特許第6967306号(P6967306)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6967306
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】通信用ヘッドセット
(51)【国際特許分類】
   H04R 1/10 20060101AFI20211108BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20211108BHJP
   H04R 1/00 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   H04R1/10 101A
   H04R1/10 103
   H04R3/00 310
   H04R1/00 317
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-91044(P2020-91044)
(22)【出願日】2020年5月26日
【審査請求日】2020年6月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】511019133
【氏名又は名称】有限会社泰栄産業
(74)【代理人】
【識別番号】100085110
【弁理士】
【氏名又は名称】千明 武
(72)【発明者】
【氏名】川真田 博康
【審査官】 辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】 特許第4202640(JP,B2)
【文献】 特開2017−163354(JP,A)
【文献】 特開2019−175426(JP,A)
【文献】 特許第3207158(JP,B2)
【文献】 特開2006−074671(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/10
H04R 3/00
H04R 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の側頭部に装着可能な略U字形状のヘッドバンドの中間部に短距離無線信号を送受信可能な送受信部を設け、前記ヘッドバンドの両端部に略U字形の屈曲部と、骨伝導スピーカを設けるとともに、外部から伝播する直接音を集音可能な外部音集音マイクと、使用者の口元近傍に配置する話者用マイクを設け、前記送受信部で受信した受信信号を前記骨伝導スピーカへ入力可能にするとともに、前記外部音集音マイクと話者用マイクで採取した音声を前記送受信部から外部へ送信可能にした通信用ヘッドセットにおいて、前記外部音集音マイクをヘッドバンドと同幅の扁平な板体に形成し、その長さを屈曲部の開口幅と略同長に形成し、該外部音集音マイクをヘッドバンドの外面に装着したことを特徴とする通信用ヘッドセット。
【請求項2】
前記ヘッドバンドを柔軟かつ折曲げ可能に構成し、使用後コンパクトに収納可能にした請求項1記載の通信用ヘッドセット。
【請求項3】
前記ヘッドバンドの左右の柔軟なサイドバンドの中間部に袋状の送受信部を配置した請求項2記載の通信用ヘッドセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば聴覚不自由者相互間のコミュニケーションツールに好適で、鼓膜と同様な機能を有する振動体としての骨伝導スピーカと、外部集音マイクと話者用マイクを備え、小形軽量で簡潔な構成と良好な外観を有し、聴覚不自由者を含む複数人間で直接音と無線受信信号を交えて新しい形のコミュニケーションを実現できるようにした通信用ヘッドセットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば骨伝導スピーカとマイクロホンを備えた通信用ヘッドセットのなかに、U字形のヘッドバンドの両端部にヘッドパッドを側頭部に接触可能に配置し、このヘッドパッドの少なくとも一方に骨伝導スピーカとマイクロホンを配置し、ヘッドパッドから前方に延びる取付けアームの先端部にマイクロホンを配置し、該マイクロホンを使用者の口元に近接配置して、使用者の通話を可能にしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、他の通信用ヘッドセットのなかに、U字形のヘッドバンドの中間部に外部機器と通信可能な通信部と、通信部で受信した信号を音声として出力するスピーカと、ヘッドバンドの一方の端部にマイク取付け部を突設し、このマイク取付け部の先端部にマイクを取付け、該マイクを使用者の口元に近接配置し、使用者の通話を可能にしたものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかし、このようなヘッドセットは使用者一人の利用に限られ、複数人との会話やコミュニケーションを対象にしたものではなかった。
