(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6967531
(24)【登録日】2021年10月27日
(45)【発行日】2021年11月17日
(54)【発明の名称】再生モードにおいてギアボックスのシャフト上のギアを同期させるためのデバイス、ならびに対応する方法および自動車
(51)【国際特許分類】
B60W 10/10 20120101AFI20211108BHJP
B60K 6/36 20071001ALI20211108BHJP
B60K 6/48 20071001ALI20211108BHJP
B60K 6/547 20071001ALI20211108BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20211108BHJP
F16H 61/02 20060101ALI20211108BHJP
F16H 63/50 20060101ALI20211108BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20211108BHJP
B60L 58/13 20190101ALI20211108BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20211108BHJP
F16H 3/089 20060101ALN20211108BHJP
【FI】
B60W10/10 900
B60K6/36ZHV
B60K6/48
B60K6/547
B60W10/08 900
F16H61/02
F16H63/50
B60L15/20 K
B60L58/13
H02M7/48 E
!F16H3/089
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2018-558739(P2018-558739)
(86)(22)【出願日】2017年4月26日
(65)【公表番号】特表2019-523725(P2019-523725A)
(43)【公表日】2019年8月29日
(86)【国際出願番号】FR2017050988
(87)【国際公開番号】WO2017194851
(87)【国際公開日】20171116
【審査請求日】2020年1月20日
(31)【優先権主張番号】1654135
(32)【優先日】2016年5月9日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】クヴィエスカ, ペドロ
(72)【発明者】
【氏名】メリエンヌ, リュドヴィック
【審査官】
笹岡 友陽
(56)【参考文献】
【文献】
特開平07−023505(JP,A)
【文献】
特開平07−023504(JP,A)
【文献】
特開2012−240624(JP,A)
【文献】
特開2010−190372(JP,A)
【文献】
特表2011−521822(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/10
B60K 6/36
B60K 6/48
B60K 6/547
B60W 10/08
F16H 61/02
F16H 63/50
B60L 15/20
B60L 58/13
H02M 7/48
F16H 3/089
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気トルクを電気機械(7)から受け取る一次側シャフト(1、6)の一次速度(ωp)とトランスミッション二次側シャフト(10)の前記一次速度よりも低い二次速度とを同期させるためのデバイスであって、前記一次側シャフト(1、6)および前記二次側シャフト(10)は、切り離されており、前記一次側シャフト(1、6)は、前記一次速度(ωp)と関連する運動エネルギーを有し、
前記デバイスが、前記一次速度が前記二次速度に実質的に等しくなるまで、電気制動トルク(Te)を前記一次側シャフト(1、6)に供給するための手段、ならびに前記一次側シャフト(1、6)によって失われる前記運動エネルギーを電気エネルギーの形で少なくとも部分的に回収し、前記電気エネルギーをエネルギー貯蔵手段(71)に伝達するための手段を含み、
前記エネルギー貯蔵手段が、エネルギーバッファ(73)に結合されるバッテリー(72)を含み、
前記デバイスがさらに、前記一次側シャフトの制動中に前記電気エネルギーを前記エネルギーバッファ(73)に充電し、いったん前記一次側シャフトが同期されると、前記エネルギーバッファ(73)を前記バッテリー(72)に放電するように構成される制御ユニット(74)を含み、
