特許第6966933号(P6966933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6966933
(24)【登録日】2021年10月26日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/64 20180101AFI20211108BHJP
   B60Q 1/14 20060101ALI20211108BHJP
   F21S 41/68 20180101ALI20211108BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20211108BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20211108BHJP
【FI】
   F21S41/64
   B60Q1/14 E
   F21S41/68
   F21W102:00
   F21Y115:10
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-243603(P2017-243603)
(22)【出願日】2017年12月20日
(65)【公開番号】特開2019-110084(P2019-110084A)
(43)【公開日】2019年7月4日
【審査請求日】2020年11月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100091340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 敬四郎
(74)【代理人】
【識別番号】100141302
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 伸一
(72)【発明者】
【氏名】都甲 康夫
(72)【発明者】
【氏名】高尾 義史
【審査官】 下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−069458(JP,A)
【文献】 特開2017−212210(JP,A)
【文献】 特開2011−233305(JP,A)
【文献】 特開2019−071192(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/00
B60Q 1/14
F21W 102/00
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部分と第2部分とを含む電極パターンを有する液晶素子と、
前記電極パターンに接続された駆動回路と、
前記液晶素子の前後に光軸方向に離して、かつ前記液晶素子の法線方向の射影において、前記液晶素子に対して部分配置され、クロスニコル配置された偏光子/検光子と、
所定の入射角範囲内で前記液晶素子に光を供給する光源と、
前記液晶素子を透過した光を前方に投影できる投影光学系と、
を有し、前記光源点灯時には前記駆動回路は、前記電極パターンの第1部分に対して状況に応じて電圧を印加/解除し、前記電極パターンの第2部分に対して常に電圧を印加し、前記電極パターンの第1部分を通過し、前方に投影される光は前記偏光子/検光子の両方を通過し、前記電極パターンの第2部分を通過し、前方に投影される光は前記偏光子/検光子の少なくとも一方を通過しない成分を含む、照明装置。
【請求項2】
前記液晶素子は、前方に投影された時に、鉛直方向上方に配置されるハイビームエリアと、前記ハイビームエリアより下方に配置されるロービームエリアとを有し、前記電極パターンの第1部分は前記ハイビームエリアに属し、前記電極パターンの第2部分は前記ロービームエリアに属する、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記液晶素子は、前記電極パターンの前記第2部分に隣接し、かつ前記第1部分と逆側の位置に、電極パターンが存在しない無電極領域を有する、請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記液晶素子の前記無電極領域は、前記ロービームエリアに属する、請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
前記電極パターンの第2部分は照明視野内垂直方向に関して幅bを有し、前記偏光子/検光子の内、前記液晶素子に近い方が前記液晶素子との間に形成する距離をaとし、前記入射角範囲が前記液晶素子の法線に対して形成する角度の内、大きい方をθとした時、
