(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967162
(24)【登録日】2021年10月26日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】鉄道車両用駆動装置、この艤装方法、当該駆動装置を搭載する鉄道車両、およびこの生産方法
(51)【国際特許分類】
B60L 9/18 20060101AFI20211108BHJP
B61C 17/12 20060101ALI20211108BHJP
B61C 17/00 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
B60L9/18 L
B61C17/12 A
B61C17/00 Z
【請求項の数】24
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2020-549362(P2020-549362)
(86)(22)【出願日】2019年9月26日
(86)【国際出願番号】JP2019037896
(87)【国際公開番号】WO2020067304
(87)【国際公開日】20200402
【審査請求日】2020年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2018-181298(P2018-181298)
(32)【優先日】2018年9月27日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2019-45421(P2019-45421)
(32)【優先日】2019年3月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 勝美
(72)【発明者】
【氏名】秋山 悟
(72)【発明者】
【氏名】成木 航
(72)【発明者】
【氏名】塚本 乾
(72)【発明者】
【氏名】小暮 浩史
【審査官】
橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭58−069405(JP,A)
【文献】
国際公開第2017/208384(WO,A1)
【文献】
特開平10−290570(JP,A)
【文献】
特開昭61−026401(JP,A)
【文献】
特開平06−351105(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00−3/12
7/00−13/00
15/00−58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両用駆動装置の構成部品として、
直流架線から鉄道車両に供給される直流電流を遮断する断流器と、
スイッチ素子とダイオードとを内蔵する半導体パワーモジュールおよび抵抗器から構成され、前記断流器に直列に接続された半導体減流器と、
前記半導体減流器を介して供給される直流電力を三相交流電力に変換するパワーユニットおよびフィルタコンデンサから構成されたインバータ装置と、
前記半導体減流器と前記フィルタコンデンサとの間に接続され、インダクタンス値が4mH以下であるフィルタリアクトルとを備え、
前記構成部品全てを含む主回路が前記鉄道車両に搭載される同一の筐体に収容される
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項2】
請求項1に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記フィルタリアクトルのインダクタンス値は、3mH以下である
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記インバータ装置は、前記フィルタリアクトルと前記フィルタコンデンサとの間に過電圧防止回路を有する
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記フィルタリアクトルが、前記筐体の長手方向の中心に配置され、
前記パワーユニットが、前記同一の筐体内で車両進行方向に対向するいずれかの側面に配置される
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項5】
請求項1から3のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記フィルタリアクトルと前記パワーユニットとが、前記同一の筐体内で車両進行方向に対向する側面それぞれに配置される
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項6】
請求項5に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記フィルタリアクトルと前記パワーユニットとが、前記同一の筐体内で車両進行方向に対向する側面それぞれの対角位置に配置される
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記フィルタリアクトルが配置される前記側面に、前記断流器、前記半導体減流器および前記フィルタリアクトルが前記直流架線から接続された順に配置される
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項8】
