特許第6967517号(P6967517)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6967517振動式流量計のための圧力補償および関連方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967517
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】振動式流量計のための圧力補償および関連方法
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/84 20060101AFI20211108BHJP
【FI】
   G01F1/84
【請求項の数】14
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-540790(P2018-540790)
(86)(22)【出願日】2016年2月4日
(65)【公表番号】特表2019-504328(P2019-504328A)
(43)【公表日】2019年2月14日
(86)【国際出願番号】US2016016578
(87)【国際公開番号】WO2017135954
(87)【国際公開日】20170810
【審査請求日】2018年9月18日
【審判番号】不服2020-10382(P2020-10382/J1)
【審判請求日】2020年7月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】500205770
【氏名又は名称】マイクロ モーション インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コルベック, アンドリュー ジー.
(72)【発明者】
【氏名】プルイセン, アールト アール.
(72)【発明者】
【氏名】スタンディフォード, ディーン エム.
(72)【発明者】
【氏名】シンテ, マールテンスダイク ヤーコプ アンドレアス
【合議体】
【審判長】 中塚 直樹
【審判官】 岸 智史
【審判官】 濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−505895(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コリオリ質量流量計を較正する方法であって、
あるクラスのコリオリ質量流量計の流量較正係数と圧力係数値(PCV)との間の関係を決定するステップと、
コリオリ質量流量計の固有の流量較正係数を決定するステップと、
前記固有の流量較正係数を用いて、前記コリオリ質量流量計の固有の圧力補償値を計算するステップと、
前記固有の圧力補償値を前記コリオリ質量流量計に適用するステップと、を含む方法。
【請求項2】
あるクラスのコリオリ質量流量計の流量較正係数と圧力係数値との間の関係を決定する前記ステップは、初期ゼロオフセットを決定するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記固有の圧力補償値を前記コリオリ質量流量計に適用する前記ステップは、前記固有の圧力補償値をメータ電子機器に記憶するステップを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、前記コリオリ質量流量計に導入されるプロセス流体を測定するステップを含み、測定された値は前記固有の圧力補償および前記固有の流量較正係数を用いて調整される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
プロセス流体を測定する前記ステップは、質量流量を測定するステップを含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記質量流量は、
【数10】
を含む式を使用して決定され、式中、
【数10A】
は質量流量であり、
FCFは前記固有の流量較正係数であり、
PCVは前記固有の圧力係数であり、
ΔTmeasuredは測定された時間遅延であり、
ΔT0は初期ゼロオフセットである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記質量流量は、
【数11】
を含む式を使用して決定され、式中、
【数11A】
は質量流量であり、
FCFは前記固有の流量較正係数であり、
PCVは前記固有の圧力係数であり、
ΔTmeasuredは測定された時間遅延であり、
