特許第6967315号(P6967315)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6967315土壌改良資材及び堆肥の製造方法並びに土壌改良資材及び堆肥
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6967315
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】土壌改良資材及び堆肥の製造方法並びに土壌改良資材及び堆肥
(51)【国際特許分類】
   C05F 17/20 20200101AFI20211108BHJP
   C09K 17/50 20060101ALI20211108BHJP
   C09K 101/00 20060101ALN20211108BHJP
【FI】
   C05F17/20
   C09K17/50 H
   C09K101:00
【請求項の数】4
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2021-36427(P2021-36427)
(22)【出願日】2021年3月8日
【審査請求日】2021年3月8日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521098434
【氏名又は名称】平子 二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100185270
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】平子 二郎
【審査官】 厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−023523(JP,A)
【文献】 特開2008−035715(JP,A)
【文献】 特開2002−058471(JP,A)
【文献】 特開平11−158019(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−2069848(KR,B1)
【文献】 韓国登録特許第10−1913806(KR,B1)
【文献】 韓国登録特許第10−1551606(KR,B1)
【文献】 韓国登録特許第10−0965936(KR,B1)
【文献】 特開2010−208893(JP,A)
【文献】 特開2005−289855(JP,A)
【文献】 韓国公開特許第10−2020−0076870(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C05B 1/00 − 21/00
C05C 1/00 − 13/00
C05D 1/00 − 11/00
C05F 1/00 − 17/993
C05G 1/00 − 5/40
C09K 17/00 − 17/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1発酵槽、玄米、糖、にがり及び水系溶媒からなる混合物に対し外部から前記第1発酵槽の内部に酸素が入ることを防いだ状態で乳酸発酵を含む発酵を2週間以上2ヶ月以下行って第1発酵生成物を生成する第1発酵工程と、
記第1発酵槽とは異なる第2発酵槽で、植物性食品、糖、にがり及び水系溶媒からなる混合物に対し、部から前記第2発酵槽の内部に酸素が入ることを防いだ状態で乳酸発酵を含む発酵を2週間以上2ヶ月以下行って第2発酵生成物を生成する第2発酵工程と、
記第1発酵槽及び前記第2発酵槽のいずれとも異なる第3発酵槽で、動物性食品、糖、にがり及び水系溶媒からなる混合物に対し、部から前記第2発酵槽の内部に酸素が入ることを防いだ状態で乳酸発酵を含む発酵を2週間以上2ヶ月以下行って第3発酵生成物を生成する第3発酵工程と、
前記第1発酵生成物、前記第2発酵生成物、及び前記第3発酵生成物を混合して乳酸菌含有土壌改良資材を生成する資材生成工程と、
を含む、乳酸菌含有土壌改良資材の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法により製造された改良資材にもみ殻を加え、前記改良資材に含まれる乳酸菌による乳酸発酵によって前記もみ殻の分解を進めることで温度を好熱性細菌の至適生育温度に上げ、前記至適生育温度で前記もみ殻に含まれる好熱性細菌による高温発酵によって前記もみ殻を分解して温度を80℃以上に上げる第1分解工程を含む、堆肥の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法により製造された堆肥に魚の煮干しをそのまま加え、少なくとも前記煮干しを前記至適生育温度で前記好熱性細菌による前記高温発酵を用いて2週間以上4ヶ月以下分解する第2分解工程を含む、堆肥の製造方法。
【請求項4】
玄米、糖、にがり及び水系溶媒からなる混合物に対して外部から発酵槽の内部に酸素が入ることを防いだ状態で乳酸発酵を含む発酵が2週間以上2ヶ月以下なされた第1発酵生成物と、
植物性食品、糖、にがり及び水系溶媒からなる混合物に対して外部から発酵槽の内部に酸素が入ることを防いだ状態で乳酸発酵を含む発酵が2週間以上2ヶ月以下なされた第2発酵生成物と、
動物性食品、糖、にがり及び水系溶媒からなる混合物に対して外部から発酵槽の内部に酸素が入ることを防いだ状態で乳酸発酵を含む発酵が2週間以上2ヶ月以下なされた第3発酵生成物を混合する工程を含む、乳酸菌含有土壌改良資材の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改良資材及び堆肥の製造方法並びに土壌改良資材及び堆肥に関する。
【背景技術】
【0002】
好熱性細菌を肥料に応用する試みがある。好熱性細菌を肥料に応用することにより、肥料を製造する過程における発酵の温度を上げ、好熱性細菌を応用しない場合より発酵の期間を短くし得る。また、高温により、雑草の種、病原微生物、及び/又は寄生虫の卵等を減らし得る。
【0003】
ところで、従来60℃程度である発酵の温度を80℃以上の高温にする技術が提案されている(特許文献1、特許文献2)。発酵の温度を高温にすることにより、発酵の温度が60℃程度である場合より短い期間で発酵を行って堆肥を製造し、草の種、病原微生物、及び/又は寄生虫の卵等をよりいっそう減らし得るという顕著な効果を発揮できる。
【0004】
特許文献1によれば、有機物を密閉した貯槽内に収容し、外部から加熱しながら貯槽内の有機物を混合撹拌し、高温ガスを貯槽内に導入すること等により、発酵の温度を高温にし得る。
【0005】
特許文献2によれば、60℃で培養され、タンパク質分解酵素を産生し、有機性汚泥の溶解能力を有する、Anoxybacillus(アノキシバシラス)属細菌に属するグラム陽性の新規微生物を種菌として混合すること等により、発酵の温度を高温にし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−122731号公報
【特許文献2】特開2011−024568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、外部から加熱しながら貯槽内の有機物を混合撹拌し、高温ガスを貯槽内に導入することから、発酵の温度を高温にするために多量のエネルギーが必要となり得る。特許文献1は、肥料の製造で必要となるエネルギー量を抑え、環境への負荷を抑える点において、さらなる改善の余地がある。
【0008】
特許文献2は、発酵の温度を高温にするために必要となるエネルギー量を抑え得るものの、60℃で培養する好熱性細菌を種菌として混合することから、好熱性細菌の培養、管理及び/又は混合等に関する労力及び/又はエネルギーを必要とし得る。特許文献2は、好熱性細菌の培養、管理及び/又は混合等に関する労力及びエネルギーを軽減する点において、さらなる改善の余地がある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的短い製造期間で、かつ、少ない労力及びエネルギー消費量で好熱性細菌を利用可能な土壌改良資材及び堆肥を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、原材料毎に異なる発酵槽で発酵させた乳酸菌含有液が、雑菌抑制といった公知の作用のみならず、好熱性細菌の至適生育温度に達するまでの熱源として機能し得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。具体的に、本発明は以下のものを提供する。
【0011】
