【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 [開催日]平成31年2月6日、[研究集会名]2018年度近畿大学理工学部情報学科卒業研究発表会、[開催場所]学校法人近畿大学38号館4階システム工房2
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車載機で検出された車両の走行挙動データと、前記車両の運転者の運転挙動データとを用いて、前記運転者の運転評価を少なくとも1以上のコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記走行挙動データを用いて、前記車両が進行方向を切り替えた交差点の属性を判別するための少なくとも1以上の特徴量を算出する算出ステップと、
算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性を判別する判別ステップと、
判別された前記交差点の属性に対応した安全確認評価条件と、前記交差点における前記運転挙動データとを用いて、前記運転者の安全確認動作を評価する評価ステップとを実行させ、
前記走行挙動データが、前記車両の角速度データを含み、
前記算出ステップが、
前記車両の角速度が所定の閾値を超えた時点を含む所定区間の前記角速度のばらつきを示す指標値として前記角速度の分散、又は標準偏差を前記特徴量の1つとして算出する処理を実行させるステップを含み、
前記判別ステップが、
前記交差点の属性を示す値を出力するように学習した学習済みの識別器に入力する前記特徴量の1つに前記指標値を用いて、前記交差点の属性として信号機の有無、道路幅員の広狭、及び幹線道路と生活道路の道路種別のうちの少なくともいずれかを判別する処理を実行させるステップであることを特徴とするプログラム。
車載機で検出された車両の走行挙動データと、前記車両の運転者の運転挙動データとを用いて、前記運転者の運転評価を行う運転評価装置が実行する交差点属性判別方法であって、
前記走行挙動データを用いて、前記車両が進行方向を切り替えた交差点の属性を判別するための少なくとも1以上の特徴量を算出する算出ステップと、
算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性を判別する判別ステップとを含み、
前記走行挙動データが、前記車両の角速度データを含み、
前記算出ステップが、
前記車両の角速度が所定の閾値を超えた時点を含む所定区間の前記角速度のばらつきを示す指標値として前記角速度の分散、又は標準偏差を前記特徴量の1つとして算出するステップを含み、
前記判別ステップが、
前記交差点の属性を示す値を出力するように学習した学習済みの識別器に入力する前記特徴量の1つに前記指標値を用いて、前記交差点の属性として信号機の有無、道路幅員の広狭、及び幹線道路と生活道路の道路種別のうちの少なくともいずれかを判別するステップであることを特徴とする交差点属性判別方法。
【発明の概要】
【0007】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、交差点における運転者の安全確認動作の評価について、より精度の高い評価を行うことのできる運転評価装置、運転評価システム、運転評価方法、プログラム、及び交差点属性判別方法を提供することを目的としている。
【0008】
上記目的を達成するために本開示に係る運転評価装置(1)は、車載機で検出された車両の走行挙動データと、前記車両の運転者の運転挙動データとを用いて、前記運転者の運転評価を行う運転評価装置であって、
前記走行挙動データを用いて、前記車両が進行方向を切り替えた交差点の属性を判別するための少なくとも1以上の特徴量を算出する算出部と、
算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性を判別する判別部と、
判別された前記交差点の属性に対応した安全確認評価条件と、前記交差点における前記運転挙動データとを用いて、前記運転者の安全確認動作を評価する評価部とを備えていることを特徴としている。
【0009】
上記運転評価装置(1)によれば、前記走行挙動データを用いて算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性が判別されるので、データの読み込みなどの処理負荷が大きい地図データを用いることなく、前記交差点の属性を負荷の軽減された処理で判別することが可能となる。
また、前記判別部で判別された前記交差点の属性に対応した前記安全確認評価条件と、前記交差点における前記運転挙動データとを用いて、前記運転者の安全確認動作が評価されるので、前記交差点の属性ごと安全確認ポイントの違いなどが考慮された、より正確な運転評価を行うことができ、事故リスクの高い運転者の検出精度を向上させることができる。また、運転評価結果に基づく、前記運転者への安全アドバイスをより的確に行うことが可能となり、事故を未然に防ぐ予防安全教育の効果を高めることができる。
【0010】
また本開示に係る運転評価装置(2)は、上記運転評価装置(1)において、
前記判別部が、
前記特徴量を入力すると前記交差点の属性を示す値を出力するように学習した学習済みの識別器を用いて、前記交差点の属性を判別するものであることを特徴としている。
【0011】
上記運転評価装置(2)によれば、前記識別器を用いることにより、前記交差点の属性を容易かつ適切に判別することが可能となる。前記識別器は、例えば、線形判別分析を用いた識別器でもよいし、サポートベクターマシンやニューラルネットワークなどの非線形判別分析を用いた識別器などでもよい。
【0012】
また本開示に係る運転評価装置(3)は、上記運転評価装置(1)又は(2)において、
前記走行挙動データが、前記車両の角速度データを含み、
前記算出部が、
前記車両の角速度が所定の閾値を超えた時点を含む所定区間の前記角速度のばらつきを示す指標値を前記特徴量の1つとして算出する指標値算出部を含んで構成され、
前記判別部が、
前記特徴量の1つに前記指標値を用いて、前記交差点の属性として信号機の有無、道路幅員の広狭、及び道路種別のうちの少なくともいずれかを判別するものであることを特徴としている。
【0013】
本発明者らは、信号機が有る交差点と、信号機が無い交差点とでは、これら交差点で前記車両が進行方向を切り替えた場合における、前記角速度のばらつきを示す指標値が異なる分布傾向、すなわち二峰性分布を有しているという新たな知見を見出した。
上記運転評価装置(3)によれば、前記交差点を通過している区間に相当する前記所定区間の前記角速度のばらつきを示す指標値が前記特徴量の1つとして算出され、算出された前記指標値を用いることで、前記交差点の属性として信号機の有無、道路幅員の広狭、及び道路種別のうちの少なくともいずれかを判別することができる。前記道路種別には、例えば、幹線道路、生活道路が含まれる。
したがって、信号機が有る交差点、道路幅員の広い交差点、及び幹線道路と、信号機が無い交差点、道路幅員が狭い交差点、及び生活道路とでの前記運転者の安全確認動作の違いなどを踏まえて、これら交差点の属性ごとに、より正確な運転評価を行うことができ、運転評価の精度をより高めることができる。
なお、前記角速度のばらつきを示す指標値は、前記角速度の分散でもよいし、標準偏差でもよいが、計算処理負荷が少なく、ばらつき度合の差をより大きく示すことのできる分散の方が好ましい。
【0014】
また本開示に係る運転評価装置(4)は、上記運転評価装置(1)又は(2)において、
前記走行挙動データが、前記車両の角速度データと位置データとを含み、
前記算出部が、
前記車両の角速度が所定の閾値を超えた時点を含む所定区間の前記角速度のばらつきを示す指標値を前記特徴量の1つとして算出する指標値算出部と、
前記所定区間の前記位置データを用いて前記車両の移動距離を前記特徴量の1つとして算出する移動距離算出部とを含んで構成され、
前記判別部が、
前記特徴量に少なくとも前記指標値と前記移動距離とを用いて、前記交差点の属性として信号機の有無、道路幅員の広狭、及び道路種別のうちの少なくともいずれかを判別するものであることを特徴としている。
【0015】
本発明者らは、信号機が有る交差点と、信号機が無い交差点とでは、これら交差点で前記車両が進行方向を切り替えた場合における、前記角速度のばらつきを示す指標値と、前記移動距離とがそれぞれ異なる分布傾向、すなわち二峰性分布を有しているという新たな知見を見出した。
上記運転評価装置(4)によれば、前記交差点を通過している区間に相当する前記所定区間の前記角速度のばらつきを示す指標値と、前記移動距離とが前記特徴量としてそれぞれ算出され、算出された前記指標値と前記移動距離とを用いることで、前記交差点の属性として信号機の有無、道路幅員の広狭、及び道路種別のうちの少なくともいずれかを、より精度良く判別することができる。前記道路種別には、例えば、幹線道路、生活道路が含まれる。
したがって、信号機が有る交差点、道路幅員の広い交差点、及び幹線道路と、信号機が無い交差点、道路幅員が狭い交差点、及び生活道路とでの前記運転者の安全確認動作の違いなどを踏まえて、これら交差点の属性ごとに、より正確な運転評価を行うことができ、運転評価の精度をより高めることができる。
【0016】
また本開示に係る運転評価装置(5)は、上記運転評価装置(1)又は(2)において、
前記走行挙動データが、前記車両の角速度データと位置データとを含み、
前記算出部が、
前記車両の角速度が所定の閾値を超えた時点を含む所定区間の前記角速度の平均値を前記特徴量の1つとして算出する平均値算出部と、
前記所定区間の前記角速度のばらつきを示す指標値を前記特徴量の1つとして算出する指標値算出部と、
