特許第6967461号(P6967461)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967461
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】止水構造
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/22 20060101AFI20211108BHJP
   E06B 5/00 20060101ALI20211108BHJP
   E04H 9/14 20060101ALN20211108BHJP
【FI】
   E02B7/22
   E06B5/00 Z
   !E04H9/14 Z
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-4893(P2018-4893)
(22)【出願日】2018年1月16日
(65)【公開番号】特開2019-124037(P2019-124037A)
(43)【公開日】2019年7月25日
【審査請求日】2020年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000239714
【氏名又は名称】文化シヤッター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅谷 展之
【審査官】 皆藤 彰吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−336384(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第02990565(EP,A2)
【文献】 特開2011−058296(JP,A)
【文献】 特開平03−228908(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3181355(JP,U)
【文献】 特開2016−079679(JP,A)
【文献】 特開2016−089492(JP,A)
【文献】 特開2016−205031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/22
E06B 5/00
E04H 9/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に形成された排水溝を覆う排水溝蓋を用いた止水構造であって、
前記排水溝蓋を前記排水溝に対して起立する起立状態で保持する保持手段と、
前記起立状態の排水溝蓋の屋外側に取り付けられた防水性の防水シートと、
を備え、
前記防水シートは、前記起立状態の排水溝蓋の屋外側の少なくとも一部を覆い、かつ前記起立状態の排水溝蓋と下側で連続する面まで延在し、
前記保持手段は、前記排水溝蓋を前記排水溝に対して屋内側に起立状態を保持するものであり、
前記防水シートは、前記排水溝の前記屋内側の側面まで及び前記排水溝の底面まで延在し、
前記防水シートのうち、前記底面と対向する部分に載置されるおもりを備えることを特徴とする止水構造。
【請求項2】
前記保持手段は、起立した前記排水溝蓋の屋内側の前記床面に固定されるとともに、前記起立状態の排水溝蓋の移動を規制する保持具である請求項に記載の止水構造。
【請求項3】
前記保持手段は、少なくとも前記排水溝あるいは床に形成され、かつ前記排水溝蓋の屋内外方向における一方の端部が挿入される挿入溝を含む請求項1又は2に記載の止水構造。
【請求項4】
前記保持手段は、
前記排水溝蓋を前記排水溝を覆う倒伏状態と前記起立状態との間で回動する回動機構と、
前記排水溝蓋の裏面側と、前記排水溝のうち、前記排水溝蓋が起立する側と反対側との間に渡って設けられ、前記倒伏状態において前記排水溝内に収納され、前記起立状態において前記回動機構による前記排水溝蓋の回動を規制する回動規制機構とを含む請求項1に記載の止水構造。
【請求項5】
前記排水溝に形成された排水穴と、前記排水穴と接続される下水管と、をさらに備え、
前記下水管に逆止弁が形成されている請求項4に記載の止水構造。
【請求項6】
前記排水溝に形成された排水穴と、前記排水穴と接続される下水管と、をさらに備え、
