(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967514
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】時間的に分散された移行を伴う風力タービンシステム
(51)【国際特許分類】
F03D 7/04 20060101AFI20211108BHJP
F03D 1/02 20060101ALI20211108BHJP
【FI】
F03D7/04 Z
F03D1/02
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-533219(P2018-533219)
(86)(22)【出願日】2016年12月12日
(65)【公表番号】特表2019-500539(P2019-500539A)
(43)【公表日】2019年1月10日
(86)【国際出願番号】DK2016050427
(87)【国際公開番号】WO2017108047
(87)【国際公開日】20170629
【審査請求日】2019年12月12日
(31)【優先権主張番号】PA201570849
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】514130633
【氏名又は名称】ヴェスタス ウィンド システムズ エー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(74)【代理人】
【識別番号】100202119
【弁理士】
【氏名又は名称】岩附 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】ミランダ,エリック カール レーンスコフ
(72)【発明者】
【氏名】グルネット,ヤコブ デレウラン
(72)【発明者】
【氏名】カスタイグネット,ダミアン
【審査官】
田谷 宗隆
(56)【参考文献】
【文献】
特表2005−519235(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F03D 7/04
F03D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
風力タービンシステム(1)であって、該風力タービンシステムは、
支持構造体(3)と、
それぞれがローター(7)を備える、前記支持構造体(3)に取り付けられる複数の風力タービンモジュール(2)と、
制御システム(20)と、
を備え、前記制御システム(20)は、該風力タービンシステム(1)の第1のシステム動作状態であって、前記複数の風力タービンモジュール(2)が全て第1のモジュール動作状態にある第1のシステム動作状態から、該風力タービンシステム(1)の第2のシステム動作状態であって、前記複数の風力タービンモジュール(2)が全て第2のモジュール動作状態にある第2のシステム動作状態への風力タービンシステム移行を実行する際に、前記複数の風力タービンモジュール(2)各々の前記第1のモジュール動作状態から前記第2のモジュール動作状態への移行の一部が時間的に分散されるよう前記風力タービンシステム移行を実行する、風力タービンシステム。
【請求項2】
請求項1に記載の風力タービンシステム(1)であって、前記制御システム(20)は、前記複数の風力タービンモジュール動作状態の移行時に、前記ローター(7)上のブレード(9)をピッチ調整するように構成され、
複数の前記ローターのうちの少なくとも2つのローターに対応するブレードピッチレートは、互いに異なっており、
前記ブレードピッチレートの差に伴って、前記複数の風力タービンモジュール動作状態の移行は、互いに対して時間的に分散されている、風力タービンシステム。
【請求項3】
請求項2に記載の風力タービンシステム(1)であって、2つ以上のローターを含む第1の群のローターに対応する第1のブレードピッチレートは、2つ以上のローターを含む第2の群のローターに対応する第2のブレードピッチレートと異なっている、風力タービンシステム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の風力タービンシステム(1)であって、前記制御システム(20)は、開始時点において、前記複数の風力タービンモジュールのうちの少なくとも2つの風力タービンモジュールに対応する風力タービンモジュール動作状態の移行を開始するように構成され、
前記少なくとも2つの風力タービンモジュールに対応する前記開始時点は、互いに異なっており、