第1の特徴に係る発明は、第1発酵槽で、玄米、糖、無機質及び水系溶媒の混合物に対し、乳酸発酵を含む発酵を行って第1発酵生成物を生成する第1発酵工程と、前記第1発酵槽とは異なる第2発酵槽で、植物性食品、糖、無機質及び水系溶媒の混合物に対し、乳酸発酵を含む発酵を行って第2発酵生成物を生成する第2発酵工程と、前記第1発酵槽及び前記第2発酵槽のいずれとも異なる第3発酵槽で、動物性食品、糖、無機質及び水系溶媒の混合物に対し、乳酸発酵を含む発酵を行って第3発酵生成物を生成する第3発酵工程と、前記第1発酵生成物、前記第2発酵生成物、及び前記第3発酵生成物を混合して乳酸菌含有土壌改良資材を生成する資材生成工程と、を含む、乳酸菌含有土壌改良資材の製造方法を提供する。
【0012】
好熱性細菌を肥料に応用する試みがある。好熱性細菌を肥料に応用することにより、肥料を製造する過程における発酵の温度を上げ、雑草の種、病原微生物、及び/又は寄生虫の卵等を減らし得る。発酵の温度を上げることにより、発酵の温度が60℃程度である場合より短い期間で発酵を行い、堆肥を製造し、草の種、病原微生物、及び/又は寄生虫の卵等をよりいっそう減らし得るという顕著な効果を発揮できる。
【0013】
至適生育温度が45℃以上である好熱性細菌を肥料に応用するためには、温度を好熱性細菌の至適生育温度まで上げる必要がある。しかし、エネルギー消費量を抑えつつ、温度を好熱性細菌の至適生育温度まで上げることは、容易ではない。
【0014】
ところで、乳酸菌(当業者間では「玄米乳酸菌」とも称される)が糖を分解して乳酸を生成する乳酸発酵は、酸素を必要としない嫌気的過程であり、糖類が多い環境において好適に行われる、発熱を伴う発酵である。したがって、十分な量の乳酸菌は、温度を好熱性細菌の至適生育温度まで上げるための熱源となり得る。
【0015】
一方、酸素を必要としない嫌気的過程であり、糖類が多い環境において好適に行われる発酵には、酵母(当業者間では「玄米菌」とも称される)が糖を分解してエタノール等を生成するアルコール発酵もある。したがって、乳酸菌による乳酸発酵が行われる発酵槽では、酵母によるアルコール発酵も行われ得る。アルコール発酵により生じたエタノールは、乳酸菌及び/又は好熱性細菌の生育を妨げ得る。
【0016】
第1の特徴に係る発明によれば、それぞれの発酵槽において、糖、無機質以外の成分をできるだけ少なく抑えることにより、アルコール発酵を抑制し、好熱性細菌の至適生育温度に達するまでの熱源として機能するために十分な量の乳酸菌を確保し得る。アルコール発酵を抑制することにより乳酸菌の増殖が妨げられないため、比較的短い製造期間で土壌改良資材を製造し得る。アルコール発酵を抑制することにより好熱性細菌の生育が妨げられないため、好熱性細菌がよりいっそう増殖し得る。
【0017】
第1の特徴に係る発明によれば、多量のエネルギーを消費して温度等を調整することなく、比較的短い製造期間で発酵生成物を生成し得る。したがって、比較的短い製造期間で、かつ、少ないエネルギー消費量で土壌改良資材を提供し得る。
【0018】
第1の特徴に係る発明によれば、無機質を含む混合物に対して発酵を行うため、乳酸菌は、糖に由来する有機物だけでなく、活動に必要な無機質をも利用して生育し得る。これにより、乳酸菌がよりいっそう増殖し得る。したがって、十分な量の乳酸菌をよりいっそう確実に確保し得る。
【0019】
乳酸菌は、生育においてビタミンB1を必要とし得る。玄米は、ビタミンB1を白米より豊富に含むことが知られている。第1の特徴に係る発明によれば、第1発酵工程において玄米を含む混合物に対し発酵を行うため、乳酸菌は、玄米に由来するビタミンB1を用いて生育し得る。これにより、乳酸菌がよりいっそう増殖し得る。したがって、十分な量の乳酸菌をよりいっそう確実に確保し得る。
【0020】
植物性食品は、カリウム及びリン等によって例示されるミネラルを動物性食品より豊富に含むことが知られている。第1の特徴に係る発明によれば、第2発酵工程において植物性食品を含む混合物に対し発酵を行うため、乳酸菌は、植物性食品に由来するミネラルを利用して生育し得る。これにより、乳酸菌がよりいっそう増殖し得る。したがって、十分な量の乳酸菌をよりいっそう確実に確保し得る。
【0021】
動物性食品は、通常、天然のアミノ酸を植物性食品より多く含む。第1の特徴に係る発明によれば、第3発酵工程において動物性食品を含む混合物に対し発酵を行うため、乳酸菌は、動物性食品に由来するアミノ酸を利用して生育し得る。これにより、乳酸菌がよりいっそう増殖し得る。したがって、十分な量の乳酸菌をよりいっそう確実に確保し得る。
【0022】
第1の特徴に係る発明によれば、第1発酵槽、第2発酵槽、及び第3発酵槽のそれぞれで生成された第1発酵生成物、第2発酵生成物、及び第3発酵生成物を混合して乳酸菌含有土壌改良資材を生成できる。これにより、それぞれの発酵槽において、糖、無機質以外の成分をできるだけ少なく抑えることと、土壌改良資材に含まれる成分を豊かにすることとを両立し得る。
【0023】
第1の特徴に係る発明によれば、土壌改良資材に含まれる成分が豊かであるため、土壌改良資材をもみ殻に混ぜると乳酸菌、納豆菌、糸状菌、及び放線菌等によって例示される各種の菌がよく増殖し、温度をよりいっそう上げ得る。これにより、温度を好熱性細菌の至適生育温度まで上げることをよりいっそう確実に行い得る。
【0024】
したがって、第1の特徴に係る発明によれば、好熱性細菌がよりいっそう増殖し得る。そして、増殖した好熱性細菌は、温度を80℃に上げ得る。これにより、製造期間を短くし、草の種、病原微生物、及び/又は寄生虫の卵等をよりいっそう減らし得る。
【0025】
第1の特徴に係る発明によれば、60℃で培養する好熱性細菌を種菌として混合することなく、好熱性細菌を増殖させ得る。これにより、好熱性細菌の培養、管理及び/又は混合等に関する労力及び/又はエネルギーを費やすことなく、少ない労力及びエネルギー消費量で好熱性細菌を利用し得る。
【0026】
第1の特徴に係る発明によれば、十分な量の乳酸菌を確保し得るため、雑菌抑制といった公知の作用を有する土壌改良資材を提供できる。また、十分な量の乳酸菌を確保し得るため、光合成を旺盛にする効果、着色促進効果、品質改善効果、収量を増やす効果、作物等の耐病性を強化する効果等の公知の効果もよりいっそう見込み得る。
【0027】
したがって、第1の特徴に係る発明によれば、比較的短い製造期間で、かつ、少ない労力及びエネルギー消費量で好熱性細菌を利用可能な土壌改良資材を提供できる。
【0028】
第2の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明であって、前記無機質がにがりを含み、前記発酵の期間が2週間以上2ヶ月以下である、土壌改良資材の製造方法を提供する。
【0029】
食塩を含む混合物に対し発酵を行い、発酵生成物を得る方法が知られている。食塩の主成分である塩化ナトリウムに含まれる塩素及びナトリウムは、乳酸菌及び酵母において、細胞の浸透圧調整に寄与し得る。しかし、乳酸菌が必要とする無機栄養素は、塩化ナトリウムに含まれる塩素及びナトリウムだけではない。
【0030】
乳酸菌は、グルコースを代謝する解糖系及び/又は好気的代謝に関するTCA回路(TCAサイクル、トリカルボン酸回路、tricarboxylic acid cycle、クエン酸回路、クレブス回路とも称する。)における酵素反応において、マグネシウム、カリウム、及び/又はカルシウム等を賦活剤として必要とする。したがって、乳酸菌が活発に活動するには、塩素及びナトリウムだけでなく、マグネシウム、カリウム、及びカルシウムも必要である。
【0031】
第2の特徴に係る発明によれば、にがりを含む混合物に対し乳酸発酵を含む発酵を行うため、乳酸菌は、にがりに由来するマグネシウム、カリウム、及びカルシウムを利用して活発に活動し得る。したがって、乳酸発酵がよりいっそう行われ、2ヶ月以下の比較的短い製造期間で製造することを実現し得る。
【0032】
発酵の期間が短い場合、乳酸菌が十分な量まで増殖しないリスクが生じ得る。第2の特徴に係る発明によれば、発酵の期間が2週間以上であることにより、好熱性細菌の至適生育温度に達するまでの熱源として機能するために十分な量の乳酸菌を確保し得る。したがって、好熱性細菌を利用可能な土壌改良資材を提供し得る。
【0033】
発酵が進むと、発酵による有機物の分解が進み、乳酸菌の有機栄養源が減少する。発酵の期間が長い場合、乳酸菌の有機栄養源が減少することに伴って、乳酸菌が減少し得る。第2の特徴によれば、発酵の期間が2ヶ月以下であるため、乳酸菌の減少を防ぎ、好熱性細菌の至適生育温度に達するまでの熱源として機能するために十分な量の乳酸菌を確保し得る。したがって、好熱性細菌を利用可能な土壌改良資材を提供し得る。