前記排水穴と前記下水管が、前記屋外側の側面に形成されている請求項1〜3のいずれか1項に記載の止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、止水構造に関し、排水溝蓋を用いた止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、豪雨、津波、河川の氾濫などの水害時に、外部である屋外からの氾濫水などの水は、構造物の開口部から内部である構造物内(屋内)に侵入するため、構造物の開口部に止水構造が設けられている。例えば、開閉体としてのシャッターの裏面に、屈曲自在な防水シートが設けられていると共に、シャッターの幅方向の端を案内するガイド部材には、防水シートと対向するようにしてシール部材が設けられているシャッター装置がある(特許文献1)。このようなシャッター装置は、氾濫水等の水圧がシャッターの表面に作用すると、防水シートがシール部材に圧接され、止水構造としての機能を発揮する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4459740号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような止水構造は、シャッターや扉などの開口部を閉塞する開閉体が必要となる。従って、開閉体がない開口部には採用することができない。また、開口部に限らず屋外側から屋内側に向かう水の浸入を抑制することが要望されている。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、屋外側から屋内側に向かう水の浸入を抑制することができる止水構造を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、床面に形成された排水溝を覆う排水溝蓋を用いた止水構造であって、前記排水溝蓋を前記排水溝に対して起立する起立状態で保持する保持手段と、前記起立状態の排水溝蓋の屋外側に取り付けられた防水性の防水シートと、を備え、前記防水シートは、前記起立状態の排水溝蓋の屋外側を少なくとも一部を覆い、かつ前記起立状態の排水溝蓋と下側で連続する面まで延在し、前記保持手段は、前記排水溝蓋を前記排水溝に対して屋内側に起立状態を保持するものであり、前記防水シートは、前記排水溝の前記屋内側の側面まで及び前記排水溝の底面まで延在し、前記防水シートのうち、前記底面と対向する部分に載置されるおもりを備えることを特徴とする。
【0009】
また、上記止水構造において、前記保持手段は、起立した前記排水溝蓋の屋内側の前記床面に固定されるとともに、前記起立状態の排水溝蓋の移動を規制する保持具であることが好ましい。
【0010】
また、上記止水構造において、前記保持手段は、少なくとも前記排水溝あるいは床に形成され、かつ前記排水溝蓋の屋内外方向における一方の端部が挿入される挿入溝を含むことが好ましい。
【0011】
また、上記止水構造において、前記保持手段は、前記排水溝蓋を前記排水溝を覆う倒伏状態と前記起立状態との間で回動する回動機構と、前記排水溝蓋の裏面側と、前記排水溝のうち、前記排水溝蓋が起立する側と反対側との間に渡って設けられ、前記倒伏状態において前記排水溝内に収納され、前記起立状態において前記回動機構による前記排水溝蓋の回動を規制する回動規制機構とを含むことが好ましい。また、上記止水構造において、前記排水溝に形成された排水穴と、前記排水穴と接続される下水管と、をさらに備え、前記下水管に逆止弁が形成されることが好ましい。また、上記止水構造において、前記排水溝に形成された排水穴と、前記排水穴と接続される下水管と、をさらに備え、前記排水穴と前記下水管が、前記屋外側の側面に形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
保持手段により起立状態が保持された排水溝蓋の屋外側を防水シートにより覆うので、排水溝蓋から水が屋外側から屋内側に侵入することを防止でき、屋外側から屋内側に向かう水の浸入を抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、実施形態1に係る止水構造の概略構成例を示す平面図である。
図2図2は、実施形態1に係る床面に設置された排水溝蓋を示す平面図である。
図3図3は、倒伏状態の排水溝蓋を示す断面図である。
図4図4は、倒伏状態の排水溝蓋を示す一部平面図である。
図5図5は、実施形態1に係る止水構造の構成例を示す断面図である。
図6図6は、実施形態1に係る止水構造の構成例を示す一部平面図である。
図7図7は、実施形態2に係る倒伏状態の排水溝蓋を示す断面図である。
図8図8は、実施形態2に係る止水構造の構成例を示す断面図である。
図9図9は、実施形態3に係る倒伏状態の排水溝蓋を示す断面図である。
図10図10は、実施形態3に係る止水構造の構成例を示す断面図である。
図11図11は、実施形態4に係る止水構造の構成例を示す断面図である。
図12図12は、実施形態5に係る床面に設置された排水溝蓋を示す平面図である。
図13図13は、実施形態5に係る止水構造の概略構成例を示す平面図である。
図14図14は、実施形態6に係る床面に設置された排水溝蓋を示す平面図である。