前記開始時点の差に伴って、前記複数の風力タービンモジュール動作状態の移行は、互いに対して時間的に分散されている、風力タービンシステム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の風力タービンシステム(1)であって、前記制御システム(20)は、風力タービンシステム移行時に、前記複数の風力タービンモジュールのうちの1つ以上の前記風力タービンモジュールのダンプ負荷抵抗器に対する電気的接続を制御するように構成される、風力タービンシステム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の風力タービンシステム(1)であって、前記複数の風力タービンモジュールのうちの1つ以上の前記風力タービンモジュールは、機械式ローターブレーキをそれぞれ備え、前記制御システム(20)は、風力タービンシステム移行時に、1つ以上の前記機械式ローターブレーキを介して前記1つ以上の風力タービンモジュールのうちの1つ以上又は全ての風力タービンモジュールを制動するように構成される、風力タービンシステム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の風力タービンシステム(1)であって、前記制御システム(20)は、1つ以上の更なる入力パラメーターに従って、風力タービンモジュール動作状態の移行のシーケンスを決定するように構成される、風力タービンシステム。
【請求項8】
請求項7に記載の風力タービンシステム(1)であって、前記1つ以上の更なる入力パラメーターは、
それぞれの前記風力タービンモジュールの動作点、
それぞれの前記風力タービンモジュールの物理的位置、
それぞれの前記風力タービンモジュールにおける風速、
それぞれの前記風力タービンモジュールにおけるローター速度、
それぞれの前記風力タービンモジュールのブレードピッチ値、
それぞれの前記風力タービンモジュールによって生成される電力、
それぞれの前記風力タービンモジュールのスラスト、
それぞれの前記風力タービンモジュールのロータートルク、
のうちの1つ以上又は全てを含む、風力タービンシステム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の風力タービンシステム(1)であって、該風力タービンシステム(1)の前記第1のシステム動作状態から該風力タービンシステム(1)の前記第2のシステム動作状態への前記風力タービンシステム移行は、該風力タービンシステム(1)のスタートアップ手順又は該風力タービンシステム(1)のシャットダウン手順のうちのいずれか一方に対応する、風力タービンシステム。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の風力タービンシステム(1)であって、前記複数の風力タービンモジュール動作状態の移行のうちの少なくとも2つの風力タービンモジュール動作状態の移行間の時間は、1秒以上である、風力タービンシステム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の風力タービンシステム(1)であって、前記複数の風力タービンモジュール動作状態の移行のうちの少なくとも2つの風力タービンモジュール動作状態の移行間の時間は、0.1秒〜30秒以内である、風力タービンシステム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の風力タービンシステム(1)であって、前記複数の風力タービンモジュール動作状態の移行のうちの少なくとも2つの風力タービンモジュール動作状態の移行間の時間は、30秒〜30分以内である、風力タービンシステム。
【請求項13】
支持構造体(3)に取り付けられる複数の風力タービンモジュール(2)を含む風力タービンシステム(1)の第1のシステム動作状態(330)であって、前記複数の風力タービンモジュール(2)が全て第1のモジュール動作状態にある第1のシステム動作状態から、前記風力タービンシステム(1)の第2のシステム動作状態(334)であって、前記複数の風力タービンモジュール(2)が全て第2のモジュール動作状態にある第2のシステム動作状態への風力タービンシステム移行を実行する方法であって、
該方法は、風力タービンモジュール(2)の第1のモジュール動作状態から前記風力タービンモジュール(2)の第2のモジュール動作状態への複数の風力タービンモジュール各々の動作状態の移行を実行することによって、前記風力タービンシステム移行を実行することを含み、
前記複数の風力タービンモジュール動作状態の移行は、互いに対して時間的に分散されている、方法。
【請求項14】
命令を有するコンピュータープログラムであって、前記命令は、実行されると、コンピューティングデバイス又はコンピューティングシステムに請求項13に記載の方法を実施させる、コンピュータープログラム。
【請求項15】
風力タービンシステム(1)を制御する制御システムであって、請求項13に記載の方法に従って前記風力タービンシステムを制御するように構成される、制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風力タービンシステムに関し、より詳細には、互いに対して異なる時点において動作状態を変更することができる複数の風力タービンモジュールを備える風力タービンシステム、並びに、対応する方法、コンピュータープログラム製品及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
