(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記当接部は、前記第1の可動部材を前記第1の方向に移動させてから前記第2の可動部材を前記第2の方向に移動させた場合に、前記第2の可動部材から前記光学部に加えられる押圧力によって前記支持部に接触するスロープ面を有する
ことを特徴とする請求項2に記載のレンズ収納容器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記汎用型眼内レンズは、たとえばイン・ザ・バッグやアウト・ザ・バッグの術式だけに対応可能な眼内レンズに比べて、支持部の先端側が、より長く、より細く、光学部の外側に延伸している。その理由は、たとえば、強膜内固定の術式を採用する場合、支持部の長さが短いと強膜に対する支持部の埋め込み寸法が不足し、また、支持部の先端側が太いと強膜内に支持部を挿入しづらくなるからである。
【0008】
従来のレンズ収納容器は、支持部を延伸させたまま光学部を押し込んで眼内レンズを折り畳む機構になっているが、上記汎用型眼内レンズを眼内レンズ挿入器具にセットするには、よりコンパクトに眼内レンズを折り畳む必要があった。
【0009】
本発明の目的は、光学部と支持部を有する眼内レンズをよりコンパクトに折り畳むことができるレンズ収納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第1の態様)
本発明の第1の態様は、
レンズ機能を有する光学部と、前記光学部から延伸する少なくとも1つの支持部と、を備える眼内レンズを収納可能なレンズ収納容器であって、
前記眼内レンズが設置されるレンズ設置部を有する容器本体と、
前記レンズ設置部に設置される前記眼内レンズを折り畳むための折り畳み機構と、
を備え、
前記折り畳み機構は、
前記容器本体に対して第1の方向に移動可能に取り付けられるとともに、前記支持部を前記第1の方向から押圧する部分を有する第1の可動部材と、
前記容器本体に対して前記第1の方向と異なる第2の方向に移動可能に取り付けられるとともに、前記光学部を前記第2の方向から押圧する部分を有する第2の可動部材と、
を少なくとも含む、
ことを特徴とするレンズ収納容器である。
(第2の態様)
本発明の第2の態様は、
前記折り畳み機構は、
前記第1の可動部材を前記第1の方向に移動させてから前記第2の可動部材を前記第2の方向に移動させた場合に、前記第2の可動部材から前記光学部に加えられる押圧力によって前記支持部に接触しつつ、前記支持部を立ち上げる当接部を含む
ことを特徴とする上記第1の態様に記載のレンズ収納容器である。
(第3の態様)
本発明の第3の態様は、
前記当接部は、前記第1の可動部材を前記第1の方向に移動させてから前記第2の可動部材を前記第2の方向に移動させた場合に、前記第2の可動部材から前記光学部に加えられる押圧力によって前記支持部に接触するスロープ面を有する
ことを特徴とする上記第2の態様に記載のレンズ収納容器である。
(第4の態様)
本発明の第4の態様は、
前記容器本体は、前記第2の可動部材が取り付けられる第2の被取付部を有し、
前記スロープ面は、前記第2の方向を向いて配置されるとともに、前記スロープ面の下側が上側よりも前記第2の被取付部の近くなるように傾斜している
ことを特徴とする上記第3の態様に記載のレンズ収納容器である。
(第5の態様)
本発明の第5の態様は、
前記当接部は、前記第1の可動部材に設けられ、
前記第1の可動部材の高さ方向に平行な基準軸に対する前記スロープ面の傾斜角度は、0度超60度以下である
ことを特徴とする上記第4の態様に記載のレンズ収納容器である。
(第6の態様)
本発明の第6の態様は、
前記当接部は、前記支持部が前記光学部の内側に抱き込まれるよう、前記スロープ面によって前記支持部を立ち上げるものである
ことを特徴とする上記第2〜第5の態様のいずれか1つに記載のレンズ収納容器である。
(第7の態様)
本発明の第7の態様は、
前記第1の可動部材は、前記支持部の先端側が前記光学部の下側に入り込むように、前記支持部を前記第1の方向から押圧するものである
ことを特徴とする上記第1〜第6の態様のいずれか1つに記載のレンズ収納容器である。
(第8の態様)
本発明の第8の態様は、
前記第2の可動部材は、前記光学部が逆さU字形に折り畳まれるように、前記光学部を前記第2の方向から押圧するものである
ことを特徴とする上記第1〜第7の態様のいずれか1つに記載のレンズ収納容器である。
(第9の態様)
本発明の第9の態様は、
前記第1の可動部材および前記第2の可動部材のうち少なくとも一方の可動部材を前記容器本体上で移動させるときの誤操作を防止する誤操作防止機構を備える
ことを特徴とする上記第1〜第8の態様のいずれか1つに記載のレンズ収納容器である。
(第10の態様)
本発明の第10の態様は、
前記誤操作防止機構は、
前記第1の可動部材に設けられた第1誤操作防止部と、
前記第2の可動部材に設けられた第2誤操作防止部と、
を有し、
前記第2の可動部材を前記第2の方向に移動させてから前記第1の可動部材を前記第1の方向に移動させようとした際に、前記第1誤操作防止部と前記第2誤操作防止部との接触により、前記第1の可動部材の移動を阻止するように構成されている
ことを特徴とする上記第9の態様に記載のレンズ収納容器である。
(第11の態様)
本発明の第11の態様は、
前記第2の可動部材は、前記第2の方向において移動開始位置と移動終端位置との間で移動可能であり、
前記誤操作防止機構は、
前記第2の可動部材が前記第2の方向において前記移動開始位置に配置されているときのみ、前記第1の方向において前記第1の可動部材の移動を許容するように構成されている
ことを特徴とする上記第9または第10の態様に記載のレンズ収納容器である。
(第12の態様)
本発明の第12の態様は、
前記第1の可動部材は、前記第1の方向において移動開始位置と移動終端位置との間で移動可能であり、
前記誤操作防止機構は、
前記第1の可動部材が前記第1の方向において前記移動開始位置または前記移動終端位置に配置されているときのみ、前記第2の方向において前記第2の可動部材の移動を許容するように構成されている
ことを特徴とする上記第9〜第11の態様のいずれか1つに記載のレンズ収納容器である。
(第13の態様)
本発明の第13の態様は、
前記レンズ設置部に載置される前記眼内レンズを備える
ことを特徴とする上記第1〜第12の態様のいずれか1つに記載のレンズ収納容器である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、光学部と支持部を有する眼内レンズをよりコンパクトに折り畳むことができるレンズ収納容器を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の実施形態においては、次の順序で説明を行う。
1.眼内レンズの構成