【0034】
したがって、第2の特徴に係る発明によれば、比較的短い製造期間で、かつ、少ない労力及びエネルギー消費量で好熱性細菌を利用可能な土壌改良資材を提供できる。
【0035】
第3の特徴に係る発明は、第1又は第2の特徴に係る方法により製造された改良資材にもみ殻を加え、前記もみ殻を前記改良資材に含まれる乳酸菌による乳酸発酵と前記もみ殻に含まれる好熱性細菌による高温発酵とを用いて分解する第1分解工程を含む、堆肥の製造方法を提供する。
【0036】
有機物であるもみ殻は、乳酸菌によって乳酸発酵され得る。したがって、第3の特徴に係る発明によれば、もみ殻に乳酸菌を加えることにより、乳酸菌は、よりいっそう乳酸発酵を行い、増殖し得る。これにより、温度が好熱性細菌の至適生育温度まで上がり得る。また、もみ殻は、納豆菌、糸状菌、及び放線菌等によって例示される各種の菌によっても分解され得る。これにより、温度が好熱性細菌の至適生育温度までよりいっそう確実に上がり得る。
【0037】
温度が好熱性細菌の至適生育温度まで上がると、もみ殻等に含まれる好熱性細菌が増殖する。増殖した好熱性細菌は、高温発酵によってもみ殻を分解し、よりいっそう温度を上げ得る。これにより、温度を80℃に上げ得る。
【0038】
したがって、第3の特徴に係る発明によれば、高温発酵によって、草の種、病原微生物、及び/又は寄生虫の卵等をよりいっそう減らし得る。これにより、雑草及び/又は病害を減らし得る。また、第3の特徴に係る発明によれば、増殖した好熱性細菌がもみ殻を分解することにより、堆肥の製造期間を短くし得る。
【0039】
第3の特徴に係る発明によれば、増殖した乳酸菌及び/又は好熱性細菌が病原微生物の増殖を防ぐことを見込み得る。これにより、病害をよりいっそう減らし得る。また、第3の特徴に係る発明によれば、改良資材に含まれる成分及び/又は分解されたもみ殻に由来する成分により、収穫の最盛期に向かうにつれて収量が減る成り疲れを防ぐことも見込み得る。
【0040】
土壌にもみ殻を加えることにより、土壌の通気性及び/又は水はけを改善し得ることが知られている。したがって、第3の特徴に係る発明によれば、土壌の通気性を改善すること及び/又は土壌の水はけを改善することを実現し得る堆肥を提供できる。
【0041】
したがって、第3の特徴に係る発明によれば、比較的短い製造期間で、かつ、少ない労力及びエネルギー消費量で好熱性細菌を利用可能な堆肥を提供できる。
【0042】
第4の特徴に係る発明は、第3の特徴に係る方法により製造された堆肥に魚の煮干しを加え、少なくとも前記煮干しを前記高温発酵を用いて分解する第2分解工程を含む、堆肥の製造方法を提供する。
【0043】
魚の煮干しは、アミノ酸及びタンパク質を含む。魚の煮干しを生分解し、煮干しに含まれるタンパク質を分解できれば、アミノ酸をよりいっそう供給し得る堆肥を提供できる。しかし、水分活性が低い煮干しは、常温において生分解され難いことが知られている。したがって、魚の煮干しを用いてアミノ酸をよりいっそう供給し得る堆肥を提供することは、容易ではない。
【0044】
第3の特徴に係る方法により製造された堆肥は、第1分解工程において増殖した好熱性細菌を含む。したがって、第4の特徴に係る発明によれば、増殖した好熱性細菌による高温発酵を用いて煮干しを分解し得る。これにより、好熱性細菌がよりいっそう利用され得る。
【0045】
また、第4の特徴に係る発明によれば、第2分解工程において分解された煮干しに由来するアミノ酸を供給し得る堆肥を提供できる。これにより、食味向上の効果を作物等に対して及ぼすことを見込み得る。
【0046】
魚の煮干しは、マグネシウム、カリウム、及びカルシウム等によって例示されるミネラルを含む。したがって、第4の特徴に係る発明によれば、魚の煮干しに由来するミネラルを供給し得る堆肥を提供できる。これにより、耐病性向上、着色促進、食味向上、果実肥大、貯蔵性向上等の効果を作物等に対して及ぼすことをよりいっそう見込み得る。
【0047】
したがって、第4の特徴に係る発明によれば、比較的短い製造期間で、かつ、少ない労力及びエネルギー消費量で好熱性細菌を利用可能な堆肥を提供できる。
【0048】
第5の特徴に係る発明は、第1の特徴に係る発明のカテゴリ違いである。
【0049】
第6の特徴に係る発明は、第2の特徴に係る発明のカテゴリ違いである。
【0050】
第7の特徴に係る発明は、第3の特徴に係る発明のカテゴリ違いである。
【0051】
第8の特徴に係る発明は、第4の特徴に係る発明のカテゴリ違いである。
【発明の効果】
【0052】
本発明によれば、比較的短い製造期間で、かつ、少ない労力及びエネルギー消費量で好熱性細菌を利用可能な土壌改良資材及び堆肥を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、本発明を実施するための好適な形態の一例について説明する。なお、これはあくまでも一例であって、本発明の技術的範囲はこれに限られるものではない。
【0054】
<乳酸菌含有土壌改良資材>
本発明の乳酸菌含有土壌改良資材(以下、単に「改良資材」とも称する。)は、第1発酵生成物を生成する第1発酵工程と、第2発酵生成物を生成する第2発酵工程と、第3発酵生成物を生成する第3発酵工程と、第1発酵生成物、第2発酵生成物、及び第3発酵生成物を混合して乳酸菌含有土壌改良資材を生成する資材生成工程と、を含む製造方法によって製造される土壌改良資材である。
【0055】
以下、改良資材の製造方法の一例について、説明する。
【0056】
〔第1発酵工程〕
第1発酵工程は、第1発酵槽で、玄米、糖、無機質及び水系溶媒の第1混合物に対し、乳酸発酵を含む発酵を行って第1発酵生成物を生成する工程である。
【0057】
[第1発酵槽]
第1発酵槽は、玄米、糖、無機質及び水系溶媒の第1混合物を貯留可能な槽であれば、特に限定されない。第1発酵槽は、実質的に密閉可能な槽であることが好ましい。これにより、外部から第1発酵槽内部に酸素が入ることを防ぎ得る。第1発酵槽内部に酸素が入ることを防ぎ得るため、酸素を必要としない嫌気的過程である乳酸発酵が好適に行われ得る。
【0058】
第1発酵槽の容量は、特に限定されない。第1発酵槽の容量は、第1混合物の容量より大きいことが好ましい。第1発酵槽の容量が第1混合物の容量より大きいことにより、第1発酵槽に空気が入る。これにより、嫌気的過程である乳酸発酵だけでなく、好気呼吸等によって例示される好気的過程によっても混合物が分解され得る。そして、好気的過程による分解生成物によって、乳酸発酵がより行われ得る。
【0059】
[玄米]
玄米は、もみ(籾)からもみ殻(籾殻)を除去したものであれば、特に限定されない。乳酸菌は、生育においてビタミンB1を必要とし得る。玄米は、ビタミンB1を白米より豊富に含むことが知られている。第1混合物が玄米を含む混合物であるため、乳酸菌は、玄米に由来するビタミンB1を用いて生育し得る。これにより、乳酸菌がよりいっそう増殖し得る。したがって、十分な量の乳酸菌をよりいっそう確実に確保し得る。
【0060】
[糖]
糖は、特に限定されない。糖は、例えば、グルコース及びフルクトース等によって例示される単糖、マルトース及びスクロースによって例示される二糖、オリゴ糖の1以上を含む糖でよい。
【0061】
乳酸発酵は、糖を分解して乳酸を生成する発酵である。第1混合物が糖を含む混合物であるため、乳酸菌は、糖を分解して乳酸発酵を行い得る。これにより、乳酸菌がよりいっそう増殖し得る。したがって、十分な量の乳酸菌をよりいっそう確実に確保し得る。
【0062】
第1混合物における糖の割合は、特に限定されない。第1混合物における糖の割合の下限は、第1混合物100質量部に対して2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることがさらに好ましい。これにより、乳酸菌は、十分な量の糖を利用して乳酸発酵を行い得る。
【0063】
第1混合物における糖の割合の上限は、第1混合物100質量部に対して10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、7質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、過剰な糖が酵母を増殖させることを防ぎ得る。
【0064】
糖の態様は、特に限定されない。糖の態様は、例えば、砂糖を含む態様でよい。砂糖は、特に限定されず、例えば、黒砂糖(黒糖とも称する。)等によって例示される含蜜糖、グラニュー糖、上白糖、及び三温糖等によって例示される精製糖、角砂糖及び氷砂糖によって例示される加工糖、原料糖、耕地白糖、並びにこれらの1以上を含む砂糖でよい。
