(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、車両のバック(リア)ウインドウガラスに貼り付けて配置してストップランプ機能を持たせた上記EL表示素子は、透明性を有するために点灯時にストップ表示の赤色光が車室内側にも出射され、車室内から車両前方に向けて照射される可能性がある。
【0007】
ところで、法規上、赤色光などの特定色の光が車両前方に向けて照射されることは禁止されており、上記構成のEL表示素子は点灯時の照射光量によって法規に抵触するおそれがある。
【0008】
また、上記EL表示素子を車両のサイドガラスに貼り付けて配置してターンシグナルランプ機能を持たせた場合、点灯時の橙色光が車室内側にも出射されて対向する他方のサイドガラスを透過して側方に向けて照射される。そのため、車両を側方から見た場合、左右どちらのターンシグナルランプが点灯しているのかが判別できない、あるいは判別を誤って安全性を損なうおそれがある。
【0009】
更に、赤色光や橙色光などの有彩色の光が車室内を横切ることにより、運転者の運転に支障をきたすおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は上記問題に鑑みて創案なされたものであり、その目的とするところは、光透過性を有すると共に両側から互いに異なる色相の光を発するOLEDパネルを提供することにより、例えば、車両の窓ガラスに取り付けても点灯時に法規に抵触することがなく且つ点灯時に運転者の運転に対しても支障をきたすことがなく、また車両外側に対する視界を妨げることがなく視認性に支障をきたすことのない車両用ランプを実現する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載された発明は、両側から光を発する有機発光層からなる第1発光層の両側に透明アノード電極膜と透明カソード電極膜とが形成されてなる第1発光部と、
両側から光を発する有機発光層からなる第2発光層の両側に透明アノード電極膜と透明カソード電極膜とが形成されてなる第2発光部と、を備え、
前記第1発光部と前記第2発光部とが、互いの透明カソード電極膜同士を対向させて重なり合っており、前記第1発光部と前記第2発光部とは互いに異なる色相の光を発光し、
前記第1発光部と前記第2発光部とは、いずれも透明アノード電極膜が透明カソード電極膜よりも光透過率が高く、前記第1発光部と前記第2発光部とが、重ねあうことで一体化されていることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項
2に記載された発明は、請求項
1において、前記透明カソード電極膜同士の間に透明固体層が配置されていることを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項
3に記載された発明は、請求項
1又は請求項
2のいずれかにおいて、前記第1発光層と前記第2発光層とは、互いに発光光量が異なることを特徴とするものである。
【0016】
また、本発明の請求項
4に記載された発明は、請求項
1〜請求項
3のいずれかにおいて、前記第1発光層と前記第2発光層とは、互いに補色関係にある色相の光を発することを特徴とするものである。
【0017】
また、本発明の請求項
5に記載された発明は、請求項
2において、前記透明固体層の中間位置に気体層が設けられていることを特徴とするものである。
【0018】
また、本発明の請求項
6に記載された発明は、請求項
5において、前記気体層は
、不活性ガス
又は空気であることを特徴とするものである。
【0019】
また、本発明の請求項
7に記載された発明は、請求項
1〜請求項
6のいずれかにおいて、前記第1発光層と前記第2発光層がともに重なっていない発光面側の発光が重なっている発光面側よりも発光が強いことを特徴とするものである。
【0022】
また、本発明の請求項