前記制御ユニット(74)が、定義済みの低閾値を下回る前記バッテリー(72)の充電レベルの通過を検出し、前記低閾値を下回る前記バッテリー(72)の前記充電レベルの通過を検出する場合、前記エネルギーバッファ(73)内に所定のエネルギーレベルを維持するように構成されることを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記デバイスが、インバータ(70)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記エネルギーバッファ(73)が、少なくとも1つのスーパーキャパシタ(80)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記制御ユニット(74)が、チョッパ回路(86)を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記電気機械(7)が、前記一次側シャフト(1、6)の前記一次速度(ωp)と前記二次側シャフト(10)の前記一次速度よりも高い前記二次速度とを同期させるために、加速トルクを供給するとき、前記制御ユニット(74)が、前記エネルギーバッファ(73)に含有される前記エネルギーを前記電気機械(7)に供給するように構成されることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のデバイスを備える電気またはハイブリッド自動車。
【請求項7】
電気トルクを電気機械(7)から受け取る一次側シャフト(1、6)の一次速度(ωp)とトランスミッション二次側シャフト(10)の前記一次速度よりも低い二次速度とを同期させるための方法であって、前記一次側シャフト(1、6)および前記二次側シャフト(10)は、切り離されており、前記一次側シャフト(1、6)は、前記一次速度(ωp)と関連する運動エネルギーを有し、
前記電気機械(7)が、前記一次側シャフト(1、6)の前記運動エネルギーを少なくとも部分的に回収し、前記エネルギーを貯蔵手段(71)に伝達するように、前記一次速度が前記二次速度に実質的に等しくなるまで、再生モードにおいて電気制動トルク(Te)を前記一次側シャフト(1、6)に供給するように制御され、
前記貯蔵手段が、エネルギーバッファ(73)に結合されるバッテリー(72)を含み、
前記貯蔵手段が、前記一次側シャフトの制動中に前記エネルギーを前記エネルギーバッファ(73)に充電し、いったん前記一次側シャフトが同期されると、前記エネルギーバッファ(73)を前記バッテリー(72)に放電するように制御され、
定義済みの低閾値を下回る前記バッテリー(72)の充電レベルの通過の検出と、前記検出のステップが前記低閾値を下回る前記バッテリー(72)の前記充電レベルの通過を検出した場合における、前記エネルギーバッファ(73)内での所定のエネルギーレベルの維持と、を含むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ギアボックスを備えたハイブリッドまたは電気自動車においてギアを切り替える分野に関する。本発明はより詳しくは、一次側シャフトと二次側シャフトとを同期させるためのデバイスに関する。本発明はまた、対応する自動車および対応する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、トルクの中断を伴う変速比の切り替えが、自動車の車輪に接続されるシャフトを中心に自由に回転できる2つのギア間の結合手段の動きによってもたらされる、平行シャフトを有する任意のトランスミッションに当てはまる。
【0003】
本発明は、自動車の車輪に接続される二次側シャフトに少なくとも1つの中間ギアをそれぞれ運ぶ2つの同心状一次側シャフト、および燃焼機関が、電気機械を車輪に接続するトランスミッションから切り離される(第1の位置)、燃焼機関が、電気機械からの追加有りもしくは無しの状態で車輪を駆動する(第2の位置)、または燃焼機関が、それらのトルクを追加するために電気機械に結合される(第3の位置)、という3つの位置を占めることができる2つの一次側シャフト間の第1の結合手段を含む、燃焼機関および電気駆動機械を設けられている自動車のためのハイブリッドトランスミッションへの1つの限定されない応用を見いだす。
【0004】