(b/2)≧(a*tanθ)
の関係が満たされる、請求項1〜4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記偏光子/検光子において、前記偏光子のロービームエリア側領域の一部が取り除かれている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
前記液晶素子の電極パターンの前記第2部分は照明視野内垂直方向に関して前記偏光子より高さが高い、請求項6に記載の照明装置。
【請求項8】
前記偏光子/検光子において、前記検光子のロービームエリア側領域の一部が取り除かれている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項9】
前記液晶素子の電極パターンの前記第2部分は照明視野内垂直方向に関して前記検光子より高さが高い、請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
前記光源と前記偏光子との間に、前記偏光子に沿った方向に偏光を生じさせる構成をさらに有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用前照灯等に適した照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用前照灯において、対向車の存在等の前方の状況に応じて、配光形状をリアルタイムで制御できる技術(ADB adaptive driving beam 等と呼ばれる)が注目されている。例えば、走行用の配光形状すなわちハイビームで走行中に、対向車を検出した場合に、前照灯に照射される領域の内、当該対向車の領域に向う光のみをリアルタイムで低減することが可能となる。ドライバに対しては常にハイビームに近い視界を与え、その一方で対向車に対して眩惑光(グレア)を与えることを防止できる。
【0003】
このような前照灯を、複数の発光ダイオード(LED light emitting diodes)を行列状に配置し、駆動回路で各発光ダイオードの駆動電流を制御し、制御された配光形状の出射光をプロジェクションレンズ等の投影用光学素子で前方に投影する構成で実現することが考えられる。しかし、複数の発光ダイオードの駆動電流を任意に制御するためには、複数の電流源が必要になり、前照灯の製造コストが高くなってしまう。
【0004】
LED等の発光部の前に、液晶(LC)素子の前後両面に偏光子を備えた液晶装置等の遮光部を配置し、発光部からの発光を遮光部でパターン制御する構成も提案されている(例えば特許文献1)。発光部は視野内を照明できればよく、必要なLEDの数は制限できる。全体の発光パターンを制御する遮光部は1つの液晶装置で実現できる。複数の制御領域を有し、各制御領域の光透過率を制御できる液晶装置は、極めて安価に入手できる。前照灯の製造コストを著しく低減することが可能となる。
【0005】
車両用照明装置等において、液晶素子を用いて光源から発した光に配光パターンを与える場合、液晶素子内で液晶層の両側に電極を配置して液晶層に電圧を印加することにより液晶分子の配向を制御し、液晶素子の前後に偏光子/検光子を配置して、液晶層に印加する電圧のON/OFFに基づく液晶分子の配向により透過光のON/OFFを制御する。液晶素子と偏光子/検光子を併せて液晶装置とも呼ぶことにする。例えば、垂直配向液晶とクロスニコル(ポーラライザ)とを用いた液晶装置や、面内配向液晶とクロスニコルを用いた液晶装置は、ノーマリーブラックモードの優れた性能を示す。
【0006】
対向車の存在等の前方の状況に応じて、配光形状をリアルタイムで制御するために、車載カメラ、レーダ、車速センサ等の各種センサが接続されている前方監視ユニットが用いられる(例えば特許文献2参照)。センサから取得した撮像データを画像処理し、前方車両(対向車や先行車)等を検出し、配光制御に必要なデータを算出する。配光制御ユニットは、前方監視ユニットから送出されてくる情報に基づいて、その走行場面に対応した配光パターンを決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−183327号公報
【特許文献2】特開2013−054849号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
偏光子は入射光から所定の偏光を有する光成分を抽出する。通常、その他の光成分は排除されるため、液晶装置を用いて配光パターンを形成する場合、光の利用効率は低い。
【0009】