【0005】
ところで、近時、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)と呼ばれる短距離ワイヤレス通信システムが開発され、この通信システムに利用可能な通信用ヘッドセットとして、U字形のヘッドバンドの両端部にイヤホンを配置し、該イヤホンに外部から伝播する直接音を採取する外部音検知マイクと、音声処理部で制御された音声を出力するスピーカと、イヤホンから取付けア−ムを介して取付けた使用者の声を集音する話者用マイクとを備え、ヘッドセットを装着した使用者同士が無線通信系を介して小声で会話し、新しい形のコミュニケーションをできるようにしたものがある(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
しかし、前記ヘッドセットは、外部音検知マイクおよび話者用マイクと、外部音検知マイクで検知した直接音を入力とし、送信機で受信された受信信号と前記直接音との比率を選択的に制御する音声処理部を備え、前記スピーカを音声処理部によって比率制御し音声を出力可能にしており、構成が複雑で高価になり、しかも外部音検知マイクをイヤホンの側面に配置していたため、イヤホンの大形重量化と外観が猥雑になる等の問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3207158号号公報
【特許文献2】特開2017−163354号公報
【特許文献3】特許第4202640号号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこのような問題を解決し、例えば聴覚不自由者相互間のコミュニケーションツールに好適で、鼓膜と同様な機能を有する振動体としての骨伝導スピーカと、外部集音マイクと話者用マイクを備え、小形軽量で簡潔な構成と良好な外観を有し、聴覚不自由者を含む複数人間で直接音と無線受信信号を交えて新しい形のコミュニケーションを実現できるようにした通信用ヘッドセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、使用者の側頭部に装着可能な略U字形状のヘッドバンドの中間部に短距離無線信号を送受信可能な送受信部を設け、前記ヘッドバンドの両端部に耳の直下に配置する略U字形の屈曲部と、骨伝導スピーカを設けるとともに、外部から伝播する直接音を集音可能な外部音集音マイクと、使用者の口元近傍に配置する話者用マイクを設け、前記送受信部で受信した受信信号を前記骨伝導スピーカへ入力可能にするとともに、前記外部音集音マイクと話者用マイクで採取した音声を前記送受信部から外部へ送信可能にした通信用ヘッドセットにおいて、外部音集音マイクをヘッドバンドの外面に装着し、該外部音集音マイクをヘッドバンドと同幅の扁平な板体に形成し、その長さを屈曲部の開口幅と略同長に形成し、ヘッドバンドの着脱に支障がなく円滑な使用を図れ、小形軽量で簡潔な構成と良好な外観を具備し、例えば聴覚不自由者を含む複数人間での直接音と無線受信信号を交えた新しい形のコミュニケーションを実現し、例えば聴覚不自由者相互間のコミュニケーションツールに好適にしている。
【0010】
請求項の発明は、前記ヘッドバンドを柔軟かつ折曲げ可能に構成し、使用後コンパクトに収納可能にし、ヘッドセットの持ち運びや取扱を至便にしている。
請求項3の発明は、前記ヘッドバンドの左右の柔軟なサイドバンドの中間部に袋状の送受信部を配置し、ヘッドセットの持ち運びや取扱いの利便性を向上するようにしている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明は、外部音集音マイクをヘッドバンドの外面に装着し、該外部音集音マイクをヘッドバンドと同幅の扁平な板体に形成し、その長さを屈曲部の開口幅と略同長に形成したから、ヘッドバンドの着脱に支障がなく円滑な使用を図れ、小形軽量で簡潔な構成と良好な外観を具備し、例えば聴覚不自由者を含む複数人間での直接音と無線受信信号を交えた新しい形のコミュニケーションを実現し、例えば聴覚不自由者相互間のコミュニケーションツールに好適な効果がある。
【0012】
請求項の発明は、前記ヘッドバンドを柔軟かつ折曲げ可能に構成したから、使用後コンパクトに収納可能にし、ヘッドセットの持ち運びや取扱を至便にすることができる。
請求項3の発明は、前記ヘッドバンドの左右の柔軟なサイドバンドの中間部に袋状の送受信部を配置したから、ヘッドセットの持ち運びや取扱いの利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態を示す斜視図である。
図2】本発明の使用状態を示す正面図である。
図3】本発明のヘッドセットの概要を示す平面図である。
図4】本発明のヘッドセットによる作動の概要を示す説明図である。
図5】本発明の他の実施形態を示す斜視図である。