2.レンズ収納容器の構成
3.レンズ収納容器の組立手順(製造方法)
4.レンズ収納容器の使用方法(操作手順)
5.誤操作防止の原理
6.実施形態の効果
7.変形例等
【0014】
<1.眼内レンズの構成>
図1(a)は本発明の実施形態に係る眼内レンズの構成例を示す平面図であり、(b)はその側面図である。
図示した眼内レンズ1は、上記4つの術式に対応可能な汎用型眼内レンズである。この眼内レンズ1は、レンズ機能を有する光学部2と、光学部2を支持する支持部3と、を備える。
【0015】
光学部2は、平面視円形の凸レンズ形状に形成されている。光学部2の直径は、眼内レンズ1を眼内の水晶体嚢に挿入するのに適した寸法であれば、どのような寸法に設定してもかまわない。具体的な寸法設定例を記述すると、光学部2の直径Dは、好ましくは、5mm〜7mmの範囲に設定される。光学部2の厚みは、所望の屈折率等に合わせて設定される。光学部2は、光学部2を折り畳み可能とする軟質材料によって構成されている。ここで記述する「折り畳み可能」という用語は、光学部2を含めて眼内レンズ1を少なくとも二つ折りにできるという意味で使用している。したがって、光学部2を構成する軟質材料は、光学部2を折り畳める程度の柔軟性を有する材料となる。具体的には、たとえば、シリコーン樹脂、アクリル系樹脂、ハイドロゲル、ウレタン系樹脂などの軟質材料を挙げることができる。
【0016】
支持部3は、光学部2の外周縁から外側に延伸するように形成されている。支持部3は、眼内レンズ1を眼内に挿入したときに、眼内において光学部2を支持する役目を果たす。支持部3は、光学部2の外周縁上で対をなすように、1つの眼内レンズ1に2つ形成されている。各々の支持部3は、光学部2の中心Cを通る仮想直線Sが光学部2の外周縁に交差する部分を支持部3の基端とし、この基端から図の時計回り方向に略円弧を描くように延伸している。このため、光学部2の外周縁に沿う円周方向においては、2つの支持部3が180度の間隔で配置されている。各々の支持部3は、以下のような共通の構造を有する。
【0017】
支持部3は、光学部2の外周縁から外側に腕状に延伸している。支持部3は、支持部3の基端を含む軟支持部4と、支持部3の先端を含む硬支持部5と、を備える。軟支持部4は、その基端が山裾状に幅広に形成され、最も幅広の部分で光学部2につながっている。軟支持部4は、光学部2の外周縁から延伸し、硬支持部5は、軟支持部4の先端(延伸端)からさらに延伸している。
【0018】
支持部3の外側の面は、軟支持部4から硬支持部5にかけて滑らかに連続した円弧を描いている。支持部3の内側の面には括れ部7が形成されている。括れ部7は、支持部3の長さ方向において硬支持部5に形成されている。括れ部とは、括れとなる箇所の両隣の方が幅の広い状態であり、括れとなる箇所の幅が相対的に狭くなっている部分をいう。括れ部7は、汎用型眼内レンズに必須の要素ではないが、支持部3に括れ部7を形成しておけば、眼内レンズ1の挿入に際して縫着固定を採用する場合に、括れ部7に縫合糸を巻き付けることができる。このため、支持部3から縫合糸が外れにくくなる。
【0019】
軟支持部4と硬支持部5とは、光学部2の中心Cから半径Rの仮想円弧線を描いたときに、この仮想円弧線を境界として区分されている。すなわち、支持部3は、半径Rの仮想円弧線よりも内側の部分を軟支持部4とし、半径Rの仮想円弧線よりも外側の部分を硬支持部5としている。
【0020】
軟支持部4は、光学部2の径方向に弾性変形可能な柔軟性(可撓性)を有する。軟支持部4は、光学部2と同じ軟質材料によって、光学部2と一体に成形されている。なお、ここで言う「一体に成形」とは、同じ材料を用いて光学部2と軟支持部4とが一体となって形成されたことを指すものであり、光学部2と軟支持部4とを別部材として形成してから、これを接続したものではない。
【0021】
硬支持部5は、光学部2および軟支持部4よりも硬い硬質材料によって構成されている。硬支持部5に適用する硬質材料としては、硬支持部5に縫合糸を縛りつける場合に、多少強く縛りつけてもその部分がちぎれない程度の強度を保証できるものであればよい。具体的には、たとえば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)などの硬質の樹脂材料を用いることができる。硬支持部5の先端は、眼球の組織に接触してもこれにダメージを与えないように、若干丸みを帯びている。また、支持部3を構成する軟支持部4と硬支持部5は、それぞれの部位の構成材料が異なるだけで、構造的には一体化されている。
【0022】
硬支持部5は、括れ部7の両側の突起部分を除いて、軟支持部4よりも幅狭に形成されている。すなわち、軟支持部4の幅をW1(mm)、硬支持部5の幅をW2(mm)とすると、W1>W2となっている。硬支持部5の幅W2は、好ましくは0.3mm以下である。このように支持部3の先端側を幅狭形状とすることにより、たとえば、白内障手術に強膜内固定の術式を適用する場合に、強膜に対して支持部3の先端部を挿入しやすくなる。また、インザバックやアウトザバックの術式を適用する場合は、水晶体嚢の赤道付近や毛様溝に対して支持部3が容易に安定して嵌まるようになり、縫着固定の術式を適用する場合は、硬支持部5に縫合糸を巻き付けやすくなる。
【0023】
上述した眼内レンズの構成は、上記特許文献3に記載された内容の一部を含むものであるが、当該文献の他の記載内容を本実施形態に適用してもかまわない。
【0024】
<2.レンズ収納容器の構成>
図2は本発明の実施形態に係るレンズ収納容器の構成例を示す上面図であり、
図3はその下面図である。また、
図4は本発明の実施形態に係るレンズ収納容器を上側から見た斜視図であり、
図5はそのレンズ収納容器を下側から見た斜視図である。また、
図6は本発明の実施形態に係るレンズ収納容器の分解斜視図である。
【0025】
本発明の実施形態に係るレンズ収納容器は、眼内レンズを収納可能であるとともに、収納した眼内レンズを所定の形状に折り畳む折り畳み機構を備える。ここで記述する「所定の形状」とは、白内障手術で眼内レンズを眼内に移植するときに、その手術の術式に適合する眼内レンズの折り畳み形状をいう。
【0026】
上述した汎用型眼内レンズ1を取り扱う場合、上記「所定の形状」には、次に述べる第1の折り畳み形状と第2の折り畳み形状が、少なくとも含まれる。第1の折り畳み形状は、一の支持部3を延伸させたまま他の支持部3を光学部2の内側に抱き込む(包み込む)ように眼内レンズ(主に光学部3)1を二つ折りにする形状である。以降の説明では、眼内レンズ1を第1の折り畳み形状で折り畳む場合に、光学部2の内側に抱き込む対象となる支持部3に符号3aを付し、延伸させたままとする支持部3に符号3bを付す。第2の折り畳み形状は、両方の支持部3を延伸させたまま眼内レンズ1を二つ折りにする形状である。第1の折り畳み形状は、イン・ザ・バッグまたはアウト・ザ・バッグの術式に適合する形状であり、第2の折り畳み形状は、縫着固定または強膜内固定の術式に適合する形状である。つまり、本実施形態のレンズ収納容器を使用すれば、あらかじめ選択肢として用意された2つの折り畳み形状から、白内障手術の術式に適合する折り畳み形状を選択して、眼内レンズを折り畳むことが可能となる。なお、レンズ収納容器を用いて眼内レンズ1を折り畳む場合は、レンズ収納容器を所定の手順で操作する必要がある。レンズ収納容器の操作手順は、いずれの折り畳み形状を選択(眼科医などの手術者が採用)するかによって異なる。