支持構造体に取り付けられる複数の風力タービンモジュールを備える風力タービンシステムは、特にシステム動作状態間の移行時に、風力タービンモジュールによって大きな構造荷重が加えられる場合がある。この大きな構造荷重は、風力タービンシステムの寿命を短縮する可能性がある。
【0003】
したがって、改良された風力タービンシステム、特に、風力タービンモジュールによって加えられる構造荷重の低減を実現する、及び/又は、風力タービンシステムの寿命の延長を実現する風力タービンシステムが有利である。
【0004】
特許文献1は、マルチローター型の風力タービンシステムを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】英国特許第2443886号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
風力タービンモジュールによって加えられる構造荷重及び風力タービンシステムの寿命の短縮に関する上述した問題を解決する風力タービンシステムを提供することが、本発明の目的であるとみなすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的は、本発明の第1の態様において、以下の風力タービンシステムを提供することによって得られることが意図される。この風力タービンシステムは、
支持構造体と、
それぞれがローターを備える、支持構造体に取り付けられる複数の風力タービンモジュールと、
制御システムと、
を備え、制御システムは、風力タービンシステムの第1のシステム動作状態から風力タービンシステムの第2のシステム動作状態への風力タービンシステム移行を実行するように構成され、風力タービンシステム移行は、風力タービンモジュールの第1のモジュール動作状態から風力タービンモジュールの第2のモジュール動作状態への複数の風力タービンモジュール移行を実行することによって実施され、複数の風力タービンモジュール移行は、互いに対して時間的に分散されている。
【0008】
本発明は、限定はしないが、特に、システム動作状態間の移行時に風力タービンモジュールによって加えられる最大構造荷重(ピーク構造荷重と称される場合もある)等の構造荷重の低減を実現することができる、及び/又は、風力タービンシステムの寿命の延長を実現することができる風力タービンシステムを得ることに関して有利である。
【0009】
システム動作状態間の移行時に風力タービンモジュールによって加えられるピーク構造荷重は、支持構造体に厳しい要件を課すとともに、風力タービンシステムの寿命を短縮する。本発明の実施の形態の1つの利点は、複数の風力タービンモジュール移行が互いに対して時間的に分散されるように風力タービンモジュール移行を構成することにより、このピーク構造荷重を低減できることである。複数の風力タービンモジュール移行が互いに対して時間的に分散されるように風力タービンモジュール移行を実現することにより、風力タービンモジュール移行が全て同時に発生することが回避され、むしろ、風力タービンモジュール移行は時間的に分散されることになり、これに伴って、複数の風力タービンモジュール移行に関連する構造荷重が時間的に分散されることになる。換言すると、複数の風力タービンモジュール移行のうちの風力タービンモジュール移行が、互いに対して時間的に分散されるので、風力タービンシステム移行によって支持構造体に発生する最大構造荷重は、複数の風力タービンモジュール移行が同時に起こる風力タービンシステム移行に対して低減される。
【0010】
「複数の風力タービンモジュール移行が互いに対して時間的に分散されている」とは、複数の風力タービンモジュール移行のうちの2つ以上又は全ての風力タービンモジュール移行が、互いに対して時間的に分散されている、例えば、同時に起こらない、ということであると理解することができる。
【0011】
複数の状況において、個々の風力タービンモジュール移行は、有限の時間にわたって継続する場合がある。風力タービンモジュール移行中の、風力タービンモジュールによって支持構造体に加えられる構造荷重が最大となる時点は、風力タービンモジュール移行が有限の時間にわたって継続する場合であっても、その風力タービンモジュール移行の時点を規定する。有限の時間にわたって継続する異なるモジュールの風力タービンモジュール移行は、部分的に又は完全に重なっていたとしても、それぞれの風力タービンモジュールによって支持構造体に加えられる構造荷重が最大となる時点が一致しない限り、時間的に分散されているとみなすことができることが留意される。
【0012】
「構造荷重」とは、疲労及び/又は故障を引き起こし得る、構造要素に加わる力等の何らかの作用であると一般に理解することができる。
【0013】
第2の態様では、本発明は、風力タービンシステムの第1のシステム動作状態から風力タービンシステムの第2のシステム動作状態への風力タービンシステム移行を実行する方法に関し、風力タービンシステムは、支持構造体に取り付けられる複数の風力タービンモジュールを備え、