図15図15は、実施形態6に係る止水構造の概略構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明にかかる止水構造の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0015】
〔実施形態1〕
まず、実施形態1に係る止水構造について説明する。図1は、実施形態1に係る止水構造の概略構成例を示す平面図である。図2は、実施形態1に係る床面に設置された排水溝蓋を示す平面図である。図3は、倒伏状態の排水溝蓋を示す断面図である。図4は、倒伏状態の排水溝蓋を示す一部平面図である。図5は、実施形態1に係る止水構造の構成例を示す断面図である。図6は、実施形態1に係る止水構造の構成例を示す一部平面図である。なお、図3図4のA−A断面図であり、図5図6のB−B断面図である。
【0016】
本実施形態に係る止水構造1−1は、図1に示すように、排水溝蓋2を用いた構造である。排水溝蓋2は、図2に示すように、排水溝110を覆うものである。排水溝110は、本実施形態では、建物200に設けられた開口部210に形成されており、その長さは開口部210の幅Lである。開口部210は、壁部材201,202と図示しない天井とで構成されており、建物200の内部に設けられた駐車場の出入口や、シャッターおよび扉がない出入口などであり、建物200の内部側が屋内側で、建物200の外部が屋外側である。止水構造1−1は、建物200の外部からの氾濫水などの水が建物200の内部に侵入することを抑制するものである。
【0017】
排水溝110は、図3に示すように、長手方向(水が流れる方向)から見た場合に、U字状、例えば、コンクリート製のブロック120が床面100に埋設されることで形成されている。ブロック120には、内部に段差部121,122が形成されており、段差部121,122に排水溝蓋2の短手方向(屋内外方向)の端部22,23が接触することで、排水溝蓋2が床面100に設置される。なお、排水溝蓋2が床面100に設置されている、すなわち、端部22,23が段差部121,122に接触した状態を排水溝蓋2の倒伏状態という。
【0018】
ブロック120は、図1に示すように、床面100に対する排水溝110の長さに応じて、複数個が連続して埋設されている。隣り合うブロック120は、長手方向の端部が接触または近接している。また、ブロック120には、図3に示すように、排水穴123が形成されている。排水穴123は、本実施形態では、排水溝110の底面110aに形成されており、下水管130と接続され、排水溝110に流れ込んだ水を外部に排水する。
【0019】
止水構造1−1は、図1に示すように、排水溝蓋2と、保持具3と、防水シート4と、おもり5を含んで構成されている。
【0020】
排水溝蓋2は、図3および図4に示すように、床面100に形成された排水溝110を覆うことで、床面100に設置されるものである。排水溝蓋2は、金属製あるいは樹脂製であり、倒伏状態で床面100側に露出する表面2aと、排水溝110側に露出する裏面2bとを貫通する複数の貫通穴21が形成されている。図3に示すように、排水溝蓋2を倒伏状態とし床面100に設置すると、貫通穴21は床面100と排水溝110とを連通する。従って、建物200の屋外側から開口部210を介して屋内側に向かって流れてきた水W1は、貫通穴21を介して排水溝110に流れ込み、排水穴123および下水管130を介して外部に排水される。排水溝蓋2は、表面2aが矩形状、本実施形態では、図4に示すように、長方形に形成されている。ここで、排水溝蓋2の短手方向の長さ、すなわち排水溝蓋2の幅は、排水溝110に挿入でき、かつ段差部121,122に端部22,23が接触するように設定されている。排水溝蓋2は、通常、ブロック120と対になるものであり、長手方向の長さ、すなわち排水溝蓋2の長さは、ブロック120の排水溝110の長手方向の長さに設定されている。なお、床面100のうち、排水溝110よりも屋内側には、保持具3を固定する締結穴100aが形成されている。締結穴100aは、止水構造1−1を使用しない場合、例えばゴム製のキャップ140で閉塞されている。
【0021】
保持具3は、本実施形態における保持手段であり、起立状態の排水溝蓋2の移動を規制する、すなわち排水溝蓋2を排水溝110に対して起立する起立状態で保持するものであり、図5に示すように、1つの排水溝蓋2に対して少なくとも1つ以上、本実施形態では2つ設けられる。保持具3は、本実施形態では、床面100のうち排水溝110よりも屋内側に設置され、排水溝蓋2を屋内側に端部23を段差部122に接触させて起立した状態、すなわち起立状態で保持するものである。保持具3は、本体部31と、保持部32と、固定部33とにより構成されている。
【0022】