【0027】
図2〜
図6に示すように、レンズ収納容器11は、容器本体12と、蓋部材13と、第1の可動部材14と、第2の可動部材15と、を備える。蓋部材13は、容器本体12に対して着脱可能に取り付けられる。第1の可動部材14は、容器本体12に対して第1の方向に移動可能に取り付けられる。第2の可動部材15は、容器本体12に対して上記第1の方向と異なる第2の方向に移動可能に取り付けられる。上述した折り畳み機構は、第1の可動部材14と第2の可動部材15とを、少なくとも含む。本実施形態においては、好ましい例として、第1の方向と第2の方向が、互いに90度(直角)をなす方向となっている。レンズ収納容器11において、折り畳み機構を構成する主要な部分は、容器本体12に形成された把持部32と、第1の可動部材14に形成された第1押圧部63および当接部64と、第2の可動部材15に形成された第2押圧部83である。
【0028】
レンズ収納容器11の構成要素となる容器本体12、蓋部材13、第1の可動部材14、第2の可動部材15は、たとえば、樹脂、金属、セラミックス等を用いて構成することができる。レンズ収納容器11の製造コストを考慮すると樹脂で構成することが好ましい。具体的には、たとえば、フッ素樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリサリフォン、ポリスチレン、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等の樹脂を用いることができる。また、容器本体12、蓋部材13、第1の可動部材14、および第2の可動部材15は、それぞれ樹脂の一体成形品によって構成することが好ましい。
【0029】
本実施形態においては、レンズ収納容器11の各部の相対的な位置関係や動作の方向などを明確にするために、次のように各方向を定義する。まず、第1の方向をX方向、第2の方向をY方向、X方向およびY方向と直角をなす方向をZ方向とする。また、X方向およびY方向に平行な方向を水平方向とし、これと直角をなす方向を垂直方向とする。Z方向は、レンズ収納容器11の高さ方向に相当する。レンズ収納容器11の高さ方向に関しては、蓋部材13が取り付けられる側を上方とし、それと反対側を下方とする。また、X方向、Y方向、Z方向の定義は、レンズ収納容器11の構成要素に含まれる容器本体12、第1の可動部材14、第2の可動部材15にも同様に適用されるものとする。なお、眼内レンズ1は
図1(b)に示す水平な姿勢でレンズ収納容器11に収納される。また、各々の支持部3の硬支持部5は、光学部2の外周縁よりも下方に配置される。
【0030】
(容器本体)
図7は容器本体を上側から見た斜視図であり、
図8は容器本体を下側から見た斜視図である。
容器本体12は、平面視略長方形の扁平構造になっている。容器本体12の短手方向はX方向、長手方向はY方向、高さ方向はZ方向に相当する。容器本体12は、長手方向の途中に段差部20を有する。段差部20は、X方向と平行な向きで形成され、その両端はラウンド形状(丸みを帯びた形状)に形成されている。容器本体12は、段差部20を境に、第1の部分21と第2の部分22に区分されている。第1の部分21は、第2の部分22よりも高さが低く形成されている。第1の部分21の上面21aは、凹凸のない平面に形成されている。
【0031】
第2の部分22は、平面視略正方形に区画されている。第2の部分22には、眼内レンズ1が設置(セット)されるレンズ設置部23と、第1の可動部材14が取り付けられる第1の被取付部24と、第2の可動部材15が取り付けられる第2の被取付部25とが設けられている。レンズ設置部23は、第2の部分22の中央部に形成されている。第1の被取付部24は、容器本体12の長辺側に相当する、第2の部分22の一辺側に形成され、第2の被取付部25は、容器本体12の短辺側に相当する、第2の部分22の他辺側に形成されている。
【0032】
容器本体12の外周縁には周壁16が形成されている。容器本体12の下面側は、周壁16の高さに応じて凹状にへこんでいる。容器本体12の下面側には、複数のリブ17が形成されている。これらのリブ17は、容器本体12に求められる機械的な強度(剛性等)を確保するために形成されたものである。
【0033】
(レンズ設置部)
レンズ設置部23には、平面視円形の貫通孔26が形成されている。貫通孔26は、第2の部分22の中心部に設けられている。貫通孔26の周囲には、突出部27が形成されている。突出部27は、第1の部分21の上面21aと平行をなす第2の部分22の上面22aよりも上方に突出している。また、突出部27は、傾斜面27aを有する。傾斜面27aは、貫通孔26の中心軸まわりに、当該中心軸からの半径が異なる大小2つの円弧を描いた場合に、大径側の円弧から小径側の円弧に向かって斜め上方に傾斜している。また、突出部27は、第2の部分22に形成された2つの嵌合部28,29により、第2の部分22の対角方向で大小2つの部分に分離されている。一方の嵌合部28はX方向に沿って形成され、他方の嵌合部29はY方向に沿って形成されている。これにより、2つの嵌合部28,29は、平面視略L字形に形成されている。また、突出部27の外側には、一対の嵌合孔30が設けられている。一対の嵌合孔30は、容器本体12の第2の部分22に蓋部材13を取り付けるために形成された孔である。各々の嵌合孔30の寸法は、容器本体12を平面視した場合(上方から見た場合)に、貫通孔26の中心軸を中心とした時計回り方向の下流側が相対的に小さくなっている。
【0034】
突出部27には、眼内レンズ1の光学部2を下から受けて水平に支持する支持面31と、光学部2をY方向で把持するための把持部32と、眼内レンズ1の支持部3bの先端部分を収容する収容部33と、眼内レンズ1の位置ずれを抑制する抑制部34とが設けられている。
【0035】
支持面31は、把持部32よりも貫通孔26寄りに配置されている。支持面31は、突出部27と上面とほぼ同一平面をなすように形成されている。把持部32は、突出部27の上面から上方に突出して形成されている。把持部32は、支持面31から斜めに立ち上がるオーバーハング面35を有する。オーバーハング面35は、レンズ設置部23に設置される眼内レンズ1の光学部2の外周縁に近接または接触するように配置される。