ΔT0は初期ゼロオフセットであり、
PA=流圧であり、
PB=基礎圧力である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記クラスのコリオリ質量流量計の前記流量較正係数と前記圧力係数との間の関係は線形である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記固有の圧力係数は、調整係数と合計された基礎圧力補償値を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
内部のプロセス流体の特性を測定するように構成されているコリオリ質量流量計(5)であって、
処理システム(303)および記憶システム(304)を備えるメータ電子機器(20)と、
前記メータ電子機器(20)と通信する、コリオリ質量流量計(5)の導管(103A、103B)に取り付けられた複数のピックオフ(105、105’)と、
前記メータ電子機器(20)と通信する、コリオリ質量流量計(5)の導管(103A、103B)に取り付けられたドライバ(104)と、を備え、
前記メータ電子機器(20)は、センサアセンブリ(10)内でプロセス流体の流量を測定し、前記プロセス流体の少なくとも1つの流体特性を決定するように構成され、
あるクラスのコリオリ質量流量計の流量較正係数と圧力係数値(PCV)との間の関係が決定され、
コリオリ質量流量計の固有の流量較正係数が決定され、
前記メータ電子機器(20)は、流体特性計算に固有の流量較正係数を適用するように構成され、
前記固有の流量較正係数を用いて、前記コリオリ質量流量計の固有の圧力補償値が計算され、
前記メータ電子機器(20)は、流体特性計算に圧力係数値を適用するように構成され、
該圧力係数は、調整係数と合計された基礎圧力補償値を含む、コリオリ質量流量計(5)。
【請求項11】
前記圧力係数および前記固有の流量較正係数を用いて、質量流量が計算され調整される、請求項10に記載のコリオリ質量流量計(5)。
【請求項12】
前記質量流量は、
【数12】
を含む式を使用して決定され、式中、
【数12A】
は質量流量であり、
FCFは前記固有の流量較正係数であり、
PCVは前記圧力係数であり、
ΔTmeasuredは測定された時間遅延であり、
ΔT0は初期ゼロオフセットである、請求項11に記載のコリオリ質量流量計(5)。
【請求項13】
前記質量流量は、
【数13】
を含む式を使用して決定され、式中、
【数13A】
は質量流量であり、
FCFは前記固有の流量較正係数であり、
PCVは前記圧力係数であり、
ΔTmeasuredは測定された時間遅延であり、
ΔT0は初期ゼロオフセットであり、
PA=流圧であり、
PB=基礎圧力である、請求項11に記載のコリオリ質量流量計(5)。
【請求項14】
前記流量較正係数と前記圧力係数との間の関係は線形である、請求項10に記載のコリオリ質量流量計(5)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流量計に関し、より詳細には、振動式流量計に対する圧力補償を決定して適用するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば、振動式デンシトメータ及びコリオリ流量計などの振動センサが、一般に知られており、流量計内の導管を流れる物質の質量流量および他の情報を測定するために使用される。例示的なコリオリ流量計は、すべてJ.E.Smith他に対する米国特許第4,109,524号明細書、米国特許第4,491,025号明細書、および米国再発行特許第31,450号明細書に開示されている。これらの流量計は、直線構成または湾曲構成の1つまたは複数の導管を有する。例えば、コリオリ質量流量計の各導管構成は、単純な屈曲、ねじり、または結合タイプのものであってもよい、固有振動モードのセットを有する。各導管は好ましいモードで振動するように駆動することができる。
【0003】
物質は、流量計の入口側の接続されたパイプラインから流量計に流入し、導管(複数可)を通って導かれ、流量計の出口側を通って流量計から出る。振動システムの固有振動モードは、導管および導管内を流れる物質の複合質量によって部分的に規定される。