請求項1または2を引用する請求項5および当該請求項5を引用する請求項6のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記パワーユニットが配置される前記側面に、前記断流器を挟んで前記パワーユニットおよび前記半導体減流器が配置される
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項9】
請求項5から8のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記筐体は、前記鉄道車両の枕木方向の中央付近に開口部を有する
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項10】
請求項4から9のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記パワーユニットは、当該パワーユニットが配置される前記側面に配置され、当該側面から外部へ突出させた冷却器を備える
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項11】
請求項4から10のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記半導体減流器は、当該半導体減流器が配置される前記側面に配置され、当該側面から外部へ突出させた冷却器を備える
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記筐体は、自らの長手方向を前記鉄道車両の枕木方向とする直方体である
こと特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記筐体の長手方向の寸法が、前記鉄道車両が走行する軌道の線路幅以上である
こと特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記フィルタリアクトルは、1次巻線と2次巻線とを有するアクティブフィルタから構成され、前記2次巻線に帰線電流ノイズの逆相電流を注入する制御回路を接続する
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記インバータ装置は、複数の前記パワーユニットを備え、
前記複数のパワーユニットそれぞれが、電動機を駆動する
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記筐体は、自らの長手方向の対向する面それぞれに当該筐体の内部と外部とをつなぐ配線を通過もしくは接続する手段を有する
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項17】
請求項5、6、7および請求項5から7のいずれか1項を引用する請求項9、10、11、14のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置であって、
前記フィルタリアクトルおよび前記パワーユニットを複数個備え、
前記筐体は、車両進行方向を長手方向とし、
前記複数個のフィルタリアクトルと前記複数個のパワーユニットとは、前記対向する側面それぞれに前記断流器および前記半導体減流器を挟む形態で配置される
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置。
【請求項18】
請求項1から17のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置を自らの床下に搭載した鉄道車両。
【請求項19】
請求項1から17のいずれか1項に記載の鉄道車両用駆動装置を自らの屋根上に搭載した鉄道車両。
【請求項20】
請求項18または19に記載の鉄道車両であって、
前記鉄道車両用駆動装置は更に補助電源装置を備え、
前記筐体と前記補助電源装置とが同一車両に配置される
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項21】
鉄道車両用駆動装置の構成部品である、直流架線から鉄道車両に供給される直流電流を遮断する断流器と、スイッチ素子とダイオードとを内蔵する半導体パワーモジュールおよび抵抗器から構成され、前記断流器に直列に接続された半導体減流器と、前記半導体減流器を介して供給される直流電力を三相交流電力に変換するパワーユニットおよびフィルタコンデンサから構成されたインバータ装置と、前記半導体減流器と前記フィルタコンデンサとの間に接続され、インダクタンス値が4mH以下であるフィルタリアクトルとを、同一の筐体に所定のレイアウトで配置することにより収容し、前記構成部品全てを含む主回路が収容された当該筐体を前記鉄道車両の床下または屋根上に搭載し、配線して前記主回路の艤装を完了させる
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置の艤装方法。
【請求項22】
請求項21に記載の鉄道車両用駆動装置の艤装方法であって、
前記所定のレイアウトは、前記フィルタリアクトルを前記筐体の長手方向の中心に配置し、前記半導体減流器および前記インバータ装置を前記筐体の長手方向の端部に配置する
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置の艤装方法。
【請求項23】
請求項21に記載の鉄道車両用駆動装置の艤装方法であって、
前記所定のレイアウトは、前記断流器、前記半導体減流器および前記フィルタリアクトルを前記同一の筐体の車両進行方向の第1の側面に前記直流架線から接続された順に配置し、前記パワーユニットを前記第1の側面に対向する第2の側面に配置する
