特許第6967134号(P6967134)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967134
(24)【登録日】2021年10月26日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】光学認証方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/10 20060101AFI20211108BHJP
   G06T 7/49 20170101ALI20211108BHJP
   G06T 7/60 20170101ALI20211108BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20211108BHJP
   H04L 9/32 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   G06K19/10
   G06T7/49
   G06T7/60 200C
   G06K7/10 412
   H04L9/00 673D
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-500835(P2020-500835)
(86)(22)【出願日】2018年7月19日
(65)【公表番号】特表2020-528177(P2020-528177A)
(43)【公表日】2020年9月17日
(86)【国際出願番号】FR2018051838
(87)【国際公開番号】WO2019016475
(87)【国際公開日】20190124
【審査請求日】2020年2月25日
(31)【優先権主張番号】1756908
(32)【優先日】2017年7月21日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】520005244
【氏名又は名称】フローラン、ジャン・ジャック
【氏名又は名称原語表記】FLORENT, Jean−Jacques
(73)【特許権者】
【識別番号】520005255
【氏名又は名称】モンジョン、ジャン・ミッシェル
【氏名又は名称原語表記】MONJON, Jean−Michel
(73)【特許権者】
【識別番号】520005266
【氏名又は名称】トー、チン・ホン
【氏名又は名称原語表記】TOH, Chin Hon
(74)【代理人】
【識別番号】100105393
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 直哉
(72)【発明者】
【氏名】フローラン、ジャン・ジャック
【審査官】 梅沢 俊
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/002475(WO,A3)
【文献】 特開平08−087598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/10
G06T 7/49
G06T 7/60
G06K 7/10
H04L 9/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれの対象(135)に付与される識別子(100,100’)を使用して対象を認証する認証方法であって、
認証されるべき対象に識別子を付与するステップ(E20)と、
該対象に付与された該識別子(100,100’)の第1のデジタル画像を生成するステップ(E30)と、
該第1のデジタル画像から第1のデジタルキーを引き出すステップ(E35)と、
該第1のデジタルキーを、複数の第1のデジタルキーを含むデータベース(240)に格納するステップ(E38)と、
その後、該対象に付与された該識別子(100,100’)の第2のデジタル画像を生成するステップ(E50)と、
該第2のデジタル画像から第2のデジタルキーを引き出すステップ(E55)と、
一致を検出するために第2のデジタルキーを該データベースに格納された複数の第1のデジタルキーと比較し、一致の検出に対応して該対象を真正であると識別するステップ(E60)と、を含み、
対象(135)に付与される識別子(100,100’)として、該対象(135)の表面にランダムに分布した同一径のマイクロビード(120)であって、該対象(135)の表面に吹き付けられた固着剤の層(110,110’)に埋め込まれたマイクロビード(120)を使用し、
該第1のデジタル画像から該第1のデジタルキーを引き出すことは、
楕円(440)を規定するために、該第1のデジタル画像におけるマイクロビードのそれぞれの場所に位置する点の分布(430)に楕円回帰を適用するステップ(E360)と、
