特許第6967501号(P6967501)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6967501窒素複素環含有モノマー及びビニルアリールシクロブテン含有モノマーからの付加重合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967501
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】窒素複素環含有モノマー及びビニルアリールシクロブテン含有モノマーからの付加重合体
(51)【国際特許分類】
   C08F 212/32 20060101AFI20211108BHJP
   C08L 25/02 20060101ALI20211108BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
   C08F212/32
   C08L25/02
   C08K5/00
【請求項の数】9
【外国語出願】
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2018-206305(P2018-206305)
(22)【出願日】2018年11月1日
(65)【公開番号】特開2019-85563(P2019-85563A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2018年11月9日
(31)【優先権主張番号】15/801,776
(32)【優先日】2017年11月2日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】特許業務法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コリン・ヘイズ
(72)【発明者】
【氏名】ティナ・オーデ
(72)【発明者】
【氏名】ロバート・ケイ・バール
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィット・フレミング
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・ケイ・ギャラガー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・リエナー
【審査官】 土橋 敬介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−131958(JP,A)
【文献】 特開2015−130508(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 212/32
C08L 25/02
C08K 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1種以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーA、1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー;並びに、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールもしくはそのようなモノマーの2種以上から選択される1種以上の第3の窒素複素環含有付加重合性モノマー、のモノマー混合物を共重合形態で含むポリマー組成物であって、モノマーAは下記構造Aを有するポリマー組成物:
【化1】
(式中、Kは、共有結合、あるいはC〜Cアルキル置換もしくは非置換アレーンジイル基、C〜Cアルキル置換もしくは非置換ヘテロアレーンジル基、C−C30ヘテロ原子含有アルカンジル基、C〜C30アルカンジイル基、二価カルボニル基、二価エーテル基、二価チオエーテル基または二価エステル基から選択される基であり、
Mは、C〜Cアルキル置換または非置換アリール基、C〜Cアルキル置換または非置換ヘテロアリール基から選択される芳香族基であり;
は、共有結合またはx+1の価数を有する炭化水素連結基から選択され、
〜Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキル置換炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、C〜Cアルキル置換へテロ炭化水素基、シアノ基、C〜C12アリール基、C〜Cアルキル置換アリール基、ヘテロアリール基、またはC〜Cアルキル置換ヘテロアリール基から選択される一価基から選択され、R、R及びRの少なくとも1つは、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキル置換炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、C〜Cアルキル置換ヘテロ炭化水素基、シアノ基、C〜C12アリール基、C〜Cアルキル置換アリール基、ヘテロアリール基、またはC〜Cアルキル置換ヘテロアリール基から選択され;
xは1〜5の整数であり、及びyは1である)。
【請求項2】
前記1つ以上の付加重合性のアリールシクロブテンモノマーAが構造Aを有し、yが1であり、xが1から2の範囲である、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記1種以上の付加重合性アリールシクロブテンモノマーAが、構造A(式中、K及びLのそれぞれが共有結合であるか、またはK及びLが一緒になってC−C30アルキレン基、もしくはアルキル置換アルキレン基を形成し;R、R及びRの少なくとも1つは、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜C12アリール基、C〜Cアルキル置換アリール基、ヘテロアリール基、またはC〜Cアルキル置換ヘテロアリール基から選択される)を有する、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマーが、スチレン、α−メチルスチレン、アリルオキシスチレン、アリル末端ポリアリーレンエーテルまたはマレイミド末端ポリアリーレンエーテルから選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記ポリマー組成物が、n−ブチルアクリレート、C〜C20直鎖アルキル(メタ)アクリレート、またはジエンモノマーから選択される1種以上の第4の付加重合性モノマーを共重合形態でさらに含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
10〜90重量%の前記1種以上の付加重合性のアリールシクロブテン含有モノマーA;5〜70重量%の前記1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー;5〜35重量%の前記1種以上の第3の窒素複素環含有付加重合性モノマーのモノマー混合物を共重合形態で含み、全ての重量はコポリマーを作製するために使用されるモノマーの全固体重量を基準とし、全てのモノマー重量%が100%となる、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
別個の架橋剤;硬化剤;触媒、またはこれらの2つ以上をさらに含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記ポリマーの総重量を基準として10〜80重量%のポリマー固体を含み、残りは極性非プロトン性または極性プロトン性有機溶媒である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
ポリマー組成物を使用して薄膜またはコーティングを作製する方法であって、
請求項1〜8のいずれか一項に記載のポリマー組成物を基板上に堆積及び蒸着させる、またはコーティングすることを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にポリマー材料の分野に関し、より詳細には、1種以上の芳香族付加重合性モノマー、1種以上の窒素複素環含有付加重合性モノマー、ならびに、付加重合性基、例えばビニル基、及び1つ以上のアルキル、アルコキシまたは他の電子供与基を有し、電子デバイスの製造に有用である1種以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーAのモノマー混合物の共重合形態のコポリマーに関する。
【0002】
アリールシクロブテン含有ポリマーは、マイクロエレクトロニクスパッケージング及び相互接続アプリケーション等の様々な電子用途における誘電体材料として有用であることが知られている。
【0003】
より最近では、ビニルアリールシクロブテン−スチレン共重合体が、ジビニルシロキサンビス−ベンゾシクロブテン(DVS−BCB)ポリマーの誘電的な利点の多くを著しく低コストで提供することが示されている。So et al.,J Poly Sci A,Volume 46,Issue 8,15 April 2008,pages 2799−2806は、誘電体用途に使用するためのスチレン及びビニルBCBの硬化性コポリマーのブレンドを開示している。
【0004】
例えば、スチレン及び4−ビニルベンゾシクロブテン(ビニル−BCB)ランダムコポリマーが、フリーラジカル重合によって調製され、マイクロエレクトロニクス用途のための誘電体材料としての適合性について検討された。ポリマーは低い誘電率を有していた。しかしながら、Soらのスチレン含有コポリマーは、低い伸び率を有し、したがって脆いポリマー膜を形成し、ロール・ツー・ロールの乾燥膜、例えば誘電体ラミネートまたはプリント回路基板(PCB)ラミネート等におけるプロセスが困難となる。
