(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態のはんだ付け用フラックス組成物(以下、単に「フラックス組成物」ともいう)は、以下説明する(A)ロジン系樹脂、(B)活性剤、(C)溶剤および(D)高級脂肪族エステルを含有するものである。
本明細書において、鉛フリーはんだとは、鉛を添加しないはんだ金属または合金のことをいう。ただし、鉛フリーはんだ中に、不可避的不純物として鉛が存在することは許容されるが、この場合に、鉛の量は、300質量ppm以下であることが好ましい。
【0011】
鉛フリーはんだにおけるはんだ合金としては、具体的には、Sn−Ag、Sn−Ag−Cu、Sn−Cu、Sn−Ag−Bi、Sn−Bi、Sn−Ag−Cu−Bi、Sn−Sb、Sn−Zn−Bi、Sn−Zn、Sn−Zn−Al、Sn−Ag−Bi−In、Sn−Ag−Cu−Bi−In−Sb、In−Agなどが挙げられる。これらの中でも、はんだ接合の強度の観点から、Sn−Ag−Cu系のはんだ合金が好ましく用いられている。そして、Sn−Ag−Cu系のはんだの融点は、通常200℃以上250℃以下である。なお、Sn−Ag−Cu系のはんだの中でも、銀含有量が低い系のはんだの融点は、210℃以上250℃以下(より好ましくは、220℃以上240℃以下)である。
【0012】
[(A)成分]
本実施形態に用いる(A)ロジン系樹脂としては、ロジン類およびロジン系変性樹脂が挙げられる。ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジンおよびトール油ロジンなどが挙げられる。ロジン系変性樹脂としては、不均化ロジン、重合ロジン、水素添加ロジンおよびこれらの誘導体などが挙げられる。水素添加ロジンとしては、完全水添ロジン、部分水添ロジン、並びに、不飽和有機酸((メタ)アクリル酸などの脂肪族の不飽和一塩基酸、フマル酸、マレイン酸などのα,β−不飽和カルボン酸などの脂肪族不飽和二塩基酸、桂皮酸などの芳香族環を有する不飽和カルボン酸など)の変性ロジンである不飽和有機酸変性ロジンの水素添加物(「水添酸変性ロジン」ともいう)などが挙げられる。これらのロジン系樹脂は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
(A)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上10質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上6質量%以下であることが特に好ましい。(A)成分の配合量が前記下限以上であれば、ブリッジやつららの発生をより確実に抑制できる。他方、(A)成分の配合量が前記上限以下であれば、フラックス残さをより少なくできる。
【0014】
[(B)成分]
本実施形態に用いる(B)活性剤は、(B1)炭素数2〜4のジカルボン酸を含有する。この(B1)成分により、はんだ付け性(はんだブリッジの抑制性、はんだぬれ性、ぬれ広がりなど)を向上できる。
(B1)成分としては、シュウ酸、マロン酸およびコハク酸などが挙げられる。これらの中でも、活性作用の観点から、コハク酸が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
(B1)成分の配合量は、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上4質量%以下であることがより好ましく、1質量%以上3質量%以下であることが特に好ましい。(B1)成分の配合量が前記下限以上であれば、ブリッジやつららの発生をより確実に抑制できる。他方、(B1)成分の配合量が前記上限以下であれば、フラックス詰まりの発生をより確実に抑制できる。
【0016】
(B)成分は、(B2)炭素数5〜8のジカルボン酸をさらに含有することが好ましい。この(B2)成分により、(B1)成分が結晶化した場合の結晶を微細化できる傾向があり、フラックス詰まりの発生をより確実に抑制できる。
(B2)成分としては、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸およびスベリン酸などが挙げられる。これらの中でも、(B1)成分からなる結晶の微細化の観点から、アジピン酸が好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0017】
(B2)成分の配合量は、0.1質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上1質量%以下であることが特に好ましい。(B2)成分の配合量が前記範囲内であれば、フラックス詰まりの発生をより確実に抑制できる。
【0018】