【0065】
砂糖は、糖の結晶であり、結晶でない糖より容易に扱い得る。したがって、糖が砂糖の態様の糖を含むことにより、糖をよりいっそう容易に扱い得る。
【0066】
必須の態様ではないが、糖は、黒砂糖の態様の糖を含むことが好ましい。黒砂糖は、グルコースとフルクトースが結合したスクロースを主成分とし、カルシウム、鉄、及び亜鉛等の各種のミネラル分を多く含む。
【0067】
スクロースは、乳酸菌によって乳酸発酵に利用され得る。黒砂糖は、スクロースを主成分とするため、乳酸発酵がよりいっそう行われ得る。黒砂糖は、ミネラル分を多く含むため、乳酸菌は、黒砂糖に含まれるミネラル分を用いて生育し得る。これにより、乳酸菌がよりいっそう増殖し得る。したがって、十分な量の乳酸菌をよりいっそう確実に確保し得る。
【0068】
[無機質]
無機質は、特に限定されない。無機質は、例えば、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、及びこれらの1以上を含む無機質でよい。
【0069】
第1混合物が無機質を含むため、乳酸菌は、糖に由来する有機物だけでなく、活動に必要な無機質をも利用して生育し得る。これにより、乳酸菌がよりいっそう増殖し得る。したがって、十分な量の乳酸菌をよりいっそう確実に確保し得る。
【0070】
第1混合物における無機質の割合は、特に限定されない。第1混合物における無機質の割合の下限は、混合物100質量部に対して2質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることがさらに好ましい。これにより、乳酸菌は、十分な量の無機質を利用して乳酸発酵を行い得る。
【0071】
第1混合物における無機質の割合の上限は、混合物100質量部に対して8質量部以下であることが好ましく、6質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、過剰な無機質が酵母を増殖させることを防ぎ得る。
【0072】
(にがり)
必須の態様ではないが、無機質は、にがりを含むことが好ましい。
【0073】
食塩を含む混合物に対し発酵を行い、発酵生成物を得る方法が知られている。食塩の主成分である塩化ナトリウムに含まれる塩素及びナトリウムは、乳酸菌及び酵母において、細胞の浸透圧調整に寄与し得る。しかし、乳酸菌が必要とする無機栄養素は、塩化ナトリウムに含まれる塩素及びナトリウムだけではない。
【0074】
乳酸菌は、グルコースを代謝する解糖系及び/又は好気的代謝に関するTCA回路(TCAサイクル、トリカルボン酸回路、tricarboxylic acid cycle、クエン酸回路、クレブス回路とも称する。)における酵素反応において、マグネシウム、カリウム、及び/又はカルシウム等を賦活剤として必要とする。したがって、乳酸菌が活発に活動するには、塩素及びナトリウムだけでなく、マグネシウム、カリウム、及びカルシウムも必要である。
【0075】
無機質がにがりを含むことにより、乳酸菌は、後述する第1発酵工程において、にがりに由来するマグネシウム、カリウム、及びカルシウムを利用して活発に活動し得る。したがって、乳酸発酵がよりいっそう行われ、2ヶ月以下の比較的短い期間で第1発酵生成物を得ることを実現し得る。
【0076】
[水系溶媒]
水系溶媒は、乳酸菌の生育に適した水分を第1混合物に与える。水系溶媒は、特に限定されず、水及び各種の水溶液でよい。
【0077】
第1混合物における水系溶媒の割合は、特に限定されない。第1混合物における水系溶媒の割合の下限は、混合物100質量部に対して80質量部以上であることが好ましく、83質量部以上であることがより好ましく、85質量部以上であることがさらに好ましい。これにより、糖及び無機質等は、十分な量の水系溶媒に溶解し得る。
【0078】
第1混合物における水系溶媒の割合の上限は、混合物100質量部に対して95質量部以下であることが好ましく、92質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることがさらに好ましい。これにより、混合物における糖及び無機質等の濃度が低くなり、乳酸菌の活動を抑えることを防ぎ得る。
【0079】
[第1発酵工程の好ましい流れ]
以下、第1発酵工程の好ましい流れの一例を説明する。
【0080】
(第1貯留工程)
まず、第1発酵槽に第1混合物を貯留する第1貯留工程を行う。第1貯留工程により、第1発酵槽は、乳酸菌の生育に適した糖、無機質、及び水分を含む環境となる。第1発酵槽に玄米を含む混合物が貯留されることにより、乳酸菌は、玄米に由来するビタミンBを用いて生育し得る。
【0081】
第1発酵槽が実質的に密閉可能な槽である場合、第1貯留工程は、第1発酵槽を実質的に密閉する工程を含むことが好ましい。これにより、外部から第1発酵槽内部に酸素が入ることを防ぎ得る。第1発酵槽内部に酸素が入ることを防ぎ得るため、酸素を必要としない嫌気的過程である乳酸発酵が好適に行われ得る。
【0082】
(第1温度調整工程)
続いて、第1混合物を貯留した第1発酵槽の温度を乳酸発酵が行われる所定の範囲にする第1温度調整工程を行う。第1温度調整工程により、温度を調整された第1発酵槽において乳酸発酵が行われる。
【0083】
乳酸菌のうち中温性乳酸菌の至適生育温度は、25℃以上37℃以下の範囲及びその周辺であることが知られている。所定の範囲の下限は、特に限定されない。所定の範囲の下限は、20℃以上であることが好ましく、23℃以上であることがより好ましく、25℃以上であることがさらに好ましい。所定の範囲の下限を上述のとおり定めることにより、乳酸菌の至適生育温度により近づけられる。
【0084】
所定の範囲の上限は、特に限定されない。所定の範囲の上限は、50℃以下であることが好ましく、45℃以下であることがより好ましく、40℃以下であることがさらに好ましい。所定の範囲の上限を上述のとおり定めることにより、乳酸菌の至適生育温度により近づけられる。また、消費エネルギー量をよりいっそう減らし得る。
【0085】
温度を調節する方法は、特に限定されない。温度を調節する方法は、例えば、第1貯留槽を屋内に配置し、暖房設備、換気設備、及び/又は冷房設備等を用いて温度を調節する方法でよい。温度を調節する方法は、乳酸発酵を含む発酵によって生じる熱を用いる方法を含んでもよい。これにより、消費エネルギー量をよりいっそう減らし得る。
【0086】
(第1乳酸発酵工程)
続いて、第1発酵槽を用いて第1混合物に対する乳酸発酵を含む発酵を行う第1乳酸発酵工程を行う。第1乳酸発酵工程により、好熱性細菌の至適生育温度に達するまでの熱源として機能するために十分な量の乳酸菌を確保し得る。
【0087】
第1乳酸発酵工程では、玄米、糖、無機質及び水系溶媒の第1混合物に対し、乳酸発酵を含む発酵を行う。糖、無機質以外の成分をできるだけ少なく抑えることにより、乳酸発酵を含む発酵において、アルコール発酵を抑制し、好熱性細菌の至適生育温度に達するまでの熱源として機能するために十分な量の乳酸菌を確保し得る。
【0088】
アルコール発酵を抑制することにより乳酸菌の増殖が妨げられないため、比較的短い製造期間で土壌改良資材を製造し得る。アルコール発酵を抑制することにより好熱性細菌の生育が妨げられないため、好熱性細菌がよりいっそう増殖し得る。
【0089】
これにより、多量のエネルギーを消費して温度等を80℃以上の高温に調整することなく、比較的短い製造期間で発酵生成物を生成し得る。したがって、比較的短い製造期間で、かつ、少ないエネルギー消費量で土壌改良資材を提供し得る。
【0090】
必須の態様ではないが、第1乳酸発酵工程における発酵は、納豆菌、糸状菌、及び放線菌等によって例示される各種の菌による発酵を含んでもよい。これにより、乳酸菌が直接分解できない有機物を分解し得る。したがって、乳酸菌は、各種の菌により分解された有機物を利用して活発に活動し得る。したがって、乳酸発酵がよりいっそう行われ、比較的短い期間で第1発酵生成物を得ることを実現し得る。
【0091】
第1乳酸発酵工程における発酵の期間の下限は、14日間以上であることが好ましく、15日間以上であることがより好ましく、16日間以上であることがさらに好ましい。
【0092】
発酵の期間が短い場合、乳酸菌が十分な量まで増殖しないリスクが生じ得る。第1乳酸発酵工程における発酵の期間の下限を上述のとおり定めることにより、好熱性細菌の至適生育温度に達するまでの熱源として機能するために十分な量の乳酸菌を確保し得る。したがって、好熱性細菌を利用可能な土壌改良資材を提供し得る。