本体部31は、固定部材31aと、保持部材31bと、支持部材31cとにより構成されている。固定部材31aは、図示しない穴が形成されており、固定部33が穴を介して締結穴100aに挿入、締結されることで保持具3を床面100に固定する。固定部材31aは、コ字状に形成されており、一方の端部に挿入ピン31dが挿入固定されている。固定部材31aは、他方の端部において支持ピン31eにより保持部材31bに対して回転自在に支持されている。保持部材31bは、コ字状に形成されており、支持ピン31eにより固定部材31aが回転した際に、固定部材31aを内部に収容できるように形成されている。保持部材31bは、支持ピン31eが形成されている端部と反対側の端部において支持ピン31fにより支持部材31cに対して回転自在に支持されている。支持部材31cは、保持部材31bが固定部材31aに対して、回転することを規制するものである。支持部材31cは、コ字状に形成されており、支持ピン31fにより保持部材31bが回転した際に、保持部材31bを固定部材31aとともに内部に収容できるように形成されている。支持部材31cは、支持ピン31fが形成されている端部と反対側の端部に挿入ピン31dが挿入される切り欠き31gが形成されている。つまり、本体部31は、挿入ピン31dに切り欠き31gが挿入されることで、三角形状を維持することができる。また、固定部材31aを保持部材31b内に収容でき、保持部材31bを支持部材31cに収容できるので、止水構造1−1を使用しない場合に、本体部31を折り畳むことができ、保管スペースの省スペース化を図ることができる。
【0023】
保持部32は、本実施形態では、保持部材31bの支持ピン31fが設けられている側、すなわち本体部31の上方側において、起立状態の排水溝蓋2側に突出し、先端部32aが下方側(排水溝110側)に突出して形成されている。つまり、保持部32は、保持具3を幅方向(各ピンの軸方向)から見た場合に、L字状に形成されている。保持部32は、起立状態の排水溝蓋2を保持部材31bとの間に挟み込むことで、排水溝蓋2が倒伏することを規制する。
【0024】
固定部33は、保持具3を床面100に固定するものである。固定部33は、例えば、作業員が工具を使用せずに締結穴100a、例えば、ねじ穴に締結することができる、手締めネジ、ノブボルト、蝶ボルトなどである。固定部33は、保持具3が床面100に対して移動することを確実に規制するために2以上(同図では、2つ)有することが好ましい。
【0025】
防水シート4は、図1に示すように、起立状態の排水溝蓋2の屋外側に取り付けられるものである。防水シート4は、防水性、すなわち液体を通過させず、かつ可撓性を有する樹脂材料などで構成されている。防水シート4は、1枚のシートで構成されている。防水シート4の幅(防水シート4の長手方向の長さ)は、少なくとも開口部210の幅Lよりも長く、かつ図6に示すように、端部43,44が開口部210を構成する壁部材201,202に対してそれぞれ接触する長さに形成されている。また、防水シート4の高さ(防水シート4の短手方向の長さ)は、図5に示すように、起立状態の排水溝蓋2の屋外側の少なくとも一部を覆い、かつ起立状態の排水溝蓋2と下側で連続する面、本実施形態では、排水溝110の屋内側の側面110bおよび側面110bと連続する底面110aの少なくとも一部(後述するおもり5を防水シート4のみで載置できる程度)を覆うまでの長さに形成されている。防水シート4は、図5に示すように、本体部41と、底部42と、端部43,44とを有して構成されている。
【0026】
本体部41は、本実施形態では、起立状態の排水溝蓋2の屋外側の全面と、排水溝110の屋内側の側面110bの全面とを覆うものである。本体部41は、排水溝110に流れ込んだ水および床面100よりも上側の水の水圧により、排水溝蓋2と側面110bと密着する。本体部41は、排水溝蓋2の貫通穴21を屋外側から閉塞することで、排水溝蓋2の貫通穴21を介して水が屋外側から屋内側に侵入することを防止する。本体部41は、起立状態の排水溝蓋2と側面110b、すなわちブロック120との境界を屋外側から閉塞することで、排水溝蓋2と排水溝110との隙間を介して水が屋外側から屋内側に侵入することを防止する。ここで、本体部41を排水溝蓋2に固定する方法は、本体部41を排水溝蓋2に対して着脱可能であれば特に限定されるものではない。例えば、ピンチ(クリップ)、粘着材、フック、紐などで、排水溝蓋2の上側、すなわち端部22に防水シート4を引っかける、取り付ける、つり下げる。
【0027】
底部42は、本実施形態では、排水溝110の底面110aの一部を覆うものである。底部42は、本体部41と連続して形成されており、排水溝110に流れ込んだ水による水圧により底面110aと密着することで、排水溝110に流れ込んだ水が本体部41と側面110bとの間に侵入することを防止する。底部42は、排水穴123を避けて設置されることが好ましい。本実施形態における底部42は、排水穴123よりも屋内側の底面110aを覆う。