(B)成分は、(B3)ロジンアミンをさらに含有することが好ましい。この(B3)成分により、フラックス詰まりの発生をより確実に抑制でき、また、銅箔腐食も抑制できる。
(B3)成分としては、デヒドロアビエチルアミンを主成分として(好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上、特に好ましくは90質量%以上)含有するものが挙げられる。このロジンアミンは、例えば、ロジン類をアンモニアと反応させた後、水素化する方法で製造できる。ロジン類としては、(A)成分と同様のものが挙げられる。
【0019】
(B3)成分の配合量は、0.1質量%以上3質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上2質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上1質量%以下であることが特に好ましい。(B3)成分の配合量が前記範囲内であれば、フラックス詰まりの発生をより確実に抑制でき、また、銅箔腐食も抑制できる。
【0020】
(B)成分は、(B1)成分〜(B3)成分以外の公知の活性剤((B4)成分)をさらに含有していてもよい。(B4)成分としては、(B1)成分および(B2)成分以外の有機酸、非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤、およびアミン系活性剤などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
(B1)成分および(B2)成分以外の有機酸としては、モノカルボン酸、(B1)成分および(B2)成分以外のジカルボン酸などの他に、その他の有機酸が挙げられる。
モノカルボン酸としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチリック酸、バレリック酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、およびグリコール酸などが挙げられる。
ジカルボン酸としては、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、およびジグリコール酸などが挙げられる。
その他の有機酸としては、ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、およびピコリン酸などが挙げられる。
【0021】
非解離性のハロゲン化化合物からなる非解離型活性剤としては、ハロゲン原子が共有結合により結合した非塩系の有機化合物が挙げられる。このハロゲン化化合物としては、塩素化物、臭素化物、フッ化物のように塩素、臭素、フッ素の各単独元素の共有結合による化合物でもよいが、塩素、臭素およびフッ素の任意の2つまたは全部のそれぞれの共有結合を有する化合物でもよい。これらの化合物は、水性溶媒に対する溶解性を向上させるために、例えばハロゲン化アルコールやハロゲン化カルボキシルのように水酸基やカルボキシル基などの極性基を有することが好ましい。ハロゲン化アルコールとしては、例えば臭素化アルコール(2,3−ジブロモプロパノール、2,3−ジブロモブタンジオール、トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール(TDBD)、1,4−ジブロモ−2−ブタノール、およびトリブロモネオペンチルアルコールなど)、塩素化アルコール(1,3−ジクロロ−2−プロパノール、および1,4−ジクロロ−2−ブタノールなど)、フッ素化アルコール(3−フルオロカテコールなど)、および、その他これらに類する化合物が挙げられる。ハロゲン化カルボキシルとしては、ヨウ化カルボキシル(2−ヨード安息香酸、3−ヨード安息香酸、2−ヨードプロピオン酸、5−ヨードサリチル酸、および5−ヨードアントラニル酸など)、塩化カルボキシル(2−クロロ安息香酸、および3−クロロプロピオン酸など)、臭素化カルボキシル(2,3−ジブロモプロピオン酸、2,3−ジブロモコハク酸、2−ブロモ安息香酸など)、および、その他これらに類する化合物が挙げられる。
【0022】
アミン系活性剤としては、アミン類(エチレンジアミンなどのポリアミンなど)、アミン塩類(トリメチロールアミン、シクロヘキシルアミン、ジエチルアミンなどのアミンやアミノアルコールなどの有機酸塩や無機酸塩(塩酸、硫酸、臭化水素酸など))、アミノ酸類(グリシン、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、およびバリンなど)、アミド系化合物などが挙げられる。具体的には、ジフェニルグアニジン臭化水素酸塩、シクロヘキシルアミン臭化水素酸塩、ジエチルアミン塩(塩酸塩、コハク酸塩、アジピン酸塩、セバシン酸塩など)、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン、および、これらのアミンの臭化水素酸塩などが挙げられる。