該分布のそれぞれの点の座標を該楕円(440)に基づく基準座標系で表すことからなる基準座標系の変更を適用するステップ(E380)と、を含む認証方法。
【請求項2】
請求項1に記載の認証方法であって、該第2のデジタル画像から該第2のデジタルキーを引き出すことは、
識別子の画像が、該識別子が形成される表面に垂直な方向に沿って観察するように見えるように識別子の画像を再構成するように、該第2のデジタル画像におけるマイクロビードのそれぞれの場所に位置する点の分布(430)に姿勢修正ステップ(E350)を適用するステップと、
楕円(440)を規定するために、該姿勢修正を受けた該第2のデジタル画像におけるマイクロビードのそれぞれの場所に位置する点の分布(430)に楕円回帰を適用するステップ(E360)と、
該分布のそれぞれの点の座標を該楕円(440)に基づく基準座標系で表すことからなる基準座標系の変更を適用するステップ(E380)と、を含む認証方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の認証方法であっって、マイクロビードの実際の直径を、画像に見られるマイクロビードの平均直径で割った比に等しい倍率を掛けることによって該楕円に基づく該評価座標における該分布の点の座標を規格化するステップを含む認証方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の認証方法であって、該第1のデジタル画像及び/または該第2のデジタル画像において見ることのできるマイクロビードの画像に円形回帰が適用される認証方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の認証方法であって、第1の明度及び/または第1の色相のマイクロビード(120)と、第1の明度及び/または第1の色相とそれぞれ異なる第2の明度及び/または第2の色相のマイクロビードとの両方が使用され、その結果、複数のマイクロビードの少なくとも一部が、デジタル画像からマイクロビードを自動的に識別するのに十分な、該対象(135)の表面との視覚的なコントラストを示す認証方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の認証方法であって、固着剤(185)が、15mm以下の直径の円に内接するように該対象(135)の表面に吹き付けられる認証方法。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の認証方法であって、固着剤(185)が、1.5以上の離心率で、15mm以下の長軸の楕円に内接するように該対象(135)の表面に吹き付けられる認証方法。
【請求項8】
請求項1から5のいずれかに記載の認証方法であって、10から100の範囲の数で、それぞれが20μmから150μmの範囲の直径を有するマイクロビード(120)を含む識別子(100,100’)が使用される認証方法。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載の認証方法であって、該第2のデジタル画像がカメラ(210)及びデータプロセッサユニット(220)を有するスマートホン(200)によって生成され、該第2のデジタルキーが該第2のデジタル画像から、該スマートホン(200)の該データプロセッサユニット(220)及び/または遠隔のデータプロセッサユニットによって引き出される認証方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、偽造物への対抗に関するものであり、対象に付与された識別子によって該対象を識別する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような認証方法は特許文献1から知られている。
【0003】
該認証方法は、(1)識別される各対象に生成されたマーク、特にバブル識別子(bubble identifier)の画像を形成し、(2)該画像に対するデジタルキーを計算し、(3)該画像のデジタルキーを、あらかじめ遠隔のデータベースに格納され、識別される対象を生産するための製造ラインにおいて、あらかじめ定められた条件のもとに生成されるデジタル画像から引き出されるデジタルキーと比較することによって対象を認証する解決方法を提供する。
【0004】
対象のデジタル画像の特性は、画像を生成するのに使用される光学系のタイプ、対象に対する光学系の距離及び角度位置など画像が撮影される条件に当然に依存する。画像から引き出されるデジタルキーはこれらのパラメータに強く依存し、画像自体が画像中に示される対象が撮影される条件を特徴づけることになる。その結果、対象を識別するために同一の対象の二つの異なる画像に対応するデジタルキーを使用することは、大きな問題がある。