【0028】
端部43,44は、本実施形態では、図6に示すように、壁部材201,202の一部と、壁部材201,202とそれぞれ連続する排水溝110の側面110c,110dの一部を覆うものである。端部43,44は、本体部41および底部42とそれぞれ連続して形成されており、排水溝110に流れ込んだ水および床面100よりも上側の水の水圧により、壁部材201,202および側面110c,110dとそれぞれ密着することで、排水溝110に流れ込んだ水および床面100よりも上側の水が端部43,44と、壁部材201,202および側面110c,110dとの間に侵入することを防止する。ここで、端部43,44の壁部材201,202および排水溝110に対する固定方法は、端部43,44を壁部材201,202および排水溝110に対して隙間が形成されることを抑制できるように着脱可能であれば特に限定されるものではない。例えば、端部43,44の上端から下端まで連続する芯部を形成し、壁部材201,202から排水溝110まで連続して形成された受け部に芯部を挿入してもよい。また、端部43,44を壁部材201,202および排水溝110に対して防水性を有する面ファスナーで取り付けてもよい。また、端部43,44を壁部材201,202および排水溝110に対して粘着テープで取り付けてもよい。
【0029】
おもり5は、防水シート4の底部42に載置される、すなわち防水シート4のうち、排水溝110の底面110aと対向する部分に載置されるものである。おもり5は、金属製の平板であり、端部43から端部44まで、直線的に底部42に載置できるように、単数あるいは複数で形成されている。つまり、おもり5は、排水溝110を屋外側から屋内側に向かって見た場合に、端部43から端部44まで連続的に底部42に載置されている。ここで、おもり5は、底部42に対して排水溝110に流れ込んだ水による水圧が十分に作用する前に、底面110aと底部42との間を介して本体部41と側面110bとの間に水が侵入することを防止するものである。
【0030】
次に、倒伏状態の排水溝蓋2を止水構造1−1として用いる場合の手順について説明する。通常雨量の雨などの場合は、図3に示すように、建物200の屋外側から開口部210を介して屋内側に向かって流れてきた水W1は、倒伏状態の排水溝蓋2を介して排水溝110により外部に排水される。一方、例えば、豪雨、津波、河川の氾濫などでは、図5に示すように、大量の水W2が排水溝110に流れ込むため、排水溝110による外部への排水が追いかず、水W2が床面100にあふれる可能性がある。このような場合に、まず、倒伏状態の排水溝蓋2を起立させ、予め展開して組み立てた保持具3の保持部32と保持部材31bとの間に起立状態の排水溝蓋2の端部22を挟み込む。次に、保持具3を床面100に固定部33により固定する。この作業を各保持具3および各排水溝蓋2に対して行い、保持具3により、開口部210に設置されているすべての排水溝蓋2の起立状態を維持する。次に、防水シート4を起立状態の排水溝蓋2の屋外側に設置する。具体的には、端部43,44を壁部材201,202および側面110c,110dに対して取り付けた後、底部42を床面100に展開し、底部42におもり5を設置し、本体部41を排水溝蓋2に取り付ける。これにより、排水溝蓋2を用いた止水構造1−1を設置する。なお、起立状態の排水溝蓋2は、床面100からの高さが高くても30cm〜40cm程度である。
【0031】
大量の水W2が排水溝110に流入して、排水溝110の排水能力を超えると、排水溝110に水が貯まり始める。排水溝110に貯まった水の水圧は、防水シート4に作用するため、防水シート4が底面110aおよび側面110b,110c,110dと密着し、排水溝110内の水が防水シート4と、底面110aおよび側面110b,110c,110dとの間に入り込むことが防止される。さらに、床面100より上側に水位WLが上昇すると、床面100より上側の水の水圧は、防水シート4に作用するため、防水シート4が排水溝蓋2および壁部材201,202と密着し、床面100よりも上側の水が防水シート4と、排水溝蓋2および壁部材201,202との間に入り込むことが防止される。
【0032】