ことを特徴とする鉄道車両用駆動装置の艤装方法。
【請求項24】
鉄道車両用駆動装置の構成部品である、直流架線から鉄道車両に供給される直流電流を遮断する断流器と、スイッチ素子とダイオードとを内蔵する半導体パワーモジュールおよび抵抗器から構成され、前記断流器に直列に接続された半導体減流器と、前記半導体減流器を介して供給される直流電力を三相交流電力に変換するパワーユニットおよびフィルタコンデンサから構成されたインバータ装置と、前記半導体減流器と前記フィルタコンデンサとの間に接続され、インダクタンス値が4mH以下であるフィルタリアクトルとを、同一の筐体に収容した鉄道車両用駆動装置を、前記鉄道車両の床下または屋根上に搭載し、配線して前記鉄道車両の主回路系の艤装を完了させることを特徴とする鉄道車両の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断流器、減流器およびインバータ装置を有する鉄道車両用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4は、従来の鉄道車両用駆動装置の構成の一例を示す図である。
従来の鉄道車両用駆動装置としては、高速度遮断器(HB)15、断流器(LB1、LB2)7およびフィルタリアクトル(FL)5が直列接続され、フィルタコンデンサ(FC)6を内蔵したインバータ装置(INV)4を用いて、4個のモータ(IM1〜IM4)16を駆動する1C4M制御方式が主流である。架線からの電力供給経路については、直流1500Vの架線から、パンタグラフ13、主フューズ(MF)14を介して、架線電圧と主回路を電気的に切り離すための主スイッチ(MS)8、およびアース側と主回路を電気的に切り離すための接地スイッチ(GS)9が配置されている。また、過電圧放電用素子(OVTr)、放電抵抗(OVRe)および電圧計(DCPT2)を有する過電圧防止回路(OVT)3を備え、さらに、電圧計(DCPT1)11、放電抵抗(DCHRe)12および放電用スイッチ(DS)10を備えている。従来の鉄道車両用駆動装置では、高速度遮断器(HB)15、フィルタリアクトル(FL)5およびインバータ装置(INV)4と断流器(LB1、LB2)7とを含む主回路部1は、それぞれ別箱とする構成としていた(図中では、それぞれの箱を破線の枠で示す)。
【0003】
また、
図5は、従来の鉄道車両搭載機器の床下配置の一例を示す図である。
図5に示すように、車両床下には、上記の箱以外にも、INTEROS箱(鉄道車輌の制御伝送・モニタリング装置用箱)21、断路器箱22、SIV断流器箱23、母線遮断器箱24、ブレーキ制御装置25、供給空気タンク26、滑走防止弁装置27および直通予備ブレーキ装置28が設置されている。
【0004】
なお、特許文献1(特開2001−37004号公報)には、架線電圧の低い時でも、高速時の回生ブレーキ性能の向上を図り、インバータ相短絡時等の架線過電流保護に好適なインバータ式電気車制御装置を提供するために、架線から電力が供給されるパンタグラフと、断流器と、高速度遮断器と、抵抗に並列接続された半導体スイッチと、リアクトル及びコンデンサからなるフィルタ装置と、インバータ装置と、電動機を備えるインバータ式電気車であって、回生ブレーキ時に、前記抵抗の端子電圧が電動機電圧と架線電圧との差電圧となるように半導体スイッチをオンオフ制御する手段を設けたものが開示されている。
【0005】
また、特許文献2(特開2007−261367号公報)には、艤装時の工数削減を実現する手段として、各機器をあらかじめキャビネットに予備艤装しておき、各機器とキャビネットの複合体を一括して艤装する手法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−37004号公報
【特許文献2】特開2007−261367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明者が、鉄道車両用駆動装置全体の体積や質量の小型化、且つ鉄道車輌生産時の低コスト化について鋭意検討した結果、次の知見を得るに至った。
【0008】
従来の鉄道車両用駆動装置は、架線過電流の保護に好適な構成が示されている。例えばインバータ装置(INV)4内のパワーユニット(PU)の素子(4A、4Bおよび4C)のいずれか1相が故障してアーム短絡が発生した場合、直流電源(直流架線)から突入電流が流れるため、この突入電流の上昇率が大きくなり、車載の高速度遮断器(HB)15の開極時間が遅れる(機械的な遮断器の場合、通常10ms程度)。それにより、短絡電流が急峻に増加して、図示しない直流変電所の高速度遮断器(HB)が遮断動作してしまう可能性があるため、先に示した従来の鉄道車両用駆動装置のフィルタリアクトル(FL)5のインダクタンス値は、8mH程度と大きな値を用いている。しかし、これに伴って、このフィルタリアクトル(FL)5の質量は、一例として500kg程度と非常に重く、大きな体積を占めることになる。
【0009】
仮にフィルタリアクトル(FL)のインダクタンス値を例えば1/4の2mHに小さくした場合、パワーユニットのいずれか1相で短絡が発生した時の短絡電流の上昇率は、1500V/2mH=750A/msとなり、高速度遮断器(HB)の開極遅れを10msとすると、短絡電流は車載用の高速度遮断器(HB)が開極するまでの間に7500Aに達する。直流変電所の高速度遮断器(HB)の過電流遮断のセット値は、変電所の容量によって異なるが通常5000Aから10000A程度である。そのため、上記の短絡電流は、直流変電所の高速度遮断器(HB)を動作させてしまう可能性がある。