8に記載された発明は、車両の窓部に取り付けられる車両用灯体であって、両側から光を発する有機発光層からなる第1発光層の両側に透明アノード電極膜と透明カソード電極膜とが形成されてなる第1発光部と、両側から光を発する透光性の第2発光部と、を備え、前記第1発光部と前記第2発光部とは互いに補色となる光を発光し、前記第1発光部と前記第2発光部とが、重ねあうことで一体化され、前記第1発光部からの発光は第2発光部側に相対的に弱く、対向面側で相対的に強く発光され、第2発光部は、第2発光部側から照射される第1発光部からの発光と第2発光部からの発光の合成された色が白色であり、かつ第1発光部側から照射される第1発光部からの発光と第2発光部からの発光の合成された色が白色と異なるように第1発光部よりも少ない発光量で発光され、第2発光部側の面が前記窓部に取り付けられるOLEDパネルからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、OLEDパネルの構成を、第1発光層の両側に透明アノード電極膜と透明カソード電極膜とが形成されてなる第1発光部と、第1発光層とは異なる色相の光を発光する第2発光層の両側に透明アノード電極膜と透明カソード電極膜とが形成されてなる第2発光部とを、互いのカソード電極膜同士を対向させた状態で一体的に対向配置した。
【0024】
これにより、光透過性を有すると共に両側から互いに異なる色相の光を出射するOLEDパネルが実現し、このOLEDパネルを例えば車両の窓ガラスに取り付けても、点灯時に法規に抵触することがなく且つ点灯時に運転者の運転に対しても支障をきたすことがなく、また車両外側に対する視界を妨げることがなく視認性に支障をきたすことのない車両用ランプの実現が可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の好適な実施形態を
図1〜
図10を参照しながら、詳細に説明する(同一部分については同じ符号を付す)。尚、以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの実施形態に限られるものではない。
【0027】
図1は、本発明のOLEDパネルの第1実施形態を示す断面模式図である。
【0028】
第1実施形態のOLED(有機LED)パネル1は、夫々が互いに異なる色相の光を発光する第1有機発光層(以下、第1発光層と略称する)10と第2有機発光層20の2つの発光層が所定の距離をおいて対向配置された構成を有している。
【0029】
第1有機発光層(以下、第1発光層と略称する)11は、OLEDパネル1を車両用ランプ(例えば、テールランプ)に用いることを想定して赤色光を発光する有機層で構成されている。
【0030】
第1発光層11のアノード側の面には、ITOからなる透明アノード電極膜(以下、第1アノード電極膜と略称する)12が形成され、カソード側の面には、MgAg、MgあるいはAgからなる透明カソード電極膜(以下、第1カソード電極膜と略称する)13が形成されており、第1発光層11、第1アノード電極膜12及び第1カソード電極膜13によって第1発光部10が構成されている。
【0031】
第2有機発光層(以下、第2発光層と略称する)21は、第1発光部10の第1発光層11から発せられる赤色光の補色である青緑色(シアン色)光を発光する有機層で構成されている。
【0032】
第2発光層21のアノード側の面には、ITOからなる透明アノード電極膜(以下、第2アノード電極膜と略称する)22が形成され、カソード側の面には、MgAg、MgあるいはAgからなる透明カソード電極膜(以下、第2カソード電極膜と略称する)23が形成されており、第2発光層21、第2アノード電極膜22及び第2カソード電極膜23によって第2発光部20が構成されている。
【0033】
第1発光部10と第2発光部20とは、夫々の第1カソード電極膜13及び第2カソード電極膜23を介して適宜な厚みの透明固体層30を挟んで重ねられ対向配置されている。透明固体層30は、一方の面が第1発光部10の第1カソード電極膜13に接し、他方の面が第2発光部20の第2カソード電極膜23に接するように配置されている。
【0034】
これにより、OLEDパネル1が、第1発光部10、第2発光部20及び透明固体層30によって一体的に形成されている。第1発光部10と第2発光部20と透明固体層30は全て可視光に対し透光性を有する。
【0035】
そこで、第1発光部10の第1アノード電極膜12と第1カソード電極膜13との間に適宜な電圧(V1)を印加すると(
図2参照)、第1発光層11で発光した赤色光が第1アノード電極膜12及び第1カソード電極膜13の夫々を透過して第1発光部10の両側に発せられる。
【0036】
同様に、第2発光部20の第2アノード電極膜22と第2カソード電極膜23との間に適宜な電圧(V2)を印加すると(