【0036】
収容部33は、突出部27の上面から上方に突出して形成されている。収容部33は、Y方向の一方を開放するように平面視略U字形に形成されている。抑制部34は、突出部27の上面から上方に突出して形成されている。抑制部34は、把持部32と収容部33との間に、平面視円形のピン形状に形成されている。
【0037】
(第1の被取付部)
第1の被取付部24は、第2の部分22のX方向の一方側に形成されている。第1の被取付部24には、上述した嵌合部28の他に、切り欠き部41と、長孔42と、被突き当て部43とが設けられている。第1の被取付部24の上面24aは、第2の部分22の上面22aよりも下方にへこんで形成されている。嵌合部28は、Y方向で相対向する2つの面によって形成されるとともに、これら2つの面に、それぞれX方向に沿ってガイド溝44(
図9)が形成されている。ガイド溝44は、第1の可動部材14の移動を案内するための溝である。
【0038】
切り欠き部41は、容器本体12に取り付けられる第1の可動部材14を手指の操作で移動できるように、容器本体12の長辺の一部をX方向に略U字形に切り欠いて形成されている。長孔42は、X方向に沿って形成されている。長孔42は、容器本体12に取り付けられる第1の可動部材14をX方向に移動させる場合に、その移動範囲をX方向の一方側で規制するための孔である。被突き当て部43は、容器本体12に取り付けられる第1の可動部材14をX方向に移動させる場合に、その移動範囲をX方向の他方側で規制するための部分である。被突き当て部43は、第1の被取付部24に取り付けられる第1の可動部材14の移動終端を規制するための部分である。ここで記述する移動終端とは、第1の可動部材14をX方向で前進移動させたときの移動終端をいう。被突き当て部43は、第1の被取付部24の上面24aから略垂直に起立する起立面によって形成されている。被突き当て部43は、X方向において把持部32に隣接する位置に形成されている。
【0039】
(第2の被取付部)
第2の被取付部25は、第2の部分22のY方向の一方側に形成されている。第2の被取付部25には、上述した嵌合部29の他に、切り欠き部46と、長孔47と、被突き当て部48(
図10)とが設けられている。第2の被取付部25の上面25aは、第2の部分22の上面22aよりも下方にへこんで形成されている。嵌合部29は、X方向で相対向する2つの面によって形成されるとともに、これら2つの面に、それぞれY方向に沿ってガイド溝49(
図10)が形成されている。ガイド溝49は、第2の可動部材15の移動を案内するための溝である。
【0040】
切り欠き部46は、容器本体12に取り付けられる第2の可動部材15を手指の操作で移動できるように、容器本体12の短辺の一部をY方向に略U字形に切り欠いて形成されている。長孔47は、Y方向に沿って形成されている。長孔47は、容器本体12に取り付けられる第2の可動部材15をY方向に移動させる場合に、その移動範囲をY方向の一方側で規制するための孔である。被突き当て部48は、容器本体12に取り付けられる第2の可動部材15をY方向に移動させる場合に、その移動範囲をY方向の他方側で規制するための部分である。被突き当て部48は、第2の被取付部25に取り付けられる第2の可動部材15の移動終端を規制するための部分である。ここで記述する移動終端とは、第2の可動部材15をY方向で前進移動させたときの移動終端をいう。被突き当て部48は、第2の被取付部25の上面25aから略垂直に起立する起立面によって形成されている。被突き当て部48は、Y方向において抑制部34に隣接する位置に形成されている。
【0041】
(蓋部材)
次に、
図6および
図11を用いて蓋部材13の構成について説明する。
図11は蓋部材を下側から見た斜視図である。
蓋部材13は、容器本体12の第2の部分22に上から被せるように取り付けられる。蓋部材13は、平面視略正方形に形成されている。蓋部材13の四隅はそれぞれラウンド形状に形成されている。蓋部材13の外周縁には周壁50が形成されている。蓋部材13の上面の中央部は、平面視円形にへこんでおり、そのへこみ部分に、通し孔51と、一対の覗き孔52とが形成されている。通し孔51は、蓋部材13の中心部に平面視円形に形成されている。通し孔51は、容器本体12に蓋部材13を取り付けたときに、貫通孔26と同軸に配置される。このため、容器本体12に蓋部材13を取り付けたまま、光学部2の光学特性を外部から確認することができる。一対の覗き孔52は、容器本体12のレンズ設置部23に眼内レンズ1を設置して蓋部材13を取り付けた状態でも、レンズ収納容器11の外側から一対の支持部3a,3bの状態(位置や向き等)を目視で確認できるように、一対の支持部3a,3bの配置に対応した位置に設けられている。また、蓋部材13には、一対の通気孔53が設けられている。
【0042】
一方、蓋部材13の下面は、周壁50の存在によって凹状にへこんでおり、このへこみ部分に、円環部54と、レンズ抑え部55と、一対の係合部56とが形成されている。円環部54は、蓋部材13の下面から下方に突出して形成されるとともに、上記の通し孔51と同心円状に形成されている。円環部54は、容器本体12に蓋部材13を取り付けるときに、容器本体12の突出部27の外周縁近傍に配置される。レンズ抑え部55は、通し孔51の周囲に配置された複数(図例では4つ)のピンによって構成されている。レンズ抑え部55は、容器本体12のレンズ設置部23に眼内レンズ1を設置して蓋部材13を取り付けたときに、眼内レンズ1の光学部2の上面に近接して配置されることにより、眼内レンズ1のZ方向の動き(ガタツキ)を抑制するものである。一対の係合部56は、円環部54の外周上の2箇所に、それぞれ略L字形に形成されている。一対の係合部56は、容器本体12に蓋部材13を取り付けるときに、上述した一対の嵌合孔30に嵌合される。さらに、蓋部材13の上面には、一対の操作指示マーク57が形成されている。一対の操作指示マーク57は、蓋部材13を容器本体12から取り外すときに、容器本体12を回転操作する方向を矢印で示している。
【0043】
(第1の可動部材)
図12は第1の可動部材を上側から見た斜視図であり、
図13は第1の可動部材を下側から見た斜視図である。
第1の可動部材14は、レンズ設置部23に設置される眼内レンズ1を折り畳む際に、必要に応じて、支持部3aをX方向に押圧するための部材である。以降の説明では、X方向における第1の可動部材14の移動を、移動方向の違いによって前進移動と後退移動に区別する。前進移動とは、第1の可動部材14を相対的に第2の部分22の中心位置(貫通孔26の中心位置)に近づく方向に移動させることをいい、後退移動とは、第1の可動部材14を相対的に第2の部分22の中心位置から遠ざかる方向に移動させることをいう。また、第1の可動部材14を前進移動させるときの移動方向を前進方向、第1の可動部材14を後退移動させるときの移動方向を後退方向、第1の可動部材14を最も前進移動させたときの位置を、第1の可動部材14の移動終端位置、第1の可動部材14を最も後退移動させたときの位置を移動開始位置(または初期位置)という。