【0005】
20重量%における熱可塑エラストマー(星状ポリスチレン−ブロック−ポリブタジエン)との強化ブレンドにおいて、ポリマーは、改善された破壊靭性を示し、熱的安定性を保持し、ポリマーブレンドは、高周波高速移動通信用途に望ましい。強化ブレンドは、組成物の熱安定性を含む追加の強化剤を必要とした。したがって、より柔軟なスチレン系ビニルアリールシクロブテン含有コポリマーが望ましい。
【0006】
本発明者らは、ロール・ツー・ロール乾燥膜における材料の処理を可能とするのに十分な可撓性を提供する熱安定性誘電体コポリマー材料を提供するという課題を解決しようとした。
【発明の概要】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、ポリマー組成物は、1種以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーA;1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレン、アリルオキシスチレン、アリル末端ポリアリーレンエーテルまたはマレイミド末端ポリアリーレンエーテル;及び第3の窒素複素環含有付加重合性モノマー、例えばビニルピリジンもしくはビニルイミダゾール、または好ましくは2種以上のそのようなモノマー、第4の付加重合性モノマー、例えばn−ブチルアクリレート、脂肪族(メタ)アクリレート、またはβ−ミルセン等のジエンモノマー、あるいはそれらの混合物から選択される1種以上のモノマーのモノマー混合物を共重合形態で含み、モノマーAは構造Aを有する。構造A:
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、Kは、共有結合、あるいはC〜Cアルキル置換もしくは非置換2価アリール基、C〜Cアルキル置換もしくは非置換2価ヘテロアリール基、例えばアリールオキシ基、C−C30二価アルキル基、C−C30ヘテロ原子含有アルキル基、二価C−C30アルキレン基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、カルボキシル基またはシアノ基から選択される二価基であり、
Mは、C〜Cアルキル置換または非置換二価アリール基、C〜Cアルキル置換または非置換二価ヘテロアリール基から選択される二価芳香族基であり;
は、共有結合またはx+1の価数を有する炭化水素連結基から選択され、好ましくは、xが1である場合、Lは二価炭化水素基、例えばアルキレン基もしくはアルキル置換アルキレン基、C−C30ヘテロ原子含有炭化水素基、またはC−C30置換ヘテロヒドロカルビル基であり;
【0010】
〜Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、C1〜アルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキル置換炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、C〜Cアルキル置換ヘテロ炭化水素基、シアノ基、C〜C12アリール基、C〜Cアルキル置換アリール基、ヘテロアリール基、もしくはC〜Cアルキル置換ヘテロアリール基から選択される一価基から選択され、R、R及びRの少なくとも1つは、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキル置換炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、C〜Cアルキル置換ヘテロ炭化水素基、シアノ基、C〜C12アリール基、C〜Cアルキル置換アリール基、ヘテロアリール基、もしくはC〜Cアルキル置換ヘテロアリール基から選択され;または、好ましくは、R、R及びRの1つ以上は、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキル置換炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、C〜Cアルキル置換へテロ炭化水素基、シアノ基、ヒドロキシル基、アリール基、C〜Cアルキル置換アリール基、ヘテロアリール基、もしくはC〜Cアルキル置換ヘテロアリール基から選択され;
x及びyは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、Lが共有結合である場合、yは1であり、または、好ましくは、yは1であり、xは1もしくは2である)を有する。
【0011】
好ましくは、本発明の第1の態様によれば、ポリマー組成物は、1種以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーA、スチレン、α−メチルスチレン、β−ミルセン、アリルオキシスチレン、アリル末端ポリアリーレンエーテルまたはマレイミド末端ポリアリーレンエーテル等から選択される1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー;及び第3の窒素複素環含有付加重合性モノマーのモノマー混合物のポリマーを共重合形態で含む。
【0012】
好ましくは、本発明の第1の態様によれば、ポリマー組成物は、1種以上の付加重合性のアリールシクロブテン含有モノマーA;1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー;第3の窒素複素環含有モノマービニルモノマー、例えばN−ビニルピリジン、N−ビニルイミダゾールもしくは他のビニルピリジン異性体、例えば2−ビニルピリジンから選択される、1種以上の第3の窒素複素環含有付加重合性モノマー、または、より好ましくは、2種以上の第3の付加重合性基含有窒素複素環含有モノマー、例えばN−ビニルピリジン及びN−ビニルイミダゾールのモノマー混合物の共重合形態のポリマーを含む。
【0013】
好ましくは、本発明の第1の態様によれば、ポリマー組成物は、1種以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーA、1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー、1種以上の付加重合性窒素複素環含有モノマー、ならびにアクリレートもしくはメタクリレート、例えばシクロヘキシルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート及び脂肪族(メタ)アクリレート;マレイミド及びビスマレイミド;環状無水物、例えば無水マレイン酸、3−メチレンジヒドロフラン−2,5−ジオンもしくはイタコン酸無水物;線状及び分枝アルケン、例えばヘキセン;環状オレフィン、例えばシクロペンテン、シクロヘキセンもしくはシクロオクテン;及び第2のジエノフィルもしくは付加重合性基を含有する第4のモノマー、例えばベンゾシクロブテン(BCB)含有架橋剤、例えばビニルベンゾシクロブテンもしくはジビニルシロキシビスベンゾシクロブテン(DVS−BCB);アリルメタクリレート;ジビニルベンゼン;ジエン、例えばブタジエン、シクロペンタジエン、β−ミルセン、シクロオクタジエン、もしくはテトラフェニルシクロペンタジエノン;アリルオキシスチレン;アリル、もしくはマレイミド末端ポリオール、もしくはポリシロキサン;またはマレイミド末端ポリイミドから選択される1種以上の第4の付加重合性モノマーのモノマー混合物のポリマーを共重合形態で含み;好ましくは、第4のモノマーは、n−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレートまたはC〜C20直鎖アルキル(メタ)アクリレート、例えば脂肪族(メタ)アクリレートを含む。
【0014】
本発明の第1の態様によれば、第4の付加重合性モノマーは、好ましくは、ミルセンまたはブタジエン、n−ブチルまたはC〜C20直鎖アルキル(メタ)アクリレート等のジエン等のゴム状または軟質ポリマーを形成するのに有用な付加重合性オリゴマーであり、または、より好ましくは、少なくとも150℃の標準沸点を有するモノマーである。C〜Cアルキル(メタ)アクリレート、ヘキサン、シクロペンテン、シクロヘキセン、ブタジエン及びシクロペンタジエン等の低沸点モノマー(150℃未満)の場合、加圧反応器を使用して、アリールシクロブテン含有モノマーAとの反応の前の不飽和化合物の蒸発による損失を防止することができる。
【0015】
本発明の第1の態様によれば、ポリマー組成物は、ビス−BCBモノマー、例えばジビニルシロキシビス−ベンゾシクロブテン(DVS−BCB)等の別個の架橋剤、または2つ以上のジエノフィル基を含有するモノマー、例えばジビニルベンゼン;硬化剤、例えば開始剤、光開始剤または他の光活性化合物;触媒、またはこれらの2つ以上をさらに含んでもよい。ポリマー組成物は、硬化剤及び付加重合性の2種以上のジエノフィル基を含有するモノマーの存在下での熱誘導または光誘導開始を介して、または2つ以上のジエノフィル基を含有する任意のモノマーの存在下でのポリマー上のアリールシクロブテン基の開環によって架橋させることができる。
【0016】