図2参照)、第2発光層21で発光した青緑光が第2アノード電極膜22及び第2カソード電極膜23の夫々を透過して第2発光部20の両側に発せられる。
【0037】
このとき、第1発光部10の第1アノード電極膜12と第1カソード電極膜13は、夫々を形成する材料の光学特性に基づいて膜厚を設定することにより、第1アノード電極膜12が第1カソード電極膜13よりも高い光透過率を有するように図られている。具体的には、第1アノード電極膜12と第1カソード電極膜13との光透過率の比が例えば7:3〜6:4となるように図られている。
【0038】
これにより、第1発光部10の第1発光層11から両側に向けてほぼ均等な光量で発せられた光(赤色光)は、第1アノード電極膜12及び第1カソード電極膜13を透過することにより、透過光量の比が7:3〜6:4となる。
【0039】
同様に、第2発光部20の第2アノード電極膜22と第2カソード電極膜23は、夫々を形成する材料の光学特性に基づいて膜厚を設定することにより、第2アノード電極膜22が第2カソード電極膜23よりも高い光透過率を有するように図られている。具体的には、第2アノード電極膜22と第2カソード電極膜23との光透過率の比が例えば7:3〜6:4となるように図られている。
【0040】
これにより、第2発光部20の第2発光層21から両側に向けてほぼ均等な光量で発せられた光(青緑光)は、第2アノード電極膜22及び第2カソード電極膜23を透過することにより、透過光量の比が7:3〜6:4となる。
【0041】
そこで、上述の透過光量の比が7:3〜6:4の範囲で、第1発光部10の第1アノード電極膜12及び第2発光部20の第2アノード電極膜22の光透過率を90%とし、第1発光部10の第1カソード電極膜13及び第2発光部20の第2カソード電極膜23の光透過率を60%とし、第1発光部10の第1発光層11で発光する赤色光の相対発光光量を100とする。
【0042】
すると、
図3に示すように、第1発光層11から第1アノード電極膜12の側に発せられる赤色光の相対光量は、第1発光層11の相対発光光量のほぼ半分の50となり、第1アノード電極膜12を透過した相対光量が45となり、この45の相対光量が外部に出射される。
【0043】
一方、第1発光層11から第1カソード電極膜13の側に発せられる赤色光の相対光量もほぼ50となり、第1カソード電極膜13を透過した相対光量は30となる。この第1カソード電極膜13を透過した光は、順次、透明固体層30、第2発光部20の第2カソード電極膜23、第2発光層21及び第2アノード電極膜22を透過して外部に出射される。
【0044】
そのため、仮に透明固体層30及び第2発光層21の光透過率を100%と仮定すると、第1発光層11から発せられて第1カソード電極膜13を透過した相対光量30の光は、第2カソード電極膜23を透過して相対光量が18となり、更に第2アノード電極膜22を透過して相対光量が16.2となり、この16.2の相対光量が外部に出射される。
【0045】
そこで、例えば、相対光量16.2の赤色光と、赤色光と同等の相対光量の青緑色光との加法混色で白色光が得られるとすると、第2発光部20の第2発光層21から第2アノード電極膜22の側に発せられる青緑色光の相対光量が18のとき第2アノード電極膜22を透過した青緑色光の相対光量が16.2となり、相対光量が16.2の赤色光との加法混色で白色光を得ることができる。
【0046】
すると、このとき第2発光部20の第2発光層21では相対発光光量36の青緑色光が発光していることになり、第2カソード電極膜23の側にも相対光量18の青緑色光が発せられている。
【0047】
第2カソード電極膜23の側に発せられた相対光度18の青緑色光は、第2カソード電極膜23を透過して相対光量は10.8となる。この第2カソード電極膜23を透過した光は、順次、透明固体層30、第1発光部10の第1カソード電極膜13、第1発光層11及び第1アノード電極膜12を透過して外部に出射される。
【0048】
そのため、仮に透明固体層30及び第1発光層11の光透過率を100%と仮定すると、第2発光層21から発せられて第2カソード電極膜23を透過した相対光量10.8の光は、第1カソード電極膜13を透過して相対光量が6.48となり、更に第1アノード電極膜12を透過して相対光量が5.832となり、この5.832の相対光量が外部に出射される。