流量計を通る流れがない場合、導管(複数可)に加えられる駆動力は、導管(複数可)に沿ったすべての点を、同一の位相で、またはゼロの流れで測定される時間遅延である小さな「ゼロオフセット」で振動させる。物質が流量計を通って流れ始めると、コリオリの力により、導管(複数可)に沿った各点が異なる位相を有するようになる。例えば、流量計の入口端の位相は、中央のドライバ位置の位相より遅れ、一方、出口の位相は、中央のドライバ位置の位相より先行する。導管(複数可)上のピックオフが、導管(複数可)の動きを表す正弦波信号を生成する。ピックオフからの信号出力は、ピックオフ間の時間遅延を決定するために処理される。2つ以上のピックオフ間の時間遅延は、導管(複数可)を流れる物質の質量流量に比例する。
【0004】
ドライバに接続されたメータ電子機器が、ドライバを動作させるための駆動信号を生成し、ピックオフから受け取った信号から物質の質量流量および他の特性を決定する。ドライバは、多くの周知の構成の1つを含むことができる。しかしながら、磁石および対向する駆動コイルが、流量計業界において大きな成功を収めている。所望の流管振幅および周波数で導管(複数可)を振動させるために、交流電流が駆動コイルに送られる。ピックオフを、上記ドライバ構成に非常に類似した磁石およびコイルの構成として提供することも、当該技術分野において知られている。しかし、ドライバが運動を誘発する電流を受け取る一方、ピックオフはドライバによって与えられる運動を使用して電圧を誘導することができる。ピックオフによって測定される時間遅延の大きさは非常に小さく、ナノ秒単位で測定されることが多い。したがって、トランスデューサの出力を非常に正確にする必要がある。
【0005】
一般に、コリオリ流量計は、最初に較正され得、ゼロオフセットと共に流量較正係数が生成され得る。使用時には、流量較正係数(FCF)に、ピックオフによって測定される時間遅延(ΔT)からゼロオフセット(ΔT0)を引いた値を乗算して、質量流量を生成することができる。このような質量流量較正は、直線の傾き(FCF)および切片(ゼロオフセット)と等価である2つの較正定数によって表すことができる。流量較正係数(FCF)およびゼロオフセット(ΔT0)を利用する質量流量式の例は、式(1)によって表される。
【数1】
式中、
【数1A】
=質量流量
FCF=流量較正係数
ΔTmeasured=測定される時間遅延
ΔT0=初期ゼロオフセットである。
【0006】
ほとんどの場合、流量計は、一般的には製造業者によって最初に較正され、その後の較正を必要とせずに正確な測定を提供すると想定される。測定されるコリオリの力の大きさは、主に流管(複数可)の剛性に基づいており、流管(複数可)を流れる流体の質量流量に正比例する。この関係は、各流量計のFCFによって反映される。したがって、コリオリ質量流量計に対するほとんどの補正は、作業条件、ならびに/または、例えば圧力および温度などの環境条件が工場較正条件から離れて変化するときの、管(複数可)の剛性の変化に基づく。
【0007】
さらに、初期の工場較正流体圧力からのプロセス流体圧力の変化についてコリオリ質量流量計を補正するために、圧力補償を利用することができる。典型的には、圧力係数は、コリオリ質量流量計の特定のモデルについて決定される所定の定数である。しかし、製造プロセスの公差および流管構築の公差によって引き起こされる変動が、流量計に、所定の定数が特に正確でなくなり得るような変動をもたらす。
したがって、特定の流量計に対する正確かつ個別化された圧力係数を決定して適用するための装置および方法が、当該技術分野において必要とされている。
本発明は、上記の困難および他の問題を克服し、当該分野における進歩が達成される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によれば、流量計の較正方法が提供される。この方法は、あるクラスの流量計の流量較正係数と圧力係数値(PCV)との間の関係を決定するステップを含む。流量計の固有の流量較正係数が決定され、固有の流量較正係数を用いて、流量計の固有の圧力補償値が計算される。固有の圧力補償値は流量計に適用される。
一実施形態によれば、その中のプロセス流体の特性を測定するように構成された流量計が提供される。流量計は、処理システムおよび記憶システムを備えるメータ電子機器を備える。複数のピックオフが、メータ電子機器と通信する流量計導管に取り付けられている。ドライバが、メータ電子機器と通信する流量計導管に取り付けられている。メータ電子機器は、センサアセンブリ内のプロセス流体の流量を測定し、プロセス流体の少なくとも1つの流体特性を決定するように構成される。メータ電子機器は、固有の流量較正係数および固有の係数値を流体特性計算に適用するように構成されている。
【0009】
態様