本発明の第1の態様によれば、ポリマー組成物は、10〜90重量%、または好ましくは15〜70重量%の1種以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーA;5〜70重量%、または好ましくは20〜55重量%の1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー;5〜40重量%、または好ましくは5〜35重量%、またはより好ましくは10〜35重量%の1種以上の第3の窒素複素環含有付加重合性モノマーのモノマー混合物を共重合形態で含み、全ての重量は、コポリマーを作製するために使用されるモノマーの全固体重量を基準とし、全てのモノマー重量%が100%となる。
【0017】
本発明の第1の態様によれば、ポリマー組成物は、10〜90重量%、または好ましくは15〜70重量%の1種以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーA;5〜70重量%、または好ましくは20〜55重量%の1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー;5〜40重量%、または好ましくは5〜35重量%、またはより好ましくは10〜35重量%の1種類以上の第3の窒素複素環含有付加重合性モノマー、及び5〜40重量%、または好ましくは10〜35重量の1種以上の第4の付加重合性モノマーのモノマー混合物を共重合形態で含み、全ての重量は、コポリマーを作製するために使用されるモノマーの全固体重量を基準とし、全てのモノマー重量%が100%となる。
【0018】
好ましくは、本発明の第1の態様によれば、ポリマー組成物は、1種以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーA、1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー、ならびに、コポリマーを作製するために使用されるモノマーの全固体重量を基準とし合計5〜40重量%、またはより好ましくは10〜40重量%、またはさらにより好ましくは15〜35重量%の1種以上の第3の付加重合性窒素複素環含有モノマー及び1種以上の第4の付加重合性モノマーのモノマー混合物を共重合形態で含み、全てのモノマー重量%が100%となる。
【0019】
本発明の第1の態様によれば、ポリマー組成物は、1種以上の付加重合性アリールシクロブテンモノマーA、1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー、1種以上の第3の付加重合性窒素複素環含有モノマー、及び所望により1種以上の第4の付加重合性モノマーのモノマー混合物を共重合形態で含んでもよく、組成物は、架橋モノマー、例えば第2の付加重合性もしくはジエノフィル基を含有するモノマーから選択される架橋剤をさらに含み、熱開始剤、光活性化合物または光開始剤から選択されるもの等の硬化剤の存在下で熱誘導または光誘導開始を介して架橋され得る。
【0020】
本発明の第1の態様によれば、ポリマー組成物は、1種以上の付加重合性アリールシクロブテンモノマーA、1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー、1種以上の第3の付加重合性窒素複素環含有モノマー、及び所望により1種以上の第4の付加重合性モノマーのモノマー混合物を共重合形態で含んでもよく、組成物は、ポリマー中のアリールシクロブテン基の開環により硬化可能であり、組成物は、所望により、2つ以上のアリールシクロブテン含有基を有する架橋剤、例えばビス−BCBモノマー、例えばジビニルシロキシビスベンゾシクロブテン(DVS−BCB)等を含有する。
【0021】
本発明の第1の態様によれば、ポリマー組成物は、1種以上の付加重合性アリールシクロブテンモノマーA、1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー、1種以上の第3の付加重合性窒素複素環含有モノマー、及び所望により1種以上の第4の付加重合性モノマーのモノマー混合物を共重合形態で含んでもよく、組成物は、ポリマー中のアリールシクロブテン基の開環により硬化可能であり、組成物は、所望により、2つ以上のアリールシクロブテン含有基を有する架橋剤を含有する。
【0022】
本発明の第1の態様によれば、ポリマー組成物は、1種以上の付加重合性アリールシクロブテンモノマーA、1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー、1種以上の第3の付加重合性窒素複素環含有モノマー、及び所望により1種以上の第4の付加重合性モノマーのモノマー混合物を共重合形態で含んでもよく、ポリマーは、1つ以上のカルボン酸、アルコールまたはアミド基を有し、組成物は、縮合架橋剤、例えばジアミンまたはポリマージオール、例えばポリエステルジオールまたはポリエーテルジオールをさらに含む。
【0023】
本発明の第1の態様によれば、ポリマー組成物は、ポリマーの総重量に基づいて10〜80重量%、または好ましくは20〜50重量%のポリマー固体を含み、残りは極性非プロトン性または極性プロトン性有機溶媒、例えば(シクロ)アルカノールもしくは(シクロ)アルカノン等の極性プロトン性溶媒、またはアルキルエステル、アミドもしくはスルトン等の極性非プロトン性溶媒である。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、基板上の薄膜またはコーティングは、1種以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーA;1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー;及び1種以上の第3の付加重合性窒素複素環含有モノマー、例えばビニルピリジンまたはビニルイミダゾールのモノマー混合物の本発明の第1の態様のポリマー組成物を共重合形態で含み、モノマーAは、上記構造Aを有する。
【0025】
本発明の第2の態様によれば、基板上の薄膜またはコーティングは、1種以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーA、1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー、1種以上の付加重合性窒素複素環含有モノマー、及び1種以上の第4の付加重合性モノマーのモノマー混合物の本発明の第1の態様のポリマー組成物を共重合形態で含み、モノマーAは、上記構造Aを有する。
【0026】
本発明の第2の態様の薄膜またはコーティングによれば、ポリマー組成物は、10〜90重量%、または好ましくは15〜70重量%の1種以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーA;5〜70重量%、または好ましくは20〜55重量%の1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー;及び5〜40重量%、または好ましくは10〜35重量%の1種以上の第3の窒素複素環含有付加重合性モノマーのモノマー混合物を共重合形態で含んでもよく、全ての重量はコポリマーを作製するために使用されるモノマーの全固体重量を基準とする。
【0027】
本発明の第2の態様の薄膜またはコーティングによれば、ポリマー組成物は、10〜90重量%、または好ましくは15〜70重量%の1種以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーA;5〜70重量%、または好ましくは20〜55重量%の1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー;5〜40重量%、または好ましくは10〜35重量%の1種類以上の第3の窒素複素環含有付加重合性モノマー、及び5〜40重量%、または好ましくは10〜35重量%の1種以上の第4の付加重合性モノマーのモノマー混合物を共重合形態で含んでもよく、全ての重量はコポリマーを作製するために使用されるモノマーの全固体重量を基準とする。
【0028】
好ましくは、本発明の第2の態様の薄膜またはコーティングによれば、ポリマー組成物は、1種以上の付加重合性のアリールシクロブテン含有モノマーA;1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー;ならびに、コポリマーを作製するために使用されるモノマーの全固体重量を基準として5〜40重量%、またはより好ましくは10〜35重量%、またはさらにより好ましくは15〜35重量%の1種以上の第3の窒素複素環含有付加重合性モノマー、及び1種以上の第4の付加重合性基含有モノマーのモノマー混合物を共重合形態で含んでもよい。
【0029】
本発明の第2の態様の薄膜またはコーティングによれば、ポリマー組成物は、縮合架橋剤、2つ以上のアリールシクロブテン含有基を有する別個の架橋剤モノマー、例えばビス−BCBモノマー、例えばジビニルシロキシビスベンゾシクロブテン(DVS−BCB)、もしくは2つ以上のジエノフィル基を含有するモノマー、例えばジビニルベンゼン、9,9−ビス(4−ビニルベンジル)−9H−フルオレン、もしくは2つ以上のアリル基を含有する付加重合性架橋剤モノマー、例えばトリアリルイソシアヌレート;硬化剤、例えば開始剤、光開始剤もしくは他の光活性化合物;触媒、またはこれらの2つ以上をさらに含んでもよい。
【0030】
本発明の第2の態様の薄膜またはコーティングによれば、モノマーA由来のアリールシクロブテン基の数モル当量に対する、1種以上の架橋剤モノマー中の付加重合性基のモル比は、0.25:1〜2.0:1、または好ましくは0.9:1〜1.5:1の範囲であってもよい。
【0031】