前記所定区間の前記位置データを用いて前記車両の移動距離を前記特徴量の1つとして算出する移動距離算出部とのうちの少なくとも2つ以上を含んで構成され、
前記判別部が、
前記特徴量に前記平均値、前記指標値、及び前記移動距離のうちの少なくとも2つ以上を用いて、前記交差点の属性として信号機の有無、道路幅員の広狭、及び道路種別のうちの少なくともいずれかを判別するものであることを特徴としている。
【0017】
本発明者らは、信号機が有る交差点と、信号機が無い交差点とでは、これら交差点で前記車両が進行方向を切り替える場合において、前記角速度の平均値と、前記角速度のばらつきを示す指標値と、前記移動距離とがそれぞれ異なる分布傾向、すなわち二峰性分布を有しているという知見を見出し、さらに、これらの少なくとも2つ以上を用いることで、これら交差点の属性の分類精度がより高くなるという新たな知見を得た。
上記運転評価装置(5)によれば、前記交差点を通過している区間に相当する前記所定区間の前記角速度の平均値と、前記角速度のばらつきを示す指標値と、前記移動距離とのうちの少なくとも2つ以上が前記特徴量として算出され、算出された前記平均値、前記指標値、及び前記移動距離のうちの少なくとも2つ以上を用いることで、前記交差点の属性として信号機の有無、道路幅員の広狭、及び道路種別のうちの少なくともいずれかを、より精度良く判別することができる。前記道路種別には、例えば、幹線道路、生活道路が含まれる。
したがって、信号機が有る交差点、道路幅員の広い交差点、及び幹線道路と、信号機が無い交差点、道路幅員が狭い交差点、及び生活道路とでの前記運転者の安全確認動作の違いなどを考慮して、これら交差点の属性ごとに、より正確な運転評価を行うことができ、運転評価の精度をより高めることができる。
【0018】
また本開示に係る運転評価装置(6)は、上記運転評価装置(1)〜(5)のいずれかにおいて、前記判別部が、前記車両が対向車線を横切って曲がった交差点の属性を判別するものであることを特徴としている。
【0019】
前記車両が対向車線を横切って曲がることが必要な交差点の場合、とりわけ、その交差点の属性によって、前記運転者が行うべき安全確認動作の内容が大きく異なってくる。そのため、前記車両が対向車線を横切って曲がった交差点では、その交差点の属性に応じた前記安全確認評価条件で評価を行うことが、その評価精度を高める上で重要となる。
上記運転評価装置(6)によれば、前記車両が対向車線を横切って曲がった交差点の属性が判別されるので、前記車両が対向車線を横切って曲がった交差点の属性に対応した前記安全確認評価条件で、前記運転者の安全確認動作をより正確に評価することができ、前記車両が対向車線を横切って曲がった交差点での前記運転者の運転評価の精度を高めることができる。
【0020】
また本開示に係る運転評価システムは、上記運転評価装置(1)〜(6)のいずれかと、
少なくとも1以上の前記車両に搭載される車載機とを含んで構成され、
前記車載機が、
前記車両の走行挙動を検出する走行挙動検出部と、
前記運転者の運転挙動を検出する運転挙動検出部と、
前記走行挙動検出部及び前記運転挙動検出部で検出されたデータを前記運転評価装置に出力する出力部とを含んで構成され、
前記運転評価装置が、
前記車載機から取得した前記データを記憶する記憶ユニットと、
該記憶ユニットに記憶された前記データを用いて、前記算出部、前記判別部、及び前記評価部の処理を実行する制御ユニットとを含んで構成されていることを特徴としている。
【0021】
上記運転評価システムによれば、上記運転評価装置(1)〜(6)のいずれかと、少なくとも1以上の前記車載機とを含んで構成されている。したがって、上記運転評価装置(1)〜(6)のいずれかの効果を得ることができる。
また、前記車載機の前記走行挙動検出部、及び前記運転挙動検出部で検出されたデータが前記運転評価装置に出力されるので、前記運転評価装置に前記運転者の安全確認動作の評価を実行させることにより、前記車載機の処理負担を軽減することができ、前記車載機のコストを抑え、広く導入可能なシステムを構築することができる。
【0022】
また本開示に係る運転評価方法は、車載機で検出された車両の走行挙動データと、前記車両の運転者の運転挙動データとを用いて、前記運転者の運転評価を行う運転評価方法であって、
前記走行挙動データを用いて、前記車両が進行方向を切り替えた交差点の属性を判別するための少なくとも1以上の特徴量を算出する算出ステップと、
算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性を判別する判別ステップと、
判別された前記交差点の属性に対応した安全確認評価条件と、前記交差点における前記運転挙動データとを用いて、前記運転者の安全確認動作を評価する評価ステップとを含んでいることを特徴としている。
【0023】
上記運転評価方法によれば、前記走行挙動データを用いて算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性を判別するので、データの読み込みなどの処理負荷が大きい地図データを用いることなく、前記交差点の属性を負荷の軽減された処理で判別することが可能となる。
また、判別された前記交差点の属性に対応した前記安全確認評価条件と、前記交差点における前記運転挙動データとを用いて、前記運転者の安全確認動作を評価するので、前記交差点の属性ごと安全確認ポイントの違いなどが考慮された、より精度の高い運転評価を行うことができ、事故リスクの高い運転者の検出精度を向上させることが可能となる。また、前記運転評価の結果に基づく、前記運転者への安全アドバイスをより的確に行うことが可能となり、事故を未然に防ぐ予防安全教育の効果を高めることができる。
【0024】
また本開示に係るプログラムは、車載機で検出された車両の走行挙動データと、前記車両の運転者の運転挙動データとを用いて、前記運転者の運転評価を少なくとも1以上のコンピュータに実行させるためのプログラムであって、
前記コンピュータに、
前記走行挙動データを用いて、前記車両が進行方向を切り替えた交差点の属性を判別するための少なくとも1以上の特徴量を算出する算出ステップと、
算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性を判別する判別ステップと、
判別された前記交差点の属性に対応した安全確認評価条件と、前記交差点における前記運転挙動データとを用いて、前記運転者の安全確認動作を評価する評価ステップとを実行させるためのプログラムであることを特徴としている。
【0025】
上記プログラムによれば、前記判別ステップにより、前記走行挙動データを用いて算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性が判別されるので、データの読み込みなどの処理負荷が大きい地図データを用いることなく、前記交差点の属性を負荷の軽減された処理で判別する処理を前記コンピュータに実行させることが可能となる。
また、前記評価ステップにより、判別された前記交差点の属性に対応した前記安全確認評価条件と、前記交差点における前記運転挙動データとを用いて、前記運転者の安全確認動作が評価されるので、前記交差点の属性ごと安全確認ポイントの違いなどが考慮された、より精度の高い運転評価を前記コンピュータに実行させることができ、事故リスクの高い運転者の検出精度を向上させることが可能な運転評価装置を実現することができる。また、前記運転評価の結果に基づく、前記運転者への安全アドバイスをより的確に行うことが可能となり、事故を未然に防ぐ予防安全教育の効果を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る運転評価装置、運転評価システム、運転評価方法、プログラム、及び交差点属性判別方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明に係る運転評価装置、運転評価システム、運転評価方法、プログラム、及び交差点属性判別方法は、例えば、事業者が管理する車両の運転者の安全確認動作を評価して、事故を未然に防ぐ予防安全の観点から運転者の安全意識の改善を図ることを支援するシステムなどに広く適用可能である。
【0028】
[システム構成例]
図1は、実施の形態に係る運転評価システムの概略構成図である。
運転評価システム1は、車両2に乗車している運転者3の安全確認動作などの運転評価を行うシステムであって、少なくとも1台以上の車両2に搭載される車載機10と、各車載機10から取得したデータを処理する少なくとも1つ以上のサーバ装置40とを含んで構成されている。
【0029】
サーバ装置40は、車載機10から送信されてくる車両2の走行挙動データと、運転者3の運転挙動データとが記憶されたデータ群に基づいて、各運転者3の安全確認動作などの運転評価を行い、これら運転評価の情報を外部装置(以下、事業者端末という)80に出力する機能を備えている。サーバ装置40は、通信ユニット41、制御ユニット50、及び記憶ユニット60を含んで構成されている。サーバ装置40が、本発明の「運転評価装置」の一例である。
【0030】
車載機10が搭載される車両2は、特に限定されない。例えば、運送事業者が管理するトラック、バス事業者が管理するバス、タクシー事業者が管理するタクシー、カーシェアリング事業者が管理するカーシェア車両、レンタカー事業者が管理するレンタカー、会社が所有している社有車、又はカーリース事業者からリースして使用する社有車など、各種の事業を営む事業者が管理する車両が対象とされ得る。また、車載機10が搭載される車両2は、一般の車両であってもよい。例えば、サーバ装置40を、保険会社又は自動車教習所などの安全評価・運転訓練機関により管理又は運営されるものとして構成し、これら安全評価・運転訓練機関において、各車両2の運転者3の運転評価を実行するシステムとして適用することも可能である。