一態様によれば、流量計を較正する方法が提供される。この方法は、あるクラスの流量計の流量較正係数と圧力係数値(PCV)との間の関係を決定するステップと、流量計の固有の流量較正係数を決定するステップと、固有の流量較正係数を用いて、流量計の固有の圧力補償値を計算するステップと、固有の圧力補償値を流量計に適用するステップとを含む。
好ましくは、流量計は、コリオリ質量流量計である。
好ましくは、あるクラスの流量計の流量較正係数と圧力補償値との間の関係を決定するステップは、初期ゼロオフセットを決定するステップを含む。
好ましくは、固有の圧力補償値を流量計に適用するステップは、固有の圧力補償値をメータ電子機器に記憶するステップを含む。
【0010】
好ましくは、この方法は、流量計に導入されるプロセス流体を測定するステップを含み、測定値は固有の圧力補償および固有の流量較正係数を用いて調整される。
好ましくは、プロセス流体を測定するステップは、質量流量を測定するステップを含む。
好ましくは、質量流量は、
【数2】
を含む式を使用して決定され、式中、
【数2A】
は質量流量であり、
FCFは固有の流量較正係数あり、
PCVは固有の圧力係数であり、
ΔTmeasuredは測定された時間遅延であり、
ΔT0は初期ゼロオフセットである。
好ましくは、質量流量は、
【数3】
を含む式を使用して決定され、式中、
【数3A】
は質量流量であり、
FCFは固有の流量較正係数であり、
PCVは固有の圧力係数であり、
ΔTmeasuredは測定された時間遅延であり、
ΔT0は初期ゼロオフセットであり、
PA=流圧であり、
PB=基礎圧力である。
【0011】
好ましくは、上記クラスの流量計の流量較正係数と圧力係数との間の関係は線形である。
好ましくは、固有の圧力係数は、調整係数と合計された基礎圧力補償値を含む。
一態様によれば、その中のプロセス流体の特性を測定するように構成された流量計が提供される。流量計は、処理システムおよび記憶システムを含むメータ電子機器と、メータ電子機器と通信する、流量計導管に取り付けられた複数のピックオフと、メータ電子機器と通信する、流量計導管に取り付けられたドライバとを備え、メータ電子機器は、センサアセンブリ内でプロセス流体の流量を測定し、プロセス流体の少なくとも1つの流体特性を決定するように構成され、メータ電子機器は、流体特性計算に固有の流量較正係数を適用するように構成され、メータ電子機器は、流体特性計算に固有の係数値を適用するように構成されている。
好ましくは、流量計は、コリオリ質量流量計を含む。
好ましくは、固有の圧力係数および固有の流量較正係数を用いて、質量流量が計算され調整される。
【0012】
好ましくは、質量流量は、
【数4】
を含む式を使用して決定され、式中、
【数4A】
は質量流量であり、
FCFは固有の流量較正係数であり、
PCVは固有の圧力係数であり、
ΔTmeasuredは測定された時間遅延であり、
ΔT0は初期ゼロオフセットである。
好ましくは、質量流量は、
【数5】
を含む式を使用して決定され、式中、
【数5A】
は質量流量であり、
FCFは固有の流量較正係数であり、
PCVは固有の圧力係数であり、
ΔTmeasuredは測定された時間遅延であり、
ΔT0は初期ゼロオフセットであり、
PA=流圧であり、
PB=基礎圧力である。
好ましくは、流量較正係数と圧力係数との間の関係は線形である。
好ましくは、固有の圧力係数は、調整係数と合計された基礎圧力補償値を含む。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態による振動センサアセンブリを示す図である。
図2】一実施形態によるメータ電子機器を示す図である。
図3】流量較正係数と圧力係数との間の関係を説明するグラフ図である。
図4】一実施形態による流量計較正を説明する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1-図4および以下の説明は、当業者に本発明の最良の形態を作成および使用する方法を教示するための特定の例を示している。本発明の原理を教示する目的のために、いくつかの従来の態様は簡略化または省略されている。当業者であれば、本発明の範囲内に入るこれらの例から適切な変形形態を理解し、以下に説明する特徴を様々な方法で組み合わせて本発明の複数の変形を形成することができることを理解するであろう。その結果、本発明は、以下に説明する具体例に限定されるものではなく、特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されるものである。
【0015】