上記方法は、風力タービンモジュールの第1のモジュール動作状態から風力タービンモジュールの第2のモジュール動作状態への複数の風力タービンモジュール移行を実行することによって、上記風力タービンシステム移行を実行することを含み、
複数の風力タービンモジュール移行は、互いに対して時間的に分散されている。
【0014】
第3の態様では、本発明は、命令を有するコンピュータープログラム製品に関し、命令は、実行されると、制御システム等の、コンピューティングデバイス又はコンピューティングシステムに第2の態様に係る方法を実施させる。
【0015】
第4の態様では、本発明は、風力タービンシステムを制御する制御システムに関し、この制御システムは、第2の態様に係る方法に従って上記風力タービンシステムを制御するように構成される。
【0016】
付属的な特徴のうちの多くは、添付図面と併せて検討される以下の詳細な説明を参照することによってより十分に理解されることで、より容易に認識されるであろう。好ましい特徴は、当業者に明らかであるように適宜組み合わせることができるとともに、本発明の態様のうちのいずれとも組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】風力タービンシステムの一部を示す図である。
【
図3】風力タービンシステム移行を実行する方法を示す図である。
【
図4】異なるブレードピッチレートを有することの効果を示す図である。
【
図5】複数の風力タービンモジュール移行が同時に起こる、風力タービンシステム移行を示す図である。
【
図6】異なる開始時点を有することの効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を更に詳細に説明する。本発明は、様々な変更形態及び代替形態が可能であり、例として、特定の実施形態が開示されている。しかしながら、本発明は、開示される特定の形態に限定されることは意図されていないことが理解されるものとする。むしろ、本発明は、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨及び範囲内にある全ての変更形態、均等物及び代替形態を包含する。
【0019】
図1は、風力タービンシステム1を示しており、風力タービンシステムは、
− タワー4及び接合部6においてタワー4に取り付けられるアーム5を備える支持構造体3と、
− それぞれがブレード9を伴うローター7を備える、支持構造体3に取り付けられる複数の風力タービンモジュール2と、
を備える。
【0020】
風力タービンシステムは、
図2に示される制御システム20を更に備える。制御システム20は、風力タービンシステム1の第1のシステム動作状態から風力タービンシステム1の第2のシステム動作状態への風力タービンシステム移行を実行するように構成され、風力タービンシステム移行は、風力タービンモジュール2の第1のモジュール動作状態から風力タービンモジュール2の第2のモジュール動作状態への複数の風力タービンモジュール移行を実行することによって実施され、複数の風力タービンモジュール移行は、互いに対して時間的に分散されている。
【0021】
この実施形態において、支持構造体は、タワー4から外側に延在するアーム5を備え、複数の風力タービンのそれぞれは、対応するアームの端部に取り付けられる。さらに、
図1は、各風力タービンモジュールのナセル8を示している。
【0022】
図1は、それぞれ2つの風力タービンモジュールを有する2つのアームを備える支持構造体を示しているが、他の実施形態、例えば、それぞれ4つの風力タービンモジュールを有する4つのアーム、又は、それぞれ6つ、4つ及び2つの風力タービンモジュールを有する下部アーム、中間アーム及び上部アームを伴う3つのアームも想定可能である。
【0023】
図2は、複数の風力タービンモジュール移行時に、制御システム20が、ローター7(各ローター7は、ブレード9が取り付けられるハブ11を備える)上のブレード9をピッチ調整するように構成される、風力タービンシステムの一部を示しており、
複数のローターのうちの、例えば、図示される特定の風力タービンモジュール2’の少なくとも2つのローターに対応するブレードピッチレートは、互いに異なっており、
ブレードピッチレートの差に伴って、複数の風力タービンモジュール移行は、互いに対して時間的に分散されている。
【0024】
「ブレードピッチレート」とは、風力タービンモジュールの全てのブレードが傾斜する度合いであることが一般に理解される。これは、「総合ブレードピッチレート」としても知られている。
【0025】
実施形態において、総合ブレードピッチレート(それぞれが特定の風力タービンモジュールのブレードピッチレートに対応し、このブレードピッチレートは、特定の風力タービンモジュールの全てのブレードに適用される)は、互いに異なっていることができ、すなわち、個々の風力タービンモジュールの総合ピッチレートは、互いに異なっている(すなわち、風力タービンモジュール間で異なっている)。
【0026】