【0023】
(B)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上8質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上5質量%以下であることが特に好ましい。配合量が前記下限以上であれば、はんだ付け性を向上でき、他方、前記上限以下であれば、フラックス組成物の絶縁性を確保できる。
【0024】
[(C)成分]
本実施形態に用いる(C)溶剤は、(C1)1013hPaにおける沸点が240℃以上320℃以下のグリコール系溶剤またはテルペン系溶剤を含有する。この(C1)成分により、スプレー塗布後のフラックス組成物中に、(B1)成分を溶解させておくことができる。
【0025】
(C1)成分としては、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(249℃)、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(295℃)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(271℃)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(259℃)、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(272℃)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(245℃)、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル(283℃)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(256℃)、ジエチレングリコールモノベンジルエーテル(302℃)、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル(242℃)、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル(274℃)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(243℃)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(255℃)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(275℃)およびイソボルニルシクロヘキサノール(310〜318℃)などが挙げられる。これらの中でも、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、イソボルニルシクロヘキサノールが好ましい。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。なお、括弧内に記載の温度は、上記の溶剤の沸点である。
【0026】
(C1)成分の配合量は、0.5質量%以上10質量%以下であることが好ましく、1質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上3質量%以下であることが特に好ましい。(C1)成分の配合量が前記範囲内であれば、フラックス詰まりの発生をより確実に抑制できる。
【0027】
(C)成分は、(C2)沸点100℃以下の水溶性溶剤を含有することが好ましい。この(C2)成分により、フラックス組成物を適正な範囲に調整できる。
(C2)成分としては、エチルアルコール、およびイソプロピルアルコールなどが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0028】
(C)成分は、(C1)成分および(C2)成分以外の溶剤((C3)成分)をさらに含有していてもよい。(C3)成分としては、炭化水素系溶剤(イソオクタンなど)などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0029】
(C)成分の配合量は、フラックス組成物100質量%に対して、70質量%以上95質量%以下であることが好ましく、75質量%以上92質量%以下であることがより好ましく、80質量%以上90質量%以下であることが特に好ましい。配合量が前記範囲内であれば、フラックス組成物の塗布性を適正な範囲に調整できる。
【0030】
[(D)成分]