【0005】
理想的に、光学認証システムは、ユニークであり、同じ識別子の二つの異なる画像によって変化しないデジタルキーを引き出し、二つの画像が撮影される条件、及び使用される装置が異なり、不明であるにもかかわらず適用することを可能にする必要がある。
【0006】
特許文献2-5は、製品の認証が依存するパターンを生成する要素を含む識別子の画像を解析することに関連する方法を開示しているが、これらの方法は煩雑であるか、複雑な識別子に基づくかのいずれかまたは両方である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2006/042913
【特許文献2】EP 2 849 118
【特許文献3】US 2006/0268259
【特許文献4】EP 1 475 242
【特許文献5】EP 1 873 616
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上記の欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の光学的認証方法は、認証されるべき対象に付与する、非常に簡単な構造の識別子を使用することに基づく。該識別子は、認証されるべき対象の表面にランダムに分布した同一径のマイクロビードを含む。
【0010】
特に、対象を認証するための本発明の認証方法は、それぞれの対象に付与された識別子を使用し、
認証されるべき対象に識別子を付与するステップと、
該対象に付与された該識別子の第1のデジタル画像を生成するステップと、
該第1のデジタル画像から第1のデジタルキーを引き出すステップと、
該第1のデジタルキーを、複数の第1のデジタルキーを含むデータベースに格納するステップと、
その後、該対象に付与された該識別子の第2のデジタル画像を生成するステップと、
該第2のデジタル画像から第2のデジタルキーを引き出すステップと、
一致を検出するために第2のデジタルキーを該データベースに格納された複数の第1のデジタルキーと比較し、一致の検出に対応して該対象を真正であると識別するステップと、を含み、
対象に付与される識別子として、該対象の表面にランダムに分布した同一径のマイクロビードであって、該対象の表面に吹き付けられた固着剤の層に埋め込まれたマイクロビードを使用し、
該第1のデジタル画像から該第1のデジタルキーを引き出すことは、
楕円を規定するために、該第1のデジタル画像におけるマイクロビードのそれぞれの場所に位置する点の分布に楕円回帰を適用するステップと、
該分布のそれぞれの点の座標を該楕円に基づく基準座標系で表すことからなる基準座標系の変更を適用するステップと、を含む。
【0011】
本発明の方法の利点は、画像が撮影される角度及び距離にかかわらず、マイクロビードが円盤または円形に見えるという事実にある。したがって識別子のデジタル画像においてマイクロビードを識別すること、及びマイクロビードが形成するパターンを定めることは簡単である。また、マイクロビードは同一の直径を有するので、画像における見かけの直径を使用して、マイクロビードによって形成されるパターンに特有の基準座標系を確立することによって、該画像と関連する基準座標系におけるマイクロビードの座標とは無関係に、マイクロビードの分布を記述するという目的のために、比較的簡単なデジタル処理を実施すればよい。換言すれば、マイクロビードによって形成されるパターンは、画像が撮影される条件に無関係であることによって特徴づけることもできる。
【0012】
本発明のこのような認証方法は、その上に識別子が付与された対象の認証を確実に識別するのに十分なロバスト性を有し、エンドユーザは、特別の知識やこの目的に専用の装置なしに、この認証を実施することができる。
【0013】
他の手法と異なり、本認証方法には、認証マークに結合したあらかじめ定められた認証コードとの結合が必要ではない。本発明の識別子は、それ自体で十分であり、そのことは使用における柔軟性を高め、識別子の付与及びプロバイダーによる識別サービスの管理からエンドユーザによる使用までの、全応用プロセスを簡素化する。
【0014】
さらに、本方法は対象の大量生産及び使用に適している。たとえば、単に、識別子自体のサイズ及び/またはマイクロビードの数を変化させて本方法を多様な応用に適応させるのは簡単である。
【0015】
本発明の認証方法は、以下の特徴も示してもよい。
【0016】
該第2のデジタル画像から該第2のデジタルキーを引き出すことは、
識別子の画像が、該識別子が形成される表面に垂直な方向に沿って観察するように見えるように識別子の画像を再構成するように、該第2のデジタル画像におけるマイクロビードのそれぞれの場所に位置する点の分布に姿勢修正ステップを適用するステップと、