以上のことから、本実施形態に係る止水構造1−1は、起立状態の排水溝蓋2の屋内側に取り付けられた防水シート4が床面100よりも上側の水の屋内側への侵入を、床面100から防水シート4の上側の端部までの高さHまで抑制することができる。つまり、開口部210にシャッターや扉などの開口部210を閉塞する開閉体が設置されていなくても、開口部210を介して水が屋外側から屋内側に侵入することを抑制することができる。また、本実施形態に係る止水構造1−1は、開閉体を用いた止水構造ではなく、起立状態の排水溝蓋2の高さは人が十分に跨ぐことができる高さであるので、開口部210を使用して、外部と建物200との間を行き来することができる。また、止水構造1−1は、図1に示すように、止水構造1−1を開口部210の幅方向のすべてに適用することができるので、開口部210から屋内側への水の侵入を確実に防止することができる。
【0033】
〔実施形態2〕
次に、実施形態2に係る止水構造について説明する。図7は、実施形態2に係る倒伏状態の排水溝蓋を示す断面図である。図8は、実施形態2に係る止水構造の構成例を示す断面図である。実施形態2に係る止水構造1−2が実施形態1に係る止水構造1−1と異なる点は、排水溝蓋2の一方の端部23(つば部23a)が挿入される挿入溝122aが形成されている点である。なお、実施形態2に係る止水構造1−2の基本的構成および動作は、実施形態1に係る止水構造1−1の基本的構成および動作と同一あるいはほぼ同一であるので、同一符号で示される要素については説明を省略あるいは簡略化する(以下の、実施形態3〜6も同様)。
【0034】
排水溝蓋2は、図7に示すように、端部22,23につば部22a,23aが形成されている。つば部22a,23aは、端部22,23において排水溝蓋2の長手方向に延在して形成されている。つば部22a、23aは、排水溝蓋2が倒伏状態において、床面100(本実施形態では、床面100と同一平面のブロック120の上端面)と接触することで、ブロック120と排水溝蓋2との隙間にゴミなどの異物が侵入することを抑制する。
【0035】
ブロック120は、排水溝蓋2の端部22,23のうち一方の端部、本実施形態では、つば部23aが挿入される挿入溝122aが下側に向かって形成されている。挿入溝122aは、保持具3とともに保持手段であり、排水溝110の屋内側に形成された段差部122に形成されている。なお、本実施形態では、排水穴123が排水溝110の底面110aではなく、排水溝110の屋外側の側面110eに形成されている。従って、排水溝110に流れ込んだ水は、側面110eに形成された排水穴123および下水管130を介して外部に排水される。この場合、底面110aに排水穴123がないので、排水穴123を考慮せずに、防水シート4の底部42を底面110aに設置することができる。
【0036】
保持具3は、図8に示すように、保持部34を有する。保持部34は、本実施形態では、保持部材31bの中央部において、起立状態の排水溝蓋2側に突出し、先端部34aが上方側(排水溝110側と反対側)に突出して形成されている。つまり、保持部34は、保持具3を幅方向(各ピンの軸方向)から見た場合に、L字状に形成されている。保持部34は、貫通穴21に挿入され、起立状態の排水溝蓋2を保持部材31bとの間に挟み込むことで、排水溝蓋2が倒伏することを規制する。
【0037】
次に、倒伏状態の排水溝蓋2を止水構造1−2として用いる場合の手順について説明する。図8に示すように、まず、倒伏状態の排水溝蓋2を起立させ、予め展開して組み立てた保持具3の保持部34を貫通穴21に挿入し、保持部34と保持部材31bとの間に起立状態の排水溝蓋2を挟み込む。次に、保持具3を床面100に固定部33により固定する。この作業を各保持具3および各排水溝蓋2に対して行い、保持具3により、開口部210に設置されているすべての排水溝蓋2の起立状態を維持する。次に、防水シート4を起立状態の排水溝蓋2の屋外側に設置する。これにより、排水溝蓋2を用いた止水構造1−2を設置する。
【0038】
以上のことから、本実施形態に係る止水構造1−2は、実施形態1と同様の効果を奏することができる。また、挿入溝122aに起立状態の排水溝蓋2のつば部23aが挿入されるので、排水溝蓋2が倒伏することを規制することができる。従って、排水溝蓋2の起立状態を確実に維持することができる。
【0039】
なお、上記実施形態1〜2における保持具3は、床面100から取り外せて、かつ折り畳み可能としたが、これに限定されるものではなく、床面100に固定され、排水溝蓋2の起立状態を保持することができればよい。例えば、止水構造1−1を使用する場合に、折り畳めない構造物を床面100に固定することや、倒伏状態で床面100と同一平面となり、起立状態で起立状態の排水溝蓋2を保持する折り畳み可能な構造物であってもよい。
【0040】
〔実施形態3〕
次に、実施形態3に係る止水構造について説明する。図9は、実施形態3に係る倒伏状態の排水溝蓋を示す断面図である。図10は、実施形態3に係る止水構造の構成例を示す断面図である。実施形態3に係る止水構造1−3が実施形態1に係る止水構造1−1と異なる点は、排水溝蓋2を回動機構6と回動規制機構7とにより起立状態、倒伏状態に切り替える点である。