【0044】
第1の可動部材14は、平面視略T字形に形成されている。第1の可動部材14は、手術者の手指によって操作される第1操作部61と、第1操作部61から所定の幅で延在する第1スライダ部62と、眼内レンズ1の支持部3aを押圧するための第1押圧部63と、眼内レンズ1の光学部2の内側に支持部3aが抱き込まれるよう支持部3aを変形させるための当接部64と、容器本体12に蓋部材13が取り付けられた状態で第1の可動部材14の移動を規制する移動規制部65と、誤操作を防止するための第1誤操作防止部66と、を有する。第1誤操作防止部66は、後述する第2誤操作防止部86とともに、誤操作防止機構を構成する。誤操作防止機構は、第1の可動部材14および第2の可動部材15のうち少なくとも一方の可動部材を容器本体12上で移動させるときの誤操作を防止するものである。
【0045】
第1操作部61は、第1スライダ部62の両側から突出するようにレバー形状に形成されている。第1操作部61の下面側には、引っ掛け部67が形成されている。引っ掛け部67は、第1の可動部材14を手術者が操作するときに、手術者の指先(または爪)を引っ掛けるための部分である。
【0046】
第1スライダ部62は、第1の可動部材14を第1の被取付部24に取り付けるときに、容器本体12の嵌合部28に移動可能に嵌合される部分である。第1スライダ部62の下面には、ストッパー用の突起部62aが形成されている。突起部62aは、容器本体12の第1の被取付部24に第1の可動部材14を取り付けたときに、長孔42に嵌合される部分である。第1スライダ部62の両側面にはそれぞれガイドリブ68が形成されている。ガイドリブ68は、第1の可動部材14を第1の被取付部24に取り付けるときに、ガイド溝44に嵌合される部分である。
【0047】
第1押圧部63は、手術者が第1操作部61を操作して第1の可動部材14を前進移動させたときに、眼内レンズ1の支持部3aに接触してそのまま支持部3aを押圧する部分である。第1押圧部63は押圧面69を有する。第1押圧部63において、実際に支持部3aに接触する部分は押圧面69となる。
【0048】
当接部64は、第1の可動部材14をX方向に移動させてから第2の可動部材15をY方向に移動させた場合に、第2の可動部材15から光学部2に加えられる押圧力によって支持部3aに接触しつつ、支持部3aを立ち上げる部分である。当接部64は、第1押圧部63に隣接した位置に設けられている。当接部64の上端側は、第1押圧部63よりも上方に突出している。当接部64は、上述のように第1の可動部材14をX方向に移動させたときに、第1押圧部63と共に支持部3aに接触する。ただし、支持部3aに対して、当接部64が接触する位置は第1押圧部63よりも支持部3aの先端側(具体的は、支持部3aの長さ方向の中間部か、それよりも少し支持部3aの先端寄りの位置)となる。当接部64は、スロープ面70を有する。スロープ面70は、上述のように第1の可動部材14をX方向に移動させてから第2の可動部材15をY方向に移動させた場合に、第2の可動部材15から光学部2に加えられる押圧力によって支持部3aに接触する面である。スロープ面70は、平らな面で形成されるとともに、第1スライダ部62の幅方向の一方を向いて配置されている。第1の被取付部24に第1の可動部材14を取り付けた状態では、当接部64のスロープ面70がY方向の一方(第2の被取付部25側)を向いて配置される。
【0049】
スロープ面70は、スロープ面70の下側が上側よりも第2の被取付部25に近くなるように傾斜している。このため、第2の可動部材15を第2の被取付部25に取り付けた状態では、Y方向において、スロープ面70の下側が上側よりも第2の可動部材15の近くに配置される。また、
図14に示すように、第1の可動部材14の高さ方向に平行な軸を基準軸Kとすると、この基準軸Kに対するスロープ面70の傾斜角度θ(
図14)は、好ましくは0度超60度以下、より好ましくは5度以上45度以下、さらに好ましくは8度以上30度以下である。容器本体12に第1の可動部材14を取り付けた場合、基準軸KはZ方向に平行な軸となる。
【0050】
移動規制部65は、第1スライダ部62の上面に突状に形成されている。移動規制部65は、容器本体12に蓋部材13を取り付けたときに、円環部54の外周面に対向かつ近接して配置される。このため、容器本体12に蓋部材13を取り付けたままで第1の可動部材14を初期位置から前進移動させようとすると、移動規制部65が円環部54に接触し、これによって第1の可動部材14の前進移動が規制(阻止)される。
【0051】
第1誤操作防止部66は、第1スライダ部62の幅方向と直交する方向(X方向)において、第1操作部61の反対側に配置されている。第1誤操作防止部66の一部は、所定の隙間Gを介して、第1押圧部63と対向する位置に形成されている。第1誤操作防止部66は、Y方向から見て略逆L字形に形成されている。
【0052】
また、第1の可動部材14には、載置部71と、突き当て部72とが形成されている。載置部71は、レンズ設置部23に眼内レンズ1を設置したときに、支持部3aが載置される部分である。突き当て部72は、第1の可動部材14を初期位置からX方向に前進移動させたときに、第1の被取付部24の被突き当て部43に突き当たることにより、第1の可動部材14の移動終端を規制する部分である。
【0053】
(第2の可動部材)
図15は第2の可動部材を上側から見た斜視図であり、
図16は第2の可動部材を下側から見た斜視図である。
第2の可動部材15は、レンズ設置部23に設置された眼内レンズ1を折り畳む際に、光学部2をY方向に押圧するための部材である。以降の説明では、Y方向における第2の可動部材15の移動を、移動方向の違いによって前進移動と後退移動に区別する。前進移動とは、第2の可動部材15を相対的に第2の部分22の中心位置(貫通孔26の中心位置)に近づく方向に移動させることをいい、後退移動とは、第2の可動部材15を相対的に第2の部分22の中心位置から遠ざかる方向に移動させることをいう。また、第2の可動部材15を前進移動させるときの移動方向を前進方向、第2の可動部材15を後退移動させるときの移動方向を後退方向、第2の可動部材15を最も前進移動させたときの位置を移動終端位置、第1の可動部材14を最も後退移動させたときの位置を移動開始位置(または初期位置)という。
【0054】
第2の可動部材15は、平面視略T字形に形成されている。第2の可動部材15は、手術者の手指によって操作される第2操作部81と、第2操作部81から所定の幅で延在する第2スライダ部82と、眼内レンズ1の光学部2を押圧するための第2押圧部83と、容器本体12に蓋部材13が取り付けられた状態で第2の可動部材15の移動を規制する移動規制部85と、誤操作を防止するための第2誤操作防止部86と、を有する。