図6】前記他の実施形態のヘッドセットの使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を短距離無線通信用ヘッドセットに適用した図示の実施形態について説明すると、図1乃至図4において1はヘッドセットで、使用者2の側頭部に着脱可能に装着可能な弾性を有する略U字形状のヘッドバンド3を備えている。
前記ヘッドバンド3の中央部に送受信部4が設けられ、該送受信部4はアンテナと無線モジュールで構成され、通信相手が所有する外部機器と無線で通信可能にされている。通信方式としては、例えば422MHz帯または440MHzの周波数が用いられ、外部機器との通信を中継する中継器(図示略)を介して通信する場合は、例えばブルートゥース(Bluetooth:登録商標)のような2.4GHz帯の周波数帯が用いられ、通信部4で受信した信号を内蔵した制御部5で増幅可能にされている。
【0015】
前記制御部5はCPU、RAMおよびROMなどで構成され、通信部4で受信した信号を増幅して後述のスピーカへ出力可能にされ、また後述する話者用マイクから入力された音声を電気信号に変換し、送受信部4を介して外部機器へ送信可能にしている。
【0016】
前記ヘッドバンド3の両端部に略U字形の屈曲部6が形成され、該屈曲部6をヘッドバンド3の装着時に使用者2の耳7の直下に配置し、その内側に耳7にあてがうイヤホン8を配置している。
前記屈曲部6の前部内側に木の葉形の扁平な振動体であるスピーカ9が配置され、該スピーカ9は鼓膜と同様な機能を有する金属製の振動板を有する骨伝導スピーカからなり、使用者2の皮膚に接触可能に配置され、スピーカ9による振動を耳7の前方の皮膚から頭骨を経由して聴覚神経へ伝達可能にされている。したがって、ヘッドセットの使用者は骨伝導によって通信相手の音声を認識可能にされている。
【0017】
前記屈曲部6の前側下部にマイク取付けアーム10の一端が湾曲して突設され、その他端に話者用マイク11を取付け、該話者用マイク11を使用者2の口元の近辺に配置可能にしていて、使用者2の声を集音可能にしている。
前記話者用マイク11は、送信部4を介して周辺機器に音声指令を発する場合や、他のヘッドセット(図示略)に対し無線通信する場合に使用可能にしている。
【0018】
前記屈曲部6の下部に外部音集音マイク12が取付けられ、該外部音集音マイク12は周辺の直接音を採取可能にされ、その信号を音声処理部13へ入力出可能にしている。
前記外部音集音マイク12は、ヘッドバンド3と略同幅で屈曲部6の開口幅と略同長の扁平な板体に形成されている。
【0019】
前記音声処理部13は、外部音集音マイク12で採取した直接音と、送受信部4で無線受信した音声を入力として、直接音と受信信号との比率を制御可能にされ、比率制御した音声を振動体であるスピーカ9で出力可能にしている。
【0020】
前記音声処理部13は、無線送信系で受信された信号をリファレンス信号として、デジタル技術によって高音質に補正するDSP(Digital Signal Processor)適応処理を施すDSP適応処理部(図示略)と、DSP処理された受信信号を外部集音マイク12で採取された外部からの直接音と相関させる相関処理部(図示略)とで構成されている。
前記相関処理部(図示略)は、要求されたモードで相関を行い、必要な成分だけを出力するようにされ、したがって、DSP適応処理部(図示略)と相関処理部(図示略)とで適応フィルタを構成している。
【0021】
前記音声処理部13による音声処理では、使用者2は先ず後述するモード切替スイッチを操作し、所望のモードを選択する。音声処理部13は、選択されたモードに応じ、単独音としての無線通信系からの受信音を、リファレンス信号としてDSP適応処理部(図示略)で処理し、相関処理部(図示略)へ供給するようにしている。
【0022】
前記モード切替スイッチ14は、音声処理部13からコードで接続されて使用者2の手元で操作できるボタン方式に構成され、その操作によって音声処理部13の処理において、外部からの直接音の割合を支配的にするか、無線通信系を介して受信された音声を支配的にするかを状況に応じて決定するようにしている。すなわち、使用者2がモード切替スイッチ16を操作することによって、音声処理部13における複数の処理を状況に応じて選択可能にしている。
【0023】
一方、外部音集音マイク12で採取した直接音は、A/D変換され、同じく相関処理部(図示略)へ供給するようにしている。前記相関処理部(図示略)は、選択されたモードにしたがって、直接音のうち、無線通信系から得たリファレンス信号と相関のある成分を除去し、相関のない成分だけを出力する。
これにより、無線通信系の音と相関する部分が取り除かれ、よりクリアになった外部の直接音が、振動体であるスピーカ9へ送るようにしている。
【0024】
前記音声処理部13における処理は、外部音集音マイク12で採取した直接音と、無線受信した音声との比率を変化させて、振動体であるスピーカ9へ出力可能にしている。