特定の風力タービンモジュール2’のブレードピッチレートは、1つ以上の更なる入力パラメーター、例えば、風速s1を測定するように構成される、特定の風力タービンモジュール2’に関連付けられる風速計である第1のセンサー機構26aからの風速s1、及び、特定の風力タービンモジュール2’のローター速度を測定するセンサー機構である第2のセンサー機構26bからのスラストs2に基づき、制御システム20によって決定することができる。ブレードピッチレートは、ピッチ制御装置25に対する第1のピッチ制御信号21を介して制御することができ、ピッチ制御装置25は、第2のピッチ制御信号21’をローター7に送信する。制御システム20は、ローター7に関する情報、例えば、ローター速度s3も考慮に入れることができる。
【0027】
図4は、風力タービンシステムの第1のシステム動作状態から風力タービンシステムの第2のシステム動作状態への風力タービンシステム移行時に、4つの異なる風力タービンモジュール(ここではM1〜M4で示される)に関して異なるブレードピッチレートを有することの効果を示す図である。この図は、風力タービンモジュールM1〜M4によって支持構造体3に加えられる構造荷重を縦軸に示し、時間を横軸に示すグラフを示している。この例では、全ての風力タービンモジュール移行は、t=0秒の時点において同時に開始される。しかしながら、ブレードピッチレートの差により、風力タービンモジュール移行は、等しい速さを有せず、風力タービンモジュール移行に対応する有限の時間中の、風力タービンモジュールによって支持構造体に加えられる構造荷重が最大となる時点が、互いに対して時間的に分散されることになる。したがって、個々の風力タービンモジュールによって加えられる構造荷重の合計による最大構造荷重は、比較的(複数の風力タービンモジュール移行が同時に起こる状況に比べて)小さい。
【0028】
図5は、比較のために、複数の風力タービンモジュール移行が同時に起こる風力タービンシステム移行の一例を示している。この場合では、最大合計構造荷重は、比較的(複数の風力タービンモジュール移行が互いに対して時間的に分散されている状況に比べて)大きくなる。
【0029】
一実施形態において、制御システム20は、開始時点において、複数の風力タービンモジュールのうちの少なくとも2つの風力タービンモジュールに対応する風力タービンモジュール移行を開始するように構成され、
少なくとも2つの風力タービンモジュールに対応する開始時点は、互いに異なっており、
開始時点の差に伴って、複数の風力タービンモジュール移行は、互いに対して時間的に分散されている。
【0030】
図6は、4つの異なる風力タービンモジュール(ここではM1〜M4で示される)に対応する互いに異なる開始時点を有することの効果を示す図である。この図は、風力タービンモジュールM1〜M4によって支持構造体3に加えられる構造荷重を縦軸に示し、時間を水平軸に示すグラフを示している。この例では、全ての風力タービンモジュール移行は、異なる開始時点において開始され、各風力タービンモジュール移行は、先行する開始時点及び/又は後続の開始時点から約1.5秒だけ離隔している。しかしながら、全てのブレードピッチレートは同一である。開始時点の差により、風力タービンモジュール移行に対応する有限の時間中の、風力タービンモジュールによって支持構造体に加えられる構造荷重が最大となる時点が、互いに対して時間的に分散されることになる。したがって、個々の風力タービンモジュールによって加えられる構造荷重の合計による最大構造荷重は、比較的(複数の風力タービンモジュール移行が同時に起こる状況に比べて)小さい。
【0031】
一実施形態において、2つ以上のローターを含む第1の群のローターに対応する第1のブレードピッチレートは、2つ以上のローターを含む第2の群のローターに対応する第2のブレードピッチレートと異なっている。
【0032】
一実施形態において、2つ以上の風力タービンモジュールを含む第1の群の風力タービンモジュールに対応する第1の開始時点は、2つ以上の風力タービンモジュールを含む第2の群の風力タービンモジュールに対応する第2の開始時点と異なっている。
【0033】
ローター若しくは風力タービンモジュールの対又は群において、同様のブレードピッチレート又は同様の開始時点を有することの利点は、タワー4の両側において、単純かつ効率的に構造荷重の均衡をとることが可能になることであり得る。
【0034】
実施形態において、全ての開始時点(それぞれが風力タービンモジュールの開始時点に対応する)は、互いに異なっていることができる。
【0035】
一実施形態において、制御システム20は、風力タービンシステム移行時に、複数の風力タービンモジュールのうちの1つ以上の風力タービンモジュールのダンプ負荷抵抗器に対する電気的接続を制御するように構成される。その利点は、ダンプ負荷抵抗器により、例えばグリッド障害時に、以下のようなトルク、すなわち、他の風力タービンモジュールを即座にシャットダウンすることができる一方で、ダンプ負荷抵抗器を介して加えられるトルク(ローターが不所望なほど高いローター速度に達しないことを確実にする)によって特定の風力タービンモジュールの稼働をいくらかの時間にわたって継続させることができるようなトルクが、特定の風力タービンモジュールのローターに加わることを確実にすることができることであり得る。