【0041】
回動機構6は、保持手段を構成するものであり、排水溝蓋2を倒伏状態と起立状態との間で回動するものであり、基部61と、回動軸62とを含んで構成されている。基部61は、排水溝蓋2の端部23を回動自在に支持するものであり、段差部122に固定されている。回動軸62は、排水溝蓋2の端部23に回転自在に挿入され、両端部が基部61に固定されている。
【0042】
回動規制機構7は、保持手段を構成するものであり、排水溝蓋2の倒伏状態と起立状態との間の回動に連動して動作するものであり、排水溝側基部71と、排水溝蓋側基部72と、第1アーム73と、第2アーム74とを含んで構成されている。排水溝側基部71は、排水溝蓋2が起立する側と反対側、すなわち屋外側となる側面110eに固定されている。排水溝蓋側基部72は、排水溝蓋2の裏面2b側に固定されている。第1アーム73は、両端部が支持ピン75,76によりそれぞれ排水溝側基部71および第2アーム74に回転自在に支持されている。第2アーム74は、両端部が支持ピン76,77によりそれぞれ第2アーム74および排水溝蓋側基部72に回転自在に支持されている。つまり、回動規制機構7は、排水溝蓋2の裏面2b側と、排水溝110のうち、排水溝蓋2が起立する側と反対側との間に渡って設けられている。回動規制機構7は、図9に示すように、排水溝蓋2の倒伏状態において、排水溝110内に収容される。また、回動規制機構7は、図10に示すように、排水溝蓋2の起立状態において第1アーム73と第2アーム74とが一直線となり、排水溝蓋2が屋内側に倒伏することを規制する。また、排水溝蓋2が屋外側に倒伏しようとした際に、一直線の第1アーム73および第2アーム74が支えとなり、屋外側に倒伏することを規制する。
【0043】
本実施形態では、下水管130に逆止弁150が形成されている。逆止弁150は、下水管130から排水溝110に向かって水が逆流することを規制するものである。従って、底面110aに排水穴123があっても、排水穴123から排水溝110に向かって水が流入することがないので、排水穴123を考慮せずに、防水シート4の底部42を底面110aに設置することができる。
【0044】
次に、倒伏状態の排水溝蓋2を止水構造1−3として用いる場合の手順について説明する。図9に示すように、まず、倒伏状態の排水溝蓋2を回動機構6により端部23を回動基点として起立させる。このとき、回動規制機構7は、排水溝蓋2が倒伏状態から起立状態に回動することに連動して動作し、第1アーム73と第2アーム74とが一直線となる。次に、防水シート4を起立状態の排水溝蓋2の屋外側に設置する。これにより、排水溝蓋2を用いた止水構造1−3を設置する。
【0045】
以上のことから、本実施形態に係る止水構造1−3は、実施形態1と同様の効果を奏することができる。また、排水溝蓋2が倒伏状態から起立状態に回動機構6により回動することに、予め設けられた回動規制機構7が連動して、起立状態の排水溝蓋2が倒伏することを規制できるように動作するので、保持具3が不要となり、止水構造1−3を簡単に設置することができる。
【0046】
〔実施形態4〕
次に、実施形態4に係る止水構造について説明する。実施形態4に係る止水構造の構成例を示す断面図である。実施形態4に係る止水構造1−4が実施形態3に係る止水構造1−3と異なる点は、排水溝蓋2が起立した側が屋外側であり、起立状態の排水溝蓋2の排水溝110側と反対側に防水シート4を設置する点である。
【0047】
防水シート4の本体部41は、本実施形態では、起立状態の排水溝蓋2の屋外側の全面を覆うものである。本体部41は、床面100上の水の水圧により、排水溝蓋2と密着する。底部42は、本実施形態では、床面100の一部を覆うものである。底部42は、本体部41と連続して形成されており、床面100上の水の水圧により床面100と密着することで、床面100上の水が本体部41と床面100との間に侵入することを防止する。端部43,44は、本実施形態では、壁部材201,202の一部を覆うものである。端部43,44は、本体部41および底部42とそれぞれ連続して形成されており、床面100上の水の水圧により、壁部材201,202とそれぞれ密着することで、床面100上の水が端部43,44と、壁部材201,202との間に侵入することを防止する。なお、おもり5は、防水シート4のうち、床面100と対向する部分に載置されるものである。
【0048】
次に、倒伏状態の排水溝蓋2を止水構造1−4として用いる場合の手順について説明する。図11に示すように、まず、倒伏状態の排水溝蓋2を回動機構6により端部23を回動基点として起立させる。このとき、回動規制機構7は、排水溝蓋2が倒伏状態から起立状態に回動することに連動して動作し、第1アーム73と第2アーム74とが一直線となる。次に、防水シート4を起立状態の排水溝蓋2の屋外側に設置する。これにより、排水溝蓋2を用いた止水構造1−4を設置する。