図1は、このアーキテクチャ原理に基づくハイブリッドトランスミッションの1つの限定されない例を記述する。このトランスミッションは、フィルタシステム(ダンパーハブ、ダンパー二重フライホイールまたは類似のもの)2を用いて燃焼機関(図示されず)のフライホイール3に直接接続される中実一次側シャフト1を含む。中実シャフト1は、第1の結合システム5(ドッグクラッチ、同期装置、または他の種類の進行性もしくは非進行性カプラ)によって接続され得るアイドラギア4を担持する。中空一次側シャフト6は、電気機械7のロータに接続される。中空シャフト6は、2つの固定ギア8、9を担持する。中空シャフト6は、結合システム5によって中実一次側シャフト1に接続することができる。二次側シャフト10は、2つのアイドラギア11および12を担持する。アイドラギア11、12は、第2の結合システム13(ドッグクラッチ、同期装置、または他の種類の進行性もしくは非進行性カプラ)によって一次側シャフトに接続することができる。二次側シャフト10はまた、固定ギア14および自動車の車輪に接続される差動装置16への中間ギア15も担持する。
【0005】
上述の通り、第1の結合手段5は、
− 燃焼機関が、電気機械7を車輪に接続するトランスミッションから切り離される(
図1でのような中心におけるスライディングギア)、
− 燃焼機関が、電気機械からの追加有りまたは無しの状態で車輪を駆動する(左側のスライディングギア)、および
− 燃焼機関および電気機械7が、それらのそれぞれのトルクを車輪の方向に追加するように結合される(右側のスライディングギア)、という少なくとも3つの位置を占めることができる。
【0006】
自動ギアボックスを備えた自動車の運転者の快適性は、ギア切り替えにかかる時間に大きく依存する。ギア切り替えは、一次側シャフトの速度と減速比を乗じた二次側シャフトの速度との間の速度差の低減を必要とし、その減速比は、使用中の変速比に依存する。一次側および二次側シャフトを結合することは、速度差が、ある閾値を下回るときだけ可能である。
図2aおよび
図2bに示されるように、低速へのギア切り替え中に、例えば
図2aにおいて変速比EV2から変速比EV1への間に、一次側シャフトは、例えば
図2bにおいて2000rpmの一次速度ωpから6000rpmの一次速度ωpに行くために加速されなければならず、高速へのギア切り替え中に、例えば
図2aにおいて変速比EV1から変速比EV2への間に、一次側シャフトは、例えば
図2bにおいて6000rpmの一次速度ωpから2000rpmの一次速度ωpに行くために減速されなければならない。
図1では、変速比EV1は、ギア8および12に対応し、ドッグクラッチ13は、右側に位置決めされ、変速比EV2は、ギア9および11に対応し、ドッグクラッチ13は、左側に位置決めされる。
【0007】
特許出願FR2988799およびFR3003620は、ハイブリッド自動車について、特に低速へのギア切り替え中にトルクを提供するために、自動車の一次側シャフトと二次側シャフトとを同期させるために自動車の電気機械の使用を示唆する。高速へのギア切り替えについては、一次側シャフトの一次速度と関連する運動エネルギーの一部は、従来は一次側シャフトを制動するために機械的損失を通じて散逸される。
【0008】
自動車のエネルギー消費を低減するという文脈において、高速へのギア切り替え中に一次側シャフトの減速から生じる運動エネルギーをバッテリー内の電気エネルギーの形で回収することは、関心のあることである。目指している目標は、200ms程度の短い同期時間を達成することであるという点において、関係しているパワーは、比較的高く、50kW程度である。今、バッテリーが、100%に近い、例えば90%の充電レベルに達するとき、バッテリーは、わずかなパワーだけを受け取ることができる。これは、高速へのギア切り替え中にエネルギーの回収への障害を構成する。
【0009】
その上、素早い低速へのギア切り替えを可能にするためには、一次側シャフトを加速するために電気機械に高いパワーを供給することが、必要である。今、バッテリーが、0%に近い、例えば10%の充電レベルに達するとき、バッテリーは、わずかなパワーだけを供給することができる。これは、運転者の快適性への障害を構成する。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、前述の不都合を軽減することを目指す解決策を提案する。本発明の1つの目的は、高速へのギア切り替え中にシャフトを同期させるために電気機械の再生モードの使用のおかげでより良いエネルギー効率を可能にすることである。本発明はまた、運転者の快適性を改善する目的も有する。
【0011】