【0036】
一実施形態において、風力タービンにおいて使用可能な従来の負荷ダンプ機構(例えば、国際公開第2012/000508号の
図2及び第51段落〜第52段落に記載されており、この図及び段落は、引用することにより本明細書の一部をなす)が使用される。風力タービンは、発電機と、AC(交流)−DC(直流)電力変換器(発電機側変換器)と、DC−AC電力変換器(ライン側変換器)と、AC−DC電力変換器とDC−AC電力変換器との間に接続されるDCコンデンサを含むDCリンクとを備える。風力タービンの発電機は、AC−DC電力変換器に接続される。DC−AC電力変換器は、変圧器を介して電力グリッドに接続される。負荷ダンプ機構の第1の負荷ダンプは、発電機の出力端子に接続され、発電機の三相AC出力に対応するものである。第1の負荷ダンプは、AC負荷ダンプとも称することができる。第1の負荷ダンプは、本質的に三相抵抗器バンクである三相負荷ダンプとすることができる。負荷ダンプ機構の第2の負荷ダンプは、DCリンクの向かい側に接続される。第2の負荷ダンプは、DC負荷ダンプと称することができる。
【0037】
一実施形態において、複数の風力タービンモジュールのうちの1つ以上の風力タービンモジュールは、機械式ローターブレーキをそれぞれ備え、制御システム20は、風力タービンシステム移行時に、1つ以上の機械式ローターブレーキを介して、上記1つ以上の風力タービンモジュールのうちの1つ以上又は全ての風力タービンモジュールを制動するように構成される。その利点は、機械式ローターブレーキ、特に、比較的小さな風力タービンモジュールの機械式ローターブレーキが、例えばグリッド障害時に、対応する移行(例えば、この移行はシャットダウン手順である)が同一の開始時点において開始される場合であっても、複数の風力タービンモジュール移行を互いに対して時間的に分散させることができるようなトルクが、特定の風力タービンモジュールのローターに加わることを確実にすることができることであり得る。
【0038】
1つ以上の機械式ローターブレーキ及び/又は異なるブレードピッチレートを有することは、機械式ブレーキ及び/又はブレードピッチレートの差に伴って、複数の風力タービンモジュール移行が互いに対して時間的に分散されるので、全ての風力タービンモジュールのシャットダウンを短時間のうちに、例えば1秒以内に開始しなければならない、グリッド損失、障害停止又は安全停止の場合に特に有用であり得る。
【0039】
一実施形態において、制御システム20は、開始時点において、複数の風力タービンモジュールのうちの少なくとも2つの風力タービンモジュールに対応する風力タービンモジュール移行を開始するように構成され、
少なくとも2つの風力タービンモジュール、例えば3つ以上の風力タービンモジュール、例えば全ての風力タービンモジュールに対応する開始時点は、同一であり、
個々の風力タービンモジュール間の開始時点から移行時点までの時間の差に伴って、複数の風力タービンモジュール移行は、互いに対して時間的に分散されている。
【0040】
制御システム20は、1つ以上の更なる入力パラメーターに従って、風力タービンモジュール移行のシーケンスを決定するように、例えば、他の風力タービンモジュール移行の時間位置に対して各風力タービンモジュール移行の時間位置を決定するように構成することができる。その見込まれる利点は、改善されたシーケンスを提供できることである。
【0041】
1つ以上の更なる入力パラメーターは、
− それぞれの風力タービンモジュールの動作点、
− それぞれの風力タービンモジュールの物理的位置、
− それぞれの風力タービンモジュールにおける風速、
− それぞれの風力タービンモジュールにおけるローター速度、
− それぞれの風力タービンモジュールのブレードピッチ値、
− それぞれの風力タービンモジュールによって生成される電力、
− それぞれの風力タービンモジュールのスラスト、
− それぞれの風力タービンモジュールのロータートルク、
のうちの1つ以上若しくは全てを含むことができるか、又はこれらに対応することができる。
【0042】
例えば、制御システム20は、他の風力タービンモジュールの物理的位置に対する1つの風力タービンモジュールの物理的位置に基づき、他の風力タービンモジュール移行の時間位置に対する1つの風力タービンモジュール移行の時間位置を構成するように動作することができる。
【0043】