楕円を規定するために、該姿勢修正を受けた該第2のデジタル画像におけるマイクロビードのそれぞれの場所に位置する点の分布に楕円回帰を適用するステップと、
該分布のそれぞれの点の座標を該楕円に基づく基準座標系で表すことからなる基準座標系の変更を適用するステップ、を含む。
【0017】
本方法は、マイクロビードの実際の直径を、画像に見られるマイクロビードの平均直径で割った比に等しい倍率を掛けることによって該楕円に基づく該評価座標における該分布の点の座標を規格化するステップを含んでもよい。
【0018】
該第1のデジタル画像及び/または該第2のデジタル画像において見ることのできるマイクロビードの画像に円形回帰を適用してもよい。
【0019】
第1の明度及び/または第1の色相のマイクロビードと、第1の明度及び/または第1の色相とそれぞれ異なる第2の明度及び/または第2の色相のマイクロビードとの両方を使用し、その結果、複数のマイクロビードの少なくとも一部が、デジタル画像からマイクロビードを自動的に識別するのに十分な、該対象の表面との視覚的なコントラストを示すようにしてもよい。
【0020】
固着剤を、15mm以下の直径の円に内接するように該対象の表面に吹き付けてもよい。
【0021】
固着剤を、1.5以上の離心率で、15mm以下の長軸の楕円に内接するように該対象の表面に吹き付けてもよい。
【0022】
10から100の範囲の数で、それぞれが20μmから150μmの範囲の直径を有するマイクロビードを含む認証マークを使用することができる。
【0023】
該第2のデジタル画像がカメラ及びデータプロセッサユニットを有するスマートホンによって生成され、該第2のデジタルキーが該第2のデジタル画像から、該スマートホンの該データプロセッサユニット及び/または遠隔のデータプロセッサユニットによって引き出されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】本発明の識別子の平面図を示す。
図1B】本発明の識別子の平面図を示す。
図1C図1Aの識別子の側面図を示す。
図1D図1Aまたは図1Bの識別子によって認証されるべき対象にマークをつけるためのラインを示す。
図2A図1Aまたは図1Bの識別子の認証マークを使用する認証方法を示す。
図2B図1Aまたは図1Bの識別子のデジタル画像の作成を示す。
図3図1Aまたは図1Bの識別子を表す画像のデジタル処理を示す。
図4図3のデジタル処理におけるステップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の認証方法は図2A及び図2Bに示されている。
【0026】
第1のステップE10は認証されるべき対象を提供すること、たとえば、ワインボトルまたは識別ラベルなどの対象を生産する段階からなる。ステップE20の間に、識別子100が対象の表面に付与される。識別子はそれ自体デジタル識別キーを生成するのに使用されるので、識別子と関連した識別コードを提供する必要がないことに留意すべきである。識別子が付与された後に、ステップE30の間に、識別子の第1のデジタル画像が作成され、その後、ステップE35の間に、第1のデジタル画像から第1のデジタルキーが引き出される。このデジタルキーは、ステップE38の間に、複数の第1のデジタルキーを格納するデータベース240に格納される。
【0027】
その後、ステップE40において対象はユーザに搬送される。ユーザは、ステップE50の間に、撮影装置によって識別子の第2のデジタル画像を作成することによって認証方法の一部を実施する。撮影装置は、カメラ210及びデータプロセッサユニット220を有するスマートホン200であってもよい。
【0028】
ステップE55の間に、第2のデジタル画像から第2のデジタルキーが引き出される。一例として、必要な演算動作はスマートホン200のデータプロセッサユニット220によって実施してもよい。
【0029】
ステップE60の間に、一致を検出するために、第2のデジタルキーはデータベース240の1個以上の第1のデジタルキーと比較される。
【0030】
ステップE50、ステップE55、及びステップE60を実施する間に、ユーザはデータベースから離れていてよく、比較の目的で、スマートホン200が、たとえばインターネットなどのデータ交換ネットワークEDを経由して第2のデジタルキーをデータベースへ送ってもよい。代替方法として、第2のデジタル画像をデータベース240へ送るか、及び/または、第2のデジタルキーを引き出すためにデータベース240に接続された遠隔データプロセッサユニット260によってデジタル的に処理してもよい。別の代替方法は、ユーザ側でスマートホン200のデータプロセッサユニット220によって画像の前処理を実施すること、たとえば、ノイズを除去することによって画像をきれいにし、黒及び白に変換し、コントラストを調整し、圧縮し、その後、第2のデジタルキーを生成する動作を完了しデータベース240内の1個以上の第1のデジタルキーと比較するために、前処理した画像を遠隔データプロセッサユニット260へ送ることである。
