特許第6967527号(P6967527)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6967527液体希釈剤の添加によって発酵ターゲット飲料をその場で生成するためのキット
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967527
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】液体希釈剤の添加によって発酵ターゲット飲料をその場で生成するためのキット
(51)【国際特許分類】
   B67D 1/08 20060101AFI20211108BHJP
   C12G 1/00 20190101ALN20211108BHJP
   C12G 3/00 20190101ALN20211108BHJP
【FI】
   B67D1/08 Z
   !C12G1/00
   !C12G3/00
【請求項の数】15
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-550726(P2018-550726)
(86)(22)【出願日】2017年3月30日
(65)【公表番号】特表2019-517956(P2019-517956A)
(43)【公表日】2019年6月27日
(86)【国際出願番号】EP2017057516
(87)【国際公開番号】WO2017167863
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2020年3月19日
(31)【優先権主張番号】16163061.1
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506385140
【氏名又は名称】アンハイザー−ブッシュ・インベヴ・ソシエテ・アノニム
【氏名又は名称原語表記】Anheuser−Busch InBev S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100139549
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 泉
(72)【発明者】
【氏名】ステイン ヴァンデキャルクホーヴ
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ペイルスマン
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2015/097095(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/159458(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B67D 1/08
C12G 1/00
C12G 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体希釈剤(3)の添加によって発酵ターゲット飲料をその場で生成するためのパーツキットであって、
(a)濃縮飲料抽出物を収容する第1のチャンバ(1)と、
(b)前記第1のチャンバから流体的に分離される第2のチャンバ(2)であって、少なくとも80体積%の純度のエタノールを収容する第2のチャンバ(2)と
を含むパーツキットにおいて、
前記第2のチャンバの前記エタノールは、25℃の温度及び少なくとも2バールの圧力(=大気圧よりも1バール上)で飽和濃度のCO及び/又はNを含有することを特徴とする、パーツキット。
【請求項2】
前記第2のチャンバに収容される前記エタノールは、少なくとも90体積%純度を有する、請求項1に記載のパーツキット。
【請求項3】
前記第2のチャンバの前記エタノールは、
前記第2のチャンバの全容量に対して1.0〜3.0モル%まれる濃度xCO(EtOH)のCOを含有する、請求項1又は2に記載のパーツキット。
【請求項4】
前記液体希釈剤は、静水のみである、請求項1〜3のいずれか一項に記載のパーツキット。
【請求項5】
前記第1のチャンバは、前記第1のチャンバの全容量に対して10〜40体積%に含まれる量で静水を収容する、請求項3に記載のパーツキット。
【請求項6】
前記第1のチャンバの前記水は、
前記第1のチャンバの全水量に対して10〜30モル%まれる濃度xCO(HO)のCOを含有する、請求項5に記載のパーツキット。
【請求項7】