本発明の第3の態様によれば、電子デバイスは、本発明の第2の態様の薄膜またはコーティングを含む誘電体層、例えばポリマー基板、例えばポリエチレンテレフタル酸またはポリイミドを含有する。
【0032】
本発明の第4の態様によれば、ポリマー組成物の作製方法は、極性プロトン性溶媒または極性非プロトン性溶媒等の有機溶媒と、1種以上1種以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーA、1種以上の第2の芳香族付加重合性モノマー、例えばスチレン、α−メチルスチレン、β−ミルセン、アリルオキシスチレン、アリル末端ポリアリーレンエーテルまたはマレイミド末端ポリアリーレンエーテル;1種以上の第3の窒素複素環含有付加重合モノマー、例えばビニルピリジンもしくはビニルイミダゾール、または、好ましくは2種以上のそのようなモノマーのモノマー混合物と(モノマーAは、上記構造Aを有する)、開始剤、例えば熱開始剤または光開始剤とを提供することと、モノマー混合物を重合させることとを含む。熱開始剤が使用される場合、重合は、モノマー混合物を室温または周囲温度から140℃未満、または好ましくは60℃〜125℃、またはより好ましくは110℃未満に加熱することをさらに含む。
【0033】
本発明の第4の態様によれば、重合の後に、得られたポリマーを、付加重合のために開始剤の存在下で周囲温度〜140℃で、及び所望により、開環硬化のためにそれぞれ2つ以上のジエノフィル基、好ましくは2つ以上の付加重合性基を含有する架橋剤モノマーの存在下で、160〜220℃で架橋または硬化され得る。
【0034】
本発明の第4の態様による有機溶媒の割合は、ポリマー及び水性アルカリまたは有機溶媒の総重量を基準として10〜80重量%、または好ましくは20〜50重量%のポリマー固体を含むポリマー組成物を形成するような割合である。
【0035】
本発明の第4の態様の方法によれば、モノマー混合物または好ましいモノマー混合物は、本発明の第1の態様において有用であるかまたは好ましい任意のものである。
【0036】
本発明の第5の態様によれば、基板上に薄膜またはコーティングを作製する方法は、本発明の第1の態様のポリマー組成物を基板上に堆積させ、蒸着またはコーティングすることを含む。ポリマー組成物は、1種以上の有機溶媒を含んでもよい。組成物は、好ましくは、熱開始剤または光開始剤から選択される硬化剤、所望により2つ以上の付加重合性基を含む架橋剤モノマーもしくは2つ以上のジエノフィル基を含有するモノマーを含む光活性化合物、または縮合架橋剤、例えばジアミンもしくは保護されたジアミンをさらに含んでもよい。
【0037】
本発明の第5の態様の方法によれば、ポリマーは、硬化剤、例えば開始剤または光開始剤、及び所望により付加重合性架橋剤の存在下で、室温または周囲温度〜140℃未満、好ましくは60〜125℃、またはより好ましくは110℃未満で加熱され得る。
【0038】
本発明の第5の態様の方法によれば、方法は、膜またはコーティングを160〜220℃、または好ましくは180〜210℃の温度で開環硬化させることをさらに含んでもよい。
【0039】
本発明のポリマー組成物の(本発明のポリマー組成物を使用する)第5の態様の方法による架橋剤または硬化剤は、上で開示された本発明の第1の態様のポリマー組成物における使用に関して開示された架橋剤または硬化剤の任意の1つ以上であってもよい。
【0040】
本発明の第6の態様によれば、本発明の第1の態様のポリマー組成物を使用する方法は、本発明の第1の態様のポリマー組成物を回路基板上に堆積及び蒸着またはコーティングさせ、好ましくは60〜140℃の温度に加熱してソフトベーキングを行うことと;ポリマー層を光硬化させて光硬化層を得ることと;160〜220℃の温度で開環させる等して光硬化層を熱硬化させ、絶縁層を形成することとを含む。
【0041】
別段に指定されない限り、温度及び圧力の条件は、周囲温度または室温(RT)及び標準圧力である。列挙された全ての範囲は、包括的かつ組み合わせ可能である。
【0042】
別段に指定されない限り、括弧を含む用語は、代替として、括弧が存在しないかのような用語全体及びそれらがない用語、ならびに各代替の組み合わせを指す。したがって、用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレート、またはそれらの混合物を指す。
【0043】
本明細書において使用される場合、別段に記載されない限り、全ての量は重量パーセントであり、全ての比はモル比である。
【0044】
全ての数値範囲は端点を含み、任意の順序で組み合わせ可能であるが、但しそのような数値範囲が最大100%となるように制限されることが明らかな場合を除く。
【0045】
本明細書において使用される場合、冠詞「a」、「an」及び「the」は、単数形及び複数形を指す。
【0046】
本明細書において使用される場合、用語「アルキル」は、直鎖、分枝及び環状アルキルを含む。同様に、「アルケニル」は、直鎖、分岐及び環状アルケニルを指す。「アリール」は、芳香族炭素環及び芳香族複素環を指す。
【0047】
本明細書において使用される場合、用語「脂肪族」は、直鎖または分枝状であってもよいアルキル、アルケニル及びアルキニル部分等の開鎖炭素含有部分を指す。また、本明細書において使用される場合、「脂環式」という用語は、シクロアルキル及びシクロアルケニル等の環状脂肪族部分を指す。そのような脂環式部分は、非芳香族であるが、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含み得る。「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードを指す。「(メタ)アクリレート」という用語は、メタクリレート及びアクリレートの両方を指し、同様に(メタ)アクリルアミドという用語は、メタクリルアミド及びアクリルアミドの両方を指す。
【0048】
文脈により異なる意味が明確に示されない限り、「置換」アルキル、アルケニル、またはアルキニルとは、アルキル、アルケニル、またはアルキニル上の1個以上の水素が、ハロ、ヒドロキシ、C1−10アルコキシ、アミノ、モノ−もしくはジ−C1−10ヒドロカルビル置換アミノ、C5−20アリール、及び置換C5−20アリールから選択される1つ以上の置換基で置き換えられていることを意味する。文脈により異なる意味が明確に示されない限り、「置換」アリールとは、アリール上の1個以上の水素が、ハロ、ヒドロキシ、C1−10アルキル、C2−10アルケニル、C2−10アルキニル、C1−10アルコキシ、アミノ、モノ−またはジ−C1−10ヒドロカルビル置換アミノ、C5−20アリール、及び置換C5−20アリールから選択される1つ以上の置換基で置き換えられていることを意味する。「アルキル」は、アルカンラジカルを意味し、アルカンジラジカル(アルキレン)及びより高級のラジカルを含む。同様に、「アルケニル」、「アルキニル」及び「アリール」という用語は、それぞれアルケン、アルキン及びアレーンの対応するモノ−、ジ−またはより高級のラジカルを指す。
【0049】
本明細書において使用される場合、「付加重合性基」という用語は、付加重合により重合する任意の不飽和官能基を意味し、ビニル、ビニリデンまたはアリル基、及び任意のアルキル、アルコキシ、S、N、P、OもしくはSiヘテロ原子含有炭化水素、シロキシ、シアノ、アリール、アルキルアリール、S、N、P、OもしくはSiヘテロアリール、カルボニル、カルボキシル(カルボキシレート)、アルデヒド、ジケト、ヒドロキシル、アミン、イミン、アゾ、リンまたは硫黄含有基を置換基または成分として含む。
【0050】
本明細書において使用される場合、「芳香族有機残基」という用語は、芳香族性のみを有する有機残基、例えばフェニル、ならびに芳香族及び脂肪族部分の組み合わせを含有する有機残基を包含する。
【0051】
本明細書において使用される場合、「硬化」という用語は、本発明による組成物を作製または使用する方法の使用によって、ポリマー材料または組成物の分子量を増加させる付加架橋または縮合等の任意のプロセスを意味する。
【0052】
「硬化性」は、特定の条件下で硬化することができる任意のポリマー材料を指す。
【0053】
本明細書において使用される場合、「ASTM」という用語は、ASTM International,West Conshohocken,PAの刊行物を指す。
【0054】
本明細書において使用される場合、「完全硬化」という用語は、DSCによって再走査されたときに、既知の熱含量の組成物と比較して元の硬化プロファイルからの所与の組成物の残留反応熱>98%が除去されたことを意味する。これは、例えば200ジュール/グラム(J/g)等の熱含量に対応する、DSCトレース上で積分されたピーク面積として定義される。200J/gの熱含量を有する組成物の場合、所与の熱処理(例えば200℃で1時間)後に100J/gを有するピークは、50%硬化したとみなされる。
【0055】
本明細書において使用される場合、「DSC」または「示差走査熱量測定」という用語は、Q2000(商標)DSC装置(TA Instruments、New Castle、DE)を使用したポリマー硬化プロファイルまたは発熱の測定方法を指す。DSCは、密閉されたTzero(商標)アルミニウム密封試料パン(TA instruments)中に置かれた単離された未硬化ポリマー(<5mg)の試料を使用して実行された。次いで、試料パンを対照パンと共にDSCセルに入れ、次いでDSCをRTから300℃まで毎分10℃の速度で加熱した。本発明のアリールシクロブテン含有ポリマーのB−ステージ化には、所与の試料から200〜300℃で放出される熱量(J/g)は、258℃のピーク発熱を有するアリールシクロブテン開環反応に起因して「残留硬化度」または残留反応熱であると定義される。