【0093】
第1乳酸発酵工程における発酵の期間の上限は、2ヶ月以下であることが好ましく、6週間以下であることがより好ましく、1ヶ月以下であることがさらに好ましい。
【0094】
発酵が進むと、発酵による有機物の分解が進み、乳酸菌の有機栄養源が減少する。発酵の期間が長い場合、乳酸菌の有機栄養源が減少することに伴って、乳酸菌が減少し得る。第1発酵工程における発酵の期間の上限を上述のとおり定めることにより、乳酸菌の減少を防ぎ、好熱性細菌の至適生育温度に達するまでの熱源として機能するために十分な量の乳酸菌を確保し得る。したがって、好熱性細菌を利用可能な土壌改良資材を提供し得る。
【0095】
(第1生成物取得工程)
続いて、乳酸発酵を含む発酵により第1発酵生成物を生成した第1発酵槽から第1発酵生成物を取得する第1生成物取得工程を行う。第1生成物取得工程により、第1発酵生成物を取得できる。
【0096】
〔第2発酵工程〕
第2発酵工程は、第2発酵槽で、植物性食品、糖、無機質及び水系溶媒の第2混合物に対し、乳酸発酵を含む発酵を行って第2発酵生成物を生成する工程である。
【0097】
[第2発酵槽]
第2発酵槽は、第1発酵槽とは異なる槽であれば、特に限定されず、第1発酵槽と同様でよい。
【0098】
[植物性食品]
植物性食品は、特に限定されない。植物性食品は、例えば、大豆及び小豆によって例示される豆類、麦によって例示される穀類、大和芋によって例示されるいも類、玉ねぎ及びにんにくによって例示される食用の球根、青じそ及びバジルによって例示されるハーブ類、しいたけによって例示されるきのこ類、梅によって例示される食用の果実、昆布によって例示される海藻類、及びこれらの1以上を含む植物性食品でよい。
【0099】
植物性食品は、カリウム及びリン等によって例示されるミネラルを動物性食品より豊富に含むことが知られている。第2発酵生成物が植物性食品を含む混合物に対して乳酸発酵を含む発酵がなされた発酵生成物であるため、乳酸菌は、植物性食品に由来するミネラルを利用して生育し得る。これにより、乳酸菌がよりいっそう増殖し得る。したがって、十分な量の乳酸菌をよりいっそう確実に確保し得る。
【0100】
[糖]
[無機質]
[水系溶媒]
糖、無機質、及び水系溶媒は、特に限定されず、第1発酵生成物の糖、無機質、及び水系溶媒と同じでよい。
【0101】
[第2発酵工程の好ましい流れ]
以下、第2発酵工程の好ましい流れの一例を説明する。
【0102】
(第2貯留工程)
まず、第2混合物を貯留可能な第2発酵槽に第2混合物を貯留する第2貯留工程を行う。第2貯留工程は、第1貯留工程と同様の工程でよい。
【0103】
(第2温度調整工程)
続いて、第2混合物を貯留した第2発酵槽の温度を乳酸発酵が行われる所定の範囲にする第2温度調整工程を行う。第2温度調整工程は、第1温度調整工程と同様の工程でよい。
【0104】
(第2乳酸発酵工程)
続いて、第1発酵槽とは異なる第2発酵槽を用いて第2混合物に対する乳酸発酵を含む発酵を行う第2乳酸発酵工程を行う。第2乳酸発酵工程は、特に限定されず、第1乳酸発酵工程と同様の工程でよい。
【0105】
(第2生成物取得工程)
続いて、乳酸発酵を含む発酵により第2発酵生成物を生成した第2発酵槽から第2発酵生成物を取得する第2生成物取得工程を行う。第2生成物取得工程は、特に限定されず、第1生成物取得工程と同様の工程でよい。
【0106】
〔第3発酵工程〕
第3発酵工程は、第3発酵槽で、動物性食品、糖、無機質及び水系溶媒の第2混合物に対し、乳酸発酵を含む発酵を行って第3発酵生成物を生成する工程である。
【0107】
[第3発酵槽]
第3発酵槽は、第1発酵槽及び第2発酵槽のいずれとも異なる槽であれば、特に限定されず、第1発酵槽と同様でよい。
【0108】
[動物性食品]
動物性食品は、特に限定されない。動物性食品は、例えば、サバによって例示される魚類の1以上を含む動物性食品でよい。
【0109】
動物性食品は、通常、天然のアミノ酸を植物性食品より多く含む。第3発酵生成物が動物性食品を含む混合物に対して乳酸発酵を含む発酵がなされた発酵生成物であるため、乳酸菌は、後述する第3発酵工程において、動物性食品に由来するアミノ酸を利用して生育し得る。これにより、乳酸菌がよりいっそう増殖し得る。したがって、十分な量の乳酸菌をよりいっそう確実に確保し得る。
【0110】
[糖]
[無機質]
[水系溶媒]
糖、無機質、及び水系溶媒は、特に限定されず、第1発酵生成物の糖、無機質、及び水系溶媒と同じでよい。
【0111】
[第3発酵工程の好ましい流れ]
以下、第3発酵工程の好ましい流れの一例を説明する。
【0112】
(第3貯留工程)
まず、第3混合物を貯留可能な第3発酵槽に第3混合物を貯留する第3貯留工程を行う。第3貯留工程は、第1貯留工程と同様の工程でよい。
【0113】
(第3温度調整工程)
続いて、第3混合物を貯留した第3発酵槽の温度を乳酸発酵が行われる所定の範囲にする第3温度調整工程を行う。第3温度調整工程は、第1温度調整工程と同様の工程でよい。
【0114】
(第3乳酸発酵工程)
続いて、第1発酵槽とは異なる第3発酵槽を用いて第3混合物に対する乳酸発酵を含む発酵を行う第3乳酸発酵工程を行う。第3乳酸発酵工程は、特に限定されず、第1乳酸発酵工程と同様の工程でよい。
【0115】
(第3生成物取得工程)
続いて、乳酸発酵を含む発酵により第3発酵生成物を生成した第3発酵槽から第3発酵生成物を取得する第3生成物取得工程を行う。第3生成物取得工程は、特に限定されず、第1生成物取得工程と同様の工程でよい。
【0116】
〔資材生成工程〕
第1発酵工程、第2発酵工程、及び第3発酵工程に続いて、第1発酵生成物、第2発酵生成物、及び第3発酵生成物を混合して乳酸菌含有土壌改良資材を生成する資材生成工程を行う。
【0117】
資材生成工程により、第1発酵槽、第2発酵槽、及び第3発酵槽のそれぞれで生成された第1発酵生成物、第2発酵生成物、及び第3発酵生成物を混合して乳酸菌含有土壌改良資材を生成できる。したがって、それぞれの発酵槽において、糖、無機質以外の成分をできるだけ少なく抑えることと、土壌改良資材に含まれる成分を豊かにすることとを両立し得る。
【0118】
本実施形態に記載の製造方法により製造された土壌改良資材に含まれる成分が豊かであるため、土壌改良資材をもみ殻に混ぜると乳酸菌、納豆菌、糸状菌、及び放線菌等によって例示される各種の菌がよく増殖し、温度をよりいっそう上げ得る。これにより、温度を好熱性細菌の至適生育温度まで上げることをよりいっそう確実に行い得る。
【0119】
したがって、好熱性細菌がよりいっそう増殖し得る。そして、増殖した好熱性細菌は、温度を80℃に上げ得る。これにより、製造期間を短くし、草の種、病原微生物、及び/又は寄生虫の卵等をよりいっそう減らし得る。
【0120】
本実施形態に記載の製造方法により製造された土壌改良資材によれば、60℃で培養する好熱性細菌を種菌として混合することなく、好熱性細菌を増殖させ得る。これにより、好熱性細菌の培養、管理及び/又は混合等に関する労力及び/又はエネルギーを費やすことなく、少ない労力及びエネルギー消費量で好熱性細菌を利用し得る。
【0121】
本実施形態に記載の製造方法によれば、十分な量の乳酸菌を確保し得るため、雑菌抑制といった公知の作用を有する土壌改良資材を提供できる。また、十分な量の乳酸菌を確保し得るため、光合成を旺盛にする効果、着色促進効果、品質改善効果、収量を増やす効果、作物等の耐病性を強化する効果等の公知の効果もよりいっそう見込み得る。
【0122】
したがって、本実施形態に記載の製造方法によれば、比較的短い製造期間で、かつ、少ない労力及びエネルギー消費量で好熱性細菌を利用可能な土壌改良資材を提供できる。
【0123】
<堆肥>
本発明の堆肥は、上述の製造方法により製造された改良資材にもみ殻を加え、もみ殻を改良資材に含まれる乳酸菌による乳酸発酵ともみ殻に含まれる好熱性細菌による高温発酵とを用いて分解する第1分解工程を含む製造方法により製造された堆肥である。第1分解工程については、後により詳細に説明する。
【0124】
必須の態様ではないが、本発明の堆肥の製造方法は、第1分解工程を含む製造方法により製造された堆肥に魚の煮干しを加え、少なくとも煮干しを高温発酵を用いて分解する第2分解工程を含むことが好ましい。第2分解工程については、後により詳細に説明する。
【0125】
以下、堆肥の製造方法の一例について、説明する。
【0126】
〔第1分解工程〕