前記第1のチャンバに収容される前記濃縮飲料抽出物は、発酵飲料からの水及びエタノールの少なくとも部分的な分離によって得られ、且つ酢酸エチル、酢酸イソアミル、酪酸エチル、及びヘプタン酸エチルを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のパーツキット。
【請求項8】
前記第1及び第2のチャンバは、2つの別々のユニットとして提供される、請求項1〜7のいずれか一項に記載のパーツキット。
【請求項9】
前記第1及び第2のチャンバは、単一ユニット内の2つの別々のチャンバとして提供される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のパーツキット。
【請求項10】
前記第1のチャンバの容積に対する前記第2のチャンバの容積の容積比は、20%〜100%に含まれ、前記第1のチャンバは、好ましくは、20〜50cmに含まれる容積を有し、前記第2のチャンバは、好ましくは、10〜50cmに含まれる容積を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のパーツキット。
【請求項11】
液体希釈剤の添加によって発酵ターゲット飲料をその場で生成し、且つ前記そのように生成された発酵ターゲット飲料を分配するための分配装置であって、
)第1のチャンバを受けるためのハウジングと、
)第2のチャンバを受けるためのハウジングと、
)上流端(5u)及び下流端(5d)を含む分配配管システムであって、前記上流端は、液体希釈剤源に結合され、且つ前記液体希釈剤源を、前記第1のチャンバを受けるための前記ハウジング、前記第2のチャンバを受けるための前記ハウジング、及び外側雰囲気に開口される分配管の前記下流端(5d)に流体接続する、分配配管システムと
を含む分配装置において、
請求項1〜10のいずれか一項に記載の第1のチャンバ及び第2のチャンバは、それぞれのハウジング内に装填され、それにより、前記分配配管システムの前記上流端から前記下流端に流れる前記液体希釈剤は、必ず第1及び第2のチャンバの両方の内部を通って流れることを特徴とする、分配装置。
【請求項12】
前記液体希釈剤源は、静水源のみである、請求項11に記載の分配装置。
【請求項13】
前記第1及び第2のチャンバは、単一のハウジング内又は2つの別々のハウジング内に装填され、前記2つの別々のハウジングは、前記分配配管システムによって直列又は並列のいずれかで前記液体希釈剤源に流体接続される、請求項11又は12に記載の分配装置。
【請求項14】
発酵ターゲット飲料をその場で生成し、且つ前記発酵ターゲット飲料を分配するための方法であって、
)請求項11〜13のいずれか一項に記載の分配装置を提供し、且つ配管システムの上流端(5u)を液体希釈剤源(3)に接続するステップと、
)第1のチャンバ(1)及び第2のチャンバ(2)の両方をそれらのハウジング(12)内に装填するステップと、
)前記液体希釈剤を、前記配管システムの前記上流端から下流端へ第1及び第2のチャンバの両方を通して流すステップと、
)前記そのように生成された発酵ターゲット飲料を容器(10)内に回収するステップと
を含む方法。
【請求項15】
第1及び第2のチャンバのキットは、所定の体積の液体希釈剤を流すことにより、4〜9体積%のエタノール及び1〜6g/lのCOを含有する200〜500cmの発酵ターゲット飲料を供するように設計される、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体希釈剤の添加によって発酵飲料を形成及び分配するための、飲料分配装置で用いられる単位用量に関する。特に、発酵飲料は、ビール等の麦芽ベース飲料、又はサイダー、又はワインであり得る。液体希釈剤は、静水であり得る。
【背景技術】
【0002】
現在、より嗜好性のある種類の飲料に対するトレンドがあり、ここで、消費者がその嗜好に適応した自らの配合を自宅で作成できるように、複数の飲料成分又は飲料が互いに添加される。このトレンドは、様々な風味及び種類のビールのような麦芽ベース発酵飲料等の発酵飲料にも該当する。消費者にかかる可能性を提供する1つの方法は、供されるのと同時に所望の飲料をその場で作成するために、液体希釈剤が添加及び混合されるカプセル又はパッド等の単位用量に濃縮された様々な成分及び風味の飲料を提供することである。単位用量への液体希釈剤の添加及び混合は、一般に分配装置で行われる。
【0003】