図1は、センサアセンブリ10と1つまたは複数のメータ電子機器20とを備えるコリオリ流量計の形態の流量計5の一例を示す。1つまたは複数のメータ電子機器20は、例えば、密度、圧力、質量流量、体積流量、合計質量流量、温度、および他の情報などの流れる物質の特性を測定するためにセンサアセンブリ10に接続される。
センサアセンブリ10は、一対のフランジ101および101’と、マニホールド102および102’と、導管103Aおよび103Bとを含む。マニホールド102,102’は、導管103A、103Bの対向する端部に固定されている。本例のフランジ101および101’は、マニホールド102および102’に取り付けられている。本例のマニホールド102および102’は、スペーサ106の対向する端部に取り付けられている。スペーサ106は、本例では、導管103Aおよび103Bにおける望ましくない振動を防止するために、マニホールド102と102’との間の間隔を維持する。導管103Aおよび103Bは、マニホールド102および102’から本質的に平行に外向きに延伸する。センサアセンブリ10が流れる物質を搬送するパイプラインシステム(図示せず)に挿入されると、物質はフランジ101を通ってセンサアセンブリ10に入り、入口マニホールド102を通過し、そこで物質の総量が導管103Aおよび103Bに入るように誘導され、導管103Aおよび103Bを通って流れて出口マニホールド102’に戻り、そこでフランジ101’を通ってセンサアセンブリ10を出る。
【0016】
センサアセンブリ10は、ドライバ104を含む。ドライバ104は、ドライバ104が駆動モードにおいて導管103A、103Bを振動させることができる位置において導管103A、103Bに取り付けられている。より詳細には、ドライバ104は、導管103Aに取り付けられた第1のドライバ構成要素(図示せず)と、導管103Bに取り付けられた第2のドライバ構成要素(図示せず)とを含む。ドライバ104は、導管103Aに取り付けられた磁石、および、導管103Bに取り付けられた対向コイルなど、多くの周知の構成のうちの1つを含むことができる。
【0017】
本例では、駆動モードは第1の位相外曲げモードであり、導管103Aおよび103Bは、好ましくは、実質的に同じ質量分布、慣性モーメント、ならびにそれぞれ曲げ軸W−WおよびW’−W’を中心とした弾性率を有する平衡システムを提供するように選択され、入口マニホールド102および出口マニホールド102’に適切に取り付けられる。本例では、駆動モードが第1の位相外曲げモードである場合、導管103Aおよび103Bは、それぞれの曲げ軸W−WおよびW’−W’を中心として反対方向にドライバ104によって駆動される。交流電流の形態の駆動信号が、例えばリード線110などを介して1つまたは複数のメータ電子機器20によって供給され、コイルを通過して導管103A、103Bの両方を振動させることができる。当業者であれば、本発明の範囲内で他のドライバタイプおよび駆動モードを使用できることを理解するであろう。
【0018】
示されているセンサアセンブリ10は、導管103A、103Bに取り付けられた一対のピックオフ105,105’を含む。より詳細には、第1のピックオフ構成要素(図示せず)が導管103A上に配置され、第2のピックオフ構成要素(図示せず)が導管103B上に配置される。図示の実施形態では、ピックオフ105,105’は、導管103A、103Bの速度および位置を表すピックオフ信号を生成する電磁検出器、例えばピックオフ磁石およびピックオフコイルであってもよい。例えば、ピックオフ105,105’は、経路111,111’を介して1つまたは複数のメータ電子機器にピックオフ信号を供給することができる。当業者であれば、導管103A、103Bの動きは、流れる物質の特定の特性、例えば導管103A、103Bを流れる物質の質量流量および密度に比例することを理解するであろう。
【0019】
上述のセンサアセンブリ10は二重流導管流量計を備えるが、単一導管流量計を実装することが十分に本発明の範囲内であることは理解されるべきである。さらに、流導管103A、103Bは、湾曲した流導管構成を含むものとして示されているが、本発明は、直線流導管構成を備える流量計によって実装されてもよい。したがって、上述したセンサアセンブリ10の特定の実施形態は単なる一例にすぎず、決して本発明の範囲を限定するものではない。
【0020】