【0031】
データベースにおいて一致を検出することに応じて、対象が真正な対象であると識別され、認証確認メッセージをスマートホン200へ送ることができる。
【0032】
識別子、識別子の認証すべき対象への付与、及び第1のデジタル画像の作成を図1A図1Dに示す。
【0033】
識別子100は、認証されるべき対象135の表面130に付与される固着剤の層110を有する。層110は、表面130上にランダムに分布した、同一径のマイクロビード120を含む。
【0034】
「同一径」の用語は、意図する応用及び関連する仕様を基準として評価すべきであることに留意すべきである。重要な点はマイクロビードの径及び真球度がデジタルキーを定める方法を実施することを可能にするのに十分に一様であることである。製造者Cosphericのマイクロビード、たとえば、径の90%が45μmから47μmの範囲であり、99%より大きな真球度であることが保証された、ポリメチルメタクリレート、すなわちPMMA製の球を使用することができる。
【0035】
固着剤の層110は、図1Aに示すように円盤を形成してもよい。好ましくは、固着剤の層は、図1Bに示される識別子100’の層110’によって図示されるように、楕円のように細長い形状を有する。層110用の細長い形状は、マイクロビードによって形成される画像に特有の基準座標系を定めるのを容易にし、したがってデジタルキーを定めるのを容易にすることによって認証方法のロバスト性を大幅に高める。
【0036】
図1Dに示すように、識別子100または識別子100’によって認証されるべき対象135に、マイクロビード120を含む重合性液体のような硬化性液体固着剤185の1滴または数滴を、認証されるべき対象135の表面130に吹き付けることによってマークを付ける。
【0037】
マーキングはマーキングライン138において実施される。マーキングラインにおいては、認証されるべき複数の対象135がライン138に沿って方向Dに移動し、ひとつずつ連続的にマークが付けられる。
【0038】
硬化性固着剤185は、中に混合されたマイクロビード120を有する硬化性固着剤185を収納するタンク180に接続され、ノズル170を有するエジェクターシステム160を利用する吹き付けシステム155によって吹き付けられる。
【0039】
一または複数の滴140は、認証されるべき対象135の表面130上に広がり、その中にマイクロビード120がランダムなパターンで分布する液体の薄い膜112を形成する。
【0040】
硬化性固着剤が重合性液体である場合に、重合装置180によって液体の薄い膜112を硬化させ、このようにして固着剤の層110を形成し、ユニークで予測することのできない分布でマイクロビード120の分布を永続的に設定することによって、マーキングが完了する。
【0041】
非対称なノズルを使用するか、吹き付け中に認証されるべき対象に対してノズルを動かすことによって、層110に細長い形を与えることができる。
【0042】
特別ではあるが、非限定的な例は、硬化性固着剤185として感光性樹脂を使用するものである。重合装置180は光源、好ましくは紫外線の光源である。
【0043】
硬化性固着剤185は、塗料またはワニスであってもよく、重合装置180は熱源または赤外線放射源でもよい。生産ラインが減速することや、方法が複雑になることを防止するように固着剤は短い硬化時間を有するのが好ましい。
【0044】
図1Dに示されるように、マーキングライン138は、ラインの出口の、物理的識別特性(100)の第1の画像を作成するための撮影装置190を含む。
【0045】
図1B(110B)に示されるように、細長い固着剤の層を生成することは、以下に詳細に説明するように、識別子に特有な基準座標系を作るのを容易化するのに貢献する。
【0046】
マイクロビードは、透明なもの、不透明なもの、色のついたもの、または色のないものであってもよい。本質的な点は、マイクロビードが置かれる対象の表面に対して良好な視覚的なコントラストを維持することである。「良好な視覚的なコントラスト」という用語は、現在使用可能な自動デジタル画像プロセッサ手段が識別子のデジタル画像においてマイクロビードを円盤または円として識別することができることを意味するのに使用される。
【0047】