ノーマリーブラックモードの液晶装置を用いる場合、液晶装置が破損して電圧が印加できなくなると、照明領域全体が真っ暗になってしまう。フェールセーフの安全を維持する上で好ましくない。
【0010】
ADB動作する前照灯において、ハイビームエリアは配光パタ−ンを部分的にON/OFF制御する必要がある。ロービームエリアは通常常に照明すべき領域であり、配光パターンの部分的ON/OFF制御は不必要である。ハンドルの舵角に合わせて、配光形状を左右に移動させるシステム(AFS adaptive front-lighting system 等と呼ばれる)を用いる場合も中央の主要部は常に点灯/照明する領域である。常に照明する領域においては配光パターンの部分的制御は不必要である。
【0011】
通常の偏光子は光を吸収して加熱する。熱が液晶層に伝わると液晶機能が損なわれることがある。加熱を抑制するために偏光子は液晶素子から離して配置する。液晶に入射する光はある程度の入射角度範囲内に分布する。液晶素子は投影光学系の焦点位置に配置される。液晶素子の各点を通る光は、偏光子上ではある範囲内に分布する。液晶素子の出射光を精度良く制御するためには、偏光子上で分布する光を偏光制御する必要がある。
【0012】
光の利用効率が高く、フェールセーフの安全措置が可能で、配光パターンの偏光制御が高精度の照明装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の実施例によれば、
第1部分と第2部分とを含む電極パターンを有する液晶素子と、
前記電極パターンに接続された駆動回路と、
前記液晶素子の前後に光軸方向に離して、かつ前記液晶素子の法線方向の射影において、前記液晶素子に対して部分配置され、クロスニコル配置された偏光子/検光子と、
所定の入射角範囲内で前記液晶素子に光を供給する光源と、
前記液晶素子を透過した光を前方に投影できる投影光学系と、
を有し、前記光源点灯時には前記駆動回路は、前記電極パターンの第1部分に対して状況に応じて電圧を印加/解除し、前記電極パターンの第2部分に対して常に電圧を印加し、前記電極パターンの第1部分を通過し、前方に投影される光は前記偏光子/検光子の両方を通過し、前記電極パターンの第2部分を通過し、前方に投影される光は前記偏光子/検光子の少なくとも一方を通過しない成分を含む、照明装置
が提供される。
【0014】
配光パターンの制御が不必要な領域においては偏光子/検光子の少なくとも一部を省略してもよい。偏光子(検光子)を省略することにより、光利用効率は向上する。偏光子/検光子の一方がない場合、ノーマリーブラックモードであっても、クロスニコルは形成されず、少なくとも一方の偏光成分は透過する。フェールセーフの安全を維持するための照明は確保される。
【0015】
ロービームエリアの一部で、偏光子/検光子のいずれも存在しない構成とすれば、偏光子(検光子)を用いることによる光強度の減少を防止でき、光利用効率は大きく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1Aは本発明の第1の実施例による照明装置を示すブロック図,図1Bは液晶素子の構成を概略的に示す平面図,図1Cは液晶素子とその両側の偏光子、検光子を含む液晶装置における光ビームの軌跡を示す断面図である。
図2図2Aは第1の実施例において、状況に応じてON/OFF制御する(液晶素子電極パターンの)第1部分を通過する光の進路を示す概略断面図,図2Bは第1の実施例において、常に電圧を印加される(液晶素子電極パターンの)第2部分を通過する光の進路を示す概略断面図、図2Cは第1の実施例において、液晶素子の無電極領域を通過する光の進路を示す概略断面図である。
図3図3A,3Bは、第2の実施例の第1例、第2例による照明装置における液晶装置を示す断面図である。
図4図4は、第3の実施例による照明装置における液晶装置を示す断面図である。
図5図5Aは第4の実施例による照明装置を示すブロック図、図5B,5Cは第4の実施例に用いる予備偏光子の第1例、第2例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 光源、 3 液晶素子、 4 駆動回路、 5 配光制御ユニット、
6 偏光子、 7 検光子、 9 投影光学系、 10 照明装置、
11 予備偏光子、 13 ワイヤグリッド偏光子、
14 (λ/2)位相差板、 15 (λ/4)位相差板、 16リフレクタ、
30 (液晶素子3の)電極パターン、 31 (電極パターン)第1部分、
32 (電極パターン)第2部分、 33 無電極領域、
θ 入射角、 a 偏光子(検光子)液晶素子間距離、 b 第2部分の幅、