図1に示す例では、1つまたは複数のメータ電子機器20は、ピックオフ信号をピックオフ105,105’から受信する。経路26は、1つまたは複数のメータ電子機器20がオペレータとインターフェースすることを可能にする入力および出力手段を提供する。1つまたは複数のメータ電子機器20は、例えば、位相差、周波数、時間遅延、密度、質量流量、体積流量、合計質量流量、温度、メータ検証、圧力、および他の情報などの流れる物質の特性を測定する。より詳細には、1つまたは複数のメータ電子機器20は、例えばピックオフ105,105’および抵抗温度検出器(RTD)などの1つまたは複数の温度センサ107から1つまたは複数の信号を受信し、この情報を使用して、流れる物質の特性を測定する。
【0021】
図2は、一実施形態によるメータ電子機器20を示す。メータ電子機器20は、インターフェース301および処理システム303を含むことができる。処理システム303は、記憶システム304を含むことができる。記憶システム304は、内部メモリを含むことができ、および/または外部メモリを含むことができる。メータ電子機器20は、駆動信号311を生成し、駆動信号311をドライバ104に供給することができる。さらに、メータ電子機器20は、ピックオフ/速度センサ信号、歪み信号、光信号、または当技術分野で知られているその他の信号またはセンサなど、ピックオフ105,105’からのセンサ信号310を受信することができる。いくつかの実施形態では、センサ信号310はドライバ104から受信することができる。メータ電子機器20は、密度計として動作することができ、またはコリオリ流量計として動作することを含む質量流量計として動作することができる。メータ電子機器20は、他のタイプの振動センサアセンブリとしても動作することができ、提供される特定の例は、本発明の範囲を限定するものではないことを理解されたい。メータ電子機器20は、流導管103A、103Bを流れる物質の流れ特性を得るためにセンサ信号310を処理することができる。いくつかの実施形態では、メータ電子機器20は、例えば、1つまたは複数の抵抗温度検出器(RTD)センサまたは他の温度センサ107から温度信号312を受信することができる。
【0022】
インターフェース301は、リード線110,111,111’を介してドライバ104またはピックオフ105,105’からセンサ信号310を受信することができる。インターフェース301は、任意の様式のフォーマット、増幅、バッファリングなどの任意の必要な、または所望の信号調整を行うことができる。代替的に、信号調整の一部または全部を処理システム303において実行することができる。さらに、インターフェース301は、メータ電子機器20と外部装置との間の通信を可能にすることができる。インターフェース301は、任意の様式の電子的、光学的、または無線通信が可能であり得る。
【0023】
インターフェース301は、一実施形態ではデジタイザ302を含むことができ、センサ信号はアナログセンサ信号を含む。デジタイザ302は、アナログセンサ信号をサンプリングし、デジタル化し、デジタルセンサ信号を生成することができる。デジタイザ302はまた、任意の必要なデシメーションを実行することができ、必要な信号処理の量を低減し、処理時間を短縮するために、デジタルセンサ信号がデシメーションされる。
処理システム303は、メータ電子機器20の動作を行い、センサアセンブリ10からの流れ測定値を処理することができる。処理システム303は、一般的な動作ルーチン314のような1つまたは複数の処理ルーチンを実行することができる。
【0024】
処理システム303は、汎用コンピュータ、マイクロプロセッシングシステム、論理回路、または何らかの他の汎用もしくはカスタマイズされた処理装置を含むことができる。処理システム303は、複数の処理装置の間で分散させることができる。処理システム303は、記憶システム304のような任意の様式の一体型または独立した電子記憶媒体を含むことができる。
処理システム303は、とりわけ、駆動信号311を生成するためにセンサ信号310を処理する。駆動信号311は、図1の導管103A、103Bなどの関連する流管(複数可)を振動させるために、リード線110を介してドライバ104に供給される。
【0025】
メータ電子機器20は、当技術分野で一般に知られている様々な他の構成要素および機能を含むことができることを理解されたい。これらの追加の特徴は、説明を簡潔にするために本明細書および図面から省略されている。したがって、本発明は、図示され、議論される特定の実施形態に限定されるべきではない。
例えば、コリオリ流量計または密度計などの振動センサアセンブリが、流れる物質の特性を測定する技術は十分に理解されている。したがって、この説明を簡潔にするために、詳細な論述は省略する。