【0010】
また、先に記載したとおり、従来の鉄道車両用駆動装置は、主要機器(高速度遮断器(HB)15、フィルタリアクトル(FL)5およびインバータ装置(INV)と断流器(LB)とを含む主回路部1をそれぞれ別箱として構成しており、鉄道車両用駆動装置全体の体積や質量は大きくなる。また、
図5に矢印付き実線で示すように、上記の主要機器(1、5および15)に対する車両床下の配線が多くなり、鉄道車両の艤装工数も多くなっているのが実状である。
【0011】
特許文献1では、インバータの相短絡時や架線接地時には、半導体スイッチをオフして抵抗を挿入し、架線に生ずる過電流を速やかに減流させるので、高速度遮断器(HB)や断流器(LB1、LB2)等の大電流遮断を抑制することができる。しかし、鉄道車両用駆動装置全体の体積や質量の小型化や、鉄道車輌生産時の低コスト化には至っていない。
【0012】
さらに、鉄道車両の製造において、搭載する機器を車両の床下に艤装するに当たり、車両の走行安定性の観点から、軸重バランスつまり車輪毎にかかる荷重を均等に保つ必要がある。この実現のためには、各機器の重量および重心位置を考慮した艤装位置の決定が必要である。しかしながら、各機器の重心は必ずしもこれを収納する箱の中心に一致しておらず、箱の数が多いことから、箱どうしの相対的な位置関係について考慮すべきパラメータが多く、艤装位置の決定が困難であるという問題があった。加えて、搭載する機器箱の数が多いことから、各機器の車体への艤装および機器間の配線接続の工数が多いという問題があった。
【0013】
特許文献2に記載の手法においても、機器箱を車体に艤装する工数の削減には効果があるものの、機器箱の数は変わらないため、機器間配線の本数および接続点に使用する端子台等の数を低減する効果はない。加えて、キャビネット自体の体積と質量が加わることになるため、車体重量の増加による走行時の消費電力増加を招き、床下スペースの利用可能面積を減少させるという問題があった。
【0014】
本発明の目的は、従来どおりに架線過電流に対する保護機能を維持したまま、鉄道車両用駆動装置全体の体積や質量の小型化を図り、且つ鉄道車両生産時の全体コストを低減することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係る鉄道車両用駆動装置は、直流架線から鉄道車両に供給される直流電流を遮断する断流器と、断流器に直列に接続する減流器と、減流器を介して供給する直流電力を三相交流電力に変換するパワーユニットおよびフィルタコンデンサから構成するインバータ装置と、減流器とフィルタコンデンサとの間に接続するフィルタリアクトルとを備え、これら構成部品全てが同一の筐体に収容され、一体となって鉄道車両に搭載される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、減流器により過電流が従来の機械式HBに比べて速やかに減流されるため、電流の上昇率抑制のために大型化せざるを得なかったフィルタリアクトルを小型化でき、これにより減流器からインバータ装置までの主回路を同一の筐体に収容できるようになり、さらにこれにより鉄道車両の床下に筐体を設置して配線すれば主回路系の艤装が完了する。これにより、車両床下の配線数を大幅に削減することができ、鉄道車両生産時の艤装工数も大幅に削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例1に係る鉄道車両用駆動装置の構成の一例を示す図である。
【
図2】
図1の本発明に係る鉄道車両用駆動装置の内で主要な機器を、直方体から成る同一の箱に収容して一体箱とした場合の配置例を上面から見た図である。
【
図3】
図2に示す一体箱を搭載した鉄道車両の床下配置を示す図である。
【
図4】従来の鉄道車両用駆動装置の構成の一例を示す図である。
【
図5】従来の鉄道車両搭載機器の床下配置の一例を示す図である。
【
図6】本発明の実施例2に係る鉄道車両用駆動装置の構成の一例を示す図である。
【
図7】本発明の実施例3に係る鉄道車両用駆動装置の構成の一例を示す図である。
【
図8】本発明の実施例4に係る鉄道車両用駆動装置の構成の一例を示す図である。
【
図9】本発明の実施例5に係る鉄道車両用駆動装置の構成の一例を示す図である。
【
図10】
図9に示す鉄道車両用駆動装置の機器レイアウトを上面から見た図である。
【
図11】
図10に示す一体箱を搭載した鉄道車両の床下艤装配置の一例を示す図である。
【
図12】実施例1に係る一体箱を搭載した鉄道車両の床下艤装配置を
図10に示す機器レイアウトに倣ったレイアウトとした図である。
【
図13】本発明の実施例6に係る鉄道車両用駆動装置の構成の一例として示す主回路つなぎ図である。
【
図14】実施例6に係る一体箱の箱内レイアウトの一例を示す図である。
【
図15】本発明の実施例7に係る一体箱の箱内レイアウトの一例を示す図である。
【
図16】本発明の実施例8に係る床下艤装配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明を実施するための形態として、実施例1〜8について、図を用いて説明する。