HB ハイビームエリア、 LB ロービームエリア、
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1Aを参照して、本発明の第1の実施例による照明装置を説明する。照明装置が車両用前照灯である場合を例として説明する。図1Aにおいて、光源1は例えば複数個の発光ダイオードチップと発光ダイオード上に配置された蛍光体膜を含んで構成される白色光発光体であり、電源2で駆動されて発光し、白色光を液晶素子3に供給する。液晶素子3は、例えば垂直配向液晶素子、インプレーンスイッチ液晶素子で構成され、前後にクロスニコルを構成する偏光子6、検光子7が配置されて液晶装置を構成する。配光制御ユニット5から供給される配光制御情報に基づいて駆動信号を供給する駆動回路4によって液晶装置が駆動され、ノーマリーブラック型の表示/照明を形成する。検光子7を通過した光は投影光学系9によって車両前方の視野に投影される。なお、液晶素子としてツイステッドネマチック(TN)液晶素子を用い、パラレルニコルの偏光子対に挟む構成も可能である。
【0019】
視野内下部のロービームエリアは主に前方の路面を含む領域であり、視野内上部のハイビームエリアは対向車、歩行者を含む領域である。照明装置からのロービームはロービームエリアを照明する。ハイビームエリアはハイビームによって照明される。2ビーム方式ではロービームとハイビームをそれぞれ別に形成する。1ビーム方式のハイビームはハイビームエリアとロービームエリアを照明する。例えば走行用の配光形状すなわちハイビームで走行中に、対向車を検出した場合に、前照灯に照射される領域の内、当該対向車の領域に向う光のみをリアルタイムで低減する。ドライバに対しては常にハイビームに近い視界を与え、その一方で対向車に対して眩惑光(グレア)を与えることを防止できる。前照灯点灯時、ロービームエリアは常に照明すべき領域である。
【0020】
液晶素子がクロスニコルに挟まれたノーマリーブラック型の液晶装置は、電源がOFFされると、全ての出射光がOFFされ、視野内を真っ暗にする。後述するように、偏光子6、検光子7の少なくとも一方は、液晶素子表面の一部からは取り除かれた形状を有し、液晶装置に支障が生じても、安全維持上フェールセーフの照明を確保する。
【0021】
図1Bは、液晶素子3の概略平面図を示す。液晶層を含む液晶素子3の光透過領域に駆動回路4によって駆動される電極パターン30が形成されている。電極パターン30は、状況に応じてON/OFF制御され、ADB機能を発揮する第1部分31、常に電圧を印加されて、ON状態となる第2部分32を含む。液晶素子3は更に、電極パターンの第2部分32に隣接し、第1部分31の逆側に位置する無電極領域33を含む。なお、液晶素子3は投影光学系9によって反転投影されるので、ハイビームエリアが下方、ロービームエリアが上方と上下が反転した配置である。
【0022】
図1Cは、液晶素子3内の電極パターンの第1部分31と第2部分32、および無電極領域33と、その前後に配置された偏光子6、検光子7の位置関係と、基準となる光ビームの軌跡を示す断面図である。液晶素子3内で、電極パターン30の第1部分31の上方に配置された第2部分32は垂直方向の幅bを有し、第2部分32の上方に無電極領域33が配置されている。第1部分31はハイビームエリアHBに相当し、第2部分32と無電極領域33はロービームエリアLBに相当する。
【0023】
液晶素子3の前方、光軸方向距離aの位置に配置された偏光子6はその上端が、電極パターン30の第1部分31の上端から高さb/2の位置に配置されている。液晶素子に入射する光の最大入射角を上方向、下方向それぞれθとする。
【0024】
図中基準となる光ビームとして、幅bの第2部分32の下端を通過する最大入射角度θの2本の光ビーム41,42、第2部分32の上端を通過する最大入射角度θの2本の光ビーム43,44を図示してある。
【0025】
偏光子6の上端を通過し、液晶素子3に最大入射角θで下方に向かう光ビーム41が電極パターン第1部分31の上端を通過している。電極パターン第1部分31に入射する光は、全て偏光子6で偏光されることが判る。電極パターン第1部分31は完全に偏光した入射光を受けるので、偏光制御による透光/遮光の精度を高くすることができる。偏光子6の高さを第1部分31の上端から高さb/2の位置より低くすると非偏光の光が入射することになり、偏光制御による精度が劣化する。
【0026】