第1分解工程は、上述の製造方法により製造された改良資材にもみ殻を加え、もみ殻を改良資材に含まれる乳酸菌による乳酸発酵ともみ殻に含まれる好熱性細菌による高温発酵とを用いて分解する工程である。
【0127】
[改良資材]
改良資材は、上述の製造方法により製造された改良資材である。改良資材は、温度を好熱性細菌の至適生育温度まで上げるための熱源となり得る十分な量の乳酸菌を含む。
【0128】
[もみ殻]
もみ殻は、もみの最も外側にある皮の部分であれば、特に限定されない。土壌にもみ殻を加えることにより、土壌の通気性及び/又は水はけを改善し得ることが知られている。もみ殻は、生分解されにくいケイ酸を多く含む。したがって、もみ殻の分解生成物は、生分解されずに残ったケイ酸を含み得る。そして、残ったケイ酸は、土壌の通気性及び/又は水はけを改善し得る。したがって、堆肥がもみ殻の分解生成物を含むことにより、土壌の通気性を改善すること及び/又は土壌の水はけを改善することを実現し得る堆肥を提供できる。
【0129】
[ぬか]
必須の態様ではないが、改良資材にぬかをさらに加えることが好ましい。ぬかは、有機物を豊富に含む。したがって、改良資材にもみ殻とぬかとを加えることにより、乳酸菌は、ぬかに含まれる有機物を利用して、よりいっそう活発に活動し得る。これにより、温度が好熱性細菌の至適生育温度までよりいっそう確実に上がり得る。
【0130】
改良資材にぬかをさらに加えることにより、好熱性細菌は、ぬかに含まれる有機物を利用して、よりいっそう活発に活動し得る。これにより、高温発酵がよりいっそう行われ得る。そして、温度を80℃以上の高温によりいっそう確実に上げ得る。
【0131】
[第1分解工程の好ましい流れ]
以下、第1分解工程の好ましい流れの一例を説明する。
【0132】
(もみ殻追加工程)
まず、改良資材にもみ殻等を加えるもみ殻追加工程を行う。もみ殻追加工程は、特に限定されず、例えば、改良資材ともみ殻等とを混ぜ合わせる工程でよい。
【0133】
もみ殻追加工程により、改良資材に含まれる乳酸菌による乳酸発酵ともみ殻に含まれる好熱性細菌による高温発酵とが始まる。これにより、乳酸発酵及び高温発酵によってもみ殻が分解される。
【0134】
(切り返し工程)
必須の態様ではないが、第1分解工程は、改良資材にもみ殻等を加えたもみ殻混合物を撹拌する切り返し工程を1以上含むことが好ましい。第1分解工程が切り返し工程を含むことにより、もみ殻混合物の深部における酸素不足を解消し得る。これにより、もみ殻混合物の深部において嫌気性細菌等がもみ殻等を腐敗させることを防ぎ得る。
【0135】
有機物であるもみ殻は、乳酸菌によって乳酸発酵され得る。したがって、第1分解工程により、乳酸菌は、分解生成物を生成する過程でよりいっそう乳酸発酵を行い、増殖し得る。これにより、温度が好熱性細菌の至適生育温度まで上がり得る。また、もみ殻は、納豆菌、糸状菌、及び放線菌等によって例示される各種の菌によっても分解され得る。これにより、温度が好熱性細菌の至適生育温度までよりいっそう確実に上がり得る。
【0136】
温度が好熱性細菌の至適生育温度まで上がると、もみ殻等に含まれる好熱性細菌が増殖する。増殖した好熱性細菌は、高温発酵によってもみ殻を分解し、よりいっそう温度を上げ得る。これにより、温度を80℃以上の高温に上げ得る。
【0137】
したがって、第1分解工程により、高温発酵によって、草の種、病原微生物、及び/又は寄生虫の卵等をよりいっそう減らし得る。これにより、雑草及び/又は病害を減らし得る。また、第1分解工程により、増殖した好熱性細菌がもみ殻を分解することにより、堆肥の製造期間を短くし得る。
【0138】
第1分解工程を含む製造方法によって製造された堆肥によれば、増殖した乳酸菌及び/又は好熱性細菌が病原微生物の増殖を防ぐことを見込み得る。これにより、病害をよりいっそう減らし得る。また、第1分解工程を含む製造方法によって製造された堆肥によれば、改良資材に含まれる成分及び/又は分解されたもみ殻に由来する成分により、収穫の最盛期に向かうにつれて収量が減る成り疲れを防ぐことも見込み得る。
【0139】
〔第2分解工程〕
第2分解工程は、第1分解工程により製造された堆肥に魚の煮干しを加え、少なくとも煮干しを高温発酵を用いて分解する工程である。
【0140】
[魚の煮干し]
魚の煮干しは、特に限定されない。魚の煮干しは、例えば、カタクチイワシ、マイワシ、ウルメイワシ、キビナゴ、アジ、サバ、及びトビウオ等によって例示される魚を煮て干した煮干しでよい。
【0141】
[その他の材料]
第2分解工程において、第1分解工程を含む製造方法によって製造された堆肥に昆布等によって例示される海藻類をさらに加えることが好ましい。海藻類を加えることにより、海藻類に由来するミネラルを供給可能な堆肥を提供し得る。
【0142】
第2分解工程において、第1分解工程を含む製造方法によって製造された堆肥にかつお節等によって例示される魚を煮熟してから乾燥させた保存食品を加えることが好ましい。魚を煮熟してから乾燥させた保存食品を加えることにより、該保存食品に由来するイノシン酸等のアミノ酸を供給可能な堆肥を提供し得る。
【0143】
[場所]
第2分解工程を行う場所は、特に限定されない。第2分解工程は、ビニールハウスの内部等によって例示される屋内で行われることが好ましい。カラス及び野良猫等によって例示される魚を好む害獣がいる。魚を好む害獣は、屋外にある魚の煮干しを食べ得る。第2分解工程が屋内で行われることにより、魚の煮干しが魚を好む害獣によって食べられることを防ぎ得る。
【0144】
[第2分解工程の好ましい流れ]
以下、第2分解工程の好ましい流れの一例を説明する。
【0145】
(煮干し追加工程)
まず、第1分解工程を含む製造方法によって製造された堆肥に魚の煮干し等を加える煮干し追加工程を行う。煮干し追加工程は、特に限定されず、例えば、第1分解工程を含む製造方法によって製造された堆肥と煮干し等とを混ぜ合わせる工程でよい。
【0146】
第2分解工程を含む製造方法によって製造された堆肥によれば、増殖した乳酸菌及び/又は好熱性細菌が病原微生物の増殖を防ぐことを見込み得る。これにより、病害をよりいっそう減らし得る。
【0147】
(切り返し工程)
必須の態様ではないが、第2分解工程は、堆肥に魚の煮干し等を加えたものを撹拌する切り返し工程を1以上含むことが好ましい。第2分解工程が切り返し工程を含むことにより、堆肥に魚の煮干し等を加えた煮干し混合堆肥の深部における酸素不足を解消し得る。これにより、煮干し混合堆肥の深部において嫌気性細菌等が魚の煮干し等を腐敗させることを防ぎ得る。
【0148】
(第2分解工程における分解の期間)
第2分解工程における分解の期間の下限は、2週間以上であることが好ましく、3週間以上であることがより好ましく、4週間以上であることがさらに好ましい。
【0149】
分解の期間が短い場合、煮干し等が十分に分解されないリスクが生じ得る。第2分解工程における分解の期間の下限を上述のとおり定めることにより、もみ殻等を十分に分解し得る。したがって、煮干し等が十分に分解された堆肥を提供し得る。
【0150】
第2分解工程における分解の期間の上限は、4ヶ月以下であることが好ましく、3ヶ月以下であることがより好ましく、2ヶ月以下であることがさらに好ましい。
【0151】
分解が進むと、分解による有機物の分解が進み、乳酸菌及び/又は好熱性細菌の有機栄養源が減少する。分解の期間が長い場合、乳酸菌及び/又は好熱性細菌の有機栄養源が減少することに伴って、乳酸菌及び/又は好熱性細菌が減少し得る。第2分解工程における分解の期間の上限を上述のとおり定めることにより、乳酸菌及び/又は好熱性細菌の減少を防ぎ得る。
【0152】
魚の煮干しは、アミノ酸及びタンパク質を含む。魚の煮干しを生分解し、煮干しに含まれるタンパク質を分解できれば、アミノ酸をよりいっそう供給し得る堆肥を提供できる。しかし、水分活性が低い煮干しは、常温において生分解され難いことが知られている。したがって、魚の煮干しを用いてアミノ酸をよりいっそう供給し得る堆肥を提供することは、容易ではない。
【0153】
第1分解工程を含む製造方法によって製造された堆肥は、第1分解工程において増殖した好熱性細菌を含む。したがって、第2分解工程において、増殖した好熱性細菌による高温発酵を用いて煮干しを分解し得る。これにより、好熱性細菌がよりいっそう利用され得る。
【0154】
また、第2分解工程を含む製造方法によれば、第2分解工程において分解された煮干しに由来するアミノ酸を供給し得る堆肥を提供できる。これにより、食味向上の効果を作物等に対して及ぼすことを見込み得る。
【0155】
