特許第6967529号(P6967529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967529
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】板材送り装置
(51)【国際特許分類】
   B21D 43/09 20060101AFI20211108BHJP
【FI】
   B21D43/09 D
   B21D43/09 C
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-552492(P2018-552492)
(86)(22)【出願日】2017年11月2日
(86)【国際出願番号】JP2017039710
(87)【国際公開番号】WO2018096903
(87)【国際公開日】20180531
【審査請求日】2020年9月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-227151(P2016-227151)
(32)【優先日】2016年11月22日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390006585
【氏名又は名称】株式会社三共製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健吾
【審査官】 山本 裕太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−020196(JP,A)
【文献】 特開2009−106990(JP,A)
【文献】 特開2001−165268(JP,A)
【文献】 米国特許第2451833(US,A)
【文献】 特開2009−270709(JP,A)
【文献】 特開2007−274826(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 43/09
F16H 25/18
F16H 25/20
F16H 25/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内に収容された第1のロールと、
前記ハウジング内に収容された第2のロールと、
前記第1のロールを支持する第1のロール支持部材と、
前記第2のロールを支持する第2のロール支持部材と
を備え、
前記第1のロール及び前記第2のロールによって板材をクランプし、前記第1のロール及び前記第2のロールの回転に従って前記板材を搬送できるようになっている板材送り装置であって、
前記第1のロール支持部材及び前記第2のロール支持部材のうちの一方に沿って水平方向に動作可能なスライダを備え、
前記一方のロール支持部材及び前記スライダのうちの一方に穿孔が設けられ、前記一方のロール支持部材及び前記スライダのうちの他方にロッドが設けられ、
前記ロッドの少なくとも一部と前記穿孔が摺動可能に係合することによって、前記スライダが水平方向に動作するときに、前記一方のロール支持部材が鉛直方向に動作できるようになっている、板材送り装置。
【請求項2】
前記第1のロールに連結され、前記第1のロールを回転させるための第1のモータと、前記第2のロールに連結され、前記第2のロールを回転させるための第2のモータとを備える請求項1に記載の板材送り装置。
【請求項3】
前記第1のロール及び前記第2のロールのうちの一方のロールに連結され、前記一方のロールを回転させるための第1のモータと、前記一方のロールが固定されたロール軸に設けられた第1のギヤと、前記第1のロール及び前記第2のロールのうちの他方のロールが固定されたロール軸に設けられた第2のギヤとを備え、
前記第1のギヤと前記第2のギヤが係合して、前記他方のロールが、前記第1のモータのよる前記一方のロールの回転に伴って回転できるようになっている、請求項1に記載の板材送り装置。
【請求項4】
前記第1のモータ及び/又は前記第2のモータの各々が、中空を設けた略円筒形のステータ、及び、前記ステータの中空に配置された、中空を設けた略円筒形のロータを備える、請求項2又は3に記載の板材送り装置。
【請求項5】
前記穿孔が、水平方向に対して傾斜面を有する孔であって、前記スライダが水平方向に動作するときに、前記傾斜面に対して前記ロッドの少なくとも一部が摺動することによって、前記一方のロール支持部材が鉛直方向に動作できるようになっている、請求項1〜4の何れか一項に記載の板材送り装置。
【請求項6】
前記穿孔が、略直方体の形状の孔であって、ロッドの少なくとも一部が、略直方体のうちの2つの前記傾斜面に接触して摺動できるようになっている、請求項5に記載の板材送り装置。