【0031】
車載機10とサーバ装置40とは、通信ネットワーク4を介して通信可能に構成されている。通信ネットワーク4は、基地局を含む携帯電話網や無線LAN(Local Area Network)などの無線通信網を含んでもよいし、公衆電話網などの有線通信網、インターネット、又は専用網などの電気通信回線を含んでもよい。
【0032】
また、車両2を管理する事業者端末80が、通信ネットワーク4を介してサーバ装置40と通信可能に構成されている。事業者端末80は、通信機能を備えたパーソナルコンピュータでもよいし、携帯電話、スマートフォン、又はタブレット装置などの携帯情報端末などでもよい。また、事業者端末80が、通信ネットワーク4を介して車載機10と通信可能に構成されていてもよい。
【0033】
運転評価システム1では、サーバ装置40が、各車載機10から適宜送信されてきた、車両2の走行挙動(角速度、位置など)データ、運転者3の運転挙動(顔の向き、視線の方向など)データを含むデータ群を蓄積し、蓄積された各車載機10のデータ群を用いて、各運転者3の安全確認動作の評価処理を実行する。この安全確認動作には、道路の交差点における運転者3の安全確認動作が含まれている。
【0034】
交差点は、信号機の有無、道路幅員の違いなど、交差点ごとに、その属性に違いがある。事故を未然に防ぐための予防安全の観点から見ると、これら交差点の属性の違いによって、事故リスクを下げるために運転者に期待される安全確認動作の内容が異なってくる。
例えば、日本の道路において、信号機が有る交差点を右折する場合では、対向車、及び右折中に通過する横断歩道の歩行者等に対する安全確認がより重要となる一方、信号機が無い交差点を右折する場合では、その交差点の進入前に、交差している道路(すなわち、左右方向)から接近してくる他車両、自転車、又は歩行者などに対する安全確認がより重要となる。このように、同じ右折であっても、交差点の属性によって、事故リスクを下げるために注意すべき安全確認のポイントが異なってくる。
【0035】
したがって、運転者の安全確認動作を評価する場合には、実際に走行した交差点の属性に対応した安全確認評価条件で運転評価を行うことが好ましいが、そのためには、前記交差点の属性を正しく判別できるようにする必要がある。
前記交差点の属性を判別するために、例えば、交差点情報などを含む地図データを用いることが考えられる。しかしながら、このような地図データを用いて、全国各地で事業活動又は日常生活を行っている車両運転者の運転行動を評価しようとした場合、利用する地図データのデータ容量が膨大となり、これら地図データを読み出す処理などにかかる処理負荷も増大し、また地図データの提供を受ける場合には、その利用にかかるコストも高くつくという課題があった。
【0036】
そこで本発明者らは、上記のような地図データを用いることなく、前記交差点の属性を精度良く判別する手法を鋭意検討した結果、進行方向を切り替えた交差点において、信号機が有る交差点と、信号機が無い交差点とでは、車載機10で検出された車両2の走行挙動データに異なる傾向があることを見出し、これら傾向を分析することによって、本発明を完成するに至った。
【0037】
すなわち、本実施の形態に係る運転評価システム1では、サーバ装置40が、車両2の走行挙動データを用いて、車両2が進行方向を切り替えた交差点の属性を判別するための少なくとも1以上の特徴量を算出する処理と、算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性を判別する処理と、判別された前記交差点の属性に対応した安全確認評価条件と、前記交差点における、運転者3の運転挙動データとを用いて、運転者3の安全確認動作を評価する処理とを実行する構成となっている。
【0038】
サーバ装置40は、前記特徴量として、例えば、交差点内での車両2の移動距離、角速度平均値、角速度分散、角速度最小値、速度(車速)平均値、速度分散、速度最大値、及び速度最小値のうちの少なくとも1以上を算出し、これらのうちの1つ、2つ、3つ、又は4つ以上を用いて、交差点の属性を判定する処理を実行する構成であってもよい。前記特徴量としては、角速度分散を用いることが好ましく、さらに、角速度分散と移動距離とを用いることがより好ましく、角速度分散と角速度平均と移動距離とを用いることがさらに好ましい。角速度分散が、角速度のばらつきを示す指標値の一例である。また、前記指標値として、角速度分散の代わりに、角速度標準偏差を用いてもよい。
【0039】
前記交差点の属性は、例えば、信号機の有無、道路幅員の広狭、道路種別(幹線道路又は生活道路)などである。なお、信号機が有る交差点、道路幅員が広い交差点、及び幹線道路の交差点を同じ意味の属性として取り扱ってもよく、また、信号機が無い交差点、道路幅員が狭い交差点、及び生活道路の交差点を同じ意味の属性として取り扱ってもよい。すなわち、交差点の属性を判別する処理において、信号機の有無の代わりに、道路幅員の広狭、又は道路種別(幹線道路又は生活道路)を判別してもよい。
【0040】
サーバ装置40によれば、車両2の走行挙動データを用いて算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性が判別されるので、データの読み込みなどの処理負荷が大きい地図データを用いることなく、前記交差点の属性を負荷の軽減された処理で判別することが可能となる。
また、判別された前記交差点の属性に対応した前記安全確認評価条件と、前記交差点における、車両2の運転挙動データとを用いて、運転者3の安全確認動作が評価されるので、前記交差点の属性ごとの運転者3の安全確認動作の違いなどを踏まえた、より正確な運転評価を行うことができ、運転者3の運転評価の精度を高めることが可能となる。
【0041】
なお、サーバ装置40が行う運転評価処理の実行タイミングは特に限定されない。例えば、各車載機10から取得したデータ群を用いて、例えば、各車両2の一日の運転が終了した後に、その日に通過した各交差点における安全確認動作の評価処理を実行してもよいし、又は一定期間毎に、該一定期間内に通過した各交差点における安全確認動作の評価処理を実行してもよい。
【0042】
また、サーバ装置40は、事業者端末80から通信ネットワーク4を介して要求された各種リクエストを処理し、例えば、ブラウザ上の専用ホームページなどを通じて、事業者端末80に、各車両2の運転者3の安全確認動作の評価結果などの情報を提供する処理を行う。事業者は、事業者端末80の画面に表示された評価結果を各運転者3に提示することにより、各運転者3に、いつ、どこで、どのような運転状況であったのか(すなわち、運転上注意すべきポイントなど)を理解させて、各運転者3の安全意識の改善を図るなどの安全教育を実施することが可能となっている。
【0043】
また、サーバ装置40は、例えば、Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバなどを含む、クラウドサービスを提供可能な構成としてもよい。なお、クラウドサービスを提供するためのサーバの構成は、上記した3層構造に限定されない。
【0044】
[ハードウェア構成例]
図2は、実施の形態に係る運転評価システム1で用いられる車載機10のハードウェア構成例を示すブロック図である。
車載機10は、プラットフォーム部11及びドライバモニタリング部20を含んで構成されている。また、車載機10にドライブレコーダー部30が接続されてもよい。
【0045】
プラットフォーム部11には、車両2の加速度を測定する加速度センサ12、車両2の回転角速度を検出する角速度センサ13、車両2の位置を検出するGPS(Global Positioning System)受信部14が装備されている。また、プラットフォーム部11には、通信ネットワーク4を介して外部機器と通信処理を行う通信部15、ビープ音などの警告音、又は警告メッセージなどの音声を出力する報知部16、記憶部17、及び外部インターフェース(外部I/F)18が装備されている。さらにプラットフォーム部11には、各部の処理動作を制御する制御部19が装備されている。加速度センサ12、角速度センサ13、及びGPS受信部14が、「走行挙動検出部」の一例である。
【0046】
加速度センサ12は、例えば、XYZ軸の3方向の加速度を測定する3軸加速度センサで構成されている。なお、加速度センサ12には、2軸、1軸の加速度センサを用いてもよい。加速度センサ12で測定された加速度データが、例えば、検出時刻と対応付けて(即ち、時系列で)制御部19のRAM19bに記憶される。
【0047】
角速度センサ13は、少なくとも鉛直軸回り(ヨー方向)の回転に応じた角速度、すなわち、車両2の左右方向への回転(旋回)に応じた角速度データを検出可能なセンサ、例えば、ジャイロセンサ(ヨーレートセンサともいう)で構成されている。なお、角速度センサ13には、鉛直軸回りの1軸ジャイロセンサの他、左右方向の水平軸回り(ピッチ方向)の角速度も検出する2軸ジャイロセンサ、さらに前後方向の水平軸回り(ロール方向)の角速度も検出する3軸ジャイロセンサを用いてもよい。これらジャイロセンサには、振動式ジャイロセンサの他、光学式、又は機械式のジャイロセンサを用いてもよい。
【0048】
角速度センサ13の鉛直軸回りの角速度の検出方向については、例えば、時計回りを負方向に、反時計回りを正方向に設定してもよい。この場合、車両2が右方向に旋回すれば負の角速度データが検出され、左方向に旋回すれば正の角速度データが検出される。角速度センサ13では、所定の周期(例えば、数十ms周期)で角速度が検出され、検出された角速度データが、例えば、検出時刻と対応付けて制御部19のRAM19bに記憶される。なお、加速度センサ12と角速度センサ13には、これらが一つのパッケージ内に実装された慣性センサを用いてもよい。
