特許第6967516号(P6967516)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967516
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】エンドミル
(51)【国際特許分類】
   B23C 5/10 20060101AFI20211108BHJP
【FI】
   B23C5/10 Z
   B23C5/10 D
【請求項の数】12
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-538854(P2018-538854)
(86)(22)【出願日】2017年1月9日
(65)【公表番号】特表2019-507023(P2019-507023A)
(43)【公表日】2019年3月14日
(86)【国際出願番号】EP2017050329
(87)【国際公開番号】WO2017129387
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2019年11月11日
(31)【優先権主張番号】16152934.2
(32)【優先日】2016年1月27日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507226695
【氏名又は名称】サンドビック インテレクチュアル プロパティー アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ピッタラ, ガエターノ
【審査官】 中川 康文
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102014108513(DE,A1)
【文献】 特開2014−210324(JP,A)
【文献】 特開2014−198358(JP,A)
【文献】 特開2012−071393(JP,A)
【文献】 実開昭59−176712(JP,U)
【文献】 欧州特許第01478484(EP,B1)
【文献】 韓国公開特許第10−2013−0047962(KR,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0315681(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0120349(US,A1)
【文献】 独国実用新案第202016102635(DE,U1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23C 1/00−9/00
B26D 1/00−1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドミルであって、
・回転駆動装置内に保持されるシャンク部分(2、2’)と、
・前記シャンク部分に接続される切削部分(4、4’)であり、前記シャンク部分への接続部に最も近接した切削部分端部の反対側に位置付けられた前記エンドミルの切削端(14)まで、前記エンドミルの回転軸(3)に関する軸方向に延在している切削刃(10〜13)を有する、少なくとも2つの離間された歯(6〜9)を支持するコア(5)を含む、切削部分(4、4’)と
を有するエンドミルであって、
各切削刃(10〜13)はこれに関連する溝部(15〜18)を有し、この溝部は、前記エンドミルの意図された回転方向(R)において前記切削刃の前に位置付けられ、
各溝部(15〜18)は、前記エンドミルの前記回転軸に垂直な前記エンドミルの各断面に対して、前記コア上に前記回転軸(3)までの最短距離(x)の所に底点(b〜b)を有し
所定の長さの前記切削部分(4、4’)の各軸部が、一方が増加すると他方が減少するように異なって、前記軸方向の前記エンドミルの前記切削端(14)までの距離によって変化する前記最短距離(x)を有する、少なくとも2つの溝部(15〜18)を有し、
前記コア(5)の中心軸は、前記切削部分(4、4’)の全長に亘って、前記エンドミルの前記回転軸(3)に一致し、少なくとも1つの溝部(15〜18)の前記最短距離(x)は、連続した漸減部分及び漸増部分を含むことにより変化し、
前記コア(5)の断面積が、前記切削部分(4、4’)の前記軸部の大部分においてもしくは全てにおいて実質的に一定であるかまたは一定であり、少なくとも1つの溝部(15〜18)の前記最短距離(x)は、前記溝部の長手方向領域に亘って周期的に変化し、かつ、少なくとも1つの溝部(15〜18)の前記最短距離(x)は、該最短距離(x)の最小値(mi)を30〜50%だけ超える最大値(ma)を有する、エンドミル。
【請求項2】
前記所定の長さの各前記軸部は、前記底点(b〜b)の任意の前記最短距離(x)の寸法より短いかまたは前記寸法の半分より短いことを特徴とする、請求項に記載のエンドミル。
【請求項3】
少なくとも1つの溝部(15〜18)が、前記溝部の長手方向領域全体に亘って、前記切削端(14)までの前記距離によって変化する前記最短距離(x)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のエンドミル。