本実施形態に用いる(D)高級脂肪族エステルは、炭素数12〜24の脂肪族カルボン酸と炭素数1〜4のアルコールからなる高級脂肪族エステルである。この(D)成分は、(B1)成分の(C1)成分中への溶解性を向上させ、析出することを抑制できる。また、長時間の放置により、(B1)成分が析出した場合、新液の供給により速やかに液中に再溶解させることができ、フラックス詰まりを抑制できる。なお、脂肪族カルボン酸の炭素数が11以下の場合には、上記の効果が不十分である。他方、脂肪族カルボン酸の炭素数が25以上のものは入手が困難である。また、アルコールの炭素数が5以上の場合には、上記の効果が不十分である。脂肪族カルボン酸の炭素数は、12〜18であることが好ましく、18であることが特に好ましい。アルコールの炭素数は、2〜4であることが好ましく、4であることが特に好ましい。
これらの高級脂肪族エステルは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
ここで、脂肪族カルボン酸は、飽和であってもよく、不飽和であってもよい。また、脂肪族カルボン酸は、分岐を有していてもよい。
脂肪族カルボン酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキジン酸、ヘンイコシル酸、ベヘン酸、トリコシル酸、リグノセリン酸、α−リノレン酸、リノール酸、およびオレイン酸などが挙げられる。
アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、およびtert−ブチルアルコールなどが挙げられる。
【0032】
(D)成分の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.1質量%以上5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上3質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上2質量%以下であることが特に好ましい。配合量が前記下限以上であれば、フラックス詰まりの発生をより確実に抑制でき、他方、前記上限以下であれば、絶縁信頼性を維持できる。
【0033】
本実施形態のフラックス組成物は、(A)成分〜(D)成分の他に、必要に応じて、チクソ剤、酸化防止剤、消泡剤、防錆剤、および界面活性剤などの添加剤を含有していてもよい。これらの添加剤の配合量としては、フラックス組成物100質量%に対して、0.01質量%以上5質量%以下であることが好ましい。
【0034】
[はんだ付け方法]
次に、本実施形態のフラックス組成物を用いたはんだ付け方法について説明する。本実施形態のはんだ付け方法は、以下説明する部品取付工程、フラックス塗布工程およびはんだ付け工程を備える方法である。
【0035】
部品取付工程においては、先ず、電子部品を電子基板に挿入して、取り付ける。
電子基板としては、例えば、プリント配線基板などが挙げられる。
電子部品は、電子基板のスルーホールに挿入可能で、挿入後にはんだ付けをすることで実装する方法(いわゆるスルーホール実装)で用いるものである。電子部品としては、集積回路、トランジスタ、ダイオード、抵抗器およびコンデンサなどが挙げられる。
【0036】
フラックス塗布工程においては、電子基板のはんだ付け面に、前述したフラックス組成物を塗布する。
フラックス組成物の塗布装置としては、塗布量の安定性の観点から、スプレーフラクサーなどを採用できる。なお、本実施形態のフラックス組成物は、フラックス詰まりの発生が十分に抑制できるため、スプレーフラクサーに好適に用いることができる。
フラックス組成物の塗布量は、はんだ付け性の観点から、30mL/m
2以上180mL/m
2以下であることが好ましく、40mL/m
2以上150mL/m
2以下であることがより好ましく、50mL/m
2以上120mL/m
2以下であることが特に好ましい。
【0037】
はんだ付け工程においては、電子基板のはんだ付け面を、溶融はんだに接触させて、はんだ付けを行う。
溶融はんだを接触させる方法としては、溶融はんだを電子基板に接触できる方法であればよく、特に限定されない。このような方法としては、例えば、電子基板に噴流する溶融はんだに接触させる方法(フローはんだ付け法)を採用してもよい。また、溶融はんだの入ったはんだ槽を電子基板に接触させる方法を採用してもよい。
はんだ付けの条件は、はんだの融点に応じて適宜設定すればよい。例えば、Sn−Au−Cu系のはんだ合金を用いる場合には、溶融はんだの温度は、230℃以上280℃以下(好ましくは、250℃以上270℃以下)に設定すればよい。また、プリヒート温度としては、加熱温度80℃以上130℃以下(好ましくは、90℃以上120℃以下)に設定すればよい。
【実施例】
【0038】