魚の煮干しは、マグネシウム、カリウム、及びカルシウム等によって例示されるミネラルを含む。したがって、第2分解工程を含む製造方法によれば、魚の煮干しに由来するミネラルを供給し得る堆肥を提供できる。これにより、耐病性向上、着色促進、食味向上、果実肥大、貯蔵性向上等の効果を作物等に対して及ぼすことをよりいっそう見込み得る。
【0156】
<土壌改良資材の使用方法>
以下、土壌改良資材の使用方法について説明する。
【0157】
〔水やりを介した土壌改良資材の使用〕
元肥及び/又は追肥を行うタイミングで、土壌改良資材を10倍程度に希釈し、水やり(かん水とも称する。)を介して作物等を育成する土壌に与える。10倍程度に希釈することにより、多量の肥料成分が作物等の根の機能を害する肥料焼けを防ぎ得る。水やりを介して土壌に与えることにより、土壌改良資材が作物等の葉や芽等から水分を奪うことなく、土壌改良資材が土壌に浸透する。
【0158】
混合物が土壌改良資材に含まれる成分を豊かにするため、土壌改良資材を土壌に浸透させると、乳酸菌、納豆菌、糸状菌、及び放線菌等によって例示される各種の菌がよく増殖し、温度をよりいっそう上げ得る。これにより、温度を好熱性細菌の至適生育温度まで上げることをよりいっそう確実に行い得る。
【0159】
したがって、土壌改良資材が第1発酵工程、第2発酵工程、及び第3発酵工程で得られた第1発酵生成物、第2発酵生成物、及び第3発酵生成物を混合した混合物を含むことにより、好熱性細菌がよりいっそう増殖し得る。そして、増殖した好熱性細菌は、温度を80℃以上の高温に上げ得る。これにより、製造期間を短くし、草の種、病原微生物、及び/又は寄生虫の卵等をよりいっそう減らし得る。
【0160】
土壌改良資材が第1発酵工程、第2発酵工程、及び第3発酵工程で得られた第1発酵生成物、第2発酵生成物、及び第3発酵生成物を混合した混合物を含むことにより、60℃で培養する好熱性細菌を種菌として混合することなく、好熱性細菌を増殖させ得る。これにより、好熱性細菌の培養、管理及び/又は混合等に関する労力及び/又はエネルギーを費やすことなく、少ない労力及びエネルギー消費量で好熱性細菌を利用し得る。
【0161】
土壌改良資材が第1発酵工程、第2発酵工程、及び第3発酵工程で得られた第1発酵生成物、第2発酵生成物、及び第3発酵生成物を混合した混合物を含むことにより、十分な量の乳酸菌を確保し得るため、雑菌抑制といった公知の作用を有する土壌改良資材を提供できる。また、十分な量の乳酸菌を確保し得るため、光合成を旺盛にする効果、着色促進効果、品質改善効果、収量を増やす効果、作物等の耐病性を強化する効果等の公知の効果もよりいっそう見込み得る。
【0162】
土壌改良資材に含まれる増殖した乳酸菌により、病原微生物の増殖を防ぐことを見込み得る。これにより、病害をよりいっそう減らし得る。病害をよりいっそう減らし得ることにより、農薬等の散布頻度を減らし得る。これにより、クモ等によって例示される益虫を増やし、害虫を減らし、虫害を防ぐことを見込み得る。
【0163】
土壌改良資材に含まれる増殖した乳酸菌により、土壌中の有機物をよりいっそう速く減らし得る。これにより、作物等の収穫後に残った葉及び/又は根がより短い期間で枯れ得る。したがって、収穫後の土壌から葉及び/又は根を取り除くことが容易となり、次の種まき及び/又は苗植えに関する労力を軽減し得る。
【0164】
したがって、土壌改良資材が第1発酵工程、第2発酵工程、及び第3発酵工程で得られた発酵生成物を混合した混合物を含むことにより、比較的短い製造期間で、かつ、少ない労力及びエネルギー消費量で好熱性細菌を利用可能な土壌改良資材を提供できる。
【0165】
〔希釈した土壌改良資材の散布〕
土壌改良資材を100倍程度及び/又は100倍以上に希釈し、作物等を育成する土壌に散布する。100倍程度及び/又は100倍以上に希釈することにより、多量の肥料成分が作物等の根の機能を害する肥料焼けを防ぎ得る。また、高濃度の肥料成分が作物等の葉や芽から水分を奪うことを防ぎ得る。散布することにより、水やりを行うかん水設備を介することなく、土壌改良資材を土壌に浸透させ得る。
【0166】
土壌改良資材が土壌に浸透することにより、土壌改良資材を元肥又は追肥として使用した場合と同様の効果を得うる。
【0167】
土壌に植えられている作物等が若い芽を有する場合、土壌改良資材を200倍程度及び/又は200倍以上に希釈し、作物等を育成する土壌に散布することが好ましい。土壌改良資材を200倍程度及び/又は200倍以上に希釈することにより、高濃度の肥料成分が若い芽から水分を奪うことを防ぎ得る。
【0168】
[水田への散布]
希釈した土壌改良資材を水田に散布する。水田に散布する時期は、特に限定されず、例えば、田植直後等でよい。水田では、アオミドロ等の藻類が発生し得る。藻類は、日光を遮ることで水温の上昇を妨げ、水田に植えられた稲等の生育を妨げ得る。土壌改良資材が増殖した乳酸菌を含むため、乳酸菌がアオミドロ等の藻類を分解することを見込み得る。これにより、水田に植えられた稲等の生育を促進し得る。
【0169】
<堆肥の使用方法>
以下、堆肥の使用方法について説明する。
【0170】
〔土全体に混ぜ込む使用方法〕
土全体に混ぜ込む使用方法では、本実施形態の堆肥を土壌にまき、土によくすきこむ。これにより、堆肥に含まれるもみ殻、分解生成物、乳酸菌、及び好熱性細菌が土壌全体に行き渡り得る。
【0171】
堆肥に含まれる分解生成物は、土壌に植えられる作物等に各種の養分を与え得る。これにより、収穫の最盛期に向かうにつれて収量が減る成り疲れを防ぐことを見込み得る。また、光合成を旺盛にする効果、着色促進効果、品質改善効果、収量を増やす効果、作物等の耐病性を強化する効果等の効果も見込み得る。
【0172】
堆肥に含まれるもみ殻及び/又は分解生成物は、乳酸菌、納豆菌、糸状菌、及び放線菌等によって例示される各種の菌をよく増殖させ得る。これにより、温度をよりいっそう上げ得る。したがって、土壌の温度を好熱性細菌の至適生育温度まで上げ得る。
【0173】
堆肥に含まれる乳酸菌は、乳酸発酵によって、土壌の温度を好熱性細菌の至適生育温度まで上げ得る。土壌の温度が好熱性細菌の至適生育温度まで上がると、堆肥、土壌及び/又はもみ殻等に含まれる好熱性細菌が増殖する。増殖した好熱性細菌は、高温発酵によってもみ殻を分解し、よりいっそう温度を上げ得る。これにより、温度を80℃以上の高温に上げ得る。
【0174】
高温発酵によって温度を80℃以上の高温に上げ得るため、草の種、病原微生物、及び/又は寄生虫の卵等をよりいっそう減らし得る。これにより、雑草及び/又は病害を減らし得る。
【0175】
堆肥に含まれる増殖した乳酸菌及び/又は好熱性細菌により、病原微生物の増殖を防ぐことを見込み得る。これにより、病害をよりいっそう減らし得る。病害をよりいっそう減らし得ることにより、農薬等の散布頻度を減らし得る。これにより、益虫を増やし、害虫を減らし、虫害を防ぐことを見込み得る。
【0176】
〔溝に入れる使用方法〕
溝に入れる使用方法では、土壌に溝を作り、本実施形態の堆肥を溝に入れ、その上から表土をかぶせて畝を作る。これにより、植えた直後の作物等の根が堆肥と直接接触することを防ぎ得る。したがって、堆肥を使用してすぐに作物等を植え得る。
【0177】
成長して溝の周辺に到達した作物等の根は、堆肥に由来する分解生成物を利用し得る。これにより、土全体に混ぜ込む使用方法と同様の効果を得うる。
【0178】
溝に入れた堆肥は、土全体に混ぜ込む使用方法と同様に、土壌の温度を上げ得る。これにより、土全体に混ぜ込む使用方法と同様の効果を得うる。
【0179】
溝に入れた堆肥は、土全体に混ぜ込む使用方法と同様に、乳酸菌及び/又は好熱性細菌により、病原微生物の増殖を防ぐことを見込み得る。これにより、土全体に混ぜ込む使用方法と同様の効果を得うる。
【0180】
〔植え穴に入れる使用方法〕
植え穴に入れる使用方法では、作物等の種等を植える植え穴の下部に本実施形態の堆肥を入れる。これにより、作物等は、堆肥に由来する分解生成物を無駄なく利用し得る。そして、土全体に混ぜ込む使用方法と同様の効果を得うる。
【0181】
植え穴に入れた堆肥は、土全体に混ぜ込む使用方法と同様に、土壌の温度を上げ得る。これにより、土全体に混ぜ込む使用方法と同様の効果を得うる。
【0182】
植え穴に入れた堆肥は、土全体に混ぜ込む使用方法と同様に、乳酸菌及び/又は好熱性細菌により、病原微生物の増殖を防ぐことを見込み得る。これにより、土全体に混ぜ込む使用方法と同様の効果を得うる。
【0183】
〔その他の使用方法〕
本実施形態の堆肥の使用方法は、上述の使用方法に限定されず、従来技術の堆肥を使用する各種の方法で使用し得る。そして、土全体に混ぜ込む使用方法と同様の効果を得うる。