【請求項7】
第3のモータを備え、前記第3モータによる回転に応答して、前記スライダが水平方向に動作できるようになっている、請求項1〜6の何れか一項に記載の板材送り装置。
【請求項8】
前記第3のモータによる回転に応答して回転するねじ軸と、前記ねじ軸に係合したナットとを備え、前記ねじ軸の回転に伴って前記ナットが水平方向に動作することによって、前記ナットに接続されたスライダが水平方向に動作できるようになっている、請求項7に記載の板材送り装置。
【請求項9】
前記ねじ軸と前記ナットとの間に挿入された複数のボールが転動することによって、前記スライダが水平方向に動作できるようになっている、請求項8に記載の板材送り装置。
【請求項10】
前記一方のロール支持部材によって支持されたロールが固定されたロール軸に結合装置が設けられ、前記一方のロール支持部材が鉛直方向に動作することによって、前記ロールが、前記結合装置を介して鉛直方向に動作できるようになっている、請求項1〜9の何れか一項に記載の板材送り装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低消費電力化を実現でき、耐久性を向上でき、且つ、プレス装置等に対して高精度に板材を供給することができる板材送り装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フレームと、第1の被動送りロールと、第2の送りロールと、第1の被動送りロールと駆動係合関係をなして回転する第1の駆動モータと、第1の被動送りロールと駆動係合関係をなして回転する第2の駆動モータとを有する、ロール型材料送り装置が開示されている。そして、このロール型材料送り装置には、第2の送りロールが第1の被動送りロールと協働関係をなして駆動することができるように変速歯車装置が備えられ、変速歯車装置は、第1の被動送りロールに取り付けられた第1の駆動歯車と、第1の駆動歯車と駆動係合関係をなす第1の被動歯車と、第1の被動歯車を第2の送りロールに結合するための中間結合部材とを有している。また、第2の送りロールは、可動ロール支持体内に回転可能に支持され、フレームと可動ロール支持体との間に設けられた力発生アクチュエータは、第2の送りロールと第1の被動送りロールとの間で工作物を把持するために、第2の送りロールと第1の被動送りロールとの間に把持力を発生させるよう可動ロール支持体と協働している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2013−536086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のよるロール型材料送り装置においては、力発生アクチュエータが第2の送りロールを支持する可動ロール支持体を持ち上げることによって、第2の送りロールと第1の被動送りロールとの間にある把持されている工作物をリリースしているが、可動ロール支持体を持ち上げるために、力発生アクチュエータとして、容量が大きいモータ等を使用する必要がある、という問題点がある。
【0005】
従って、本発明の目的は、上記問題点を解決して、低消費電力化を実現し、耐久性を向上でき、且つ、高精度に板材を供給することができる板材送り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの観点によれば、ハウジングと、ハウジング内に収容された第1のロールと、ハウジング内に収容された第2のロールと、第1のロールを支持する第1のロール支持部材と、第2のロールを支持する第2のロール支持部材とを備え、第1のロール及び第2のロールによって板材をクランプし、第1のロール及び第2のロールの回転に従って板材を搬送できるようになっている板材送り装置が、第1のロール支持部材及び第2のロール支持部材のうちの一方に沿って水平方向に動作可能なスライダを備え、一方のロール支持部材及びスライダのうちの一方に穿孔が設けられ、一方のロール支持部材及びスライダのうちの他方にロッドが設けられ、ロッドの少なくとも一部と穿孔が摺動可能に係合することによって、スライダが水平方向に動作するときに、一方のロール支持部材が鉛直方向に動作できるようになっている。
【0007】
本発明の一具体例によれば、板材送り装置が、第1のロールに連結され、第1のロールを回転させるための第1のモータと、第2のロールに連結され、第2のロールを回転させるための第2のモータとを備える。
【0008】