【0049】
GPS受信部14は、アンテナ14aを介して人工衛星からのGPS信号を所定周期(例えば、1秒毎)で受信して、現在地の位置データ(緯度、及び経度)を検出する。GPS受信部14で検出された位置データは、例えば、検出時刻と対応付けて制御部19のRAM19bに記憶される。なお、車両2の位置を検出する装置は、GPS受信部14に限定されるものではない。例えば、日本の準天頂衛星、ロシアのグロナス(GLONASS)、欧州のガリレオ(Galileo)、又は中国のコンパス(Compass)等の他の衛星測位システムに対応した測位装置を用いてもよい。
【0050】
通信部15は、「出力部」の一例であり、通信ネットワーク4を介してサーバ装置40にデータを出力する処理などを行う通信モジュールを含んで構成されている。
【0051】
記憶部17は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)、ソリッドステートドライブ(SSD)又はメモリーカードなどの着脱可能な記憶媒体などの1つ以上の記憶装置で構成されている。記憶部17には、ドライバモニタリング部20、又はドライブレコーダー部30から取得したデータの他、加速度センサ12、角速度センサ13、GPS受信部14などで検出されたデータが時系列で記憶されてもよい。
【0052】
外部I/F18は、ドライブレコーダー部30などの車載機器との間でデータや信号の授受を行うためのインターフェース回路や接続コネクタなどを含んで構成されている。
【0053】
制御部19は、CPU(Central Processing Unit)19a、RAM(Random Access Memory)19b、及びROM(Read Only Memory)19cを含むマイクロコンピュータで構成されている。制御部19は、加速度センサ12、角速度センサ13、GPS受信部14、ドライバモニタリング部20、及びドライブレコーダー部30から取得したデータをRAM19b又は記憶部17に記憶する処理を行う。また、制御部19は、ROM19cに記憶されたプログラムを読み出し、また、必要に応じてRAM19b又は記憶部17に記憶された各種の検出データも読み出し、所定のプログラムを実行する。
【0054】
例えば、制御部19は、角速度センサ13で検出された角速度の絶対値が所定の角速度閾値ω1を超えた時刻を検出し、検出した時刻を、交差点通過中の時刻t0(以下、通過時刻t0ともいう)として記憶する処理などを行う。また、制御部19は、GPS受信部14で検出される位置データの時系列変化から車速を算出し、RAM19b又は記憶部17に記憶する処理を行ってもよい。また、制御部19は、通過時刻t0の前後所定時間に取得され、又算出されたデータをサーバ装置40に所定タイミングで送信する処理なども行う。
【0055】
ドライバモニタリング部20は、ドライバカメラ21、画像解析部22、及びインターフェース(I/F)23を含んで構成されている。ドライバモニタリング部20が、「運転挙動検出部」の一例である。
ドライバカメラ21は、例えば、図示しないレンズ部、撮像素子部、光照射部、及びこれら各部を制御するカメラ制御部などを含んで構成されている。
【0056】
前記撮像素子部は、例えば、可視光線波長域、又は近赤外線波長域に感度を有するCCD(Charge Coupled Device)、又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子、フィルタ、及びマイクロレンズなどを含んで構成されている。前記光照射部は、LED(Light Emitting Diode)などの発光素子を含み、また、昼夜を問わず運転者の状態を撮像できるように赤外線を照射する発光素子などを用いてもよい。ドライバカメラ21は、単眼カメラでもよいし、ステレオカメラであってもよい。
【0057】
前記カメラ制御部は、例えば、プロセッサなどを含んで構成されている。前記カメラ制御部が、前記撮像素子部や前記光照射部を制御して、該光照射部から光(例えば、近赤外線など)を照射し、前記撮像素子部でその反射光を撮像する制御などを行う。ドライバカメラ21は所定のフレームレート(例えば、毎秒30〜60フレーム)で画像を撮像し、ドライバカメラ21で撮像された画像のデータが画像解析部22へ出力される。
【0058】
画像解析部22は、例えば、画像処理プロセッサなどを含んで構成され、ドライバカメラ21で撮像された画像から運転者3の運転挙動データとして、顔の向き、視線の方向、及び目開度のうちの少なくともいずれかのデータを検出する処理などを行う。画像解析部22で検出された運転者3の運転挙動データ、画像データ、及び撮像日時(時刻)データが、インターフェース(I/F)23を介してプラットフォーム部11に送出され、プラットフォーム部11のRAM19b又は記憶部17に記憶される。
【0059】
画像解析部22で検出される運転者3の顔の向きは、例えば、運転者の顔のX軸(左右軸)回りの角度(上下の向き)であるピッチ(Pitch)角、顔のY軸(上下軸)回りの角度(左右の向き)であるヨー(Yaw)角、及び顔のZ軸(前後軸)回りの角度(左右傾き)であるロール(Roll)角で示してよく、少なくとも左右の向きを示すヨー角が含まれる。またこれらの角度は、所定の基準方向に対する角度で示すことができ、例えば、前記基準方向が、運転者の正面方向に設定されてもよい。
【0060】
また、画像解析部22で検出される運転者3の視線の方向は、例えば、画像から検出された、運転者の顔の向きと、目領域の情報(目頭、眼尻、又は瞳孔の位置など)との関係から推定され、3次元座標上における視線ベクトルV(3次元ベクトル)などで示すことができる。視線ベクトルVは、例えば、運転者の顔のピッチ角、ヨー角、及びロール角のうち、少なくとも1つと、前記目領域の情報とから推定されたものでもよい。
【0061】
また、画像解析部22で検出される運転者3の目開度は、例えば、画像から検出された、運転者の目領域の情報(目頭、眼尻、上下のまぶたの位置、又は瞳孔の位置など)を基に推定される。
【0062】
プラットフォーム部11の外部I/F18には、ドライブレコーダー部30が接続されている。ドライブレコーダー部30は、車外カメラ31と車内カメラ32とを含んで構成されている。
【0063】
車外カメラ31は、車両2の前方の画像を撮像するカメラであり、車内カメラ32は、車両2の室内の画像を撮像するカメラである。車外カメラ31と車内カメラ32は、例えば、可視光カメラで構成され得るが、近赤外線カメラなどで構成してもよい。
【0064】
車外カメラ31と車内カメラ32は、それぞれ所定のフレームレート(例えば、毎秒数十フレーム)で画像を撮像し、車外カメラ31と車内カメラ32で撮像された画像と撮像日時などのデータがプラットフォーム部11へ送出され、プラットフォーム部11のRAM19b又は記憶部17に記憶される。なお、ドライブレコーダー部30は車外カメラ31のみ備えた構成であってもよい。
【0065】
車載機10は、プラットフォーム部11とドライバモニタリング部20とが1つの筐体内に収納された、コンパクトな構成にすることが可能である。その場合における車載機10の車内設置箇所は、ドライバカメラ21で少なくとも運転者の顔を含む視野を撮像できる位置であれば、特に限定されない。例えば車両2のダッシュボード中央付近の他、ハンドルコラム部分、メーターパネル付近、ルームミラー近傍位置、又はAピラー部分などに設置してもよい。また、ドライバモニタリング部20は、プラットフォーム部11と一体に構成される形態の他、プラットフォーム部11と別体で構成されてもよい。
【0066】
図3は、車載機10からサーバ装置40に送信される検出データの構成例を示す図である。
図3に例示したデータは、例えば、車載機10が、車両2が交差点を通過し終えたことを検出した後(例えば、通過時刻t0の一定時間後)に送信される。
送信される検出データには、車載機10の識別情報(シリアルナンバー等)、及び交差点通過時刻t0の他、運転者3の運転挙動データとして、運転者3の顔の向き(ピッチ、ヨー、及びロール)、視線の方向(ピッチ、及びヨー)、及び目開度(右目、及び左目)などの所定期間(例えば、通過時刻t0の前後所定時間)の時系列データが含まれている。さらに、車両2の走行挙動データとして、車両2の加速度(前後、左右、及び上下)、角速度(ヨー)、車両2の位置データ(緯度、及び経度)、及び走行速度などの前記所定期間の時系列データが含まれている。さらに、前記所定期間に撮像された運転者画像、車外画像の画像データが含まれてもよい。なお、サーバ装置40に送信される検出データの構成は、
図3に例示した構成に限定されるものではない。
【0067】
図4は、実施の形態に係る運転評価システム1で用いられるサーバ装置40のハードウェア構成例を示すブロック図である。
サーバ装置40は、通信ユニット41、制御ユニット50、及び記憶ユニット60を含んで構成され、これらは通信バス42を介して接続されている。
【0068】
通信ユニット41は、通信ネットワーク4を介して、車載機10や事業者端末80などとの間で各種のデータや信号の送受信を実現するための通信装置を含んで構成されている。
【0069】
制御ユニット50は、1つ以上のCPUなどのプロセッサを含んで構成される演算処理装置51と、制御プログラム53などが記憶されたメインメモリ52とを含んで構成されている。演算処理装置51は、メインメモリ52中の制御プログラム53を読み込み、解釈して、各種処理を実行する。
【0070】