【実施例】
【0184】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるもので
はない。
【0185】
<実施例1>土壌改良資材の製造
容量500リットルのタンクを複数用意し、玄米、大豆、小豆、麦、大和芋、ニンニク、サバ、昆布、玉ねぎ、青じそ、バジル、椎茸、及び梅のそれぞれを互いに相異なるタンクに投入した。
【0186】
続いて、各タンクに、20kgの黒糖、20kgのにがり、及び400リットルの水を投入して混ぜ合わせ、25℃以上の温度にして発酵を行った。
【0187】
各タンクにおいて2週間以上1ヶ月間以下の発酵を行った後に、各タンクにおいて生成された発酵生成物を混ぜ合わせ、土壌改良資材を生成した。
【0188】
<実施例2>もみ殻利用堆肥の製造
実施例1において製造した土壌改良資材ともみ殻とぬかとを混ぜ合わせ、土壌改良資材に含まれる乳酸菌及びもみ殻に含まれる好熱性細菌によってもみ殻が分解されたもみ殻利用堆肥を生成した。
【0189】
<実施例3>煮干し利用堆肥の製造
実施例2において製造した堆肥と魚の煮干しとをハウス内において混ぜ合わせ、堆肥に含まれる乳酸菌及び好熱性細菌によって煮干しを一ヶ月間分解し、煮干し利用堆肥を生成した。
【0190】
煮干し利用堆肥の製造においては、堆肥及び煮干しを混ぜ合わせたものを撹拌する切り返しを数回行い、混ぜ合わせたものの深部に空気を供給した。
【0191】
<比較例>従来技術の堆肥
窒素含有率2.1%、リン酸含有率1.8%、カリウム含有率0.6%、窒素炭素比13である従来技術のもみ殻堆肥を用意した。
【0192】
<野菜畑への散布試験>
実施例1において製造した土壌改良資材を100倍に希釈し、野菜畑に散布する散布試験を行った。
【0193】
希釈した土壌改良資材を散布した野菜畑において、野菜の葉を食べる害虫を捕食する複数種類の蜘蛛が生息することを確認した。また、希釈した土壌改良資材を散布した野菜畑において、トンボ及びカエルが生息することを確認した。
【0194】
希釈した土壌改良資材を散布することにより、野菜畑における生態系が改善され、益虫である蜘蛛及びトンボ並びにカエルが増加したものと考えられる。これらが害虫を捕食することにより、虫害が減少したと考えられる。
【0195】
<収穫後の水田への散布試験>
実施例1において製造した土壌改良資材を100倍に希釈し、収穫を終えた11月の水田の一部に散布する散布試験を行った。
【0196】
希釈した土壌改良資材を散布した水田の一部における収穫後のイネが枯れるまでの期間が希釈した土壌改良資材を散布しなかった水田の残りの部分における収穫後のイネが枯れるまでの期間より短い期間となった。
【0197】
土壌改良資材に含まれる増殖した乳酸菌により、土壌中の有機物がよりいっそう速く減り、収穫後のイネがより短い期間で枯れたと考えられる。これにより、田植えの準備に関する労力を軽減し得る。
【0198】
<田植え直後の水田への使用試験>
実施例1において製造した土壌改良資材を10倍に希釈し、アオミドロが浮く田植え直後の水田に水やりを介して使用する使用試験を行った。
【0199】
希釈した土壌改良資材を使用した水田が白色の乳酸菌コロニーによって覆われた。乳酸菌コロニー周辺にクモ及びイトトンボが確認された。
【0200】
アオミドロが有機物であるため、土壌改良資材に含まれる乳酸菌がアオミドロ周辺において増殖したものと考えられる。これにより、アオミドロが減少し、アオミドロが日光を遮り水温上昇を妨げる現象を防ぐ効果を期待し得るものと考えられる。土壌改良資材の使用により、益虫であるクモ及びイトトンボが増加する効果が得られたものと考えられる。
【0201】
<成分測定試験>
実施例2において製造したもみ殻利用堆肥及び実施例3において製造した煮干し利用堆肥のそれぞれについて、窒素、リン酸、及びカリウムの含有率を測定した。また、実施例2において製造したもみ殻利用堆肥及び実施例3において製造した煮干し利用堆肥のそれぞれについて、窒素に対する炭素の比である炭素窒素比を測定した。測定結果は、表1のとおりであった。
【表1】
【0202】
実施例2において製造したもみ殻利用堆肥及び実施例3において製造した煮干し利用堆肥は、いずれも、窒素含有率及びリン酸含有率のそれぞれにおいて、比較例のもみ殻堆肥より低い値を示した。
【0203】
実施例2において製造したもみ殻利用堆肥は、比較例のもみ殻堆肥より高いカリウム含有率を示した。また、実施例2において製造したもみ殻利用堆肥及び実施例3において製造した煮干し利用堆肥は、いずれも、炭素窒素比が比較例のもみ殻堆肥より高い値を示した。
【0204】
もみ殻利用堆肥及び煮干し利用堆肥は、過剰な窒素による耐病性低下及び虫害増加を防ぎ得るものと考えられる。また、もみ殻利用堆肥及び煮干し利用堆肥は、過剰なリン酸による生育不良及びミネラル欠乏の誘発を防ぎ得るものと考えられる。
【0205】
もみ殻利用堆肥は、カリウム不足による色味低下及び食味低下を防ぎ得るものと考えられる。
【0206】
炭素を主成分とする有機栄養素並びにマグネシウム及びカルシウム等によって例示されるミネラルは、窒素、リン酸、及びカリウムの含有量が少ないか、あるいは、これらを含まない。したがって、肥料に含まれる有機栄養素及び/又はミネラルが多いと、肥料に含まれる窒素、リン酸、及びカリウムの合計量が減ると考えられる。
【0207】
もみ殻利用堆肥及び煮干し利用堆肥は、いずれも、窒素含有率、リン酸含有率、及びカリウム含有率を合計した割合が、比較例の堆肥より小さい。したがって、もみ殻利用堆肥及び煮干し利用堆肥は、いずれも、比較例の堆肥より多くの有機栄養素及び/又はミネラルを含んでいるものと考えられる。
【0208】
もみ殻利用堆肥及び煮干し利用堆肥が比較例の堆肥より多くの有機栄養素及び/又はミネラルを含んでいることにより、有機栄養素及びミネラルを利用する乳酸菌及び/又は好熱性細菌の活動がより長く続くものと考えられる。したがって、病原微生物の増殖を防ぐ効果及び/又は草の種、病原微生物、及び/又は寄生虫の卵等を減らす効果をより長期間見込み得る。
【0209】
もみ殻利用堆肥及び煮干し利用堆肥は、いずれも、比較例のもみ殻堆肥より窒素炭素比が高いため、土作りに適していると考えられる。
【0210】
<畑への使用試験>
実施例2及び実施例3において製造した堆肥並びに比較例の堆肥を、種まき前の互いに相異なる畑に略均一に散布し、土にすき込んで使用した。そして、それぞれの畑に種をまき、作物を育てた。
【0211】
実施例2及び実施例3において製造した堆肥を使用した畑のいずれにおいても、比較例の堆肥を使用した畑より収量が改善された。
【0212】
堆肥に含まれる増殖した乳酸菌及び好熱性細菌が病原微生物の増殖を防いだこと並びに堆肥に含まれる分解生成物が土壌に植えられる作物等に各種の養分を与えたことにより、収量が改善されたと考えられる。
【0213】
以上、本発明の各種実施形態について説明したが、本発明は上述した各種実施形態に限るものではない。また、本発明の各種実施形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を列挙したものに過ぎず、本発明による効果は、本発明の各種実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【0214】
また、上述した各種実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態における構成の一部を他の実施形態における構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態における構成に他の実施形態における構成を加えることも可能である。

【要約】
【課題】比較的短い製造期間で、かつ、少ない労力及びエネルギー消費量で好熱性細菌を利用可能な土壌改良資材及び堆肥を提供する。
【解決手段】本発明の乳酸菌含有土壌改良資材の製造方法は、第1発酵槽で、玄米、糖、無機質及び水系溶媒の混合物に対し、乳酸発酵を含む発酵を行って第1発酵生成物を生成する第1発酵工程と、第1発酵槽とは異なる第2発酵槽で、植物性食品、糖、無機質及び水系溶媒の混合物に対し、乳酸発酵を含む発酵を行って第2発酵生成物を生成する第2発酵工程と、第1発酵槽及び第2発酵槽のいずれとも異なる第3発酵槽で、動物性食品、糖、無機質及び水系溶媒の混合物に対し、乳酸発酵を含む発酵を行って第3発酵生成物を生成する第3発酵工程と、第1発酵生成物、第2発酵生成物、及び第3発酵生成物を混合して乳酸菌含有土壌改良資材を生成する資材生成工程と、を含む。
【選択図】なし