、燃料電池の生成水を貯水部に貯蔵し、定期的に貯蔵水を排出する構成において、近い将来、貯蔵水を使用すると予測される場合には、定期的なタンク貯蔵水の排出を禁止している。これにより、貯水部の貯蔵水を使用する必要が生じた場合に、貯蔵水が不足するという事態を防ぐことができる。
【0010】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の燃料電池システムの全体構成を示す概念図である。
図2】第1実施形態の燃料電池システムの冷却系を示す概念図である。
図3】第1実施形態の燃料電池システムの制御系を示すブロック図である。
図4】第1実施形態の燃料電池システムの定期排水制御を示すフローチャートである。
図5】第2実施形態の気液分離器を示す概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について図1図4に基づいて説明する。図1は、本第1実施形態に係る燃料電池システムを示す全体構成図である。この燃料電池システムは、電気自動車の一種である、いわゆる燃料電池車両に適用されており、車両走行用電動モータ等の電気負荷に電力を供給する。
【0013】
図1に示すように、燃料電池システムは、水素と酸素との電気化学反応を利用して電力を発生する燃料電池(FCスタック)10を備えている。燃料電池10は、図示しないインバータ等の電気機器に電力を供給するように構成されている。インバータは、燃料電池10から供給された直流電流を交流電流に変換して走行用モータ(負荷)に供給してモータを駆動する。
【0014】
本第1実施形態では、燃料電池10として固体高分子電解質型燃料電池を用いており、基本単位となるセルが複数積層されて構成されている。各セルは、電解質膜が一対の電極で挟まれた構成となっている。
【0015】
燃料電池10には、水素供給通路11を介して水素が供給され、空気供給通路12を介して酸素が供給される。燃料電池10では、以下の水素と酸素の電気化学反応が起こり電気エネルギが発生する。
【0016】
(負極側)H2→2H++2e-
(正極側)2H++1/2O2+2e-→H2
この電気化学反応のためには、燃料電池10内の電解質膜は、水分を含んだ湿潤状態となっている必要がある。このため、燃料電池10に供給される水素および空気を加湿し、これらの加湿されたガスを燃料電池10に供給することで、燃料電池10内の電解質を加湿するように構成されている。燃料電池10に供給される水素および空気の加湿は、図示しない加湿装置等によって行うことができる。
【0017】
上記電気化学反応に用いられなかった未反応の酸素は、排気通路13を介して燃料電池10から排気ガスとして排出される。また、燃料電池10では電気化学反応により生成水が発生し、この水分は排気ガスに含まれた状態で、排気通路13を介して燃料電池10から排出される。
【0018】
燃料電池10は発電の際、上記電気化学反応により熱が発生する。燃料電池10は、発電効率のために運転中一定温度(例えば80℃程度)に維持する必要がある。また、燃料電池10内部の電解質膜は、所定の許容上限温度を超えると、高温により破壊されるため、燃料電池10を許容温度以下に保持する必要がある。
【0019】
燃料電池システムは、燃料電池10に冷却水を循環供給する冷却水通路20を備えている。冷却水通路20には、冷却水を循環させるための冷却水ポンプ21が設けられている。
【0020】
冷却水通路20には、ラジエータ22が設けられている。ラジエータ22は、燃料電池10により高温となった冷却水と、ファン22aにより送風された外気とを熱交換させ、燃料電池10で発生した熱を系外に放出する熱交換器である。ファン22aの回転は、後述の制御部50によって制御される。
【0021】
冷却水通路20には、ラジエータ22と並列してサブラジエータ23が設けられている。サブラジエータ23は、冷却水と大気とを熱交換する熱交換器であり、燃料電池2の高負荷時などラジエータ22のみでは冷却能力が不足する場合に補助的に用いられる。
【0022】
冷却水通路20には、冷却水をラジエータ22をバイパスさせるためのバイパス通路24が設けられている。バイパス通路24はラジエータ22と並列的に設けられている。
【0023】