視覚的コントラストの問題に対処するために、互いに異なる明度及び/または色相を使用することも可能である。たとえば、黒及び白のパターンを示す表面に、白いマイクロビード及び黒いマイクロビードの両方を組み合わせて使用すれば、複数のマイクロビードの少なくとも一部は、明確に見えることを保証することができる。換言すれば、複数のマイクロビードの少なくとも一部は、それらが置かれる対象の表面に対して、良好な視覚的なコントラストを示す。
【0048】
マイクロビードは、現在使用可能な撮影装置が、十分な解像度でマイクロビードを画像化できること、換言すれば、マイクロビードを円盤または円の形で画像化できるような直径を示してもよい。本発明において、適切なマイクロビードの直径は20μmから150μmの範囲であってよい。
【0049】
固着剤の層は、15mmの直径を有する円、好ましくは10mmの直径を有する円盤、より好ましくは7mmの直径を有する円盤に内接するようにデザインしてもよい。代替として、固着剤の層は、1.5以上の離心率を有し、15mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは7mm以下の長軸を備える楕円に内接させてもよい。固着剤の層は、また透明であってもよい。これらの特性は、単独または組み合わせで、離散的で認証されるべき対象の外観を顕著には劣化させないマーキングを達成するという利点を有する。
【0050】
マイクロビード120の数及びサイズは、マイクロビードを含む層110のサイズの関数として、(1)実際上、識別子におけるマイクロビードのそれぞれの分布がユニークであるように形状の数が十分であるようにすることができ、(2)クラスタ(互いに接触するマイクロビードの集まり)が得られる確率が意図とする応用の制約が与えられた場合に許容できる限界値を下回るようにするという目的に対して、最適化してもよい。3mmを超える長さを有する直線区間に延伸し、15mmの直径を有する円に内接する固着剤層110に対して、認証マークが10から100、好ましくは20から100の範囲の数のマイクロビードを有し、マイクロビードの直径が20μmから150μm、好ましくは30μmから70μmであることは許容できると考えられる。層110に1個以上のクラスタを見出す確率は10%を下回るように維持するのが好ましく、5%を下回るように維持するのがより好ましい。識別子におけるマイクロビードの平均の数は、重合性液体185内に存在するマイクロビード120の濃度を操作することによって調整することができる。
【0051】
第1の画像及び/または第2の画像への応用に適したデジタル処理300を図3及び図4(A)-(D)に示す。デジタルキーを生成することによって終了するこのデジタル処理300は、同一の識別子の異なる画像から同一のデジタルキーを得るという目的を有する。
【0052】
ステップE310で識別子100のデジタル画像が形成された後、ステップE320の間に円形のパターン410(円または円盤)は該画像内で識別される。これらの円形のパターンは識別子100のマイクロビード120に相当し、画像が撮影される距離及び角度にかかわらず円形の形状に見え、容易に識別できる。
【0053】
代替方法として、デジタル画像内の円形パターンを検出する前に、画像内の可視的なコントラストスポットが円形または円盤と対応すると仮定し、識別ステップE320をかなり簡単にできる。この仮定は、マイクロビードクラスタの許容量が小さな場合にはますます現実的である。このアプローチの利点は、画像における円形の形状の探索の必要をなくすことであり、それによって計算の負荷を大幅に制限する。このように、各円形パターンのような、各可視的コントラストスポットをマイクロビードの一つに対応させてもよい。
【0054】
ピクセル化効果に影響されないようにするために、ステップE330の間に、ステップE320の間に識別された円形パターンのそれぞれに円形回帰(a circular regression)を適用することができる。そうすると、当初識別された円形パターン210またはコントラストスポットを計算された円形パターン420に置き換えることができる。この円形回帰を適用すると、特に、ステップE350の姿勢修正において、後続の計算が容易になり、その精度がかなり向上する。
【0055】
円形パターンまたはコントラストスポットまたは計算された円形パターンの直径及び/または中心の位置はステップE340の間に定められ、該デジタル画像に特有な基準座標系で表現してもよい。中心の位置は、点の分布430を形成する点に相当する。デジタルキーの生成は、この点の分布430に基づいており、点のそれぞれは、識別子のデジタル画像におけるマイクロビードのうちの1個の画像の中心に位置する。マイクロビード、好ましくはその中心の画像と同様な方法で分布した点の分布が定められる限り、上述の方法と異なる方法も適用できることに留意すべきである。