次に、本発明を実施例および比較例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。なお、実施例および比較例にて用いた材料を以下に示す。
((A)成分)
ロジン系樹脂:商品名「中国ロジンX」、荒川化学工業社製
((B1)成分)
活性剤A:コハク酸
((B2)成分)
活性剤B:アジピン酸
((B3)成分)
活性剤C:商品名「ロジンアミン」、丸善油化商事社製
((B3)成分)
活性剤D:トランス−2,3−ジブロモ−2−ブテン−1,4−ジオール(TDBD)、丸善油化商事社製
((C1)成分)
溶剤A:トリプロピレングリコールモノブチルエーテル
((C2)成分)
溶剤B:イソプロピルアルコール
((C3)成分)
溶剤C:イソオクタン、丸善油化商事社製
((D)成分)
高級脂肪酸エステル:ステアリン酸ブチル、商品名「エキセパールBS」、島田商会社製
【0039】
[実施例1]
ロジン系樹脂3質量%、活性剤A1.7質量%、活性剤B0.3質量%、活性剤C0.3質量%、活性剤D0.7質量%、高級脂肪酸エステル0.5質量%、溶剤A2.5質量%、溶剤B86質量%および溶剤C5質量%を容器に投入し、混合してフラックス組成物を得た。
【0040】
[実施例2〜7および比較例1〜3]
表1に示す組成に従い各材料を配合した以外は実施例1と同様にして、フラックス組成物を得た。
【0041】
<フラックス組成物の評価>
フラックス組成物の特性(フラックス詰まり、はんだブリッジ、銅箔腐食)を以下のような方法で評価した。得られた結果を表1に示す。
(1)フラックス詰まり
スプレーフラクサー(「TAF40−12PV」、タムラ製作所社製)にて、以下の条件で、フラックス組成物を塗布した。
スプレーノズルの直径:1.2mm
塗布量:100mL/m
2
そして、フラックス組成物の塗布を、1時間行った後の、(i)スプレーノズル、および(ii)ドレインフィルターの状態を目視確認し、下記の基準に従って、フラックス詰まりを評価した。
(i)スプレーノズル
○:スプレーノズルの周囲に、結晶物がない。
△:スプレーノズルの周囲に、僅かに結晶物がある。
×:スプレーノズルの周囲に、結晶物がある。
(ii)ドレインフィルター
○:ドレインフィルターに付着物がない、或いは、ドレインフィルターに付着している付着物が、液状である。
×:ドレインフィルターに付着している付着物が、粉体状または固形物である。
(2)はんだブリッジ
コネクタを挿入可能な基板(銅箔を劣化処理したもの)を準備し、この基板の裏側から、コネクタ(「B8b−EH(LF)(SN)」、J.S.T. Mfg. co.,Ltd社製、スズめっき8ピン)を、10箇所に挿入し、テープで仮止めして、試験板を得た。
この試験板に、スプレーフラクサー(「TAF40−12PV」、タムラ製作所社製)にて、以下の条件で、フラックス組成物を塗布した。
スプレーノズルの直径:1.2mm
塗布量:110mL/m
2
そして、この試験板に、フローはんだ付けを行い、評価用試料を得た。ここでのフローはんだ付け条件は、プリヒート温度が100〜120℃(30〜60秒間)で、はんだ温度が250℃で、はんだ合金組成が96.5Sn−3.0Ag−0.5Cuである。
得られた評価用試料のコネクタ部10箇所を観察し、隣接するランド、またはコネクタピンがはんだによって短絡した箇所を、不良部としてカウントした。なお、評価用試料は3枚作製し、全コネクタにおける不良部の合計数から、下記の基準に従って、はんだブリッジを評価した。
○:不良点数が40未満である。
×:不良点数が40以上である。
(3)銅箔腐食
銅板(大きさ:50mm×50mm、厚み:0.5mm)を清浄にし、中央に直径20mmの鋼球で、深さ3mmの窪みを形成した。次に、線はんだ(合金組成:96.5Sn−3.0Ag−0.5Cu)1gをらせん状に巻き、銅板の中央に配置した。次いで、銅板の窪みに、固形分量が0.035〜0.040gになるように、フラックス組成物の滴下と乾燥とを繰り返して、試験板を得た。この試験板を、温度250℃に設定したはんだバス上で加熱し、はんだ溶融後5秒間加熱を続けた。その後、室温に放冷した後、温度40℃湿度90%RHの恒温恒湿槽に、96時間投入した。そして、投入前後での試験板の変化を目視にて観察し、下記の基準に従って、銅箔腐食を評価した。
○:銅板上に広がったフラックス残さ部において、著しい変色、および銅板への腐食がない。
△:銅板上に広がったフラックス残さ部において、著しい変色、または銅板への腐食が認められる。
【0042】
【表1】
【0043】
表1に示す結果からも明らかなように、本発明のフラックス組成物を用いた場合(実施例1〜7)には、フラックス詰まり、はんだブリッジ、および銅箔腐食の全てが良好であることが分かった。従って、本発明によれば、はんだ付け性に優れ、かつフラックス詰まりの発生が十分に抑制できることが確認された。