【0056】
本明細書において使用される場合、用語「式重量」は、所与の材料を表す代表的な式の分子量を指す。
【0057】
本明細書において使用される場合、「ヘテロ」または「ヘテロ原子」という用語は、有機基に関して使用される場合、O、P、N、SまたはSi原子を意味する。
【0058】
本明細書において使用される場合、「標準沸点」という用語は、標準圧力での純粋な形態の所与の液体の沸点を指す。
【0059】
本明細書において使用される場合、「オリゴマー」という用語は、Bステージ化重合材料を含む二量体、三量体、四量体、五量体、六量体等の比較的低分子量の材料を指し、これらはさらに硬化または重合され得る。
【0060】
本明細書において使用される場合、「固体」という用語は、本発明の反応生成物のままである任意の物質を指し、したがって、固体は、Bステージ化、重合及び硬化のいずれかの後に揮発しないモノマー及び不揮発性添加剤を含む。固体は水、アンモニア及び揮発性溶媒を含まない。
【0061】
本明細書において使用される場合、反応混合物の「化学量論」という用語は、未反応アリールシクロブテン基に対する所与の組成物中の未反応オレフィン基またはジエノフィル基のモル当量の比を指す。
【0062】
本明細書において使用される場合、別段に指定されない限り、「重量平均分子量」または「Mw」という用語は、標準としてのポリスチレンから較正した標準に対して、イソクラチックポンプ、オートサンプラー(注入体積(100〜150μl)、及びそれぞれポリスチレンジビニルベンゼン(PS/DVB)ゲルが充填された4 Shodex(商標)(8mm×30cm)カラムのシリーズを装備したWaters Alliance High Pressure Liquid Chromatogram(HPLC)(Waters、Milford、MA)を使用して、室温でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値を意味する。本明細書において使用される場合、「数平均分子量」または「Mn」は、重量平均分子量と同様の様式で測定され、所与のポリマー組成物中の中央分子サイズを表す。本明細書において使用される場合、「PDI」という用語は、Mw/Mnの比を指す。
【0063】
本明細書において使用される場合、用語「重量%」は重量パーセントを表す。
【0064】
本明細書全体にわたって使用される場合、以下の略語は、文脈により別の意味が明確に示されない限り、以下の意味を有するものとする:℃=摂氏;min.=分;hr.=時間;g=グラム;L=リットル;μm=ミクロン=マイクロメートル;nm=ナノメートル;mm=ミリメートル;mL=ミリリットル;MPa=メガパスカル;Mw=重量平均分子量;Mn=数平均分子量;AMU=原子質量単位。別段に記載されない限り、「重量%」は、参照組成物の総重量を基準とする重量%を指す。
【0065】
本発明者らは、α−メチルビニルベンゾシクロブテン等の1種以上の付加重合性アリールシクロブテン、1種以上の付加重合性芳香族モノマー、及び1種以上の付加重合性窒素複素環含有モノマーを共重合形態で含むポリマー組成物が、窒素複素環含有モノマーを含まない同じポリマーと比較して優れた膜可撓性を示すことを見出した。さらに、本発明のポリマーは、140℃未満の温度で従来の付加重合により形成することができ、この温度は、アリールシクロブテン含有基を含む誘電体としては極めて低い。
【0066】
本発明によれば、ポリマー組成物は、1種類以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーA、1種類以上の第2の芳香族付加重合性モノマー、例えばスチレン、及び1種類以上の第3の窒素複素環含有付加重合性モノマー、例えばビニルピリジンまたはビニルイミダゾールのモノマー混合物を共重合形態で含み;モノマーAは、構造A:
【0067】
【化2】
【0068】
(式中、Kは、共有結合、あるいはC〜Cアルキル置換もしくは非置換2価アリール基、C〜Cアルキル置換もしくは非置換2価ヘテロアリール基、例えばアリールオキシ基、二価C〜C30アルキレン基、カルボニル基、エーテル基、チオエーテル基、エステル基、またはカルボキシル基から選択される二価基であり、
Mは、C〜Cアルキル置換または非置換二価アリール基、C〜Cアルキル置換または非置換二価ヘテロアリール基から選択される二価芳香族基であり;
は、共有結合から選択されるか、もしくはx+1、好ましくは2の価数を有する炭化水素連結基であり、または、Lは、Kと共にC−C30二価炭化水素基、例えばアルキレン基もしくはアルキル置換アルキレン基、C−C30ヘテロ原子含有炭化水素基、またはC−C30置換ヘテロヒドロカルビル基を形成し;
〜Rは、それぞれ独立して、水素、重水素、ハロゲン、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキル置換炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、C〜Cアルキル置換へテロ炭化水素基、シアノ基、C〜C12アリール基、C〜Cアルキル置換アリール基、ヘテロアリール基、またはC〜Cアルキル置換ヘテロアリール基から選択される一価基から選択され、R、R及びRの少なくとも1つは、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキル置換炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基、C〜Cアルキル置換ヘテロ炭化水素基、シアノ基、C〜C12アリール基、C〜Cアルキル置換アリール基、ヘテロアリール基、またはC〜Cアルキル置換ヘテロアリール基から選択され;あるいは、好ましくは、R、R及びRの少なくとも1つ以上が、C〜Cアルキル基、C〜Cアルコキシ基、C〜Cアルキル置換炭化水素基、ヘテロ原子含有炭化水素基C〜Cアルキル置換へテロ炭化水素基、シアノ基、ヒドロキシル基、アリール基、C〜Cアルキル置換アリール基、ヘテロアリール基、またはC〜Cアルキル置換ヘテロアリール基であり;
x及びyは、それぞれ独立して1〜5の整数であり、または、好ましくはyは1であり、xは1〜2の範囲である)を有する。
【0069】
好ましくは、付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーAは、α−C〜Cアルキルベンゾシクロブテン、例えばビニルα−メチルベンゾシクロブテン(アルファビニルメチルBCB)、α−ビニルエチルBCBまたはα−ビニルプロピルBCBを含む。
【0070】
本発明のアリールシクロブテンポリマーは、重合単位として、1つの付加重合性のアリールシクロブテン含有モノマーA、または2つ以上の付加重合性アリールシクロブテン含有モノマーAを含んでもよい。
【0071】
本発明によるポリマー組成物の可撓性を保証するために、好適な量の付加重合性窒素複素環含有モノマーは、モノマー混合物の全固体重量を基準として5〜40重量%、好ましくは10〜35重量%の範囲である。
【0072】
本発明によるポリマー組成物の可撓性を保証するために、第3のモノマー及びゴム状の第4のモノマー、例えばn−ブチルアクリレート、長鎖アルキル(メタ)アクリレートまたはブタジエンの総量が、モノマー混合物の少なくとも10重量%、または好ましくは少なくとも12重量%である限り、モノマー混合物は、固体としてわずか3重量%、または好ましくはわずか5重量%の第3の付加重合性窒素複素環含有モノマーを含んでもよい。
【0073】
本発明によるポリマー組成物の作製に有用な適切な第4の付加重合性モノマーは、アリールシクロブテン基を含まない。適切な第4のモノマーは、例えば、(メタ)アクリレート、例えばn−ブチル(メタ)アクリレート及び脂肪族(メタ)アクリレート、アリル基含有モノマー、アルケン、ジエン及び追加の官能基を含有する付加重合性モノマー、例えば酸性または加水分解性基、ならびに高沸点(少なくとも150℃の標準沸点)モノマー、例えばアリル、アルキンもしくはマレイミド末端ポリオール、ポリアリーレンエーテル、またはポリシロキサンであってもよい。
【0074】
本発明によるアリールシクロブテンポリマー組成物は、重合単位として、ジエン、例えばブタジエン、イソプレン、オシメンまたはβ−ミルセンを含む;あるいは、追加の重合性基またはジエノフィル基もしくは2つ以上のジエノフィル基を含む、1種以上の第4の付加重合性モノマー、例えばジアリルエーテル、アリルオキシスチレン、ジビニルベンゼンまたはジエチニルベンゼンを含んでもよい。2つ以上の付加重合性またはジエノフィル基を含む第4のモノマーは、本発明のポリマー組成物に追加的な架橋能力を付与するために使用され得る。そのようなモノマーは、ポリマーに加えて別個の架橋剤として使用することもできる。そのような第4のモノマーの選択は、当業者の能力の範囲内である。
【0075】
追加的な官能基、例えば酸性基、例えば無水物基、または他の加水分解性基、例えば活性水素もしくは加水分解性のシラン(シロキサン)基を含有する好適な第4の付加重合性モノマーは、モジュール式の重合後官能化または縮合による硬化を可能にする。例えば、そのようなモノマーをジアミンまたは多官能性アミンと反応させて、熱硬化プロセス中にイミド化され得るアミド酸前駆体を形成することができる。無水物を水性媒体と組み合わせ、t−ブタノール等でそのようなモノマーをアルコール化してモノエステルを形成すること等により、無水物を加水分解することもできる。