記憶ユニット60は、例えば、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブなど、1つ以上の大容量記憶装置で構成され、検出データ蓄積部61、評価条件テーブル記憶部62、評価結果記憶部63、及び運転者情報記憶部64などを含んで構成されている。
【0071】
検出データ蓄積部61には、各車両2の車載機10から取得した検出データ(
図3を参照)が、各車載機10の識別情報に対応付けて蓄積される。
図5は、検出データ蓄積部61に蓄積される検出データファイル61aの構成例を示す図である。
図5に例示した検出データファイル61aには、車載機10の識別情報(シリアルナンバー等)に対応付けて、運転者ID、交差点通過時刻t0の他、運転者3の運転挙動データとして、運転者3の顔の向き(ピッチ、ヨー、及びロール)、視線の方向(ピッチ、及びヨー)、及び目開度(右目、及び左目)のデータ(通過時刻t0の前後所定時間のデータ)が時系列で蓄積される。さらに、車両2の走行挙動データとして、車両2の加速度(前後、左右、及び上下)、角速度(ヨー)、車両2の位置(緯度、及び経度)、及び走行速度のデータ(通過時刻t0の前後所定時間のデータ)が時系列で蓄積される。また、運転者画像(撮像日時、フレーム番号、及び画像データ)、車外画像(撮像日時、フレーム番号、及び画像データ)などのデータが時系列で蓄積されてもよい。
【0072】
評価条件テーブル記憶部62には、交差点の属性と交差点で切り替える進行方向(すなわち、曲がる方向)との組み合わせごとに、交差点で運転者3が行うべき安全確認動作の評価条件が少なくとも1つ以上記憶されている。
【0073】
図6は、評価条件テーブル記憶部62に記憶されている評価条件テーブル62aの一例を示すデータ構成図である。
図6に例示した評価条件テーブル62aの項目には、交差点の属性と、交差点で曲がる方向との組み合わせごとに、評価項目の1つとして、最低限行うべき安全確認項目が含まれている。
交差点の属性の欄には、予め類型化された交差点の属性が登録されている。
図6の例では、交差点の属性として、信号機有り、又は信号機無しが登録されているが、交差点の属性はこれに限定されない。たとえば、信号機有りの交差点を幹線道路の交差点、信号機無しの交差点を生活道路の交差点と定義し、交差点の属性として、幹線道路、又は生活道路を登録してもよい。
また、曲がる方向の欄には、交差点で曲がる方向の一例として、右折、又は左折が登録されている。
【0074】
最低限行うべき安全確認項目には、交差点に進入する前後において運転者3が行うべき確認動作及び評価タイミングが含まれている。
評価タイミング(換言すれば、評価する区間)の欄には、交差点進入前、又は交差点進入後が登録されている。
確認動作の欄には、交差点の属性ごとに、これら交差点を通過する際(進入前、又は進入後)に、運転者3が安全確認すべき方向(右確認、左確認など)、安全確認すべき箇所(左ミラー、右ミラー、横断歩道方向など)、確認角度、及び確認時間などの条件が1つ以上登録されている。なお、確認角度(a度〜i度)は、例えば、車両2の正面方向に対する運転者3の顔の向き、又は視線の方向を示す角度である。確認時間(t
1〜t
9)は、例えば、前記確認角度以上の状態が継続される時間である。
【0075】
図6に例示した、交差点の属性が信号機無し、曲がる方向が左折の場合、安全確認項目には、交差点進入前に左確認、及び右確認が行われたかを評価する内容が登録されている。また、
図6に例示した、交差点の属性が信号機無し、曲がる方向が右折の場合、上記同様に、安全確認項目には、交差点進入前に左確認、及び右確認が行われたかを評価する内容が登録されている。
この評価内容によれば、信号機が無い交差点で左折又は右折する場合、交差点進入前に、交差する左右方向からの車両又は自転車などの接近状況を確認したか否かについて評価可能となっている。これらは、信号機が無い交差点において、出合い頭での事故を防止する観点から、重要な安全確認項目である。
【0076】
また、
図6に例示した、交差点の属性が信号機有り、曲がる方向が左折の場合、安全確認項目には、交差点進入前に左ミラー確認、右確認、及び左巻き込み確認が行われたかを評価する内容が登録されている。
この評価内容によれば、信号機が有る交差点で左折する場合、交差点進入前に、左後方の安全状況(二輪車等の接近状況など)の確認、対向車線から左折してくる車両の確認、及び横断歩道を渡る歩行者などの巻き込み確認を行ったか否かについて評価可能となっている。これらは、信号機が有る交差点において、左折時巻き込み事故を防止する観点から、重要な安全確認項目である。
【0077】
また、
図6に例示した、交差点の属性が信号機有り、曲がる方向が右折の場合、安全確認項目には、交差点進入前に右前方確認、及び交差点進入後に横断歩道方向確認が行われたかを評価する内容が登録されている。
この評価内容によれば、信号機が有る交差点で右折する場合、交差点進入前に、右前方の安全状況(対向車線の車両等の接近状況など)の確認、交差点進入後に、車両が横切る横断歩道の状況確認(歩行者などの確認)を行ったか否かについて評価可能となっている。これらは、信号機が有る交差点において、右折時における対向車や横断歩道の歩行者等との事故を防止する観点から、重要な安全確認項目である。
【0078】
なお、
図6に例示した評価条件テーブル62aは、日本等の車両2が左側通行である場合の一例である。車両2が左側通行の国と、車両2が右側通行の国とでは、右折と左折が逆になる。また、評価条件テーブル62aの内容は、各国による交通法規に適応した内容に設定することが好ましい。
【0079】
評価結果記憶部63には、制御ユニット50で実行された、各車両2の運転者3の安全確認動作の評価結果、すなわち、少なくとも交差点における運転者3の安全確認動作の評価結果に関する情報が、車載機10毎、又は運転者3毎に記憶される。
【0080】
図7は、評価結果記憶部63に記憶されている評価結果ファイル63aの構成例を示す図である。
評価結果ファイル63aには、車載機10の識別情報、運転者ID、交差点通過時刻t0、交差点位置、交差点への進入時刻t5、交差点の属性、交差点で曲がった方向、及び評価結果などが含まれている。評価結果には、例えば、上記した評価条件テーブル62aの評価条件に基づいて評価された結果の他、これら評価結果を基に、統計処理して点数化された評価データ、又はランク付けされた評価データなどが記憶されてもよい。
【0081】
なお、交差点への進入時刻t5は、サーバ装置40が、車載機10から送信されてきた車両2の角速度データ(例えば、交差点通過時刻t0の前後所定時間の角速度データ)に基づいて推定した時刻である。例えば、交差点通過時刻t0の前後所定時間の角速度データの積分値θが所定の積分比率θrに到達した時刻を交差点への進入時刻t5としてもよい。
【0082】
運転者情報記憶部64には、事業者が管理する運転者3に関する各種情報(例えば、運転者の識別情報(運転者ID)、及び勤務スケジュールなど)が記憶されている。
【0083】
[機能構成例]
図8は、実施の形態に係るサーバ装置40の機能構成例を示す要部ブロック図である。
サーバ装置40の制御ユニット50は、特徴量算出部54、交差点属性判別部55、及び安全確認評価部56を含んで構成されている。特徴量算出部54、交差点属性判別部55、及び安全確認評価部56は、本発明の「算出部」、「判定部」、及び「評価部」の一例である。
【0084】
制御ユニット50の演算処理装置51が、
図4に示したメインメモリ52に記憶された制御プログラム53を読み出し、制御プログラム53を解釈して実行することで、特徴量算出部54、交差点属性判別部55、及び安全確認評価部56などの動作を実現する。
【0085】
特徴量算出部54は、記憶ユニット60の検出データ蓄積部61に記憶された車両2の走行挙動データに基づいて、車両2が進行方向を切り替えた(例えば、右折又は左折した)交差点の属性を判別するための少なくとも1以上の特徴量を算出する処理を行う。走行挙動データには、少なくとも車両2の角速度データと位置データとが含まれ、さらに車両2の速度データが含まれてもよい。
【0086】
特徴量算出部54は、平均値算出部541、ばらつき指標値算出部542、及び移動距離算出部543を含んで構成されている。
平均値算出部541は、車両2の角速度が所定の閾値を超えた時点を含む所定区間の角速度の平均値を特徴量の1つとして算出する処理を行う。
所定の閾値は、車両2が、車線変更とかではなく、右折又は左折していることを判定可能な値に設定される。所定区間は、車両2が右折又は左折を開始してから終了するまでの区間(以下、交差点区間ともいう)に設定される。例えば、車両2が右折(右旋回)した場合に負の角速度データが検出され、左折(左旋回)した場合に正の角速度データが検出される場合、所定区間には、右折の場合、負の角速度データが検出されている区間、左折の場合、正の角速度データが検出されている区間をそれぞれ設定することができる。
【0087】
ばらつき指標値算出部542は、車両2の角速度が前記所定の閾値を超えた時点を含む前記所定区間の角速度のばらつきを示す指標値を特徴量の1つとして算出する処理を行う。角速度のばらつきを示す指標値には、角速度の分散が好適に採用され得るが、角速度の標準偏差であってもよい。
【0088】
移動距離算出部543は、車両2の角速度が前記所定の閾値を超えた時点を含む前記所定区間の位置データを用いて車両2の移動距離(換言すれば、交差点内での走行距離)を特徴量の1つとして算出する処理を行う。
【0089】
なお、特徴量算出部54は、平均値算出部541、ばらつき指標値算出部542、及び移動距離算出部543を含む構成に限定されるものではなく、例えば、ばらつき指標値算出部542からなる構成でもよいし、ばらつき指標値算出部542、及び移動距離算出部543からなる構成でもよいし、平均値算出部541、及びばらつき指標値算出部542からなる構成でもよいし、平均値算出部541、及び移動距離算出部543からなる構成でもよい。