以下の実施例においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは細部に分割して説明するが、特に明示した場合を除き、それらは互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細および補足説明等の関係にある。また、以下の実施例において、要素の数等(個数、数値、量および範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定した数に限定される場合等を除き、その特定した数に限定されるものではなく、特定した数以上でも以下でもよい。
【0019】
さらに、以下の実施例において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須の要件となるものではない。同様に、以下の実施例において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数値および範囲についても同様である。
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明の実施例1に係る鉄道車両用駆動装置の構成の一例を示す図である。
図4に示す従来の鉄道車両用駆動装置の構成と同様の機器については、説明を省略し、異なる機器についてのみ記すこととする。
【0021】
先ず、従来の高速度遮断器(HB)15に代えて、例えばインバータパワーユニットPUで事故電流が発生したときにその事故電流を減流する半導体減流器(SHB)2を備え、断流器(LB1、LB2)7により、減流電流を断流するか、インバータが動作不良となった場合に主回路を開放する。なお、半導体減流器(SHB)2は、減流用素子SHBTr1、減流抵抗DRe、フィルタコンデンサ(FC)充電用素子SHBTr2、充電抵抗CHReから構成される。
【0022】
図2は、
図1の本発明に係る鉄道車両用駆動装置の内で主要な機器を、直方体から成る同一の箱(図中の破線による枠囲み)である筐体に収容して一体箱とした場合の配置例を上面から見た図である(以下では、この同一の箱を「一体箱」という)。この直方体の長手方向は、図示のように鉄道車両の短手方向(枕木方向)である。
【0023】
収容する機器としては、断流器(LB)7、半導体減流器(SHB)2、フィルタリアクトル(FL)5、過電圧防止回路(OVT)3とフィルタコンデンサ(FC)6を含むパワーユニット(PU)4とから成るインバータ装置(INV)、主スイッチ(MS)8、接地スイッチ(GS)9、および、以下は
図1に図示はないが、インバータ装置(INV)や半導体減流器(SHB)2の動作を制御するための論理部100である。また、外部へ突出させる形で、パワーユニット(PU)4の外面側に設けた冷却器400および半導体減流器(SHB)2の外面側に設けた冷却器200を備えている。
【0024】
ここで、フィルタリアクトル(FL、以下「FL」と略す場合がある)は駆動システムを構成する主要な重量物であり、一般的な直流電車に搭載されているFLのインダクタンス値は、一例として8mH程度である。FLのインダクタンス値の低減はFLの重量および寸法の削減に効果的であり、FLが小型軽量化することで駆動システムの筐体内にFLを取り込む等の設計が容易になる。
【0025】
しかしながら、FLが駆動システムで果たすべき電気的な機能の要求から、インダクタンス値の低減には限界がある。この下限を決定するFLの主要な機能は、過電流事故発生時の電流増加速度(時間傾き)の抑制と、架線から駆動システムに入り帰線に至るまでの電流経路に流れる帰線電流ノイズの通過抑制である。
【0026】
よって、前記2点の機能をFL以外の機器で補助し、必要な機能スペックを満たすことができれば、FLの低インダクタンス化が可能である。この手段の例として、過電流事故時の対策については半導体減流器(SHB)の適用による高速度電流遮断、帰線電流ノイズ対策についてはアクティブフィルタ(AF)の適用によるノイズの削減が挙げられる。
【0027】
これら前記の手段によりFLの低インダクタンス化が可能となるが、インダクタンス低下分をFL以外の機器で補うことになる。このためインダクタンスを低減するほど、半導体減流器(SHB)とアクティブフィルタ(AF)に高い性能が必要となる。ゆえにシステム全体としての最適点が全体の質量・サイズ・コスト等の観点から、FLのインダクタンス低減には、最適点が存在する。
【0028】
ここで、FLのインダクタンスを従来の半分である4mH程度以下にすると、SHBおよびAFを組み合わせたシステムとしてメリットが生じると考えられる。さらに、FLのインダクタンスを3mH程度以下にすると、FLの質量を従来の半分程度にまで低減することができ、一体箱内の重量バランスを取り易くなることから、FLの配置位置の自由度も上がることになる。
【0029】
この点を踏まえれば、最適点の一例として、2mHが挙げられる。ただし、FLの下限値については、架線から帰線までの交流インピーダンス低下に対する許容範囲や、FLのインダクタンス低下に対応して大きくなるフィルタコンデンサ(FC)の許容範囲などの諸条件のトレードオフで決まることになるので、明確に定めることは困難であるが、現在の技術水準を考慮すれば1mH程度と推量される。
【0030】
ここで、半導体減流器(SHB)2の採用により、フィルタリアクトル(FL)5は、例えば2mHと小型で軽量化したが、内蔵部品の中では最も大きい重量物であり、一体箱1の長手方向の中心に配置する。中心に配置することで、一体箱1の重心と中心とを一致させることが容易で、一体箱1の取付け時に扱いやすい。また、半導体減流器(SHB)2およびパワーユニット(PU)4と過電圧防止回路(OVT)3とを有するインバータ装置(INV)は、構成部品として半導体素子を用いていることから、外側からの走行風による冷却効果を期待し冷却し易い環境として、一体箱1の長手方向の端部に配置する。