冷却水通路20とバイパス通路24の分岐部には、冷却水制御バルブ25が設けられている。冷却水制御バルブ25は、バルブ開度を調整することで、ラジエータ22に流れる冷却水流量と、バイパス通路24に流れる冷却水流量の比率を調整することができる。
【0024】
冷却水通路20における燃料電池10の出口側には、燃料電池10から流出した冷却水の温度(つまり、燃料電池10の出口温度)を検出する第1水温センサ26が設けられている。冷却水通路20におけるラジエータ22の出口側には、ラジエータ22から流出した冷却水の温度(つまり、ラジエータ22の出口温度)を検出する第2水温センサ27が設けられている。
【0025】
図1に戻り、燃料電池10の排気ガスが通過する排気通路13には、気液分離器30が設けられている。気液分離器30は、排気ガスに含まれる燃料電池10の生成水を回収する水回収部を構成している。
【0026】
気液分離器30の下方には、第1タンク31が設けられている。気液分離器30には、気液分離器30の水を第1タンク31に供給する連通路30aが設けられている。連通路30aの端部は、第1タンク31の内部に位置している。
【0027】
気液分離器30で回収した燃料電池10の生成水は、第1タンク31に貯蔵される。第1タンク31は、気液分離器30の鉛直方向下方に設ける必要があり、設置スペースを大きくすることが難しい。このため、第1タンク31としては小型のタンクが用いられる。
【0028】
第1タンク31には、貯蔵水の水位が下限値を下回っているか否かを検出する下限液面センサ31aが設けられている。また、第1タンク31には、内部の余分な水や空気を排出するための排出通路31bが設けられている。排出通路31bは、第1タンク31の上部に設けられている。第1タンク31の水位が所定値を超えた場合に、第1タンク31の水が排出通路31bを介して外部に排出される。
【0029】
第1タンク31の貯蔵水は、タンク間通路32を介して第2タンク35に供給可能となっている。タンク間通路32には、第1タンク31の貯蔵水を第2タンク35に供給するためのタンク間ポンプ33が設けられている。タンク間通路32におけるタンク間ポンプ33の下流側には、水の逆流を防ぐ逆止弁34が設けられている。
【0030】
第2タンク35には、第1タンク31から供給された水が貯蔵される。第2タンク35は、第1タンク31より容積が大きくなっている。本実施形態では、第1タンク31がサブタンク、第2タンク35がメインタンクとして位置付けられる。
【0031】
第2タンク35には、貯蔵水の水位が上限値を上回っているか否かを検出する上限液面センサ35aが設けられている。また、第2タンク35には、外部連通部35bが設けられている。外部連通部35bは、第2タンク35の内部から余分な空気を排出する目的と、第2タンク35に外部から水を供給する目的に用いられる。
【0032】
第2タンク35の貯蔵水は、散布用通路36を介して散布部39に供給される。散布部39は、ラジエータ22の表面に水を散布する目的でタンク貯蔵水を使用する水使用部である。
【0033】
散布用通路36には、第2タンク35の貯蔵水を散布部39に供給するための散布用ポンプ37が設けられている。散布用通路36における散布用ポンプ37の下流側には、水の逆流を防止する逆止弁38が設けられている。
【0034】
散布用ポンプ37は、散布部39に供給する水の流量を調整可能となっている。散布用ポンプ37による流量調整は、例えば電圧制御あるいはデューティ比制御によって行うことができる。
【0035】
散布部39は、散布用通路33の先端部に設けられている。散布部39は、ラジエータ22の風上側(つまり、車両前方側)において、ラジエータ22の上側部分の近傍に配置されている。
【0036】
散布部39は、水が流入可能な内部空間を有する筐体と、筐体内部と外部とを連通し、水を散布可能な複数の連通孔(例えば、噴射ノズル)を有している。散布部39の連通孔はラジエータ22に対向しており、散布部39の連通孔からラジエータ22の表面に水を散布することができる。
【0037】
ラジエータ22に水を散布することで、ラジエータ22の表面で水が蒸発する。この水の蒸発潜熱を利用してラジエータ22の冷却能力を向上させることができる。
【0038】