【0076】
本発明のポリマー組成物の作製方法によれば、本方法は、例えば過酸化ベンゾイル(BPO)もしくは過硫酸塩、またはその塩を開始剤として使用して、制御されないフリーラジカル付加重合によって本発明のモノマー混合物を重合させることを含む。重合において、モノマー混合物は一般に60〜140℃、または好ましくは70〜125℃に加熱される。
【0077】
適切な重合溶媒は、1種以上のモノマーを溶解し、メシチレン等のモノマーの重合温度よりも高い沸点を有する任意の有機溶媒である。例示的な有機溶媒は、極性非プロトン性溶、例えばアミド、エステル、例えば酢酸ブチル、及びスルホン、ならびに極性プロトン性溶媒、例えば(シクロ)アルカノールを含む。
【0078】
重合時間は、典型的には1〜60時間、例えば20〜45時間である。特定の用途では、オリゴマー段階で重合を停止させることが望ましい場合がある。本発明の1種以上のモノマーで構成されるそのようなオリゴマーは、主に二量体、三量体、四量体等で構成され、次いでその後さらに重合されてもよい。本明細書において使用される場合、「本発明のモノマー」という用語は、本明細書に記載の個々の化合物、ならびにそれらの二量体、三量体及び四量体を含み、それらは次いでさらに重合されることが意図される。
【0079】
一例において、本発明によるモノマー混合物の重合は、100℃において、10〜80重量%、または好ましくは20〜50重量%のポリマー固体の固体濃度で、例えばn−ブチルアセテート(bp=126℃)溶媒を使用して実行され得る。一定期間(4〜24時間)後、重合に追加のBPOを加え、次いでさらに4〜10時間重合させる。
【0080】
硬化または架橋前に、本発明によるポリマー組成物は、ポリスチレン標準に対するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定して、3,000〜250,000、または好ましくは6,000〜50,000の重量平均分子量を有する。
【0081】
ポリマー組成物は、硬化剤と、付加重合性の2つ以上のジエノフィル基を含有するモノマーの存在下での熱誘導または光誘導開始によって、または2つ以上のジエノフィル基を含有する任意のモノマーの存在下でポリマー上のアリールシクロブテン基を開環させることによって架橋され得る。
【0082】
本発明のポリマーは、そのまま使用されてもよく、または水もしくはメタノール等の非溶媒を添加し、ポリマーを溶液から沈殿させ、その後有機溶媒を除去することによって単離されてもよい。
【0083】
本発明のポリマー組成物は、1種以上のアリールシクロブテン含有ポリマー及び1種以上の有機溶剤を含んでもよい。適切な有機溶媒は、ポリマーが可溶性であるものである。特に有用な有機溶媒は、アリールシクロブテンポリマーの作製または調合に有用な任意の溶媒である。例示的な有機溶媒は、これらに限定されないが、トルエン、キシレン、及びメシチレン等の芳香族炭化水素;2−メチル−1−ブタノール、4−メチル−2−ペンタノール、メチルイソブチルカルビノール等のアルコール;乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、n−ブチルアセテート及び酢酸3−メトキシ−1−ブチル等のエステル;ガンマ−ブチロラクトン等のラクトン;N−メチルピロリジノン等のラクタム;プロピレングリコールメチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテル異性体等のエーテル、例えばPROGLYDE(商標)DMM(The Dow Chemical Company、Midland、MI(Dow));シクロヘキサノン、2−ブタノン、及びメチルシクロヘキサノン等のケトン;ならびにそれらの混合物を含む。好ましい溶媒は、極性プロトン性溶媒及び極性非プロトン性溶媒である。
【0084】
本発明のポリマー組成物において有用となり得る好適な添加剤は、これらに限定されないが、硬化剤、架橋剤、例えばポリマーから分離した架橋モノマー、界面活性剤、無機充填剤、有機充填剤、可塑剤、接着促進剤、金属不動態化材料、及び上記のいずれかの組み合わせのそれぞれの1つ以上を含む。好適な界面活性剤は当業者に周知であり、非イオン性界面活性剤が好ましい。そのような界面活性剤は、0〜10g/L、好ましくは0〜5g/Lの量で存在し得る。任意の適切な無機充填剤が、本発明の組成物において任意選択で使用され得、また当業者に周知である。例示的な無機充填剤は、これらに限定されないが、シリカ、炭化ケイ素、窒化ケイ素、アルミナ、炭化アルミニウム、窒化アルミニウム、ジルコニア等、及びそれらの混合物を含む。無機充填剤は、粉末、ロッド、球、または任意の他の適切な形状の形態であり得る。そのような無機充填剤は、シランまたはチタン酸塩等のカップリング剤を従来の量で含み得る。
【0085】
そのような無機充填剤は、任意の適切な寸法を有し得る。無機充填剤は、組成物の総重量を基準として0〜80重量%の量で使用され得る。好ましくは、金属不動態化材料は、銅不動態化剤である。適切な銅不動態化剤は、当該技術分野において周知であり、イミダゾールベンゾトリアゾール、エチレンジアミンまたはそれらの塩もしくは酸エステル、及びイミノ二酢酸またはその塩を含む。
【0086】
本発明のポリマー上の任意の酸性もしくは加水分解性官能基または本発明のポリマー上の任意のオレフィン基もしくはジエノフィル基と反応する任意の架橋剤が架橋剤として使用され得るが、但しそれらは、組成物を硬化させるために使用される条件下で本発明のポリマーと架橋する。適切な架橋剤は、これらに限定されないが、ジアミン、ポリアミン、及びポリチオール(複数のアミンまたはチオール基を有するポリマーを含む)、2つ以上のオレフィン基またはジエノフィル基を有するモノマー、例えばグリコールジ(メタ)アクリレートまたはジアリルフタレート、ならびにシクロブテン環がC〜Cアルキル、カルボキシアルキル、ケト、アルデヒド、アセタール、ケタール、またはヒドロキシアルキル基等の一価炭化水素含有基の少なくとも1つを含有するビス−アリールシクロブテンモノマーを含む。好適なジアミンは、単純芳香族ジアミン、例えば、フェニレンジアミン、Jeffamine(商標)エトキシル化アミン(Huntsman Corp.、Salt Lake City、UT)、またはアミン基でキャップされたオリゴイミドを含み得る。そのような架橋剤の選択は、当業者の能力の範囲内である。
【0087】
架橋剤は、典型的には、組成物中の重合性モノマーの総重量を基準として0〜20重量%、好ましくは0〜10重量%の量で使用される。本発明のポリマー組成物は、フォトリソグラフィー、パッケージング、接着剤、シーリング及びバルク誘電体用途(例えば、スピンオンコーティングまたは緩衝層)等の多くの用途が見出される。
【0088】
フォトリソグラフィーに有用な本発明のポリマー組成物には、種々の硬化剤が使用され得る。好適な硬化剤は、本発明のポリマーの硬化を補助することができ、熱または光によって活性化され得る。例示的な硬化剤は、これらに限定されないが、熱的に生成された開始剤及び光活性化合物(光生成開始剤)を含む。そのような硬化剤の選択は、当業者の能力の範囲内である。好ましい熱的に生成された開始剤は、フリーラジカル開始剤、例えばアゾビスイソブチロニトリル、過酸化ジベンゾイル、及び過酸化ジクミル等であるが、これらに限定されない。好ましい光活性硬化剤は、IrgacureブランドとしてBASFから入手可能なフリーラジカル光開始剤、及びジアゾナフトキノン(DNQ)化合物(DNQ化合物のスルホン酸エステルを含む)である。好適なDNQ化合物は、DNQスルホネートエステル部分等のDNQ部分を有する任意の化合物であり、本発明の組成物において光活性化合物として機能する、すなわち、適切な放射線に暴露されると溶解阻害剤として機能する。
【0089】
好適なDNQ化合物は、米国特許第7,198,878号及び同第8,143,360号において開示されている。光活性化合物の量は、ポリマー固体の総重量を基準として0〜30重量%の範囲で変化する。存在する場合、光活性化合物は、典型的には、ポリマー固体の総重量を基準として5〜30重量%、好ましくは5〜25重量%、より好ましくは10〜25重量%の量で使用される。
【0090】
任意の好適な接着促進剤が本発明のポリマー組成物において使用され得、そのような接着促進剤の選択は十分に当業者の能力の範囲内である。好ましい接着促進剤は、シラン含有材料またはテトラアルキルチタネートであり、より好ましくはトリアルコキシシラン含有材料である。
【0091】
例示的な接着促進剤は、これらに限定されないが、:ビス(トリアルコキシシリルアルキル)ベンゼン、例えばビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼン;アミノアルキルトリアルコキシシラン、例えばアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、及びフェニルアミノプロピルトリエトキシシラン;ならびにその他のシランカップリング剤、ならびに上記の混合物を含む。特に好適な接着促進剤は、AP3000、AP8000、及びAP9000S接着促進剤(Dow Electronic Materials、Marlborough、MA)を含む。
【0092】
本発明のポリマー組成物は、組成物の総重量を基準として0〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜10重量%、さらにより好ましくは2〜10重量%の接着促進剤を含有してもよい。
【0093】