【0049】
そこで、OLEDパネル1の第2発光部20の第2アノード電極膜22側からは、相対光量が16.2の赤色光と相対光量が16.2の青緑色光が出射されて加法混色により相対光量が32.4の無彩色の白色光が得られる。
【0050】
また、OLEDパネル1の第1発光部10の第1アノード電極膜12側からは、相対光量が45の赤色光と相対光量が5.832の青緑色光が出射され、青緑色の相対光量に対して赤色光の相対光量がはるかに多いため、加法混色により相対光量が50.832のほぼ赤色の光が得られる。
【0051】
このように、第1実施形態のOLEDパネル1は、第1発光層11の両側に第1アノード電極膜12と第1カソード電極膜13とが形成されてなる第1発光部10と、第2発光層21の両側に第2アノード電極膜22と第2カソード電極膜23とが形成されてなる第2発光部20とを、互いのカソード電極膜13及び23同士を対向させた状態で重ね合わせて一体的に配置した構成を有し、第1発光部10及び第2発光部20共にアノード電極膜12、22の光透過率をカソード電極膜13、23の光透過率よりも高くしてこの電極膜の光透過率の比に基づいて適宜な比で第1発光層11の発光光量を第2発光層21の発光光量よりも多くなるように設定した。
【0052】
これにより、OLEDパネル1の第1発光部10側からは、第1発光層11から発せられた色相の光(赤色光)がほぼそのまま出射され、OLEDパネル1の第2発光部20側からは第1発光層11から発せられた色相の光(赤色光)と第2発光層21から発せられた色相の光(青緑色光)との加法混色による光(白色光)が出射される。
【0053】
したがって、OLEDパネル1は、光透過性を有すると同時に両側から異なる色相の光を出射する特性を有するものである。
【0054】
そこで、
図4に示すように、上記構成のOLEDパネル1を車両のリアウインドウガラス40に貼り付けて配置してテールランプの機能を持たせた場合、OLEDパネル1が点灯(第1発光層と第2発光層とが発光)すると、
図5に示すように、車両後方に向けては赤色光が出射され、車室内側には無彩色の白色光が出射される。OLEDパネル1の発光光量の多い面(第1発光部10側)が車両外側に向かい、発光光量の少ない面(第2発光部側)が車両内側に向かうように配置した。
【0055】
したがって、OLEDパネル1の点灯時にテール表示の赤色光が車室内側に出射されることがなく、赤色光が車両前方に向けて照射されることもない。その結果、リアウインドウガラスに貼り付けて配置したOLEDパネル1にテールランプの機能を持たせても法規に抵触することはない。
【0056】
また、OLEDパネル1から車室内側に出射される光は無彩色の白色光であり、且つ車両後方に向けて出射される赤色光よりも光量が少ない。そのため、運転者の運転に対して支障をきたすことがなく、通常運転を損なうことはない。
【0057】
更に、OLEDパネル1は光透過性を有するため車両後方の視界を妨げることがなく、後方の視認性に支障をきたすことがない。
【0058】
なお、上述の透過光量の比率が略7:3〜6:4の範囲で、第1発光部10の第1カソード電極膜13及び第2発光部20の第2カソード電極膜23の光透過率を60%から40%に下げて試算すると、
図6に示すように、第1発光層11で発光した相対発光光量100の赤色光のうち、第1発光層11から第1アノード電極膜12の側に発せられる赤色光の相対光量は、第1発光層11の相対発光光量のほぼ半分の50となり、第1アノード電極膜12を透過した相対光量が45となり、この45の相対光量が外部に出射される。
【0059】
一方、第1発光層11から第1カソード電極膜13の側に発せられる赤色光の相対光量もほぼ50となり、第1カソード電極膜13を透過した相対光量は20となる。この第1カソード電極膜13を透過した光は、順次、透明固体層30、第2発光部20の第2カソード電極膜23、第2発光層21及び第2アノード電極膜22を透過して外部に出射される。
【0060】
そのため、仮に透明固体層30及び第2発光層21の光透過率を100%と仮定すると、第1発光層11から発せられて第1カソード電極膜13を透過した相対光量20の光は、第2カソード電極膜23を透過して相対光量が8となり、更に第2アノード電極膜22を透過して相対光量が7.2となり、この7.2の相対光量が外部に出射される。