【請求項4】
なくとも1つの溝部(15〜18)の前記最短距離(x)は、該最短距離(x)の最小値(mi)を35〜45%だけ超える最大値(ma)を有することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のエンドミル。
【請求項5】
別の溝部(16、18)の前記最短距離の最小値(mi)および最大値(ma)とは異なる軸方向位置において前記最短距離の最小値(mi)および最大値(ma)を有する溝部(15、17)を有することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のエンドミル。
【請求項6】
前記最短距離(x)が前記エンドミルの前記軸方向に周期的に変化しかつ互いに対して位相シフトされている少なくとも2つの溝部(15〜18)を有することを特徴とする、請求項に記載のエンドミル。
【請求項7】
前記位相シフトが180°であり、前記最短距離(x)は、他方の溝部(16、18)に対して最大値(ma)を有する時に一方の溝部(15、17)に対して最小値(mi)を有することを特徴とする、請求項に記載のエンドミル。
【請求項8】
全ての溝部(15〜18)は、前記切削部分(4、4’)の前記長手方向領域に亘って、前記切削端(14)までの異なる距離において異なる前記最短距離(x)を有することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のエンドミル。
【請求項9】
切削刃(10−13)を備えた前記歯(6〜9)は前記エンドミルの前記回転軸(3)の周りに螺旋状に捻じられていることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のエンドミル。
【請求項10】
各々前記切削刃(10−13)を備えた4つの歯(6〜9)を有することを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載のエンドミル。
【請求項11】
前記エンドミルの前記意図された回転方向(R)に関して1つおきの溝部(15、17および16、18)、前記切削部分(4、4’)の前記長手方向領域に亘って、前記エンドミルの各前記コアの断面において同一の前記最短距離(x)を有することを特徴とする、請求項10に記載のエンドミル。
【請求項12】
前記切削部分(4’)は、前記シャンク部分(2’)に取外し可能に接続されるように構成されている交換可能なヘッド(20)上に配置されることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載のエンドミル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、添付の請求項1の序文によるエンドミルに関する。
【0002】
そのようなエンドミルは、通常、4つなどの、切削刃を設けられている3つ以上の歯を有し、これらの歯は、通常、必ずしもそうとは限らないが、エンドミルの回転軸の周りに螺旋状に捻じられている。切削部分と回転駆動装置内に保持されるシャンク部分とは一体であってもよく、または切削部分は、シャンク部分に取外し可能に接続される交換可能なヘッド上に配置されていてもよい。
【0003】
この種のエンドミルが、被加工物上で切削部分の切削刃の動作により、様々な機械加工目的に使用されてもよく、本発明は、特に、荒仕上げ用の、すなわち被加工物から切りくずの形のたくさんの材料を高程度に(迅速に)除去するためのエンドミルに関する。そのような激しい機械加工はエンドミル上に応力を生じさせ、該応力は、特にエンドミル工具のびびり振動または再生振動を結果的にもたらす可能性がある。このびびりはこれ自体もまた騒音を発生させ、エンドミルのユーザに対する環境問題を引き起こす場合がある。びびりの別の結果が、エンドミルにより実施される機械加工の精度低下およびエンドミルの工具寿命の短縮である。
【背景技術】
【0004】
各溝部の、エンドミルの回転軸までの最短距離がエンドミルの切削端に向かう方向に短縮されている、すなわちコア径がエンドミル工具の先端部に向かって先細になっている、導入部において定義されているタイプのエンドミルを、欧州特許第1478484号が開示している。エンドミルの切削部分のこの形状は、機械加工動作においてエンドミルにかけられる曲げモーメントに対する良好な抵抗を得ることを目的とする。しかし、びびりに関する前記問題は、このエンドミルが荒仕上げに使用されれば、依然として存在するであろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、前述されているびびりの前記問題に対処する、導入部において定義されているタイプのエンドミルを提供することである。
【0006】
本目的は、本発明に基づき、添付の請求項1の特徴部に列挙されている特徴を備えたそのようなエンドミルを提供することにより達成される。
【0007】