【0090】
また、特徴量算出部54に、前記所定区間の車両2の速度(車速)の平均値を特徴量の1つとして算出する処理を行う車速平均値算出部(図示せず)を含んでもよい。又は、前記所定区間の車両2の速度(車速)のばらつきを示す指標値を特徴量の1つとして算出する処理を行う車速ばらつき指標値算出部(図示せず)を含んでもよい。
【0091】
すなわち、特徴量算出部54は、前記特徴量として、交差点内での車両2の移動距離、角速度平均値、角速度分散、角速度最小値、速度平均値、速度分散、速度最大値、及び速度最小値のうちの少なくとも1以上を算出する構成にしてもよい。交差点属性判別部55は、これら特徴量のうちの1つ、又は2以上を用いて、交差点の属性を判定する処理を実行する構成としてもよい。
【0092】
交差点属性判別部55は、特徴量算出部54で算出された特徴量(角速度平均値、角速度分散、及び移動距離)に基づいて、交差点の属性を判別する処理を行う。
また、交差点属性判別部55は、車両2が対向車線を横切って曲がった(換言すれば、右折した)交差点の属性を判別する処理を実行してもよいし、左折した交差点の属性を判別する処理を実行してもよい。
交差点属性判別部55は、特徴量算出部54で算出された特徴量(角速度平均値、角速度分散、及び移動距離)を入力すると、交差点の属性(例えば、信号機の有無)を示す値を出力するように学習した学習済みの識別器を用いて、交差点の属性(例えば、信号機の有無)を判別する構成としてもよい。
【0093】
このような識別器は、例えば、メインメモリ52に識別用プログラムとして記憶され、機械学習装置によって予め構築されたものでもよい。前記識別器の構築には、線形判別分析、非線形判別分析、サポートベクターマシン、ニューラルネットワーク、決定木、K近傍識別器、集団学習などの種々の機械学習の手法を用いることが可能であり、機械学習の手法は特に限定されない。
【0094】
前記機械学習装置には、例えば、車両2から取得した既知の走行挙動データを用いて、1以上の特徴量を算出し、算出した1以上の特徴量をパラメータとし、これらパラメータと交差点属性の正解ラベルとの組からなる教師データを多数読み込ませて、交差点属性を分離可能な超平面を形成する識別関数を生成する構成のものが適用可能である。かかる機械学習装置によって、未知の特徴量を入力すると、交差点の属性を示す値を出力するように学習された識別器を構築することが可能となる。サーバ装置40は、このような機械学習装置を含んで構成してもよい。
【0095】
[識別器の検証例]
車載機10を搭載した車両2の運転者20人分の一日の運転行動を計測したデータ(走行挙動データ)を解析対象データに用いて、学習済み識別器を生成し、交差点右折時の走行挙動データに基づく、交差点属性の判別について検証した。ここでの交差点の属性は、信号機の有無とした。
【0096】
前記解析対象データの中には、各々異なる交差点での走行挙動データが、信号機有りの交差点は61箇所、信号機無しの交差点は46箇所(計107箇所)含まれていた。
図9は、車両2の角速度データから交差点区間を決定する方法を説明するための角速度データの波形図の一例である。
図9に示すように、車両2の角速度データが、右旋回方向に所定の閾値(一例として、−8deg/s)を超えた場合に、右折イベントが生起したとみなし、前記閾値を超えた時点を含む、角速度データが負の値の区間を交差点区間とした。
【0097】
計107箇所の各交差点区間での車両2の位置データ(1Hz)と車両2の角速度データ(15Hz)とを用いて、各交差点区間での車両2の移動距離、角速度平均値、角速度分散、角速度最小値、速度平均値、速度分散、速度最大値、及び速度最小値の8種類の特徴量を算出した。
【0098】
これら特徴量のうち、どの特徴量の組み合わせが交差点の属性判別(この場合、信号機の有無の判別)に特に有用であるかを検証した。具体的には、上記8種類の特徴量のうち、車両2の移動距離と、他の少なくとも1種以上の特徴量との組み合わせパターンを変えて、各々の判別精度を比較した。
【0099】
本件証例では、線形判別分析の識別器を作成し、その識別器による交差点属性の判別精度を検証した。
識別器による交差点属性の判別精度の検証には、データ全体のうち1つだけをテストデータとして抜き出し、残りのデータを教師データとして交差検証を行うリーブワンアウト(Leave One Out)法を用いた。
すなわち、上記計107箇所のデータのうち、1箇所のデータを除いた106箇所のデータを教師データに用いて線形判別分析の識別器を作成し、1箇所のデータをテストデータに用いて、交差点の属性(信号機の有無)が正しく識別できているか否かの評価処理を、テストデータを切り替えながら繰り返す方法で検証を行った。なお、リーブワンアウト(Leave One Out)法に代えて、ホールドアウト(Hold-out)法、クロスバリデーション(Cross Validation)法などを用いてもよい。
【0100】
図10は、線形判別分析の識別器による交差点属性の判別分析結果の一例を示す表である。
図10に示すように、特徴量として、車両2の移動距離、角速度分散、及び角速度平均値を組み合わせて使用した場合の判別率が、79.4%となり、特徴量の組み合わせの中で判別率が最も高い結果が得られた。また、その内訳は、信号機有りの判別率が83.6%(51箇所/61箇所中)、信号機無しの判別率が73.9%(34箇所/46箇所中)であった。
また、特徴量として、車両2の移動速度、及び角速度分散を組み合わせて使用した場合の判別率が、2番目に高い値(77.6%)であった。また、特徴量として、車両2の移動速度、角速度分散、及び速度分散を組み合わせて使用した場合の判別率が、77.4%であり、特徴量として、車両2の移動速度、角速度分散、及び速度平均値を組み合わせて使用した場合の判別率が、76.4%であり、有用性が確認できた。
これら検証例から、右折した交差点の属性(信号機の有無)を判別する場合、交差点内の車両2の移動距離と角速度データ(角速度分散と角速度平均値、又は角速度分散)とを用いることにより、約80%の精度で判別可能であり、これら特徴量を用いて、交差点属性を判別する有用性が認められた。
【0101】
安全確認評価部56は、評価条件テーブル記憶部62から評価条件テーブル62aを読み出し、この評価条件テーブル62aから、交差点属性判別部55で判別された交差点の属性に対応する安全確認評価条件を選択する処理を行い、選択された安全確認評価条件と、交差点における運転挙動データとを用いて、前記交差点における運転者3の安全確認動作を評価する処理を実行する。
【0102】
例えば、安全確認評価部56は、検出データ蓄積部61に蓄積された、運転者3の運転挙動データに基づいて、交差点進入前後における運転者3の顔の向き又は視線の向きの少なくともいずれかの左右の振り角度及び振り時間を検出し、検出された左右の振り角度及び振り時間と、交差点の属性に対応する安全確評価条件とに基づいて、進入時刻t5の前後における運転者3の安全確認動作を評価する。
例えば、安全確認評価条件に含まれる評価タイミング及び確認動作について判定された評価点を合計、平均化又は正規化等の統計処理を行って、交差点毎の評価点を算出し、算出した評価点を記憶ユニット60の評価結果記憶部63に記憶する処理を行う。
【0103】
[処理動作例]
図11は、実施の形態に係る車載機10におけるドライバモニタリング部20が行う処理動作を示すフローチャートである。本処理動作は、例えば、ドライバカメラ21で画像が撮像されるタイミング(例えば、毎フレーム、又は所定間隔のフレーム毎)で実行される。
【0104】
まず、ステップS1において、画像解析部22は、ドライバカメラ21で撮像された画像を取得し、ステップS2に処理を進める。
ステップS2では、画像解析部22は、取得した画像から運転者の顔、又は顔の領域を検出する処理を行い、ステップS3に処理を進める。画像から顔を検出する手法は特に限定されないが、高速で高精度に顔を検出する手法を採用することが好ましい。
【0105】
ステップS3では、画像解析部22は、ステップS2で検出した顔の領域から、目、鼻、口、眉などの顔器官の位置や形状を検出する処理を行い、ステップS4に処理を進める。画像中の顔の領域から顔器官を検出する手法は特に限定されないが、高速で高精度に顔器官を検出できる手法を採用することが好ましい。例えば、画像解析部22が、3次元顔形状モデルを作成し、これを2次元画像上の顔の領域にフィッティングさせ、顔の各器官の位置と形状を検出する手法が採用され得る。この手法によれば、ドライバカメラ21の設置位置や画像中の顔の向きなどに関わらず、正確に顔の各器官の位置と形状を検出することが可能となる。
【0106】
ステップS4では、画像解析部22は、ステップS3で求めた顔の各器官の位置や形状のデータに基づいて、運転者の顔の向きを検出する処理を行い、ステップS5に処理を進める。例えば、上記3次元顔形状モデルのパラメータに含まれている、上下回転(X軸回り)のピッチ角、左右回転(Y軸回り)のヨー角、及び全体回転(Z軸回り)のロール角を運転者の顔の向きに関する情報として検出してもよい。
【0107】
ステップS5では、画像解析部22は、ステップS4で求めた運転者の顔の向き、及びステップS3で求めた運転者の顔器官の位置や形状、特に目の特徴点(目尻、目頭、及び瞳孔)の位置や形状に基づいて、視線の方向を検出する処理を行い、ステップS6に処理を進める。
【0108】