本発明は、電気機械から電気トルクを受け取る一次側シャフトの一次速度とトランスミッション二次側シャフトの一次速度よりも低い二次速度とを同期させるためのデバイスであって、一次側および二次側シャフトは、切り離されており、一次側シャフトは、一次速度と関連する運動エネルギーを有し、デバイスが、一次速度が二次速度に実質的に等しくなるまで、電気制動トルクを一次側シャフトに供給するための手段、ならびに一次側シャフトによって失われる運動エネルギーを電気エネルギーの形で少なくとも部分的に回収し、前記電気エネルギーをエネルギー貯蔵手段に伝達するための手段を含むことを特徴とする、デバイスに関する。一次側シャフトの運動エネルギーの回収は、自動車内のより良いエネルギー効率を可能にする。
【0012】
1つの特定の実施形態によると、本デバイスは、インバータを含む。再生要素としてのインバータの使用は、もしインバータが、電気機械の供給電圧を作成するためにすでに存在するならば、一次側シャフトの運動エネルギーを回収するために追加のコンポーネントを必要としないという利点を有する。
【0013】
1つの特定の実施形態によると、エネルギー貯蔵手段は、エネルギーバッファに結合されるバッテリーを含む。バッテリーに結合されるエネルギーバッファは、バッテリーの充電レベルが何であれ、貯蔵手段がバッテリーの最大利用可能パワーに対応するパワーを供給することができることを可能にする。類似の仕方で、バッテリーに結合されるエネルギーバッファは、バッテリーの充電レベルが何であれ、貯蔵手段がバッテリーの最大受け入れ可能パワーに対応するパワーを受け取ることができることを可能にする。その結果、この実施形態は、運転者の快適性を向上させ、エネルギー効率を改善することを可能にする。
【0014】
1つの特定の実施形態によると、エネルギーバッファは、少なくとも1つのスーパーキャパシタを含む。スーパーキャパシタは、本発明が目指すエネルギー貯蔵容量を限られたコストおよび限られた全体サイズで達成することを可能にするという利点を有する。
【0015】
1つの特定の実施形態によると、本デバイスはさらに、一次側シャフトの制動中に前記電気エネルギーをエネルギーバッファに充電し、いったん一次側シャフトが、二次側シャフトと同期されると、エネルギーバッファをバッテリーに放電するように構成される制御ユニットを含む。制御ユニットは、バッテリーおよびエネルギーバッファの充電および放電の組織化を可能にする。
【0016】
1つの特定の実施形態によると、制御ユニットは、チョッパ回路を含む。チョッパ回路は、適切な電流によるバッテリーへのエネルギーバッファの放電およびバッテリーに関係する電圧制限のないエネルギーバッファの充電を可能にする。
【0017】
1つの特定の実施形態によると、制御ユニットは、定義済みの低閾値を下回るバッテリーの充電レベルの通過を検出し、低閾値を下回るバッテリーの充電レベルの通過を検出する場合にエネルギーバッファ内の所定のエネルギーレベルを維持するように構成される。それに応じて、もしバッテリーの充電レベルが、低速へのギア切り替え中にバッテリーが十分速い同期に必要なパワーを電気機械に供給することを可能にしないならば、エネルギーバッファは、電気機械へのパワーの追加を提供するために利用できる十分なエネルギーを有する。
【0018】
1つの特定の実施形態によると、バッテリーは、ギア比の切り替え後に所定のエネルギーレベルがエネルギーバッファ内に維持されることを可能にするエネルギーを供給する。
【0019】
1つの特定の実施形態によると、制御ユニットは、電気機械が、一次側シャフトの一次速度と二次側シャフトの一次速度よりも高い二次速度とを同期させるために加速トルクを供給するとき、エネルギーバッファに含有されるエネルギーを電気機械に供給するように構成される。それ故に、同期時間は、低減され、運転者の快適性は、改善される。
【0020】
本発明はまた、前記デバイスを備える電気またはハイブリッド自動車にも関する。
【0021】
本発明はさらに、電気機械から電気トルクを受け取る一次側シャフトの一次速度とトランスミッション二次側シャフトの一次速度よりも低い二次速度とを同期させるための方法であって、一次側および二次側シャフトは、切り離されており、一次側シャフトは、一次速度と関連する運動エネルギーを有し、電気機械が、一次側シャフトの運動エネルギーを少なくとも部分的に回収し、前記エネルギーを貯蔵手段に伝達するように、一次速度が二次速度に実質的に等しくなるまで、再生モードにおいて電気制動トルクを一次側シャフトに供給するように制御されることを特徴とする、方法。
【0022】