【0031】
以上のとおり、収容機器の一体箱化により、鉄道車両用駆動装置全体の体積や質量の小型化を実現するものである。
【0032】
図3は、
図2に示す一体箱を搭載した鉄道車両の床下配置を示す図である。
鉄道車両に搭載した一体箱1は、前記のとおり、フィルタリアクトル(FL)を中心に配置しているため(
図3では、フィルタリアクトル(FL)はアクティブフィルタ(AF)に含まれる形で示している)、枕木方向に対して、左右の重量バランスが保たれることになる。また、一体箱1の長手方向の寸法が、線路幅の例えば1067mm以上あれば、一体箱1に搭載される半導体減流器(SHB)およびインバータ装置(INV)を構成する半導体素子は、外側からの走行風による冷却効果が得られることになる。これにより、半導体素子の定格を小さくし、冷却系の小型化が可能になる。
【0033】
また、
図2および
図3に示すように、一体箱1の長手方向の対向する面に、配線ダクト600を設置している。そのため、架線から引き込む配線を1箇所入れればよく、車両床下の配線数を大幅に削減することができる。また、鉄道車両の艤装工数も大幅に削減することができる。
【0034】
さらに、一体箱の外部と内部とを電気的に接続するインタフェースとしては、上記の配線ダクトに限らず、例えば、クリート方式やコネクタ接続を用いて構成してもよい。
【実施例2】
【0035】
図6は、本発明の実施例2に係る鉄道車両用駆動装置の構成の一例を示す図である。
図1に示す実施例1と異なる点は、フィルタリアクトル(FL)5に替えて、アクティブフィルタ(AF)51を用いている点である。フィルタリアクトル(FL)5を低インダクタンス化して例えば2mH程度にすると、信号機器に影響を与える帰線電流ノイズの増加が懸念される。これを防ぐために、フィルタリアクトル(FL1)を一次巻線とし、この一次巻線であるフィルタリアクトル(FL1)に磁気結合した二次巻線(FL2)を追加したアクティブフィルタ(AF)51を構成し、二次巻線(FL2)を介して直流ステージに帰線電流ノイズの逆相電流を注入する。
【0036】
また、アクティブフィルタ(AF)51の二次巻線(FL2)には、帰線電流をモニターし、帰線電流ノイズの逆相電流を注入するアクティブフィルタ制御装置(
図2に一点鎖線で示す、アクティブフィルタ制御装置500)が接続される。
【0037】
実施例1に加えて、フィルタリアクトル(FL)5を、アクティブフィルタ(AF)51にして、アクティブフィルタ制御装置500を付加することで、鉄道車両用駆動装置全体の体積や質量の低減に加え、鉄道システムの信号機器に与える影響も低減することが可能となる。
【実施例3】
【0038】
図7は、本発明の実施例3に係る鉄道車両用駆動装置の構成の一例を示す図である。
図1に示す実施例1と異なる点は、一つのパワーユニット(PU)4で制御するモータ(IM)16を2台とした点(1C2M)である。2組のモータ(IM)群に対して、それぞれにパワーユニット(PU)4を配置接続するため、モータ(IM)16をより精度よく制御できる利点がある。
【0039】
また、実施例3では、パワーユニット(PU)4以外のフィルタコンデンサ(FC)6や過電圧放電用素子OVTr等を含む過電圧防止回路(OVT)の構成部材は、パワーユニット(PU)1群(PU1)と2群(PU2)で共通利用する。このように、いわゆる1C2M制御の一部回路部品を共通利用とすることで、インバータ全体の部材コストの増加を抑えることが可能となる。
【実施例4】
【0040】
図8は、本発明の実施例4に係る鉄道車両用駆動装置の構成の一例を示す図である。
図1に示す実施例1と異なる点は、半導体減流器(SHB)2を構成する回路構成が異なる点である。半導体減流器(SHB)2を構成する減流抵抗(DRe)と充電抵抗(CHRe)とを、実施例4では並列接続としている。この構成の利点は、減流電流が流れる経路が減流抵抗(DRe)と充電抵抗(CHRe)との二つの経路となるため、減流時に抵抗体から発生する発熱量を、二つの抵抗(DReとCHRe)で消費することができるため、減流抵抗(DRe)の定格もしくは本数を削減できることにある。実施例1では減流電流を減流抵抗(DRe)のみで消費する必要があるため、実施例4に比べて、減流抵抗(DRe)の抵抗体質量を大きく取らなければならない。このように、
図8に示す半導体減流器(SHB)2を構成する減流抵抗(DRe)と充電抵抗(CHRe)とを並列接続することで、半導体減流器(SHB)2の低コスト化が可能となる。
【実施例5】
【0041】
図9は、本発明の実施例5に係る鉄道車両用駆動装置の構成の一例を示す図である。直流架線からパンタグラフ(PAN)13により得た直流電力は、高速度遮断器(HB)14、断流器(LB1、LB2)7、フィルタリアクトル(FL)5、パワーユニット(PU)4(フィルタコンデンサFC6を含むインバータ装置INV)の順に伝達される。
図10は、
図9に示す鉄道車両用駆動装置の機器レイアウトを上面から見た図である。直方体から成る同一の箱に、主要な機器を収納して一体箱とした場合の箱内の機器レイアウトである。
【0042】
図10に示す箱内の機器レイアウトは、