この種の分配装置の例は、コーヒーディスペンサであり、ここで、熱湯は、供される前にかかる単位用量に収容されるコーヒー粉末ベッドを通って圧力下で強制的に抽出される。類似の分配装置が茶を浸出するために存在する。かかる分配装置の別の例は、多くの場合にファーストフードレストラン及び他の場所で用いられ、消費者が、全て同じディスペンサから入手可能なソーダの選択肢からその選択したソーダでそのグラスを充填できるソーダマシンである。かかるソーダディスペンサでは、様々なパウチに収容されたターゲットソーダの濃縮バージョンであるシロップは、そのように形成されるターゲットソーダを分配するときにソーダ水と混合される。シロップパウチは、対応する飲用に供する状態のソーダよりもかなり小さい寸法であり、従って出荷及び保管するのに大幅に安価であるため、かかるソーダディスペンサは有利である。
【0004】
多くの醸造元は、ソーダと同じ分配解決法を発酵飲料で実施することに魅力を感じているが、今日まで非常に限定的に成功しているか又は全く成功していない。これらの繰り返される失敗に対する1つの理由は、おそらく、発酵飲料が、ソーダシロップと比べて、濃縮し且つ長期間にわたって貯蔵するのがかなり難しいことである。実際に、ビール濃縮物に含まれるタンパク質の急速な分解が確認されており、それはソーダシロップでは決して起こらない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
長い貯蔵寿命を有する、発酵飲料、好ましくはビール等の麦芽ベース発酵飲料をその場で作成及び分配するための単位用量を提供するための解決方法を提供することが望ましい。ターゲット飲料を作成するために何らの加圧ガス容器も必要としないように、液体希釈剤が静水であるかかる解決方法を提供することも望ましいであろう。本発明は、かかる目的に合致する解決方法を提案する。本発明のこれら及び他の目的は、図面、詳細な説明及び添付の特許請求の範囲に照らして考察した場合に明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、添付の独立請求項で定義されている。好ましい実施形態は、従属請求項で定義されている。特に、本発明は、液体希釈剤(3)の添加によって発酵ターゲット飲料をその場で生成するためのパーツキットであって、(a)濃縮飲料抽出物を収容する第1のチャンバ(1)と、(b)第1のチャンバから流体的に分離される第2のチャンバ(2)であって、少なくとも80体積%の純度のエタノールを収容する第2のチャンバ(2)とを含むパーツキットにおいて、第2のチャンバのエタノールは、25℃の温度及び少なくとも2バールの圧力(=大気圧よりも1バール上)で飽和濃度のCO及び/又はNを含有することを特徴とする、パーツキットに関する。
【0007】
本発明は、ターゲットビールをその場で生成し、且つ前記発酵ターゲット飲料を分配するための方法であって、(a)請求項6(a)〜(d)に記載の分配装置を提供し、且つ配管システムの上流端(5u)を液体希釈剤源(3)に接続するステップと、(b)第1のチャンバ(1)及び第2のチャンバ(2)の両方をそれらのハウジング(12)内に装填するステップと、(c)液体希釈剤を、配管システムの上流端から下流端へ第1及び第2のチャンバの両方を通して流すステップと、(d)そのように生成された発酵ターゲット飲料を容器(10)内に回収するステップとを含む方法にも関する。
【0008】
本発明の本質をより詳細に理解するために、添付図面と共に考慮される以下の詳細な説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1及び第2のチャンバを含む単位容量を含む本発明による分配装置の様々な実施形態を示す。
図2】298°Kの温度における、圧力に依存する水及びエタノール(EtOH)中のCOの飽和濃度を示す。
図3】1バールの圧力及び298°Kの温度における水及びエタノール中のCOの飽和濃度間の関係を示す。
図4】(a)単位容量を分配装置に装填し、及び(b)発酵ターゲット飲料をその場で作成し且つ分配する一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に示すように、濃縮ビールの単位用量の短い貯蔵寿命の問題は、単位用量を第1及び第2のチャンバ(1、2)に分割することによって解決されている。第1のチャンバ(1)は、濃縮飲料抽出物を収容し、及び第2のチャンバ(2)は、エタノールを収容する。第2のチャンバは、25℃の温度及び少なくとも2バールの圧力(=大気圧よりも1バール上)で飽和濃度の炭酸ガスCO又は窒素ガスNも収容する。
【0011】