前記比率の変化例として実施形態では、(A)送受信部4で受信音を優先的に聞きたい場合と、(B)外部集音マイク12で採取した直接音を優先的に聞きたい場合、(C)送受信部4からの受信音のみを聞きたい場合、(D)送信元の位置情報を基に、送信元と受信側のヘッドセット1との位置関係によって、受信音の音量を調整可能にする、の4種類がある。
【0025】
このうち、(A)の場合は、外部からの直接音を選択的に除去する。例えば直接音のうち、送受信部4で受信された音と相関のある成分だけを残して、相関のない部分を全て消去するようにしている。これにより、送受信部4で受信された音が補強され、通信内容が聞き易くなる。
(B)の場合は、例えば直接音と相関のない部分を全て排除し、相関のある成分だけを取り出すようにしている。これにより、ヘッドセット1を付けたままの状態でも、外部からの直接音が強調されて聞き易くなる。特に、比較的近い位置でヘッドセット1を介して対話的に無線コミュニケーションする場合、同じ内容の直接音と受信音が混在し、却って聞き難くなる事態を解消する。
【0026】
(C)の場合は、外部からの直接音を全て遮断するようにしている。これにより、直接音に騒音が多く含まれ、受信音が聞き難くなった場合に好適である。(D)の場合は、送受信部4で受信する音量を変える。その際、送受信部4で、音声データの送受信の他に、位置情報の送受信が必要になる。
【0027】
このように構成した本発明のヘッドセットは、ヘッドバンド3を略U字形に形成して適宜な弾性を持たせ、その両端部にイヤホン8,8を取付け、中央部に送受信部4と制御部5を配置する。
前記ヘッドバンド3の両端部の何れか一方に外部音集音マイク12を取付け、その近傍からマイク取付けアーム10の一端を突設し、該アーム10を湾曲して使用者2の口元の近辺に配置し、その端部に話者用マイク11を取付け、使用者2の音声を集音可能にする。
【0028】
前記外部音集音マイク12をヘッドバンド3と略同幅で扁平な小形の箱形に形成し、この集音マイク12を屈曲部6の下部表面に配置するから、外部音集音マイク12が目立たずヘッドセット1の外観に違和感がなく、しかも小形軽量に構成される。
また、モード切替スイッチ14を音声処理部13からコードで接続して、使用者2の手元で操作できるボタン方式に構成し、その操作によって音声処理部13における複数の処理を状況に応じて選択可能にする。
【0029】
このようなヘッドセット1を使用する場合は、ヘッドバンド3の両端部を若干拡開して使用者2の側頭部に配置し、振動体であるスピーカ9,9を使用者2の耳7の近傍の皮膚に接触して配置し、イヤホン8,8を耳7の外側にあてがう。また、話者用マイク11を使用者2の口元近傍に取付ける。この状況は図1,2のようである。
【0030】
この後、ヘッドセット1の電源をONし、ブルートゥース(Bluetooth:登録商標)を作動させると、送受信部4を介して通信相手が所有する外部機器と無線で通信可能になる。
また、送受信部4で受信した信号を増幅して振動体であるスピーカ9,9へ出力し、更に話者用マイク11から入力された音声を電気信号に変換し、これを送受信部4を介して他のヘッドセットを含む外部機器へ送信可能にする。
【0031】
一方、外部音集音マイク12で直接音を採取して音声処理部13に入力し、また送受信部4で無線受信した受信信号を、モード切替スイッチ14を介して音声処理部13に入力する。
使用者2はモード切替スイッチ14を操作し、状況に応じて複数の処理を選択する。
【0032】
実施形態では、(A)〜(D)の4種類の選択モードがあり、(A)は送受信部4で受信音を優先的に聞きたい場合と、(B)は外部集音マイク12で採取した直接音を優先的に聞きたい場合、(Cは)送受信部4からの受信音のみを聞きたい場合、(D)は送信元の位置情報を基に、送信元と受信側のヘッドセット1との位置関係によって、受信音の音量を調整可能にする場合である。
【0033】
このうち、(A)の場合は、外部からの直接音を選択的に除去する。例えば直接音のうち、送受信部4で受信された音と相関のある成分だけを残して、相関のない部分を全て消去する。 これにより、送受信部4で受信された音が補強され、通信内容が聞き易くなる。
前記(B)の場合は、例えば直接音と相関のない部分を全て排除し、相関のある成分だけを取り出す。これにより、ヘッドセット1を付けたままの状態でも、外部からの直接音が強調されて聞き易くなる。特に、比較的近い位置でヘッドセット1を介して対話的に無線コミュニケーションする場合、同じ内容の直接音と受信音が混在し、却って聞き難くなる事態を解消し得る。
【0034】
前記(C)の場合は、外部からの直接音を全て遮断する。これにより、直接音に騒音が多く含まれ、受信音が聞き難くなった場合に好適である。(D)の場合は、送受信部4で受信する音量を変える。その際、送受信部4で、音声データの送受信の他に、位置情報の送受信が必要になる。