【0061】
そこで、例えば、相対光量7.2の赤色光と、赤色光と同等の相対光量の青緑色光との加法混色で白色光が得られるとすると、第2発光部20の第2発光層21から第2アノード電極膜22の側に発せられる青緑色光の相対光量が8のとき第2アノード電極膜22を透過した青緑色光の相対光量が7.2となり、相対光量が7.2の赤色光との加法混色で白色光を得ることができる。
【0062】
すると、このとき第2発光部20の第2発光層21では相対発光光量16の青緑色光が発光していることになり、第2カソード電極膜23の側にも相対光量8の青緑色光が発せられている。
【0063】
第2カソード電極膜23の側に発せられた相対光度8の青緑色光は、第2カソード電極膜23を透過して相対光量は3.2となる。この第2カソード電極膜23を透過した光は、順次、透明固体層30、第1発光部10の第1カソード電極膜13、第1発光層11及び第1アノード電極膜12を透過して外部に出射される。
【0064】
そのため、仮に透明固体層30及び第1発光層11の光透過率を100%と仮定すると、第2発光層21から発せられて第2カソード電極膜23を透過した相対光量3.2の光は、第1カソード電極膜13を透過して相対光量が1.28となり、更に第1アノード電極膜12を透過して相対光量が1.152となり、この1.152の相対光量が外部に出射される。
【0065】
そこで、OLEDパネル1の第2発光部20の第2アノード電極膜22側からは、相対光量が7.2の赤色光と相対光量が7.2の青緑色光が出射されて加法混色により相対光量が14.4の無彩色の白色光が得られる。
【0066】
また、OLEDパネル1の第1発光部10の第1アノード電極膜12側からは、相対光量が45の赤色光と相対光量が1.152の青緑色光が出射され、青緑色の相対光量に対して赤色光の相対光量がほとんどを占めるため、加法混色により相対光量が46.152の赤色の光が得られる。
【0067】
このことより、第1発光部10の第1カソード電極膜13及び第2発光部20の第2カソード電極膜23の光透過率を下げることにより、OLEDパネル1の全体の光透過率が低下するが、第1アノード電極膜12側から出射される赤色光の純度(刺激純度)が高くなり、且つ OLEDパネル1の第2アノード電極膜22側から出射される無彩色の白色光の相対光量が低下する。
【0068】
また、第2発光層2の発光光量を低減することができるため、有機発光層の点灯寿命の長寿命化を図ることができ、信頼性の高いOLEDパネルが実現する。
【0069】
したがって、これにより鮮明な赤色光によるテール表示が可能になると共に車室内に向かう不要な光(白色光)が抑制されて通常の運転環境を確保することができる。
【0070】
なお、上記構成のOLEDパネル1においては、第1アノード電極膜12と第2アノード電極膜22の光透過率を同一とし、第1カソード電極膜13と第2カソード電極膜23の光透過率を同一としたが、光透過率の設定はこれに限られるものではなく、夫々の電極膜に対して個別に光透過率を設定することも可能である。
【0071】
また、第1発光層11を赤色光を発光する有機発光層とし、第2発光層21を青緑色光を発光する有機発光層としたが必ずしもこれに限られるものではなく、第1発光層11及び第2発光層21はOLEDパネル1の用途、目的等によって種々の発光色の組み合わせが可能である。
【0072】
ところで、上記構成のOLEDパネル1において、第1発光層11を橙色光を発光する有機層で構成し、第2発光層21を第1発光層11から発せられる橙色光の補色である緑青色光を発光する有機層で構成する。そして、このような構成によって一方の側から橙色光を出射し他方の側から白色光を出射するOLEDパネル2を、
図7に示すように車両のサイドウインドウガラス45に貼り付けて配置してターンシグナルランプの機能を持たせることもできる。この場合、OLEDパネル2が点灯(第1発光層と第2発光層とが発光)すると、
図8に示すように、車両側方に向けては橙色光が出射され、車室内側には無彩色の白色光が出射される。
【0073】
したがって、OLEDパネル2の点灯時にターンシグナル表示の橙色光が車室内側に出射されることがなく、反対側のサイドウインドウガラスを透過して側方に向けて照射されることがない。そのため、車両を側方から見た場合、左右どちらのターンシグナルランプが点灯しているのかが確実に判別でき、車外に対して車両の運行情報を確実に発信(表示)することができる。