所定の長さの切削部分の各前記軸部に関して、少なくとも2つの溝部が、一方が増加すると他方が減少するように異なって、軸方向のエンドミルの切削端までの距離によって、変化する、回転軸までの底点の最短距離を有することに因り、荒仕上げにエンドミルを使用する時のびびりの大幅な減少が得られる可能性がある。これにより、そのような軸部においてエンドミルの回転軸に垂直な、エンドミルの少なくとも1つの断面に対して、少なくとも2つの溝部の一方の最短距離が、少なくとも2つの溝部の他方の最短距離と異なる。したがって、そのようなコア断面は不同である。
【0008】
これらの発明特徴により、コア断面が不同である場合、エンドミルの剛性はエンドミルの異なる方向において異なり、これにより、切削工程中に変化する、エンドミルの切削部分の振動の振幅を結果的にもたらし、びびり現象は、機械加工されている被加工物表面上で、エンドミルの異なる刃に起因する異なる波が壊されるかまたは少なくとも部分的に相殺する可能性がありかつ再生効果が回避されることにより、減少する。したがって、波は位相シフトされ、これにより相殺するように作用する。したがって、軸方向にエンドミルの切削端までの距離によって異なって変化する前記最短距離を有する少なくとも2つの溝部を有することにより、コア断面が切削部分の軸方向に変化し、これにより、大部分のコア断面は不同であり、機械加工中のびびりの発生は著しく減少し得る。工具の所望の剛性が依然として維持され得る。
【0009】
本発明の実施形態によれば、コアの断面積は、切削部分の前記軸部の大部分においてもしくは同の全てにおいて実質的に一定であるかまたは一定である。ここでは、実質的に、5%未満だけ異なることを意味する。したがって、断面は異なる軸部において異なる形状を有し、一方、断面の面積は全ての軸部に関して実質的に同一のままである。これは、有益なびびりの減少が工具の優れた強度と組み合わせられ得ることを意味する。
【0010】
本発明の実施形態によれば、所定の長さの前記軸部は、前記底点の任意の前記最短距離の寸法より短いか、または前記寸法の半分より短い。エンドミルによるフライス加工、特に荒仕上げの実施時に、びびりの大幅な減少影響を得るために、そのような制限された長さの各軸部に存在する、請求項1の特徴部分の特徴を有することが好適であることが分かっている。
【0011】
本発明の実施形態によれば、コアの中心軸は、切削部分の全長に亘ってエンドミルの回転軸に一致する。これはエンドミルを安定させ、同の寿命を引き延ばす。
【0012】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの溝部が、溝部の長手方向領域全体に亘って、切削端までの距離によって変化する前記最短距離を有する。これは、エンドミルの切削部分の軸方向に沿って継続的に変化する、エンドミルのコアの断面を結果的にもたらし、剛性は、エンドミルを回転させる時に所定の断面においてばかりでなく、エンドミルの回転軸に沿って継続的に異なる軸部において、変化する。したがって、この溝部が属する歯の剛性は、これにより溝部の長手方向領域に沿って変化する。
【0013】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの溝部の前記最短距離は、連続した漸減部分及び連続した漸増部分を含むことにより変化し、これは、エンドミルのエンドミル削り動作におけるびびりの効果的な減少を達成するために、エンドミルの回転軸までの少なくとも1つの溝部の底点の最短距離の変化を得る、簡単で効果的なかつこれにより有益な方法である。
【0014】
最後に述べた実施形態のさらなる展開を構成する本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの溝部の前記最短距離は、切削端までの距離に対して座標で示された時に正弦曲線またはジグザグ曲線を描くことなどにより、溝部の長手方向領域に亘って、周期的に変化する。
【0015】
本発明の実施形態によれば、少なくとも1つの溝部の前記最短距離は、少なくとも10%、25〜60%、30〜50%または35〜45%だけ最短距離の最小値を超える最大値を有する。少なくとも10%の、少なくとも1つの溝部の前記最短距離の変化が、エンドミル削り動作での高程度の軸方向係合において、びびりの効果的な減少を達成するために必要であること、前記最短距離の最大値が30〜50%だけこれの最小値を超える場合、減少はいくつかの荒仕上げ動作において特に効果的であること、が分かっている。最短距離の最大値が60%超でこれの最小値を超える場合、エンドミルの安定性はいくつかの機械加工に関して不十分である可能性がある。
【0016】
本発明の実施形態によれば、1つの溝部が、別の溝部の最短距離の最小値および最大値と異なる軸方向位置において最短距離の最小値および最大値を有する。コア断面は不同である。
【0017】
本発明の実施形態によれば、エンドミルは、エンドミルの軸方向に周期的に変化しかつ互いに対して位相シフトされている前記最短距離を有する少なくとも2つの溝部を有し、ここにおいて180°の位相シフトを有することが好適であり、最短距離は、他方の溝部に対して最大値を有する時に一方の溝部に対して最小値を有する。