本発明の一具体例によれば、板材送り装置が、第1のロール及び第2のロールのうちの一方のロールに連結され、一方のロールを回転させるための第1のモータと、一方のロールが固定されたロール軸に設けられた第1のギヤと、第1のロール及び第2のロールのうちの他方のロールが固定されたロール軸に設けられた第2のギヤとを備え、第1のギヤと第2のギヤが係合して、他方のロールが、第1のモータのよる一方のロールの回転に伴って回転できるようになっている。
【0009】
本発明の一具体例によれば、板材送り装置において、第1のモータ及び/又は第2のモータの各々が、中空を設けた略円筒形のステータ、及び、ステータの中空に配置された、中空を設けた略円筒形のロータを備える。
【0010】
本発明の一具体例によれば、板材送り装置において、穿孔が、水平方向に対して傾斜面を有する孔であって、スライダが水平方向に動作するときに、傾斜面に対してロッドの少なくとも一部が摺動することによって、一方のロール支持部材が鉛直方向に動作できるようになっている。
【0011】
本発明の一具体例によれば、板材送り装置において、穿孔が、略直方体の形状の孔であって、ロッドの少なくとも一部が、略直方体のうちの2つの傾斜面に接触して摺動できるようになっている。
【0012】
本発明の一具体例によれば、板材送り装置が、第3のモータを備え、第3モータによる回転に応答して、スライダが水平方向に動作できるようになっている。
【0013】
本発明の一具体例によれば、板材送り装置が、第3のモータによる回転に応答して回転するねじ軸と、ねじ軸に係合したナットとを備え、ねじ軸の回転に伴ってナットが水平方向に動作することによって、ナットに接続されたスライダが水平方向に動作できるようになっている。
【0014】
本発明の一具体例によれば、板材送り装置において、ねじ軸とナットとの間に挿入された複数のボールが転動することによって、スライダが水平方向に動作できるようになっている。
【0015】
本発明の一具体例によれば、板材送り装置において、一方のロール支持部材によって支持されたロールが固定されたロール軸に結合装置が設けられ、一方のロール支持部材が鉛直方向に動作することによって、ロールが、結合装置を介して鉛直方向に動作できるようになっている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、小さい駆動力で大きい材料把持力(グリップ力)を得ることができ、これによって、低消費電力の板材送り装置を実現することができる。特に、穿孔の傾斜面を利用することによるくさび効果によって、小さい駆動力であっても大きい材料把持力を得ることができるので、低消費電力で板材をクランプし、リリースすることができ、また、従来よりも耐久性を向上させることができる。更には、高速に板材をクランプし、リリースすることができるので、高精度に間欠的に一定量ずつ板材を搬送することができる。
【0017】
なお、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態としての板材送り装置を前方から見た板材をクランプしている場合の断面概略図である。
図2図1の板材送り装置を側方から見た図1に示す破線IIに沿った断面概略図である。
図3図1の板材送り装置を前方から見た板材をリリースしている場合の断面概略図である。
図4図3の板材送り装置を側方から見た図3に示す破線IVに沿った断面概略図である。
図5図1の板材送り装置を斜め方向から見た断面概略図である。
図6図1の板材送り装置における一実施形態としてのロール軸、結合装置、ギヤ軸の関係を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
図1図6を参照して、本発明の一実施形態としての板材送り装置101を説明する。板材送り装置101は、本体ハウジング102と、本体ハウジング102内に収容され、第1のロール(下側ロール)103と、本体ハウジング102内に収容され、下側ロール103の鉛直方向の上側に配置された第2のロール(上側ロール)104を備える。また、板材送り装置101は、本体ハウジング102内に収容され、下側ロール102を回転可能に支持する第1のロール支持部材(下側ロール支持部材)109と、本体ハウジング102内に収容され、上側ロール104を回転可能に支持する第2のロール支持部材(上側ロール支持部材)110とを備える。下側ロール103は、第1のロール軸(下側ロール軸)107に固定され、第1のロール軸線(下側ロール軸線)105を中心に回転でき、上側ロール104は、第2のロール軸(上側ロール軸)108に固定され、第2のロール軸線(上側ロール軸線)106を中心に回転できるようになっている。下側ロール103及び上側ロール104が板材ガイド134によって案内された板材に接触してクランプ(挟持)し、下側ロール103及び上側ロール104が回転することによってクランプされた板材が搬送される。板材送り装置101は、下側ロール103及び上側ロール104うちの一方のロールに連結され、一方のロールを回転させるためのロール用モータ125を備える。図1図5の場合には、ロール用モータ125は下側ロール103を直接回転させるように本体ハウジング102に連結されているが、ロール用モータ125は上側ロール104を直接回転させるように本体ハウジング102に連結されてもよい。