【0055】
第2操作部81は、第2スライダ部82の両側から突出するようにレバー形状に形成されている。第2操作部81の下面側には、引っ掛け部87が形成されている。引っ掛け部87は、第2の可動部材15を手術者が操作するときに、手術者の指先(または爪)を引っ掛けるための部分である。
【0056】
第2スライダ部82は、第2の可動部材15を第2の被取付部25に取り付けるときに、容器本体12の嵌合部29に移動可能に嵌合される部分である。第2スライダ部82の下面には、ストッパー用の突起部82aが形成されている。突起部82aは、容器本体12の第2の被取付部25に第2の可動部材15を取り付けたときに、長孔47に嵌合される部分である。第2スライダ部82の両側面にはそれぞれガイドリブ88が形成されている。ガイドリブ88は、第2の可動部材15を第2の被取付部25に取り付けるときに、ガイド溝49に嵌合される部分である。
【0057】
第2押圧部83は、手術者が第2操作部81を操作して第2の可動部材15を前進移動させたときに、眼内レンズ1の光学部2の外周縁に接触してそのまま光学部2を押圧する部分である。第2押圧部83は、支持面89から斜めに立ち上がるオーバーハング面90を有する。支持面89は、容器本体12側に形成された支持面31と同様に、眼内レンズ1の光学部2を下から受けて支持するための面である。支持面89は、第2の可動部材15の一端部に形成されている。オーバーハング面90は、
図17に示すように、容器本体12側に形成されたオーバーハング面35とY方向で対向するように配置され、これら2つのオーバーハング面35,90の間に眼内レンズ1の光学部2が配置される。オーバーハング面35,90は、レンズ設置部23に設置される眼内レンズ1の光学部2の外周縁に近接または接触するように配置される。そして、レンズ収納容器11の容器本体12上で眼内レンズ1を折り畳むときは、光学部2の外周縁がオーバーハング面35,90に接触することにより、光学部2が把持部32と第2押圧部83との間で把持されるとともに、オーバーハング面35,90の傾斜により、光学部2の外周縁が支持面31,89から過剰に浮き上がることが抑制される。
【0058】
移動規制部85は、第2スライダ部82の上面に突状に形成されている。移動規制部85は、容器本体12に蓋部材13を取り付けたときに、円環部54の外周面に対向かつ近接して配置される。このため、容器本体12に蓋部材13を取り付けたままで第2の可動部材15を初期位置から前進移動させようとすると、移動規制部85が円環部54に接触し、これによって第2の可動部材15の前進移動が規制(阻止)される。
【0059】
第2誤操作防止部86は、第2スライダ部82の幅方向と直交する方向(Y方向)において、第2操作部81の反対側に配置されている。第2誤操作防止部86は、第1の可動部材14側に形成された第1誤操作防止部66と協働することにより、レンズ収納容器11の誤操作を防止する。誤操作防止部66,86によって構成される誤操作防止機構は、第2の可動部材15がY方向において移動開始位置に配置されているときのみ、X方向において第1の可動部材14の移動を許容するように構成されている。また、誤操作防止機構は、第1の可動部材14がX方向において移動開始位置または移動終端位置に配置されているときのみ、Y方向において第2の可動部材15の移動を許容するように構成されている。誤操作防止機構による誤操作防止の原理については、後段で説明する。
【0060】
<3.レンズ収納容器の組立手順(製造方法)>
次に、本発明の実施形態に係るレンズ収納容器の組立手順について説明する。
まず、レンズ収納容器11の構成部品となる容器本体12、蓋部材13、第1の可動部材14および第2の可動部材15を用意したら、容器本体12の第1の被取付部24に第1の可動部材14を取り付けるとともに、第2の被取付部25に第2の可動部材15を取り付ける。第1の可動部材14と第2の可動部材15は、どちらを先に取り付けてもよい。
【0061】
ただし、第1の可動部材14と第2の可動部材15は、共に初期位置に配置しておく。第1の可動部材14の初期位置は、第1の可動部材14の後退移動により、第1スライダ部62下面の突起部62aを第1の被取付部24の長孔42の一端に突き当てることで一義的に決まる。第2の可動部材15の初期位置は、第2の可動部材15の後退移動により、第2スライダ部82下面の突起部82aを第2の被取付部25の長孔47の一端に突き当てることで一義的に決まる。
【0062】
次に、容器本体12のレンズ設置部23に眼内レンズ1を設置する。その際、眼内レンズ1の光学部2の中心が貫通孔26の中心に一致するように、眼内レンズ1を位置合わせしながら、支持面31,89の上に光学部2を載せる。また、眼内レンズ1の一方の支持部3aは、第1の可動部材14の載置部71に載せ、他方の支持部3bは、その先端部分を収容部33に収容する。ここで、載置部71に載せられる支持部3aは、レンズ収納容器11を使って折り畳んだ眼内レンズ1を眼内レンズ挿入器具にセットするときに、眼内レンズ挿入器具におけるレンズ押出方向において相対的に後方に配置され、収容部33に収容される支持部3bは、相対的の前方に配置される。
【0063】
次に、容器本体12に蓋部材13を取り付ける。蓋部材13を取り付ける場合は、容器本体12の一対の嵌合孔30に、蓋部材13の一対の係合部56を差し込み、その状態で蓋部材13を時計回り方向に回すことにより、一対の嵌合孔30に一対の係合部56を嵌合(係止)させる。このとき、必要に応じて、一対の支持部3a,3bの状態を覗き孔52を通して確認する。そして、いずれかの支持部3a(または3b)に異常が認められた場合は、容器本体12から蓋部材13を取り外し、必要に応じて新たな眼内レンズ1に交換した後、組立作業をやり直す。
【0064】
以上で、眼内レンズ1を収納(内蔵)したレンズ収納容器11が得られる。このレンズ収納容器11の内部では、水平方向における光学部2の位置が、把持部32のオーバーハング面35と第2押圧部83のオーバーハング面90によって規制される。また、水平方向においては、支持部3aの位置が当接部64によって規制されるとともに、支持部3bの位置が収容部33によって規制される。さらに、Z方向においては、光学部2の位置が、支持面31,89とレンズ抑え部55とによって規制される。このため、たとえば、眼内レンズ1を内蔵したレンズ収納容器11を運搬等する場合でも、眼内レンズ1を適正な位置および状態に保持することができる。
【0065】