他の革新的な利点および特徴は、添付の図面を参照して、限定されない実例として提供される、次に来る記述から現れることになる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】ニュートラルおよびその2つの電気的比率にある従来技術のハイブリッドトランスミッションを示す図である。
【
図2a】従来技術での時間の経過による変速比の切り替えを示す図である。
【
図2b】
図2aでの変速比の切り替えに対応する一次側シャフトの一次速度の切り替えを示す図である。
【
図3】パーク軸系での本発明の一実施形態による電気機械の図式的表示である。
【
図5a】本発明の一実施形態での時間の経過による変速比の切り替えを示す図である。
【
図5b】
図5aからの変速比の切り替えに対応する、電気機械によって供給されるトルクの変動を示す図である。
【
図5c】
図5bからの電気機械によって供給されるトルクの変動に対応するバッテリーの端子における電圧の変動を示す図である。
【
図6】エネルギーバッファの有無によるバッテリーの充電レベルの関数としてバッテリー利用可能なパワーおよびバッテリー受け入れ可能なパワーを示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態でのエネルギーバッファを含むエネルギー貯蔵手段の機能図である。
【
図8】
図7からのエネルギーバッファおよびその制御ユニットの機能図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
自動ギアボックスを備えたハイブリッドまたは電気自動車の文脈において、本発明は、一次側シャフトが、電気機械からトルクを受け取り、二次速度が、一次速度よりも低い、すなわち高速へのギア切り替えの場合という構成において、一次側シャフトの一次速度とトランスミッション二次側シャフトの二次速度とを同期させるためのデバイスを提案する。そのような同期中は、一次側および二次側シャフトは、切り離されており、言い換えれば、ギアボックスは、ニュートラルにあり、自動車は、惰性で進んでいる。前記構成では、同期は、電気機械が、一次速度と二次速度との間の差が所定の閾値を下回るまで一次速度を低減するために、制動トルクを一次側シャフトに供給するように、電気機械を制御することにある。回転する一次側シャフトは、一次速度と関連する運動エネルギーを有する。ここで、一次速度の低減は、一次側シャフトの運動エネルギーの低減につながる。本発明は、電気機械によるその制動中に一次側シャフトの運動エネルギーの一部を取り上げ、その運動エネルギーの一部を散逸させるよりもむしろ貯蔵することを提案する。運動エネルギー部分は、再生要素を用いて取り上げられ、電気エネルギーに変換され、次いでエネルギー貯蔵手段に送られる。
【0025】
図3では、本発明による電気機械7は、パーク軸系において図式的に表される。電気機械7は、例えば永久磁石三相同期電気機械である。電気機械7は、それらの間に2π/3の3つの角度を形成する3つの軸x1、x2、x3とそれぞれ整列される3つの巻線31、32および33を備えるステータを含む。3つの巻線31、32、33では、2π/3だけそれぞれ位相シフトした、正弦波電流I1、I2、I3が、それぞれ循環する。また正弦波であり、2π/3だけそれぞれ位相シフトもした、電圧V1、V2およびV3が、3つの巻線31、32、33の端子にそれぞれ印加される。ステータは従って、電気機械7内に回転磁界を生成する。電気機械7はさらに、角速度ωrで回るように、ステータによって生成される回転磁界と自然に整列される永久磁石を含むロータ34を含む。本例の構成では、角速度ωrは、電流および電圧の正弦波信号の角周波数に等しい。図示されるパーク軸系は、2つの軸dおよびqを含み、dは、回転磁界と整列され、qは、dに対して直接直交している。パーク軸系では、電流および電圧の投影は、定数である。
【0026】
電気機械7を使用して制御された制動トルクを一次側シャフトに供給することを目指して、制御構造が、提案される。
図4は、
図3に示されるモデルに対応する制御構造例を提案する。
図3でのモデルは、次の方程式、
が電気機械7を制御する際に使用される様々なパラメータ間で確立されることを可能にし、ただし、
− V
dおよびV
qは、パーク軸系の軸dおよびqにそれぞれ印加されるボルト単位での電圧であり、
− I
dおよびI
qは、パーク軸系の軸dおよびq上でそれぞれ循環するアンペア単位での電流であり、
− R
sは、電気機械のステータのオーム単位での等価抵抗であり、
− L
dおよびL