【0035】
前記音声処理部13は、送受信部4で無線受信した受信信号と、外部音集音マイク12で採取した直接音との比率を制御し、比率制御した音声を振動体であるスピーカ9で出力する。
その際、音声処理部13は、無線送信系で受信された信号をリファレンス信号として、デジタル技術によって高音質に補正するDSP(Digital Signal Processor)適応処理を施すDSP適応処理部(図示略)と、DSP処理された受信信号を外部集音マイク12で採取した外部からの直接音と相関させる相関処理部(図示略)とを備え、前記相関処理部は、要求されたモードで相関を行い、必要な成分だけを出力する。したがって、DSP適応処理部と相関処理部とで適応フィルタを構成する。
【0036】
前記音声処理部13による音声処理動作は、使用者2は先ずモード切替スイッチ14を操作し、所望のモードを選択する。音声処理部13は、選択されたモードに応じ、単独音としての無線通信系からの受信音を、リファレンス信号としてDSP適応処理部で処理し、相関処理部へ供給する。
【0037】
一方、外部音集音マイク12で採取した直接音は、A/D変換され、同じく相関処理部へ供給する。相関処理部は、選択されたモードにしたがって、直接音のうち、無線通信系から得たリファレンス信号と相関のある成分を除去し、相関のない成分だけを出力する。
これにより、無線通信系の音と相関する部分が取り除かれ、よりクリアになった外部の直接音が、スピーカ9に送られる。
【0038】
このように本発明のヘッドセット1は、話者用マイク11と外部集音マイク12を備え、それらの音声を送受信部4を介して他のヘッドセットや周辺機器に送信し、また他のヘッドセットや周辺機器からの無線信号を送受信部4で受信して、互いの情報を短距離無線通信の周波数帯域でライブで簡便に遣り取りできるから、例えば騒音下や聴覚不自由者による新しいコミュニケーションツールとしての役割を果たせる効果がある。
【0039】
しかも、本発明のヘッドセット1は、モード切替スイッチ14を備え、複数の選択モードを使用者2側で選択し、現状の会話に応じた選択モードを設定して、会話や情報の正確性を得られるから、コミュニケーション能力を向上し得る効果がある。
【0040】
図5および図6は本発明の他の実施形態を示し、前述の実施形態の構成と対応する部分には同一の符号を用いている。この実施形態はヘッドバンド3を、比較的硬質に構成する代わりに比較的柔軟で折り曲げ可能に構成し、その左右のサイドバンド3a,3bの中間部に袋状の送受信部4a,4bを配置している。
【0041】
そして、一方の送受信部4aの外側表面に外部音集音マイク12を取付け、その同側面にマイク取付けアーム10の一端を突設し、その他端部に話者用マイク11を取付け、該話者用マイク11を使用者2の口元の近辺に配置可能にしている。また、他方の送受信部4bの上面に電源ボタン15と音量調整ボタン16を設けている。
この実施形態は、比較的柔軟なサイドバンド3a,3bによって側頭部に対する着脱を簡便に行なうとともに、使用後はコンパクトに収納可能にして携行に至便にしている。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の通信用ヘッドセットは、鼓膜と同様な機能を有する振動体としての骨伝導スピーカと、外部集音マイクと話者用マイクを備え、小形軽量で簡潔な構成と良好な外観を有し、例えば聴覚不自由者を含む複数人間で直接音と無線受信信号を交えて新しい形のコミュニケーションを実現できるから、例えば聴覚不自由者相互間のコミュニケーションツールに好適である。
【符号の説明】
【0043】
1 ヘッドセット
3 ヘッドバンド
4 送受信部
9 振動体(骨伝導スピーカ)
11 話者用マイク
12 外部集音マイク
13 音声処理部
14 モード切替スイッチ
【要約】      (修正有)
【課題】聴覚不自由者を含む複数人間で直接音と無線受信信号を交えて新しい形のコミュニケーションを実現できる通信用ヘッドセットを提供する。
【解決手段】通信用ヘッドセット1は、使用者の側頭部に装着可能な略U字形状のヘッドバンド3の中間部に短距離無線信号を送受信可能な送受信部4を設ける。ヘッドバンド3の両端部には、略U字形の屈曲部6の前部内側に振動体9を設ける。さらに、外部から伝播する直接音を集音可能な外部音集音マイク12と、屈曲部6の前側下部に一端が湾曲して突設されたマイク取付けアーム10の他端に使用者の口元近傍に配置する話者用マイク11を設ける。送受信部4で受信した受信信号を振動体9へ入力可能にする。外部音集音マイク12と話者用マイク11で採取した音声を、送受信部4から外部へ送信可能にする。外部音集音マイク12は、ヘッドバンド3の外面に装着する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6