【0056】
デジタル処理は、撮影装置の向きがデジタル画像に対して有することが考えられる影響を修正するための姿勢修正ステップE350を含んでもよい。識別子の画像が、識別子が形成される表面に垂直な方向に沿って観察するように見えるように識別子の画像を再構成するように機能するこの修正は、マイクロビードの実際の直径がわかれば可能となる。このステップは、不変なデジタルキーを形成するには大きすぎる量、識別子が形成される表面に垂直な方向から離れた方向に沿って観察しながら得られた識別子のデジタル画像を修正するのに有用である。
【0057】
修正は、デジタル画像を生成するのに使用される撮影装置の写真センサの、該装置の第1の軸及び第1の軸に垂直な第2の軸を基準とした、第1及び第2の姿勢の差にそれぞれ対応する二つの角度θ及びφを定めることを含む。θと記載される第1の角度は以下のように定めてもよい。センサの第1及び第2の軸は、撮影装置によって得られたデジタル画像の2個の垂直な辺に対応してもよい。
【0058】
写真センサと認証マークとの間の距離をDと記載し、撮像装置の焦点距離をfと記載する。画像におけるマイクロビードの直径
【数1】
は倍率に実際のマイクロビードの直径
【数2】
を掛けた積である。すなわち、
【数3】
【0059】
撮影装置の像平面において、マイクロビードkの直径は以下のように記載される。
【数4】
【0060】
ここでlはマイクロビードkから第1の軸までの距離である。
【0061】
小さな角度θに対してこの関係は以下のように簡素化できる。
【数5】
この関係は、対の座標
【数6】
を有する点のクラウドに適用された線形回帰によってθを定めることを可能にする。その後、分布の点は、公知の方法を使用して対応する軸の周りに角度θ回転させる。同じ原理で、φが定められ、分布の点に角度φによる回転が適用される。これらの二つの回転の後に、すべてのマイクロビードは、画像において同一の見かけ外径を有するはずである。
【0062】
ステップE360、E370及びE380の目的は、分布430に特有な基準座標系を生成することである。これを実施するために、ステップE360において、分布の点に対して、姿勢修正を受けたかどうかにかかわらず、楕円回帰(an elliptical regression)が適用され、このようにして該分布の点の集合に最も適合する楕円440を規定する。
【0063】
図4(A)に示すように、固着剤の一般に細長い層110’内の点集合の分布は、基準座標系の生成に有利ではあるが、図1Aに示すように、一般に円形の層110を使用することも依然として可能であることに留意すべきである。
【0064】
ステップE370は、当初のデジタル画像の基準座標系において楕円の中心、その長軸、その短軸及び長軸の角度を定めることからなる。楕円の中心、その長軸、その短軸は、それぞれ、点の分布に特有な新たな基準座標系の中心、横軸、縦軸を規定するように機能する。
【0065】
分布のそれぞれの点の座標は、ステップE380の間に、基準座標系を変更するために楕円440に基づく基準座標系において表される。基準座標系のこの変更の後に、分布の点は、該分布自身に結合し、このステップ以前に当てはまるようにデジタル画像に結合してはいない基準座標系において表される。
【0066】
ステップE390は、マイクロビードの実際の直径を、画像において計算された円形の形状の平均直径、すなわち、画像に見られるマイクロビードの平均直径で割った比に等しい倍率を掛けることによって分布の点の座標を規格化することからなる。
【0067】
このステップは、画像を生成するのに使用される光学装置の画角、及び/または画像を取得する間の光学装置の中心と認証マークとの間の距離に無関係にデジタルキーを生成し、このようにして不変なデジタルキーを生成するのを容易にする。
【0068】
上述のように認証マーク100の画像を使用し、ステップE320からE390のデジタル処理の後に、デジタルキーを生成するためのステップE395の間に撮像条件に無関係なデジタルキーを生成することができる。
【0069】
各々の場合に上述のデジタル処理ステップのすべてを適用する必要がないことに留意すべきである。たとえば、姿勢修正ステップE350は、特に、撮像角度に関して、良く制御されていない条件下で認証マークの手持ちカメラで撮った画像を生成するユーザの状況に適用される。そのような環境下では姿勢修正が必要であることが見込まれる。対照的に、工場の条件下では、撮像装置の向きは制御することができるので、姿勢修正ステップは不必要である。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4