本発明のポリマー組成物は、本発明の1種以上のポリマー及び任意の有機溶媒、水または追加成分を任意の順序で組み合わせることによって調製されたフォトリソグラフィー組成物であってもよい。本発明の組成物が、硬化剤、例えば光活性化合物、例えばジアゾナフトキノン、オニウム塩または光開始剤を含有する場合、硬化剤は、最初に好適な有機溶媒または水性アルカリに溶解され、次いで1種以上の存在するポリマー及び任意選択の界面活性剤と組み合わされ、次いで任意の接着促進剤と組み合わされることが好ましい。好適な光活性化合物の選択は、当業者の通常の水準内である。
【0094】
本発明のポリマー組成物のいずれも、誘電体層、永久結合接着剤、応力緩衝層等としての使用に好適な層または膜を形成するために使用することができる。
【0095】
本発明のポリマー組成物は、例えば、薄膜またはコーティング組成物として有用である。
【0096】
薄膜またはコーティングを形成するために、有機溶媒溶液としてのポリマー組成物をPET膜上に延伸またはコーティングし、5〜25分間90〜125℃でソフトベーキングしてから組成物を硬化させることができる。
【0097】
ポリマー組成物または薄膜もしくはコーティング組成物は、硬化剤開始剤及び所望により2つ以上の付加重合性基を含有するモノマーの存在下での熱誘導もしくは光誘導開始によって、または所望により2つ以上のジエノフィル基を含有する任意のモノマーの存在下でのポリマー上のアリールシクロブテン基の開環によって、または酸官能性モノマー基とジアミンとの間等の縮合反応によって架橋され得る。
【0098】
熱もしくは光開始剤化合物または光活性化合物を含む硬化剤の場合、ポリマーまたはコーティング組成物の付加重合硬化は、所望により2つ以上の付加重合性基を含有する架橋剤モノマーをさらに含むポリマーの、周囲温度〜140℃、例えば60〜125℃の任意の温度での開始重合を介して生じることができる。
【0099】
架橋をもたらしてもよい、またはもたらさなくてもよいポリマー組成物の硬化はまた、例えば170〜230℃、または好ましくは180〜220℃で組成物を加熱して開環熱硬化をもたらし、2つ以上のジエノフィル基を含有する架橋剤モノマーを硬化させることを含んでもよい。
【0100】
開環硬化は、任意の付加重合性アリールシクロブテン基含有モノマーAと、ポリマー組成物中、例えば共重合モノマーまたは2つ以上のジエノフィル基を有する追加の架橋剤モノマー中の任意のオレフィンまたはジエノフィル基との反応を指す。
【0101】
開環硬化はまた、アリールシクロブテン含有モノマーA中のアリールシクロブテン基の開環により、上記構造Aにおけるxの値の増加をもたらすことができる。そのような開環は、付加重合してポリマーを形成し、それによってアリールシクロブテン基のオリゴマーを形成した後のポリマー組成物のB−ステージ化から生じ得る。
【0102】
本発明のポリマー組成物から作製されたコーティングまたは膜の可撓性を試験するために、乾燥またはソフトベーキング膜が次いで円錐マンドレル上で曲げられ、任意の亀裂伝播が円錐の底部からの距離として測定される。膜の可撓性は、手で曲げ、亀裂を生じさせずに膜の折り曲げようと試み、ハサミで膜を切断して、チッピングや亀裂を観察することによって、定性的に観察することもできる。
【0103】
本発明のポリマー組成物は、任意の好適な方法によって基板上にコーティングされ得る。本発明の組成物を配置するための好適な方法は、これらに限定されないが、スピンコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ディップコーティング、蒸着、及び真空ラミネーション等のラミネーションを含む。半導体製造業界において、スピンコーティングは、既存の設備及びプロセスを利用する好ましい方法である。スピンコーティングでは、回転速度と共に組成物の固体含量を調節して、それが塗布される表面上の組成物の所望の厚さを達成することができる。
【0104】
典型的には、本発明のポリマー組成物は、400〜4000rpmの回転速度でスピンコーティングされる。ウエハまたは基板上に分配される本発明の組成物の量は、組成物中の全固体含量、得られる層の所望の厚さ、及び当業者に周知の他の要因に依存する。本発明の組成物の膜または層が、例えばスピンコーティングによってキャストされる場合、膜の堆積中に溶媒の多く(または全て)が蒸発する。好ましくは、表面上に配置された後、組成物は加熱され(ベーキングされ)、任意の残りの溶媒が除去される。典型的なベーキング温度は90〜130℃であるが、他の温度も好適に使用され得る。残留溶媒を除去するためのそのようなソフトベーキングは、典型的には約2分間行われるが、より長いまたはより短い時間も好適に使用され得る。本発明のポリマー組成物は、典型的には、ある時間加熱することによって硬化される。好適な硬化温度は、170℃〜230℃の範囲である。典型的には、硬化時間は、1〜600分の範囲である。
【0105】
好ましくは、本発明のポリマー組成物の層はまた、乾燥膜として形成され、ラミネーションによって基板の表面上に配置され得る。真空ラミネーション技術を含む様々な好適なラミネーション技術が使用され得、当業者に周知である。本発明の組成物は、乾燥膜を形成する際に、まず、ポリエステルシート、好ましくはポリ(エチレンテレフタレート)(PET)シートまたはポリイミドシート、例えばKAPTON(商標)ポリイミド(DuPont、Wilmington、DE)等の好適な膜支持シートの前面に、スロットダイコーティング、グラビア印刷、または他の適切な方法を用いて配置、例えばコーティングされる。次いで、組成物は、好適な温度、例えば90〜140℃で、適切な時間、例えば1〜30分間ソフトベーキングされ、任意の溶媒が除去される。次いで、保存及び取扱い中に組成物を保護するために、ポリエチレン等のポリマー膜カバーシートが、乾燥した組成物の上に室温でロールラミネートされる。乾燥した組成物を基板上に配置するためには、まずカバーシートが除去される。次いで、支持シート上の乾燥した組成物が、ロールラミネーションまたは真空ラミネーションを用いて基板表面上にラミネートされる。ラミネーション温度は、20〜120℃の範囲となり得る。次いで、支持シートが除去(剥離)され、乾燥した組成物がその表面に残される。
【0106】
本発明において、多種多様な電子デバイス基板が使用され得る。電子デバイス基板は、任意の電子デバイス、好ましくはポリマーまたはプラスチック基板の製造に使用するための任意の基板である。例示的な電子デバイス基板は、限定されないが、半導体ウエハ、ガラス、サファイア、ケイ酸塩材料、窒化ケイ素材料、炭化ケイ素材料、ディスプレイデバイス基板、エポキシモールド化合物ウエハ、回路基板、及び熱安定性ポリマーを含む。本明細書において使用される場合、「半導体ウエハ」という用語は、半導体基板、半導体デバイス、及び様々なレベルの相互接続のための様々なパッケージを包含することを意図しており、単一チップウエハ、複数チップウエハ、発光ダイオード(LED)、またははんだ接続を必要とする他のアセンブリを含む。シリコンウエハ、ガリウム−砒素ウエハ、及びシリコン−ゲルマニウムウエハ等の半導体ウエハは、パターニングされていてもよく、またはパターニングされていなくてもよい。本明細書において使用される場合、「半導体基板」という用語は、半導体デバイスのアクティブまたは動作可能な部分を含む、1つ以上の半導体層または構造を有する任意の基板を含む。「半導体基板」という用語は、半導体デバイス等の半導体材料を含む任意の構造を意味すると定義される。半導体デバイスは、少なくとも1つのマイクロ電子デバイスがその上に製造された、または製造されている半導体基板を指す。熱安定性ポリマーは、限定されないが、ポリイミド、例えばKAPTON(商標)ポリイミド(DuPont、Wilmington、DE)等のアリールシクロブテン材料を硬化させるために使用される温度に対して安定な任意のポリマーを含む。
【0107】
接着促進剤を含有しない本発明の組成物が使用される場合、本発明の組成物でコーティングされる基板の表面は、任意選択で、まず好適な接着促進剤と接触されてもよく、または蒸気処理されてもよい。そのような処理は、本発明のポリマー組成物の基板表面への接着を改善する。スピンコーティング、ディップコーティング、スプレーコーティング、カーテンコーティング、ロールコーティング、蒸着等の任意の好適な方法を用いて、基板表面を接着促進剤と接触させることができる。スピンコーティングは、基板表面を接着促進剤と接触させるための好ましい方法である。任意の好適な接着促進剤を使用することができ、そのような接着促進剤の選択は十分に当業者の能力の範囲内である。好ましい接着促進剤はシラン含有材料であり、より好ましくはトリアルコキシシラン含有材料である。基板表面を前処理するのに有用な例示的な接着促進剤は、上記のものである。当該技術分野において公知の様々な蒸気処理、例えばプラズマ処理を用いて、本発明のアリールシクロブテン含有ポリマーの基板表面への接着性を向上させることができる。特定の用途において、基板表面を本発明の組成物でコーティングする前に、接着促進剤を使用して表面を処理することが好ましい場合がある。
【実施例】
【0108】
ここで、本発明を以下の限定されない実施例で詳細に説明する。
【0109】
別段に指定されない限り、全ての温度は室温(21〜23℃)であり、全ての圧力は大気圧(〜760mmHgまたは101kPa)である。
【0110】
以下に開示される他の原材料にもかかわらず、実施例において以下の原材料が使用された:
BCB:ベンゾシクロブテン;
BPO:過酸化ベンゾイル;
MBA:3−メトキシブチルアセテート溶媒;