一般に、シーケンスは、支持構造体に加わる構造荷重を最小限に抑えることを視野に入れて決定することができる。例えば、シャットダウンに対応するシステム移行時に、シーケンスは、個々の風力タービンモジュールによって支持構造体に加えられる構造荷重によって決定することができ(例えば、地上から高い位置にある大きなスラストを伴う風力タービンモジュールは、地上に近い位置にある小さなスラストを伴う風力タービンモジュールよりも大きなトルクを支持構造体のタワーに加え得る)、ここで、構造荷重が大きいものほど、シャットダウンが早期に行われることになる。しかしながら、或る特定の境界条件、例えば、風力タービンモジュールに加わる構造荷重を考慮に入れることができる。例えば、風力タービンモジュールは、支持構造体に小さな構造荷重しか加えない場合であっても、例えば、そのローター速度が速度超過の可能性を著しく増大させるほど速ければ、シャットダウンシーケンスにおいて前に移動させることができる。
【0044】
風力タービンシステムの第1のシステム動作状態から風力タービンシステムの第2のシステム動作状態への風力タービンシステム移行は、風力タービンシステムのスタートアップ手順又は風力タービンシステムのシャットダウン手順のうちのいずれか一方に対応することができる。
【0045】
一実施形態において、複数の風力タービンモジュール移行のうちの少なくとも2つの風力タービンモジュール移行、例えば3つ以上又は全ての風力タービンモジュール移行間の時間は、1秒以上、例えば2秒以上、例えば5秒以上、例えば10秒以上、例えば15秒以上、例えば30秒以上、例えば1分以上、例えば2分以上、例えば5分以上、例えば10分以上、例えば15分以上、例えば30分以上、例えば1時間以上である。
【0046】
一実施形態において、複数の風力タービンモジュール移行のうちの少なくとも2つの風力タービンモジュール移行、例えば3つ以上又は全ての風力タービンモジュール移行間の時間は、30秒以下、例えば20秒以下、例えば10秒以下、例えば5秒以下、例えば3秒以下、例えば2秒以下、例えば1秒以下、例えば0.1秒〜1秒以内である。
【0047】
一実施形態において、複数の風力タービンモジュール移行のうちの少なくとも2つの風力タービンモジュール移行、例えば3つ以上又は全ての風力タービンモジュール移行間の時間は、0.1秒〜30秒以内、例えば1秒〜30秒以内、例えば2秒〜20秒以内、例えば5秒〜15秒以内である。このような間隔は、グリッド損失、障害時及び/又は障害後の停止、又は安全停止の場合に有利であり得る。
【0048】
一実施形態において、複数の風力タービンモジュール移行のうちの少なくとも2つの風力タービンモジュール移行、例えば3つ以上又は全ての風力タービンモジュール移行間の時間は、30秒〜30分以内、例えば1分〜20分以内、又は10分〜20分以内、又は15分〜20分以内、例えば2分〜10分以内、例えば2分〜5分以内である。このような間隔は、通常のスタートアップ手順又はシャットダウン手順の場合に有利であり得る。
【0049】
図3は、風力タービンシステム1の第1のシステム動作状態330から風力タービンシステムの第2のシステム動作状態334への風力タービンシステム移行を実行する方法を示している。風力タービンシステムは、支持構造体3に取り付けられる複数の風力タービンモジュールM1、M2、M3、M4を備える。
上記方法は、風力タービンモジュール2の第1のモジュール動作状態(オン)から風力タービンモジュール2の第2のモジュール動作状態(オフ)への複数の風力タービンモジュール移行を実行することにより、上記風力タービンシステム移行を実行することを含み、
複数の風力タービンモジュール移行は、互いに対して時間的に分散されている。この図は、シャットダウン手順を示しており、風力タービンシステムの第1のシステム動作状態330において、全ての風力タービンモジュールM1、M2、M3、M4がオンである。次に、風力タービンシステムのシステム中間動作状態332において、風力タービンモジュールM3及びM4の第1のモジュール動作状態(オン)から風力タービンモジュールの第2のモジュール動作状態(オフ)への2つの風力タービンモジュール移行が実行されている。次に続けて、風力タービンシステムは、風力タービンシステムの第2のシステム動作状態334において示されており、風力タービンシステムの第2のシステム動作状態334において、風力タービンモジュールM1及びM2の第1のモジュール動作状態(オン)から風力タービンモジュールの第2のモジュール動作状態(オフ)への別の2つの風力タービンモジュール移行が実行されている。
【0050】
本発明は、特定の実施形態との関連で説明されたが、いかなる形においても提示された例に限定されるものと解釈するべきでない。本発明の範囲は添付の特許請求の範囲の組によって示される。特許請求の範囲との関連において、「含む、備える("comprising" or "comprises")」という用語は、他の可能な要素又はステップを除外するものではない。また、数量を特定しないものは、単数及び複数を含むものと解釈されるべきである。特許請求の範囲における、図面に示された要素に関する参照符号の使用も、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるものではない。さらに、異なる請求項において述べられる個々の特徴は、場合によっては有利に組み合わせることができ、異なる請求項におけるこれらの特徴の言及は、特徴の組み合わせが可能であり有利であることを排除するものではない。