qはそれぞれ、パーク軸系の軸dおよびq上でのヘンリー単位でのインダクタンスであり、
− ω
rは、電気機械の磁界の1秒当たりのラジアン単位での回転速度であり、
− Φ
fは、ロータの磁石によって発生されるウェーバ単位での磁束である。
この表記法を用いると、電気機械は、
(E
2) T
e=Φ
f・I
q+I
d・I
q(L
d−L
q)
と書かれるトルクT
eを供給する。
上記の方程式は、
図4からの制御構造が確立されることを可能にする。入力データTe_consは、電気機械7によって供給すべき設定点制動トルクに対応する。第1の計算モジュール41は、設定点制動トルクTe_consから、方程式E2を満たすようにパーク軸系での設定点電流Id_consおよびIq_consの計算を可能にする。設定点電流Id_consおよびIq_consは、第2の計算モジュール42によって、電気機械7内で測定される電流I1、I2およびI3のパーク変換から得られる電流IdおよびIqと比較され、パーク変換は、第3の計算モジュール43によって計算される。第2の計算モジュール42からの電流Id_cons−IdおよびIq_cons−Iqの比較は次いで、第4の計算モジュール44において、補正された電流設定点Id_cons.cおよびIq_cons.cの計算を可能にする。補正された電流設定点Id_cons.cおよびIq_cons.cから、パーク軸系での電圧設定点Vd_consおよびVq_consが、方程式E1の系に従って、第5の計算モジュール45において計算される。第6の計算モジュール46は、実際の電圧設定点V1_cons、V2_consおよびV3_consを得るためにパーク軸系での電圧設定点Vd_consおよびVq_consに基づいて逆パーク変換を計算する。インバータ70は、電気機械7に実際の電圧設定点V1_cons、V2_consおよびV3_consに適合する正弦波電圧V1、V2およびV3を印加する。
【0027】
設定点制動トルクTe_consを適用することによって得られる制動トルクTeは、一次速度と二次速度との間の差が、所定の閾値を下回るまで、維持される。
【0028】
インバータ70は、その制動中に一次側シャフトによって失われる運動エネルギーの一部を取り上げ、この運動エネルギー部分を電気エネルギーに変換し、前記電気エネルギーをエネルギー貯蔵手段、例えばバッテリーに伝達するように構成される。この例では、インバータ70は、再生要素である。
【0029】
図5a、
図5bおよび
図5cは、例えばEV1からEV2への、高速への変速比切り替え中に、電気機械7が、一次速度ωpを例えば6000rpmから2000rpmに低減するために、負のトルクを供給するということを示す。この文脈では、インバータは、一次側シャフトの運動エネルギーによって作成される電気エネルギーをバッテリーに送り、バッテリーの端子における電圧Ubatterieは、増加する。逆に、例えばEV2からEV1への低速への変速比切り替え中に、電気機械7は、一次速度ωpを例えば2000rpmから6000rpmに増加させるために、正のトルクTeを供給する。この文脈では、インバータは、電気エネルギーをバッテリーから取り込み、バッテリーの端子における電圧Ubatterieは、減少する。
【0030】
図6では、バッテリーの充電レベルの関数として、バッテリーが供給することができる利用可能なパワーPdisponsibleおよびバッテリーが受け取ることができる受け入れ可能なパワーPadmissibleが、示される。古典的構成、すなわちグラフの影付きでない部分を考察すると、バッテリーの充電レベルが、低いとき、例えば、充電レベルが、10%を下回るとき、バッテリーは、充電レベルが、10%を上回るときに利用できるパワーPmax_dispoよりも小さい、限られたパワーPdisponibleだけを供給することができる。その結果、バッテリーは、良好な運転者の快適性を提供するために十分に短時間で一次側シャフトと二次側シャフトとを同期させるのに十分な電圧Ubatterieを供給することができない。類似の仕方で、バッテリーの充電レベルが、高いとき、例えば、充電レベルが、90%を上回るとき、バッテリーは、充電レベルが90%を下回るときに受け入れられるパワーPmax_admisよりも小さい、限られたパワーPadmissibleだけを受け取ることができる。その結果、バッテリーは、良好な運転の快適性を提供するために十分に短時間で一次側シャフトと二次側シャフトとを同期させるのに十分な電圧Ubatterieを受け取ることができない。この状況では、一次速度は、機械損失を通じて低減され、一次速度の低減に対応する運動エネルギーは、散逸される。この状況は、貧弱な運転者の快適性および貧弱なエネルギー効率という二重の不都合につながる。本発明は、充電レベルが、10%を下回るまたは90%を上回るという限定する状況を含み、最適動作を提供するためにエネルギーバッファをバッテリーに結合することを提案する。最適動作は、バッテリーの充電レベルが何であっても、グラフの影付き部分および影付きでない部分の組み合わせによって