また、偏光子6の上端を通過し、最大入射角θで上方に向かう光ビーム44が無電極領域33の下端を通過している。光ビーム44は偏光子6を通過しないので偏光されず、無電極領域33の液晶は電圧を印加されず、光ビーム44の光路上に検光子も存在しないので、光ビーム44は減光を抑制した高透過率で出射できる。偏光子6の高さを第1部分31の上端から高さb/2の位置よりも高くすると無電極領域33に入射する光の一部が偏光子6の偏光作用を受けて、減光することになり、高透過率機能が劣化する。
【0027】
液晶素子3から出射して検光子7方向に進む光についても同様の考察を行うと、検光子7の上端を、電極パターン30の第1部分31上端から高さb/2の位置に配置する時、偏光制御性、高透過率機能を最大にすることができることが判明する。
【0028】
液晶素子3の前後、光軸方向距離aの位置に配置された偏光子6、検光子7はその上端が、電極パターン30の第2部分32の中間高さ(典型的には高さb/2の位置)に配置されている場合、偏光制御性、高透過率機能を向上できると言えよう。
【0029】
液晶素子3に最大入射角θで入射する光は、光軸方向距離a進む間に垂直方向距離(a*tanθ)変位する。図1Cの配置によれば、(b/2)=(a*tanθ)の関係が成立する。(b/2)>(a*tanθ)の関係が成立する場合、無電極領域の透光率は若干減少するが、偏光制御性は変化しない。実用的には、(b/2)≧(a*tanθ)の関係が好ましいと言えよう。
【0030】
なお、光軸方向距離a、入射角度θが一定の場合を解析したが、これらのパラメータが異なる値を有する場合は、大きな数値を持つa、θを考察すればよい。
【0031】
液晶素子電極パターン30の第2部分32は、ロービームエリアLBを照明するので、常時透光機能を示すことが好ましい。第2部分32の電極には駆動回路4から常時電圧を印加して、透光状態とする。液晶素子3が機能障害を生じて、電圧印加が中断されると、電極パターン30の第1部分31と第2部分32に電圧が印加されなくなり、偏光子6、検光子7を介して、電極パターン30の第1部分31と第2部分32を透過する光は遮光される。この時も、偏光子6、検光子7の上端より上側を通過し偏光されない光は液晶素子3を自由に通過する。また、光ビーム41から44の間に分布する光、光ビーム43から42の間に分布する光のように、偏光子6.検光子7のいずれか1方を通らない光は、遮光されない。これらの光は液晶装置を透過して、フェールセーフの照明を維持できる。
【0032】
図2Aは、液晶素子の電極パターン30の第1部分31(ハイビームエリア)を通過する光の軌跡を示す断面図である。偏光子6、検光子7はクロスニコルである。電極パターン30の第1の部分31は基本的に電圧印加されて、偏光軸変化を生じ、透光性となる。選択された電極領域で電圧がOFFされると、偏光軸変化が消滅し、選択的遮光が行われ、対向車等に対する眩惑光が防止される。
【0033】
図2Bは、液晶素子の電極パターン30の第2部分32(ロービームエリアの上部)を通過する光の軌跡を示す断面図である。第2部分32は常時電圧を印加され、透光性を有する領域である。液晶装置の破損などにより電圧が印加されなくなると、偏光子6、液晶素子3、検光子7を通る光ビームに対し、遮光性となる。偏光子6、検光子7の両上端より上を通る光はクロスニコルが構成されないので透過する。液晶素子3表面に対して斜向し、偏光子6、検光子7の両方は通過しない(クロスニコルは透過しない)図示のような光ビームも透過する。
【0034】
図2Cは、液晶素子3の無電極領域33(ロービームエリアの下部)を通過する光の軌跡を示す断面図である。無電極であるので液晶層に電圧は印加されず、液晶層通過による変化は生じない。偏光子6、検光子7(クロスニコル)も存在せず、入射光は通過する。偏光選択による輝度低下も防止される。
【0035】
第1の実施例においては、液晶素子と平行配置される偏光子、検光子の両方の一部を切り欠いた形状とした。偏光子、検光子の一方は液晶素子の全面と重なる形状としたい要求もある。偏光子、検光子の一方が液晶素子の全面に重なると光利用効率は劣化するが、全面配置の場合、境界の位置合わせは不要になる。
【0036】
図3A,3Bは、第2の実施例の液晶装置の第1例、第2例を示す、偏光子6、液晶素子3、検光子7の組み合わせ部分の断面図である。図3Aにおいては、検光子7が液晶素子3の光透過部分全体に重ねて配置され、図3Bにおいては、偏光子6が液晶素子3の光透過部分全体に重ねて配置されている。
【0037】
図3Aにおいては、偏光子6の上端が液晶素子3の電極パターン第1部分31の上端からb/2の高さ位置に配置され、図3Bにおいては、検光子7の上端が液晶素子3の電極パターン第1部分31の上端からb/2の高さ位置に配置されている。