PET:ポリ(エチレンテレフタレート);及び
MI:マレイミド。
【0111】
材料は、以下を含む様々な開示された手法で分析された:
【0112】
モル比計算:アリールシクロブテン含有モノマーAのモル数に対する第2、第3及び第4のモノマーのモル数を、アリールシクロブテンモノマーの開始モル数から計算した。B−ステージ化からの残留発熱をJ/gで測定し、ビス−アリールシクロブテンモノマーの全エンタルピーと比較した(J/g、DVSの場合、〜800J/g、BCBの156J/mmolに相当)。エンタルピーに対する残留発熱の比は、固体グラム当たり数ミリモルのアリールシクロブテンモノマーを与えたが、これに固体のグラム単位の全質量を乗じ、アリールシクロブテンモノマーの全モルを得た。これを、モル比を得るために添加した他のモノマーのモル数と比較した。
【0113】
実施例1:4−ビニルピリジン−co−スチレンco−アルファ−メチル−ビニルBCBの調製:ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(商標)ポリマー、DuPont)被覆熱電対及びオーバーヘッドメカニカルスターラーを備えた100mL EasyMax(商標)402 Basic Synthesis Workstation(Mettler Toledo、Columbia、MD)反応器内に、n−ブチルアセテート(13g)のヒール(heel)を撹拌しながら投入した。反応器を10℃に冷却し、窒素で20分間パージした。別個の50mLナシ型丸底フラスコに、スチレン(16.19g)、4−ビニルピリジン(2.51g)、アルファメチルビニルBCB(純度90%で8.62g)、n−ブチルアセテート(1.78g)及び過酸化ベンゾイル(130mg)を添加し、ゴム栓でキャップし、窒素で20分間パージした。得られた溶液を50mLシリンジ内に吸引し、シリンジポンプに固定した。EasyMax(商標)ワークステーションを反応温度(100℃)まで加熱し、次いでシリンジポンプにより20mL/時の速度で反応溶液を添加した。添加開始から4時間後、シリンジによりn−ブチルアセテート中のBPOの追加分(7.72g中40mg)を添加した。反応を合計8時間継続し、次いで室温に冷却し、ガラス瓶内に注いだ。それ以上の精製は行われなかった。GPC:Mn=30.2k、Mw=80.8k PDI=2.68。
【0114】
実施例2:4−ビニルピリジン−co−スチレンco−n−ブチルアクリレートco−アルファメチルビニルBCBの調製:ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(商標)ポリマー、DuPont)被覆熱電対及びオーバーヘッドメカニカルスターラーを備えた100mL EasyMax(商標)402 Basic Synthesis Workstation(Mettler Toledo)反応器内に、n−ブチルアセテート(10g)のヒール(heel)を撹拌しながら投入した。反応器を10℃に冷却し、窒素で20分間パージした。別個の50mLナシ型丸底フラスコに、スチレン(10.30g)、4−ビニルピリジン(2.21g)、n−ブチルアクリレート(7.08g)、アルファメチルビニルBCB(7.75g)、n−ブチルアセテート(3.60g)及び過酸化ベンゾイル(110mg)を添加し、ゴム栓でキャップし、窒素で20分間パージした。得られた溶液を50mLシリンジ内に吸引し、シリンジポンプに固定した。EasyMax(商標)反応器を反応温度(100℃)まで加熱し、次いでシリンジポンプにより20mL/時の速度で反応溶液を添加した。添加開始から4時間後、シリンジによりn−ブチルアセテート中のBPOの追加分(8.90g中40mg)を添加した。反応を合計8時間継続し、次いで室温に冷却し、ガラス瓶内に注いだ。それ以上の精製は行われなかった。GPC:Mn=31.3k、Mw=68.9k PDI=2.20。
【0115】
実施例3:スチレン−co−n−ブチルアクリレートco−アルファメチルビニルBCBの調製:ポリテトラフルオロエチレン(Teflon(商標)ポリマー、DuPont)被覆熱電対及びオーバーヘッドメカニカルスターラーを備えた100mL EasyMax(商標)402 Basic Synthesis Workstation(Mettler Toledo)反応器内に、n−ブチルアセテート(13g)のヒール(heel)を撹拌しながら投入した。反応器を10℃に冷却し、窒素で20分間パージした。別個の50mLナシ型丸底フラスコに、スチレン(13.16g)、n−ブチルアクリレート(5.89g)、アルファメチルビニルBCB(8.28g)、n−ブチルアセテート(1.97g)及び過酸化ベンゾイル(130mg)を添加し、ゴム栓でキャップし、窒素で20分間パージした。得られた溶液を50mLシリンジ内に吸引し、シリンジポンプに固定した。EasyMax(商標)反応器を反応温度(100℃)まで加熱し、次いでシリンジポンプにより20mL/時の速度で反応溶液を添加した。添加開始から18時間後、シリンジによりn−ブチルアセテート中のBPOの追加分(7.71g中40mg)を添加した。反応を合計40時間継続し、次いで室温に冷却し、ガラス瓶内に注いだ。それ以上の精製は行われなかった。GPC:Mn=29.9k、Mw=71.9k PDI=2.4。
【0116】
ポリマー試験:示された実施例におけるポリマーの溶液をポリ(エチレンテレフタレート)(PET)シート上に分配し、152.4pm(6MIL)のドローダウンバーでコーティングして膜を形成した。膜を120℃でソフトベーキングした。
【0117】
マンドレル曲げ試験−伸び値:PET基板上の示されたソフトベーキングポリマー膜を円錐マンドレル上で曲げ試験し、亀裂距離を基部からインチ(cm)で測定した。伸びは、ASTM D522(2017)法を用いて測定し、パーセントで報告したが、許容される伸び値は7%、好ましくはより高い。
【0118】
ソフトベーキング膜を銅被覆ウエハ上にラミネートした。銅ウエハラミネートを、窒素炉内で、アルファメチルビニルBCB含有コポリマーの場合は200℃で2時間、ビニルBCB含有コポリマーの場合は250℃で1時間硬化させた。硬化したウエハラミネートを、膜が持ち上がるまで10重量%の過硫酸アンモニウム水溶液浴に入れ、次いで膜をすすぎ、乾燥させ、ストリップに切断した。得られたストリップをDMA/TMA分析に使用した。ポリマー膜を銅クラッドクーポン上にラミネートし、以下に定義するクロスハッチ接着試験のために硬化させた。
【0119】
示差走査熱量測定(DSC):ガラス転移温度(Tg)を得るために、TA Instruments Q2000 DSCデバイスでDSCを行った。試料を秤量し(2〜10mg)、アルミニウムパンに入れた。試料のない参照パンを、デバイスの参照スロットに配置する。試料を23℃で平衡化し、次いで50mL/分の窒素流下で10℃/分の速度で300℃まで直線的に上昇させた。報告されたTgは、得られたDSC曲線の変曲点である。
【0120】
熱安定性は、TGA分析(Q500TM TGA機器、TA Instruments、New Castle、DE)を実行することによって試験した。白金50μLパンをゼロ補正し、次いでポリマー試料(1〜10mg)を投入した。炉を密封し、次いで、窒素雰囲気下、25mL/分のガス流量で温度を10℃/分の速度で25℃から600℃まで上昇させる。
【0121】
機械的寸法解析(DMA):Tg及び係数に関する情報を得るために、TA instruments Q800でDMAを測定した。クランプは張力:膜法であった。ひずみは0.1ニュートンの力で0.06%で加えられた。各試料は、長さ17mm、幅10mm及び厚さ35ミクロンの寸法の膜であった。各試料を25℃で平衡化し、次いで250℃に上昇させた。
【0122】
熱機械分析(TMA):TMA結果を得るために、TA機器Q400を使用した。各試料膜を、長さ8mm×幅5mm×厚さ35ミクロンの寸法に調製した。0.1ニュートンの初期力を使用した。窒素雰囲気下、試料を10℃/分で200℃まで上昇させ、次いで10℃/分で−50℃に冷却し、次いで10℃/分で−50℃から200℃まで上昇させた。最後の上昇において、熱膨張係数(CTE)の値を、0℃と100℃との間の寸法変化に基づいて計算した。許容されるCTEは130ppm/K未満であり、より良好なCTEは90未満である。
【0123】
クロスハッチ接着(AKAテープ試験):ASTM D3359(2017)により、接着性を測定した。PET上の各ポリマー膜を銅基板上にラミネートし、次いでPETを剥離した。ポリマー膜を十字交差法で評価し、テープ(PΑ−280630(51596)テープ、Interpolymer Group、Canton、MA)を貼付して剥がし、該当する場合にはどの程度の膜が銅表面から持ち上げられたかを決定した。膜が持ち上げられなかった場合、結果は合格である。縁部の周りの少量が除去された場合、結果は僅かなチッピングで合格となる。膜の全領域がテープ上に持ち上げられる場合、結果は不合格である。
【0124】
【表1】
【0125】
上記の表1に示すように、本発明のポリマー組成物の各々は、比較例3のポリマー組成物と比較して、改善された可撓性及びクロスハッチ接着性を示す。これは、実施例3のポリマーが実施例1及び2の場合のような8時間ではなく40時間重合されたという事実にもかかわらず、当てはまる。さらに、本発明の実施例2における第3及び第4のモノマーのより大きな成分を有するポリマーは、最善の可撓性結果を与えた。さらに、第2の付加重合性芳香族モノマーの割合が最も高い本発明の実施例1のポリマーは、最も熱安定性であった。