散布部39による水の散布は、燃料電池10の発電量増大に伴って燃料電池10の発熱量が増大し、冷却水温度が上昇した場合に行われる。つまり、散布部39による水の散布は、ラジエータ22の冷却能力を向上させる必要がある場合に行われる。
【0039】
例えば、燃料電池10の出口温度が所定の許容上限温度に到達した場合に、散布部39による水の散布を行うことができる。許容上限温度は、燃料電池10の電解質膜の耐熱温度(例えば110℃程度)に基づいて決定すればよく、任意に設定可能な値である。
【0040】
ラジエータ22への水の散布が長期間行われない場合には、タンク31、35に貯蔵水が長期間保存され、水質が悪化するおそれがある。このため、本実施形態では、燃料電池10の出口温度が許容上限温度に到達していなくても、散布部39による水の散布を定期的に行い、タンク貯蔵水を排出するようになっている。つまり、本実施形態では、散布部39による水の散布は、ラジエータ22の冷却能力向上のために行う場合と、タンク貯蔵水の水質悪化を抑制するために行う場合とがある。
【0041】
タンク貯蔵水を定期的に排出するために、散布部39による水の散布を行う場合に、ラジエータ22の温度が低いと、ラジエータ22の表面で水が蒸発しない可能性がある。ラジエータ22の表面で蒸発しなかった水は、ラジエータ22の風下側の部品に被ることになる。このため、本実施形態では、タンク31、35の貯蔵水を定期的に排出する際に、ラジエータ22の温度が低い場合には、タンク貯蔵水の排出を制限するようになっている。タンク貯蔵水の排出の制限には、タンク貯蔵水を排出しない場合と、タンク貯蔵水を低流量で排出する場合が含まれる。
【0042】
図3に示すように、燃料電池システムには、制御部50が設けられている。制御部50は、燃料電池システムを構成する各制御対象機器の作動を制御する制御部である。制御部50は、CPU、ROM及びRAM等を含む周知のマイクロコンピュータとその周辺回路から構成されている。
【0043】
制御部50には、水温センサ26、27、液面センサ31a、35a、外気温センサ51、乗員センサ52、ナビゲーション装置53等から各種情報が入力する。外気温センサ51は、外気温を検出するセンサである。
【0044】
乗員センサ52は、車両における乗員数を検出する。乗員センサ52としては、シート荷重センサ、シートベルトバックルセンサあるいはドアセンサ等を用いることができる。
【0045】
シート荷重センサは、車両の各シートに配置され、シートへの荷重を検出する。シート荷重センサが検出した荷重が所定値以上の場合、その座席に乗員が着座していると推定できる。シートベルトバックルセンサは、シートベルトの装着を検出する。シートベルトの装着が検出された場合、その座席に乗員が着座していると推定できる。ドアセンサは、各ドアの開閉状態を検出する。ドアが開閉された場合、そのドアから乗員が乗車したと推定できる。
【0046】
ナビゲーション装置53は、冷却水温度に影響を与える各種外部情報を提供する外部情報提供手段を構成する。ナビゲーション装置53は、ナビゲーション制御部、GPS受信機等を備えた位置検出部、地図データが記憶された地図データ記憶部、地図データ等を表示する表示部等を備えている。ナビゲーション装置53は、VICS(登録商標)等を利用して外部から渋滞情報を取得可能となっている。
【0047】
制御部50の出力側には、冷却水ポンプ21、ラジエータファン22a、冷却水制御バルブ25、タンク間ポンプ33、散布用ポンプ37等の各制御対象機器が接続されている。制御部50は、ROMに記憶されている制御プログラムに基づいて、各制御対象機器の作動を制御することができる。
【0048】
次に、水質悪化抑制を目的としてタンク貯蔵水を定期的に排出する定期排水制御を図4のフローチャートに基づいて説明する。図4に示す定期排水制御は、制御部50によって実行されるメインルーチンの一部であり、所定周期で繰り返し実行される。
【0049】
まず、前回、散布部39による水の散布を行ってから第1所定時間が経過したか否かを判定する(S10)。第1所定時間は、タンク貯蔵水の水質悪化が予想される時間であり、任意に設定できる。本実施形態では、第1所定時間を30日間としている。
【0050】