また、容器本体12に蓋部材13を取り付けた状態では、第1の可動部材14に設けられた移動規制部65と、第2の可動部材15に設けられた移動規制部85が、いずれも、蓋部材13に設けられた円環部54の外周面に対向かつ近接して配置される。このため、第1の可動部材14と第2の可動部材15は、いずれも初期位置から前進移動させることはできない。つまり、容器本体12に蓋部材13を取り付けた状態では、移動規制部65,85と円環部54との物理的な接触により、第1の可動部材14と第2の可動部材15の操作が共に禁止される。
【0066】
<4.レンズ収納容器の使用方法(操作手順)>
次に、本発明の実施形態に係るレンズ収納容器の使用方法について説明する。
レンズ収納容器11を使用する際に採りうる操作方式には2つの方式がある。第1の操作方式は、光学部2の内側に支持部3aを抱き込むように眼内レンズ1を折り畳む場合に採用される。第1の操作方式を採用する場合は、第1の可動部材14を前進移動させてから、第2の可動部材15を前進移動させる。第2の操作方式は、2つの支持部3a,3bを共に延伸させたまま眼内レンズ1を折り畳む場合に採用される。第2の操作方式を採用する場合は、第1の可動部材14を前進移動させることなく、第2の可動部材15を前進移動させる。以降では、第1の操作方式を採用する場合に手術者が実施する操作の手順を例に挙げて説明する。
【0067】
まず、容器本体12から蓋部材13を取り外す。蓋部材13を取り外す場合は、
図18に示すように、操作指示マーク57の矢印が示す反時計回り方向に蓋部材13を回し、次いで容器本体12から離間するように蓋部材13を上方に持ち上げる。蓋部材13を反時計回り方向に回すと、一対の嵌合孔30と一対の係合部56との係止状態が解除される。また、蓋部材13を上方に持ち上げると、蓋部材13の円環部54による規制が解除され、第1の可動部材14と第2の可動部材15を操作できるようになる。また、蓋部材13を取り外すと、
図19にも示すように、容器本体12のレンズ設置部23に設置されている眼内レンズ1が外部に露出する。ここまでの手順は、操作方式の異同にかかわらず共通である。
【0068】
次に、
図20に示すように、第1の可動部材14を初期位置から移動終端位置へと前進移動させる。
図20では眼内レンズ1の表記を省略している。第1の可動部材14を前進移動させると、眼内レンズ1の支持部3aが第1の可動部材14の第1押圧部63によってX方向の一方に押し込まれる。このとき、水平方向における眼内レンズ1の位置ずれは、光学部2の外周縁が抑制部34に接触することによって抑制される。また、第1の可動部材14の前進移動によって押し込まれた支持部3aは、軟支持部4の部分を屈曲するように曲げられる。そして、第1の可動部材14を移動終端位置まで前進移動させると、
図21の平面図に示すように、支持部3aの先端側が光学部2の下側に入り込む。第1の可動部材14の移動終端位置は、第1の可動部材14の前進移動により、第1の可動部材14の突き当て部72を第1の被取付部24の被突き当て部43に突き当てることで一義的に決まる。
【0069】
次に、
図22に示すように、第2の可動部材15を初期位置から移動終端位置へと前進移動させる。第2の可動部材15を前進移動させると、第2押圧部83のオーバーハング面90(
図15)によって光学部2がY方向の一方に押し込まれる。ただし、Y方向においては、把持部32のオーバーハング面35と第2押圧部83のオーバーハング面90との間に光学部2が把持されているため、第2の可動部材15の前進移動によって光学部2を押し込むと、その押し込み量に応じて光学部2が徐々に二つ折りに折り畳まれていく。このときの光学部2の折り畳み形状は、X方向から見て逆さU字形になる。また、第2の可動部材15の移動終端位置は、第2の可動部材15の前進移動により、第2の可動部材15の突き当て部72を第2の被取付部25の被突き当て部48に突き当てることで一義的に決まる。
【0070】
上述のように第2の可動部材15を前進移動させると、支持部3aが第1の可動部材14の当接部64に接触する。このとき、支持部3aは、第2押圧部83から光学部2に加えられる押圧力によって当接部64のスロープ面70に押し当てられる。そうすると、支持部3aは、スロープ面70に接触しつつ徐々にせり上がる。これにより、支持部3aは、スロープ面70に沿って立ち上がる。その結果、支持部3aは、上述のように二つ折りされる光学部2の内側に抱き込まれる。これに対して、支持部3bは、第1の可動部材14および第2の可動部材15をそれぞれ前進移動させる前と同様に延伸されたままとなる。ただし、支持部3bの向きは、第2の可動部材15の前進移動による光学部2の変形に伴って変化する。具体的には、光学部2の変形により支持部3bの先端側が上を向くように起き上がる。
【0071】
図23(a)は眼内レンズ1の最終的な折り畳み形状をY方向の一方から見た図であり、(b)はX方向から見た図であり、(c)はY方向の他方から見た図である。図示のように眼内レンズ1を折り畳むと、支持部3aの先端側は斜め下向きとなり、支持部3bの先端側は斜め上向きとなる。
【0072】
その後、手術者は、
図24に示すように、光学部2を鑷子91で摘まむ。このとき、上記の操作によって光学部2の内側に抱き込まれた支持部3aは、二つ折りされた光学部2に挟まれるかたちで、光学部2と一緒に鑷子91によって摘ままれる。次いで、手術者は、鑷子91で摘まんだ眼内レンズ1を、容器本体12から取り出した後、図示しない眼内レンズ挿入器具にセットする。その際、光学部2の内側に抱き込まれた支持部3aは、延伸されたままの支持部3bに比べて、眼内レンズ挿入器具の中心軸方向の後方寄りに配置される。次に、手術者は、レンズ挿入器具を所定の手順で操作することにより、眼内レンズ1を眼内に向けて押し出す。これにより、眼内レンズ1は、レンズ挿入器具内でさらに小さく折り畳まれて眼内に挿入される。
【0073】
なお、一対の支持部3a,3bをそれぞれ延伸させたまま眼内レンズ1を折り畳む場合は、第1の可動部材14を初期位置から前進移動させずに、第2の可動部材15だけを初期位置から前進移動させる。これにより、一対の支持部3a,3bを延伸させたまま光学部2を二つ折りに折り畳むことができる。このため、たとえば縫着固定の術式を採用する場合は、容器本体12上で各々の支持部3a,3bに縫合糸を結び付けることが可能となる。
【0074】
<5.誤操作防止の原理>
続いて、レンズ収納容器11を操作する際に想定される誤操作の例と、誤操作防止の原理について説明する。
【0075】
(誤操作の例)
レンズ収納容器11を操作する際に想定される誤操作の例は、少なくとも次の3つが考えられる。第1の例は、第1の可動部材14を中途半端に前進移動させた状態で第2の可動部材15を前進移動させようとする場合である。第2の例は、第2の可動部材15を中途半端に前進移動させた状態で第1の可動部材14を前進移動させようとする場合である。第3の例は、第2の可動部材15を前進移動させてから、第1の可動部材14を前進移動させようとする場合である。
【0076】
(誤操作防止の原理)