第1のチャンバ(1)に収容される濃縮飲料抽出物は、従来の方法で発酵飲料を生成することにより(例えば、ビールについて、当技術分野で公知の任意の方法でそれを醸造することにより)、続いてそのように生成された発酵飲料を濃縮することにより得ることができる。濃縮は、一方でそれに含まれる水の留分、及び他方でそれに含まれるエタノールの留分を除去することによって生じる。水及びエタノールの両方の実質的な量は、当業者に周知の適切な膜を用いて、濾過、微細濾過、限外濾過又はナノ濾過によって飲料から除去することができる。飲料に含まれる略全てのエタノールを除去することが望ましい。実際、本発明者らは、酵母菌が依然として飲料中に存在し、発酵飲料の濃縮物に含まれるタンパク質がエタノールの存在においてより急速に分解されることを発見した。これは、単位用量を、エタノールのない第1のチャンバと、エタノールを収容する第2のチャンバとに分割する1つの理由である。
【0012】
略全ての水分が飲料の濃縮プロセス中に除去されると、略全てのエタノールも除去される。一方、第1のチャンバにおいて0.5〜50体積%、好ましくは10〜40体積%の水を維持することが可能である。この場合、残りの水分と混合されるいずれのエタノールも除去することが必要である。エタノールは、蒸留によって残りの水分から除去することができる。
【0013】
第2のチャンバは、エタノール及びCO又はNガスを収容する。第2のチャンバに収容されるエタノールは、少なくとも80体積%、好ましくは少なくとも90体積%、より好ましくは少なくとも95体積%、最も好ましくは少なくとも98体積%の純度を有していなければならない。
【0014】
単位用量中にCO又はNガスを含むことは、分配装置内に加圧ガス源を有することなく、又は図1(c)に示すように、単に分配される飲料中のガスの最終的に所望されるレベルを調整するための加圧ガス源(7)を用いることなく作成することを可能にする。図3を参照すると、エタノール濃度の関数として298°Kの温度における水−エタノール混合物中のCO飽和濃度を示している。横座標xEtOH=0%は純水に対応し、xEtOH=100%は純粋エタノールに対応する。エタノール中のCO飽和濃度は、水中のものよりも約1桁高いことが見て取れる。これは、約10倍多くの炭酸ガスを同じ体積の純水と同様に純粋エタノール中に溶解させ得ることを意味する。このため、第2のチャンバ内において、少なくとも5体積%のエタノール含有量を有するターゲット飲料に対し、ターゲット飲料のために大気圧より1〜4バール高い第2のチャンバ内の適当な圧力で必要とされるCOの全てを含むことが可能である。
【0015】
例えば、第2のチャンバのエタノールは、
・第2のチャンバの全容量に対して1.0〜3.0モル%、好ましくは1.5〜2.5モル%に含まれる濃度のCO、xCO2(EtOH)
を含有する。
【0016】
第1のチャンバが10〜40体積%の水等の幾らかの水を収容する場合、CO又はNガスを、第1のチャンバ内に収容された前記水中に溶解させることも可能である。これは、ターゲット飲料中でより多くの気泡を達成することに寄与できる。これは、低いエタノール含有量を有するターゲット飲料の場合に特に有用であり得る。図2を参照すると、圧力の関数として298°KにおけるCOのモル%飽和濃度を示している。ターゲット飲料中の所望のエタノール及びガスの量により、第2の及び任意に第1のチャンバ内のガス濃度及び圧力を決定することができる。
【0017】
第1のチャンバの水は、
・第1のチャンバの全水量に対して1,0〜3,0モル%、好ましくは1.5〜2.5モル%に含まれる濃度のCO、xCO2(HO)
を含有する。
【0018】
最終的に、図1(c)に示されるように、ターゲット飲料中の最終ガス含有量は、加圧ガスの外部源(7)により調整することができる。これは、当然のことながら、分配装置の使用の快適性に好ましくない追加の消耗品の使用を必要とするが、加圧ガス源は、単にターゲット飲料中のガスの最終的な含有量の細かい調整のために用いられるため、ガス消費量は極めて限られ、1回の充填で長期間持ちこたえる。
【0019】
液体希釈剤(3)は、概して、水を含み、純水のみであり得る。純水により、飲料に適したミネラルを含む水を意図している。特に、液体希釈剤は、図1(a)、(c)及び(d)に示す、蛇口による静水であり得るが、当然のことながら、リザーバ又は他のコンテナ内に収容され得る。ビール等の発酵飲料を分配し、追加のガス源を何ら必要としない単位用量を用い、純水を液体希釈剤として用いるための分配装置は、当然のことながら、エンドユーザにとって最も快適である。
【0020】