視線の方向は、例えば、様々な顔の向きと目の画像の特徴量(目尻、目頭、瞳孔の相対位置、又は強膜(いわゆる白目)部分と虹彩(いわゆる黒目)部分の相対位置、濃淡、テクスチャーなど)とを予め学習器を用いて学習し、これら学習した特徴量データとの類似度を評価することで検出してもよい。または、前記3次元顔形状モデルのフィッティング結果などを用いて、顔の大きさや向きと目の位置などから眼球の大きさと中心位置とを推定するとともに、瞳孔の位置を検出し、眼球の中心と瞳孔の中心とを結ぶベクトルを視線方向として検出してもよい。
【0109】
ステップS6では、画像解析部22は、ステップS3で求めた運転者の顔器官の位置や形状、特に目の特徴点(目尻、目頭、瞳孔、及びまぶた)の位置や形状に基づいて、目開度を検出する処理を行い、ステップS7に処理を進める。
【0110】
ステップS7では、画像解析部22は、ステップS4で検出した運転者の顔の向きと、ステップS5で検出した運転者の視線の方向と、ステップS6で検出した運転者の目開度と、運転者の画像と、撮像時刻とを対応付けて、画像情報としてプラットフォーム部11に送信し、その後、画像解析部22は、ステップS1に戻り、処理を繰り返す。
【0111】
図12は、実施の形態に係る車載機10における制御部19が行う処理動作の一例を示すフローチャートである。本処理動作は、例えば、数十ms〜数秒の所定周期で実行される。
【0112】
まず、ステップS11において、制御部19は、加速度センサ12で測定された加速度データを取得してRAM19bに記憶する処理を行い、ステップS12に処理を進める。
ステップS12では、制御部19は、角速度センサ13で検出された角速度データを取得してRAM19bに記憶する処理を行い、ステップS13に処理を進める。
【0113】
ステップS13では、制御部19は、ドライバモニタリング部20から送信されてきた画像情報を取得してRAM19bに記憶する処理を行い、ステップS14に処理を進める。
ステップS14では、制御部19は、ドライブレコーダー部30から送出されてきたデータ(車外画像と車内画像のデータ)を取得してRAM19bに記憶する処理を行い、ステップS15に処理を進める。
【0114】
ステップS15では、制御部19は、GPS受信部14で検出された位置データを取得し、ステップS16に処理を進める。
ステップS16では、制御部19は、ステップS15で取得した位置データの単位時間あたりの変化に基づいて、車両2の走行速度を算出し、位置データと走行速度とをRAM19bに記憶する処理を行い、ステップS17に処理を進める。なお、ステップS11〜S16までの各処理の順序は特に限定されない。また、これら各処理を並列的に実行してもよい。
【0115】
ステップS17では、制御部19は、車両2が交差点を通過中(即ち、右左折中)であるか否かを判断する。例えば、制御部19は、ステップS12で取得した角速度の絶対値が所定の角速度閾値ω1以上になったか否かを判断する。なお、角速度閾値ω1は、交差点を右左折中であることを判定可能な値に設定されている。また、ステップS17の判断処理において、角速度の絶対値が所定の角速度閾値ω1以上になったときの車速が所定の交差点上限速度以下であることを判断条件に追加してもよい。なお、所定の交差点上限速度は、交差点を安全に右左折できる速度を考慮して設定されている。
【0116】
ステップS17において、制御部19は、車両2が交差点を通過中ではないと判断すれば、その後、制御部19は、ステップS11に戻り、処理を繰り返す。
一方ステップS17において、制御部19は、車両2が交差点を通過中であると判断すれば、ステップS18に処理を進める。
【0117】
ステップS18では、制御部19は、角速度の絶対値が所定の角速度閾値ω1以上になった時刻(即ち、通過時刻t0)を検出し、ステップS19に処理を進める。
ステップS19では、制御部19は、車両2が交差点を通過し終えたか否かを判断する。例えば、制御部19は、通過時刻t0から所定時間経過したか否かを判断してもよいし、角速度データの積分値(即ち、鉛直軸回りの角度)が、車両2が交差点を通過し終えたことを示す閾値(角度)以上になった否かを判断してもよい。
【0118】
ステップS19において、制御部19は、車両2が交差点を通過し終えたと判断すれば、ステップS20に処理を進める。
ステップS20では、制御部19は、通過時刻t0のデータとともに、通過時刻t0の前後所定時間(例えば、数秒から数十秒間)に取得した検出データ(ステップS11〜S16で取得したデータ)をRAM19b又は記憶部17から読み出し、通信部15を制御して、これら検出データをサーバ装置40へ送信する処理を行う。その後、制御部19は、ステップS11に戻り、処理を繰り返す。車載機10からサーバ装置40へ送信される検出データの構成例は
図3に示している。
【0119】
また、制御部19は、ステップS20の処理に代えて、RAM19b又は記憶部17から読み出した検出データを記憶部17(例えば、着脱式記憶媒体)に記憶してもよい。そして、一日の走行終了後、運転者3が車載機10から記憶部17を取り外し、記憶部17に記憶された検出データを事業者端末80に読み込ませて、事業者端末80がサーバ装置40に送信するようにしてもよい。
【0120】
図13は、実施の形態に係るサーバ装置40における制御ユニット50が行う処理動作を示す概略フローチャートである。
まず、ステップS21において、制御ユニット50は、車載機10から送信されてきた検出データを受信したか否かを判断し、車載機10から検出データを受信したと判断すれば、ステップS22に処理を進める一方、車載機10から検出データを受信していないと判断すれば、ステップS23に処理を進める。
【0121】
ステップS22では、制御ユニット50は、車載機10から受信した検出データを、車載機10の識別情報と対応付けて検出データ蓄積部61に記憶する処理を行い、ステップS23に処理を進める。
【0122】
ステップS23では、制御ユニット50は、運転者の安全運転行動の評価を実行するタイミングか否かを判断する。前記評価を実行するタイミングか否かは、例えば、車載機10から車両2の運転業務の終了を示す信号を受信したか否かで判断してもよいし、所定の評価実行時刻になったか否かで判断してもよいし、事業者端末80からの評価要があったか否かで判断してもよい。
【0123】
ステップS23において、制御ユニット50は、前記評価を実行するタイミングではないと判断すればステップS21に戻る一方、前記評価を実行するタイミングになったと判断すれば、ステップS24に処理を進める。
【0124】
ステップS24では、制御ユニット50は、車載機10が搭載された車両2の運転者3の交差点等における安全確認動作の評価処理を行う。なお、ステップS24で実行される評価処理の具体例については、
図14、15のフローチャートを用いて説明する。
【0125】
制御ユニット50は、ステップS24における安全確認動作の評価処理を終えると、ステップS25に処理を進める。
ステップS25では、制御ユニット50は、評価処理の結果を、車載機10の識別情報及び運転者IDと対応付けて評価結果記憶部63に記憶する処理を行い、その後処理を終える。
【0126】
図14は、実施の形態に係るサーバ装置40における制御ユニット50が行う安全確認動作の評価処理動作(
図13のステップS24の処理動作)の一例を示すフローチャートである。なお、本フローチャートは、車載機10が搭載された車両2の1日の運転が終了するまでに通過した各交差点における運転者3の安全確認動作を評価する処理動作を示している。
【0127】
まず、ステップS31では、制御ユニット50は、検出データ蓄積部61から交差点通過時の検出データ(走行挙動データ、運転挙動データを含む)を読み出し、ステップS32に処理を進める。交差点通過時の検出データは、交差点通過時刻t0±n秒間(±n秒間は、例えば、±10〜20秒間程度)の検出データであり、交差点通過時刻t0の時系列順に読み出される。
【0128】
ステップS32では、制御ユニット50は、ステップS31で読み出した検出データに基づいて、通過した交差点の属性を判別する処理を行い、ステップS33に処理を進める。なお、ステップS32で実行される交差点属性の判別処理例については、
図15のフローチャートを用いて説明する。
【0129】
ステップS33では、制御ユニット50は、評価条件テーブル記憶部62から評価条件テーブル62a(
図6)を読み出し、評価条件テーブル62aから、ステップS32で判別された交差点の属性に対応した安全確認評価条件を選択する処理を行い、ステップS34に処理を進める。
【0130】
ステップS34では、制御ユニット50は、ステップS33で選択された安全評価条件と、ステップS31で読み出した検出データ(運転挙動データ)とを用いて、運転者の安全確認動作を評価する処理を行う。
例えば、運転者の運転挙動データに基づいて、交差点進入時刻t5の前後における運転者の顔の向き又は視線の向きの少なくともいずれかの左右の振り角度及び振り時間と、選択された安全確評価条件とに基づいて、交差点進入前、及び/又は交差点進入後における運転者3の安全確認動作を評価する。
例えば、安全確認評価条件の各項目で判定された評価点を合計、平均化又は正規化等の統計処理を行って、当該交差点の評価点又は評価レベルを算出する処理を行い、ステップS35に処理を進める。
【0131】
ステップS35では、制御ユニット50は、ステップS34において算出された評価点又は評価レベルを評価結果として、メインメモリ52に一時記憶する処理を行い、ステップS36に処理を進める。
ステップS36では、制御ユニット50は、次の交差点通過時の検出データがあるか否かを判断し、次の交差点通過時の検出データがあると判断すれば、ステップS31に戻り、全ての交差点通過時の検出データの読み出しを終えるまで処理を繰り返す。一方、ステップS36において、次の交差点通過時の検出データがない、即ち、蓄積されたデータから交差点通過時の検出データの読み出しが全て終了したと判断すれば、その後評価処理を終える。