S10の判定処理の結果、前回の水の散布から第1所定時間が経過していないと判定された場合には(S10:NO)、定期排水制御を終了する。一方、前回の水の散布から第1所定時間が経過していると判定された場合には(S10:YES)、外気温センサ51から外気温を取得し、乗員センサ52から乗員数を取得し、ナビゲーション装置53から自車位置情報、目的地、渋滞情報等の各種情報を取得する(S11)。
【0051】
次に、燃料電池10の運転状況および冷却水温度を予測する(S12)。S12の処理では、S11の処理で取得した各種情報に基づいて燃料電池車両が予定走行ルートを走行した場合の燃料電池10の運転状況を予測し、予測した運転状況に基づいて燃料電池10の冷却水温度を予測すればよい。例えば、登坂時の道路勾配が大きい場合、高速道路を走行する場合、乗員数が多い場合等には、燃料電池10の負荷が大きくなり、冷却水温度が高くなる。また、外気温が高い場合にも、冷却水温度が高くなる。
【0052】
次に、第2所定時間内に散布部39からラジエータ22に水を散布する予定があるか否かを判定する(S13)。S13の処理では、S12の処理で予測した冷却水温度が第2所定時間内に許容上限温度を超えるか否かを判定すればよい。第2所定時間は、第1所定時間より短い時間として任意に設定できる。第2所定時間は、例えば燃料電池10の生成水を気液分離器30で回収して、タンク31、35の貯水量がラジエータ22への散布に必要な所定量に到達するのに必要な時間とすることができる。第2所定時間は、例えば数時間程度に設定することができる。
【0053】
S13の判定処理の結果、第2所定時間内に水を散布する予定があると判定された場合には(S13:YES)、定期排水制御を終了する。これにより、タンク貯蔵水の排出が禁止され、第2所定時間内に予定される水の散布に備えてタンク31、35の貯蔵水が保持される。
【0054】
一方、第2所定時間内に水を散布する予定がないと判定された場合には(S13:NO)、ラジエータ22が所定温度以上になっているか否かを判定する(S14)。ラジエータ22の温度は、第2水温センサ27で検出したラジエータ22の出口温度から推定すればよい。この所定温度は、ラジエータ22に水を散布した際に、ラジエータ22の表面で水が蒸発可能な温度(例えば70℃)であればよく、許容上限温度より低く設定することができる。
【0055】
S14の判定処理で、ラジエータ22が所定温度以上になっていると判定された場合には(S14:YES)、通常排水処理を実行する(S15)。通常排水処理では、散布用ポンプ37を作動させ、散布部39による水の散布を行う。通常排水処理では、散布用ポンプ37で供給される水の流速をラジエータ22の冷却能力向上のために水を散布する場合と同一としている。
【0056】
S14の判定処理で、ラジエータ22が所定温度以上になっていないと判定された場合には(S14:NO)、前回、散布部39による水の散布を行ってから第3所定時間が経過したか否かを判定する(S16)。第3所定時間は、タンク貯蔵水の水質悪化が確実に予想される時間であり、任意に設定できる。第3所定時間は、第1所定時間よりも長い時間である。本実施形態では、第3所定時間を40日間としている。
【0057】
S15の判定処理の結果、水の散布を行ってから第3所定時間が経過していないと判定された場合には(S16:NO)、定期排水制御を終了する。この場合には、タンク31、35から水の排出が行われない。一方、水の散布を行ってから第3所定時間が経過していると判定された場合には(S16:YES)、低速排水処理を実行する(S17)。
【0058】
低速排水処理では、通常排水処理よりも低速で散布用ポンプ37を作動させる。このため、低速排水処理では、ラジエータ22への水の散布が通常排水処理よりも低流量で行われる。
【0059】
以上説明した本実施形態では、燃料電池10の生成水をタンク31、35に貯蔵し、定期的にタンク貯蔵水を排出する構成において、近い将来、タンク貯蔵水を使用すると予測される場合には、定期的なタンク貯蔵水の排出を禁止している。これにより、タンク貯蔵水を使用する必要が生じた場合に、タンク貯蔵水が不足するという事態を防ぐことができる。
【0060】
また、本実施形態では、外気温、乗員数、自車位置情報、目的地、渋滞情報等の各種情報に基づいて、近い将来の燃料電池10の運転状況を予測し、ラジエータ22への水の散布が必要になるか否かを判定している。これにより、近い将来にタンク貯蔵水を使用するか否かを正確に予測することができ、タンク貯蔵水が不足するという事態を防ぐことができる。