【0018】
本発明の実施形態によれば、全ての溝部が、切削部分の長手方向領域に亘って、切削端までの異なる距離において異なる前記最短距離を有する。「異なる距離において異なる」は、全ての溝部が前記最短距離の変化を有するが、これは、周期的に変化する場合などの、いくつかの距離において同一の値を前提とし得ることと広く解釈され、同を意味する。
【0019】
本発明の実施形態によれば、切削刃を備えた前記歯は、エンドミルの回転軸の周りに螺旋状に捻じられており、切削工程を滑らかにすることおよび切りくずの排出を効率的にすることにより、エンドミル削り動作においてエンドミルの好適な挙動をもたらす。
【0020】
本発明の実施形態によれば、エンドミルは各々前記切削刃を備えた4つの歯を有し、本発明のさらなる展開によれば、エンドミルの意図された回転方向に関して1つおきの溝部が、切削部分の長手方向領域に亘って、エンドミルの各前記コア断面において同一の前記最短距離を有する。これは、エンドミルの剛性はエンドミルの異なる方向に適切な変化を有し、これによりびびりの効果的な減少を結果的にもたらすことを意味する。
【0021】
本発明の別の実施形態によれば、エンドミルの切削部分は、シャンク部分に取外し可能に接続されるように構成されている交換可能なヘッド上に配置されている。
【0022】
本発明のさらなる有利な特徴および利点が以下に続く記載から明らかになる。
【0023】
添付図面を参照して、例として記載されている本発明の実施形態の特定の説明が以下に続く。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態によるエンドミルの図である。
図2】エンドミルの回転軸に垂直な、図1のエンドミルの断面図である。
図3a-3b】歯6、8および歯7、9それぞれのコア寸法を示す、エンドミルの切削部分のコアの図1の線a−aおよび線b−bに沿った断面図である。
図4図1によるエンドミルの2つの隣接した歯に属する溝部に関する、エンドミルのコア寸法対回転角度を示すグラフである。
図5】本発明によるエンドミルにより実施される上向き削りを示す略示図である。
図6】本発明によるエンドミルにより実施される上向き削りを示す略示図である。
図7】本発明の第2の実施形態によるエンドミルを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の実施形態によるエンドミル1が図1に示されている。このエンドミル1は、被加工物のフライス機械加工を実施するために回転軸3を中心としてエンドミルを回転させる回転駆動装置内に保持されるシャンク部分2を有する。
【0026】
切削部分4がシャンク部分2に接続されており、この切削部分は、各々が切削刃10〜13を有する4つの離間された歯6〜9を支持するコア5を含む。歯およびこれによる切削刃は、エンドミルの回転軸3の周りに螺旋状に捻じられており、エンドミルのシャンク部分への切削部分の接続部から切削端14まで延在している。切削部分の軸方向領域lは、本実施形態では、25mmである一方、切削端の回転により作り出されるかまたは画定される円筒の直径dは10mmである。エンドミルは、粉末混合物を押圧することおよび次いで焼結を実施することにより、超硬合金の一体で作製されている。
【0027】
各切削刃がこれに関連する溝部15〜18を有し、この溝部は、エンドミルの意図された回転方向Rにおいて切削刃の前に位置付けられる。各溝部は、エンドミルの回転軸に垂直なエンドミルの各断面に対して、図2に示されているように、コア5上に回転軸3までの最短距離xの所に、歯6〜9の底点b〜bを有する。
【0028】
エンドミルの意図された回転方向にして、1つおきの溝部、したがって歯6および8に属する溝部ならびに歯7および9に属する溝部が、切削部分の長手方向領域に亘って、エンドミルの各断面において、同一の前記最短距離xを有する。しかし、ここでは非常に短い所定の長さの切削部分の各軸部に関して、歯6〜9の全ての溝部は、軸方向にエンドミルの切削端14までの距離によって異なる前記最短距離xを有し、ここではしたがって非常に短い所定の長さの各前記軸部は、このコア断面が不同であるように歯6および8に属する溝部の前記最短距離xが、歯7および9に属する溝部の最短距離xと異なる、これの回転軸に垂直な、エンドミルの断面を含む。この不同は、図2に、1つのそのような断面に対して示されている。
【0029】
図3aおよび図3bは、最短距離xが、歯6および8(図3a)ならびに歯7および9(図3b)に属する溝部に関して、エンドミルの切削部分4の回転軸3の方向に長手方向領域に沿ってどのように変化するかを示す。前記最短距離が回転軸3の方向にジグザグ曲線に基づいて各溝部に関して変化すること、および歯6および8の溝部が歯7および9の溝部に対して180°だけ位相シフトされることは明らかであり、最短距離xは、歯7および9に属する溝部に対して最大値maを有する断面において歯6および8に属する溝部に対して最小値miを有し、またその逆も言える。したがって、前記最短距離xが、最大値と最小値の間のおよそ中間の位置において、4つの溝部全てに関して同一である断面が存在する。または換言すれば、溝部の2つの最短距離がエンドミルの軸方向に増加しかつその他の2つの溝部の最短距離が減少する位置では、これらの最短距離は「揃う」。しかし、これはエンドミルの回転軸に沿った少数の軸位置における場合に過ぎず、所定の長さの切削部分の各軸部は、前記軸部がいかに短いかに関わりなく、溝部の2つの最短距離がその他の2つの溝部の最短距離と異なる断面を常に有する。