【0132】
図15は、実施の形態に係るサーバ装置40における制御ユニット50が行う交差点属性の判別処理(
図14のステップS32の処理動作)の一例を示すフローチャートである。
まず、ステップS41では、制御ユニット50は、検出データ蓄積部61から読み出した、交差点通過時(交差点通過時刻t0±n秒間)の検出データに含まれる角速度データを平滑化する処理を行い、その後、ステップS42に処理を進める。この平滑化処理は、角速度データ中のノイズ等を除去するために行われ、例えば、所定の周波数成分を除去するフィルタリング処理などが行われる。
【0133】
ステップS42では、制御ユニット50は、平滑処理後の角速度の値が、右折を示す負の閾値を超えたか、又は左折を示す正の閾値を超えたかを判断し、負の閾値を超えたと判断すれば、ステップS43に処理を進め、ステップS43では、右折を示す右折フラグf1を1にして、ステップS45に処理を進める。
【0134】
一方ステップS42において、制御ユニット50は、角速度の値が正の閾値を超えたと判断すれば、ステップS44に処理を進め、ステップS44では、左折を示す左折フラグf2を1にして、ステップS45に処理を進める。
【0135】
ステップS45では、制御ユニット50は、角速度の値に基づいて、交差点区間を設定する処理を行う。すなわち、右折フラグf1が1の場合、制御ユニット50は、角速度が負の閾値を超えた時点を含む、負の値を示している区間を検出し、当該区間の開始時点から終了時点までを右折時の交差点区間として設定する。
一方、左折フラグf2が1の場合、制御ユニット50は、角速度が正の閾値を超えた時点を含む、正の値を示している区間を検出し、当該区間の開始時点から終了時点までを右折時の交差点区間として設定し、その後ステップS46に処理を進める。
【0136】
ステップS46では、制御ユニット50は、ステップS45で設定された交差点区間の車両2の位置データに基づいて、交差点区間での車両2の移動距離を算出する処理を行い、その後ステップS47に処理を進める。なお、交差点区間での車両2の移動距離は、交差点属性を判別するための特徴量の1つとして算出される。
【0137】
ステップS47では、制御ユニット50は、ステップS45で設定された交差点区間の車両2の角速度データに基づいて、交差点区間での車両2の角速度の平均値を算出する処理を行い、その後ステップS48に処理を進める。なお、交差点区間での車両2の角速度の平均値は、交差点属性を判別するための特徴量の1つとして算出される。
【0138】
ステップS48では、制御ユニット50は、ステップS45で設定された交差点区間の車両2の角速度データに基づいて、交差点区間での車両2の角速度の分散を算出する処理を行い、その後ステップS49に処理を進める。なお、角速度の分散は、角速度の平均値から各角速度データの差の2乗を全て足した値の平均値である。なお、交差点区間での車両2の角速度の分散は、交差点属性を判別するための特徴量の1つとして算出される。
【0139】
ステップS49では、制御ユニット50は、ステップS46〜S48で算出された特徴量(車両2の移動距離、角速度平均値、角速度分散)に基づいて、交差点の属性を判別する処理を行い、ステップS50に処理を進める。交差点の属性は、例えば、信号機の有無である。
例えば、特徴量(車両2の移動距離、角速度平均値、角速度分散)を入力すると交差点の属性を示す値(例えば、信号機有りの場合は0より大きい値、信号機無しの場合は0より小さい値)を出力するように学習した学習済みの識別器に、特徴量(車両の移動距離、角速度平均値、角速度分散)を入力し、その出力結果に基づいて交差点の属性を判別する。
【0140】
ステップS50では、右折フラグf1又は左折フラグf2の値と、ステップS49で判別された交差点の属性(信号機有り又は信号機無し)とを一時記憶する処理を行い、交差点属性の判別処理を終える。
【0141】
なお、上記ステップS46〜S48の処理の順序は問わない。また、上記ステップS46、S47を省略してもよいし、ステップS47を省略してもよい。また、ステップS46、S47、S48に加えて、又はステップS46、S47の少なくともいずれかに代えて、さらに、特徴量として、例えば、車両2の角速度最小値、速度(車速)平均値、速度分散、速度最大値、及び速度最小値のうちの少なくとも1以上を算出する処理ステップを追加し、これら特徴量に基づいて、交差点属性を判別する処理(ステップS49)を行ってもよい。
【0142】
[作用・効果]
上記実施の形態に係るサーバ装置40によれば、特徴量算出部54によって特徴量(車両2の移動距離、角速度分散、角速度平均値)が算出され、交差点属性判別部55によって、前記特徴量に基づいて、進行方向を切り替えた交差点の属性が判別されるので、データの読み込みなどの処理負荷が大きい地図データを用いることなく、前記交差点の属性を負荷の軽減された処理で判別することが可能となる。
【0143】
また、安全確認評価部56によって、交差点属性判別部55で判別された前記交差点の属性に対応した安全確認評価条件が評価条件テーブル62aから選択され、選択された安全確認評価条件と、前記交差点における運転挙動データとを用いて、運転者3の安全確認動作が評価される。
【0144】
したがって、前記交差点の属性(例えば、信号機の有無)ごとの安全確認ポイントの違いなどが考慮された、より正確な運転評価を行うことができ、事故リスクの高い運転者の検出精度を向上させることができる。また、運転評価結果に基づく、運転者3への安全アドバイスをより的確に行うことができ、事故を未然に防ぐ予防安全教育の効果を高めることができる。
【0145】
[変形例]
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明したが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく、種々の改良や変更を行うことができることは言うまでもない。
上記実施の形態では、本発明に係る運転評価装置を、サーバ装置40に適用した例について説明したが、他の適用例としては、例えば、本発明に係る運転評価装置を、車載機10に適用し、各車載機10で運転者3の運転評価処理を行うように構成してもよい。または、本発明に係る運転評価装置を、事業者端末80に適用し、事業者端末80で、管理する車両2の運転者3の運転評価を行うように構成してもよい。
【0146】
[付記]
本発明の実施の形態は、以下の付記の様にも記載され得るが、これらに限定されない。
(付記1)
車載機(10)で検出された車両(2)の走行挙動データと、前記車両(2)の運転者(3)の運転挙動データとを用いて、前記運転者(3)の運転評価を行う運転評価装置(40)であって、
前記走行挙動データを用いて、前記車両(2)が進行方向を切り替えた交差点の属性を判別するための少なくとも1以上の特徴量を算出する算出部(54)と、
算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性を判別する判別部(55)と、
判別された前記交差点の属性に対応した安全確認評価条件と、前記交差点における前記運転挙動データとを用いて、前記運転者の安全確認動作を評価する評価部(56)とを備えていることを特徴とする運転評価装置(40)。
【0147】
(付記2)
車載機(10)で検出された車両(2)の走行挙動データと、前記車両(2)の運転者(3)の運転挙動データとを用いて、前記運転者(3)の運転評価を行う運転評価方法であって、
前記走行挙動データを用いて、前記車両(2)が進行方向を切り替えた交差点の属性を判別するための少なくとも1以上の特徴量を算出する算出ステップ(S46、S47、S48)と、
算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性を判別する判別ステップ(S49)と、
判別された前記交差点の属性に対応した安全確認評価条件と、前記交差点における前記運転挙動データとを用いて、前記運転者の安全確認動作を評価する評価ステップ(S34)とを含んでいることを特徴とする運転評価方法。
【0148】
(付記3)
車載機(10)で検出された車両(2)の走行挙動データと、前記車両(2)の運転者(3)の運転挙動データとを用いて、前記運転者(3)の運転評価を少なくとも1以上のコンピュータ(50)に実行させるためのプログラム(53)であって、
前記コンピュータ(50)に、
前記走行挙動データを用いて、前記車両が進行方向を切り替えた交差点の属性を判別するための少なくとも1以上の特徴量を算出する算出ステップ(S46、S47、S48)と、
算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性を判別する判別ステップ(S49)と、
判別された前記交差点の属性に対応した安全確認評価条件と、前記交差点における前記運転挙動データとを用いて、前記運転者の安全確認動作を評価する評価ステップ(S34)とを実行させるためのプログラム。
【0149】
(付記4)
車載機(10)で検出された車両(2)の走行挙動データと、前記車両(2)の運転者(3)の運転挙動データとを用いて、前記運転者(3)の運転評価を行う運転評価装置(40)が実行する交差点属性判別方法であって、
前記走行挙動データを用いて、前記車両(2)が進行方向を切り替えた交差点の属性を判別するための少なくとも1以上の特徴量を算出する算出ステップ(S46、S47、S48)と、
算出された前記特徴量に基づいて、前記交差点の属性を判別する判別ステップ(S49)とを含んでいることを特徴とする交差点属性判別方法。