【0021】
下側ロール支持部材109は、下側ロール軸受111を備え、下側ロール軸受111が下側ロール軸107の両端部を回転可能に支持することによって、下側ロール軸107に固定された下側ロール103を回転可能に支持する。上側ロール支持部材110は、上側ロール軸受112を備え、上側ロール軸受112が上側ロール軸108の両端部を回転可能に支持することによって、上側ロール軸108に固定された上側ロール104を回転可能に支持する。
【0022】
板材送り装置101は、下側ロール支持部材109及び上側ロール支持部材110のうちの一方に沿って水平方向に動作可能なスライダ117を備える。図1図5では、上側ロール支持部材110を鉛直方向に動作可能とするために、スライダ117は、上側ロール支持部材110に沿って水平方向に動作可能であるが、下側ロール支持部材109を鉛直方向に動作可能とする場合には、スライダ117は、下側ロール支持部材109に沿って水平方向に動作可能に配置される。上側ロール支持部材110及びスライダ117のうちの一方に穿孔118が設けられている。また、上側ロール支持部材110及びスライダ117のうちの他方にロッド119が設けられている。図1図5では、スライダ117に穿孔118が設けられ、上側ロール支持部材110にロッド119が設けられているが、上側ロール支持部材110に穿孔118が設けられ、スライダ117にロッド119が設けられていてもよい。
【0023】
ロッド119は、ロッド119の少なくとも一部と穿孔118が摺動可能に係合するように、穿孔118内に配置されている。スライダ117が図1の矢印のように水平方向左側に動作すると、穿孔118に対するロッド119の少なくとも一部の摺動可能な係合によって、上側ロール支持部材110が図1の矢印のように鉛直方向下側に動作できるようになっており、下側ロール103と上側ロール104によって板材をクランプすることができる。スライダ117が図3の矢印のように水平方向右側に動作すると、穿孔118に対するロッド119の少なくとも一部の摺動可能な係合によって、上側ロール支持部材110が図3の矢印のように鉛直方向上側に動作できるようになっており、下側ロール103と上側ロール104によってクランプされていた板材をリリースすることができる。
【0024】
穿孔118は、スライダ117が動作する方向である水平方向に対して傾斜面を有する形状の孔であってもよい。穿孔118は、例えば、図1図3に示すように、略直方体の形状であって、穿孔118の長方形状の開口部が水平方向に対して傾いている孔になっており、これによって、略直方体の2つの面が穿孔118の傾斜面を形成している。略直方体の形状の穿孔118の2つの傾斜面にロッド119が接触して摺動しているので、スライダ117が図1の矢印のように水平方向左側に動作すると、上側ロール支持部材110が図1の矢印のように鉛直方向下側に動作でき、スライダ117が図3の矢印のように水平方向右側に動作すると、上側ロール支持部材110が図3の矢印のように鉛直方向上側に動作できるようになっている。図2図4においては、ロッド119は、スライダ117(穿孔118)を貫通しているが、スライダ117を貫通していなくてもよい。穿孔118が、上側ロール支持部材110にある場合も同様である。
【0025】
スライダ117が水平方向に動作するときに、穿孔118の傾斜面に対してロッド119の少なくとも一部が摺動することによって、上側ロール支持部材110が鉛直方向に動作できるようになっている。つまり、スライダ117の水平方向の動作が、ロッド119の穿孔118に対する摺動によって、上側ロール支持部材110の鉛直方向に動作に変換される。
【0026】
ロッド119は、略四角形の断面であるスライドコマ120を含んでいてもよい。スライドコマ120の少なくとも1つの端面が穿孔118の傾斜面に接触して、スライドコマ120が穿孔118の傾斜面に対して摺動できるようになっている。なお、スライドコマ120は、穿孔118の傾斜面との接触を確保できればよく、必ずしも略四角形の断面を有していなくてもよく、多角形や円形の断面であってもよい。なお、穿孔118の傾斜面の水平方向に対する角度は、板材の把持力、上側ロール104と上側ロール支持部材110の重量、板材に対するクランプ・リリースの応答性、傾斜面とロッド119との接触による摩擦係数、等を考慮しながら決定する。