【0038】
配光パターンの制御が不必要な領域においては偏光子/検光子の一部を省略することにより、光利用効率は向上し、液晶素子破損時にも、ノーマリーブラックモードであっても、フェールセーフの安全を維持するための照明は確保される。この点は第1の実施例と同様である。液晶素子3の電極パターンのON/OFF制御される第1部分を通過する全光ビームが、偏光子6、検光子7の偏光制御を受ける高い偏光制御性を持つ点も第1の実施例同様である。
【0039】
第1、第2の実施例においては、液晶素子の無電極領域33の下端を偏光子6、検光子7の一部切り欠いた上端より上方に配置して、無電極領域33に入射する光の利用効率を向上している。この条件を省略することも可能である。
【0040】
図4は第3の実施例の例を示す、偏光子6、液晶素子3、検光子7の組み合わせ部分の断面図である。第1の実施例と異なる点は、液晶素子3の電極パターンの第2部分32の上端と、偏光子6、検光子7の上端が同じ高さに配置されている点である。偏光子6上端を通り、下側に最大入射角度Θで進行する光が電極パターン第1部分31上端を通過する点は第1の実施例同様である。
【0041】
液晶素子3の電極パターン第1部分31に入射する光が全て偏光子6の偏光制御を受ける点は第1の実施例同様である。ただし、液晶素子3の無電極領域33に入射する光ビームの内、斜め入射する光の多くは、偏光子6又は検光子7の偏光制御を受け、無電極領域33を通過する光の利用効率は劣化する。
【0042】
以上の実施例においては、光源からの発光を偏光子によって直線偏光に変換した。選択した偏光以外を利用しない場合、光の利用効率は低い。光源から発した光のほぼ全てを1方向の偏光に揃えることも可能である。
【0043】
図5Aは第4の実施例による照明装置を示すブロック図である。図1Aに示す第1〜第3の実施例の構成と較べると、光源1と偏光子6との間に予備偏光子11が入った点が異なる。予備偏光子11は光源1からの発光を予備的に偏光子6が生じる偏光とほぼ同一の方向に偏光する。その他の点は、第1〜第3の実施例とほぼ同一である。
【0044】
図5Bは、予備偏光子11の第1例を示す断面図である。光源からの発光をワイヤグリッド偏光子、誘電体多層膜偏光子等の偏光ビームスプリッタ13で受ける。例えば、ワイヤグリッド偏光板は導電性ワイヤが平行に配置された構成を有し、ワイヤと直交する偏光は透過させ、ワイヤと平行な偏光は反射する。偏光ビームスプリッタは、反射した偏光と透過した偏光の2つの偏光を生じる。
【0045】
偏光ビームスプリッタ13を透過した偏光の偏光軸を(λ/2)位相差板14で回転させ、反射した偏光と同じ向きにし、リフレクタ16で反射して反射した偏光と同じ方向に向かわせる。2種類の偏光は、ほぼ同じ偏光方向とほぼ同じ進行方向を有するようになる。光源からの発光をほぼ全て同じ向きの偏光に変換できる。なお、(λ/2)位相差板14の位置を実線で示すリフレクタ16上流位置から破線で示すリフレクタ16下流位置に変更してもよい。
【0046】
予備偏光子11から得た偏光を、偏光子6で偏光して偏光率の高い偏光にする。偏光子6に入射する予備偏光は、偏光子6の偏光軸と揃った方向を有するようにする。偏光子6で利用されず、捨てられる偏光成分は激減し、光利用効率を向上することができる。なお、入射光のほぼ全部が偏光となるので、液晶素子の破損時の照明維持の目的からは、図3Aに示す検光子が液晶素子の光透過面全面に分布する構成は好ましくない。偏光子6、液晶素子3、検光子7の組み合わせとして、他の実施例の構成を用いることができる。
【0047】
図5Cは、(λ/2)位相差板14に換えて、2つの(λ/4)位相差板15a、15bを用いる場合を示す。予備偏光子11で形成した偏光を種々の光学系等で加工すると偏光度は低下する。軸方向を揃えた2つの(λ/4)位相差板15a、15bは、併せて(λ/2)位相差板同様の機能を果たす。さらに2つの(λ/4)位相差板間では円偏光となるので、リフレクタなどの反射面が曲面であっても偏光解消が生じにくい。曲面反射を多用するリフレクタ等を用いた光学系を用いる場合特に好適な構成である。図5Cの予備偏光子11も、図3Aに示すような液晶素子の光透過領域全体に検光子を配置した構成以外の、上述実施例の照明装置と組み合わせて図5Aの照明装置を形成できる。
【0048】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに限られるものではない。種々の変形、改良、組み合わせ、置換などが可能なことは当業者に自明であろう。
図1
図2
図3
図4
図5