【0049】
以上のことから、本実施形態に係る止水構造1−4は、実施形態3と同様の効果を奏することができる。また、排水溝110を用いずに、防水シート4を設置することができるので、止水構造1−4を簡単に設置することができる。
【0050】
〔実施形態5〕
次に、実施形態5に係る止水構造について説明する。図12は、実施形態5に係る床面に設置された排水溝蓋を示す平面図である。図13は、実施形態5に係る止水構造の概略構成例を示す平面図である。実施形態5に係る止水構造1−5が実施形態1に係る止水構造1−1と異なる点は、開口部210の幅Lよりも排水溝110の幅が長い点である。
【0051】
排水溝110は、本実施形態では、図12に示すように、建物200に設けられた開口部210よりも屋外側に形成されており、その長さは開口部210の幅Lよりも長い。排水溝110の両端部は、壁部材201,202と隣接して形成されている。
【0052】
本実施形態に係る止水構造1−5は、図13に示すように、防水シート8が起立状態の排水溝蓋2と連続する壁部材201,202まで延在しており、防水シート8の両端部が壁部材201,202に取り付けられている。また、防水シート8は、壁部材201,202と排水溝110とに接する床面100に敷設されている。なお、防水シート8のうち、排水溝110の底面110aと対向する部分のみならず、床面100と対向する部分にもおもりが載置されることが好ましい。本実施形態に係る止水構造1−5においても、上記実施形態1と同様の効果を奏することができる。
【0053】
〔実施形態6〕
次に、実施形態6に係る止水構造について説明する。図14は、実施形態6に係る床面に設置された排水溝蓋を示す平面図である。図15は、実施形態6に係る止水構造の概略構成例を示す平面図である。実施形態6に係る止水構造1−6が実施形態1に係る止水構造1−1と異なる点は、開口部210の幅Lよりも排水溝110の幅が短い点である。
【0054】
排水溝110は、本実施形態では、図14に示すように、建物200に設けられた開口部210に形成されており、その長さは開口部210の幅Lよりも短い。排水溝110の両端部は、壁部材201,202と離間して形成されている。
【0055】
本実施形態に係る止水構造1−6は、図15に示すように、防水シート9が壁部材201,202まで延在しておらず、起立状態の排水溝蓋2の屋外側に取り付けられている。従って、防水シート9と壁部材201,202との間に隙間が形成されている。この隙間には、例えば土嚢などの埋め部材10が設置されている。本実施形態に係る止水構造1−6においては、開口部210の一部の領域において屋外側から屋内側に水が侵入することを抑制することができる。止水構造1−6において、水の侵入を抑制できない開口部210の領域は、埋め部材10により水の侵入を抑制することで、開口部210の全領域において水の侵入を抑制することができる。
【0056】
なお、実施形態1−1〜1−6において、隣り合う排水溝蓋2を図示しない連結具により連結するようにしてもよい。この場合は、すべての排水溝蓋2を1つの構造物として取り扱うことができるので、各排水溝蓋2に対応して保持具3を設置する必要がなくなる。これにより、止水構造1−1〜1−6を構成する部材を減らすことができる。
【0057】
また、実施形態1−1〜1−6において、防水シート4は、両端部43,44をそれぞれ壁部材201,202まで延在することで、壁部材201,202に取り付けてもよい。また、実施形態1−6において、防水シート4は、両端部43,44をそれぞれ埋め部材10まで延在することで、埋め部材10に取り付けてもよい。また、実施形態1−6において、防水シート4は、両端部43,44をそれぞれ埋め部材10まで延在することで、埋め部材10と排水水蓋2との間に挟むことで取り付けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0058】
以上のように、本発明に係る止水構造は、開閉体を有しない開口部に有用であり、特に、屋外側から屋内側に向かう水の浸入を抑制するのに適している。
【符号の説明】
【0059】
1−1〜1−6 止水構造
2 排水溝蓋
3 保持具
4 防水シート
5 おもり
6 回動機構
7 回動規制機構
100 床面
110 排水溝
120 ブロック
122a 挿入溝
200 建物
201,202 壁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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