代替として、液体希釈剤(3)は、例えば、第1のチャンバの異なる種類の濃縮飲料及び第2のチャンバのエタノールと混合される場合、多様なターゲット飲料をもたらす天然風味プロフィールを有するベース液であり得る。かかる実施形態を図1(b)に示し、ここで、液体希釈剤(3)を収容するびんが用いられている。例えば、液体希釈剤は、いずれの香味ハイライトも有さないベースビールであり得、第1のチャンバは、チェリービール、ダークアビイビール、アンバーアビイビール、スタウト等の様々な香味で利用可能である。ベースビールの1杯分供給により、前記ベースビールを、エタノール及びガスで充填された第2のチャンバ、及び対応する様々なフレーバー付き濃縮飲料抽出物を含む第1のチャンバを含む単位用量と混合することにより、多様なターゲットビールをもたらすことが可能である。塗装と比較して、ベースビールは、塗装の背景色調を形成し、フレーバー付き濃縮飲料抽出物は、絵の色付きの中央テーマをもたらす。
【0021】
第1のチャンバに収容される濃縮飲料抽出物は、様々な量の酢酸エチル、酢酸イソアミル、酪酸エチル、及びヘプタン酸エチルを含むのが好ましい。これらは、ビールの主要な香味化合物であり、その濃度プロフィールは、各ビールにそれ自体特有の風味プロフィールを与える。上で説明したように、濃縮飲料抽出物は、従来の醸造ビールの水及びエタノールの大部分(又は全て)の留分を除去することによって生産されるのが好ましい。代替として又は付随して、それは、香味化合物の添加によって生成又は完成され得る。
【0022】
図1(a)及び(b)に示すように、第1及び第2のチャンバは、個別に分配装置に装填されなければならない2つの別々のユニットとして提供され得る。これは、エンドユーザがそのターゲット飲料中のエタノール量を制御することを望む場合に有利であり得る。第1及び第2のチャンバ(1、2)の各ユニットは、分配管の上流及び下流端(5u、5d)に結合することができる入口接続(1u、2u)及び出口接続(1d、2d)を有する。しかし、ターゲット飲料を分配できるようになる前に、2つの用量単位を逐次装填しなければならないことはより不便である。
【0023】
代替として、図1(c)及び(d)に示すように、第1及び第2のチャンバは、単一ユニット内の2つの別々のチャンバとして提供され得る。これは、ターゲット飲料中のエタノールの比率に関して何らの選択も与えないが、コーヒーメーカーでは普通であるように、エンドユーザは、単一ユニットを分配装置に装填する必要があるのみであるため、より使い易い。図1(c)及び(d)に示すように、単一の単位用量における2つのチャンバは、液体希釈剤の圧力が前記膜を勢いよく開くまで、膜によって最初に閉じられている内部配管によって直列又は並列に流体結合できる。代替として、第1及び第2のチャンバを収容する用量単位の導入は、前記第1及び第2のチャンバを移動させ、それらが当接する際に前記膜を穿孔する。
【0024】
その名称が示すように、用量単位は、1杯分の飲料に対応する。国及び飲料の種類に応じて、1杯は、概して、20〜50cm(1cm=0.1cl)に含まれる容量のグラス(10)であり得る。従って、5体積%のエタノール含有量を有するターゲット飲料に対し、第2のチャンバ(2)は、200cmのターゲット飲料のために10cm、330cmのターゲット飲料のために17cm、500cm(0.5l)のターゲット飲料のために25cmの容量を有さなければならない。同様に、9体積%のエタノール含有量を有する500cmのターゲット飲料は、45cm容量の第1のチャンバを必要とする。第2のチャンバが大きい程、貯蔵できるCO又はNの量は大きくなり、ターゲット飲料のアルコール度が大きくなる。
【0025】
第1のチャンバ(1)の容積は、第1のチャンバ内に止まって存在する水の量に応じて、第2のチャンバの1つを超えて変更し得る。5体積%以下の水を収容する第1のチャンバのために、第1のチャンバの容量は、10〜50cmに含まれ得る。20〜40体積%の水を含む第1のチャンバのために、第1のチャンバの容量は、50〜150cmのオーダーのものであり得る。
【0026】
図1に示すように、本発明は、液体希釈剤の添加によって発酵ターゲット飲料をその場で生成し、且つそのように生成された発酵ターゲット飲料を分配するための分配装置にも関する。本発明の分配装置は、
(a)第1のチャンバ(1)を受けるためのハウジング(12)と、
(b)第2のチャンバ(1)を受けるためのハウジング(12)と、
(c)上流端(5u)及び下流端(5d)を含む分配配管システム(5d、5u)であって、上流端は、液体希釈剤源に結合され、且つ前記液体希釈剤源を、第1のチャンバを受けるためのハウジング、第2のチャンバを受けるためのハウジング、及び外側雰囲気に開口される分配管の下流端(5d)に流体接続する、分配配管システムと
を含む。
【0027】
上で検討したような第1のチャンバ及び第2のチャンバは、それぞれのハウジング内に装填され、それにより、分配配管システムの上流端(5u)から下流端(5d)に流れる液体希釈剤(3)は、必ず第1及び第2のチャンバ(1、2)の両方の内部を通って流れる。