【0030】
最小値miでの最短距離は、本実施形態では、2.5mmであり、最大値maで3.5mmであり、これはしたがって最小値の最短距離を40%だけ超えている。1つの溝部の各最小値と連続的最大値の間の軸方向距離は5mmであり、したがって、最短距離の変化の区切りは10mmである。
【0031】
図4は、歯6、8(実線)および歯7、9(点線)の溝部の前記最短距離xの形のコア寸法が、エンドミルの回転軸を中心として溝部を半分まで辿りながらどのように測定されるか、およびしたがってエンドミルの回転角度Raによってどのように変化するかを示し、エンドミルの完全な回転が各溝部の最短距離xの変化の2つの区切りを包含することを示す。
【0032】
不同の断面とエンドミルの回転軸の方向の、前記断面の変化との組合せで記載されたばかりの本発明の実施形態によるエンドミルの切削部分の設計が、エンドミルの動作中にびびりの発生にどのように影響を及ぼすかが、そのようなエンドミルにより実施される上向き削りを示す図5および図6を参照しながら、ここで説明される。これらの図は簡略化されており、本発明を説明する目的のためにのみ使用される。コア5は、歯6および8の溝部に関連する最短距離xが歯7および9に関連する溝部の最短距離xより短い断面において示されている。これは、歯6および8の剛性が歯7および9の剛性と異なることを意味し、被加工物19の表面上の振動の振幅は異なる。歯6による、被加工物表面上の振動波v図5に示されており、歯7による、被加工物表面上の振動波v図6に示されている。びびりの減少は対称な標準的な円筒コアに関して著しく、フライス加工動作に起因する振動波は、荒仕上げの場合にいかなる位相シフトおよび相当なびびりもなく、同一の振幅を有する。このびびりの著しい減少は、一方では、振幅が異なるので発生効果が回避されることにより、他方では、振動波が位相シフトされることによる。エンドミルの回転軸3の方向の、コア断面の変化は、工具における振動およびびびりをさらに抑制する。
【0033】
機械加工試験が、図1および図3a、図3bによるエンドミル、ならびに最小値が2.5mmで図3a、図3bに示されておりかつ最大値が3mmで、すなわち最小値を20%だけ超えて示されているエンドミル、ならびに標準的な円筒コアを備えたエンドミルに関して実施された。びびりの減少は、最小値を40%だけ超える最短距離の最大値を有するエンドミルに関して最も効果的であること、しかし標準的な円筒コアを備えたエンドミルに関するびびりの大幅な減少は、最短距離の最小値を20%だけ超える最短距離の最大値で既に得られることが分かった。しかし、最短距離の最小値を60%超だけ超える最短距離の最大値を有することは、びびりの発生時に変化するコア直径の好ましい影響を低減する可能性がある。
【0034】
図7は本発明の第2の実施形態によるエンドミルを示し、これは、ヘッド20の接続部分22の外ねじ山21により示されているねじ接続部によりシャンク部分2’に取外し可能に接続されるように構成されている交換可能なヘッド20上に切削部分4’が配置されることにより、図1に示されているものと異なる。
【0035】
当然、本発明は、前述されている本発明の実施形態に限定されないが、該実施形態の修正の多くの可能性が、添付の特許請求の範囲において定められる、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者には明らかであると考えられる。
【0036】
エンドミルの切削部分の歯に関連する溝部の全てではないかまたはさらには2つだけが変化する前記最短距離を有すること、およびその他の溝部が溝部の長手方向領域に沿って一定の最短距離を有することが可能である。切削部分の前記軸部の所定の長さは、切削部分の軸領域の小部分に亘って、例えば3mmの前記最短距離の場合に1mmに亘って、全ての溝部に関して前記最短距離が一定であるような値を有し得る。
【0037】
異なる溝部の最短距離は、溝部の長手方向領域に亘って、異なって周期的に変化してもよく、例えば1つの溝部の最短距離がジグザグ曲線を描き、別の溝部では正弦曲線を描く。
【0038】
エンドミルの歯の数は、エンドミルの意図された使用に適切ないくらか、例えば5つまたは6つまたは任意の他の数、であってもよい。
【0039】
切削刃の回転により作り出される円筒の直径は、目的とされた用途に応じて、エンドミルに関して考えられるいくらかであり得る。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7