【0027】
板材送り装置101は、スライダ117を水平方向に動作させるための水平動作機構121を備える。水平動作機構121による水平動作に応答してスライダ117は水平動作できるようになっている。水平動作機構121としては、エアシリンダ、電動シリンダ、等がある。空気的に若しくは電気的にシリンダを水平方向に動作させることによって、それに応じて、シリンダに接続されたスライダ117を水平方向に動作させることができる。また、水平動作機構121として、ねじ軸とナットより構成されたものがある。ネジ軸の軸線を中心とする回転を、ナットによる直進運動に変換することによって、ナットに接続されたスライダ117を水平方向に動作させることができる。
【0028】
水平動作機構121は、リリース用モータ122を備えていてもよい。水平動作機構121が、リリース用モータ122のロータの回転を水平方向の動作に変換することによって、スライダ117が水平方向に動作できるようになっている。
【0029】
水平動作機構121は、ねじ軸124とねじ軸124に係合したナット123とを備えていてもよい。ねじ軸124の一端がリリース用モータ122のロータに連結され、リリース用モータ122のロータが回転すると、それに応じてねじ軸124も回転する。ねじ軸124の回転がナット123の水平方向の動作に変換されることによって、ナット123に接続されたスライダ117が水平方向に動作できるようになっている。
【0030】
水平動作機構121のねじ軸124とナット123との間には、複数のボールが挿入されていてもよい。これによって、いわゆるボールネジが構成される。ねじ軸124が軸線を中心に回転すると、複数のボールがねじ軸124とナット123との間で転動して、ナット123が滑らかに水平に動作できるようになり、スライダ117が水平方向に動作できるようになっている。
【0031】
図1図5の板材送り装置101においては、リリース用モータ122のロータの回転によるねじ軸124の回転が、ナット123によって水平方向の左右の往復動作に変換されて、ナット123に接続されたスライダ117が水平方向に左右に往復動作していることが示されている。そして、スライダ117の水平方向の左右の往復動作が、上側ロール支持部材110に設けられたロッド119とスライダ117に設けられた穿孔118の摺動可能な係合によって鉛直方向の上下の往復動作に変換されて、上側ロール支持部材110が本体ハウジング102対して鉛直方向に上下に往復動作し、板材をクランプしたり、リリースしたりすることができる。更に、上側ロール支持部材110に設けられたロッド119とスライダ117に設けられた傾斜面を有する穿孔118との間のくさび効果によって、小さい把持力で上側ロール支持部材110を鉛直方向に上下に往復動作させることができる。これによって、リリース用モータ122の駆動力を小さくすることができ、リリース用モータの小型化及び低消費電力化に繋がる。なお、ナット123に接続されたスライダ117の水平方向の左右の往復動作が、下側ロール支持部材109の本体ハウジング102対する鉛直方向の上下の往復動作に変換されて、板材をクランプしたり、リリースしたりすることができてもよい。
【0032】
また、板材送り装置101においては、リリース用モータ122のロータの回転量を調整することによって、ナット123を水平方向の任意の位置に移動させることができて、任意の高さに上側ロール支持部材110を調整することができる。これによって、板材送り装置101は、上側ロール104を任意の高さに調整して、板材をリリースすることができる。
【0033】
また、板材送り装置101において、下側ロール103及び上側ロール104のうちの少なくとも1つのロールが固定されたロール軸に、結合装置116が設けられ、結合装置116を介して、少なくとも1つのロールが本体ハウジング102に対して鉛直方向に動作可能であってもよい。図1図5においては、上側ロール104が固定された上側ロール軸108に結合装置116が設けられ、結合装置116を介して、下側ロールギヤ113の回転による上側ロールギヤ114の回転が上側ロール軸108に伝達されて、上側ロール104が回転できるようになっており、また、結合装置116を介して、上側ロール104が本体ハウジング102に対して鉛直方向に動作可能であって、これによって、板材ガイド134によって案内された板材をクランプしたり、リリースしたりすることができる。なお、上側ロールギヤ114の代わりに第2のロール用モータを使用して、第2のロール用モータのロータの回転が、結合装置116を介して上側ロール軸108に伝達されて、上側ロール104が回転できるようにし、結合装置116を介して上側ロール104が第2のロール用モータ及び本体ハウジング102に対して鉛直方向に動作可能であってもよい。