図5に示す従来の既存構成では、それぞれ独立した箱体に収めていた高速度遮断器(HB)15およびフィルタリアクトル(FL)5を、断流器(LB)7、直流電力をモータ駆動に必要な三相交流電力に変換するための電力変換装置を構成するパワーユニット(PU)4(フィルタコンデンサ6を内蔵)、制御論理部100およびその他の機器を含む同一筐体内に取り込み収納した一体箱の構成としている。一体箱1の長辺方向は、枕木方向である。
【0043】
一体箱1に含まれる機器のうち主要な重量物は、パワーユニット(PU)4とフィルタリアクトル(FL)5であり、これらの箱内配置が一体箱1の重心位置を決定する上において支配的である。
【0044】
ここで、車体に艤装する機器箱の重心は、床下艤装品の車両進行方向および枕木方向の重量バランスをとるため、一体箱1の中心と一致していることが望ましい。
図1に示すとおり、パワーユニット(PU)4とフィルタリアクトル(FL)5を対向する側面、好ましくは対角の位置、に配置することにより、一体箱の重心を一体箱の中心位置と容易に一致させることができる。
【0045】
パワーユニット(PU)4とフィルタリアクトル(FL)5以外の個別機器の箱内配置については、主回路配線の接続順に各機器が並んでいることが、箱内配線を簡素化する観点から望ましい。すなわち、一体箱1の一方の側面に、高速度遮断器(HB)14、断流器(LB)7およびフィルタリアクトル(FL)5の順に配置し、対向する側面に、パワーユニット(PU)4を配置することで、主回路配線を箱内で交差することなく配線することができる。
【0046】
また、一体箱1の中央部には、少なくとも1箇所以上の開口部(
図1では、2箇所)を設けている。この開口部は、一体箱の内部に搭載した機器類のメンテナンスを行うなどのために設置するものである。開口部の設置については、以降の各実施例においても同様である。
【0047】
図11は、
図10に示す一体箱1を搭載した鉄道車両の床下艤装配置の一例を示す図である。床下に搭載する機器としては、主回路を構成する一体箱1、制御伝送・モニタ箱21、断路器箱22、SIV断流器箱23、母線遮断器箱24、ブレーキ制御装置25、空気供給タンク26、滑走防止弁装置27および直通予備ブレーキ装置28等である。
図3のように、重心がほぼ中心にある一体箱1を艤装することで、車両の重量バランス設計が容易となり、艤装の検討および床下艤装の工数を削減することができる。
【0048】
図12は、実施例1に係る一体箱1を搭載した場合の鉄道車両の床下艤装配置を
図10に示す機器レイアウトに倣ったレイアウトとした図である。
フィルタリアクトル(FL)5とパワーユニット(PU)4とは、箱内で対角配置としている。半導体減流器(SHB)2は発熱体であるため、冷却器201が必要である。半導体減流器(SHB)2とパワーユニット(PU)4とを対向した位置に配置することで、一方の冷却器で温度上昇した空気が他方の冷却器に当たることはなく、互いの発熱の影響を受けずに冷却を行うことができる。
【0049】
以上のように配置することで、実施例5に比べて小型軽量かつ省エネルギーの駆動システムを提供することができる。
【実施例6】
【0050】
本発明の実施例6は、インバータ装置2群分を一体箱に収めた場合の実施形態である。
図13は、実施例6に係る鉄道車両用駆動装置の構成の一例として示す主回路ツナギ図である。2群分の構成に伴い、主回路の各機器が2重の構成になる。
【0051】
パンタグラフ(PAN)13からの直流電力を各群に分岐する位置としては複数考えられるが、
図13は、片群の故障時にも対応可能なように、断流器(LB1、LB2)7のパンタグラフ(PAN)側で分岐し、各群に直流電力の供給を行う例を示している。
【0052】
図14は、実施例6に係る一体箱の箱内レイアウトの一例を示す図である。パワーユニット(PU1、PU2)4、フィルタリアクトル(FL1、FL2)5および断流器(1GLB、2GLB)7は、それぞれの群に個別に存在し、一体箱内には2台ずつ配置している。
【0053】
特に、枕木方向の車両限界が比較的狭い、例えば地下鉄等への適用を考慮すると、枕木方向の寸法を縮小するために、パワーユニット(PU1、PU2)4は、一方の側面に集約して配置することが望ましい。
【0054】
また、冷却器の寸法については、それぞれの発熱量を考慮すると、半導体減流器(SHB)2の冷却器201よりもパワーユニット(PU1、PU2)4の冷却器200の方が大型である。大型の冷却器200を持つパワーユニット(PU1、PU2)4を車両進行方向の両側面に配置すると、枕木方向のうち冷却器200の占める割合が大きくなり、箱サイズの増大を招き、枕木方向の車両限界を超過する可能性がある。これを防止するため、本実施例においては、2台のパワーユニット(PU1、PU2)4を一方の側面に揃えて配置する。
【0055】
一方で、半導体減流器(SHB)2は、パワーユニット(PU1、PU2)4の冷却器200からの熱風の影響を避けるために、パワーユニット(PU1、PU2)4とは逆の側面に配置する。しかし、車両限界の制約が厳しい場合においては、物理寸法を熱的条件より優先させて、パワーユニット(PU1、PU2)4と半導体減流器(SHB)2とを同一の側面に配置することもできる。
【0056】
本実施例に示す2群分の駆動システムを1つの箱に集約することにより、1群ずつ個別の箱とした場合に比べて、一体箱を構成する部材を削減することおよび2群分を合計した箱寸法を縮小することが可能となる。それにより、コストおよび艤装スペースの削減の効果を得ることもできる。
【実施例7】
【0057】
図15は、本発明の実施例7に係る一体箱の箱内レイアウトの一例を示す図である。本実施例の特徴は、一体箱内においてパワーユニット(PU)4と半導体減流器(SHB)2とを同じ側面に配置している点である。