【0028】
分配装置は、第1及び第2のチャンバを別々に受けるための互いに流体接続される2つの異なるハウジング(12)を含むことができる。代替として、図4に示すように、単一のハウジング(12)を用いて、第1及び第2のチャンバの両方を含む単一の単位容量又は2つの別々の第1及び第2の単位容量のいずれか一方を受けることができ、それぞれは、それぞれ第1及び第2のチャンバを収容する。図1(a)及び(b)は、2つの別々の単位容量が用いられる実施例を示し、図1(c)及び(d)並びに図4は、第1及び第2のチャンバの両方を収容する単一の単位容量を受ける装置の実施例を示す。
【0029】
衛生的理由及び使い易くするため、図4(a)に示すような単位容量は、第1及び第2のチャンバ並びに分配配管システムの下流端(5d)を含むことができる。単位容量は、分配装置のハウジング内に装填することができ、適切な容量のグラス又は他の容器は、分配配管システムの下流端の下に配置される。このように、毎回新しい単位容量が分配装置に装填され、分配管の新しく清潔な下流端(5d)が用いられる。分配配管システムの上流端(5u)も一定の間隔で交換されなければならないが、同じ液体希釈剤が1杯毎に用いられるため、1杯毎後に交換される必要はない。これは、好ましい実施形態である、希釈液が静水である場合に特に当てはまる。
【0030】
第1及び第2のチャンバの下流において、分配配管システムは、液体希釈剤を濃縮飲料抽出物、エタノール、及びガスと混合するための混合チャンバを含み得る。混合チャンバは、成分を動的に混合する可動要素を含むことができるか、又は代替として、それは、静的ミキサー又は単に分配配管システムの下流端における鋭角曲線部分であり得る。混合チャンバが用いられる場合、CO又はNガスの存在に起因する過剰量の気泡を生成しない混合機構を選択するように配慮しなければならない。
【0031】
本発明は、発酵ターゲット飲料をその場で生成し、且つ前記発酵ターゲット飲料を分配するための方法にも関する。方法の一例を図4に示し、方法は、
(a)上で検討したような分配装置を提供し、且つ配管システムの上流端(5u)を液体希釈剤源(3)に接続するステップと、
(b)第1のチャンバ(1)及び第2のチャンバ(2)の両方をそれらのハウジング(12)内に装填するステップと、
(c)液体希釈剤を、配管システムの上流端から下流端へ第1及び第2のチャンバの両方を通して流すステップと、
(d)そのように生成された発酵ターゲット飲料を容器(10)内に回収するステップと
を含む。
【0032】
前記方法による本発明の装置を用いること及び上で検討した単位容量を用いることにより、200〜500cm(=20〜50cl)に含まれる容量のグラス1杯の飲料に対応する量において、多様な発酵飲料のその場での調製が可能となる。そのように生成された発酵ターゲット飲料は、単位容量を分配装置に単に装填し、液体希釈剤を、単位容量を通って流すことにより、4〜9体積%のエタノール、1〜6g/lのCO及び/又はNを含み得る(一般的なCO/N比率は約3/1である)。最も好ましい実施形態では、液体希釈剤は、静水であり、加圧ガスの追加源を何ら必要としない。後者は、水又は水中の4〜9体積%のエタノール溶液(図2及び3を参照されたい)と比較したエタノール中のCO又はN等のガスの実質的に高い溶解性を利用することによって可能となる。
【0033】
代替として、液体希釈剤は、静水だけでなく、容器内に収容されるベース飲料である(図1(b)を参照されたい)。この溶液は、ベース飲料のテーマを中心とする多様な飲料の作成を可能にする。様々な風味プロフィールを有するベース飲料の選択は、エンドユーザの独創的な可能性を更に高めるために提供され得る。更に別の実施形態では、加圧ガスの追加源(7)は、そのように生成された発酵ターゲット飲料中のガス含有量を細かく調整するために用いることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 第1のチャンバ
1d 第1のチャンバの出口
1u 第1のチャンバの入口
2 第2のチャンバ
2d 第2のチャンバの出口
2u 第2のチャンバの入口
3 液体希釈剤源
3p 液体希釈剤のためのポンプ
5d 分配管の出口
5u 分配管の入口
5v 液体希釈剤のための弁
7 加圧ガス(CO又はN)源
7v 加圧ガスのための弁
10 その場で作成された飲料を回収するための容器
11 分配装置
12 第1及び第2のチャンバを受けるためのハウジング
図1(a)】
図1(b)】
図1(c)】
図1(d)】
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】