【0034】
ロール用モータ125が、本体ハウジング102に取付プレート130を介して連結され、ロール用モータ125のロータ126の回転に伴って下側ロール103を回転できるようになっている。なお、ロータ126は、略円筒形のステータ129の中空に配置され、ロータ126の形状は、中空を設けた略円筒形であってもよい。ロータ126に中空128を設けることによって、ロータ126の慣性モーメント(イナーシャ)を小さくすることができ、ロータ126自身を回転させるために使用される消費電力(エネルギー)を小さくすることできる。これによって、中空を設けないロータを備えるモータと比較して、モータ102のサイズを大きくすることなく、重量が大きい板材も搬送することが可能となって、搬送能力の高い板材送り装置101を提供することができる。
【0035】
ロータ126に設けられた中空128には、ロータ126の中空128の一部を占有するようにスリーブ127が配置されて、スリーブ127はロータ126と連結される。ロータ126に連結されたスリーブ127は、ロータ126の回転に伴って回転する。スリーブ127の慣性モーメントを小さくするために、スリーブ127の形状は、中空を設けた略円筒形である。
【0036】
スリーブ127は、スリーブ127の端部と下側ロール軸107とを介して下側ロール103に連結される。下側ロール軸107の両端は、下側ロール支持部材109に配置された下側ロール軸受111によって回転可能に支持され、スリーブ127に連結された下側ロール103は、スリーブ127の回転に伴って下側ロール支持部材109に対して回転する。
【0037】
ロール用モータ125は、板材送り装置101に連結される側の端部に対して反対側の端部において、ステータ129を収容するモータハウジング131を備えていてもよい。モータハウジング131にロール用モータ軸受132を設けて、ステータ129に対するロータ126及びスリーブ127の回転を支持できるようにしてもよい。なお、モータハウジング131はステータ129の全てを収容せず、ステータ129の少なくとも一部が外気に直接接触するようにしてもよい。このようにステータ129の一部が外気に直接接触すると、ロール用モータ125の空冷の効率を向上させることができる。また、ロール用モータ125は、回転角度センサ133を備え、ロータ126の回転角度を測定して回転速度を検出できてもよい。回転角度センサ133としては、例えば磁気式のレゾルバ、光学式のエンコーダがある。
【0038】
板材送り装置101は、第2のロール用モータを備えていてもよい。第2のロール用モータは、中空を有する略円筒形のステータ、及び、ステータの中空に配置された、中空を有する略円筒形のロータを備えるように、ロール用モータ125と同一の構造を有していてもよい。第2のロール用モータのロータは、上側ロール軸108を介して上側ロール104に連結される。上側ロール軸108の両端は、上側ロール支持部材110に配置された上側ロール軸受112によって回転可能に支持され、上側ロール104は、第2のロール用モータのロータの回転に伴って上側ロール支持部材110に対して回転する。このように、各モータがそれぞれのロールを連結されて、それぞれのロールを回転させるようにすることによって、各モータの回転容量を小さくしても重量が大きい板材も搬送することが可能となって、搬送能力の高い板材送り装置101を提供することができる。
【0039】
なお、板材送り装置101が第2のロール用モータを備える場合には、板材送り装置101は、ロール用モータ125に備えられた回転角度センサ133により検出されたロータ126の回転速度の信号、及び、第2のロール用モータに備えられた回転角度センサにより検出されたロータ回転速度の信号を受信する制御装置を備えていてもよい。制御装置は、これらの検出された回転速度が所定の回転速度に対応しているかを判定し、各モータのロータの回転速度を制御することにより、下側ロール103及び上側ロール104を所定の回転速度で同期して回転できるようにする。
【0040】