【0058】
現在の技術水準においては、一般にフィルタリアクトル(FL)の質量がパワーユニット(PU)に比べて大きいため、制御論理部よりも重量物である断流器(LB)7と半導体減流器(SHB)2とをフィルタリアクトル(FL)5の対向側に配置する。これにより、枕木方向の重量バランスがとりやすく、パワーユニット(PU)4と半導体減流器(SHB)2とを対向する側面にそれぞれ配置した場合に比べて、容易に重心を箱中心に一致させることができる。
【0059】
また、パワーユニット(PU)4用の冷却器200と半導体減流器(SHB)2用の冷却器201とを一方の側面に集中配置することにより、箱からの突起物が一方の側面のみに集めることができ、一体箱の枕木方向の長さ短縮もしくは箱内スペースの拡大を図ることができる。
【0060】
また、パワーユニット(PU)4と半導体減流器(SHB)2との配置について、冷却器としての放熱効率を考慮すると、両者を隣接した場合、一方の発熱により他方の放熱器が受ける空気温度が上昇し、冷却性能の低下を招くため避けるべきである。そこで、本実施例によるレイアウトは、パワーユニット(PU)4と半導体減流器(SHB)2との間に断流器(LB)7を配置し、両者の冷却器間のスペースを確保した例を示すものである。
【実施例8】
【0061】
図16は、本発明の実施例8に係る床下艤装配置の一例を示す図である。本実施例は、本発明に係る一体箱1と別体の補助電源装置(SIV)61とを同一車両の床下に艤装した例である。
【0062】
一体箱1と補助電源装置(SIV)61の内、一方を車両の中心から車両の進行方向前方に、もう一方を車両の進行方向後方にオフセットした位置に艤装する。一体箱1と補助電源装置(SIV)61とは、床下機器のうち主要な重量物であるから、本艤装の配置により進行方向の軸重バランスを容易にとることができる。
【0063】
図16では、一体箱1と補助電源装置(SIV)61とが隣接し、両者の艤装位置が車両の中心付近である例を示したが、必ずしも両者を車両の中心付近に集中して配置する必要はなく、一体箱1と補助電源装置(SIV)61との間に別の機器を配置してもよい。
【0064】
補助電源装置(SIV)は、主回路と同様に直流架線から得た直流電力を用いて動作するため、本実施例で示した配置で艤装を行うことにより、直流電力を伝達する電源配線を削減することができる。
【0065】
以上、本発明を各実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は実施例1〜8で示す形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0066】
以上の各実施例は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであるが、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除および置換をすることが可能である。
例えば、一つには、
図8の実施例4に示す半導体減流器(SHB)2の回路構成と、
図7の実施例3に示す1C2M制御方式とを組み合わせてもよい。
【0067】
また一つには、パワーユニット(PU)4に用いられている半導体素子群については、上下アームを一つに纏めたいわゆる2in1型のパワーモジュール構成としたが、もちろんこれに限定されない。各アームに実装したいわゆる1in1型のパワーモジュールを用いてもよい。
【0068】
また一つには、インバータを構成するパワーユニットとブレーキチョッパ素子とを共通化したパワーユニット構成としてもよい。
また一つには、トランス型のフィルタリアクトル(FL1およびFL2)は、空芯型でも鉄芯型でもよい。
【0069】
また一つには、モータは、誘導モータ(IM)でもよいし永久磁石同期モータ(PMSM)でもよい。永久磁石同期モータ(PMSM)を用いる場合は、
図6に示すようにパワーユニット(PU)4をモータ毎に複数(例えば4群分)備え、一方でフィルタコンデンサ(FC)や過電圧防止回路(OVT)は共通化する構成とする。これによれば、モータの低損失化と主回路システムの軽量化との効果を最大化できる利点を享受できることになる。
【0070】
さらには、以上の実施例1〜8は、鉄道車両用駆動装置を鉄道車両に艤装して搭載するに当たって、車両の床下に配置する構成として示したが、車両の屋根上に配置する構成としても適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
1…一体箱、2…半導体減流器(SHB)、
3…過電圧防止回路(OVT)、4…パワーユニット(PU)、
5…フィルタリアクトル(FL)、6…フィルタコンデンサ(FC)、
7…断流器(LB1、LB2)、8…主スイッチ(MS)、
9…接地スイッチ(GS)、10…放電用スイッチ(DS)、
11…電圧計(DCPT1)、12…放電抵抗(DCHRe)、
13…パンタグラフ、14…主フューズ(MF)、
15…高速度遮断器(HB)、16…モータ(IM)、
21…INTEROS箱、22…断路器箱、23…SIV断流器箱、
24…母線遮断器箱、25…ブレーキ制御装置、26…供給空気タンク、
27…滑走防止弁装置、28…直通予備ブレーキ装置、
51…アクティブフィルタ(AF)、61…補助電源装置(SIV)、
100…論理部、200、201、202、400…冷却器、
500…アクティブフィルタ制御装置、600…配線ダクト