【0074】
また、OLEDパネル2から車室内側に出射される光は無彩色の白色光であり、且つ車両側方に向けて出射される橙色光よりも光量が少ない。そのため、運転者の運転に対して支障をきたすことがなく、通常運転を損なうことはない。
【0075】
次に、本発明のOLEDパネルの第2実施形態について
図9の断面模式図を参照して説明する。
【0076】
第2実施形態のOLEDパネル3は、上記第1実施形態のOLEDパネル1に対して第1発光部10の第1発光層11の第1カソード電極膜13と第2発光部20の第2発光層21の第2カソード電極膜23の間に位置する透明固体層30の中間位置に気体層35を設けた構成を有している。
【0077】
気体層35は、両側を透明固体層30で囲まれた位置に設けられ、気体層35を構成する気体は、空気や窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスが用いられる。いずれにしても透明固体層30よりも低屈折な層となる。
【0078】
気体層35では、第1発光層11から発せられて第1カソード電極膜13を透過して第2発光層21の方向に向かう光、及び第2発光層21から発せられて第2カソード電極膜23を透過して第1発光層11の方向に向かう光が、一部気体層35の界面にて反射し戻されるため減衰する。
第1実施形態における透明電極の透過率の違いに加え、気体層35の界面における反射が加わることにより第1発光部10、第2発光部20それぞれにおいて両面の発光量の相対光量の差を大きくすることができる。気体層35の代わりに透明固体層30よりも低屈折な物質層としてもよい。
【0079】
したがって、通過する光の減衰を無色透明の気体層35で行う分、第1カソード電極膜13及び第2カソード電極膜23の夫々の光透過率を下げるのを抑制することができ、OLEDパネル3全体の光透過率の低下を回避することができる。第2実施形態においても第1発光部10、第2発光部20からの発光はそれぞれに、重なっている方向に向かう発光量は少なく、重なっていない方向に向かう発光量は多くするようにしている。また、第1発光部と第2発光部の発光色は補色の関係になっており、第2発光部20の発光量は第1発光部10の発光量よりも少なくすることで、第2発光部側からの照射は白色となり第1発光部側からの照射は元々の第1発光部からの発光色に近い色になるようにしている。
【0080】
次に、本発明のOLEDパネルの第3実施形態について
図10の断面模式図を参照して説明する。
【0081】
第3実施形態のOLEDパネル4は、上記第1実施形態のOLEDパネル1に対して、第2発光層20、第2アノード電極膜22及び第2カソード電極膜23を有する第2発光部20の替わりに、板状の導光体50を用いた構成を有している。
【0082】
導光体50は、両面を光出射面とする光出射部51を有し、導光体50に導入する光を発する光源(導光体用光源)52が別途設けられている。したがって、OLEDパネル4の第1発光部10側から出射される光の色を固定した状態で、導光体用光源52の発光色を適宜変えることにより導光体50側から出射する光のみの色相を容易に変化させることができる。導光体50は第1発光部10と重なっている面よりも、重なっていない側から光源52の発光が強くなるように形成されている。これは例えば、第1発光部10と重なっている面は鏡面に形成しつつ、重なっていない側の面には光取出しのための粗しを形成する、もしくは、反射防止膜を形成することによって実現できる。第3実施形態においても第1発光部10、導光体50からの発光はそれぞれに、重なっている方向に向かう発光量は少なく、重なっていない方向から向かう発光量は多くするようにしている。また、第1発光部と導光体の発光色は補色の関係を選択し、導光体50の発光量は第1発光部10の発光量よりも少なくすることで、第2発光部側からの照射は白色となり第1発光部側からの照射は元々の第1発光部からの発光色に近い色になるようにしている。
【0083】
これにより、OLEDパネル4の視覚演出効果によって、OLEDパネル4に意匠性、装飾性等の付加価値をもたせることができる。
【0084】
本発明のOLEDパネルは、パネルの両側で異なる色の光が得られるため、例えば、出入口表示、侵入可否表示、誘導灯等への使用が考えられる。