【0026】
上で簡単に論じたように、コリオリ流量計のようなセンサアセンブリに関連する1つの課題は、正確なFCFの決定である。FCFが正確でない場合、流量および様々な他の流量測定値の計算には、通常、誤差が含まれる。上述したように、初期較正プロセス中にFCFを決定するための典型的な従来技術の手法は、通常、所定の圧力係数を適用することを含む。そのような較正プロセスは、当技術分野で一般的に知られており、説明を簡潔にするために詳細な論述は省略する。FCFが決定されると、式(1)に従って、測定された時間差から初期ゼロオフセットを減算し、この値にFCFを乗算することによって、流量測定値がメータ動作中に補正される。式(1)は一例として提供されているに過ぎず、他の方法および/または式が考えられるため、本発明の範囲を決して限定するものではないことを理解されたい。式(1)が質量流量を計算するために提供されているが、様々な他の流量測定がゼロオフセット、圧力係数、およびFCFの影響を受け得、そのため、必要に応じて調整することもできることも理解されたい。この一般的な手法は、流量計が製造公差を有し、それによって、所定の圧力係数値が必ずしも正確でない場合があるため、満足のいく結果を提供することができない可能性がある。
【0027】
一実施形態では、流量計5の質量流量は、式(2)またはその等価物によって決定されてもよい。
【数6】
一実施形態では、個別化されたPCVが計算され、個々の流量計5に適用される。理論的には同じ仕様を有するモデルについても、圧力補正は必ずしもメータごとに一定のままであるとは限らないことが、実験を通じて究明されている。これは、製造プロセスの公差および振動管(複数可)の壁厚の公差によって引き起こされる、メータごとの導管103A、103Bの剛性の変動に起因する可能性が高い。
【0028】
一実施形態では、PCVとともに圧力測定値が利用され、PCVは、式(3)に示すように
【数7】
として表される圧力補正項における圧力係数である。
【数8】
式中、
PCV=圧力係数
PA=流圧
PB=FCFが決定されている基礎圧力である。
付加的な温度補正項を、積として式の右辺に加えることができることに留意されたい。一実施形態では、温度補正項は(1−TC・T)として表され、TCは温度補正係数であり、Tは導管103A、103Bの動作温度である。
【0029】
図3を参照すると、グラフ400は、固有のコリオリ質量流量計のFCF、および特定の流量計のFCFとその特定の流量計のPCVとの間の関係を決定するための試験結果を示す。x軸402は測定されたコリオリ質量流量計のFCFを表し、y軸404はコリオリ質量流量計のPCVを表す。傾向線406は、FCFとPCVとの間の線形関係を示す。したがって、当業者には、各流量計について、固有のコリオリ質量流量計のFCFが固有の圧力補償値に相関することは明らかであろう。一実施形態では、較正されたFCFに基づいて各センサアセンブリ10に使用される標準の所定の圧力係数値に調整が行われる。
【0030】
図4を参照すると、固有のPCVを用いて流量計5を較正する方法の一実施形態が提供される。
ステップ500において、FCFとPCVとの間の関係が決定される。前述の通り、この関係は、流量計のモデル/タイプ/クラスごとに一意である。例えば、仮想的モデルX流量計は、仮想的モデルY流量計と比較してFCFとPCVとの間に異なる関係を有する。例えば、限定するものではないが、図3の関係はおおよそ、PCV=−3x10−5・FCF+0.03として記述することができる。これは無論、流量計のタイプによって異なる。
【0031】
ステップ502において、特定の流量計の固有のFCFが決定される。FCFは、導管103A、103Bの材料特性および断面特性を反映する。従来技術では、FCFは、流量計をパイプラインまたは他の導管に設置する前に、較正プロセスによって決定される。較正プロセスにおいて、流体が所与の流量で導管103A、103Bを通過し、位相差と流量との間の比率が計算される。一例では、流量計5は、流量計5のプロセス接続と一致するプロセス接続を有する較正システムに挿入される。較正システムへの挿入後、較正プロセスが実行される。例えば、これは、較正プロセス中の流量基準として使用される重量測定基準またはマスタメータ伝達基準を含むことができる。較正システムおよび試験対象のメータ内で使用される流体は、内因性および外因性の流体特性、例えば温度、密度、粘度および体積が正確に分かっている。