図6に表されるように、Pmax_dispoに等しい利用可能なパワーPdisponibleおよびPmax_admisに等しい受け入れ可能なパワーPadmissibleに対応する。
【0031】
エネルギーバッファを評価するという純粋に説明に役立つ観点から、電気機械の公称パワーが、50kW程度であり、同期時間が、200ms程度であるとすると、エネルギーバッファは、50kWのパワーを受け取りまたは供給し、10kJのエネルギーを受け取りまたは供給すると評価されなければならない。エネルギーバッファは、50mFの等価キャパシタンスを得るように、例えば一組の直列のスーパーキャパシタであり、スーパーキャパシタは、目指すエネルギー貯蔵容量が限られたコストおよび限られた全体的サイズについて達成されることを可能にするという利点を有する。
【0032】
図7では、バッテリー72および制御ユニット74によって制御されるエネルギーバッファ73を含む貯蔵手段71が、示される。
【0033】
図8では、
図7からのエネルギーバッファ73が、示される。エネルギーバッファ73は、第2の期間内にエネルギーを出力するために第1の期間内にエネルギーの貯蔵を可能にする、一組の直列のスーパーキャパシタ80および巻線81を含む。エネルギーバッファ73はまた、制御ユニット74の出力Com3およびCom2によってそれぞれ制御され、電流の方向を課すダイオード83および85にそれぞれ結合される、2つのトランジスタ82および84も含む。ダイオード83は、スーパーキャパシタ80の組を充電することに対応する電流方向を課し、ダイオード85は、スーパーキャパシタの組を放電することに対応する電流方向を課す。その結果、エネルギーバッファ73の充電を制御するために、制御ユニット74は、トランジスタ82の閉鎖およびトランジスタ84の開放を命令し、エネルギーバッファ73を放電することについては逆もまた同様である。エネルギーバッファ73はさらに、スーパーキャパシタ80の組の端子における電圧のチョッピングを可能にするトランジスタ86を含む。エネルギーバッファ73を充電する段階では、スーパーキャパシタ80の組の端子における電圧が、バッテリーの端子における電圧を下回るとき、制御ユニット74は、トランジスタ86の開放を命令する。スーパーキャパシタの組の端子における電圧とバッテリーの端子における電圧との比が、反転されるとき、制御ユニット74は、スーパーキャパシタ80の組の端子における平均電圧をバッテリー電圧よりも下に戻し、従ってエネルギーバッファを充電し続けるために、スーパーキャパシタ80の組の端子における電圧をチョップするように、トランジスタ86の閉鎖および開放のサイクルを命令する。エネルギーバッファをバッテリーに放電する段階では、制御ユニット74はまた、バッテリー72に送られる再充電電流を調節するために、スーパーキャパシタの組の端子における電圧をチョップするようにトランジスタ86に命令する。
【0034】
バッテリーの低い充電レベルの場合に良好な運転者の快適性を確実にするために、制御ユニット74は、定義済みの低閾値を下回るバッテリーの充電レベルの通過を検出し、必要ならば、達成すべき受け入れ可能な最大パワーレベルでの速度同期を可能にするエネルギーバッファ内の所定のエネルギーレベルを維持するために、バッテリーによるエネルギーバッファ73へのパワーの供給を命令するように構成される。バッテリーは、日常的にCANと呼ばれる、自動車の通信ネットワークにわたって、定義済みの低い閾値を下回るバッテリーの充電レベルの通過を検出するために制御ユニット74に必要な情報を送る。エネルギーバッファ73が、関係しているところでは、電圧測定コンポーネントは、エネルギーバッファに貯蔵されるエネルギーの見積もりを可能にする。
【0035】
本発明は、例として上で述べられる。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、例えば上記の様々な特徴を別々にまたは組み合わせて関連付けることによって、本発明の異なる変形実施形態を作成できる立場にあるということが、理解される。