第1の可動部材14を移動開始位置に配置した状態では、第1の可動部材14の第1誤操作防止部66が第2の可動部材15の移動経路から待避した位置に配置される。この状態では、誤操作防止部66,86同士が干渉しないため、第2の可動部材15の前進移動および後退移動が許容される。また、第1の可動部材14を移動終端位置に配置した状態では、第1の可動部材14の第1誤操作防止部66が第2の可動部材15の移動経路上に進出して配置される。この状態では、第2の可動部材15の前進移動および後退移動が、誤操作防止部66,86同士の嵌合によって許容される。
【0077】
これに対して、第1の可動部材14を中途半端に前進移動させた状態では、第1の可動部材14の第1誤操作防止部66が第2の可動部材15の移動経路に進出して配置される。この状態で第2の可動部材15を前進移動させようとすると、誤操作防止部66,86同士が接触(衝突)するため、第2の可動部材15の前進移動が規制(阻止)される。よって、上記第1の例の誤操作を防止することができる。なお、第1の可動部材14を中途半端に前進移動させた状態とは、第1の可動部材14を移動開始位置よりも前進させ、かつ移動終端位置よりも後退させた位置に配置した状態をいう。
【0078】
一方、第2の可動部材15を移動開始位置に配置した状態では、第2の可動部材15の第2誤操作防止部86が第1の可動部材14の移動経路から待避した位置に配置される。この状態では、誤操作防止部66,86同士が干渉しないため、第1の可動部材14の前進移動および後退移動が許容される。
【0079】
これに対して、第2の可動部材15を中途半端に前進移動させた状態、または第2の可動部材15を移動終端位置に配置した状態では、第2の可動部材15の第2誤操作防止部86が第1の可動部材14の移動経路上に進出して配置される。この状態で第1の可動部材14を前進移動させようとすると、誤操作防止部66,86同士が接触するため、第1の可動部材14の前進移動が規制される。よって、移動開始位置にある第1の可動部材14の前進移動は、第2の可動部材15が移動開始位置にあるときだけ許容される。このため、上記第2の例の誤操作および上記第3の例の誤操作を防止することができる。なお、第2の可動部材15を中途半端に前進移動させた状態とは、第2の可動部材15を移動開始位置よりも前進させ、かつ移動終端位置よりも後退させた位置に配置した状態をいう。
【0080】
<6.実施形態の効果>
本発明の実施形態によれば、以下に示す1つ又は複数の効果が得られる。
【0081】
(a)本発明の実施形態においては、容器本体12のレンズ設置部23に設置される眼内レンズ1に対し、支持部3aをX方向から押圧する第1押圧部63を有する第1の可動部材14と、光学部2をY方向から押圧する第2押圧部83を有する第2の可動部材15とを備えた折り畳み機構を採用している。これにより、支持部3aを第1の可動部材14でX方向に押し込んでから、光学部2を第2の可動部材15でY方向に押し込むことができる。このため、光学部2のみを押し込む場合に比較して、眼内レンズ1をよりコンパクトに折り畳むことができる。その結果、たとえば上記汎用型眼内レンズを取り扱う場合でも、これをコンパクトに折り畳んで取り出すことができる。
【0082】
(b)本発明の実施形態においては、第1の可動部材14をX方向に移動させてから第2の可動部材15をY方向に移動させた場合に、第2の可動部材15から光学部2に加えられる押圧力によって支持部3aに接触しつつ、その支持部3aを立ち上げる当接部64を備えた構成を採用している。これにより、支持部3aを光学部2の内側に抱き込むように眼内レンズ1を折り畳むことができる。
【0083】
(c)本発明の実施形態においては、第1の可動部材14をX方向に移動させてから第2の可動部材15をY方向に移動させた場合に、第2の可動部材15から光学部2に加えられる押圧力によって支持部3aが当接部64のスロープ面70に接触し、このスロープ面70に沿って支持部3aが立ち上がる構成を採用している。これにより、支持部3aをより確実に光学部2の内側に抱き込むことができる。
【0084】
(d)本発明の実施形態においては、第1の可動部材14および第2の可動部材15のうち少なくとも一方の可動部材を容器本体12上で移動させるときの誤操作を防止する誤操作防止機構を備えた構成を採用している。これにより、容器本体12上で第1の可動部材14または第2の可動部材15を移動させるときの誤操作を防止することができる。
【0085】
(e)本発明の実施形態においては、第1の可動部材14に第1誤操作防止部66を設けるとともに、第2の可動部材15に第2誤操作防止部86を設け、第2の可動部材15をY方向に移動させてから第1の可動部材14をX方向に移動させようとした際に、第1誤操作防止部66と第2誤操作防止部86との接触により、第1の可動部材14の移動を阻止するように構成されている。これにより、第1の可動部材14と第2の可動部材15をあらかじめ決められた正しい手順で操作させることができる。
【0086】
<7.変形例等>
本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、発明の構成要件やその組み合わせによって得られる特定の効果を導き出せる範囲において、種々の変更や改良を加えた形態も含む。
【0087】
たとえば、上記実施形態においては、第1の可動部材14に当接部64を設けるにあたって、当接部64のスロープ面70を平らな面で形成したが、本発明はこれに限らず、たとえば上記
図14に示す向きで第1の可動部材14を見たときに、当接部のスロープ面が、階段状に傾斜した面、あるいは、下側から上側に向かって弓形に湾曲した面になっていてもよい。すなわち、当接部のスロープ面に接触する支持部3aを立ち上げることができる面形状であれば、スロープ面はどのような形状になっていてもよい。
【0088】
また、上記実施形態においては、第1の可動部材14の移動方向(X方向)と第2の可動部材15の移動方向(Y方向)とのなす角度を90度としたが、該角度は90度より大きくても小さくてもかまわない。
【0089】
また、上記実施形態においては、容器本体12の第2の部分22に対し、X方向の一方側に第1の被取付部24を形成して第1の可動部材14を移動可能に取り付けた構成としたが、本発明はこれに限らず、容器本体12の第2の部分22に対し、X方向の両側にそれぞれ第1の被取付部24を形成することで、2つの第1の可動部材14を移動可能に取り付けた構成としてもよい。その場合は、眼内レンズ1が有する2つの支持部3a,3bをそれぞれ光学部2の内側に抱き込むように眼内レンズ1を折り畳むことが可能となる。
【0090】
また、上記実施形態においては、汎用型眼内レンズを収納するレンズ収納容器を例に挙げて説明したが、本発明は、汎用型眼内レンズ以外の眼内レンズを収納するレンズ収納容器に適用してもよい。