試験対象のメータは、この流体に対する流量測定を実行する。これらの測定値は、既知の流体特性または流量基準と比較されて、流量較正係数または試験対象のメータのための他の較正係数が確認または検証される。一実施形態では、圧力表示レコーダと温度表示レコーダとが、較正中に流量計5と通信する。圧力表示レコーダおよび温度表示レコーダは、圧力および密度測定値を取得する際の従来の慣行に従って使用されるデータを提供する。試験対象のメータが容積型流量計、例えば容積式流量計またはオリフィス流量計である場合には、圧力および温度データを用いて体積測定を行うこともできる。動作中、試験対象のメータは、一連の上流および下流の基準メータを通過する流れ液体を受け取る。コントローラは、これらの同時測定を同期させて、異なる時間に流量測定値が得られる可能性を回避し、流量測定値は、ポンプの作用による圧力サージまたはパルスの影響を受け得る。
【0032】
このステップにおいて、いくつかの実施形態では、初期ゼロオフセット(ΔT0)を決定することができる。セットアップされている特定の流量計5について、これは、流量計5をゼロフロー状態に置くことと、測定された流量を読み取ることとを伴う。ゼロと測定流量との間の差は、初期ゼロオフセット(ΔT0)として記憶システム304に記憶される。初期ゼロオフセット(ΔT0)が決定されると、測定された時間遅延(Δtmeasured)と質量流量
【数8A】
との間の関係を規定する線の傾きである、流量較正係数(FCF)が確立される。FCFも記憶システム304に記憶される。
【0033】
ステップ504において、特定の流量計の固有のPCVが決定される。ステップ502においてFCF値が決定され、ステップ500においてFCFとPCVとの間の関係が決定されたため、PCVはこの時点で導出可能である。再び図3の例を参照すると、この関係は、上記のように、傾向線406によって示されている。したがって、流量計5のFCFが約720(例えば、点408)であるという仮想の状況において、PCVは約0.0067である。
【0034】
一実施形態では、PCVは2つの値の組み合わせである。第1の値は基礎PCVであり、第2の値は調整係数である。基礎PCVは、流量計の固有のPCVに近似する一般的な値である。これは、一般に、特定のクラス/タイプのすべての流量計について、メータ電子機器20に適用される。調整係数はステップ504において導出され、これは基礎PCVに加えられて、特定の流量計の固有のPCVと等価な値を生じる。
ステップ506において、PCVは、メータ電子機器20にプログラム/入力され得る。したがって、流量計5が動作しているときに、圧力補償を考慮した正確な較正が実現される。例えば、式(2)は、質量流量および他の流体関連変数を決定する際にFCFがPCVと併用されるように使用することができる。ここでも、この式は一例に過ぎず、他の式およびアルゴリズムも考えられる。したがって、記憶システム304は、PCVを記憶し、それを動作ルーチン314に適用することができる。ステップ506は、典型的には、初期工場セットアップの一部として実施される。
【0035】
一実施形態では、PCVをオフラインで記憶することもできることにも留意されたい。そのような場合、流量計5が質量流量を計算し、この値は流量計の外部のデバイスを利用して圧力補償される。したがって、式(4)は、例えば、限定するものではないが、以下のように適用される。
【数9】
式中、
【数9A】
=圧力補償された質量流量
【数9B】
=測定された質量流量である。
【0036】
上述した様々な実施形態は流量計、特にコリオリ流量計を対象とするが、本発明はコリオリ流量計に限定されるべきではなく、むしろ、本明細書に記載の方法は、他のタイプの流量計またはコリオリ流量計の測定能力の一部を欠く他の振動センサによって利用されてもよいことは理解されたい。
上記の実施形態の詳細な説明は、本発明の範囲内であると本発明者らが考えているすべての実施形態の網羅的な説明ではない。実際、当業者であれば、上述の実施形態の特定の要素は、さらなる実施形態を作成するために様々に組み合わせまたは削除されてもよく、このようなさらなる実施形態は、本発明の範囲および教示内に入ることを認識するであろう。また、当業者には、本発明の範囲および教示内で追加の実施形態を作成するために、上述の実施形態を全体的または部分的に組み合わせてもよいことは明らかであろう。したがって、本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲から決定されるべきである。
図1
図2
図3
図4