板材送り装置101において、下側ロール103が固定された下側ロール軸107に第1のギヤ(下側ロールギヤ)113が設けられ、上側ロール104が固定された上側ロール軸108に第2のギヤ(上側ロールギヤ)114が設けられていてもよい。下側ロールギヤ113と上側ロールギヤ114が噛み合って係合して、下側ロールギヤ113の回転が、上側ロールギヤ114に伝達される。これによって、ロール用モータ125のロータ126の回転による下側ロール103の回転に伴って、上側ロール104が回転できるようになっている。なお、下側ロールギヤ113及び上側ロールギヤ114は、図1図5においては、ロール用モータ125に対して反対側の下側ロール軸107の端部及び上側ロール軸108の端部に設けられているが、ロール用モータ125と同じ側の下側ロール軸107の端部及び上側ロール軸108の端部に設けられていてもよい。ギヤによって回転を伝達させることにより、下側ロール103と上側ロール104を同期して回転させることができる。
【0041】
図6に、上側ロール104が固定された上側ロール軸108、結合装置116、上側ロールギヤ114が固定された上側ロールギヤ軸115の関係を表す斜視図を示す。板材送り装置101においては、上側ロール104が固定された上側ロール軸108に結合装置116が設けられ、上側ロール軸108と上側ロールギヤ軸115とは結合装置116を介して連結されている。上側ロール支持部材110を鉛直方向に動作させることによって、上側ロールギヤ114を本体ハウジング102に対して鉛直方向に動作させることなく、上側ロール104は、結合装置116を介して、本体ハウジング102に対して鉛直方向に動作できるようになっている。図1図2においては、結合装置116を介して、上側ロール軸108の上側ロール軸線106の方向を上側ロールギヤ軸115の軸線の方向と一致させるように、本体ハウジング102に対して上側ロール支持部材110及び上側ロール104を鉛直方向下側に動作させて板材をクランプしている。図3図4においては、結合装置116を介して、上側ロール軸108の上側ロール軸線106の方向を上側ロールギヤ軸115の軸線の方向と相違させるように、本体ハウジング102に対して上側ロール支持部材110及び上側ロール104を鉛直方向上側に動作させて板材をリリースしている。結合装置116としては、板材をクランプしたい場合には上側ロール軸108を介して上側ロール104を鉛直方向下側に動作可能であって、板材をリリースしたい場合には上側ロール軸108を介して上側ロール104を鉛直方向上側に動作可能であるものならよい。このような結合装置として、例えばオルダムカップリングがある。結合装置116によって、上側ロールギヤ114の鉛直方向の位置を変えることなく、上側ロール104を鉛直方向に動作させて、板材をクランプし、リリースすることができる。なお図6では、上側ロール支持部材110を鉛直方向に動作させることから、上側ロール軸108と上側ロールギヤ軸115とが結合装置116を介して連結されているが、下側ロール支持部材109を鉛直方向に動作させる場合には、下側ロール軸107と下側ロールギヤ113のギヤ軸とが結合装置116を介して連結されるようにして、下側ロールギヤ113の鉛直方向の位置を変えることなく、下側ロール103を鉛直方向に動作させて、板材をクランプし、リリースできるようにしてもよい。
【0042】
上記に説明したような本発明の板材送り装置101を使用することによって、低消費電力化を実現でき、且つ、高精度に間欠的に一定量ずつ板材を搬送することができる。そして、板材送り装置101から高精度に搬送された板材を、プレス装置等の加工装置は、プレス加工等の加工処理を行って、携帯電話、パソコン等の情報関連機器に使用される小型部品等の構造物を製造することができる。
【0043】
上記記載は特定の実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理と添付の特許請求の範囲の範囲内で種々の変更及び修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0044】
101 板材送り装置
102 本体ハウジング
103 下側ロール
104 上側ロール
105 下側ロール軸線
106 上側ロール軸線
107 下側ロール軸
108 上側ロール軸
109 下側ロール支持部材
110 上側ロール支持部材
111 下側ロール軸受
112 上側ロール軸受
113 下側ロールギヤ
114 上側ロールギヤ
115 上側ロールギヤ軸
116 結合装置
117 スライダ
118 穿孔
119 ロッド
120 スライドコマ
121 水平動作機構
122 リリース用モータ
123 ナット
124 ねじ軸
125 ロール用モータ
126 ロータ
127 スリーブ
128 中空
129 ステータ
130 取付プレート
131 モータハウジング
132 ロール用モータ軸受
133 回転角度センサ
134 板材ガイド
図1
図2
図3
図4
図5
図6