【0061】
また、本実施形態では、タンク貯蔵水が第1所定時間使用されておらず、かつ、ラジエータ22の温度が所定温度を上回っている場合には、通常排水処理を行っている。このとき、ラジエータ22は散布された水を蒸発させるのに充分な温度になっているので、散布された水はラジエータ22の表面で蒸発する。これにより、ラジエータ22に散布された水が風下側の部品に被ることを抑制できる。
【0062】
また、ラジエータ温度が低い場合にラジエータ22に水を散布すると、ラジエータ22の表面で水が蒸発せず液滴のままとなる。このため、本実施形態では、タンク貯蔵水が第1所定時間使用されておらず、かつ、ラジエータ22の温度が所定温度を下回っている場合には、タンク貯蔵水の排出を制限し、ラジエータ22への水の散布を低流量で行っている。これにより、液滴状態の水が走行風によってラジエータ22の風下側の部品に飛び散ることを抑制できる。
【0063】
また、本実施形態では、タンク貯蔵水が第1所定時間使用されておらず、かつ、ラジエータ22の温度が所定温度を下回っている場合には、貯水部の水が排出されてから第3所定時間が経過したときに、通常排水処理よりも低流量でタンク貯蔵水を排出する。これにより、ラジエータ22の温度が所定温度を下回っている場合であっても、タンク貯蔵水を排出する必要性が高い場合には、タンク貯蔵水を排出することで、タンク貯蔵水の水質悪化を効果的に抑制できる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、気液分離器30の構成が異なっている。上記第1実施形態と同様の部分は説明を省略し、異なる部分についてのみ説明する。
【0065】
図5に示すように、本第2実施形態では、気液分離器30の連通路30aが第1タンク31の底部付近まで延びている。気液分離器30で回収した燃料電池10の生成水は、連通路30aによって第1タンク31の下方領域に供給される。このため、第1タンク31の下方領域に常に新しい水が供給され、第1タンク31で長時間貯蔵された水は上方に移動し、上方の排出通路31bから排出される。これにより、第1タンク31の貯蔵水の水質悪化を抑制することができる。
【0066】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。また、上記各実施形態に開示された手段は、実施可能な範囲で適宜組み合わせてもよい。
【0067】
(1)上記各実施形態では、タンク31、35の貯蔵水をラジエータ22への散布に用いる例について説明したが、これに限らず、タンク31、35の貯蔵水を他の目的に用いてもよい。例えば、タンク31、35の貯蔵水を燃料電池10の供給ガスの加湿に用いることができる。
【0068】
(2)上記第1実施形態の構成において、S16およびS17の処理、あるいはS16の処理を省略してもよい。
【0069】
S16およびS17の処理を省略する場合には、S14の判定処理でラジエータ22が所定温度以上になったと判定されるまで、定期的な排水処理が実行されず、タンク貯蔵水の排出が制限される。これにより、タンク31、35から排出された水がラジエータ22の風下側の部品に被ることを防ぐことができる。
【0070】
S16の処理を省略する場合には、S14の判定処理でラジエータ22が所定温度以上になっていないと判定された場合に、第3所定時間が経過したか否かに関わらず、S17の処理で低速排水処理が実行され、タンク貯蔵水の排出が制限される。これにより、タンク31、35から排出された水がラジエータ22の風下側の部品に被ることを抑制することができる。
【0071】
(3)上記第1実施形態の構成において、S11〜S13の処理を省略してもよい。S11〜S13の処理を省略する場合には、第2所定時間内にラジエータ11に水を散布する予定があるか否かに関わらず、ラジエータ22の温度が所定温度以上になっていないと判定された場合に、タンク貯蔵水の排水が制限される。
【符号の説明】
【0072】
10 燃料電池
22 ラジエータ(熱交換器)
30 気液分離器
31 第1タンク
35 第2タンク
39 散布部(水使用部)
50 制御部
図1
図2
図3
図4
図5